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野球肘(軟骨剥離)とは?子どもの肘が痛む原因や症状、治療法を解説
「投げると肘が痛いと子どもが言っている」
「肘の曲げ伸ばしがしにくそうで心配」
お子さんからこのような訴えがあり、不安に思っている保護者の方もいるのではないでしょうか。
成長期の子どもに多く見られる「野球肘(離断性骨軟骨炎)」は、放置すると手術が必要になることもある病気です。しかし、早期に発見し適切な治療を行えば、手術を避けられる可能性が高まります。
本記事では、野球肘の中でもとくに注意が必要な「軟骨剥離(離断性骨軟骨炎)」について、なぜ起こるのか、どのような治療法があるのかを専門的な視点でわかりやすく解説します。
正しい知識を持つと、焦らず適切な対応ができるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
なお、野球肘に対しては、手術を伴わない再生医療という治療法もあります。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。
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目次
野球肘の「軟骨剥離(離断性骨軟骨炎)」とは?
野球肘の軟骨剥離とは、正式には「離断性骨軟骨炎」と呼ばれる病気です。
肘の外側の部分(上腕骨小頭)の軟骨に傷がつき、痛みや関節の動きが悪くなる状態を指します。
| 野球肘(離断性骨軟骨炎)の特徴 | 概要 |
|---|---|
| 発症部位 | 肘の外側の部分(上腕骨小頭) |
| 主な症状 | 肘の痛み、関節の動きが悪くなる |
| 好発年齢 | 9〜12歳の成長期の子ども |
| 発症しやすい競技 | ・野球(投球動作) ・体操競技 ・サッカーなど |
野球などの投球動作を伴うスポーツをしている9〜12歳の子どもに多く見られますが、体操競技やサッカーをしている子どもでも発症する可能性があります。
競技人口の多さから日本では野球選手に多く見られるため「野球肘」と呼ばれています。しかし、野球以外のスポーツでも発症するため注意が必要です。
野球肘(軟骨剥離)の主な原因
野球肘(軟骨剥離)の主な原因は、繰り返される投球動作によって、まだ成長途中で柔らかい肘の骨や軟骨に過度な負担がかかることです。
1回の衝撃で起こる怪我とは異なり、小さな負担が積み重なることで徐々に組織が傷ついていきます。
具体的に、以下の動作や原因で発症しやすいです。
- 投球過多(投げすぎ)
- 投球フォームの不良(肘に負担のかかる投げ方)
- 体全体の柔軟性不足や筋力バランスの乱れ
野球肘は、これらの原因が複合的に絡み合って発症すると考えられています。
野球肘(軟骨剥離)の主な症状
野球肘(軟骨剥離)の最大の特徴は、ボールを投げたとき(投球時)に肘の外側が痛むことです。
しかし、初期の段階では痛みがはっきりせず、「なんとなく肘が完全に伸びない」「深く曲げられない」といった可動域制限(動きの悪さ)だけが現れることもあります。
軽傷であれば手術などをしなくても改善することが多く、早期発見・早期治療が重要な病気です。しかし、痛みが出てきたときには病気が進行していることも多いため注意が必要です。
また、無症状の少年野球選手を検査したところ、「約1〜3%に野球肘が見つかった」という報告もあります。(文献1)
野球肘(軟骨剥離)の治療法
野球肘(軟骨剥離)は、進行度によって治療方針が大きく異なります。
正確な状態を把握するためには、医療機関での受診が必要です。レントゲン撮影に加え、MRIや超音波(エコー)検査などで骨や軟骨の状態を調べる必要があります。
検査結果にもとづいて症状は主に3つの段階に分類され、進行度ごとに適した治療が選択されます。
それぞれ、詳しく解説します。
1:初期(透亮期)
野球肘(軟骨剥離)の初期と診断されるのは、ほとんどが小学生です。
初期の段階では、骨や軟骨の損傷はまだ軽く、レントゲンでは一部がうっすらと透けて見える程度です。この状態を透亮期(とうりょうき)と呼びます。骨の表面にわずかな傷がついている段階で、まだ大きく剥がれていません。
この段階であれば、投球を禁止し肘を安静にする「保存療法」で、9割以上の方が改善するとされています。(文献2)ただし、骨が修復されるまでには半年〜1年以上かかることもあるため、根気強い治療が必要です。
2:進行期(離断期)
進行期は、軟骨や骨の一部が剥がれかけている段階で、完全には離れていないものの、初期より損傷が進んでいる状態です。
進行期では、基本的には手術をしない「保存療法」が選択されます。ただし、思うように治らず手術が必要になるケースもあります。
症状や病気の状態にもよりますが、3カ月から6カ月ほどで評価を行い、保存療法を続けるか、手術が必要かどうかを慎重に判断します。
3:終末期(遊離期)
終末期は、傷ついた軟骨や骨の一部が完全に剥がれ落ちている段階です。
剥がれた骨の破片は「遊離骨」または「関節ねずみ(肘関節遊離体)」と呼ばれ、関節内に残っています。遊離骨が痛みや関節の引っかかり感を引き起こすことが多く、肘の動きに支障をきたすのです。
ただ、終末期であっても、全く症状がない場合には手術はせずに様子を見ることもあります。
しかし、痛みや可動域制限がある場合は、多くのケースで手術が必要です。手術では、剥がれた骨の破片を取り除いたり、損傷した軟骨を修復したりします。
手術に頼らない治療法「再生医療」について
野球肘の治療においては、「再生医療」という治療法もあります。
再生医療は、自己の幹細胞や血液の働きを活用する治療法です。主に幹細胞治療とPRP療法の二つがあります。
幹細胞治療は、患者様から採取した幹細胞を培養して増やし、患部に投与します。一方、PRP療法は、患者様自身から採取した血液を遠心分離機にかけて、血小板を濃縮した液体を作製して患部に注入する治療法です。血小板に含まれる成長因子などが持つ、組織の修復や炎症の抑制に関わる働きを活用します。
再生医療について詳しく知りたい方は、以下のスポーツ外傷に対する再生医療に関する記事をご覧ください。
スポーツ外傷は⼿術しなくても治療できる時代です。
野球肘(軟骨剥離)を早く治すには?
野球肘(軟骨剥離)を早く治すためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
それぞれ、詳しく解説します。
一定期間は安静にする
痛みがある状態で投げ続けると、損傷が悪化し、治りが遅くなってしまいます。炎症を抑え、軟骨の修復を促すためには、完全な安静が必要です。
医師から指示された期間は、投球動作や肘に負担のかかる動作を完全に避けてください。「少しくらいなら」という油断が、回復を大幅に遅らせます。
また、日常生活でも、「重いものを持つ」「肘を強く曲げ伸ばしする」など、患部に負担をかける動作は避けましょう。
リハビリとストレッチを行う
安静期間を経て炎症が落ち着いたら、医師やリハビリスタッフの指示のもと、肘周りの柔軟性や筋力を取り戻すためのリハビリを実施します。
リハビリを行い、長期の安静により低下した筋力や可動域を、徐々に回復させていきましょう。また、無理のない範囲でストレッチや軽いトレーニングを継続すれば、回復を早められます。
ただし、痛みを我慢して行うストレッチは逆効果です。必ず医師やリハビリスタッフの指導のもとで実施してください。
以下の記事では、野球肘におすすめなストレッチを解説しています。ぜひ参考にしてください。
まとめ|野球肘(軟骨剥離)は早期発見と適切な治療で回復が期待できる
野球肘(軟骨剥離)は、9〜12歳の成長期に多く見られる病気で、投球動作を伴うスポーツで発症しやすい特徴があります。初期症状としては投球時の肘外側の痛みや可動域制限が見られ、この段階で発見できれば90%以上が手術なしで改善するとの報告があります。(文献2)
しかし、病気が進行すると手術が必要になることもあるため、早期発見が重要です。
お子さんが「肘が痛い」と訴えたときには、様子を見ることなく、早めに医療機関を受診させてください。早期発見によって手術を避けられる可能性が高まります。
また、野球肘に対しては再生医療も治療の選択肢となります。野球肘の治療や再生医療について詳しく知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご覧ください。
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野球肘(軟骨剥離)についてよくある質問
野球肘(軟骨剥離)はどれくらいで治る?
初期段階(透亮期)で発見された場合は、安静と適切なリハビリにより、半年〜1年ほどで回復することが多いです。ただし、病巣の完全な改善には1年以上かかるケースもあります。
また、進行期や手術を行った場合は、競技復帰までに約6カ月〜1年かかるケースも多いです。
なお、治療期間は発見時期や重症度、手術の有無によって大きく異なるため、主治医とよく相談しながら焦らず治療を進めましょう。
中学生で手術が必要になることはある?
野球肘(軟骨剥離)が発症した際に手術を行うかどうかは、年齢よりも「進行度」によって決まります。
初期段階(透亮期)で発見されれば、中学生であっても手術を避けられることが多く、保存療法で改善が期待できます。
しかし、軟骨が完全に剥がれてしまった終末期(遊離期)では、中学生であっても手術が選択されることがあります。遊離骨が関節内に残っていると、痛みや可動域制限が続き、放置すれば将来的に肘の機能に支障をきたす可能性があるためです。
重要なのは、年齢に関わらず早期に発見し、適切な治療を受けることです。お子さんが肘の痛みや違和感を訴えたら、すぐに医療機関を受診させてください。
なお、手術を避けたい方には再生医療も治療の選択肢となります。再生医療をご検討の方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。
参考文献
(文献1)
Prevalence of Osteochondritis Dissecans of the Capitellum in Young Baseball Players|Orthop J Sports Med
(文献2)
Nonoperative treatment for osteochondritis dissecans of the capitellum.|Am J Sports Med










