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野球肘のストレッチ5選|痛みを和らげる方法と注意点を医師が解説
野球肘は、ボールを投げる動作を繰り返すことで肘に負担が蓄積し、痛みや機能障害を引き起こすスポーツ障害の総称です。とくに成長期の野球選手に多くみられ、肘の内側・外側・後ろなど、痛みが出る場所によっていくつかのタイプがあります。
野球肘では、ストレッチで筋肉や関節の柔軟性を高めることで、症状の緩和や再発予防につながる場合があります。
ただし、肘の状態によってはストレッチだけでは十分に改善しないこともあるため注意が必要です。とくに外側に痛みが出るタイプでは、骨や軟骨にダメージが生じる離断性骨軟骨炎と呼ばれる状態が関係していることがあります。
痛みが続くときや肘の動きに違和感があるときは、早めに医療機関へ相談しましょう。
この記事では、野球肘におすすめのストレッチや行うときの注意点、ストレッチだけでは改善が難しいケースについてわかりやすく解説します。
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目次
野球肘の症状改善・予防におすすめなストレッチ5選
野球肘の症状を予防したり再発を防いだりするためには、プレー前後のストレッチで筋肉や関節の柔軟性を高めておくことが大切です。
肘まわりだけでなく、肩・背中・股関節を含む全身の柔軟性を高めましょう。投球動作は全身の連動によって行われ、身体が硬い部分があると肘に負担が集中しやすくなるためです。(文献1)
また、野球肘は内側型・後方型・外側型に分けられます。内側型や後方型はストレッチが症状のケアや再発予防に役立つことがあります。
外側の野球肘については、以下の記事で解説しているので参考にしてください。
手首・肘の内側を伸ばすストレッチ
手首・肘の内側を伸ばすストレッチは、肘下の筋肉の緊張を緩め、肘の可動域の改善や投球時の肘内側への負担軽減が目的です。
ストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 片手をまっすぐ前に伸ばす
- 手の甲を天井に向ける
- 手首と腕が90度になるように調整する
- 伸ばしている手の指先を反対の手で体の方へゆっくり引き寄せる
- 息を吐きながら15~30秒程度伸ばす
- 手のひらを反時計回りに180度回転させて手の甲が地面を向くようにする
- 手のひらを机や床などの平らな場所に置いてゆっくり体重をかける
- 息を吐きながら15~30秒程度伸ばす
前腕屈筋群のひとつである手根屈筋は、投球時に手首を屈曲・回内させる働きを持つ筋肉です。手根屈筋が硬くなると肘の内側や前腕に痛みを出しやすくなるとされています。(文献1)
伸ばす際には、前腕の内側が心地よく伸びていることを意識してください。肘に痛みや違和感が出た場合は、無理に行わず中止しましょう。
肩・肩甲骨をほぐすストレッチ
肩や肩甲骨の柔軟性や可動域を高めると、スムーズな投球フォームを作りやすくなり、肘への負担を軽減する効果も期待できます。
ストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 指先を肩に添える(右肩には右手・左肩には左手を添える)
- 肘で円を描くように大きく回す
- 前方向に10回・後ろ方向に10回程度繰り返す
- 肩と肩甲骨の動きを意識する
動かす際には肩や肩甲骨周りの筋肉が心地よく伸びる感覚を意識し、痛みや違和感が出た場合は中止してください。
肩回りを伸ばすストレッチ
肩周りの筋肉が硬いと投球動作で肘に負荷が集中しやすくなるため、プレー前後のケアとしても役立ちます。
ストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 胸の前で肘から手のひらまでをくっつける
- 肘を胸の高さまで引き上げて肘90度・脇下90度の姿勢を作る(難しい場合は無理せず角度を狭める)
- 腕を後ろに引き胸を張った姿勢を作る
- 胸を張った状態で10秒キープ
- 再び胸の前で腕をくっつけ、5セット繰り返す
胸の前で腕をくっつける際は肩甲骨が離れる感覚を、腕を後ろに引く際は、肩甲骨が背骨を挟むような感覚を掴みながらおこなってください。
体幹と下半身のストレッチ
体幹と下半身の柔軟性を高め、肘への負担軽減につなげましょう。
ストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 両足を肩幅の1.5倍程度開いて立つ
- 膝の内側に両手を置いて膝を120度ほど曲げる
- 左肩を右方向にひねる
- 10秒キープする
- 右肩を左方向にひねる
- 10秒キープする
- 3~6の動作を1セットとして左右交互に2セット行う
肩をひねるときに膝が動かないように意識し、腰を落としすぎないようにすると、効果的に体幹と下半身を伸ばせます。
体幹と股関節のストレッチ
体幹と股関節のストレッチも投球動作時の肘や肩への負担軽減に役立ちます。
ストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 両足を股関節から開いた状態で床に座る
- 左膝を折り曲げる
- 左足の裏側を右足の内ももに添える(右足は伸ばしたまま)
- 右足のつま先を天井に向ける
- 左手を右足のつま先へ向かって伸ばす
- 左側の体側と右足の裏側~ふくらはぎにストレッチを感じながら10秒キープ
- 反対側も同じように行う
- 左右それぞれ2セット行う
背中を丸めず、腰や肩の位置を安定させましょう。左側の体側や右足の裏側からふくらはぎにかけて、心地よく伸びる感覚を意識してください。
野球肘のストレッチで気を付けるべきポイント
野球肘のストレッチで気を付けるべきポイントは、以下のとおりです。
| 項目 | 理由やリスク |
|---|---|
| 動作はゆっくり行う | 急に関節を伸ばすと筋肉や靭帯を痛める可能性があるため10〜20秒程度かけてゆっくり行う |
| 痛みの出ない範囲で行う | 無理に伸ばすと症状を悪化させることがある |
| ストレッチ後すぐに激しい動きをしない | 関節が緩んだ直後に急な投球や強い運動をすると、思わぬケガにつながる可能性がある |
| 強い痛みや腫れがあるときは控える | 腫れや鋭い痛みがある状態でストレッチを行うと症状を悪化させる可能性がある |
| 痛みが強いときは受診を検討する | 自己判断で練習を再開するのはリスクが高いため、医療機関で状態を確認する |
| 治療後やリハビリ中は医師・専門家の指示に従う | リハビリメニューにストレッチが組み込まれた際は、必ず専門家の指導のもとで行う |
野球肘のストレッチは、正しい方法で行うことで症状の改善や再発予防に役立ちます。痛みがあるときは悪化の原因になるため、注意点を守りましょう。
野球肘がストレッチだけで改善しない主なケース
野球肘がストレッチだけで改善しない主なケースは、以下のとおりです。
順番にみていきましょう。
炎症が強く続いている場合
炎症が強く残っている状態では、無理にストレッチをすると症状が悪化する可能性があります。
炎症が強いときの代表的な症状は、以下のとおりです。
- 肘が腫れたり熱をもったりしている
- 安静にしていてもズキズキと痛む
- 夜間に痛みで目が覚める
上記の際は投球を中止して安静を保ち、アイシングで炎症を落ち着かせましょう。数日〜1週間経っても痛みが軽減しないときは、医療機関を受診しましょう。
骨軟骨障害がある場合
骨軟骨障害は、とくに外側型の野球肘で見られる肘の障害です。関節軟骨の一部がはがれたり、肘の動きが制限されたりする場合があるため、ストレッチだけでの改善は難しいとされています。
初期症状がほとんどないことがありますが、投球時や投球後に肘の外側が痛む際は注意が必要です。
早期であれば投球の中止で回復するケースもあります。しかし、進行すると手術が必要になり、手術後も肘の動きや形に制限が残るケースがあります。
骨軟骨障害が疑われるときは、無理にストレッチで負荷をかけず、医療機関での評価・治療を優先しましょう。
靭帯損傷がある場合
靭帯損傷は、とくに高校生以上で見られる内側側副靭帯の損傷に多く、投球時の肘にかかる強い牽引力が原因で起こります。
内側側副靭帯を損傷した際の主な症状は、肘の内側の強い痛みや腫れ、投球時の不安定感などです。
疲労の蓄積で徐々に傷むケースと、急に断裂するケースがあり、症状によってはストレッチのみでの改善は難しいとされています。無理にストレッチをすると靭帯に負担がかかり、状態を悪化させる可能性があります。
靭帯の損傷が疑われる際は、投球を中止し医療機関での評価を優先しましょう。必要に応じてリハビリ治療で肘を補強する筋肉を鍛えたり、フォームや柔軟性の改善を行ったりします。
野球肘の治療期間
一般的な野球肘の治療期間は、以下のとおりです。
- 初期段階:半年〜1年ほどで回復するケースが多く、病巣の完全な改善には1年以上かかるケースもある
- 進行期や手術を行った場合:競技復帰までに6カ月〜1年ほどかかるケースもある
成長期である小学生〜中学生は骨や軟骨が未成熟なため、進行すると回復に時間がかかる可能性があります。
また、内側型や後方型は、投球制限と安静によって改善することが多い一方、外側型はストレッチだけでの改善が難しく、症状に応じた治療が必要なケースがあります。あくまでも目安として考え、具体的な治療方針や復帰タイミングは専門医に相談しましょう。
野球肘の治療には再生医療も選択肢の一つ
ストレッチでは改善しない野球肘の治療には再生医療も選択肢の一つです。
再生医療とは、自身の体から採取した幹細胞や血液を用いる治療法です。
主に以下の二つがあります。
- 幹細胞治療:他の細胞に変化する分化能と呼ばれる幹細胞の能力を活かした治療法
- PRP療法:血小板に含まれる成長因子などが炎症を抑える働きを活かした治療法
再生医療は基本的に入院や手術を必要としないため、以下のような方に選択肢として検討されることがあります。
- 安静やリハビリで十分な改善が得られなかった
- 早期のスポーツ復帰を目指したい
- 肘の変形や可動域の制限をできるだけ防ぎたい
- 入院や手術に抵抗がある
気になる症状が続く場合は、医師に相談しながら治療方法を検討しましょう。再生医療について詳しくは、以下のスポーツ外傷に対する再生医療に関する記事をご覧ください。
スポーツ外傷は⼿術しなくても治療できる時代です。
野球肘の予防方法
ストレッチ以外にも、以下の方法で野球肘を予防できます。
また、これらの方法は野球以外の競技に取り組む選手にも有用です。それぞれ解説するので参考にしてください。
投球回数を減らす
投球回数を減らすことで、野球肘の発症リスクを下げられます。過度な投球練習や登板は避けましょう。
ただし、チーム方針の関係上、長いイニングを投げる必要に迫られるケースもあるでしょう。その場合、十分なアイシングの実施と休養が重要です。
テニスや水泳、やり投げなどのスポーツでも、練習頻度や負荷を減らすことで予防につながります。
ウォームアップを入念におこなう
投球前のウォームアップをより入念におこなうのも重要です。たとえば、普段のメニューに加えて、「腕を上げた状態でのキャッチボール」を追加すると良いでしょう。
腕を伸ばして投球すると、腕から肩の筋肉が刺激されます。刺激が入ると、より高い柔軟性が発揮されます。
野球肘の予防では、体を柔らかくした上で投球するのが大切です。ストレッチとウォームアップで、十分な柔軟性を保ちましょう。
フォームを改善する
フォームの見直しは、野球肘の予防に役立ちます。
以下のポイントを意識しましょう。
- ストライドを縮める
- リリースポイントを一定にする
- 投球時に肘が開かないようにする
ポイントをおさえ、肘の負担軽減につなげましょう。一方で、フォームを変えると球速やコントロールに影響が出るかもしれません。その場合は指導者と、どのようなフォームを定めるか相談しましょう。
まとめ|野球肘の改善には正しいストレッチと早期対応が重要
野球肘の症状が軽度であれば、日々のストレッチや体幹・下半身の柔軟性強化が効果的です。
ただし、炎症が強いときや骨・軟骨、靭帯に障害があるときは、ストレッチだけでは症状が悪化するケースもあります。早期の医療評価や適切な治療を受け、将来の肘の形や可動域を守りましょう。
野球肘に対しては再生医療も治療の選択肢となります。野球肘の治療や再生医療について詳しく知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご覧ください。
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参考文献
(文献1)
32.野球肘予防のストレッチ|日本整形外科学会


















