慢性腰痛治療のリゾトミー、メリット・デメリットはある?医師が解説
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慢性腰痛治療のリゾトミー、メリット・デメリットはある?医師が解説
「 慢性的な 腰痛にいい治療法はないの?」「痛の治療を知りたい」このような疑問や悩みはありませんか?
慢性痛に対する治療方法として、 リゾトミーがあります。しかしリゾトミーについては情報が少なく、具体的な治療について知らない方も多いでしょう。
本記事ではリゾトミーの詳細として、適応となる腰痛や治療の方法、メリット・デメリットを解説します。腰痛の治療方法について気になる方は参考にしてください。
リゾトミーの適応
リゾトミーは長く続く治りにくい腰痛(慢性腰痛:まんせいようつう )に対する治療です。
慢性難治性腰痛はさまざまな原因がありますが、背骨の関節である椎間関節(ついかんかんせつ)の変形により増殖した知覚神経が原因となっている腰痛の場合、リゾトミーが適応になります。
ここでは椎間関節の変形による腰痛と、 リゾトミーの適応となる腰痛について詳しく解説します。
椎間関節とは?
背骨は椎骨(ついこつ)というブロックのような骨 が積み重なってできています。椎骨の背中側には、 関節突起(かんせつとっき)と呼ばれる出っ張りが上下にあります。
積み重なった上下の椎骨にある関節突起が重なってできた関節が、 椎間関節です。
背骨の動きは、この 椎間関節によって作られます。
椎間関節の変形により起こる腰痛
加齢や運動、衝撃などで繰り返し腰に負担がかかると椎間関節に変形が生じます。
椎間関節が変形すると、知覚神経と呼ばれる痛みを感じる神経が過剰に増えてしまいます。知覚神経は感覚神経とも呼ばれ、痛みを感じる神経でもあります。
上記のように知覚神経の過剰な増殖により痛みを感じやすくなってしまう状態が、慢性腰痛の原因の1つです。
知覚過敏による慢性腰痛がリゾトミーの適応
椎間関節の変形により知覚神経が過剰に増えて 、腰痛が慢性化してしまうと、コルセットや薬物療法などの保存療法では改善しない場合があります。
慢性腰痛 に対して、痛みの原因となっている知覚神経へアプローチ して痛みの改善を図るのがリゾトミーによる治療です。
リゾトミーの具体的な方法
リゾトミーとは、痛みに敏感になった知覚神経の枝が、変形した椎間関節に入り込んでいる所に対して、ラジオ波と呼ばれる高周波数で発生する熱を利用して焼いてしまいます。その結果、神経の過敏状態の改善が図られることで、 疼痛が緩和されるのです。
ラジオ波の照射には皮膚を切開する必要はなく、針のような電極を刺してレントゲンで透視しながら患部にあてます。針は鉛筆やボールペンよりも細いため、大きな傷を作ることなく治療が可能です。
もし椎間関節の変形が複数あり、複数箇所にラジオ波の照射が必要な場合でも、局所麻酔で同時に治療できます。局所麻酔下で治療が可能ですので 、短時間かつ日帰りで手術できます。
リゾトミーのメリット
リゾトミーは、 保存療法では改善されない難治性の腰痛に対して改善が期待できる点が大きなメリットです。
また治療内容に関しても以下のようなメリットがあります。
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手術の時間は短く、15分〜30分 程度で終了します。
局所麻酔による手術ですので入院の必要がなく、術後は1時間程度安静にした後、 歩いて帰宅することが可能です。
また、2mm〜5mm程度の大きさの傷(ラジオ波を照射する針を刺すときにできる傷)のみで、皮膚を切開しないため、術後に縫合する必要もありません。
複数箇所行う場合でも、上記の大きさの傷が4箇所程度で済むため体に対する負担の少ない手術です。
リゾトミーのデメリット
リゾトミーは保険が適用されない自由診療の治療です。
腰痛に対する自由診療の手術として、他にもPELD(内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術)やMEL(内視鏡下脊柱管拡大術)などの治療方法があります。
どの治療方法も自由診療だと全額自己負担になるため、治療費が高額になります。リゾトミーの治療費の相場はは60万円〜70万円 です。
また、どの病院でも治療が可能なわけではなく、日本では脊柱を専門とする一部の整形外科で実施されています。そのため、リゾトミーに 関する知識や技術を持った医師がいる施設で、自由診療でしか治療を受けられない点はデメリットです。
リゾトミーを受けるためには、治療とに必要な高額な費用 と施対応している医療機関が少ない設を探す手間 が必要な点は理解しておきましょう。
なお、リゾトミーの術後後遺症として以下のようなものがあります。
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術後後遺症として神経損傷による障害が残った場合は、再生医療(幹細胞治療)が適応となります。術後後遺症に対する再生医療(幹細胞治療)についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
まとめ・リゾトミーは難治性慢性腰痛の治療として自由診療で可能
リゾトミーは、 薬物療法やリハビリなどの保存療法では改善できなかった慢性的な腰痛の改善が期待できる手術です。
局所麻酔で手術ができ、傷も小さくて済むため体への負荷が少なく、短時間かつ日帰りで受けるらことができますれます。しかし治療を受けられる施設が少ない、自由診療のため治療費が高額になるといった点はデメリットです。
術後後遺症の治療に対しては、再生医療(幹細胞治療)が適応となります。
本記事を参考にリゾトミーに対する概要やメリット・デメリットを理解して治療を検討しましょう。
No.181
監修:医師 坂本貞範