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慢性腰痛の治療法!Rhizotomy(リゾトミー)とは

慢性腰痛の治療に!Rhizotomy(リゾトミー)とは

「腰の痛みがつらい」「慢性的な腰痛の治し方を知りたい」と思いませんか?

慢性腰痛とは、3ヶ月以上続く腰痛のことです。治るわからない慢性的な痛みは日常生活に支障をきたし、心身ともに大きなストレス をもたらします。

マッサージや 薬でもリハビリでも良くならず、ブロック治療を考えた方や実際に試された方もいるでしょう。

「 ブロック治療の効果ってすぐ切れちゃうんでしょう?」

そう思った方は、椎間関節ブロックの効果が一時的であった場合に考慮される「リゾトミー」について知っておくと良いでしょう。

本記事では、リゾトミーの概要や どのような人に有効なのか、 費用や合併症などについても説明していきます。

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リゾトミーってなに?

リゾトミー(rhizotomy)とは、腰痛に対して行われる痛みを伝える神経を遮断する治療法で、高周波熱凝固法とも呼ばれます。

高周波熱凝固法は、特定の神経をラジオ波と呼ばれる高周波電流を用いて焼き固める治療です。特に 「リゾトミー(rhizotomy)」と呼ぶ場合は椎間関節の痛みに対して行われる「facet rhizotomy」を指すことが多く、ターゲットとなる神経は腰椎の「椎間関節」を支配する脊髄神経後枝内側枝です。

もともと、腰痛はいわゆる「背骨」の構成要素である椎骨や間に挟まった椎間板、その中を通る脊髄から伸びる神経など様々な要素が関わる病態です。中でも特に椎骨同士が連結する関節である「椎間関節」由来の痛みは腰痛の大きな原因を占めます。日本国内の研究では、腰痛患者の5人に1人は椎間関節性の疼痛であると報告されているのです。

椎間関節由来の痛みに有効なのが、脊髄神経の後枝内側枝に局所麻酔薬を投与する神経ブロック(椎間関節ブロック)です。しかし、局所麻酔薬の効果は一時的で、短期間に繰り返しの投与が必要になることもあります。何度も繰り返してしまう場合、神経自体を変性させてしまうことで痛みの伝達を遮断する方法が用いられます。それがリゾトミーなのです。

リゾトミーにおいて、 痛みを伝える神経だけをピンポイントで変性させるため使われるのは特殊な針です。針の先端部以外は絶縁体で覆われ、針先のみ金属が露出しています。X線透視画像と患者様の症状を確認しながら、この針先をターゲットの神経のすぐ近くに移動します 。そして、針端の金属部分から高周波のラジオ波電流を流します 。

ラジオ波電流は神経組織のイオン分子を高速で振動させ、熱を生じます。こうして高温になった神経の変性が起こり、痛み情報が脳へと伝達されなくなるのです。

リゾトミーが有効なのはどんな人?

腰椎の椎間関節ブロックが一時的に効くが、何度も痛みが繰り返してしまい良くならない人に対して適応があります。リゾトミーは、ピンポイントではあるにせよ神経を変性させてしまう処置です。あらかじめ「特定の椎間関節の痛み」であると診断されていることが前提となります。そのため、腰椎関節ブロックが効くことがわかっている必要があるのです。

リゾトミーの費用は?保険は利くの?

リゾトミー(高周波熱凝固法を 用いた腰椎後枝内側枝神経ブロック)の費用は、 公的健康保険の対象です。

手技にかかる費用としては保険点数で340点、つまり3400円が算定されます。1割負担の方では340円、3割負担の方では1020円の窓口負担です。

ただし、各種診察や検査、ほかに処方された薬剤などについての諸費用が加算されるため、実際にはもう少し高額になります。また、保険を使うためにはさまざまな制約があります。

一方、自由診療で行なっている施設もあります。自由診療の場合は健康保険を使用する場合と異なり、制約がありません。自由診療では医療機関側が価格を設定できるため、それぞれ費用が異なります。30~60万円程度が相場ですが、詳細は医療機関にお問い合わせください。

リゾトミーの合併症ってあるの?

リゾトミーは比較的安全とされていますが、危険性はゼロではありません。針を血管や神経に刺してしまい出血や神経損傷が起こる、針を刺したところに感染が起こるなどが主 です。熱凝固を行う際に穿刺部の痛みを生じることがあります 。また、体内に埋め込まれた金属があると火傷の恐れがあるため、適応外になります。 たとえばペースメーカーや心臓のステント、手術で用いられる釘などがある場合などが挙げられます。

また、非常に稀な合併症に、脊髄梗塞が挙げられます。脊髄の栄養血管が何らかの理由で虚血に陥ることで起こる合併症です。梗塞を起こした神経が支配する部分が痛み、筋力低下や感覚が障害されます。なぜ起こるのかはわかっていません。過去には頚椎後枝内側枝の熱凝固療法時に脊髄梗塞を起こした例が報告されています。

このような合併症で後々まで問題になりやすいのが神経の障害です。神経が傷つくと、新たな痛みやしびれ・麻痺などの後遺症に悩まされることになります。従来はこれらに対してできることは対症療法のみでした。

しかし、最近では最先端の再生医療である幹細胞治療が神経の障害にも有効である可能性が示されています。幹細胞という万能細胞を投与することで、傷ついた神経の再生を促すのです。幹細胞治療を受けることで、神経障害により不自由になった生活を元どおりに戻すことができる人が増えています。

▶こちらの動画でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。

リゾトミーの弱点とは?これからの可能性について

リゾトミーは神経を変性させるため、効果は永続的と考えるかもしれません。 実際は、しっかりと焼き切れていないと神経が再生して痛みが繰り返し てしまうため、長期に効果が続くわけではありません。

しかし、新たな手法により、この弱点をカバーできるかもしれません。それはPELD(Percutaneous Endoscopic Lumbar Discectomy :経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術)という最先端のヘルニア治療で使われる技術を応用した「内視鏡的リゾトミー」です。

PELDでは7mm程度のとても細い筒状の内視鏡を用いてヘルニアの手術を行います。この内視鏡を、リゾトミーで焼く神経を定めるのに使うのが、内視鏡的リゾトミーです。内視鏡で実際に神経を確かめるため、より確実な神経の焼灼ができます。

実際に海外の研究では、椎間関節の内視鏡的リゾトミーは、従来の透視下で行う方法よりも効果がある期間が長かったという報告がされています。日本で内視鏡的リゾトミーを行なっている施設はまだ少ないのが現状ですが、今後普及すればより確実に腰痛を治療することができるようになるでしょう。

慢性腰痛について、気になるQ&A

Q:腰痛は温めるのと冷やすのではどちらが良いの?

A:慢性腰痛でははっきりとどちらが良いということは分かりません。ただし、急性・亜急性腰痛では温熱療法が痛みの緩和に良い可能性が示されています。ただし、やりすぎは禁物です。皮膚が赤くならない程度にしましょう。

Q:腰痛に対する鍼灸やあん摩・マッサージ・ヨガなどの効果は?

A:これらは効果のほどを確かめる研究が難しく、医学的に効果があるかをはっきりと証明することが難しい部分があります。研究の多くは海外からの情報で、日本の実情と異なる可能性も否定できません。そのため、医療者としてこれらの効果に対して言及することは困難です。なお、鍼灸については公的健康保険の対象になることがありますが、医師の同意が必要です。

Q:リゾトミーは内科?整形外科?どこの病院で受けることができるの?

A:多くはペインクリニック専門医という痛みの緩和を行う医師が行なっています。また、一部の整形外科でも行なっていることがあります。リゾトミーだけでなく、「高周波熱凝固法」や「ラジオ波焼灼脱神経化」など様々な呼び名で紹介されているため、お探しの際にはご注意ください。

まとめ・慢性腰痛の治療法!Rhizotomy(リゾトミー)とは

リゾトミーについて、どのような治療なのか、またリスクや今後の可能性について解説しました。

腰痛の方全員にリゾトミーが必要なわけではありません。しかし、条件が合えば、長く続く辛い腰痛から解放される可能性がある治療と言えるでしょう。

当然ですが、どのような治療法にもリスクは伴います。治療を受ける前にはしっかりとした情報収集と、医師との相談が必要です。

なお、当院ではリゾトミーの術後後遺症に対する幹細胞治療を行っております。術後後遺症でお悩みであれば、まずはカウンセリングを受けてみませんか?

 

No.182

監修:医師 坂本貞範

脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。

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参考文献

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