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大腸癌手術後の後遺症・合併症について解説!手術後の生活の注意点と仕事の復帰目安

大腸癌の手術を終えた後、多くの方が「これからの生活はどうなるのだろう」「再発のリスクは?」と不安を抱きます。
実際には、排便リズムの乱れや体力低下、合併症のリスクなど、手術後ならではの課題があります。
しかし、手術後に起こりやすい症状や生活上の工夫を理解しておけば、不安を軽減し安心して回復へと進むことが可能です。
本記事では、大腸癌手術後の後遺症や合併症による体の変化、そして日常生活で取り入れたい工夫についてわかりやすく解説します。
また、大腸癌手術後の合併症や後遺症に対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。
手術後の体調変化や生活面でのお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に関心のある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお気軽にお問い合わせください。
目次
大腸癌手術後の体の変化
大腸癌の手術後は、身体的負担で体力が落ちたり、腸の動きが一時的に乱れて排便リズムが変化するなど、体にさまざまな変化が起こります。
さらに、回復過程での不安や気持ちの揺れから、精神的な負担を感じる方も少なくありません。
ここでは、大腸癌手術後に起こる主な3つの体の変化について解説します。
体力の低下
大腸癌手術後は、体力が落ちて「少し歩くだけで疲れる」「家事が思ったよりもつらい」と感じることが多くあります。
体力の回復には個人差がありますが、退院後すぐに以前のように動ける人は少なく、日常生活に無理なく戻れるようになるまでには数週間から数カ月かかるといわれています。
無理をせず、短い散歩や軽い活動から少しずつ体を慣らしていくことが、焦らず回復を進めるコツです。
担当の医師やリハビリの専門家と相談しながら、ゆっくりと生活のリズムを取り戻していきましょう。
排便リズムや便の状態の変化
大腸癌の手術後、腸の一部を切除した影響から、排便リズムや便の状態が大きく変わる場合があります。
下痢や便秘、頻便、残便感、ガスがたまりやすい状態、お腹の張りなどが起こりやすく、手術後数週間から数カ月間は排便の不安定さを感じる方が多いです。
これは腸が新しい状態に慣れるまでの自然な経過で、徐々に落ち着いてくることがほとんどです。
また、症状を和らげるための工夫として、水分補給や消化に良い食事、腹部マッサージなども役立ちます。
ただし、排便やガスが全く出ない、強い腹痛や嘔気、血便などの症状がみられる場合は、腸閉塞や他の合併症の可能性があるため、速やかに医療機関への相談が必要です。
心理的な不安や落ち込み
大腸癌の手術後、体の回復と同時に「再発の不安」や「これからの生活がどうなるか」といった将来への不安を抱える方が多く、気持ちが沈んだり落ち込んだりする場合があります。
これは「手術後うつ」と呼ばれることもあり、誰にでも起こりうる自然な反応です。
沈んだ気持ちをそのままにしておくと、眠れなかったり、食欲が減るなど、普段の生活や対人関係にも影響を及ぼす可能性があるため、早めの対処が大切です。
一人で抱え込まずに家族や友人、医療スタッフなど、信頼できる相手に気持ちを話すだけでも心の負担が軽くなる場合もあるため、必要に応じて、精神的なサポートを受けることを検討しましょう。
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大腸癌手術後に起こりやすい3つの後遺症
大腸癌手術後、長期的に続く後遺症が起こることがあります。
代表的な後遺症として、次の3つが挙げられます。
- 排尿・性機能への影響
- 排便障害
- 人工肛門(ストーマ)造設による生活の変化
それぞれの後遺症について、詳しくみていきましょう。
排尿・性機能への影響
大腸癌手術や治療の影響により、以下のような排尿や性機能に関する症状が現れる場合があります。
- 排尿がスムーズにできない
- 尿意を感じにくい・残尿感が続く
- 勃起機能の低下や射精の変化
- 性欲の減退
上記症状は、時間の経過とともに回復するケースが多いですが、場合によっては薬やカテーテルの使用が必要になることもあります。
また、症状の程度や回復の速さは個人差が大きいため、手術前から医師と十分に相談し、必要に応じて泌尿器科など専門医のサポートを受けることが大切です。
排便障害
大腸癌の手術によって、大腸の一部を切除したり、手術の影響で腸や臓器同士がくっつく「癒着」が生じたりすると、長期的な排便障害が残る場合があります。
代表的な症状は、次の3つです。
- 便失禁
- 頻便
- 残便感
排便障害は腸の切除範囲や神経への影響によって起こりやすく、時間がたっても改善しにくいケースがあります。
生活の質に大きく関わるため、上記のような症状が続く場合は我慢せず医師に相談し、薬の使用や骨盤底筋トレーニングなどのリハビリを取り入れることが大切です。
人工肛門(ストーマ)造設による生活の変化
人工肛門(ストーマ)とは、手術で腸の一部をお腹の表面に出し、そこから便を排泄できるようにした出口のことです。
腸の切除範囲が大きい場合や、縫合部を安静に保つ必要がある場合に、一時的または永久的に造設されます。
ストーマを造設すると、専用の袋で便を受け止める排便方法になるため、生活習慣が大きく変わります。
最初は管理や外出に不安を感じる方も多いですが、正しいケア方法を身につければ、入浴や旅行、仕事など日常生活をこれまで通り送ることも可能です。
また、皮膚のトラブル予防や、身体イメージの変化に伴う心理的な負担への対応も大切です。
専門の看護師やサポートを活用すると、安心してストーマと向き合う生活を続けることができます。
大腸癌手術後に注意すべき3つの合併症
大腸癌の手術後には、後遺症のほかにも合併症が起こることがあります。
ここでは、大腸癌手術後に起こりうる以下3つの合併症について解説します。
- 感染症や創部トラブル
- 縫合不全
- 腸閉塞・イレウス
それぞれ、詳しくみていきましょう。
感染症や創部トラブル
大腸癌手術後は、縫合部分(創部)やお腹の内部で細菌が感染を引き起こし、次のような症状が現れることがあります。
- 発熱
- 傷口の赤みや強い痛み
- 膿(うみ)が出る
- 腹部の張りや痛みが続く
上記の症状がみられたら、創部感染や腹腔内感染を疑う必要があります。
こうした症状を放置すると、炎症が広がったり、全身状態が悪化したりする可能性があるため、速やかに医療機関に相談しましょう。
縫合不全
大腸癌の手術では、癌を含む腸の一部を切除したあとに、残った腸同士をつなぎ合わせる「吻合(ふんごう)」 という処置を行います。
この腸管を再びつなぎ合わせた部分(つなぎ目)がうまくくっつかず、接合部が開いてしまう状態を「縫合不全」と言います。
縫合不全になると腹腔内で炎症や感染が起こり、次のような症状が現れ、重症化すると腹膜炎や敗血症など命に関わる合併症を引き起こす可能性もあります。
- 発熱
- 吐き気や腹痛
- 腹水(お腹の中の水)
- 下痢や下血
縫合不全は早期発見と治療が重要なため、違和感や異変を感じた場合はすぐに医師の診察が必要です。
腸閉塞・イレウス
腸閉塞とは、腸の中で物理的なつまりが起こることで、食べ物やガスが通れなくなる状態を指します。
一方で、イレウスは腸の動きが麻痺したり痙攣(けいれん)し、内容物の通過がうまくいかない「機能的な通り道の障害」です。
どちらの場合も、次のような症状が現れます。
- 激しい腹痛
- 吐き気・嘔吐
- お腹の張り
- 便やガスが全く出ない
上記症状は放置すると重篤になる可能性があるため、早めの医療機関への受診が必要です。
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大腸癌手術後の生活で気をつけたいこと
大腸癌手術後は、体力や腸の働きが少しずつ回復していくため、生活の中でいくつかの工夫が必要になります。
ここでは、運動、食事、社会復帰の3つの視点から大腸癌手術後の生活について解説します。
運動とリハビリの進め方
大腸癌の手術後すぐは体力が落ちているため、無理に動くと体に負担がかかります。
まずはベッドの上で体を動かすところから始め、退院後は短時間の散歩など軽い運動を取り入れると良いでしょう。
目安としては、手術から1カ月ほど経ち、医師の許可が得られればウォーキングなどの有酸素運動を少しずつ再開できるケースが多いです。
無理のない範囲での継続が、体力回復や気分のリフレッシュにつながります。
食事の工夫と栄養管理
大腸の一部を切除すると、消化や排便のリズムが乱れやすくなります。
そのため、消化に良い食材を中心に選び、油っこい料理や香辛料の強い食品は控えることが大切です。
一度にたくさん食べるのではなく、少量を数回に分けて食べる「少量頻回食」を意識すると、腸への負担を軽減できます。
また、たんぱく質やビタミンなど体の回復に必要な栄養素をバランスよく摂ることも重要です。
仕事や日常生活への復帰目安
大腸癌手術後は、体力や体調が安定するまでに時間がかかるため、社会復帰にはある程度の時間が必要です。
一般的には手術後1〜3カ月ほどで職場や日常生活に少しずつ復帰できる人が多いですが、最初のうちは短時間勤務や在宅勤務を取り入れるなど、無理をしないことが大切です。
また、肉体労働や長時間の勤務は体に負担をかけやすいため、医師の判断を参考にしながら段階的に生活を整えていきましょう。
大腸癌手術後の予後・再発率について
大腸癌の手術後の予後や再発率は、癌の進行度(ステージ)によって大きく異なります。
大腸癌の再発は、手術後の経過の中でもとくに注意が必要で、ステージが早いほど再発のリスクは低く、進行している場合ほど再発や転移の可能性が高まります。
以下表は、5年生存率や手術後再発率をステージごとにまとめたものです。(文献1,2,3)
ステージ | 5年生存率の目安 | 手術後再発率の目安 |
---|---|---|
0期 (上皮内がん・粘膜内がん) |
非常に高く、ほぼ再発なし | ごくわずか (再発は極めて稀) |
I期 | 約90〜95% | 約3~6%程度 |
II期 | 約80~85% | 約13~15% |
III期 | 約60~70%程度 | 約30%前後 |
IV期 (遠隔転移あり) |
大幅に低下 (進行具合や治療内容によって大きな差がある) |
再発率・転移の可能性が高い (統計値はさらにばらつきがある) |
※数値は過去の臨床研究やがん情報サイトによる平均値であり、実際のリスクは年齢・癌の場所(結腸か直腸かなど)、手術後の治療内容、遺伝的要因、術中の状況などによって個人差があります。
統計的には、再発の8〜9割が手術後3年以内に起こり、およそ95%は手術後5年以内に確認されているため、手術後5年間の定期的な経過観察が非常に重要とされています。(文献4)
経過観察は再発や転移を早期に見つけるため、腫瘍マーカーを調べる血液検査やCT・MRIなどの画像検査、大腸内視鏡検査を組み合わせて行います。
再発が見つかった場合でも、その広がり方や部位によっては再手術や化学療法によって治癒や長期的なコントロールを目指せる可能性があります。
再発リスクを少しでも減らすためには、手術後の生活習慣改善や必要に応じた追加治療を取り入れることが大切です。
大腸癌手術後の再発予防と長期的なケア
大腸癌の手術後は、生活習慣の見直しや家族や支援サービスの利用、そして定期的な検査による経過観察が予後を左右します。
ここでは、再発予防と安心して生活を送るための具体的なポイントを紹介します。
生活習慣の改善
大腸癌手術後の再発リスクを下げるためには、日々の生活習慣を整えることが重要です。
野菜や魚を中心としたバランスの良い食事を心がけ、脂っこい食べ物や加工肉の摂取は控えめにしましょう。
また、禁煙も癌の再発予防に直結する大切な習慣であり、アルコールのとりすぎにも注意が必要です。
さらに、無理のない範囲でウォーキングなどの適度な運動を続けることは、体力回復だけでなく免疫力の維持にも役立ちます。
免疫細胞療法
免疫細胞療法は、自分の免疫細胞を活性化させてガン細胞を攻撃する力を高める治療法で、癌の再発予防や補助療法の一つとして注目されています。
手術や抗がん剤治療と併用されることもあり、副作用が比較的少ない点が特徴です。
まだ新しい治療法ではありますが、再発への不安を抱える方にとっては、今後の治療選択肢の一つとなり得ます。
詳細は専門の医療機関で相談し、適応があるかどうかの確認が大切です。

再⽣医療で免疫⼒を⾼めることができる時代です。
家族や福祉などサポート体制の活用
大腸癌の手術後は、体調や気持ちの面で不安が続くこともあり、家族や身近な人のサポートが非常に大切です。
全国に設置されている「がん相談支援センター」では、医療や生活に関する相談を無料で受けられるため、必要に応じて活用しましょう。
また、福祉サービスや地域のサポート団体を利用することで、経済面や生活面の負担の軽減も可能です。
定期的な検査・通院の重要性
大腸癌手術後は、再発を早期に見つけるために定期的な検査と通院が欠かせません。
検査の頻度は、癌のステージや受けた治療内容によって異なりますが、手術後5年間は特に丁寧な経過観察が行われます。
医師の診察を定期的に受ける習慣が、手術後を安心して過ごすことにつながります。
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まとめ|大腸癌手術後も笑顔で毎日を送れる生活を
大腸癌の手術後は、体力の低下や排便の乱れ、合併症や後遺症など、さまざまな変化に直面します。
しかし、手術後に起こりやすい症状や注意点を知っておけば、不安を必要以上に抱えずに過ごすことができます。
食生活や運動など日常の工夫を取り入れることは、体の回復を促し、再発のリスク軽減にもつながります。
また、定期的な検査や通院を続け、少しでも気になる症状がみられた場合は医師へ早めに相談するのも、安心した生活を送るための大切なポイントです。
前向きに工夫を重ねながら、一日一日を大切に過ごしていきましょう。
(文献1)
大腸がん(結腸がん・直腸がん)|国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ
(文献2)
7.大腸癌手術後について|日本臨床外科学会