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大腸がんの原因は?なりやすい人の特徴や症状・検査・治療方法を解説

大腸がんの原因
公開日: 2025.04.30 更新日: 2025.11.29

大腸がんは、部位別のがん発生率で男女どちらも上位に位置しており、女性ではがんによる死亡数が最も多い病気です。(文献1

とくに、初期には自覚症状がほとんどないため発見が遅れやすく、進行すると治療の選択肢が限られてしまいます。

自分や家族の健康を守るためにも、大腸がんのリスクを正しく知り、早期発見・予防につなげていきましょう。

本記事では、大腸がんの主な原因や発症リスクの高い人の特徴、見逃しやすい症状、検査方法などを詳しく解説しますので、参考にしてみてください。

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目次

大腸がんの原因は何?なりやすい人の特徴

大腸がんになる可能性を高める要因には、ストレス・食生活・年齢など複数の特徴的な背景があります。さまざまな要因が重なる人ほどリスクが高まるため、早めに把握して改善していくことが大切です。

ここでは、大腸がんの原因をひとつずつ掘り下げて解説します。

ストレス|直腸がんの発症率に影響

強い心理的ストレスは、直腸がんの発症リスクを高める可能性があります。ストレスは免疫機能を低下させ、喫煙・飲酒・暴飲暴食といった生活習慣の悪化を招く場合があるのです。

日本人約6万人を対象にした追跡調査では、「心理的ストレスが高い人ほど直腸がんの発症率に影響があった」と報告されています。(文献2

また、女性に限定した別の研究では、ストレスを自覚している人の大腸がんによる死亡リスクが、ストレスを感じていない人に比べて 1.64倍に上昇したと報告されています。(文献3

ストレスだけで大腸がんになるわけではありませんが、発症リスクを間接的に押し上げる一因です。趣味に没頭する時間を設けるなど、自身に合ったストレス管理を心がけると良いでしょう。

食生活|野菜や食物繊維が不足しがちな食事

近年、日本を含む先進国では大腸がんの発症率が上昇傾向にあり、50歳未満の比較的若い世代での大腸がん増加が世界的に報告されています。

食生活の欧米化が背景にあると考えられており、肉類(とくに赤身肉や加工肉)中心で野菜や食物繊維が不足しがちな食事は、大腸がんのリスクを高める可能性があるわけです。

若年層での発症が増えている傾向を食い止めるためにも、日頃の食習慣を見直し、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

発症年齢|高齢になるほど高い罹患率

国立がん研究センターの統計では、大腸がんの罹患率は40代から徐々に増加し、年齢を重ねるごとに罹患率は高くなる傾向を示しています。(文献5

自治体などの検診が40歳から始まることも、40代以降に発見される一因と考えられます。

しかし、数は多くないものの、20代や30代で発症するケースもあるため、若いから無関係とはいえません。腹部の不調が続くなど、気になる症状があれば、30代から検査を受けておきましょう。

なお、大腸がんは年齢によって進行速度に違いがあるといわれます。詳しくは、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

運動不足|肥満による影響

運動の少なさや肥満傾向も、大腸がんのリスクを高めます。身体をあまり動かさない生活が続くと腸の働きが鈍くなり、腸内に有害物質が停滞しやすくなるのです。

肥満そのものもホルモンバランスの乱れや慢性炎症を通じて、がん発生の要因になると考えられており、大腸がんの発生率が高いことが報告されています。(文献6

喫煙と飲酒|さまざまなガンのリスク

喫煙習慣や過度の飲酒も、大腸がんのリスクを上げると明らかになっています。

喫煙といえば肺がんの原因として知られていますが、たばこに含まれる有害物質が血流を通じて全身に巡るため、大腸の細胞にも悪影響を及ぼすわけです。

国立がん研究センターの研究によると、喫煙者は非喫煙者に比べ大腸がんの発生率が高い傾向が認められています。(文献7

また、アルコールと体内で代謝されてできるアセトアルデヒドには発がん性があり、大量の飲酒習慣は大腸がんの危険性を高めるため注意が必要です。日常的にタバコやお酒を嗜む方は、大腸がんを含むさまざまながん予防のためにも、禁煙・節酒を意識しましょう。

遺伝的要因|家族の発症歴との関連

大腸がんには、遺伝的な要因も一部存在します。家族性大腸腺腫症やリンチ症候群といった遺伝性疾患のある家系では、若いうちから大腸がんを発症する率が高いとされています。

また、遺伝的要因とは別に、炎症性腸疾患と総称される難治性の腸の病気(潰瘍性大腸炎やクローン病など)を患っている人も要注意です。大腸に慢性的な炎症がある状態が続くため、大腸がんの発生率が上がることがわかっています。(文献8

とくに、家族歴がある方や腸の持病がある方は、定期検診を欠かさず早期発見に努めましょう。

高身長|大腸がん・結腸がんのリスクが高い

高身長の人は、大腸がんや結腸がんのリスクが高くなることが明らかになっています。成長に関与するホルモンや体内の細胞分裂の頻度などが関連していると考えられています。

国立がん研究センターの疫学研究によると、最も身長が高い群(男性170cm以上、女性157cm以上)は、最も低い群(男性160cm未満、女性148cm未満)と比較して、大腸がん全体のリスクが男性で1.23倍、女性で1.21倍と報告しています。(文献13

また、遠位結腸がんでは、女性で1.35倍と高い傾向が示されました。身長は変えられませんが、定期的に検診を受けるなど、予防的行動を取ることが重要です。

炎症性腸疾患|長期間炎症が続くと大腸がんを合併する

炎症性腸疾患(IBD)を長期間患っている人は、大腸がんを合併するリスクが高まります。

潰瘍性大腸炎やクローン病など、慢性的に腸管に炎症が生じる病気では、腸粘膜の細胞が繰り返し傷つけられ、遺伝子変異が蓄積してがん化の可能性が高まるのです。

症状が安定していても、自己判断で治療を中断せず、医師の管理のもと継続的に炎症を抑えていきましょう。

コリバクチン毒素|若い人の大腸がん発症要因の可能性

近年の研究で、大腸内の一部の腸内細菌が産生する「コリバクチン」という毒素が、若年層の大腸がん発症と関係している可能性が示されました。

コリバクチンはDNAを損傷する性質があり、大腸がん初期段階で見られる遺伝子変異「APC変異」の一部が、コリバクチンに由来することが明らかになっているのです。

国際共同研究では、50歳未満の若年性大腸がん患者に、コリバクチン毒素による特徴的な変異パターンがあると報告されました。(文献14

若年層のがん発症は生活習慣だけでなく、腸内環境や微生物との関連も強く示唆されており、今後の予防や治療法開発に大きな影響を与えるとされています。(文献14

大腸がんを早期発見するための2つのポイント

大腸がんは、早期のうちに発見できれば高い確率で治癒が望めます。ただし、初期段階では症状がほとんど出ないため、発見が遅れるケースも少なくありません。

ここでは、大腸がんを早期発見するための2つのポイントを解説します。

初期症状に該当するかチェックする

大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどなく、少し進行してからようやく異変に気づくケースがあります。(文献9)。

以下に、大腸がんの代表的な症状をまとめたので、思い当たるものがないかチェックしてみましょう。

初期症状 チェックポイント
便に血が混じる、または便の表面に血が付着する

血便・下血と呼ばれる症状です。大腸がんが進行すると腸管内で出血が起こり、排泄物に鮮紅色もしくは暗赤色の血液が混ざることがあります。

痔など良性疾患でも起こる症状ですが注意が必要です。

貧血の症状が出る

大腸がんからの出血が断続的に続くと慢性的な貧血状態になります。

立ちくらみやめまい、動悸・息切れ、顔色の悪さなど貧血のサインが現れることがあります。

便通の変化(下痢や便秘を繰り返す)や便の形状変化

腸管が狭くなるために便秘と下痢を交互に繰り返したり、便が細くなったりする場合があります。

また常に残便感(出し切れていない感じ)があるのも特徴です。

お腹の張りや痛み

腸にガスや便が溜まりやすくなることで腹部膨満感を感じたり、腫瘍が大きくなるとお腹が痛くなることもあります。

進行した場合、腸閉塞(腸詰まり)を起こして激しい腹痛や嘔吐を引き起こすこともあります。

頻度が高いのは血便や下血ですが、痔など良性の病気でも起こり得るため、自己判断して放置してしまう例も少なくありません。

上記のような症状に心当たりがある場合は、お早めに消化器科・胃腸科・肛門科など専門医を受診しましょう。

大腸がんの初期症状については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

定期的に健康診断を受ける

大腸がんを早期発見するには、自覚症状だけに頼らず、定期的に大腸がん検診を受けることが重要です。

日本では、40歳以上の男女に対し、年に1回の大腸がん検診受診が推奨されています。(文献9

市区町村によっては、集団検診や職場健診で便潜血検査を実施しており、多くの場合費用の一部または全額が公費負担です。

大腸がん検診は主に問診と便潜血検査で、痛みもなく短時間で終わります。

手軽に受けられる検査なので、忙しくて時間がない方も年に一度はスケジュールを確保して受診しましょう。

大腸がんの原因になりやすい食べ物|男性・女性

特定の食べ物の摂取は大腸がん、とくに結腸がんの発症リスクに影響を及ぼすことが報告されています。

なかでも、赤肉(牛肉や豚肉)や肉類全体の摂取量が多いと、性別によって異なる影響をもたらす可能性があるため注意が必要です。

国立がん研究センターによると、女性で赤肉を1日あたり約80g以上食べているグループでは、結腸がんのリスクが高まる傾向が認められました。

一方、男性では、肉類全体の摂取量が1日約100g以上のグループにおいて、結腸がんのリスク上昇が確認されています。

なお、ハムやソーセージなどの加工肉については、日本人の一般的な摂取量の範囲内では男女ともに、統計的に有意な大腸がんリスクの上昇は見られなかったという結果も報告されています。(文献15

大腸がんのリスクを下げる5つの予防方法

生活習慣の影響が大きい大腸がんは、日々の習慣を改善すると予防効果が期待できます。

日常生活で取り組める大腸がん予防策を解説するので、できることから取り組んでみましょう。

ストレスを適切にコントロールする

ストレスは、大腸がんの間接的なリスクとなりうるため、上手に付き合っていかなければなりません。

心身の健康を保つには、まず十分な睡眠時間を確保し、生活リズムを整えるのが基本です。

また、自身に合ったストレス解消法を日常生活に取り入れるのも一つの方法です。

たとえば、以下のようなものが挙げられます。

  • ウォーキングやストレッチなどの軽い運動
  • 読書や音楽鑑賞といった趣味の時間
  • 親しい友人や家族との会話

すべてを完璧におこなう必要はないので、無理のない範囲で自分が心地よいと感じる方法を見つけてみましょう。

食物繊維を十分に摂る

食習慣の見直しは、大腸がん予防の柱となります。

まず、食物繊維を十分に摂取するよう心がけましょう。

野菜や果物、海藻、豆類、全粒穀物(玄米や全粒パンなど)には食物繊維が豊富に含まれており、食物繊維の摂取量が多い人ほど大腸がんの発症リスクが16〜24%低いとの研究結果も報告されています。(文献4

日々の食事を見直し、大腸がんになりにくい食生活を意識しましょう。

運動習慣を身につける

定期的な運動習慣は、大腸がんのリスクを低減させる上で役立つと考えられています。

運動によって腸の動きが活発化し、便に含まれる有害物質が腸の粘膜に接触する時間を短くできるのが理由です。

実際に運動習慣がある人では、大腸がんの発症リスクが低下するとの報告もあります。(文献6

また、運動は肥満の解消や適正体重の維持にもつながります。

肥満はリスク要因のひとつであり、とくに糖尿病の人は大腸がんのリスクが1.4倍高まるとのデータも示されています。(文献4

まずは、毎日30分程度のウォーキングなど、継続しやすいものから始めてみましょう。

禁煙する

タバコを吸う人は、禁煙しましょう。

喫煙は、大腸がんを含むすべてのがんのリスクを高める最大要因のひとつです。(文献7

タールやニコチンなどタバコに含まれる有害物質は、吸い込んだ肺だけでなく、血液を介して大腸の粘膜にも届き、細胞を傷つけDNAにダメージを与えます。

禁煙によって肺がんはもちろん、大腸がんやその他のがんになる確率も時間とともに減少していくことがわかっています。(文献10

禁煙開始直後はストレスを感じるかもしれませんが、禁煙外来の活用やニコチンパッチ・ガムなど補助剤の利用も有効です。

がんにならない健康な体づくりの一環として、ぜひ禁煙にチャレンジしてみてください。

飲酒は適量を心がける

お酒を嗜む方は、飲みすぎに注意しましょう。

過度の飲酒習慣は、大腸がんのリスクを高めます。(文献7

一般的に節度ある適量の目安は、ビール中瓶1本または日本酒1合程度です。

適量を超える連日の飲酒は控え、飲む頻度も週に2日は休肝日を設けることが推奨されています。

また、お酒以外のリラックス法を見つけ、飲酒量を徐々に減らす努力が大切です。

適切な飲酒量の管理は大腸がんのみならず、肝臓や膵臓など他の臓器のがんにも関係していきます。

健康を維持するためにも、飲酒量には十分に注意しましょう。

大腸がんの主な症状

大腸がんは初期段階では目立った自覚症状がなく、進行するにつれてさまざまな症状が現れます。

ここでは、大腸がんの主な症状を見ていきましょう。

血便

大腸がんが進行すると、腫瘍部からの出血により便に血が混じる「血便」が起こる場合があります。

肛門に近い直腸がんは、鮮やかな赤色の血が便に見えることが多いほか、結腸のがんでは便と混ざって肉眼では気付きにくい場合があります。

出血が続くと慢性的な貧血につながるため、痔と判断せず早めに検査を受けましょう。

出血だけでがんと確定できるわけではないですが、便に血が付着する・色が変わるなどの異変があるなら要注意です。

便秘・下痢

大腸がんの腫瘍が大腸の内腔(中の空間)を狭めると、排便のリズムが乱れ、便秘と下痢を繰り返す可能性があります。

また、便が細くなったり、コロコロした便、残便感(排便後もまだ便が残っているような感じ)も併発します。

便通の異常は、消化器の他の疾患やホルモン異常でも起こり得るため、専門医に評価してもらうことが重要です。

大腸がんと便の関係については、以下の記事でも詳しく解説しています。

体重減少

大腸がんが進行すると、腸を通過する便の流れが妨げられ、食事量が減少したり、がん細胞から分泌される物質により代謝が変化したりして、体重が減少する場合があります。

食事や運動量に大きな変化がないにもかかわらず、痩せてきた場合は、早めに検査を受けましょう。

貧血

大腸がんによって持続的に出血したり、食欲不振・栄養不良が続いたりすると、鉄欠乏性貧血を伴うケースがあります。

とくに、血便と併発してめまい・動悸・息切れなどの症状が出た場合には、がんの可能性を含めた精査が必要です。

貧血とひと口にいっても、原因は多岐にわたるため、自分で判断せず医師に相談しましょう。

お腹のはり・しこり

腫瘍が大きくなって腸内で便やガスの通過が悪くなると、お腹の張り(腹部膨満感)や違和感が現れるのが特徴です。比較的進行した段階では、腹部を触った際にしこりを感じる場合もあります。

なかでも、右側大腸(盲腸・上行結腸)にがんが出来ると自覚症状が出にくく、腹部の張りや貧血をきっかけに発見されるケースも少なくありません。

お腹が張る・しこりがあるという違和感があれば、早めに受診しましょう。

大腸がんの症状については、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

大腸がんの検査方法

大腸がんの早期発見には、定期的な検査が不可欠です。

ここでは、大腸がんで多くの医療機関が採用している代表的な検査方法を見ていきましょう。

便潜血検査

便潜血検査は、便の中に肉眼では見えない微量の血液が含まれていないかを調べる検査です。

大腸がんやポリープなどの病変があると、腸内でわずかな出血を起こし、便に混ざる場合があります。便潜血検査では、専用の試薬を使って血液の痕跡を化学的に検出可能です。

検査方法は、自宅で便を少量採取し、検査キットに塗布して提出します。

検査の結果、「陽性(血液反応あり)」であっても、必ずしも大腸がんとは限りません。痔や月経血の混入などによる「偽陽性」の可能性もあるため、陽性となった場合でも落ち着いて精密検査(大腸内視鏡など)を受けましょう。(文献9

また、「陰性」だからといっても完全に安心とは限らず、ごく初期のがんが見逃されているケースがあります。年1回は定期的に便潜血検査を受け、早期発見に努めていきましょう。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査では、肛門から細長い内視鏡(先端にカメラの付いた管)を挿入し、大腸内の粘膜を直接観察します。

便潜血検査よりも精度が高く、大腸がんの確定診断や早期の病変発見に有効です。

検査前日から専用の下剤を服用して腸内を洗浄し、当日は腸に空気や水を入れてふくらませながら、腸壁のすみずみまで確認します。

がんが疑われる場合や便潜血検査が陽性だった場合に実施されることが多く、医師が検査中にポリープを発見すれば、その場で切除することも可能です。(文献9

採取した組織は、病理検査で詳しく分析され、良性か悪性かを診断します。

最近では鎮静剤を使用し、眠った状態で検査を受けられる医療機関も多く、苦痛を感じにくい工夫が進んでいます。

大腸内視鏡検査は半日から1日かかる場合もありますが、がんの早期発見と同時に治療もできる点で有用です。

なお、症状が強い場合は、便潜血を待たずに直接内視鏡検査を行うケースもあります。

大腸がんと大腸ポリープの違いについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

大腸がんの治療方法

大腸がんの治療は、がんの進行度や体の状態に応じて、以下の4つの方法があります。

  • 内視鏡治療
  • 薬物療法(化学療法)
  • 放射線治療
  • 手術療法
  • 免疫療法
  • 再生医療

では、それぞれの治療法について詳しく見ていきましょう。

内視鏡治療

内視鏡治療は、がんが腸の粘膜内にとどまっているような早い段階(ステージ0〜I期)で発見された場合に選択される治療法です。

お腹を切る必要がなく、肛門から内視鏡(カメラ)を挿入し、モニターで確認しながらがんやポリープを切除します。

体への負担が少ないため、入院期間も2〜3日程度で済むケースがほとんどです。また、お腹に傷が残らず、回復が早いといった利点もあります。

ただし、がんの大きさや深さによっては、手術療法が必要と判断されるケースがあります。

薬物療法(化学療法)

薬物療法は、抗がん剤や分子標的薬を使ってがん細胞の増殖を抑える治療法です。

以下のような場合に用いられます。

  • 手術後の再発予防(術後補助化学療法)
  • 手術前にがんを小さくする目的(術前化学療法)
  • 切除できない進行がんや再発がんの治療
  • 他の臓器に転移がある場合

主に以下の薬剤が使用されます。

  • 抗がん剤:5FU系薬剤、オキサリプラチン、イリノテカンなど
  • 分子標的薬:ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブなど

治療は点滴や内服で行われ、複数の薬剤を組み合わせることが一般的です。副作用には吐き気、下痢、手足のしびれ、皮膚症状などがありますが、吐き気止めなどの薬を使うことで軽減できる場合が多くあります。

放射線治療

放射線治療は、高エネルギーの放射線をがん細胞に照射して死滅させる治療法です。

  • 大腸がんでは主に以下の場合に用いられます。
  • 直腸がんの手術前治療(がんを小さくして切除しやすくする)
  • 直腸がんの術後再発予防
  • 骨やリンパ節への転移による痛みの緩和
  • 手術が困難な局所進行がんの制御

直腸がんでは、化学療法と併用する「化学放射線療法」が標準治療として行われることがあります。

治療は通常、平日に毎日少しずつ照射し、数週間かけて行います。副作用には、照射部位の皮膚炎、下痢、頻尿、疲労感などがありますが、多くは治療終了後に改善します。

手術療法

手術療法は、がんが腸の壁の深くまで達していたり、リンパ節に転移したりしている可能性があるステージI〜IIIで行われる治療法です。

がん細胞が含まれる腸管と、その周囲のリンパ節を一緒に切除します。

手術の方法は、以下の2つの術式があります。

術式 概要
腹腔鏡手術 お腹に小さな穴を開けておこなう
開腹手術 お腹を切り開いておこなう

進行状況によっては、一時的に人工肛門(ストーマ)を造設する場合もあり、手術後に再びつなぎ合わせるケースも少なくありません。

また、手術後には再発を防ぐ目的で、半年ほど抗がん剤などを用いた補助化学療法を行う場合があります。

免疫療法

免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。

現在、大腸がんの治療に効果があると証明されている免疫療法は、「免疫チェックポイント阻害薬」です。

ただし、すべての大腸がんに有効ではなく、以下のケースに該当する場合にのみ効果があるとされています。

  • 遺伝子に入った傷を修復する機能が働きにくい状態
  • がん細胞中の遺伝子変異の量が多い状態

なお現段階で、免疫チェックポイント阻害薬以外の免疫療法は、大腸がんに対して効果が証明されていません。(文献11

再生医療

近年、さまざまな病気の治療で「再生医療」が用いられています。

再生医療とは、自身の細胞を用いて身体の機能を整える治療法です。大腸がんにおいても、発症や再発のリスクを抑える目的で再生医療が選択肢になるケースがあります。

患者様ご自身の免疫細胞の働きを高める「免疫細胞療法」もその1つです。

血液から免疫細胞を採取し、体外でその数を増やし活性化させてから再び体内に戻す治療法で、体への負担を抑えられるのが特徴です。

免疫細胞療法について、詳しくは下記のページをご覧ください。

手術しなくても治療できる時代です。

再⽣医療で免疫⼒を⾼めることができる時代です。

まとめ|大腸がんの原因を理解して生活習慣を見直そう

大腸がんは怖い病気ですが、原因となるストレスや食生活などの生活習慣を見直せば、予防が可能です。

日々のストレスを減らし、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることは、大腸がんのみならず他の病気の予防にもつながります。

忙しいからと後回しにせず、できる範囲で生活習慣を改善していくことが大切です。

また、40歳を過ぎたら定期検診を受け、早期発見に努めていきましょう。

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大腸がんの原因に関するよくある質問

大腸がんに気づいたきっかけは何が多いですか?

大腸がんは初期症状がほとんど出ないため、自身の判断で気づくのは難しいといわれています。発見に至るきっかけで多く挙げられるのは、会社の健康診断や自治体の検診で行う「便潜血検査」です。

検査で陽性反応が出た場合は大腸内視鏡検査を行い、大腸がんと診断されるケースがあります。

日本においては、40歳になると大腸がん検診の対象となるため、検診をきっかけに発見される方も少なくありません。ただし、30代でも発症する可能性はあるため、血便や長引く便秘・下痢、腹痛といった症状が続く場合は、専門機関の受診を検討しましょう。

50代で大腸がんになる確率はどれぐらいですか?

国立がん研究センターの報告によると、50代で1年間に大腸がんと診断される人数は、10万人あたり男性がおよそ120人、女性がおよそ75人です。(文献12

確率に換算すると、男性は約0.12%、女性は約0.075%となります。男性であれば約833人に1人、女性では約1,333人に1人が50代のうちに罹患する計算になります。

参考文献

(文献1)
最新がん統計|国立がん研究センター

(文献2)
Perceived Stress and Colorectal Cancer Incidence: The Japan Collaborative Cohort Study|Scientific Reports

(文献3)
Perceived Psychologic Stress and Colorectal Cancer Mortality: Findings From the Japan Collaborative Cohort Study|Psychosomatic Medicine

(文献4)
糖尿病の人は大腸がんリスクが高い 大腸がんは50歳未満の若い人でも増加 予防に役立つ3つの食品とは?|糖尿病ネットワーク

(文献5)
がん種別統計情報 大腸|国立がん研究センター

(文献6)
身体活動量と大腸がん罹患との関連について|国立がん研究センター

(文献7)
お酒・たばこと大腸がんの関連について|国立がん研究センター

(文献8)
大腸がん(結腸がん・直腸がん)について|国立がん研究センター

(文献9)
大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診|国立がん研究センター

(文献10)
がんゲノムビッグデータから喫煙による遺伝子異常を同定|国立がん研究センター

(文献11)
大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療|国立がん研究センター

(文献12)
大腸がんファクトシート2024|国立がん研究センター がん対策研究所

(文献13)
科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究|国立がん研究センター

(文献14)
日本人大腸がん患者さんの5割に特徴的な腸内細菌による発がん要因を発見|国立がん研究センター

(文献15)
赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて|国立がん研究センター