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膝の疲労骨折はどんな痛み?症状や原因、なりやすい人を解説

「膝の疲労骨折はどんな痛みが現れる?」
「主な原因やなりやすい人は?」
「効果的な予防法を知りたい」
膝の疲労骨折は、ランニングなどで膝に繰り返し小さな力が加わることで引き起こされます。痛みを我慢してそのまま運動を続けてしまうと、疲労骨折が悪化してしまう恐れがあるため注意が必要です。
本記事では膝の疲労骨折の概要をはじめとして、以下を解説します。
- 主な症状と原因
- なりやすい人
- 検査方法と診断について
- 治療方法
- 予防法3選
膝の疲労骨折を疑うポイントも解説しています。本記事を膝の疲労骨折の早期発見に役立ててください。
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目次
膝の疲労骨折は頻度の少ない疾患
膝の疲労骨折とは、膝に繰り返し小さな力が加わり引き起こされた骨折のことです。
以下のようなスポーツの種目での受傷が見られています。
- サッカー
- ボクシング
- マラソン
- 野球
- バスケットボール
- バドミントン
- バレーボール
膝の疲労骨折は発生頻度が少ない傾向です。例えば、膝蓋骨(しつがいこつ:膝の前面にある三角形の骨)における疲労骨折の発生頻度は、疲労骨折の全体の約0.2〜3%ほどと報告があります。(文献1)
膝の疲労骨折の主な症状
膝の疲労骨折を起こしている場合は、以下のような症状が現れる傾向です。
- 圧迫するような痛み
- 膝前面の痛み
膝の疲労骨折を疑うポイントは、上記の痛みの継続に加えて、腫れや外傷の既往がない場合です。そのまま運動を続けてしまうと悪化する恐れもあります。疲労骨折が疑われる症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。
膝の疲労骨折の原因
膝を問わず疲労骨折は以下のような原因で引き起こされます。
- 筋肉の過度の緊張により骨が引っ張られる
- 骨に繰り返し衝撃が与えられる
- 使いすぎによる筋肉の疲弊により骨への負担が強くなる
(文献2)
以上に加えて、以下のような誘因が重なり疲労骨折は引き起こされます。
発生の誘因 | 詳細 |
---|---|
技術・体力の問題 | ・筋力不足 ・筋力の不均衡 ・未熟な技術やフォーム ・体の柔軟性不足 |
練習・環境の問題 |
・トレーニング量の急激な増加や質の変化 |
膝の疲労骨折になりやすい人
膝の疲労骨折になりやすい人は、定期的かつ長時間のトレーニングを実施している方に多い傾向です。
例えば、膝付近でも、疲労骨折が起こりやすい脛骨内側顆部(けいこつないそくかぶ:すねの骨の上端部)においては、以下のような運動を継続することで受傷が起きています。
【脛骨内側顆部疲労骨折の報告例】
性別 | 年齢 | 誘因となる運動 | 受傷までの期間 |
---|---|---|---|
男性 | 34歳 | 毎日5〜6kmジョギング | 3〜4日 |
男性 | 61歳 | 毎日2kmジョギング | 3日 |
男性 | 34歳 | 毎日2kmジョギング | 10日 |
男性 | 16歳 | ボクシングの練習 | 1カ月以内 |
男性 | 15歳 | サッカーの練習 | 数日 |
(文献3)
これらの継続的な膝への負担が疲労骨折の原因になっています。脛骨内側顆部においては、軽い運動や労働によっても、受傷する場合があります。
一方、膝蓋骨の疲労骨折においては、運動強度の高い10〜20歳代の受傷割合が多く、繰り返すジャンプ動作の多いスポーツやランニングにおいて起きやすい傾向です。(文献1)
膝の疲労骨折の検査方法と診断
膝の疲労骨折では、以下のような診察や検査の結果を総合的に考慮して診断をします。
項目 | 内容 |
---|---|
問診 | 症状の詳細、痛みの出現時期、外傷の既往歴の有無、トレーニング状況などの確認 |
身体の診察 | 関節の可動域、腫れ、痛み程度の確認 |
レントゲン検査 | 画像による骨折の状況の確認 |
MRI検査 | 画像による骨周囲の腫れや炎症など軽微な所見の確認 |
疲労骨折の場合はレントゲン検査だけでは、異常が見つからないことが多いです。そのため、疲労骨折を早期発見するには、MRI検査も実施する必要があります。
膝の疲労骨折の治療方法
膝の疲労骨折は多くの場合、原因となったスポーツ活動等を禁止して安静にすれば治癒します。
しかし、状態によっては、以下のような治療が必要です。
治療方法 | 詳細 |
---|---|
保存療法 | ギプスや装具により安静を保持する療法 |
手術療法 | スクリューを用いて骨折部位を固定する |
早期のスポーツ復帰を望む場合は、手術療法が推奨されることもあります。スポーツ復帰までの期間は、状態によって異なり、骨折部の痛みや筋力の回復状況を見ながらの判断が必要です。骨折部に負担がかからないトレーニングにおいては、状況に応じて許可されることもあります。
関節付近の骨折で変形している場合は、再生医療が適用されるケースがあります。骨折後、しばらくしてからも後遺症に悩んでいる方は、以下の再生医療の症例記事をご覧ください。
膝の疲労骨折の予防法3選
膝の疲労骨折の予防法には、以下のようなものがあります。
- トレーニング量や方法を見直す
- 正しい身体動作を身に付ける
- トレーニング用具や環境を調整する
それぞれの詳細を解説します。
1.トレーニング量や方法を見直す
膝の疲労骨折が起きる原因として、過度な練習量や不適切な練習方法が原因になっている場合があります。
トレーニング量や方法は以下の項目を考慮して決める必要があります。
- スポーツの種目
- 年齢
- 技術
- 体力
とくに年齢において、小児の場合などは骨が未成熟であるため、弱い力でも繰り返し与えると疲労骨折が起きるリスクがあります。経験や勘ではなく、専門のコーチやトレーナーから指導を受けて、トレーニング量や方法を見直すことが大切です。
2.正しい身体動作を身に付ける
適切な身体動作を身に付けることは、膝の疲労骨折の予防において必要です。
例えば、ランニングでは以下のようなフォームを心がけるだけでも、疲労骨折の予防につながります。
- 体の上下運動を少なくする
- 柔らかく足が前に運ばれるようにする
これらのフォームであれば、膝・すねへの衝撃が少なくなり疲労骨折のリスク低下が期待できます。
3.トレーニング用具や練習環境を調整する
トレーニング用具や練習環境の調整は、膝の疲労骨折において大切です。トレーニング用具は、基本的には、競技者の体格や技術、体力に合ったものを選択します。
練習環境においては、路面の形状や硬さを考慮してトレーニング用具を選びましょう。例えば、コンクリートの路面でランニングを行う際は、足にフィットしていることはもちろん、クッションが十分に効いているシューズを着用するなどが挙げられます。
まとめ|膝の疲労骨折は早期発見が重要!痛みがある場合は受診しよう
膝の疲労骨折が疑われる場合は、膝前面の痛み、圧迫するような痛みなどが現れます。腫れや外傷の既往がないときはとくに膝の疲労骨折を疑ってください。
歩けるからといって、痛みを我慢して運動を続けてはいけません。軽症であった疲労骨折が悪化する恐れもあるためです。
膝の疲労骨折の多くは、安静により自然治癒します。しかし、悪化してしまうと装具による固定や手術が必要になる場合もあります。疑われる症状が現れている場合は早期に医療機関を受診してください。
膝の疲労骨折を予防するには、トレーニング内容や身体動作、練習環境などの見直しが重要です。経験や勘を頼りにするのではなく、専門のトレーナーやコーチにトレーニング内容の見直しなどを依頼しましょう。
膝の疲労骨折に関する疑問
自然治癒する?
膝だけでなく疲労骨折の多くは安静により自然治癒します。とはいえ、受診をしないで放置したり、自己判断で治療を中断したりするのは推奨できません。定期的に医療機関を受診して適切な治療を進めてください。
早く治すには?
早く治すには、早期診断と適切な治療が必要です。痛みを我慢して運動をすると、骨折の状態が悪化することもあります。医療機関を受診して、医師の指示に沿った治療を受けましょう。
運動しながら治すことはできる?
疲労骨折を受傷した場合は、運動の中止が必要です。運動を中止しないと疲労骨折が悪化する恐れがあります。骨折部に負担がかからなければ、運動を行っても良い場合があります。運動は医師の指示に従って再開してください。
(文献1)
スポーツ選手に対するCannulated Cancellous Screw による膝蓋骨疲労骨折の治療経験|日本臨床スポーツ医学会誌