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貧血の症状一覧|原因や治療法についても医師が詳しく解説

「めまいや息切れが続いている」
「健康診断で貧血と言われたけれど、とくに症状はない」
「病院を受診するかどうか迷う」
このようなお悩みを抱えている方も多いことでしょう。
貧血の症状はさまざまであり、中には無症状の方もいます。しかし、貧血を放置しておくことは危険を伴います。重大な疾患が原因で引き起こされる貧血もあるためです。
本記事では、貧血の症状を中心に、原因や治療法についても詳しく解説します。貧血でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
貧血の症状一覧
貧血の症状には、主に以下のようなものがみられます。
- 息切れ
- 動悸
- めまい
- 倦怠感
- 血色不良
- 爪の異常
中には、肌や口内が荒れる、髪の毛が抜けやすくなる、氷を食べたがるといった症状が出る方もいらっしゃいます。貧血症状の現れ方には個人差があり、人によってはまったく症状がない場合もあります。
貧血症状が現れる原因は、体内の酸素不足および、それを補うために心臓や肺が働きすぎることです。
そもそも貧血とは
そもそも貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンといった成分が少ない状態を指します。立ちくらみやめまいなどが起きたときに「貧血を起こした」と訴える方もいますが、これは重力の影響で脳の血流が減ったことに伴うもので、貧血とは異なります。
WHO(世界保健機構)の定義によると、成人男性ではヘモグロビン値13.0g/dl以下、成人女性ではヘモグロビン値12.0g/dl以下の状態が貧血とされます。(文献1)
貧血を診断するためには、自覚症状の聴き取りだけではなく、血液検査も必要です。
貧血の原因
貧血の原因としては、主に以下の4つがあげられます。
- 鉄分不足
- 体内での出血
- 慢性疾患
- 造血機能低下
鉄分不足
体内の鉄分不足が原因の、いわゆる「鉄欠乏性貧血」は、貧血の中でも最も頻度が高いものです。(文献2)
鉄欠乏状態が続くと、体内に貯蔵されている鉄分が減ります。次に、血液中の鉄分である血清鉄が減少します。最終的にヘモグロビン内の鉄分が減少して、貧血を発症する流れです。(文献3)
体内で鉄分を必要とする理由や鉄分不足の症状については、以下の記事でも紹介しています。
あわせてご覧ください。
体内での出血
胃や大腸といった消化管からの出血や、婦人科疾患による出血による貧血も存在します。
消化管からの出血としては、胃潰瘍や胃がん、大腸がん、痔などがあげられます。出血の原因となる婦人科疾患は、子宮筋腫や子宮がんなどです。
女性の場合、月経による出血も貧血を引き起こす要素の1つです。なんらかの原因で月経時の出血量が多い場合は、自覚症状がないまま貧血が進行するケースもあります。
慢性疾患
慢性腎臓病や関節リウマチなどの慢性疾患により、貧血を起こす場合もあります。
腎臓の機能が低下すると、造血ホルモンであるエリスロポエチンが作られにくくなり、その結果貧血を引き起こします。いわゆる「腎性貧血」です。(文献4)
関節リウマチの場合、体内で炎症が起きており、その影響で体内での鉄代謝に異常が生じて貧血を引き起こしやすいとされています。関節リウマチについては、下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
造血機能低下
体内で血液を作り出す機能(造血機能)が病気によって低下した結果、貧血を発症する場合もあります。原因になる主な疾患を、表にまとめました。
疾患名 | 病態 |
---|---|
再生不良性貧血 | 骨髄にある造血幹細胞(血液細胞の材料)が減少してしまい、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞が減ってしまう病気 |
骨髄異形成症候群 | 造血幹細胞に異常が生じて、正常な血液細胞が作られなくなる病気 |
白血病 | いわゆる「血液のがん」 造血幹細胞ががん化してしまい、白血病細胞が増えてしまう病気 骨髄異形成症候群から白血病に移行する場合もある |
このように、重大な病気が隠れている可能性もありますので、貧血症状がある場合は、早めの医療機関受診が大切です。
貧血とヘモグロビン値
ここでは、公益社団法人日本人間ドック・予防医療学会によるヘモグロビン値について紹介します。
貧血に関係する検査結果は、以下の3種類です。
- 異常なし
- 要再検査・生活改善
- 要精密検査・治療(ヘモグロビン低値)
詳細を表に示しました。
検査結果 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
異常なし | 13.1~16.3g/dl | 12.1~14.5g/dl |
要再検査・生活改善 | 12.1~13.0g/dl | 11.1~12.0g/dl |
要精密検査・治療 | 12.0g/dl以下 | 11.0g/dl以下 |
表に示した以外の検査結果として、「軽度異常」があります。数値は以下のとおりです。
- 男性:16.4〜18.0g/dl
- 女性:14.6〜16.0g/dl
ヘモグロビン値が基準より高いために、軽度異常とされています。加えて、ヘモグロビン値が軽度異常よりも多い場合も、要精密検査・治療に該当します。多血症や脱水が疑われる状況です。
貧血の治療法
貧血の治療法は、主に以下の3つです。
- 食事療法
- 薬物療法
- 原因疾患の治療
食事療法
食事療法で大切な点は、効率よく鉄分を摂ることです。鉄分の多い食材に加えて、鉄の吸収を助けるビタミンCや、造血作用があるビタミンB12も摂取しましょう。
鉄分やビタミンC、ビタミンB12を豊富に含む食品は、以下のとおりです。
- 鉄分:レバーや魚介類、大豆製品、野菜・海藻類など
- ビタミンC:果物や野菜・海藻類など
- ビタミンB12:肉や卵など
良質なタンパク質もあわせて摂りましょう。タンパク質は、赤血球やヘモグロビンの材料として大切な栄養素です。肉や魚介類、大豆製品、卵などに多く含まれています。
薬物療法
鉄欠乏性貧血の薬物療法は、鉄剤の内服や静脈注射が一般的です。
- 内服:フェロミア錠、リオナ錠、インクレミンシロップなど
- 静脈注射:フェジン、モノヴァーなど
鉄剤を内服すると、吐き気や食欲不振といった消化器系の副作用を生じることも少なくありません。その場合は、静脈注射に切り替える場合もあります。
腎臓の機能低下による貧血では、腎性貧血治療薬(ESA:赤血球造血刺激因子製剤)の投与も行われます。
原因疾患の治療
消化器系疾患や婦人科系疾患に伴う出血のため貧血が生じている場合は、原因疾患を治療する必要があります。リウマチや慢性腎臓病由来の貧血でも、同じく治療が必要です。
リペアセルクリニックでは、貧血症状や、原因疾患の治療に関するご相談にも対応いたします。メール相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
貧血の症状がある場合は放置せずに医療機関を受診しよう
貧血の症状は個人差があり、中にはまったく症状がない方もいらっしゃいます。
貧血の原因の多くは鉄分の欠乏ですが、重大な疾患が隠れている場合もあります。そのため、貧血の症状があるときや、健康診断や人間ドックで貧血を指摘されたときは、放置せずに医療機関を受診しましょう。
貧血症状改善のためには、一人ひとりの原因に合った治療が重要です。
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貧血の症状に関するよくある質問
貧血が続くとどうなるのでしょうか
貧血は全身の酸素が不足している状態です。少ない酸素量で身体機能を維持するため、全身に血液を送る心臓の負担が増えます。また、脳に運ばれる酸素量も減少します。貧血が続くと、心筋梗塞や記憶力の低下を引き起こす可能性があると覚えておきましょう。
病気が原因の貧血では「貧血が続く=病気が進行している」可能性があります。貧血が続く場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
貧血になりやすい人の特徴は何ですか
女性はとくに、鉄欠乏性貧血になりやすいといえます。月経や、妊娠・出産、授乳など、鉄分を失うことが多いためです。
過度なダイエットをしている方や、偏食の方も鉄欠乏性貧血を起こしやすいといえるでしょう。栄養バランスが乱れ、結果として貧血を起こす可能性が高いといえます。
慢性疾患や造血機能低下が原因の貧血の場合は、目立った特徴は見られません。
参考文献
(文献1) 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「貧血の原因は?」国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターホームページ
https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/11.html (最終アクセス:2025年4月16日)
(文献2) 大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座「鉄欠乏性貧血のはなし」大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座ホームページ
https://www.med.oita-u.ac.jp/syuyou/ida.html (最終アクセス:2025年4月16日)
(文献3) 張替秀郎「鉄代謝と貧血」『日本内科学会雑誌』107(9), pp.1921-1926,2018年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/9/107_1921/_pdf (最終アクセス:2025年4月16日)
(文献4) 鶴屋和彦,平方秀樹「慢性腎臓病と貧血」『日本内科学会雑誌』104(7), pp.1414-1424,2015年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/7/104_1414/_pdf (最終アクセス:2025年4月16日)