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大腸がんの進行速度は年代で変わる?早期発見と治療で対策を万全に

「最近、お腹のハリや便通の変化が気になるけど、忙しいし、年齢的にもまだ大丈夫だろう」。そう思ってスルーしていませんか?
大腸がんは現在、日本人の罹患率・死亡率ともに高い主要ながんの一つです。若い世代での発症も増加傾向にあり、2018年時点で男性の死亡原因第3位、女性では第1位となっています。(文献1)
ただし、がんの進行速度は一律ではなく、年齢、がんのタイプ、生活習慣、遺伝的背景などによって進み方は人それぞれです。
本記事では、年代別にみた大腸がんの進行速度の特徴、速度を左右する主な要因、そして早期発見・治療のポイントを解説します。
不安を感じている方も、知れば怖くなくなるように大腸がん対策の第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
目次
年代別に見る大腸がんの進行速度や特徴について
大腸がんは全年代で発生し得ますが、年代によって発症しやすさや進行の速さに特徴的な傾向があります。基本的には年齢そのものよりもどんなタイプのがんか(悪性度)が進行速度を左右します。
しかし結果的に年代ごとに進行パターンに違いがみられるケースもあります。ここでは若年層・中年層・高齢者それぞれの年代について、大腸がんの進行速度や特徴を見ていきましょう。
若年層(30代)の進行速度と特徴
若い世代での大腸がん発症は多くはありませんが、近年増加傾向にあります。実際、数十年前と比べると若年者(50歳未満)の大腸がんリスクは約3倍に上昇し、現在の30代のリスクは数十年前の50代と同程度とも言われています。(文献2)
この背景には食生活の欧米化や運動不足など生活習慣の変化が影響していると考えられます。若年層の大腸がんでは、進行が速く転移しやすいタイプの大腸がんが発生しやすい傾向があります。
たとえば他のがん種の例ですが、胃がんなら分化度の低いタイプが30代など若い人にできやすいことが知られており、大腸がんでも若年発症例では進行の早いものが見られることがあります。
また、日本では大腸がん検診は通常40歳以上を対象としており、30代以下では定期検診の機会が少なくなりがちです。その結果、自覚症状が出にくい早期の段階では発見されず、症状が出てから受診した時には進行がんに至っているケースもあります。
実際に30代の大腸がんは初期症状が乏しく、腹痛や便通異常、血便などの明らかな症状は進行してから現れることが多いです。
まだ若いから大丈夫と思わず、家族に大腸がんの人がいる場合などリスクが高い方は、30代でも違和感を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
中年層(40~60代)の進行速度と特徴
40~60代は大腸がんの罹患が増えてくる年代です。とくに50代以降になると発症リスクが高まり、生活習慣病の蓄積や体の老化も相まって大腸がんが増えてきます。大腸がんの多くはポリープ(大腸粘膜のできもの)が徐々に大きくなってがん化するため、一般的には数年から十数年かけて進行するとされています。
したがって、この年代では早期発見・早期治療を行えば十分にがんの進行を抑え込めます。40代以上を対象とした定期的な大腸がん検診により早期の段階で発見できれば、内視鏡によるポリープ切除や外科手術で根治が期待できます。
働き盛りの世代でも決して悲観せず適切な治療を受けましょう。一方で、60代になると次第に免疫力が低下し細胞の修復力も落ちてくるため、同じタイプの大腸がんでも若い頃より進行が早まる可能性が指摘されています。
なぜなら、免疫の監視機能が弱まることでがん細胞の増殖を許しやすくなるためです。幸いこの年代は健康診断や人間ドックを受ける方も多く、検査で早期に指摘されれば治療開始も早くできます。
まとめると、40~60代は発症しやすくなる年代である分、検診などを活用して早期に発見しやすい年代と言えるでしょう。定期検診を怠らず、指摘を受けたら速やかに精密検査・治療につなげることで、大腸がんの進行を食い止められる可能性が高まります。
高齢者(70代~90代)の進行速度と特徴
高齢になるほど大腸がんの発症率は高まり、70代以降での診断例が突出します。背景には長年の細胞老化によるDNA損傷の蓄積、加齢や生活習慣病による免疫力低下があり、がん細胞を排除しにくくなる点が大きいと考えられます。
ただし高齢者の大腸がんが必ずしも急激に悪化するわけではなく、比較的おとなしい高分化型が出やすいとの報告もあります(文献6)。
一方、発生部位は右側の上行結腸に偏りやすく、血便など自覚症状が乏しいため気付いたときには進行期になっているケースが目立ちます。加えて高血圧・心疾患・糖尿病などの併存症が多く、手術や抗がん剤の適応に制限が生じやすいことも進行を許す要因となっています。
したがって70代以降でも便潜血検査を年1回行い、陽性なら必ず内視鏡で精査が欠かせません。体調に違和感があれば年のせいと済ませず受診し、治療方針は体力に合わせて腹腔鏡手術や低用量抗がん剤、免疫療法など負担の少ない選択肢を医師と検討しましょう。
大腸がんの進行速度が変わる理由
大腸がんの進行速度には個人差があり、いくつもの要因が絡み合っています。では具体的にどのような理由で進行の速さに差が出るのでしょうか。
主な理由として、生活習慣(食事内容や運動習慣)の違い、遺伝的素因や免疫力、基礎疾患(合併症)の有無が挙げられます。ここではこれらのポイントについてもう少し詳しく見てみましょう。
生活習慣・食事・運動不足の影響
脂肪や赤身肉中心の“欧米型”食は大腸がんリスクを押し上げます。若年発症例の増加要因として飲酒・喫煙や加工肉の過剰摂取、運動不足と肥満。抗生物質乱用による腸内細菌バランスの崩れが報告されています。逆に定期的な運動、野菜・果物の食物繊維やカルシウムの十分な摂取は発症リスク低減に有効です。
つまり高脂肪食と過度の飲酒・喫煙を控え、野菜を増やし、毎日よく動くことが予防策です。とくに若年層は生活習慣の影響が大きいため、将来の進行がんを防ぐ第一歩として早めの改善が重要です。
遺伝・免疫力・合併症リスク
大腸がんは家族歴があると発症リスクが上昇します。代表例がリンチ症候群で、若年発症かつ生涯で約80%が大腸がんになると報告されています。多発・多臓器発がん、進行の速さが特徴で、半年ごとの内視鏡検査が推奨されます。
もう一つの遺伝性疾患家族性大腸腺腫症(FAP)では10代から多数のポリープが出現し、60歳までに90%ががん化するため予防的手術も選択肢となります。このように遺伝性大腸がんは発症年齢が若く進行も早いため、家族歴が多い場合は遺伝子検査や専門医に相談しましょう。
また、免疫機能も進行速度に影響します。体にはがん細胞を排除する免疫監視機構がありますが、加齢やストレス、糖尿病・ステロイド使用などで機能が低下するとがんの増殖を許しやすくなります。十分な睡眠と運動、バランスの良い食事は免疫維持に有効です。
さらに炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は長期炎症が粘膜に傷を作り発がんリスクを高めます。
肝硬変やコントロール不良の糖尿病など基礎疾患がある場合も全身の状態が悪化することによって、治療効果が下がり進行を許してしまいます。
合併症が多いと手術や抗がん剤が制限される点も見逃せません。このように遺伝と免疫力と基礎疾患が掛け合わさると、進行の速さを左右します。家族歴や持病がある方は定期検診を怠らず、違和感があれば早期に専門医へ相談しましょう。
早期発見とさまざまな治療法
大腸がんは早期に発見さえできれば、適切な治療で根治(完治)も十分に期待できる病気です。進行した大腸がんであっても、治療によって進行を遅らせたり症状を和らげられます。
ここでは主な検査方法と早期発見のメリット、そして大腸がん治療のアプローチについて解説します。とくに近年注目されている免疫細胞療法(体の免疫の力を利用した治療)や再生医療(幹細胞を利用した新しい医療)も含めた治療法について説明します。
主な検査方法と早期発見のメリット
大腸がん早期発見の入口は便潜血検査です。便中の微量出血を調べるだけで痛みがなく低コスト、40歳以上は年1回実施が推奨されています。陽性時は大腸内視鏡検査へ進み、粘膜を直接観察しつつポリープや早期がんをその場で切除できます。
便潜血検査と内視鏡の組み合わせは死亡率を有意に下げることが複数の研究で確認され、日本老年医学会の大腸がん予防ガイドラインでも年1〜2回の受検が強く勧められています。(文献4)
大腸がんは早期発見、早期治療が現状一番の解決策です。
がんが粘膜内にとどまる早期がんなら、内視鏡切除や局所手術で5年生存率は約90%。一方、遠隔転移を伴うステージⅣでは約20%まで低下し、早期か進行期かで明暗がわかれます。(文献5)
小さな腫瘍なら開腹せずに治療でき、切除範囲も狭く体への負担が軽いのも利点です。さらに大腸がんの約8割は良性ポリープが出発点とされ、ポリープ段階で取り除けばがんそのものを起こさせない究極の予防になります。
ポリープががん化するまでには数年〜10年程度余裕があるため、定期的に内視鏡を受けて発見して切除できれば、大腸がんで命を落とす確率は大幅に減らせます。
大腸がんの治療アプローチ(免疫療法など)
大腸がん治療の柱は手術・抗がん剤・放射線の三大療法で、早期なら手術のみ、進行例では手術と抗がん剤、直腸がんでは放射線も加える組み合わせが標準です。腹腔鏡手術や副作用対策の進歩で、高齢者や通院治療の負担も軽減されています。(文献4)
免疫療法では、がん細胞のブレーキ信号を外して免疫を活性化させる免疫チェックポイント阻害薬が遺伝子変異の多いタイプの大腸がんで保険適用となり、進行・再発例でも長期生存例が報告されています。
さらに光免疫療法は薬剤投与後に特定の光を当て、がん細胞だけを選択的に破壊する日本発の新技術として開発されており、今後の発展に期待が持てます。
また、患者自身のリンパ球を培養して戻す免疫細胞療法も一部で行われ、新しい治療法として注目を集めています。
当院「リペアセルクリニック」ではがん予防を目的とした免疫細胞療法を提供しております。
免疫細胞療法に関する詳細は、以下のページをご覧ください。

再⽣医療で免疫⼒を⾼めることができる時代です。
まとめ|大腸がんの進行速度はさまざまな要因で決まる!違和感を感じたら早期受診を
大腸がんの進行速度は人によって異なり、年齢やがんのタイプ、生活習慣、遺伝的素因、免疫力など実にさまざまな要因で決まります。若い人でも油断はできませんし、高齢だからといって必ずしも急激に悪化するわけでもありません。
それでも共通して言えるのは、早期発見・早期治療が最も有効な対策です。大腸がんは早く見つかれば高い確率で治せる病気ですので、仮に進行していても適切な治療で進行を遅らせられます。
普段からバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、大腸に限らず検診の指摘や体調の違和感を軽視せずに、おかしいと思ったら年齢に関係なく早めに医療機関を受診しましょう。
皆さんにお伝えしたいのは、大腸がんは怖がりすぎず正しく恐れ、早期発見ができれば決して怖い病気ではありません。不安な気持ちがある方は一人で抱え込まず専門医に相談し、適切な検査と対策で大腸がんから自分自身を守っていきましょう。
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参考文献
(文献1)国立がん研究センター「がんの統計’18 図表編」2018年.https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2018_date_J.pdf.(最終アクセス:2025年4月29日)
(文献2)Bailey CE, et al. (2015). Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States, 1975-2010. JAMA Surgery, 150(1), pp.17-22. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25372703/(最終アクセス:2025年04月29日)
(文献3)Sung H, et al. (2024). Colorectal cancer incidence trends in younger versus older adults: an analysis of population-based cancer registry data. The Lancet Oncology, 26(1), pp.1-??.https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045%2824%2900600-4/fulltext?(最終アクセス:2025年04月29日)
(文献4)田中秀典, 田中信治. 「高齢者の大腸がんの特徴と治療」『日本老年医学会雑誌』57(4), pp.423-430, 2020年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/57/4/57_57.423/_pdf (最終アクセス:2025年04月22日)
(文献5)国立がん研究センター「大腸がん患者数統計」国立がん研究センター がん情報サービス,https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c02#h-title (最終アクセス:2025年04月22日)
(文献6)Chou C-L, et al. (2011). Differences in clinicopathological characteristics of colorectal cancer between younger and elderly patients: an analysis of 322 patients from a single institution. American Journal of Surgery, 202(5), pp.574-582. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21872205/(最終アクセス:2025年04月29日)