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大腸がんの症状チェック:初期症状を見落とさず早期発見するポイント

「なんか最近、お腹の調子が変かも。でも、きっと大したことないか」そんなふうに感じながら、つい忙しさを理由に後回しにしていませんか?
お腹の不調は様々な原因で起こりますが、中には見過ごせない重要なサインが隠れていることもあります。実は、大腸がんは発症者が年間15万人いる日本で最も多い 「がん」です。(文献1)
しかも、ほとんど初期自覚症状がないまま、静かに進行していく怖い病気ですので、早期発見、治療が非常に重要です。
この記事では、大腸がんを早期に見つけるための症状のヒントや、今からできる予防法、検査や治療のことまでまとめています。「病院に行くほどじゃないけど、ちょっと気になる」そんな方こそ、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
大腸がんの症状チェックリスト
大腸がんで見られる症状にはどのようなものがあるでしょうか。以下に主な症状のチェックリストをまとめました。
症状 | チェックポイント |
---|---|
血便・下血 |
便に血が混じる、または肛門から出血する症状です。便に鮮やかな赤い血が付着していたり、黒っぽいタール状の便が出ることがあります。 痔(じ)などでも起こり得ますが、便に血液が付く状態が続く場合は注意が必要です。 |
便通の異常 |
以前より便秘と下痢を繰り返す、便が細くなった(細い便)、排便してもまだ残っているように感じる(残便感)などの変化です。 腸の通り道が狭くなることで起こる症状で、普段のお通じのリズムと明らかに異なる変化が続く場合は要チェックです。 |
お腹の張り・痛み |
腸にガスが溜まってお腹が張る、腹痛が起こる、お腹にしこり(腫瘤)が触れる症状があります。腸の一部がふさがってガスや便が滞留するとお腹が張って痛みを生じます。 進行すると腸閉塞(腸がふさがれて便が出なくなる状態)を引き起こし、激しい腹痛や嘔吐を伴うこともあります。 |
体重減少・貧血 |
食事量が変わっていないのに体重が減る、貧血によるめまいや疲れやすさ、動悸などが現れることがあります。 大腸がんが進行すると慢性的な出血や栄養吸収の障害により体重減少や貧血症状を引き起こすことがあります。 |
おならの回数・においの変化 |
最近おならが以前より頻繁に出る、臭いがきつくなったと感じる場合です。 後述しますが、大腸の状態変化によって腸内環境が乱れると、おならの発生量や臭いに影響が出ることがあります。 |
ただし大腸がんは早期の段階ではこれらの自覚症状がほとんど出ない点に注意が必要です。また、なかでも血便や下血といった症状は大腸がんでとくによく見られますが、痔など良性の病気でも起こりうるため自己判断で放置しないでください。(文献2)
便に血が混じる、便通異常が続くなど気になる症状がある場合は痔と決めつけず、早めに消化器科や肛門科など専門医を受診しましょう。
おならの回数・においの変化に注意
おならは大腸がんの典型的な症状として広く知られているわけではありませんが、腸内環境の変化を示すサインとなります。
大腸がんがある程度大きくなると腸の中の通り道が狭くなり、便やガスの流れが滞って腸内にガスが溜まりやすくなるため、その結果、おならの回数が増えることがあります。
また、腫瘍により腸内細菌のバランスが変化し、おならのにおいがいつもと違う強い臭いに変わる場合もあります。もちろん、おならの変化は食生活やストレス、腸内細菌の一時的な乱れなど、さまざまな要因でも起こり得ます。
そのため、 臭いがきついからといってすぐに大腸がんと結びつける必要はありません。
しかし、「最近明らかにおならの状況がおかしい」と感じる場合は、他の症状と合わせて注意してください。
日頃から自分の排便習慣やお腹の調子を観察し、少しでも不安な変化があれば検診を早めに受けましょう。
おならの状態は人に相談しにくいデリケートな内容ですが、恥ずかしがらずに専門家に伝えてください。
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大腸がんを防ぐために注意すべき生活習慣
大腸がんの発生には体質や遺伝的な要因もありますが、実はそれ以上に食事や運動などの生活習慣(環境因子)が大きく影響すると考えられています。(文献2)
日頃の生活を見直すことで、大腸がんのリスクを下げられる可能性があります。ここでは大腸がんを防ぐために気を付けたい生活習慣について、ポイントごとに解説します。
食事
食生活の欧米化に伴い、日本では大腸がんが増えていると言われます。実際、脂肪分の多い食事は大腸がんのリスクを高める要因のひとつです。(文献2)
肉類や揚げ物中心の高脂肪食ばかりではなく、野菜や果物、海藻類など食物繊維を豊富に含む食材を意識して摂りましょう。食物繊維は腸の働きを整え、発がん物質を絡め取って体外に排出するのを助けます。
さらにカルシウムの摂取も大腸がん予防に効果的な研究結果があるため、カルシウム豊富な牛乳や小魚、乳製品なども適度に取り入れ、栄養バランスの良い食事を心がけると良いでしょう。
逆に加工肉や赤身肉の過剰摂取は控えめにし、アルコールや香辛料の摂りすぎにも注意しましょう。
運動
日常的に体を動かす習慣も、大腸がん予防には重要です。運動不足の状態だと腸の動きが鈍り、発がん性物質が大腸粘膜に長く留まって影響を与えると考えられています。(文献2)
逆に適度な運動習慣は大腸がんの予防に効果的であるとされています。忙しい現代人はつい歩く時間が減りがちですが、通勤時に一駅分歩いてみる、エレベーターではなく階段を使うなど、日常の中でできる範囲で構いませんので意識的に体を動かしましょう。
定期的な運動は腸の蠕動(ぜんどう)運動を促し便通を良くする効果も期待できます。ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなど自分が無理なく続けられる運動から始めてみてください。
飲酒・喫煙のコントロール
喫煙と過度の飲酒は様々ながんのリスク要因です。大腸がんも例外ではなく、タバコを吸う人は吸わない人に比べて大腸ポリープや大腸がんが発生しやすいことがわかっています。また、アルコールの大量摂取は大腸の粘膜を傷つけ、がんのリスクを高めてしまいます。(文献3)
大腸がん予防のためにも、喫煙者の方はこれを機に禁煙にチャレンジしてみましょう。お酒はまったく飲まないに越したことはありませんが、難しい場合は休肝日を作る、一度に飲む量を減らすなど、できる範囲でコントロールしてください。
ストレス管理と睡眠
仕事や家庭の忙しさからくる慢性的なストレスや睡眠不足も、健康維持の大敵です。
ストレスそのものが直接がんの原因になるとまでは言えませんが、過度なストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、免疫力の低下や生活習慣の乱れを招きます。
その結果、間接的にがんのリスクを高める可能性がありますので、忙しい毎日の中でも自分なりのリフレッシュ方法(軽い運動、入浴、趣味の時間など)を見つけ、意識的に心身をリラックスさせる時間を作りましょう。
また、睡眠も非常に重要です。寝不足が続くと体の修復が追いつかず、腸の調子も乱れやすくなります。理想的な睡眠時間には個人差がありますが、日中に疲労感や眠気を感じない程度にしっかり眠るようにしましょう。
とくに働き盛りの30〜50代の方はつい休息を後回しにしがちですが、ご自身の体を労わることも長い目で見て大切です。ストレス解消と十分な睡眠で体調を整え、がんに負けない健康な体づくりを心がけてください。
大腸がんの初期症状は気づきにくいため定期健診が重要
大腸がんは日本で最も患者数が多いがんで、早期にはほとんど症状が現れず静かに進行します。そのため、症状の有無にかかわらず定期的に検診を受けることが極めて重要です。国は男女とも40歳以上に年1回の便潜血検査を推奨しており、多くの自治体や職場健診で受診できます。(文献2)
ご家族に大腸がん歴がある方はとくに注意が必要です。家族性大腸ポリポーシスやリンチ症候群など遺伝的素因によって発症リスクが高まることがあり、近親者に若年発症者が複数いる場合は、40歳未満でも医師と相談し検査開始年齢を早めることをおすすめします。
検診直後でも安心は禁物です。検診と検診の合間にがんが新たに発生し、短期間で進行する例もありますので、血便や便通異常、便が細くなるなどの変化を感じたら、次回の検診を待たず速やかに精密検査を受けてください。
定期検診と、異変を自覚した際の早期受診が、早期発見と完治への鍵になります。忙しい日々の中でも年1回の検診を習慣化し、日々体から小さなサインを見逃さないよう心掛けましょう。
検査と治療の進め方
「便に血が付いていた」「検診で要精密検査と言われた」そのような場合、具体的にどのような検査を受け、どのように治療が進んでいくのでしょうか。
ここからは大腸がんの検査(診断)方法と治療の流れについて説明します。代表的な検査である便潜血検査と大腸内視鏡検査の手順、そして早期がんと進行がんそれぞれの場合の主な治療方法を見ていきましょう。
便潜血検査の流れ
便潜血検査は、便に混ざった肉眼では見えない微量の血液を調べる大腸がん検診です。自宅で簡単に受けられるため、忙しい方でも取り組みやすい検査といえます。
以下の流れで検査を進めます。
- 市区町村の検診案内や職場健診で配布されるキットを受け取る
- 採便は別々の日に2回行う
- 2日分採取し容器は健診機関などへ提出
- 結果を待つ
結果は「陰性」または「陽性」で通知されます。陰性なら便に血液反応がなかったことを示しますが、がんを完全に否定するものではありませんので継続して受診が重要です。
一方、陽性は必ずしも大腸がんを意味しませんが、ポリープや痔など何らかの出血源がある可能性を示します。陽性となった場合は放置せず、速やかに大腸内視鏡検査などの精密検査を受けてください。
事情により内視鏡が難しい場合は、注腸X線やCTコロノグラフィーといった代替検査も選択できますので、医師と相談し自分に合った方法で大腸を詳しく調べましょう。
大腸内視鏡検査の流れ
大腸内視鏡検査は、便潜血陽性や大腸がんが疑われる症状がある場合に実施する精密検査です。肛門から細い内視鏡を挿入し、大腸内部を直接観察します。
- 検査前日は消化の良い食事に切り替える
- 当日朝は下剤と水分で腸内を洗浄する
- 看護師の指示に従って検査室へ
- 横向きになり医師が内視鏡を挿入
- 医師が直腸から盲腸まで観察
検査中は空気や二酸化炭素で腸を膨らませるため、一時的にお腹が張ることがあります。不安な方は鎮静剤を使用して半睡眠状態で受けることも可能です。
検査中に炎症、ポリープ、がんが見つかれば、その場で組織を採取したり小さなポリープを切除(ポリペクトミー)できますが、粘膜表面にとどまる早期がんなら内視鏡切除だけで完全に取り切れる可能性があります。(文献1)
所要時間は通常20〜30分程度。鎮静剤使用時は回復後に帰宅できます。検査後のお腹の張りはガスが出れば解消します。結果は1週間程度で判明し、医師から説明を受けます。
合併症はまれで、多くの方が安全に受けられる重要な検査です。早期発見のためにも、医師におすすめされた場合は積極的に受けましょう。
早期発見の治療法と進行がんの場合
大腸がん治療は、病期によって方法もゴールも大きく変わります。ステージ0~I期の早期がんは粘膜内にとどまるため、内視鏡で病変を切除するか、腹腔鏡など最小限の手術で患部のみを取り除く治療が中心です。
切除できれば再発は少なく、入院期間も短く済みます。一方、がんが腸壁を越えたりリンパ節転移を伴うステージII~III期では、根治手術で腸と周囲リンパ節を広めに切除したうえで、再発予防を目的とした抗がん剤を数か月追加することが一般的です。
さらにステージIV期では完治より延命と生活の質維持が主眼となり、抗がん剤や分子標的薬を基本に、症状緩和のための手術・放射線を組み合わせます。肝臓や肺など転移が限局していれば、切除で長期生存をめざすケースもありますが、切除できない場合は放射線治療や薬物療法など外科手術以外の治療法を選択します。
いずれの段階でも年齢、体力、希望を踏まえ治療計画を個別に立てることが重要です。
早期で見つかれば内視鏡だけで完治できる可能性が高いのに対し、進行後は治療が複雑化し身体的・経済的負担も増します。便潜血検査と内視鏡検査を活用し、早期発見で負担の少ない治療につなげましょう。(文献2)
まとめ|大腸がんの症状かな?と思ったらすぐに専門家に相談を!
大腸がんは日本で患者数の多い病気ですが、早期に発見さえできれば決して怖がる必要はありません。
「血便などの症状がないから自分は大丈夫」と油断せず、定期検診を受けて早期発見に努めることが何より重要です。
この記事でご紹介した症状チェックリストに該当するものがあれば、たとえ忙しくても放置せずに消化器の専門医に相談してください。とくに便に血が混じる、便秘と下痢を繰り返すなどの異変は、大腸がんに限らず体からの大切なサインです。
「恥ずかしい」「時間がない」と我慢して手遅れになる方がよほど大変ですので、勇気を出して受診してください。
また、普段からバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、タバコやお酒を控えるといった生活習慣の改善も大腸がん予防に繋がります。
そして何より、おかしいなと違和感を感じたらすぐに専門家へ相談しましょう。一人で悩まず、早め早めの行動で大腸がんから自分と家族の健康を大切にしてください。
なお、当院「リペアセルクリニック」ではがん予防を目的とした「免疫細胞療法」を行っております。
詳しくは、以下のページをご覧ください。

再⽣医療で免疫⼒を⾼めることができる時代です。
参考文献
(文献1) 国立がん研究センター中央病院「大腸がんとは」https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/140/index.html(最終アクセス:2025年04月22日)
(文献2) 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」2025年03月24日.https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/print.html(最終アクセス:2025年04月22日)
(文献3)公益財団法人 日本対がん協会「がん予防・がん検診について」2022年10月5日https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_checkup/%E5%90%84%E7%A8%AE%E3%81%AE%E6%A4%9C%E8%A8%BA%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8C%E3%82%93%E6%A4%9C%E8%A8%BA%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/%E6%A4%9C%E8%A8%BA%E3%81%AE%E6%84%8F%E7%BE%A9%E3%81%A8%E7%9B%AE%E7%9A%84.(最終アクセス:2025年04月22日)