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脊髄腫瘍になると歩けない?歩行ができない原因やメカニズムを医師が解説

脊髄腫瘍 歩けない
公開日: 2025.05.30

「足が前に出ない」
「立ち上がろうとすると膝が崩れる」

急な歩行障害は筋肉や関節の異常と思いがちですが、背骨内の脊髄を圧迫する腫瘍が原因となる場合もあります。初期には腰痛やしびれ、疲労感といったありふれた症状に紛れやすく、年齢のせいと自己判断してしまうケースも少なくありません。

しかし圧迫が進むと排尿障害や感覚消失を伴い、歩行機能や日常生活動作の完全な回復には長期のリハビリが必要になることもあります。

本記事では現役の医師が、脊髄腫瘍の基本的知識や歩けなくなるメカニズム、診断・治療までを詳しく解説します。脊髄腫瘍について気になる方は、ぜひ参考にしてください。

【結論】脊髄腫瘍で歩けなくなる可能性はある

脊髄腫瘍は背骨の中で脊髄や神経を圧迫し、進行すると歩けなくなる恐れがあります。腫瘍が大きくなり神経を広範囲に圧迫すると、脚に力が入らず立ち上がれない、足が前へ出ないといった歩行不能が生じます。突然の歩行障害は、腫瘍内の出血による血種や腫瘍で弱った脊椎の骨折が要因のこともあり、緊急に受診が必要です。

初期症状や前兆として以下のようなものがあります。

  • 手足や体幹のしびれや麻痺
  • 筋力低下
  • 腰や首の痛み
  • 排尿や排便の障害
  • バランス感覚の低下

首や胸、腰のどの部分に腫瘍ができるかによって、症状が変わってきます。進行すると、四肢麻痺になる場合もあるでしょう。

脊髄は脳の指令を手足に伝える神経の幹線道路であり、その通り道が狭まると信号が遮断され筋肉が動かせなくなります。疲れや年齢のせいと放置すると取り返しのつかない麻痺に進行する恐れもあるため、違和感を覚えたら早期に専門医を受診し、画像検査と治療で歩行機能を守ることが大切です。

早期手術で神経圧迫を解除できれば症状の改善を期待でき、放射線療法や化学療法、リハビリと組み合わせると社会復帰の可能性が高まります。

術後はリハビリで筋力とバランスを取り戻すことが重要です。定期的な医療機関の受診と、ストレッチや姿勢改善など自宅でできる予防的ケアを併用することで、再発や機能低下を防ぎ、より早い社会復帰を目指せます。

脊髄腫瘍で歩けなくなる原因

脊髄腫瘍で歩けなくなる主な原因は、腫瘍が脊髄やその血管を圧迫し、電気信号と血流を遮断することです。圧迫が続くと神経線維の伝達が鈍り、筋肉に「動け」という命令が届かなくなります。さらに腫瘍内の出血で血種が生じたり、腫瘍が骨を侵食して脊椎が折れると、短時間で強い麻痺が出現するケースもみられるでしょう。

進行速度や症状の現れ方は発生部位によって異なり、以下のように歩行機能に影響します。

発生部位 代表的な症状 歩行への影響
頸髄 ・手足・体幹の感覚障害や麻痺(文献1
・肩や手の痛み、頸部痛
・手足のしびれ、ふらつき
・足の感覚が鈍い
・しびれや麻痺
・ふらつき、転倒(文献2
胸髄 ・胸〜腹部以下の感覚障害、下肢運動障害(文献1
・背部痛、両足の筋力低下、ふらつき、手足のしびれ
・歩行に支障が出る
・ふらつき、転倒(文献2
腰髄 ・手は無症状
・下肢に感覚・運動障害(文献1
・腰痛、足の痛み、筋力低下
・歩行時足が痛い(文献2
・しびれ

こうした症状は加齢による腰痛などと誤解されやすく、放置すると治りづらい麻痺に進行するケースもあります。手足の痛みやしびれが数週間続く、歩幅が狭くなる、膝が崩れるといった異変を感じたら、整形外科や脳神経外科でMRIを含む精密検査を受けることが早期治療への近道です。

歩けない脊髄腫瘍の治療法

脊髄腫瘍による歩行障害には、以下の3つの治療が柱になります。

  • 腫瘍を取り除く外科的手術
  • 残った腫瘍を弱らせる放射線や化学療法
  • 痛みや麻痺を和らげる投薬治療

ここからは各治療の流れとポイントをわかりやすく紹介します。

外科的手術

手術は腫瘍そのものをできるだけ取り除き、脊髄を押す力をなくす方法です。背骨の中はとても狭く神経は細いため、顕微鏡で拡大しながら腫瘍を少しずつ摘出します。腫瘍を取ったあとに背骨が不安定になる場合は、金属のねじや人工骨で固定して支えます。

圧迫が取れれば、しびれや力の入りにくさが改善し、歩く力が戻ることが多いです。手術は早いほど神経が元に戻りやすいので、症状が軽いうちに受けることが大切です。

ただし、脊髄を損傷するリスクもあるため、腫瘍と脊髄の境界がわかりにくいケースは完全な摘出は困難と言えるでしょう。腫瘍が完全に取れなかったり再発の恐れがある場合は、放射線など追加治療を組み合わせて経過を見守ります。

神経の損傷の程度によっては、手術後もすぐには神経の機能が回復しない場合もあり、手術後のリハビリが重要です。また、腫瘍が完全に取れなかったり再発の恐れがある場合は、放射線など追加治療を組み合わせて経過を見守ります。

脊髄腫瘍の治療は、外科的手術による減圧が第一の選択とされますが、部位や良性・悪性によっては放射線治療や化学療法を併用する場合も多いです。また、術前に放射線を照射し、腫瘍を縮小させてから手術で摘出するケースもあります。

良性腫瘍の場合は、手術で腫瘍がすべて取り除かれていれば、再発はほとんどないと言われています。良性腫瘍なら腫瘍の大きさが小さかったり、無症状であったりする場合は、急いで摘出せずに、経過観察になる場合も多いです。

放射線療法・化学療法

放射線療法は体の外から高いエネルギーの光を当て、腫瘍の細胞を弱らせて縮める治療です。手術で取り切れなかった部分や切除が難しい場所にある腫瘍に使われます。

悪性リンパ腫のように放射線が効きやすい腫瘍なら照射だけで症状が軽くなることもありますが、効きにくい腫瘍では手術や薬を組み合わせるケースが多いです。治療中は以下のような副作用が出る場合があります。

  • 疲労感、だるさ、倦怠感
  • 食欲不振
  • 白血球減少、赤血球減少、血小板減少 など

放射線治療中に起こりやすい全身症状には、だるさや疲労感、食欲不振などが挙げられます。また、骨髄抑制による血球の減少が生じることもあります。疲労感は放射線そのものの影響に加え、がんと診断された精神的ストレスや外来通院の負担が重なることで強まる場合も多いです。

口や食道、胃腸に照射が当たると粘膜が炎症を起こし、飲食しづらくなって食欲が低下しやすくなります。また、骨盤や胸骨、背骨など骨髄が多い部位に広い範囲で照射すると血液をつくる力が弱まり、白血球・赤血球・血小板が減少する場合があるでしょう。

転移性脊椎腫瘍では原発がんに応じた全身化学療法が基本で、局所的な症状のコントロールに放射線や手術を追加します。化学療法単独で根治できる脊髄腫瘍は少なく、多くは手術や放射線後の補助療法、再発時の救済療法という位置づけです。

薬剤の選択を誤ると効果が乏しいだけでなく、白血球・血小板減少や悪心、脱毛など全身性の副作用が強く出るため、治療中は定期採血やMRIを行い、効果と副作用を天秤にかけながら投与量や間隔を調整します。

投薬治療

腫瘍が脊髄を圧迫している場合には、コルチコステロイド(デキサメタゾンなど)を大量投与してむくみを抑えます。腰痛や背部痛、排尿障害などの症状が見られた場合は、薬が追加されます。しかし、薬には副作用があるため、定期的に血液検査や肝臓・腎臓のチェックを行い、細かい量の調整が必要です。

近年は免疫を利用して腫瘍を攻撃する新しい薬も研究が進んでおり、将来の治療選択肢が広がると期待されています。痛みや不安が強い場合は、精神科のサポートや睡眠薬を併用しながら、体と心の両方を支えることが大切です。

投薬治療に不安を感じている方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談オンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。

手術しなくても治療できる時代です。

腰の痛みは手術しなくても治療できる時代です。

脊髄腫瘍かも?と歩けない症状にお悩みの方は当院へご相談ください

歩行時のふらつきや脚に力が入らないなどいつもと違う感覚は、脊髄腫瘍が神経を圧迫しているサインかもしれません。

初期段階で治療を行い脊髄への圧迫を解除できれば、しびれや麻痺が劇的に改善し、仕事や趣味への復帰も十分に可能です。歩行障害は進行すると回復に時間がかかるため、症状が軽いうちの受診がポイントとなります。

年齢や疲労のせいと自己判断せず、少しでもおかしいと感じたら、当院「リペアセルクリニック」のメール相談オンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。

脊髄腫瘍を疑う歩けない方からよくある質問

そもそも脊髄腫瘍とはどんな病気ですか?

脊髄腫瘍とは、背骨の中を走る神経(脊髄)のまわりに腫瘍ができ、通り道を狭くしてしまう病気です。発生場所と性質でおおまかに3タイプに分かれます。

場所 主な発生源 特徴 治療の考え方
硬膜外(骨と脊髄の外側) ほかの臓器からの転移が最多 骨を壊しながら大きくなり、神経を強く圧迫 手術+放射線・薬でコントロール
硬膜内髄外(脊髄の内側、脊髄の外) 神経の膜や鞘からできる良性腫瘍 大きくなるまで無症状のこともある 小さければ経過観察、大きければ手術
硬膜内髄内(脊髄そのもの) 脊髄内部の細胞 悪性が多く進行が速い 早期に手術・放射線を検討

腫瘍が大きくなると、背中や手足の痛み・しびれ、力の入りにくさが出現します。放置すると歩行や排尿がむずかしくなることもあります。症状が軽いうちにMRIなどの精密検査を受け、専門医と治療方針を相談することが回復へとつながります。

脊髄腫瘍の診断・検査方法は?

脊髄腫瘍の診断は、まず以下の項目をチェックします。

  • 痛み
  • しびれ
  • ふらつき
  • 筋力低下
  • 排尿排便障害 など

このような神経症状を丁寧に評価します。

次に、レントゲンで骨の変形や破壊など異常をチェックした上で、神経や腫瘍を詳しく撮影できるMRIやCTを追加します。造影剤を用いたMRIで腫瘍の境界や血流を把握し、椎間板ヘルニアとの鑑別には、電気刺激を与える電気生理検査を併用することもあります。画像だけで腫瘍の状態が断定できない場合は、生検で組織を採取して良性・悪性や腫瘍の種類を最終確定します。

検査はMRIとCTを備えた医療機関で受けることが不可欠で、早期の診断がその後の回復を大きく左右します。神経機能を守るため、違和感が軽いうちに受診することが何より重要です。
 

参考文献

文献1
社会福祉法人「恩賜財団 済生会」ホームページ
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/spinal_cord_tumor/(最終アクセス:2025年5月12日)

文献2
地方独立行政法人 東京都立病院機構「東京都立神経病院」ホームページ
https://www.tmhp.jp/shinkei/section/medical-department/neuro-surgery/neuro-surgery-disease/spinal-cord-tumor.html(最終アクセス:2025年5月12日)

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