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軽度の脊髄損傷とは|知っておきたい症状・治療法と後遺症の可能性を医師が解説

軽度の脊髄損傷と診断され、「後遺症は残るのか」と不安を抱えている方もいるでしょう。損傷レベルが軽度でも、早期の治療や継続的なケアが回復の程度や後遺症の有無に影響します。
本記事では、軽度の脊髄損傷に関する症状や原因、治療法をわかりやすく解説します。後遺症が出る可能性についても触れているので、ぜひ参考にしてください。
目次
脊髄損傷とは
脊髄損傷とは、脳からの指令を体に伝える脊髄が外傷や病気などで損傷を受けた状態を指します。交通事故や転倒といった外傷が主な原因です。
脊髄は、背骨(脊椎)に保護されるかたちで脳幹の直下からみぞおちの下あたりまで伸びています。脊髄は部位ごとに区別されており、損傷した場所によって症状の現れ方が異なります。
脊髄の部位と損傷した際の主な症状例は以下の通りです。
部位 |
損傷部位の位置 |
主な症状の例 |
---|---|---|
頚髄(C) |
首のあたり(C1~C8) |
|
胸髄(T) |
首の下~胸のあたり(T1~T12) |
|
腰髄(L) |
腰まわり(L1~L5) |
|
仙髄(S) |
お尻の上~尾てい骨あたり(S1~S5) |
|
表の通り、損傷部位によって運動機能や感覚、自律神経機能に障害が生じます。上部の脊髄を損傷するほど症状が重くなる傾向があり、損傷の程度によっても体への影響や回復の見込みには差があります。
軽度な脊髄損傷の症状
軽度な脊髄損傷では、しびれや麻痺、運動障害などの症状が現れます。以下でそれぞれの症状について詳しく見ていきましょう。
しびれや麻痺
脊髄損傷した部位により、軽度なしびれや麻痺の症状が出るケースは珍しくありません。脊髄は運動や感覚をつかさどる神経が集中しているため、軽度の損傷でも症状が現れる可能性があります。
基本的な動作はできるものの、細かい作業に支障をきたしたり動きによってはスピードが遅くなったりする場合があります。
しびれや麻痺の程度によっては、仕事や家事などの日常生活に影響を与えるため、適切な対応が重要です。
運動障害
軽度の脊髄損傷では、歩行や手の動きなどに支障をきたすケースもあります。脊髄の損傷により、神経の伝達がうまくいかず、筋肉が正確に動かせなくなるためです。
たとえば、足に力が入りづらく階段の昇り降りでふらついてしまう、体のバランスがとりにくいなどの症状が見られます。
運動機能の低下は見落とされやすいものの、放置すると悪化するリスクがあるため、早期の診断と必要に応じたケアが重要です。
感覚障害
軽度な脊髄損傷でも、触覚や温度、痛みなどの感覚に異常が出るケースも少なくありません。脊髄の損傷によって、感覚の伝達が鈍くなります。
手や足に触れても感覚が弱く感じる、冷たいものや熱いものに気づきにくいといった症状が一例です。
感覚の異常は日常生活のなかでも思わぬケガややけどの原因につながりかねないため、注意しましょう。
自律神経障害
自律神経の働きが乱れることも、軽度な脊髄損傷の症状の一つです。自律神経は、血圧・体温・排泄・発汗など体の機能を無意識に調整しているため、脊髄の損傷でバランスが崩れる可能性があります。
たとえば、異常に汗をかく、身体が冷えやすくなる、排尿の感覚があいまいになるといった症状が現れるケースも珍しくありません。一方で、汗をかきにくくなるケースもあり、体の中に熱がこもって熱中症のような症状が出る場合もあるため注意が必要です。
自律神経の乱れは症状があいまいなため、軽視されやすい傾向にあります。しかし、放置すると慢性的な体調不良につながる恐れがあるため、違和感を覚えたら早めに医療機関を受診しましょう。
脊髄損傷の症状については以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
軽度な脊髄損傷の原因
軽度な脊髄損傷の原因は、外的要因がほとんどです。脊髄は背骨(脊柱)に守られているものの、転倒や交通事故などで、脊柱の骨折や脱臼により圧迫されたり損傷したりする可能性があります。
交通事故以外にも、高齢者が転倒して腰や背中を強く打った場合やスポーツ中の衝突などで、軽度の脊髄損傷を負うケースも少なくありません。とくに、加齢により骨が弱くなっている場合は、見た目は軽い転倒でも脊髄を損傷している恐れがあるため注意が必要です。
強い痛みがない場合でも、神経が傷ついている可能性があります。軽度なうちに適切な処置を受けるためにも初動が大切です。
脊髄損傷の原因について詳しく知りたい方は、以下の記事でも解説しているので、参考にしてください。
軽度な脊髄損傷の診断方法
軽度な脊髄損傷は、以下の診断方法が一般的です。脊髄損傷は部位や神経への影響によって、症状が異なるため正確な判断が求められます。
診断方法 |
内容・目的 |
---|---|
画像診断 |
レントゲンやMRI、CTを使って脊髄や周辺の組織がどの程度傷ついているのか詳しく調べる |
神経学的検査 |
電気の刺激で神経の反応や伝達機能を調べる |
臨床評価 |
筋力や反射、皮膚の感覚などをチェックして、脊髄損傷の範囲や程度を確認する |
これらの検査結果をもとに、損傷部位や重症度レベルを把握し、適した治療や必要に応じてリハビリを実施します。とくに、軽度の脊髄損傷では見落とされやすいため、早期の診断と適切な対応が不可欠です。
脊髄損傷が軽度な場合の治療方法
脊髄損傷が軽度な場合の治療法は、急性期と慢性期によってそれぞれ異なります。とくに、発症直後の対応は、そのあとの回復や後遺症の有無に影響を与えるため、適切な治療が重要です。
以下で、詳しく解説するので参考にしてください。
急性期の治療法
脊髄損傷の急性期とは、発症してから2~3週間程度の期間を指すのが一般的です。急性期は、外的要因からの直接的な損傷(一次損傷)や炎症や腫れ、血流障害といった体内変化(二次損傷)が進行する時期でもあります。
急性期では、二次損傷の進行をできるだけ抑える治療が重要です。軽度の脊髄損傷では、以下の治療が行われます。
治療法 |
目的 |
---|---|
安静 |
症状の悪化を防ぐ |
薬物療法(ステロイド系抗炎症薬など) |
炎症や二次損傷を防ぐ |
コルセットや固定装置の装着 |
脊髄を安定させ、損傷の拡大を防ぐ |
理学療法 |
運動機能を維持し、合併症のリスクを減らす |
急性期の治療は、その後の回復に大きく影響するため重要です。自覚症状が軽くても、早期の対応が後の回復に影響します。
慢性期の治療法
損傷からある程度時間が経過し、急性期を過ぎた後の慢性期では、症状の回復を目的とした治療やリハビリが中心となります。軽度の脊髄損傷でも、違和感やしびれが残る可能性があるため、継続的なケアが必要です。
慢性期に行われる治療法には以下のようなものがあります。
治療法 |
目的 |
---|---|
理学療法 |
筋力・柔軟性の回復、運動機能の維持のため |
ビタミン剤の投与 |
神経の修復に役立つため |
リハビリは、残存機能を最大限に活かしながら日常生活を取り戻すためには欠かせません。また、神経の修復や再生をサポートする目的で、補助的にビタミン剤を投与するケースもあります。
適切なリハビリと経過観察を続けることが、身体機能の維持と回復には重要です。
脊髄を損傷した場合のリハビリやトレーニングについては、下記の記事を参考にしてください。
脊髄損傷が軽度な場合の後遺症の有無について
脊髄損傷が軽度な場合は、適切な治療とリハビリによって後遺症を残さずに回復するケースがあります。軽度の損傷であれば、神経へのダメージが比較的少ないためです。治療やリハビリを早期に開始できれば、運動や感覚などの機能が回復する可能性があります。
しかし、損傷部位や度合いによっては適切な治療やリハビリを行っても、必ずしも後遺症が出ないとは限りません。
脊髄損傷が軽度であっても、後遺症がまったくないとは言い切れないため、違和感を放置せず早期の対応と継続的な治療が大切です。
リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。脊髄損傷で悩みがあるときはお気軽にご相談ください。
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軽度な脊髄損傷は適切な治療とリハビリで回復に期待できる
軽度な脊髄損傷はしびれや麻痺、運動障害が症状として現れる場合があります。違和感を覚えたら放置せずに適切な治療を受けることが大切です。
脊髄損傷が軽度であれば、適切な早期治療とリハビリで回復に期待ができるでしょう。一方で、症状が軽度に思えても、損傷のレベルや部位によって後遺症が出るケースもあります。
早めに医師の診断を受け、継続的なケアを続けることが重要です。リペアセルクリニックでは、脊髄損傷に対する新たな治療選択肢として、幹細胞を用いた再生医療を行っております。軽度な脊髄損傷でお悩みの方はご相談ください。