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シーバー病でサッカーを休むべき?医師が教える判断ラインと復帰を早める方法

「かかとが痛いって言ってるけど、大会まで2週間しかない…」
「このまま休ませるべき?それとも様子を見ながら続けさせても良いの?」
お子さんのかかとの痛みに悩まされている保護者の方は少なくありません。
実は、少年サッカーで急増している”かかと痛”の多くはシーバー病と呼ばれる成長期特有の疾患が原因です。
シーバー病は適切に対処すれば数週間で復帰できる一方で、放置してしまうと半年以上の長期離脱につながるリスクがあります。
本記事では、シーバー病について正しく理解し、お子さんのサッカーを休ませるかどうかの判断がつくようになる具体的な方法をお伝えします。
さらに、復帰を早めるための4つの方法や家庭でできるセルフケア、再発予防策まで詳しく解説します。
お子さんの将来のサッカー人生を守るために、ぜひ最後までご覧ください。
目次
シーバー病でサッカーを休むべき?チェックリストで判断しよう
シーバー病でサッカーを休むかどうかの判断は、痛みの程度と日常生活への影響度で決まります。
シーバー病とは成長期の子どもの踵骨(かかとの骨)に起こる炎症で、10歳から15歳のスポーツをする子どもに多く見られる疾患です。(文献1)
痛みの程度によって対応方法が変わるため、以下のチェックリストを使って、お子さんの現在の状態を確認してみましょう。
症状レベル | 痛みの特徴 | 対応方法 | 復帰目安 |
---|---|---|---|
軽度 | 練習後のみ痛む、歩行は正常 | 軽い練習のみ、アイシング継続 | 4-6週間(文献2) |
中度 | 練習中も痛む、歩き方がおかしい | サッカー休止、セルフケア重視 | 8-12週間 |
重度 | 日常生活でも痛む、足を引きずる | 完全休養、医療機関受診 | 半年以上 |
とくに注目していただきたいのは歩き方の変化です。
お子さんが普段と違う歩き方をしていたり、足を引きずるような仕草を見せたりする場合は、中度以上の症状と判断してサッカーを休ませることをおすすめします。
また、朝起きたときの一歩目で強い痛みを訴える場合も、症状が進行している可能性が高いため注意が必要です。
判断に迷った場合は、痛みがあるときは休むことで、長期離脱を防げます。
休まずサッカーを続けると悪化するリスクあり
かかとの痛みを我慢してプレーを続けることで起こるリスクについてみていきましょう。最も深刻なのは、症状の重症化による長期離脱です。
軽度のシーバー病であれば4週間程度で復帰できますが、無理を続けると重度まで進行し、完全に痛みが取れるまで半年以上かかるケースもあります。
さらに心配なのは、かばう動作により他の部位に負担がかかることです。
かかとの痛みをかばって歩いたり走ったりすると、慢性的に足への負担が増加し、二次的な怪我のリスクが高まります。
実際に、シーバー病を放置した結果、歩行困難になったり、かかとの骨が変形するお子さんも見られます。
また、痛みがある状態でのプレーは集中力を欠き、思わぬ接触事故や転倒につながるでしょう。
成長期の骨は大人に比べて柔らかく、継続的な負荷により骨の変形や成長障害を起こす危険性もあるので、お子さんの将来のサッカー人生を考えると、短期間の休養は決して無駄ではありません。
今しっかり休ませることで、お子さんがより長くサッカーを楽しめるようになります。長期的な視点でお子さんの様子を見守りましょう。
シーバー病からサッカーへの本格復帰を早める4つの方法
シーバー病からの復帰を早めるためには、段階的なアプローチが重要です。
ここでは4つの方法をご紹介します。
これらの方法を組み合わせることで、本格復帰が期待できます。具体的な実践方法と注意点をみていきましょう。
その1.アイシング
アイシングは、シーバー病の痛みと炎症を抑える基本的で効果的な方法です。
炎症を起こしているかかとの骨の成長軟骨部分を冷やすことで、血管が収縮し、炎症反応を抑制できます。
氷嚢または冷却パックを使用し、かかと周辺を1回15分〜20分程度冷やしてください。
タオルなどで氷嚢を包み、直接肌に当てないよう注意しましょう。
実施タイミングは、練習後すぐに行なってください。
練習後のアイシングは、運動により高まった炎症反応を速やかに抑制するため非常に重要です。アイシング後は温度感覚が鈍くなるため、お子さんが痛くないと言っても無理な運動は控えましょう。
その2.ストレッチ
ふくらはぎと足首周りの柔軟性向上は、シーバー病の改善と再発予防に欠かせません。
筋肉の緊張が踵骨への牽引力を増加させ、シーバー病の症状を悪化させます。
効果的なストレッチ方法をご紹介します。
まず、ふくらはぎのストレッチです。
- 壁に手をついて立ち
- 痛い方の足を後ろに下げ
- かかとを地面につけたまま体重を前にかける
ふくらはぎの筋肉が伸びている感覚があれば正しくできています。
30秒間キープし、これを3セット行ってください。
次に、ボールを使った足裏のストレッチです。
- テニスボールを用意する
- 椅子に座った状態で足裏にボールを挟んで痛くない程度に圧迫する
- 前後に動かす
ストレッチは無理のない範囲で毎日継続することが重要です。痛みが強い時期でも、痛みが出ない範囲でストレッチは継続してください。
ストレッチにより筋肉の柔軟性が向上すると、踵骨への負担が軽減されます。
その3.筋力トレーニング
休養期間中の筋力低下を防ぎ、復帰後のパフォーマンス維持につなげるため、適切な筋力トレーニングが重要です。
ただし、かかとに強い負荷をかけるトレーニングは避けるために、体幹部のトレーニングを中心に行いましょう。
まず、地面に座った状態で両膝をかかえ、お腹と太ももの距離を一定にしたまま前後に揺れてください。腹直筋が鍛えられ、姿勢の改善にも役立てられます。
このトレーニングは体幹が鍛えられることと、足に負担が少ないトレーニングですので、シーバー病を患っていてもトレーニング可能です。
トレーニング中に痛みが出現した場合は、すぐに中止し、痛みが完全に治まってから再開しましょう。焦らず段階的に進めることが、本格復帰への近道です。
その4.痛みがなくなってから段階的に強度を上げる
完全に痛みが消失してからの復帰プロセスが、再発防止の鍵となります。いきなり元の練習強度に戻すのではなく、段階的に負荷を上げていきましょう。
まずは平地での軽いウォーキングとストレッチから始め、この段階で痛みが再発しないことを確認してください。
痛みがなければ、ジョギングを行なったり、ボールを使ってドリブルをしてみたりと、サッカーに近い動きを少しずつ取り入れていきましょう。
ここでも痛みや違和感がなければかかとに負担のかかるジャンプやシュートなど、サッカーで使う動きを取り入れてみてください。
すべての段階で痛みがなければ、通常の練習に復帰可能ですが、もし痛みや違和感があれば前の段階に戻ってください。
専門医との相談も重要ですので、復帰時期の判断に迷った場合は医師の意見を求めましょう。
家庭でできるシーバー病のセルフケアと再発予防
シーバー病の治療と再発予防において、家庭でのセルフケアは非常に重要な役割を果たします。
とくに重要なポイントはふくらはぎの柔軟性維持とかかとへの衝撃軽減の2つです。
毎日継続できる簡単で効果的な方法はテーピングとストレッチ、インソールを活用することです。これらを取り入れることで、症状の改善と再発防止の両方を実現できます。
テーピング・ストレッチ
テーピングは、かかとへの負担を軽減し、痛みを和らげる効果的な方法です。
正しいテーピングにより、踵骨への牽引力を分散させ、炎症の悪化を防げます。
家庭でできるテーピング方法やストレッチについては、以下の記事にて詳しく紹介しています。興味ある方はあわせてご覧ください。
インソール選び:踵パッド vs. フルカスタム
インソール選びは、シーバー病の症状軽減と再発防止において重要な要素です。
市販品とオーダーメイドのカスタム品、それぞれの特徴と効果について詳しく解説します。
まず、市販のインソールの特徴です。
踵パッドタイプは2,000円から3,000円程度で購入でき、すぐに使用できる利便性があります。
衝撃吸収材としてジェルやシリコンが使用されており、かかとへの負担を20-30%軽減できます。
一方、フルカスタムインソールは20,000円から30,000円と高額ですが、個人の足型に完全に合わせて作製されます。
効果と費用の比較表をご確認ください。
項目 | 市販品(踵パッド) | カスタム品 |
---|---|---|
価格 | 1,000-3,000円 | 20,000-30,000円 |
効果 | 負担軽減 |
スポーツの特性に合わせた足への負担軽減 子どもの足の形に合わせた足への負担軽減 |
フィット感 | 合う形があればフィット | 完全個別対応 |
耐久性 | 6-12カ月 | 2年以上 |
入手期間 | 即日 | 60分〜1週間 |
市販品は軽度から中度のシーバー病に適しており、症状の初期段階では十分な効果が期待できます。
とくに、アーチサポート機能付きの市販品は、足全体のバランスを整え、かかとへの負担を効果的に軽減します。
カスタムインソールは、機能としては申し分ありませんが、コストがかかるため、重度の症状や再発を繰り返すケースで使うと良いでしょう。
足の形状、歩行パターン、体重分布まで考慮して作製されるため、症状改善効果が高く、長期的な再発防止に優れています。
選択の目安として、軽度の症状なら市販品から始め、効果が不十分な場合や重度の症状にはカスタム品を検討してください。
どちらを選ぶにしても、定期的な交換と適切なメンテナンスが効果を維持する鍵となります。
シーバー病の治療方法|保存療法と再生医療について
症状が重度に進行し、セルフケアだけでは改善が困難な場合は、医療機関での専門的な治療が必要です。
シーバー病の医学的治療は、主に保存療法が第一選択となります。
保存療法には、これまでご紹介したアイシング・ストレッチ・インソールに加えて、消炎鎮痛剤の内服や外用薬の使用があります。
痛みが強い場合には、ステロイド注射による局所的な炎症抑制も検討されます。
また、シーバー病に対する治療法には、再生医療のPRP療法もあります。
PRP治療は、患者様自身の血液から血小板を濃縮した成分を患部に注入し、自然治癒力を高める治療法です。
早期復帰を希望される場合には、当院のような再生医療専門医に相談をおすすめします。
治療方法の選択は、症状の程度、お子さんの年齢、競技レベル、家族の希望などを総合的に考慮して決定されますので、お気軽にご相談ください。
まとめ|痛みを放置しない勇気が未来のプレーを守る
シーバー病は、正しい知識と適切な対応により、比較的短期間で改善できる疾患です。
本記事でお伝えした判断基準を活用し、お子さんの症状に応じた適切な対応を取ることが重要です。
軽度の症状であれば、アイシング・ストレッチ・インソールの組み合わせで数週間での改善が期待できますが、症状を放置したり、痛みを我慢してプレーを続けさせたりすると、半年以上の長期離脱につながるリスクがあります。
今だけ我慢するような考えは、結果として大切な試合や大会を棒に振ることになりかねませんので、家庭でのセルフケアを継続し、段階的な復帰プログラムを実践して、確実な復帰を果たしましょう。
治療法としては、保存療法の他にPRP療法という再生医療も治療の選択肢です。
お子さまの将来のサッカー人生を守るために、あとで後悔しないために正しい判断ができる手助けになると幸いです。
痛みや症状についてご不安な点がございましたら、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。
参考文献
(文献1)済生会「踵骨骨端症(アポフィサイティス)」https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/apophysitis_of_the_calcaneus/ (最終アクセス:2025年5月24日)
(文献2)South Dublin Podiatry「How Long Does Sever’s Disease Last? A Guide for Parents and Young Athletes」South Dublin Podiatry, 2024年9月23日 https://www.southdublinpodiatry.com/tips-and-advice/b/how-long-does-severs-disease-last-a-guide-for-parents-and-young-athletes (最終アクセス:2025年5月25日)