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肩関節亜脱臼における治し方を医師が解説|全治期間や自分でケアする危険性も紹介

肩関節 亜脱臼 治し方
公開日: 2025.06.29

「肩の亜脱臼ってどうやって治すの?自分でも治せる?」
「肩を動かすと痛みと違和感がある…これって亜脱臼?」

このような疑問や不安を抱える方は多いでしょう。

結論からお伝えすると、肩の亜脱臼は保存療法・リハビリ・手術などを組み合わせることで治療可能です。

一方で、亜脱臼を自分で治す情報もありますが、関節の損傷や慢性的な肩の不安定性につながるリスクがあります。

リスクを未然に防ぐためにも、正しい治し方を理解しておきましょう。

本記事では、肩関節亜脱臼の症状や治し方、放置したときのリスクについて詳しく解説します。脱臼との違いについても紹介するので、肩の痛みや違和感でお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。

【基礎知識】肩関節亜脱臼と脱臼の違いについて

亜脱臼とは、肩の関節が正常な位置から部分的にずれた状態を指します。

肩関節の亜脱臼は関節が外れかかった後、自然に元の位置へ戻る場合がある点が大きな特徴です。そのため、「外れかかった」や「抜けかけた」と表現されることもあります。

肩関節の亜脱臼が起きた際には、瞬間的に鋭い痛みや腕が抜けるような感覚を覚えることがあります。

しかし、すぐに肩関節が元の位置に戻るため、肩がはっきりと外れたといった自覚がないケースも少なくありません。自分では亜脱臼だと気づかず、肩の違和感やだるさとして感じている場合もあります。

一方で、脱臼とは肩関節が本来の位置から完全に外れてしまった状態を指します。

ケガによって生じる肩関節の脱臼の多くは、腕の骨である上腕骨が肩の前方へ外れるタイプです。とくに以下のようなコンタクトスポーツで発症しやすい傾向にあります。

  • 柔道
  • ラグビー
  • アメリカンフットボール

亜脱臼は脱臼に比べて症状が軽く、気づかないケースも少なくありません。しかし、亜脱臼を放置すると症状の悪化や別の疾患に移行する可能性があるため、早期に治療する必要があります。

肩関節亜脱臼の治し方|全治までの期間も紹介

肩関節の亜脱臼の治療には主に以下の3つの方法が挙げられます。

  • 保存療法
  • リハビリ
  • 手術

保存療法とリハビリを中心にした治療が一般的です。しかし、これらの方法で状態がよくならない場合や、脱臼を繰り返す場合には手術が検討されます。

それぞれの治療方法を見ていきましょう。

保存療法|徒手整復と固定

亜脱臼によって肩関節が外れかかった際は、まず専門家による徒手整復(手技により関節を元の位置に戻す処置)がおこなわれます。患者様を仰向けに寝かせた状態で腕をゆっくりと持ち上げていく方法は、痛みが少なく、関節を整復できると知られています。

整復後は再脱臼を防ぐため、肩関節の固定が必要です。固定期間について明確なエビデンスはありませんが、患者の年齢や損傷程度に応じて1〜3週間おこなうケースが一般的です。

また、内旋位固定(従来の三角巾による固定)は、再発の可能性が高いと指摘されています。ある研究では、内旋位固定での再発率が42%であったのに対し、外旋位固定(気をつけの姿勢から、肘を直角に曲げ、脇を少し開いた状態で固定)では26%であったとの報告があります。(文献1

そのため最近では、肩を少し外に開いた状態で固定する外旋位固定を推奨する病院も少なくありません。

リハビリ|インナーマッスルや肩甲骨周囲

一定期間の固定が終了した後は、肩関節の機能回復を目的としたリハビリを開始します。リハビリは自己判断でおこなうと、痛みの悪化や他の筋肉を損傷する恐れがあるので、必ず医師や専門のリハビリスタッフの指導のもとで進めましょう。

適切なリハビリテーションは、肩関節の以下の能力を改善させ、安定性の獲得に大きく寄与すると報告されています。(文献2

  • 筋力
  • 可動域
  • 深部感覚

まずは硬くなった関節の可動域を広げる訓練から始め、痛みのない範囲での振り子運動から慎重に進めていきます。その後、状態を見ながら徐々に肩の安定性を高めるための筋力トレーニングへ移行します。

肩関節の安定性を高めるためには、インナーマッスル(回旋筋腱板)や、肩甲骨の動きに関わる周囲の筋肉をバランス良く鍛えるのが重要です。

回復の程度によりますが、スポーツへの復帰の目安はノンコンタクトスポーツ(テニスやゴルフなど、身体接触のないスポーツ)で4~6カ月、コンタクトスポーツ(バスケやラグビーなど、身体接触があるスポーツ)で6~8カ月と報告されています。(文献3

手術|反復性肩関節脱臼の場合

保存療法やリハビリテーションをおこなっても、脱臼や亜脱臼を繰り返してしまうケースがあります。このように脱臼が習慣化してしまった「反復性肩関節脱臼」の状態では、手術も選択肢の1つです。

手術の目的は、脱臼の際に損傷した組織を修復し、肩関節の構造的な安定性を取り戻すことです。

現在おこなわれている手術では、損傷した関節唇と呼ばれる軟骨組織を修復する「鏡視下Bankart(バンカート)法」が選択されることが多くなっています。この手術は、関節鏡を用いるため小さな傷で済み、体への負担が少ない点が特徴です。

脱臼に対する手術の種類については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

肩関節の亜脱臼は自分で治せるのか?

肩の関節が外れかかった際、自然に元の位置へ戻ることもあります。このため「自分で治せるのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、自分で関節を戻そうとする行為はおこなわないでください。

無理に関節を動かしたり、入れようとしたりすると、肩の周囲にある重要な神経や血管を傷つけてしまう恐れがあります。また、肩を支えるインナーマッスルである腱板を新たに損傷する原因にもなりかねません。

たとえ痛みがおさまり、自然に関節が戻ったように感じられたとしても、見えない部分で骨や軟骨が傷ついている可能性も考えられます。肩に違和感を覚えた際は自己判断で対処せず、必ず整形外科などの専門的な医療機関を受診しましょう。

肩関節の亜脱臼を放置するリスク

肩関節の亜脱臼は、自然に戻ることがあるため軽視されがちですが、放置するとさまざまなリスクを伴います。

その理由は、時間が経過すると周囲の筋肉が硬直してしまい、関節を元の位置に戻すのが難しくなるためです。場合によっては、麻酔をかけて整復処置をおこなわなければならないケースもあります。

また、一度損傷した関節の支持組織は緩み、肩が不安定な状態になりやすいです。その結果、わずかな動作で再脱臼や亜脱臼を繰り返す「反復性肩関節脱臼」に移行しかねません。このような状態は以下のような症状を引き起こすリスクを高めます。

  • 慢性的な痛み
  • 関節の変形
  • 神経損傷

とくに、脱臼を繰り返すと肩を支える腱板を損傷する可能性が大きくなります。ある研究では、50歳以上の反復性肩関節脱臼の症例22例のうち、19例で腱板断裂が認められたとの報告もあります。(文献4

症状が現れた際は放置せず、速やかに医療機関を受診しましょう。

【関連記事】
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肩関節亜脱臼の治し方を知って適切な治療を進めよう

肩関節の亜脱臼は、関節が外れかかった状態を指し、自然に戻るため自分では気づかないケースも少なくありません。

しかし、一度起きた亜脱臼を放置すると、脱臼が習慣化して症状が悪化し、将来的には手術が必要となる可能性もあります。

肩関節亜脱臼の主な治療法は以下の3つです。

  • 徒手整復や固定による保存療法
  • 可動域訓練と筋力トレーニングによるリハビリ
  • 保存療法とリハビリでも効果が見られない場合の手術の検討

肩に抜けそうな感覚や痛み、違和感を少しでも覚えた際は、自己判断で済ませずに専門の医療機関を受診してください。医師による診断のもと、自分の状態に合った治療を進めましょう。

肩の亜脱臼はスポーツ外傷としてもよく見られますが、スポーツで筋肉や靭帯を損傷した場合は、再生医療の選択肢も考えられます。

再生医療を提供する当院では、メール相談オンラインカウンセリングを承っておりますので、ぜひご活用ください。

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肩関節亜脱臼と治し方に関するよくある質問

亜脱臼の痛みはどのくらい続きますか

肩関節亜脱臼や脱臼の痛みが続く期間は、関節が外れた程度によって異なります。

関節が外れかかった状態である亜脱臼の場合、痛みは1週間程度で落ち着くのが一般的です。一方で、関節が完全に外れてしまった脱臼の場合は、整復をおこなった後も2〜3週間ほど痛みが続くことがあります。

いずれの場合も、受傷後の1〜3週間程度は症状を悪化させないために安静を保ちましょう。痛みが強い際には、医師の判断のもとで痛み止めの薬を使用する場合もあります。

ただし、痛みの感じ方には個人差があるため、症状が長引く場合は必ず医療機関に相談してください。

肩の脱臼は動かせますか

肩関節が完全に脱臼した場合、自分で腕を動かすのは困難です。

脱臼の瞬間から激しい痛みに襲われ、腕をほとんど持ち上げられなくなったり、特定の位置から動かせなくなったりします。

このような状態で無理に動かそうとすると、かえって状態を悪化させる危険が伴います。肩の周囲を通っている重要な血管や神経を新たに傷つけてしまい、しびれなどの後遺症が出る可能性も否定できません。

たとえ亜脱臼で動かせるように感じても、自己判断で動かすのは避けるべきです。肩に異常を感じたら、動かさずにできるだけ早く専門の医療機関を受診してください。

参考文献

(文献1)
井樋栄二 「最新原著レビュー:肩関節脱臼後の外旋位固定は再脱臼率を低下させる−無作為化比較試験」 整形外科 61 (4) , pp.378-380 , 2010年
https://www.pieronline.jp/content/article/0030-5901/61040/378
(最終アクセス2025年6月10日)

(文献2)
尼子雅敏,田村吏沙 「肩関節脱臼の治療戦略とリハビリテーションの役割」防医大誌 47 (1) , pp.1-10 , 2022年
https://www.ndmc.ac.jp/wp-content/uploads/2022/03/47-1_001-010.pdf
(最終アクセス2025年6月10日)

(文献3)
岩堀 裕介,花村 浩克ほか 「スポーツ選手の反復性肩関節前方脱臼の術後リハビリテーション」特集『より安全なスポーツ復帰をめざすリハビリテーション診断・治療』56 (10) , pp.752-763 , 2019年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/10/56_56.752/_article/-char/ja/
(最終アクセス2025年6月10日)

(文献4)
伊崎輝昌,柴田陽三ほか 「腱板断裂を伴う反復性肩関節脱臼に対する治療成績-鏡視下Bankart修復術と鏡視下腱板修復術の併用法-」整形外科と災害外科 58 (2) , pp.188-191 , 2009年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/58/2/58_2_188/_pdf
(最終アクセス2025年6月10日)

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