野球肩|インピンジメント症候群の具体的なリハビリとストレッチの方法とは
公開日: 2023.03.24更新日: 2024.12.08
主に野球に取り組むアスリートに多く見られる、インピンジメント症候群。
肩の痛みや違和感などを引き起こし、投球や送球動作に大きな影響を与えます。
特徴として、完治までに数カ月単位の時間がかかる点があげられるでしょう。
発症してから競技復帰するまで、相当長いリハビリ期間を取る必要があります。
しかし、「リハビリの方法がわからない」「少しでも早く治したい」と考えている人も多いでしょう。
本記事ではインピンジメント症候群発症時のリハビリ方法を詳しく解説します。合わせて、予防法も解説しているので参考にしてください。
目次
インピンジメント症候群のリハビリの目的と有効なストレッチ
野球やバトミントンなどオーバーヘッドスポーツで生じやすいインピンジメント症候群。
投球動作で肩に痛みが生じる、いわゆる「野球肩」の一種として知られています。
インピンジメントとは「衝突」の意味で、インピンジメント症候群は、肩の関節を構成する骨同士が衝突したり、骨の間に筋肉が挟まれたりして痛みが生じる状態です。
インピンジメントを引き起こす原因はさまざまで、原因に合わせたリハビリの実施が必要です。
今回は、インピンジメント症候群の具体的なリハビリ方法について解説します。
関連記事:野球肩|インピンジメント症候群とは、その原因、症状と治療法
インピンジメント症候群のリハビリ目的
肩の関節は、背中にある肩甲骨と腕の骨である上腕骨、鎖骨によってできています。
上腕骨の先端にある球状の上腕骨頭(じょうわんこっとう)が肩甲骨のくぼみにはまるように作られる肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)が、一般的に肩関節と呼ばれる関節です。
インピンジメント症候群は、以下のような要因で、肩関節の正常な動きが妨げられるため生じます。
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これらの要因を改善して、インピンジメントを生じさせない動きを取り戻すのがリハビリの目的です。
また、リハビリでは、インピンジメント症候群により生じた炎症の回復を補助する目的も含まれます。
次からは具体的なリハビリの内容を紹介します。
インピンジメント症候群のリハビリとストレッチ|炎症への対応
肩を動かさなくても痛みがでる場合や、夜間に痛みがでる場合は、インピンジメントにより肩周辺の組織に炎症が生じている可能性があります。
そのような状態では、積極的な運動よりも、炎症や痛みを和らげる対応が優先されます。
そのため、肩のアイシングや安静時のポジショニング(肩の位置の調整)をおこない、肩にかかるストレスを軽減させるのが大切です。
ポジショニングは、肩や肘の下にタオルなどを入れて痛みがないポジションを作ります。
振り子運動
また、運動では振り子運動により、自重を使った関節の運動を実施して、肩への負担をかけないようにします。
インピンジメント症候群のリハビリとストレッチ|猫背を改善するリハビリ
猫背になると、肩甲骨の動きが妨げられるため、正常な肩関節の動きが生じずに、インピンジメントを引き起こしやすくなります。
肩の痛みがあり肩関節を動かしにくいときでも、猫背を改善するリハビリは、肩関節を動かさずに実施できるため、積極的に取り組みましょう。
具体的な方法は以下の通りです。
ストレッチポールでのストレッチ
ストレッチポールの上に仰向けで寝て、胸を開いて背中をストレッチします。
cat & dogストレッチ
四つ這いで背中を丸めたり、反らしたりする「cat & dog」の運動もおすすめです。
インピンジメント症候群のリハビリとストレッチ|肩関節の動きを改善するリハビリ
インピンジメントを起こす原因の1つが、肩の関節周辺にある組織の柔軟性低下です。
とくに肩の後ろの組織が固くなると、上腕骨頭が前方にずれてしまい、正常な肩関節の運動ができません。
その結果、インピンジメントが生じやすくなります。
そこで、肩の後ろで関節を覆っており、動きの制限になりやすい後方関節包(こうほうかんせつほう)のストレッチを紹介します。
クロスボディストレッチ
1つ目の方法は座った状態または立った状態でおこないます。
具体的な方法は以下の通りです。
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痛みがある場合は無理をしないようにしましょう。
スリーパーストレッチ
2つ目の方法は横向きに寝て行うストレッチです。
具体的な方法を解説します。
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強く抑えるように倒すと痛みが出やすいので、ゆっくり力を入れずに倒しましょう。
インピンジメント症候群のリハビリとストレッチ|腱板機能を改善するトレーニンング
腱板(ローテーターカフ)は、肩甲骨と上腕骨をつなぐ以下の4つの筋肉をまとめた呼び方です。
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肩関節をおおうように位置しており、肩関節を安定させて、スムーズに動かせるようにする役割を持っています。
そのため、腱板をうまく使えないと、肩関節が不安定になり、正常な関節の運動ができず、インピンジメントを引き起こします。
そこで、腱板の機能を改善するリハビリを紹介します。
棘上筋トレーニング
腱板の1つである棘上筋のトレーニングを紹介します。
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負荷をかける場合は、500mlのペットボトルやチューブを使用しましょう。
腱板は関節を安定させるインナーマッスルですので、負荷は軽めにして20〜30回を目安に3〜4セットおこないましょう。
1セット15回として、3〜4セットほどおこないましょう。
チューブがあるなら、以下の棘上筋トレーニングも導入できます。
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1セット15回として、3〜4セットほどおこないましょう。
スピードを上げると効果が落ちるので注意してください。
棘下筋・肩甲下筋トレーニング
棘下筋と肩甲下筋は、お互い対照的な働きをする筋肉です。
そのため、棘下筋のトレーニングと反対の動きをすると肩甲下筋のトレーニングになります。
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脇を開くと、ほかの筋肉が働いてしまうため、棘下筋、肩甲下筋のどちらのトレーニングでも、脇を開かないように注意しましょう。
棘下筋トレーニングと同様、チューブなどを使い、軽めの負荷で、頻度を多くおこないましょう。
1〜2kgのダンベルがあれば、以下のトレーニングも実施できます。
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3と4を15回繰り返すのを1セットとし、3〜4セットおこないます。
とくに肩甲下筋を鍛えたいときは上記のトレーニングがおすすめです。
まとめ:インピンジメント症候群の改善には地道なリハビリとストレッチが重要
インピンジメント症候群は肩の柔軟性低下や腱板機能の低下、悪い姿勢によって、正常な関節の運動ができないことで生じます。
そのため、リハビリにより、原因となっている部分を改善して、肩関節の正常な運動を可能にする必要があります。
本記事では、原因ごとに基本的なリハビリ方法を紹介しました。
より効果を高めるためには、整形外科を受診して、医師や理学療法士などの専門家による指導を受けましょう。
また完治には数カ月単位の時間がかかるため、地道にリハビリに取り組む姿勢が重要です。
この記事がご参考になれば幸いです。
▶治療方法の選択肢のひとつとして、こちらの動画も是非ご覧ください。
▼肩のスポーツ障害、ゴルフ肩に関して解説しています
▼インピンジメント症候群の原因や症状を解説
インピンジメント症候群に関するQA
本記事ではインピンジメント症候群に関して解説しました。ここではよくある質問に回答します。
- ・インピンジメント症候群はどれくらいで治るか
- ・再発を防止するにはどうすれば良いか
- ・インピンジメント症候群に効くツボはどこか
それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
インピンジメント症候群はどれくらいで治るか
リハビリと保存療法をおこなう限り、十分に改善されるまで2カ月ほどかかります。
ただし症状が重篤な場合、さらに時間がかかるかもしれません。
また3カ月以上経っても十分な改善が見られない場合、手術などを検討します。
いずれにせよインピンジメント症候群の治療には時間がかかるため、焦らず着実にリハビリを進めるのが重要です。
再発を防止するにはどうすれば良いか
インピンジメント症候群を予防するには、以下のポイントをおさえます
- ・医師の指示のもと、投球、送球のフォームを見直す
- ・アイシングや休息を十分におこなう
- ・入念なウォームアップやクールダウンを習慣づける
- ・肩周りの筋肉を鍛え、剛性を保つ
- ・ストレッチを習慣づけて、柔軟性をつける
医師の指示のもと、上記の実施を目指しましょう。
また再発防止にはチームやトレーナーの協力も欠かせません。
状態を共有し、再発の要因となるトレーニングは避けるなどの配慮をおこないましょう。
インピンジメント症候群に効くツボはどこか
インピンジメント症候群に効くツボとして以下が挙げられます。
- ・肩髃(けんぐう)/肩甲骨の端、肩峰のやや前下方
- ・肩井(けんせい)/首のつ付け根と肩先の中間
肩髃や肩井を指圧すれば症状が改善する可能性があります。
しかしツボを刺激してインピンジメント症候群を治す試みは一般的ではなく、効果の程度もよくわかっていません。
ツボの指圧よりも、一般的なリハビリや保存療法に集中するのを推奨します。