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上前腸骨棘の痛みの原因と治療法|考えられる疾患や予防ストレッチを紹介

上前腸骨棘
公開日: 2025.07.31 更新日: 2026.03.14

「腸骨の出っ張り付近に痛みがある…」
「痛みの原因はなんらかの怪我や病気?」

上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)とは、骨盤の前側の左右にある出っ張りのことです。ここに痛みがある場合は、骨折や炎症などなんらかの外傷や病気が起きているおそれがあります。

本記事では上前腸骨棘の位置や役割をはじめとして以下を解説します。

痛みの原因で多いのが剥離骨折です。剥離骨折を予防するためのストレッチも解説しているためぜひ参考にしてください。

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上前腸骨棘の位置と役割

上前腸骨棘の位置と役割などは以下の通りです。

項目 詳細
位置 骨盤の前側の左右にある出っ張り
触れ方 腰に手を当てたとき、人差し指があたる部分
付着する筋肉 縫工筋(ほうこうきん)、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)
関係する靱帯 鼠径靱帯(そけいじんたい)
主な役割 股関節や膝関節の動きの補助、下肢の安定、歩行や姿勢の維持

上前腸骨棘は、骨盤の前側に左右対称にある骨の出っ張りです。腰に手を当てたときに人差し指が自然に触れる場所で、自身でも容易に確認できます。

この部位には縫工筋や大腿筋膜張筋といった筋肉や、鼠径靱帯が付いており、股関節や膝の動き、身体の安定に関係しています。

スポーツや日常動作での使いすぎや負担により、ここに痛みが出ることもあるため、違和感を覚えた場合は、医療機関を受診しましょう。

上前腸骨棘の痛みの原因となる疾患

上前腸骨棘の痛みの原因として考えられる主な疾患は以下の通りです。

それぞれの疾患について解説します。

剥離骨折

剥離骨折とは、上前腸骨棘の周囲に付いている筋肉に引っ張られて骨が剥がれる骨折です。スポーツをする10代に起きることが多い骨折で、15歳ごろが好発年齢のピークと考えられています。(文献1

主に以下のような動作が骨折の原因になります。

  • ダッシュ
  • ジャンプ
  • サッカーのシュート
  • 野球のベースランニング
  • 短距離走の走り出し

その他にも、準備運動不足や技術不足、気温などが関係していると報告があります。腸骨付近の痛みや腫れ、圧痛(押すと現れる痛み)の他に、股関節付近にも痛みが現れることがあります。

適切な治療をしなければ、痛みの長期化や偽関節(骨がくっついてない状態)などの合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。

疲労骨折

疲労骨折とは、特定の部位に繰り返し負荷が加わることで発生する骨折のことです。好発年齢は10〜20代です。(文献2)ジャンプやランニングを繰り返すことで、上前腸骨棘にも疲労骨折が起きることがあります。

腸骨付近に疲労骨折が発生すると以下のような症状が現れます。

  • 腸骨付近の痛み
  • 腰やお尻の間辺りの鈍い痛み
  • 立ち上がり動作時の違和感
  • 運動時の痛み

早期に適切な診断と治療を受けないと、回復が遅れることがあります。疑われる症状がある方は、医療機関を受診してください。

【関連記事】
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かかとの痛み、実は疲労骨折かも?初期症状や治療法を解説

骨端炎

骨端炎とは、慢性的な負荷により生じる炎症性の病態です。骨端とは、骨の端にある太く膨らんでいる部位のことです。

主にスポーツの動作が原因で、以下のような流れで骨端炎は発症します。

  • スポーツの動作の負荷により骨端が傷つく
  • 繰り返す負荷により骨端が剥がれて修復ができなくなる
  • 剥がれた骨端と骨がぶつかり炎症が起きる

この結果、痛みや腫れが現れます。骨端炎は剥離骨折に移行するリスクがあるため早期の治療が重要です。

腫瘍・感染症

まれですが、腫瘍や感染症が原因で腸骨付近に痛みが現れることがあります。

腸骨付近に痛みを引き起こす可能性があるのは、以下のような疾患があります。

疾患名 特徴
腸腰筋膿瘍
(ちょうようきんのうよう)
腸腰筋(腰から足の付け根にある筋肉)に膿(うみ:細菌の塊)が溜まる疾患
骨の腫瘍 骨に発生する腫瘍で、転移により生じることが多い

上前腸骨棘の痛みの原因に対する治療方法

上前腸骨棘の痛みの原因に対する主な治療方法は以下の通りです。

ここでは、よくある原因である剥離骨折に対する治療を中心に解説します。

安静の保持・薬物療法

剥離骨折における基本的な治療方法はベッド上での安静です。1〜2週間で松葉杖歩行を開始します。多くの場合は4〜6週間で痛みがなくなります。

スポーツへの完全復帰の許可は3〜4カ月後に骨癒合(こつゆごう:骨がくっつくこと)が得られ、関節の動く範囲と筋力が回復してからです。文献1)治療中は、必要であれば痛み止めの薬の使用も検討します。

10代の中高生が、しっかりと3〜4カ月運動を中止できるかどうかが治療のポイントです。剥離した骨折が大きい場合などにおいては、手術を検討しなければなりません。

運動療法

痛みがなくなったころに以下のような運動療法を始めます。

治療法 目的
ストレッチ 股関節や太ももの筋肉をほぐして、硬さやこわばりを和らげる
筋力トレーニング 腹部・お尻・太ももの筋肉を鍛えて、骨盤を安定させる
可動域訓練 股関節・膝の動きをスムーズにして、曲げ伸ばしをしやすくする
歩行訓練・動作指導 正しい歩き方・立ち上がり方を身につけて、患部への負担を減らす
姿勢・骨盤のゆがみの調整 骨盤のゆがみや動作のクセを整える

ジョギングなどを開始できる目安は約4〜6週間後です。(文献3)ただし、運動許可は、痛みだけでなく関節の動く範囲や筋力、骨癒合の状態などを総合的に評価して段階的に決定します。

これらの運動療法は、医師や理学療法士の指導のもとで段階的に無理なく行う必要があります。

手術療法

剥離骨折は多くの場合、剥離骨折は多くの場合、安静や薬などで治療する「保存療法」で治癒します。しかし、大きな骨のずれやしびれなどの麻痺症状を合併症している場合は、手術を検討しなければなりません。

実施する手術の一例は以下の通りです。

手術療法 詳細
骨折観血的手術
(こっせつかんけつてきしゅじゅつ)
骨折カ所を切開しスクリュー等で骨を固定して元の位置に戻す手術
神経剥離術
(しんけいはくりじゅつ)
切開により神経の圧迫や癒着を除去する手術

骨のずれが15mm以上の場合は手術のほうが合併症のリスクが低いという報告もあります。文献4

再生医療

上前腸骨棘の痛みの原因が筋・腱付着部の炎症や損傷である場合は、再生医療が選択肢になる可能性もあります。再生医療とは、自己の細胞を炎症や損傷している部位に投与して、人間の体が持つ自然治癒力を活用する治療方法です。

具体的な治療方法は以下の通りです。

再生医療の種類 詳細
幹細胞治療
(かんさいぼうちりょう)
組織の修復に関わる働きを持つ「幹細胞」を患部に投与する治療方法
PRP療法 血液中の血小板に含まれる成長因子などが持つ、炎症を抑える働きや組織修復に関与する働きを利用した治療方法

再生医療は、手術や入院に不安を感じている方にも選択肢の一つとして挙げられます。

スポーツ外傷に対する再生医療について知りたい方は、以下を参考にしてください。

手術しなくても治療できる時代です。

スポーツ外傷は⼿術しなくても治療できる時代です。

上前腸骨棘の痛みを再発させないための予防法

上前腸骨棘の痛みを再発させないための主な予防法は、以下の通りです。

予防法 詳細
柔軟性を向上する 運動前後に下肢や骨盤周りのストレッチを行う
長時間の同じ姿勢を避ける 30分に1回は立ち上がってストレッチを行う
姿勢を改善する 座るときは背筋を伸ばして正しい姿勢を意識する
運動の量と質を管理する 長時間の運動は避けて十分な休息も取る

下肢や骨盤周りのストレッチは、骨盤付近の剥離骨折の予防につながる可能性があると報告があります。文献5

上前腸骨棘剥離骨折を予防するためのストレッチ

以下の筋肉の柔軟性を高めることは、上前腸骨棘剥離骨折の予防につながる可能性があります。

筋肉の名称 位置
大腿直筋
(だいたいちょくきん)
太ももの前面の真ん中にある筋肉
縫工筋 骨盤から太もも前面を斜めに横切って、膝の内側まで伸びている筋肉
大腿筋膜張筋 骨盤の前方から太ももの外側上部にかけて位置する筋肉
ハムストリング お尻の付け根から太ももの裏、膝裏にかけてある3つの筋肉の総称

それぞれの部位に対するストレッチの一例を解説します。なお、効果的なストレッチのポイントは「伸ばす筋肉を意識する」「息は止めない」「力を抜く」です。

大腿直筋のストレッチ

大腿直筋のストレッチの一例は以下の通りです。

  • 横向きに寝て両膝を深く曲げる
  • 下側の膝を下側の手で支えて足が動かないようにする
  • 上側の手は上側の足先を持ち後ろにまっすぐ引く
  • 上側の太ももの前面が伸びているのを意識して止める
  • 反対側も同様に行う

腰を反らせると腰痛の原因になるため体は丸めて行ってください。1回10秒を目安にしましょう。

縫工筋のストレッチ

縫工筋のストレッチの一例は以下の通りです。

  • 仰向けに寝て膝を90°くらいに曲げる
  • 片足を靴3足分外側に開き、そのまま膝を内側に倒す
  • 反対側の足を膝の上にのせて、太ももの前面が伸びているのを意識する
  • 反対側も同様に行う

膝が床から浮かないように注意してください。1回30秒を目安にしましょう。

大腿筋膜張筋のストレッチ

大腿筋膜張筋のストレッチの一例は以下の通りです。

  • 壁の横で立位になる
  • 壁側の足を後ろに引く
  • 後ろに引いた足を前の足と交差するように反対側に置く
  • 腰を壁に近づけて腰付近の筋肉が伸びているのを意識する
  • 反対側も同様に行う

1回30秒を目安にしてください。

ハムストリングのストレッチ

ハムストリングのストレッチの一例は以下の通りです。

  • 椅子を用意する
  • 椅子の上に片足を伸ばした状態で乗せる
  • 伸ばした足の膝に両手を乗せる
  • そのままゆっくりと体を前に倒して、太ももの裏が伸びているのを意識する
  • 反対側も同様に行う

お尻を引っ込めるように行うのがポイントです。1回30秒を目安にしましょう。

まとめ|上前腸骨棘の痛みが長引く場合は受診を検討しよう

上前腸骨棘が痛い原因で多いのは剥離骨折です。その他に、疲労骨折や骨端炎などがあります。剥離骨折を放置していると、痛みの長期化や偽関節などの合併症を引き起こすため、早期に治療を受けることが重要です。

基本的な治療方法は、安静の保持で3〜4カ月後に運動を再開できます。上前腸骨棘の痛みの原因となる外傷や病気を引き起こさないためには、日頃からストレッチや姿勢の改善を意識的に行ってください。

効果的な予防として挙げられるのが、大腿直筋やハムストリングのストレッチです。ただし、前提として医師や理学療法士から適切な方法の指導を受けましょう。

当院「リペアセルクリニック」では、スポーツ外傷に対して再生医療を行っています。下肢や骨盤付近の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談してください。

上前腸骨棘に関するよくある質問

腸骨を押すと痛い原因は?

腸骨の出っ張りを押すと痛い場合は、骨折や炎症などが起きている場合があります。医療機関を受診して適切な診断と治療を受けてください。

剥離骨折は全治何カ月ぐらい?

保存療法においては、4〜6週間で歩行開始、スポーツ復帰は8~12週間ほど必要です。文献1)ただし、骨折の状況によって期間は前後します。

上前腸骨棘の痛みが出やすい年齢やスポーツはある?

上前腸骨棘の痛みは、10〜18歳の成長期の子どもや中高生に多く、とくに15歳前後がピークです。短距離走やサッカーなど、急な筋収縮を伴う競技で起こりやすく、成長途中の柔らかい骨が筋肉に引っ張られることで剥離骨折が生じることがあります。

上前腸骨棘の痛みはどのように診断する?

上前腸骨棘の痛みの診察では、まず問診により痛みの発生状況や部位、運動歴、年齢を確認し、成長期のスポーツによる剥離骨折の可能性を評価します。

患部の圧痛や腫れを触診で確認し、必要に応じてレントゲンや超音波、MRI、CTで骨・筋肉・関節・神経の状態を評価し、正確な診断と治療方針の決定につなげます。

以下の記事では、上前腸骨棘の痛みに関連する仙腸関節炎について詳しく解説しています。

参考文献

(文献1)
下肢の外傷疾患|北アルプス医療センターあづみ病院

(文献2)
疲労骨折|国立大学法人 筑波大学 保健管理センター

(文献3)
22.骨盤裂離骨折|日本整形外科スポーツ医学会広報委員会

(文献4)
外側大腿皮神経麻痺の合併を認めた上前腸骨棘裂離骨折に対し骨折観血的手術を施行した1例|宮崎整形外科研究会誌

(文献5)
日本臨床スポーツ医学会誌|保存的治療における成長期スポーツ選手の骨盤裂離骨折の特徴