LINEポップアップ
  • HOME
  • トピックス
  • 圧迫骨折の痛みが取れないのは後遺症?痛みが取れない5つの原因を解説
  • 内科疾患、その他
  • 内科疾患

圧迫骨折の痛みが取れないのは後遺症?痛みが取れない5つの原因を解説

圧迫骨折 後遺症 痛み
公開日: 2025.07.31

「圧迫骨折が治ったあとに痛みが取れないのは後遺症?」
「痛みが取れない原因は?」

胸椎や腰椎など圧迫骨折では、後遺症として痛みが発生することがあります。その原因はさまざまで、原因に応じた治療を行うことが重要です。本記事では、圧迫骨折の後遺症による痛みの詳細をはじめとして、以下を解説します。

痛みの原因とその治療方法を理解するために役立ててください。

圧迫骨折の後遺症による痛みについて

圧迫骨折が治っても、後遺症として痛みが現れることがあります。(文献1)後遺症として痛みが現れる原因は、円背(えんぱい:背中が丸くなる)や偽関節(ぎかんせつ:骨がくっついていない状態)など、人によりさまざまです。

痛みが続くと、家事や社会活動、娯楽などあらゆる日常生活の動作の妨げになります。その結果、身体機能だけでなく、生活の質まで低下してしまいます。こうした悪化を防ぐためにも、痛みの原因に応じた適切な治療を行うことが大切です。

圧迫骨折後に痛みが取れない5つの原因

圧迫骨折後に痛みが取れない主な5つの原因は以下の通りです。

それぞれの詳細を解説します。

1.円背が起きている

圧迫骨折が起きると、椎体(ついたい:背骨を構成する円柱の骨のこと)が潰れて円背になってしまうことがあります。円背は重症になると、神経が圧迫されて以下のような症状が現れます。

  • 下肢の痛み
  • しびれ
  • 筋力の低下
  • 尿失禁
  • 歩行障害

骨粗鬆症による椎体圧迫骨折が原因の円背は、胃や食道の逆流現象や膀胱直腸障害(排尿や排便のコントロールが難しくなる状態)などを引き起こすことがあります。(文献2これらの症状は、日常生活の動作を低下させる大きな要因になってしまいます。

2.骨が正常にくっついていない

圧迫骨折後に、骨癒合(こつゆごう:骨がくっつくこと)が得られず、偽関節という状態になることがあります。とくに高齢者は偽関節になりやすい傾向です。(文献4)圧迫骨折において、偽関節の状態になってしまうと以下のような症状が現れます。

  • 慢性的な痛み
  • 下肢の麻痺
  • 歩行障害

偽関節のままリハビリテーションをしてしまうと、かえって運動能力が低下する恐れがあるため推奨できません。リハビリテーションの前に適切な治療を受けることが大切です。

3.筋肉が硬くなっている

圧迫骨折では、長期間の安静による動きの制限や痛みによる不自然な姿勢によって筋肉が硬直し、痛みが長引くことがあります。(文献1筋肉が硬くなると、関節の可動域も制限されてしまいます。その結果、日常生活の動作に悪影響を及ぼします。

4.痛み信号が誤って脳に送られている

圧迫骨折が治ったあとも、中枢神経(脳から全身に指令を送る神経)が痛みの信号を誤って送り続けてしまうことがあります。(文献1)また、骨折中に大量の痛み信号を送り続けていた結果、痛みに対して、過敏になっている場合もあります。

このような痛みは、神経痛と呼ばれ、痛み止めなどが効きづらいのが特徴です。神経痛は早期から治療を始めると、多くの場合は予防できるとされています。

「骨折の治癒後1カ月以上痛みが続いている」「痛みの種類が変わってきた」という場合は、神経痛を疑い一度医師に相談しましょう。

5.ストレスや不安を感じている

ストレスや不安、抑うつなど心理的な要因により痛みが長引くこともあります。(文献1そもそも骨折による痛みそのものがストレスを増大させるため、適切な痛みの管理が必要です。

また、圧迫骨折を含む外傷の痛みによるストレスは、以下のようなさまざまな有害事象を引き起こすリスクもあります。

  • 血圧上昇
  • 不整脈
  • 高血糖
  • 免疫機能の低下
  • 消化器機能の低下

治療中の痛みのケアはもちろん、不安や抑うつ気分を解消して、ストレスの軽減を図る必要があります。

圧迫骨折の後遺症の痛みに対する治療方法

圧迫骨折の後遺症の痛みに対しては、原因に応じた治療を行わなければなりません。

ここからは、圧迫骨折の後遺症の痛みに対する治療方法を原因別で解説します。

円背の場合

円背がある場合は、保存療法と手術療法が検討されます。保存療法の内容は、痛み止めの処方やコルセットによる矯正、リハビリテーションなどです。

リハビリテーションでは、腹部をへこませて体幹を鍛えるドローインなどの体幹トレーニングを行います。ドローインは、腰回りの筋肉を鍛えて体幹を安定させることで、腰の痛みの改善が期待できます。

下肢の痛みやしびれなどの神経症状が現れている場合は、手術を検討しなければなりません。文献3)円背の状況に沿った手術が検討されますが、代表的な方法は以下の通りです。

手術方法 詳細
椎体形成術 潰れてしまった椎体に風船を入れて膨らませる。風船を取り出して空いたスペースにセメントを入れて椎体を形成する。
後方・後側方固定術 スクリューを用いて脊椎を安定させる方法。椎体形成術のみでは、固定が弱い場合または骨が脆弱である場合に行われる。

偽関節の場合

偽関節の場合も保存療法や手術療法が検討されます。偽関節に対する保存療法は、偽関節の周囲に仮骨ができるまで、長期間硬いコルセットを装着する方法です。そのため、患者様は長期間の辛抱強い協力が不可欠です。

手術においては、円背と同様に椎体形成術が検討されます。痛みの他に遅発性麻痺(骨折後しばらくしてから現れる麻痺)が現れている場合は、セメントの代わりにハイドロキシアパタイト(骨の原料になる素材)を椎体内に入れて、さらにスクリューで固定する方法を行うこともあります。

その他

その他の痛みの原因に対しては、それぞれ以下のような治療方法を検討します。

原因 治療方法 詳細

筋肉の硬直・痛み信号の誤送信

神経ブロック注射 痛みの原因となっている周辺に局所麻酔の注射をして、痛みを緩和させる方法。一時的に痛み信号を遮断して、血流や筋肉の硬直が改善する。
ストレスや不安 薬物療法 抗うつ薬や抗てんかん薬により神経を整えることで痛みを軽減させる。
カウンセリング 感情的な側面の理解を通して痛みを軽減させる。
認知行動療法 痛みの捉え方や行動を修正して痛みを軽減させる。

まとめ|適切な治療やリハビリを受けて痛みを軽減しよう

圧迫骨折の後遺症として痛みが発生する場合があります。その原因は、円背や偽関節、筋肉の硬直、痛み信号の誤送信、ストレスなどさまざまです。

後遺症の痛みを軽快させるには、円背や偽関節に対しては保存療法や手術、筋肉の硬直や痛み信号の誤送信に対してはブロック注射など、原因に沿った治療が必要です。

円背に対しては、ドローインなどのリハビリテーションを行うこともあります。痛みの状況や痛み以外の症状をできるだけ正確に医師に伝えて、適切な治療やリハビリテーションにつなげましょう。

参考文献

(文献1)
滋賀医大病院ニュースTOPICS|滋賀医科大学医学部附属病院ホームページ

(文献2)
脊椎圧迫骨折は円背をもたらす|厚生労働科学研究成果データベース

(文献3)
成人脊柱変形|昭和学士雑誌

(文献4)
骨粗鬆症性椎体骨折(偽関節)|福島県立医科大学

イメージ画像トップ