パーキンソン病になりやすい性格はある?なりやすい人や予防法の有無を解説

パーキンソン病 なりやすい性格
公開日: 2025.12.13

「パーキンソン病になりやすい性格があるって本当?」
「なりやすい人やなりやすい生活習慣はある?」

パーキンソン病になりやすい性格があるかどうかは証明されていません。しかし、老化や遺伝、環境因子などが発症率に関係すると懸念されています。

本記事では、パーキンソン病になりやすい性格をはじめとして以下を解説します。

初期症状についても一部詳細に解説しています。疑われる症状が現れている方は、本記事を参考にしてパーキンソン病の早期発見に役立ててください。

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パーキンソン病になりやすい性格とは

パーキンソン病を発症している方は、以下のような性格であることが多いと言われています。

  • 真面目で着実に仕事をこなす方
  • 社会的に成功している方
  • 心配性で将来へ不安を持ちやすい方

実際に医師や看護師も「パーキンソン病の方は真面目な性格の人が多い」ということに賛同している方もいます。しかし、これらの性格がパーキンソン病の発症の原因になるかどうかは証明できていません。文献1

パーキンソン病が発症する根本的な原因は不明

パーキンソン病は、ドパミン細胞が減少して引き起こされます。

ドパミン細胞とは、運動調節や意欲、快感などに関連する神経伝達物質「ドパミン」を作り出す脳の神経細胞です。このドパミンが減少する原因ははっきりとわかっていません。文献2

特定のたんぱく質がドパミン細胞の中に蓄積することで、ドパミン細胞が減少するとの報告もあります。ドパミン細胞が減少すると、体の動きが悪くなったり安静時に手足が震えたりする振戦(しんせん)などの症状が現れます。

パーキンソン病になりやすい人とは

パーキンソン病の発症リスクにおいて以下のような研究報告があります。

  • 多くの場合は老化に伴い発症する
  • 少数であるが遺伝的な要因が関係している
  • 性別や人種の関与が示唆されている
  • 環境因子の関与が示唆されている

それぞれの詳細を解説します。

多くの場合は老化に伴い発症する

パーキンソン病は、年齢とともに発症する方が増えます。とくに50歳以上での発症が多いです。パーキンソン病の罹患率(1年間に新たに診断される人の割合)は、10万人に14〜19人ですが、65歳以上に限定すると10万人に160人の割合で約10倍にまで増えます。文献3

一方、40歳未満でも発症しますが、罹患率は低く10万人に1人の割合です。40歳以下の場合は若年性パーキンソン病と呼ばれています。

少数であるが遺伝的な要因が関係している

パーキンソン病の発症において、多くは遺伝的な要因は関係ありません。しかし、5〜10%の割合で家族内での発症が報告されています。文献3)とくに50歳以下に発症する若年性パーキンソン病は、遺伝的な要因が関係すると考えられています。

たとえ、家族にパーキンソン病を発症している方がいても、100%と遺伝するわけではありません。遺伝と後述する環境因子などが相互に関係して発症すると考えられています。

性別や人種の関与が示唆されている

パーキンソン病は、地域や人種によって有病率(特定の時点において発症している割合)の割合が異なります。実際に、アジアやアラブ、アフリカと比較して、欧州や北米、南米はパーキンソン病の有病率が高いです。(文献3

人種においては、以下の順番で有病率が高いと報告があります。

  • ヒスパニック系
  • 非ヒスパニック系白人
  • アジア人
  • 黒人

以上のようにパーキンソン病の発症に関して人種や地域が関係している可能性がありますが、否定的な意見もあります。性別については、世界的には男性の方が発症しやすい傾向にあります。ただし、アジア地域では他の地域よりも男女差が少なく、統計学的な有意差は認められていません。

環境因子の関与が示唆されている

パーキンソン病は以下のような環境因子も関与していると考えられています。

  • 便秘
  • 気分障害
  • 頭部への外傷の既往歴
  • βブロッカー(心拍数や心臓の収縮を抑える薬)の使用
  • 殺虫剤への曝露
  • 農村生活
  • 農業従事
  • 井戸水の飲用

以上のなかで最もエビデンスレベル(医学研究において信頼性の高さを表したもの)が高い環境因子は便秘と報告があります。文献3)しかし、便秘はパーキンソン病の発症の前触れとして現れることがあるため、明確な環境因子としては判断が難しいです。

次にエビデンスレベルが高いのは、気分障害やβブロッカーの使用、頭部外傷の既往歴などです。一方、農村生活や農業従事などに関しては、関連性を示す証拠はまだ限定的です。

パーキンソン病になりやすい生活習慣

以下は、パーキンソン病になりやすい生活習慣の恐れがあります。

  • 運動不足
  • 食生活の乱れ
  • 過度な飲酒
  • 過度なストレス生活
  • 睡眠不足

運動不足はパーキンソン病の発症リスクを高める要因としてエビデンスレベルが高く、中等度の身体活動は、パーキンソン病の発症リスクを減少させます。文献3

野菜や海藻、魚介などの健康的な献立かつアルコール摂取の少ない食生活は、パーキンソン病の発症リスクの低下に関連するとの報告もあります。(文献8

パーキンソン病の初期症状

パーキンソン病の初期症状で多いのは以下のような症状です。

初期症状 詳細
振戦 ・今までなかった大きな手指・下肢のふるえが現れる
・いつの間にかふるえが現れるが、意識を向けると消失する
歩行障害 ・歩行が遅くなる、周囲と比較して気づくことが多い
・「段差につまずく」「前かがみで歩く」などの初期症状もある
動作緩慢 ・あらゆる動作が遅くなる
例 仰向けからの起き上がりがうまくいかず、動作が遅いなど
身体の硬さ

・表情が硬くなることが初期症状として多い
・家族が気づくことは困難

文献4

50代以降に現れている場合は、とくに注意が必要です。パーキンソン病は、適切な治療を受けないと悪化するため、気になる症状がある方は医療機関の受診を推奨します。

パーキンソン病の予防法の有無

パーキンソン病において確立した予防法はありません。しかし、症状を緩和する薬物療法などは大きく進歩しています。とくに発症から3〜5年の間は1日中安定した効果を期待できます。(文献5

他にも、以下のようなリハビリテーションを適切に進めれば、症状の進行を遅らせることも可能です。

リハビリテーション 詳細
運動療法 立位や歩行、バランス保持、関節を動かす訓練などのリハビリ
作業療法 腕や手、指などの細かな動作のリハビリ
言語訓練 発声の音量や明瞭度の改善、呼吸のためのリハビリ
嚥下訓練 飲み込みや咀嚼のためのリハビリ

まとめ|パーキンソン病になりやすい性格が存在するかは証明されていない

パーキンソン病の方は真面目な性格の方が多いとされていますが、発症に性格が関与しているかどうかは証明されていません。発症には、老化や遺伝、便秘、気分障害、頭部外傷の既往歴などが関与すると考えられています。

また、運動不足や食生活の乱れ、過度なストレスなども発症率を高める可能性があります。パーキンソン病の初期症状は、振戦や歩行障害、動作緩慢などが挙げられます。

パーキンソン病には、確立された予防方法はありません。しかし、病気の進行を遅らせるには早期に発見して、適切な薬物療法とリハビリを進めることが大切です。疑われる症状が現れたら早めに医療機関を受診してください。

パーキンソン病に関してよくある質問

パーキンソン病を発症すると性格が変わる?

パーキンソン病は、運動に関する症状だけでなく精神や行動に関する症状も引き起こします。

以下のような症状により性格が変わったように見える可能性があります。

精神・行動障害 症状
気分障害 うつ、不安、無感情、快楽の消失
幻覚・妄想 幻視、幻聴、妄想、体感幻覚(体の表面や内部にあるはずのない感覚を感じる)
行動障害 性欲の増加、買いあさり、むちゃ食い、病的な賭博、常同反復動作(同じ動作を繰り返す行動)

文献6

パーキンソン病が治った人は居る?

パーキンソン病は進行性の病気であり、完治したという報告はありません。世界中でドパミン細胞の減少を抑制または停止させる研究が行われていますが確立できていません。

近年パーキンソン病における再生医療の研究が多く行われています。他にも、iPS細胞を用いた治療や遺伝子治療といったアプローチも問題の解決のために期待されています。

コーヒーはパーキンソン病の進行を遅らせる?

コーヒーに含まれるカフェインは、パーキンソン病の発症の予防に効果があると期待されています。実際に、1日1〜2杯ほどのコーヒーの摂取が、パーキンソン病の発症を予防する効果を示す研究が複数ありました。(文献7

体内へのカフェインの吸収方法を改善したものであれば、発症だけでなく進行抑制につながる可能性も示唆されています。

参考文献

(文献1)
見過ごすことのできない誤解|松井研究室

(文献2)
パーキンソン病(指定難病6)|難病情報センター

(文献3)
パーキンソン病診療ガイドライン2018|日本神経学会

(文献4)
1.パーキンソン病の初期症状と診断|日本内科学会雑誌

(文献5)
パーキンソン病|筑波大学

(文献6)
パーキンソン病診療ガイドライン2018|日本内科学会雑誌

(文献7)
カフェインとその代謝産物がパーキンソン病診断のバイオマーカーになる―血液による診断とカフェイン補充治療への期待―|日本医療研究開発機構

(文献8)
福岡・近畿パーキンソン病研究の結果食事パターンとパーキンソン病リスクとの関連|愛媛大学医学部