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パーキンソン病が治る時代になる?注目の先進医療を紹介

パーキンソン病は進行性の疾患であり、完治しない病気として知られています。
しかし、遠くない未来、パーキンソン病が「完治する」時代がくるかもしれません。
近年の研究では、パーキンソン病の新たな治療法が模索されています。
iPS細胞を活用した研究や、再生医療による治療など、既存の治療とは異なったアプローチがなされています。
この記事では、パーキンソン病に対する先進医療や研究について紹介します。
目次
パーキンソン病が治る時代は来るのか?治らないとされている理由
パーキンソン病が治らないとされている理由は、根本原因の解明が困難であるからだと言われています。
パーキンソン病は脳内のドパミン神経細胞が減少することで発生します。
脳内の細胞の観察は極めて困難であるため、完治するための対策が立てられないのです。
現在は減少するドパミンを補うための薬物療法や手術療法が主流ですが、いずれも症状の緩和が目的です。
ドパミンの減少を止める治療法はいまだ見つかっていません。
パーキンソン病の根本治療を叶える先進医療の研究
パーキンソン病の治療法はさまざまな角度から研究がなされてきました。
その中でも注目を集めているのは、iPS細胞を活用した「再生医療」、L-ドパの効果を補うことが期待されている「遺伝子治療」です。
それぞれのどのような治療なのか解説します。
iPS細胞を用いた研究
パーキンソン病の根本治療を目指す研究の中で、とくに注目されているのがiPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用したアプローチです。
iPS細胞は、皮膚や血液などの体細胞に特定の遺伝子を導入することで作られる、あらゆる細胞に変化できる能力を持つ画期的な細胞です。
このiPS細胞を活用し、失われたドパミン神経細胞を体外で作り出して脳内に移植する治療法や、病気のメカニズムを詳しく解明する研究が活発に進められています。
iPS細胞を実際の治療に用いた事例
2025年4月、パーキンソン病の患者の脳にiPS細胞から作り出した細胞を移植する治療法を開発、研究している京都大学の研究チームが行った治験で、同治療の安全性と有効性が示されたという発表がありました。(文献1)
この治験は50歳から69歳の男女7名の患者を対象に行われ、ヒトのiPS細胞から作ったドーパミンを作る神経細胞を脳に移植しました。
その結果、すべての患者で健康上の大きな問題は見られなかった上、治験患者のうち6名は移植した細胞からドーパミンが作り出されていることが確認されています。(文献1)
iPS細胞を用いたパーキンソン病の病態研究
順天堂大学医学部ゲノム・再生医療センターでは、パーキンソン病患者のドパミン神経細胞からiPS細胞を作製し、その細胞をもとにさまざまな研究を進めています。
iPS細胞を用いることで、原因解明が困難であるとされていた発症のメカニズムの研究や、iPS細胞を用いた薬の効果の検証などを効率的に行うことが可能となりました。
今後パーキンソン病の根本治療法が見つかる可能性もあります。(文献2)
遺伝子治療
パーキンソン病の遺伝子治療とは、特定の遺伝子を脳に注入することで症状の改善を目指す治療法です。(文献3)
パーキンソン病の原因であるドパミン減少を補うため、ドパミンを生成する効果のある酵素を脳に送り込み、L-ドパの効果を助ける役割を担います。
L-ドパとは、脳内でドパミンに変換され、パーキンソン病の症状を緩和する代表的な治療薬です。
遺伝子治療によってL-ドパから効率よくドパミンが生成されるようになり、症状が改善することが期待されています。
現状治験段階であるため、実際の治療として確立されるまではまだ時間がかかる治療だといえます。
パーキンソン病を改善するために「今」できること
この記事で紹介した先進医療が実際に治療法として浸透するまでにはまだ時間はかかります。
現在できるパーキンソン病の改善策としては、減少したドパミン神経細胞を補う薬物療法や、手術療法が有効です。
そのほか、適度な運動や栄養バランスの取れた食事、十分な水分補給といった生活習慣の見直しも効果が見込めます。
とくに運動は身体の筋肉の動かしづらさを改善するだけでなく、うつや不安症状を改善する精神ケアの役割も担っています。医師と相談のもと、無理のない範囲で生活に取り入れてみましょう。
パーキンソン病が治る時代は近い?治療の可能性について
現在研究は進んでいるものの、これらの研究が実際の治療に用いられるまでは長い年月が必要です。
一般的には治験を進めて結果が出るまで数年以上かかる場合もありますし、その後医療の現場に浸透してすべての患者に治療が広まるのがいつになるのかはまだわかりません。
その一方、京都大学の研究チームによって行われたiPS細胞を用いた治療は、実際に患者の症状も緩和され、調査の結果安全性、有効性が証明されたと発表されています。
今後新たな治療として、導入される未来も遠くないかもしれません。
症状緩和に期待される再生医療の可能性
パーキンソン病の完治は現在も困難とされていますが、症状の改善や進行抑制を目指す再生医療技術が着実に進歩しています。
iPS細胞を用いた治療や遺伝子治療といった先進的なアプローチは、根本的な問題に対処する可能性を秘めています。
これらの再生医療技術は、失われた神経細胞の機能を回復させることで、患者の生活の質を大きく向上させることが期待されています。
完治には至らなくても、症状の進行を遅らせ、日常生活をより快適に送れるようになる未来が見えてきました。
再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。
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まとめ|パーキンソン病は「治らない病気」から「治る可能性のある病気」へ変化している
パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であるため、完治はできないと言われています。
しかし、近年、根本治療に向けた先進医療の研究が進み、今までとは異なった新たな治療法が模索されています。
注目されているのはiPS細胞による再生医療と遺伝子治療です。とくにiPS細胞を用いた脳内移植の治験では、安全性と有効性が確認されており、今後の実用化が期待されています。
遺伝子治療もL-ドパの効果を高める方法として注目されており、今後の研究が待たれます。
しかし、新たな治療が確立されるのがいつになるのかは不透明です。現在パーキンソン病を患っている人は、薬物療法や運動、食事療法の中で症状の緩和に努めましょう。
治療の実現までは時間がかかるものの、遠くない未来にパーキンソン病は「治る病気」になるかもしれません。
参考文献
(文献1)
NHK「iPS細胞を用いたパーキンソン病治療 治験で“有効性” 京都大」NHKニュースウェブ 2025年4月17日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250417/k10014781301000.html(最終アクセス:2025年6月26日)
(文献2)
順天堂大学「iPS細胞を用いた再生医療の実現に向けた研究を推進」Juntendo Research 2024年5月20日
https://www.juntendo.ac.jp/branding/report/genome/(最終アクセス:2025年6月26日)
(文献3)
厚生労働省「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」2019年(2023年一部改訂)
https://www.mhlw.go.jp/content/001077219.pdf(最終アクセス:2025年6月24日)