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【医師監修】糖尿病網膜症の分類とは?病状進行の関係を含めて解説
「糖尿病があるため眼科受診を勧められた」
「糖尿病網膜症の疑いありと診断されて、網膜症分類の説明を受けたがよくわからなかった」
「糖尿病網膜症の分類とはいったい何だろう?」
糖尿病のために眼科を受診された方の中には、このような状況の方も多いことでしょう。
糖尿病網膜症の分類とは網膜症の症状や進行度合いを見るもので、ご自身の現状を把握するために大切なものです。
本記事では、糖尿病網膜症の分類や病状進行との関係について解説します。進行を予防するための対策もあわせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
糖尿病網膜症分類とは?
糖尿病網膜症の分類とは、糖尿病網膜症の進行度合いを示すもので、大きく3段階にわかれています。
- 単純網膜症
- 前増殖性糖尿病網膜症
- 増殖糖尿病網膜症
単純網膜症
糖尿病網膜症の初期段階です。
高血糖の影響で網膜の毛細血管がもろくなっています。その結果毛細血管の壁が盛り上がり、血管瘤(けっかんりゅう)や点状出血といった症状が生じます。
この時期は、自覚症状がほとんどありません。
前増殖性糖尿病網膜症
単純網膜症から進行した段階です。
網膜の細い血管が広い範囲で閉塞し、酸素不足になり始めます。酸素供給のために新しい血管(新生血管)を作る準備が始まります。
この時期でも、ほとんどの方は自覚症状がありません。しかし中には、目のかすみや見えにくさといった症状を訴える方もいます。
増殖糖尿病網膜症
糖尿病網膜症が進行しており重症な状況です。
酸素供給のために新生血管が作られますが、この血管は非常に弱いためすぐに破れてしまいます。その結果生じるものが、硝子体(しょうしたい)と呼ばれる部分の出血です。
硝子体出血が生じると、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状が出てきたり、急激な視力低下が見られたりします。
増殖組織が網膜を引っ張り、網膜剥離が生じることも少なくありません。
糖尿病網膜症分類の主な体系
糖尿病網膜症の分類には、複数の体系があります。
- 国際重症度分類
- 新福田分類
- Davis分類
このように複数の体系が存在する背景としては、検査および治療方法の変化、地域や国による違いなどがあげられます。
国際重症度分類
実質的な国際標準の分類です。網膜症なし・非増殖網膜症・増殖網膜症の3つに分類した上で、非増殖網膜症を軽症・中等症・重症の3段階に分けています。(文献1)
また、黄斑浮腫(おうはんふしゅ)の重症度分類がある点も特徴です。(文献1)
黄斑浮腫とは、ものを見る上で重要な部分である黄斑部にむくみが起こっている状況を指します。黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の進行度に関わらず発生する可能性があります。(文献2)
新福田分類
糖尿病網膜症を良性と悪性に区別している分類です。比較的軽症の糖尿病網膜症を良性、血管閉塞や新生血管が生じており、網膜光凝固治療が適応になる症例を悪性としています。
治療によって症状が沈静化した場合は、良性網膜症に組み込まれています。合併症について表記している点が、この分類の特徴です。
合併症の表記については、以下のように定められています。
- 黄斑病変(M)
- 牽引性網膜剥離(D)
- 血管新生緑内障(G)
- 虚血性視神経症(N)
- 光凝固(P)
- 硝子体手術(V)
Davis分類
糖尿病網膜症の病期を、単純糖尿病網膜症、増殖前糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症の3つに分けているシンプルな分類法です。
日常的な臨床場面に即した分類であるため、日本で広く用いられています。
糖尿病網膜症分類と病状進行の関係
糖尿病網膜症の分類は網膜症の進行や、軽症から重症までの経過をわかりやすく示したものです。
医療機関によって使用している分類体系は異なりますが、分類の概要を知ることで自分の現状がわかります。
糖尿病網膜症が進行すると、失明リスクが急速に高まります。受診先で使用されている分類体系を知り、自分の現状を把握した上で、適切な治療を受けましょう。
糖尿病網膜症分類からわかる失明リスクと治療方針
糖尿病網膜症は、分類が重症になるほど網膜の血管障害が悪化し、新生血管による硝子体出血や網膜剥離などによる失明リスクが急速に高まります。
軽度から中等度の非増殖性糖尿病網膜症では、経過観察が中心であり、定期的な眼科検査が推奨されます。ただし、黄斑浮腫を伴う場合は、速やかな治療が必要です。
重症の非増殖性糖尿病網膜症や増殖性糖尿病網膜症は、光凝固治療や抗VEGF薬、硝子体手術といった治療が必要な段階です。
網膜症の分類(重症度)に応じて、失明リスクや治療方針が変わってくると覚えておきましょう。
糖尿病網膜症による失明のリスクや治療方針については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
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糖尿病網膜症の進行を防ぐための対策
糖尿病網膜症の進行を防ぐための対策としてあげられるものは、主に以下の3点です。
- 定期的な眼科受診
- 血糖コントロール
- 生活習慣改善
定期的な眼科受診
基本的には、糖尿病と診断された際に眼科を受診して糖尿病網膜症の評価を受けることが推奨されます。
眼科の受診頻度は、網膜症の進行状況によって異なります。軽症の場合は半年に1回程度、中等症や重症の場合は1〜2か月ごとの受診が必要です。(文献1)
自覚症状がない場合も、年に1回は眼底検査を受けましょう。早期に異常が見つかれば、レーザー治療や抗VEGF薬注射などが可能になり、失明リスクを大幅に下げられます。
血糖コントロール
血糖コントロールは網膜症進行を予防するために重要な役割を果たします。
1~2か月間の血糖値の平均を反映し、血糖コントロールの目安であるHbA1cを7.0%未満に維持できれば、糖尿病網膜症の発症や進行を予防できるとのデータもあります。なお、血糖正常化を目指す場合の目標値は6.0%未満とされています。
医師の指導のもと、食事や運動、薬物療法などにより血糖を管理していきましょう。
糖尿病における食事療法や運動療法については、以下の記事をご覧ください。
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生活習慣改善
高血圧や脂質異常症、腎機能障害、喫煙の有無も糖尿病網膜症の発症や進行に関連する因子です。
高血圧や脂質異常症の予防および改善のためにも、食事と運動が大切になってきます。
喫煙はインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなること)を増やす因子です。加えて、心血管疾患や糖尿病腎症など、糖尿病網膜症以外の疾患のリスクも増やすため、できる限り禁煙していきましょう。
糖尿病網膜症分類を正しく理解して自分の現状を把握しよう
糖尿病網膜症分類には複数の体系がありますが、いずれにしても自分の状態を知るために必要な指標です。
そのときの数値や指標を見るだけではなく、眼科を受診する中でどのように推移しているかを見ていくことが大切です。不明な点があれば主治医に相談した上で、適切な治療を受けましょう。
糖尿病網膜症悪化予防のためには、定期的な眼科受診に加えて、血糖コントロールを含めた生活改善が必要です。
当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリング、LINE相談を実施しています。糖尿病および糖尿病網膜症に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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糖尿病網膜症分類に関するよくある質問
糖尿病網膜症分類のSDRとは何ですか?
SDRとは、糖尿病網膜症分類の指標の1つで、単純網膜症を意味します。
高血糖が原因で網膜の血管がもろくなった結果、点状に出血したり毛細血管に瘤が出来たりしている状態です。この段階では自覚症状が出ることが少ないとされています。
この段階では血糖コントロールや眼底検査による経過観察が基本です。
糖尿病網膜症の検査方法にはどのようなものがありますか?
主に以下のような検査があげられます。
- 視力検査
- 眼圧測定
- 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査
- 眼底検査
- 光干渉断層計(OCT)検査
眼圧検査は、眼の中の圧力を調べるものです。糖尿病網膜症では、新生血管の影響で緑内障を発症する場合もあるため、緑内障の症状である眼圧を調べることが必要になります。
細隙灯顕微鏡検査では、角膜や結膜、眼底の状態を確認するものです。眼底の検査をするときには、特殊なレンズを使用します。
眼底検査では網膜を観察し、網膜症の診断を行います。網膜症が疑われる場合は、蛍光眼底検査も行います。
蛍光眼底検査とは、造影剤を注射した上で眼底の血管の状態を連続して撮影するものです。通常の眼底検査では発見が難しい病変を詳しく調べられます。
光干渉断層計では、糖尿病黄斑浮腫の診断を行います。
参考文献









