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iPS細胞と糖尿病治療|1型・2型の違いと治験・実用化の見通し【医師監修】
「糖尿病はもう治らないのだろうか」
「iPS細胞は糖尿病を治せると聞いたことがある」
糖尿病は成人のおよそ10人に1人が抱える国民病とも言える生活習慣病の一つです。食事療法やインスリン注射などで血糖値をコントロールすることは可能ですが、現在の治療法では根本的な完治には至らず、将来への不安を抱える患者も少なくありません。
しかし近年、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療の研究が進み、インスリンを分泌する膵β細胞を再生して体内で血糖を自律的に調整できる治療法の開発が進められています。
実現すればインスリン注射の回数が減る、もしくはインスリン注射自体の必要がなくなる可能性があり、患者様のQOL(生活の質)の大幅な向上につながると考えられます。
本記事では、現役医師がiPS細胞と糖尿病治療の関係性を詳しく解説します。実用化後の可能性や課題について紹介し、記事の最後には、iPS細胞と糖尿病に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
iPS細胞とは?糖尿病治療にどう使われるのか
iPS細胞(induced pluripotent stem cells)は人工的に作られた多能性の幹細胞で、京都大学の山中伸弥教授らが2006年に世界で初めて作製に成功、6年後の2012年にはノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
人間の皮膚や血液などから採取した体細胞に特定の遺伝子を導入し「どんな細胞にも変身できる」ように作られた万能な細胞です。
糖尿病治療においては膵島細胞の作製および移植によって、インスリン分泌機能を再建できると期待されています。
なぜ1型糖尿病でiPS細胞治療が期待されているのか
これまでの糖尿病治療は、内服薬やインスリン注射によって血糖を抑える「管理中心の治療」が主流でした。近年注目されるiPS細胞治療は、失われた膵β細胞を再生し、体が自らインスリンを分泌できる状態を取り戻すのが主眼です。
現在は研究段階にありますが、既存の薬物療法や生活療法と併用することで、将来的にはインスリン注射や薬への依存を減らせる可能性が期待されています。
安定性やコストなどの課題は残るものの、糖尿病治療が「症状の管理」から「機能の回復」へと進化する大きな転換期を迎えつつあります。
1型糖尿病はインスリンを作る細胞が壊れる病気
1型糖尿病は血糖値を下げる役割を持つホルモンの一種「インスリン」を分泌する膵臓の細胞が破壊される病気です。
本来であれば自分の体を守るべき免疫系によって膵臓のβ細胞が破壊されるのが特徴ですが、発症のメカニズムは完全には解明されていません。
小児や若い方が発症するイメージを持たれがちですが、実際には成人が発症するケースも少なくありません。
インスリンの不足により高血糖の状態が続くと最悪のケースでは命にかかわるため、生涯にわたりインスリン注射などの治療を続ける必要があります。
既存のドナー膵島移植との違い
1型糖尿病の治療法の1つとして膵島移植(すいとういしょく)が知られています。
亡くなられたドナーの膵臓からインスリンの分泌に関わる膵島と呼ばれる組織のみを摘出し、点滴を用いて肝臓の血管(門脈)へ移植する点が特徴です。
2020年より保険適用の対象となり患者様の経済的な負担が減少しましたが、ドナー不足や拒絶反応のリスクなどの問題があります。
iPS細胞の場合は自分の皮膚や血液から採取した細胞を利用するため、拒絶反応のリスクが低く、ドナー不足の問題もない点がメリットです。
iPS細胞による1型糖尿病の治験状況
国内では現在、京都大学医学部附属病院の主導により、1型糖尿病を対象にiPS細胞由来の膵島細胞シートを腹部の皮下に移植する治験が進行中です。
治験が実用化されれば、1型糖尿病の患者様自らが行うインスリン注射の回数が減少したり、注射の必要がなくなったりする可能性があり、QOL(生活の質)の大幅な向上につながるのではないかと期待されています。
京都大学病院の治験の概要(開始時期・対象・移植方法)
京都大学医学部附属病院では2025年の1月より肝胆膵移植外科と連携し、1型糖尿病患者を対象にiPS細胞由来の膵島シートの安全性を確認するための治験を開始しました。
治験で用いられるiPS細胞由来の膵島細胞は、糖尿病モデルの動物を用いた実験において血糖値の正常化、および耐糖能の向上が認められています。(文献1)
人間を対象とした治験では全身麻酔下でiPS細胞由来膵島細胞シートを糖尿病患者の腹部皮下に移植し、安全性および有用性を検証します。
1例目の移植結果と経過
京都大学医学部附属病院は2025年の2月に、1型糖尿病患者にiPS細胞由来の膵島シートを移植する国内初の手術を実施したと発表しました。
治験の対象となったのは40代の女性で手術は無事終了し、移植したiPS細胞由来の膵島シートからのインスリンの分泌が確認されています。
手術後1カ月の時点で安全性上の大きな問題は見られなかったため退院済みで、以後は自己注射をしながら定期的に外来通院し、将来的に注射の投与量を減らすべく経過を見守っています。(文献3)
今後のスケジュール
京都大学医学部附属病院では第1症例の評価を踏まえ、第2症例目の移植に向けた準備を進行中です。
2、3例目では移植する細胞数を段階的に増やす予定で、2026年には3例の手術の安全性に関する中間報告を行う予定です。(文献2)
治験全体の目標は安全性・有効性(インスリン分泌能改善、血糖コントロール安定化)の検証で、2030年代の実用化を目指しています。
iPS細胞由来の膵島シート「OZTx-410」提供元のオリヅルセラピューティクスでは、別途2027年度をめどに日米で新たな臨床試験開始を計画しています。
iPS細胞は2型糖尿病にも使えるのか
iPS細胞由来の膵島シートを移植する手術は、医療界のみならず糖尿病患者にとっても画期的な治療法ですが、主に1型糖尿病を対象に研究・治験が進行しています。
ここでは、1型糖尿病と2型糖尿病の違いや、2型糖尿病に対するiPS細胞関連の研究の現状、および1型糖尿病に比べて研究が遅れている理由などを解説します。
1型と2型糖尿病の違い
1型糖尿病は本来であれば自分の体を守るべき免疫系により膵臓のβ細胞が破壊され、血糖値を下げる役割を持つインスリンが分泌されなくなる点が特徴です。
2型糖尿病は乱れた食習慣や肥満、内臓脂肪の蓄積などが原因でインスリンが効きにくくなったり(インスリン抵抗性)、膵臓の機能が低下したりして血糖値の上昇を招きます。
1型糖尿病の場合は「細胞の欠損」、2型は「抵抗性+機能低下」の二重構造のため、細胞移植だけでは不十分で治療設計が複雑になる傾向にあります。
2型に関する研究の現状
2型糖尿病を対象としたiPS細胞関連の研究は1型糖尿病に比べて件数が少なく、世界的にも幹細胞治療試験の中では少数派です。(文献5)
中国では2024年、59歳の2型糖尿病患者に対して、患者自身の細胞から作製した幹細胞由来の膵島組織を移植する手術が実施され、インスリンの使用を中止できたと報告されています。(文献4)
なお、この治療は狭義のiPS細胞移植とは異なる技術(内胚葉幹細胞:EnSC)を用いたものである点には注意が必要です。
アメリカのハーバード大学関連機関では、ヒトiPS細胞でインスリン抵抗性モデルを構築する基礎研究を報告しています(治療ではなく病態解明・創薬目的)。(文献6)
なぜ1型より研究が遅れているのか
1型糖尿病はなんらかの原因により膵臓のβ細胞が破壊される自己免疫疾患の一種で、年齢を問わず発症するのが特徴です。
一方、2型糖尿病は遺伝的な体質だけでなく暴飲・暴食、肥満、加齢、ストレスなどさまざまな要因が複雑に絡み合った結果として発症するため、1型のような単純な病態モデルを再現しにくい傾向にあります。
2型糖尿病に関してはすでに食事療法・運動療法・投薬治療などの選択肢が確立しており、根治療法への優先度が1型ほど高くなりにくいため、iPS細胞移植の優先度が低いのが現状です。
iPS細胞を使った糖尿病治療を開発している企業・研究機関
iPS細胞を使った糖尿病治療を開発している企業・研究機関として、以下3つの研究所や企業が挙げられます。
- 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)とT-CiRA
- オリヅルセラピューティクス
- Vertex Pharmaceuticals社
それぞれについて解説します。
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)とT-CiRA
京都大学iPS細胞研究所CiRA(サイラ:Center for iPS Cell Research and Application)は、iPS細胞の基礎研究や医療応用に向けた技術開発を進める国内を代表する研究機関です。
2010年の4月に設置された同研究所には「未来生命科学開拓部門」や「増殖分化機構研究部門」をはじめとする5つの部門があり、さまざまな角度からiPS細胞の研究に取り組んでいるだけでなく、京大病院の治験で使用するiPS細胞ストックを提供しています。
「CiRA」と武田薬品工業による共同研究プログラムである「T-CiRA」では、iPS細胞から膵島様細胞であるiPICを作製する分化誘導工程や、純度・安全性を高める技術が開発されました。
オリヅルセラピューティクス
オリヅルセラピューティクスは細胞移植による再生医療等製品の開発、およびiPS細胞関連技術を利活用した創薬研究支援・再生医療研究基盤整備を事業内容とする企業です。
2021年の4月9日に創立されたオリヅルセラピューティクスでは、T-CiRAで開発されていた心筋細胞・膵島細胞プロジェクトの臨床応用や事業化を進め、iPS細胞由来の膵島シート「OZTx-410」を開発しました。
OZTx-410は、京都大学医学部附属病院が実施する医師主導治験に提供されています。
2026年3月の報道では、2027年度をめどに日本と米国で新たな治験を開始する計画が発表されました。
Vertex Pharmaceuticals社
Vertex Pharmaceuticals社(バーテックス・ファーマシューティカルズ)は、アメリカのマサチューセッツ州に本社を置くバイオ医薬品企業です。
アメリカ国内で行われた臨床試験において、同社の開発による幹細胞由来の膵島細胞療法「zimislecel(ジミスレセル:旧開発名VX-880)」が用いられました。
1型糖尿病患者を対象とした第1/2相試験では、zimislecelの全量投与を受け365日間追跡された12名のうち、10名(83%)が外因性インスリンを必要としない状態になったと報告されています。(文献16)
zimislecelはFDA(アメリカ食品医薬品局)からファストトラック指定などを受け、臨床開発で先行している一方、免疫抑制療法が必要で、長期的な有効性や安全性は現在も検証段階にあります。
iPS細胞治療はいつ実用化する?今後の見通し
iPS細胞を用いた糖尿病治療は治験(臨床試験)段階ですが、京都大学医学部附属病院では安全性・有効性の検証を経て、2030年代の実用化を目指すと発表しています。
iPS細胞由来の膵島シート「OZTx-410」を提供するオリヅルセラピューティクスは、2027年度をめどに日本・米国で新たな治験開始を計画していると2026年に報道されました。
アメリカのVertex Pharmaceuticals社が開発したzimislecel(VX-880)に関しては、2025年6月時点の臨床試験結果を受け、FDAへの申請時期を当初予定の2030年から2026年に前倒しする方針としています。
zimislecel(VX-880)は、FDAからファストトラック指定を受けています。また、2026年の承認申請が予定されており、報道では、審査が順調に進んだ場合には早ければ2027年に米国で利用可能になる可能性があるとされています。
ただし、現時点では未承認であり、日本での承認・実用化時期も未定です。
糖尿病に対してiPS細胞治療を行うメリット
iPS細胞による糖尿病治療は、失われた膵β細胞を再生して身体が自らインスリンを分泌できるようにし、インスリン注射や薬への依存を減らして血糖コントロールを安定させることを目指しています。
また、自分の細胞を用いるため免疫拒絶のリスクも低く、将来的にはより自然な血糖管理が可能になると考えられています。
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糖尿病にお悩みの方は、以下の糖尿病に対する再生医療の症例もご覧ください。
膵β細胞の再生によるインスリン分泌機能の回復
人間の体内では、膵β細胞がインスリンを分泌して血糖値を調整しています。しかし、とくに1型糖尿病ではこの細胞が失われ、体内で十分なインスリンを作ることができなくなります。
iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、成人の体細胞を再プログラミングして多能性を持たせたものです。この多能性とは、さまざまな細胞に分化できる能力を指します。
現在、iPS細胞を用いた膵β細胞の再生を目指す研究が、世界中で進んでいます。(文献7)
近年では、ヒトiPS細胞から膵β細胞を生成し、動物モデルへ移植して血糖値が改善したという報告もあり、将来的に自らの身体でインスリンを生み出せる可能性が期待されています。(文献7)
インスリン注射や薬への依存を減らせる可能性
iPS細胞を用いた糖尿病治療では、体内に膵β細胞や膵島を補うことで、自らインスリンを分泌する力を取り戻し、注射や薬への依存を減らせる可能性が注目されています。
現在の治療は、インスリンの不足を注射や薬で補う方法が中心です。しかし、iPS細胞由来の膵島細胞を移植することで、外部からの補充量を減らすことが期待されます。
実際に、1型糖尿病患者に化学的に誘導したiPS細胞由来膵島細胞を腹部に移植した臨床試験では、移植後75日でインスリンを使わずに済んだ例が報告されています。(文献8)
血糖コントロールが安定し合併症のリスクを軽減できる可能性
iPS細胞から作られた膵β細胞が正常に機能すると、インスリン分泌が改善され、血糖値を安定して保ちやすくなります。
血糖が生理的範囲に近づくほど合併症の発症リスクは低下し、実際に「HbA1c値が1%改善されると、糖尿病関連の合併症および死亡リスクが約21%低下した」という報告があります。(文献9)
こうした成果から、iPS細胞による膵β細胞再生は合併症の進行を抑える可能性が示されているのです。
ただし、研究レビューでは「血糖改善や合併症抑制が期待されるものの、現時点では確立された治療法ではない」とされています。(文献10)
自己細胞を用いることで拒絶反応のリスクを低減できる可能性
iPS細胞(人工多能性幹細胞)の大きな利点のひとつは、患者自身の体細胞(皮膚や血液など)から作製できる点です。
そのため、「本人の細胞=自分のもの」として移植でき、他人の細胞を使う場合に比べて免疫が異物と認識するリスク、拒絶反応の可能性を理論上、低く抑えられます。(文献11)
ただし、自己由来のiPS細胞であっても、分化の過程で免疫が反応しうる異常なタンパク質や遺伝子変化が生じる可能性があり、拒絶反応を完全に防止できるわけではありません。(文献12)
ドナー不足の解消につながる可能性
糖尿病に対してiPS細胞治療を行うメリットとしては、ドナー不足の解消につながる可能性がある点も挙げられます。
既存のドナー膵島移植は2020年に保険収載されましたが、慢性的なドナー不足により国内での実施は年間数例にとどまっているのが現状です。
iPS細胞は理論上無限に増やして製造できるため、ドナーに依存しない細胞供給を実現できる可能性があります。
iPS細胞による糖尿病治療の課題
iPS細胞を用いた糖尿病治療は大きな期待を集めていますが、まだ以下に挙げる課題が残っています。
- 移植した細胞の長期的な安定性が確認されていない
- 免疫拒絶反応の完全な抑制は難しい
- 実用化後もインスリンや薬物治療を不要にできるとは限らない
iPS細胞を用いた糖尿病治療は現在のところ治験(臨床試験)段階で、安全性・有効性に関しては今後の検証が待たれます。
国内外で行われた治験では外因性インスリンが不要になるなどの例も見られますが、長期的な安定性に関しては通院治療をしながら確認し続ける必要があります。
また、免疫拒絶反応の完全な抑制は難しく、実用化後もインスリンや薬物治療が不要になるとは限りません。
移植した細胞の長期的な安定性が確認されていない
iPS細胞を用いた糖尿病治療では、移植された膵β細胞や膵島が免疫反応や代謝ストレスなどの体内環境に適応し、長期にわたり機能を維持することが求められます。
しかし、幹細胞由来の治療では移植後に機能低下が起きる例が、動物実験や初期臨床研究で報告されています。(文献13)
また、高血糖や酸化ストレス、血管新生不良などにより細胞が疲弊し、時間とともに働きが弱まる可能性も課題のひとつです。(文献14)
さらに、移植部位で十分な血流や栄養が確保されない環境や、わずかに残る免疫反応も、移植細胞の長期生存と機能維持を困難にしています。(文献13)
国内ではじめて実施された糖尿病に対するiPS細胞治療は2025年の2月と比較的最近の話で、手術は無事に終了しましたが、定期的に外来通院している段階です。
将来的に注射の投与量を減らせるか見守るだけでなく、移植した細胞により不具合が生じないか確認し続ける必要があります。
免疫拒絶反応の完全な抑制は難しい
iPS細胞による糖尿病治療の課題としては、免疫拒絶反応の完全な抑制が難しい点も挙げられます。
拒絶反応は他人の細胞や臓器を移植した際に、自己の免疫系が異物とみなして攻撃する現象を意味します。
患者自身の細胞から作るiPS細胞の場合は、拒絶反応のリスクが低い点がメリットの一つです。
ただし、細胞作製の過程で生じるタンパク質の変化や、移植部位ごとの免疫環境の違いにより、拒絶反応を起こす可能性があります。
HLA操作や免疫遮断コーティングなど、免疫耐容化を目指す技術は開発されていますが、現段階では完全な免疫反応の抑制は実現しておらず、安定性評価の途上といえます。(文献15)
実用化後もインスリンや薬物治療を不要にできるとは限らない
実用化後にインスリンや薬物治療が不要になるとは限らない点も、iPS細胞による糖尿病治療の課題の一つです。
iPS細胞による糖尿病治療にはメリットが多くありますが、移植細胞の生着や働きには個人差があり、インスリン分泌の回復にばらつきが生じる可能性があります。
細胞の生着に成功しても、インスリンを長期にわたり分泌し続けられるかどうかは現在も検証段階です。
自己由来の細胞を利用する治療法ではあるものの、免疫拒絶反応のリスクを減らすための措置を講じる必要があります。
糖尿病が進行したり合併症を起こしたりすれば、当然のことながらiPS細胞以外の治療も必要です。
現在のところiPS細胞による糖尿病治療は技術発展の途上段階にあり、既存治療との併用が現実的な選択と言えます。
iPS細胞を用いた糖尿病治療を受ける方法
iPS細胞を用いた糖尿病治療を受ける方法は以下のとおりです。
- 医師との相談
- 臨床研究・治験の募集を探す
- 適格性の確認
- 同意と登録
- 移植・治験開始
iPS細胞を用いた糖尿病治療は現在のところ治験段階にあり、誰でも希望すれば受けられるわけではありません。
まずは医師との面談をおこない、糖尿病の状態や治療内容を確認し、iPS細胞治療の対象となる可能性を確認する必要があります。
医師がiPS細胞治療の対象となると判断した場合、大学病院などで実施中の臨床研究・治験の情報を確認し、適格性(糖尿病のタイプ、既往歴、年齢、健康状態など)を確認します。
その後、担当医やカウンセラーによる説明を受けた上で、治療法や通院・検査の必要性に納得すれば、治験の参加者として登録する流れです。
iPS細胞は糖尿病の根本的治療への新たなアプローチ
iPS細胞を用いた糖尿病治療は、失われた膵β細胞を再生し、体内でのインスリン分泌機能の回復を目指す新しい治療法として注目されています。
従来の治療が血糖コントロールを中心としていたのに対し、身体の働きを根本から立て直す点が特徴です。
現在はまだ研究段階ですが、国内外で臨床試験が進められており、実用化への期待が高まっています。今後、安定性と有効性が確立されれば、糖尿病治療のあり方を大きく変える可能性があります。
ここまでご紹介したiPS細胞治療とは別に、幹細胞が持つ「さまざまな組織の細胞へ変化する能力(分化能)」や「組織の修復に関わる働き」を活かした再生医療もあります。
当院「リペアセルクリニック」では、患者様ご自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、投与する治療をご提供しています。iPS細胞のように人工的に作製した細胞を用いる治療とは異なり、ご自身の幹細胞をそのまま活用する点が特徴です。
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iPS細胞と糖尿病に関するよくある質問
糖尿病の治療でiPS細胞のみに期待するのは適切でしょうか?
現時点で、iPS細胞治療にのみ効果を期待するのは適切ではありません。iPS細胞を用いた糖尿病治療は、将来的に根本的な回復につながる可能性を持つ一方で、まだ研究や臨床試験の段階にあり、一般的な医療としては確立していません。
現在の糖尿病治療(食事・運動・薬物・インスリン療法など)は、血糖コントロールと合併症の予防に欠かせません。引き続き継続することが大切です。
以下の記事では、糖尿病予防に効果的な運動について詳しく解説しています。
iPS細胞の治療が適用できないケースはありますか?
iPS細胞治療は、現在主に1型糖尿病でインスリン分泌がほとんどない患者を対象に研究が進められています。
2型糖尿病や重い合併症がある場合、免疫抑制が難しい場合などは現時点で適用外です。これらは限られた条件下で行われる研究段階の治療であり、すべての患者が受けられるわけではありません。
1型糖尿病のiPS細胞治験に参加できますか?
1型糖尿病のiPS細胞治験は、病気の治療法を見つけるための重要な研究です。しかし、1型糖尿病に関するiPS細胞治療は端緒を開いたばかりであり、希望すればだれでも受けられる訳ではありません。
まずは厚生労働省が運用するjRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)で1型糖尿病の治験が募集されているか確認し、参加したい治験があればかかりつけ医もしくは専門医に相談してください。
その後、適格性の確認を経て担当医もしくはカウンセラーの説明を受け、十分に理解・納得した上で同意書に署名して参加する流れです。
参考文献
(文献1)
【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も|糖尿病ネットワーク
(文献2)
「iPS由来膵島細胞シート移植に関する医師主導治験」の開始について|京都大学医学部附属病院 FOUNDED IN 1899
(文献3)
ヒトiPS細胞由来膵島細胞を1型糖尿病患者に移植 医師主導治験の第1症例目を実施 京都大学病院|糖尿病診療・療養指導のための医療情報ポータル 糖尿病リソースガイド
(文献4)
《Cell》 全球首例自體iPS細胞療法逆轉第一型糖尿病、可生成胰島素1年多|Global Bio
(文献5)
From bench to bedside: future prospects in stem cell therapy for diabetes|BMC Part of Springer Nature
(文献6)
Scientists create human model of insulin resistance using iPS cells|HSCI HARVARD STEM CELL INSTITUTE
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(文献8)
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(文献9)
Association of glycaemia with macrovascular and microvascular complications of type 2 diabetes (UKPDS 35): prospective observational study|PubMed
(文献10)
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(文献11)
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(文献13)
Islet Cell Replacement and Regeneration for Type 1 Diabetes: Current Developments and Future Prospects|Springer Nature Link
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Stem cell therapy for diabetes: Advances, prospects, and challenges|PMC PubMed Central®
(文献15)
Fit-For-All iPSC-Derived Cell Therapies and Their Evaluation in Humanized Mice With NK Cell Immunity|frontiers
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