-
- 手部、その他疾患
- 手部
手首や足首に、コリコリとしたしこりができていませんか。 それは「ガングリオン」と呼ばれる良性のできものかもしれません。放置しても問題ない場合もありますが、大きくなったり痛みが出たりすると、日常生活に支障が出ることもあります。 本記事では、ガングリオンの症状や原因、治療法までをわかりやすく解説します。安心して適切な対応を取れるよう、基本的な知識を押さえておきましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ガングリオンについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ガングリオンとは「ゼリー状の滑液が溜まる良性腫瘍」 ガングリオンは、関節や腱の近くにできるゼリーのような柔らかい腫瘤(しゅりゅう)です。 多くの場合は小指ほどの大きさで、袋の中には関節の動きをなめらかにする「滑液」と呼ばれる液体が入っています。(文献1)(文献2) 若い女性に多く、手首や指の付け根などによく見られます。(文献3) 放置しても体に害はありませんが、痛みや動かしにくさがある場合は、医療機関での治療が必要です。 ガングリオンの症状 ガングリオンの代表的な症状は、皮膚の下に触れるしこりです。しこりの硬さは、ゼリーのように柔らかい場合、ゴムのように硬い場合など個人差があります。(文献1) ガングリオンができても、強い痛みはなく、不快感や違和感程度で経過するケースが一般的です。ただし、神経の近くにできた場合は、神経の圧迫により痛みやしびれが生じ、指先の動かしにくさや軽い麻痺がみられることもあります。 なぜできる?ガングリオンの原因 ガングリオンの代表的な原因は、関節を包む膜である「関節包」や、腱を包む「腱鞘」という部分の性質が変化することです。(文献3) これらが変性して嚢胞という袋状の構造ができ、その中に「滑液(かつえき)」がたまります。この滑液が粘り気のあるゼリー状となってガングリオンが形成されます。(文献1) ただし、ガングリオンが発生する具体的なメカニズムは解明されていない部分もあります。(文献4) 手や指をよく使うと大きくなるケースはありますが、必ずしも手を多く使う人にできやすいわけではありません。 手の使用頻度に関わらず発生するため、ガングリオンは誰にでもできる可能性があるといえるでしょう。 ガングリオンができやすい場所 ガングリオンは、動きの多い関節や腱の周囲に発生しやすい特徴があります。代表的な部位は、以下のとおりです。(文献1) 手首(とくに甲側) 指(付け根や関節) とくに発生しやすい部位は、手の甲です。他の部位よりは頻度は低いものの、手のひら側の指の付け根にできることもあります。 また、良く動かす部位である足にガングリオンができるケースも少なくありません。足にできるケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。 また、手指の付け根に痛みが出る場合、「ばね指」のケースもあります。ばね指については、以下の記事をご参照ください。 ガングリオンの治療法 ガングリオンの治療は、大きく2つに分けられます。 保存療法:ガングリオンの袋はそのままにして、様子をみるか中身だけを取り除く治療法 手術:ガングリオンの袋自体を取り除く治療法 本章では、それぞれの治療法について詳しく解説します。 保存療法 保存療法は、液体がたまる袋を取り除かない治療方法です。状態によって、そのまま経過を観察する場合と、しこりの液体を針で抜く場合に分けられます。また、関節の安静を保つためにテーピングや装具を使うケースもあります。(文献5) 2種類の保存療法について、順番にみていきましょう。 経過観察|自然治癒に期待 以下のような場合はとくに治療をおこなわず、経過観察をするのも選択肢となります。 症状が軽くて痛みがない 日常生活に支障をきたしていない ただし、途中でガングリオンが大きくなって痛みが出る、不快感から生活に支障が出るなどの場合は、他の治療法を検討します。 穿刺吸引|短期的にしこりを除去 穿刺吸引は、注射器でガングリオンの中身を吸い取る方法です。 医療機関によっては、吸引後にステロイド薬やヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)を注入し、治療効果を高める工夫をする場合もあります。(文献5) どの治療法にも再発リスクはありますが、穿刺による治療は手術よりも再発率が高い傾向にあります。 部位ごとの再発率は以下のとおりです。 手関節背側:60〜87% 手関節掌側:57〜83% 掌側靱帯性:約30% また、背側・掌側を合わせた手関節のガングリオン全体で、穿刺の再発率は59%(47~70%)という報告もあります。 再発を繰り返す場合は、次に解説する手術も検討しましょう。 手術|根治・再発防止が目的 手術は、液体がたまる袋そのものを、根元の部分といっしょに取り除く方法です。(文献1) 再発を繰り返す場合や、痛みが強く日常生活に支障がある場合などに検討されます。 ただし、保存療法よりも頻度は低いものの、手術をしても再発リスクは残ります。また、神経や血管の損傷、傷跡が残るリスクもあります。(文献5) 保存療法と手術のどちらが適しているかは、症状や生活への影響を踏まえ、医師とよく相談して決めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ガングリオンで気になる点がある方は、ぜひお気軽にご登録ください。 なお、ガングリオンの手術については、以下の記事で詳しく紹介しています。 【何科?】ガングリオンを疑う際の受診科目 ガングリオンが疑われる場合、基本的な受診科は整形外科です。 診察では、注射器でしこりの中身を採取し、ゼリー状であればガングリオンと診断されます。外側から触れにくい小さなガングリオンの場合は、超音波検査やMRI検査を行うこともあります。(文献1) ただし、痛みはなく、見た目だけが気になる場合には、皮膚科や形成外科で対応できるケースも少なくありません。 受診先に迷う場合は、医療機関に電話で症状を伝え、診察可能かを確認すると良いでしょう。 ガングリオンが痛いときの対処法 ガングリオンが痛む場合、しこりが神経の近くにできており、神経を圧迫している可能性が考えられます。 症状の程度に応じて、次のように対応しましょう。 症状の程度 対応 痛みやしびれが軽く、腫れがない場合 安静にして様子をみる 初めてできた場合や痛み・腫れが強い場合 早めに医療機関を受診する なお、しこりが大きくなったり痛みが悪化したりする可能性もあるため、ガングリオンがある部分に負担をかけないことも大切です。 ガングリオンが痛いときの対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。 当院「リペアセルクリニック」では、神経損傷に対して再生医療を提供しております。ご興味のある方は、公式LINEへぜひご登録ください。 ガングリオンと悪性腫瘍との見分け方 ガングリオンと悪性腫瘍はどちらも「しこり」ができるという共通点がありますが、特徴には違いがあります。 ガングリオン 悪性腫瘍 硬さ やわらかく弾力があることが多い 硬くてゴツゴツしている 痛み 痛みが無いケースもあるが、神経を圧迫すると痛みが出る 初期は痛みが無いケースもあるが、進行すると痛みが出るケースが多い 大きさの変化 小さくなったり消えたりすることがある 徐々に大きくなる傾向がある ただし、これらはあくまで一般的な傾向であり、見た目や触った感触だけで判断するのは危険です。しこりがある場合は、必ず医療機関を受診して確認しましょう。 ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方については、以下の記事で詳しく紹介しています。 手足の痛みや違和感はガングリオンを疑い早めの受診を心がけよう 手足の関節や腱の周囲にできたしこりは、ガングリオンかもしれません。基本的には良性のできものであるため過度な心配は必要ありませんが、大きさやできた場所によっては神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こすこともあります。 気になる症状がある場合は、早めに受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」は、再生医療を行う医療機関です。公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。将来的なリスクを減らしたい方や、より詳しい知識を身につけたい方は、公式LINEもぜひご登録ください。 ガングリオンに関するよくある質問 ガングリオンは潰すと治るって本当? 実際、医療機関ではガングリオンをつぶす治療が行われることもあります。(文献1) ただし、炎症が悪化したり、皮膚に傷ができて感染を引き起こしたりする可能性があるため、自己判断で潰すのは避けてください。 ガングリオンは急にできるの? ガングリオンは以下の流れで形成されるため、大きくなるには一定の時間がかかるケースが一般的です。(文献4) 関節にかかるストレスで滑液が漏れ出す 漏れた液が袋状にたまり、少しずつ大きくなる ただし、初期は痛みや違和感がほとんどなく、気づかないケースが少なくありません。そのため、見た目では「急にできた」と感じても、実際は徐々に形成されていた可能性が高いと考えられます。 スマホが原因でガングリオンができることはある? スマホの使用が直接ガングリオンの原因になるかどうかは、現時点では明らかになっていません。 ガングリオンの原因そのものがまだ解明されておらず、スマホとの直接的な関係も確認されていないのが現状です。 ただし、長時間のスマホ操作は手首や指の関節・腱に負担をかけ、痛みや不快感などを引き起こす可能性があります。関節への負担を減らすためにも、スマホの使いすぎは控え、こまめに手を休ませることが大切です。 参考文献 文献1 ガングリオン|日本整形外科学会 文献2 軟部腫瘍|日本整形外科学会 文献3 ガングリオン|日本手外科学会 文献4 Ganglion Cyst|National Library of Medicine 文献5 形成外科診療ガイドライン2021年度版|日本形成外科学会
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
「手首の親指側が痛いけど、これって腱鞘炎?」 「ドケルバン病って聞いたけど、どんな病気?」 「病院に行くべきか迷っている……」 このような疑問や不安をお持ちではありませんか。 手首や親指の痛みが続いていても、原因や病名が分からず、どう対処すれば良いか迷ってしまう方も多いかもしれません。 ドケルバン病とは、親指を動かす腱が炎症を起こす腱鞘炎の一種で、産後の女性やデスクワークの方に多くみられます。 本記事では、ドケルバン病の症状や原因、セルフチェック方法、治療・再発予防まで、やさしく解説します。 不安な気持ちを少しでも和らげるためのヒントとして、ぜひ最後までお読みください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ドケルバン病をはじめ、日々の違和感やお悩みがある方は、お気軽に公式LINEにご相談ください。 ドケルバン病は手首の親指側に生じる腱鞘炎 ドケルバン病は、手首の親指側にある腱鞘というトンネル部分が狭くなり、中を通る腱がこすれて炎症を起こす病気です。腱鞘炎の一種で、親指の使い過ぎやホルモンバランスの影響によって起こります。 ドケルバン病になりやすい人の特徴 ドケルバン病になりやすい人は、以下のとおりです。 産後・授乳中の女性 更年期の女性 育児や家事で手首を酷使している人 デスクワーク中心でパソコンやスマホをよく使う人 とくに20〜30代と50代の女性に発症が多く、女性ホルモンの変化も関係しているといわれています。(文献1) さらに詳しく知りたい方は、こちらでドケルバン病と腱鞘炎の違いや重症度についても解説しているためご覧ください。 ドケルバン病の症状 親指を動かした際に手首の親指側に痛みが出てきたら、ドケルバン病の可能性があります。 典型的な症状の特徴 代表的な症状は、以下のようなものです。(文献1),(文献2) 親指の付け根〜手首の親指側が痛む 親指を動かすと痛みが増す 腫れを伴うことがある 握る・つまむなどの動作で力が入りにくい 心当たりのある方は医療機関の受診を検討しましょう。 悪化すると日常生活に影響も 痛みを我慢して親指や手首を使い続けていると、日常のさまざまな動作がつらくなってきます。 たとえば、赤ちゃんを抱っこするだけで手首にズキッと痛みが走ったり、ボタンを留めるなど細かな作業が思うようにできなくなったりする可能性があるのです。 また、スマートフォンを持つ手がつらく感じることもあれば、パソコン作業のたびにストレスを感じるようになる方もいます。 こうした状態を放置すると、関節の動きが悪化したり、最悪の場合は腱が切れたりする恐れがあります。違和感を覚えた時点での早めの対応が大切です。(文献3) スマホが原因の腱鞘炎についてはこちらで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 ドケルバン病の原因 ドケルバン病では、親指を動かす2本の腱(短母指伸筋腱・長母指外転筋腱)が、腱鞘(けんしょう)と呼ばれるトンネル内でこすれ合い、炎症を引き起こします。 主な原因は、次のとおりです。(文献2) 原因 具体例 親指や手首の使いすぎ 家事 育児(赤ちゃんの抱っこや授乳) 過度なスマホ操作 パソコンの長時間使用 ピアノの練習 スポーツ ホルモンバランスの変化 妊娠・出産後のホルモン変化 更年期によるホルモン変化 かつては仕事によるパソコンの長時間使用やピアノの練習などで発症する例も多く、「職業病」と呼ばれることもありました。 原因によっては、長期間その動作をやめるのは難しい場合もあるでしょう。 その場合は、使い方の工夫や適切なケアを取り入れながら症状の悪化を防ぐことが大切です。 パソコン作業や楽器演奏による腱鞘炎についてはこちらも参考にしてください。 【関連記事】 パソコン腱鞘炎の症状とは?原因や治し方・予防法も徹底解説! ピアノ腱鞘炎の症状チェック|原因から治療法・予防まで詳しく解説 ドケルバン病の検査・診断 ドケルバン病は、整形外科での診察や問診に加え、痛みの出方を確認するいくつかのテストで診断されます。 代表的なのは、親指を内側に折り込んで手首を小指側に倒す「フィンケルシュタインテスト」や、親指を握り込んでから手首を小指側に曲げる「アイヒホッフテスト」です。 さらに、必要に応じて超音波検査やレントゲンなどの画像検査をしてほかの病気が隠れていないか、併発していないかを確認します。 腱鞘炎の種類と症状については、こちらでも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 ドケルバン病の治療法 ドケルバン病の治療は、症状の段階によって選択肢が変わってきます。 保存療法|安静・湿布・装具 まずは手首の安静が基本です。 症状に合わせて、以下のような方法が行われます。 湿布や消炎剤で炎症を抑える 温熱やレーザー治療 シーネや装具による固定 症状が軽い段階なら、これだけでも改善するケースがあります。(文献2) 薬物療法・注射|痛み止めやステロイド注射 炎症が強いときや保存療法で効果がみられない場合の治療は、以下のような薬物療法です。 ステロイド注射 局所麻酔薬の注入 注射で痛みが改善する人もいますが、原因を取り除けていなければ再発する可能性があります。 さらに、ステロイド注射は、何度も繰り返すと感染を起こしたり腱の断裂を引き起こしたりすることもあるため、慎重な治療が必要です。(文献1) 手術療法|腱鞘切開術 保存療法や注射をしても症状が改善しない場合には、腱鞘を切開して腱の通り道を広げる手術が検討されます。(文献2) 多くの場合は日帰りでの対応が可能ですが、親指の近くには大切な知覚神経が走っており、腱の構造にも個人差があるため、経験豊富な医師による手術が望まれます。(文献1) 手術後は当日から手を動かすことが可能です。 ただし、ガーゼ交換の必要や傷を濡らさないなどの注意点があるため、医師の指示に従い段階的に日常生活に戻っていく必要があります。 ドケルバン病のセルフチェック方法【自宅でできる】 手首や親指の痛みが「ドケルバン病かもしれない」と感じたときは、簡単なセルフチェックで目安を知ることが可能です。 以下のテストはいずれも痛みの有無を確認する方法で、自宅でも行いやすいのが特徴です。 また、ドケルバン病のセルフケアについては、こちらの記事に詳しく書かれています。セルフチェックで気になった方はぜひ参考にしてください。 フィンケルシュタインテスト フィンケルシュタインテストは、ドケルバン病の代表的な診断方法のひとつです。 痛みのある手の親指を反対の手で軽く握ります。 その状態で、握った親指を小指側へ引っ張る動作を加えたときに、親指側の手首に鋭い痛みが出る場合は、ドケルバン病が疑われます。(文献2) 痛みが強く出る可能性があるため、親指の力を抜き、ゆっくりと無理のない範囲で行うようにしましょう。 アイヒホッフテスト フィンケルシュタインテストと似ていますが、アイヒホッフテストでは、親指を手の中に入れてグーの形をつくったあと、自力でゆっくりと手首を小指側に倒していきます。 この動作で強い痛みが出た場合も、ドケルバン病が疑われます。 また、医師の間では、フィンケルシュタインテストの「変法」として扱われることもあります。(文献2) 岩原・野末のサイン 岩原・野末のサインは、日本整形外科学会がドケルバン病のセルフチェック法として紹介している方法です。 手首を内側に直角に曲げた状態で、親指を外側にまっすぐ伸ばしたとき、親指の付け根や手首の母指側に痛みや違和感が出るかを確認します。(文献2) 圧痛(押したときの痛み)や腫れがあるかどうかも、あわせて観察すると良いでしょう。 ドケルバン病の悪化を防ぐには早期対処と予防が大切 ドケルバン病は、放っておくと慢性化しやすいため、症状を感じた段階での早めの対処と、日常的な予防が大切です。 ドケルバン病対策のストレッチ 予防や再発防止のために効果的なのが、手首や親指のストレッチです。 無理のない範囲でゆっくりと伸ばすことで、症状の改善や悪化の予防が期待できます。 家事や仕事の合間にこまめにストレッチを心がけましょう。 痛みを感じる動きは避け、心地よく伸びる範囲で行うことがポイントです。 おすすめの方法はこちらで詳しく紹介しています。 ドケルバン病を予防する生活習慣 普段の生活の中で、手首や親指を酷使しすぎないことも大切です。 長時間同じ作業を続けないよう、こまめに休憩を挟みましょう。 スマートフォンやパソコンを使う際は、姿勢や手首の角度にも注意し、できるだけ負担が少なくなるよう意識してみてください。 これらの対策を意識しても痛みが続く、あるいは悪化しているように感じる場合は、無理をせず早めに医療機関を受診しましょう。 ドケルバン病と似た症状の病気には、関節リウマチや感染性腱鞘炎など、進行すると関節や腱に大きな障害を残すものも含まれます。 正しい診断と早期の適切な治療が大切なため、「腱鞘炎かも?」と感じた時点で専門医に相談することをおすすめします。 更年期と関節痛の関係が気になる方はこちらもあわせてご覧ください。 ドケルバン病の改善を目指すなら早めに医療機関を受診しよう ドケルバン病は、育児やデスクワークなど、手首や親指を酷使する日常のなかで起こりやすい腱鞘炎のひとつです。 放っておくと症状が悪化し、日常動作に支障をきたすおそれもあります。 親指の付け根や手首に痛みや違和感があるときは、早めに整形外科など専門の医療機関を受診しましょう。 手首の痛みがほかの原因かも、と思った方は、以下の記事も参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ドケルバン病について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ドケルバン病に関するよくある質問 ドケルバン病はサポーターやテーピングで治せますか? サポーターやテーピングで親指や手首を固定すると、動かす回数が減り、痛みの軽減につながることがあります。 とくに症状が軽い場合は、自宅でのケアとして有効な方法です。 ただし、こうした対処はあくまで一時的なものであり、根本的な治療にはなりません。 痛みが続いたり、悪化したりしているときは、医療機関で診察を受けることが大切です。 また、症状が改善したあとも、すぐに育児や家事などで親指を酷使すると、再発しやすくなるので注意しましょう。 とくに出産直後の女性に多いドケルバン病は、授乳期が終わると自然に軽くなることもあります。(文献1) 必要に応じて、授乳スタイルや抱っこの方法を見直すのもひとつの方法です。 ドケルバン病はどれくらいで治るの? 治り方には個人差がありますが、一般的には安静や湿布、痛み止めなどの保存療法を続けることで、数週間〜数カ月ほどで症状が落ち着くことが多いとされています。 こうした保存療法で十分な効果が得られないときには、ステロイド注射が選択肢に入ります。 注射後は1週間ほどで痛みが半減するケースも少なくありません。 ただし、保存療法で改善しない場合や再発を繰り返す場合には、手術を検討する必要があります。 手術後は数週間で日常生活に復帰できるケースが多いものの、回復スピードには個人差があるため、無理のないペースでの復帰が大切です。 参考文献 (文献1) 狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病)|一般社団法人日本臨床整形外科学会 (文献2) 「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」|公益社団法人日本整形外科学会 (文献3) 健康一口メモ~腱鞘炎の予防・対策について~|公益社団法人三重県健康管理事業センター
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
「指が引っかかる感じがする」 「朝、手を握ろうとすると動かしにくい」 「ばね指って放っておいても大丈夫?」 そんな不安や疑問をお持ちではありませんか? ばね指とは、指を動かす腱とその通り道(腱鞘)で炎症が起こり、スムーズに指を動かせなくなる状態です。 進行すると、指が曲がったまま動かなくなることもあるため、早めの対処が大切です。 本記事では、ばね指の症状や原因、医療機関での治療方法、自分でできる予防ケアまでわかりやすく解説します。 症状に不安を感じている方が、安心して向き合えるきっかけになれば幸いです。 ばね指が心配だけど、すぐに受診するほどではない……という方も、LINEで気軽に情報を受け取れます。 ばね指について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ばね指とは「腱鞘炎の一種」 ばね指は、指を曲げ伸ばしする際に使われる腱と、その通り道である腱鞘との間に炎症が起こることで、スムーズな動きができなくなる状態です。 腱は筋肉の力を骨に伝える「ひも」のような組織で、腱鞘はそれを包んで滑らかに動かすためのトンネルの役割を担っています。 この腱鞘に炎症が起こり、腱の通り道が狭くなると、引っかかるような動きや痛みが現れるのです。 指が「カクッ」とばねのように弾かれる動きから「ばね指(弾発指)」と呼ばれています。(文献1) ほかの腱鞘炎のことも詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 ばね指の症状 指がどんなふうに変化するのか、代表的な症状をチェックしておきましょう。 <代表的な症状の特徴> 指の付け根に起こる痛み、腫れ、熱っぽさ 朝方のこわばり(起床時に動かしづらい) 指を動かしたときの引っかかり感 「カクン」とばねのような弾かれ感 指が曲がった位置で動かなくなる どの指にも起こりますが、とくに多く見られるのは親指と中指です。(文献1),(文献2) 朝方の指のこわばりが気になる方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。 ばね指を引き起こす原因 ばね指は、次の原因が関与して起こると考えられています。 指や手の酷使による腱の炎症 女性ホルモンの変化 糖尿病や関節リウマチなどの疾患 順番に解説します。 指や手の酷使による腱の炎症 ばね指の主な原因のひとつが、指や手を繰り返し使うことによる負担です。 パソコン作業やスマホ操作、料理、楽器の演奏など、同じ動きを続けることが多い人は、腱と腱鞘の間で摩擦が起こりやすくなるのです。 この摩擦が炎症を引き起こし、腱の動きがスムーズでなくなることが、ばね指の症状につながります。(文献1) 女性ホルモンの変化 女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」は、関節や腱のまわりの状態を保つ役割があります。更年期や産後の授乳期は、このエストロゲンが短期間で大きく変化する時期です。 血中のエストロゲンが低下すると、腱や腱鞘の状態を健康に保てなくなり、炎症(腱鞘炎)が起こりやすくなります。この腱鞘炎が進行すると「ばね指」が発症することがあるのです。(文献3) 加えて、ビタミンB群やビタミンDは、筋肉や関節、腱の健康維持に関わる栄養素です。不足すると、腱や関節のはたらきに影響し、指や手のトラブルが起こりやすくなる可能性があります。(文献4) 糖尿病や関節リウマチなどの疾患 糖尿病や関節リウマチなどの病気も、以下の理由でばね指の原因のひとつです。 (文献5)(文献6) 糖尿病:高血糖により腱・腱鞘が厚くなる変化が起こり、腱の動きが妨げられる可能性がある 関節リウマチ:腱鞘の滑膜成分が炎症に関与している可能性があり、腱鞘炎が高頻度に見られる この結果、腱鞘内での摩擦や炎症が起こりやすくなり、どちらの病気でもばね指の発症リスクが高まるといわれています。透析中の方も注意が必要です。(文献1) ばね指の診断方法 病院において、医師はまず問診と触診で、痛みや引っかかりのある場所を確認します。 腫れや圧痛(押すと痛い場所)、「カクッ」という動作の有無がポイントです。(文献1) 必要に応じて、レントゲンやCTなどの画像検査が行われることもあります。 ばね指の治療法 症状の程度に応じて、治療の選択肢は大きく3つに分かれます。 保存療法|安静・サポーター・薬物療法 まずは安静を保ち、炎症を抑える治療が基本です。 具体的には以下の方法があります。 シーネ(添え木)で固定する 痛み止めを使う ステロイド注射をする 注射によって3カ月以上症状が改善することもありますが、再発の可能性もあるため経過観察が必要です。(文献1) 腱鞘炎の注射治療について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。 手術療法|腱鞘切開術 保存療法でよくならない場合や再発を繰り返す場合は、腱鞘の一部を切開する手術(腱鞘切開術)が行われます。(文献1) 局所麻酔で対応可能な日帰り手術が一般的です。 再生医療|幹細胞治療・PRP療法 また、腱鞘炎の治療で近年注目されているのが、体の組織や細胞に着目した再生医療です。 リペアセルクリニックでも、以下のような治療をおこなっています。 幹細胞治療:自身から採取した幹細胞を外部で増殖させ、身体に戻す治療法 PRP療法:自身の血液から血小板を抽出して活用する治療法 ただし、保険適用外(自由診療)となるため、費用や治療内容について医師とよく相談することが大切です。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報を発信しています。ばね指の治療でお悩みの方は、ぜひ登録してみてください。 ばね指を悪化させる「やってはいけないこと」 間違ったケアや行動が、かえってばね指の症状を長引かせることもあります。 次のような行動には注意しましょう。 やってはいけないこと 理由 痛みがあるのに無理に動かす 炎症が悪化し、腱や腱鞘の損傷が進行する可能性がある 指を長時間使い続ける 休まず使うと、腱の回復が追いつかず慢性化しやすくなる 強く揉む・自己流のマッサージ 痛みのある部分を強く押すと、さらに腫れや痛みが悪化することもある 「何が悪化につながるか詳しく知りたい」という方はこちらの記事もあわせてご覧ください。 ばね指の予防に役立つセルフケア方法 ばね指を未然に防ぐための工夫や習慣も大切です。 手を使う作業の前後にストレッチする 作業の前後に手首や指を軽く伸ばすことで、腱の滑りが保たれ炎症予防につながります。 手のひらを上に向けて腕を伸ばし、もう片方の手で指先をそっと上に引く指のストレッチや、親指の腱鞘を伸ばす運動がおすすめです。 痛みのない範囲で行いましょう。 写真付きの詳しいストレッチ方法を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 キーボードやスマホ操作の際は休憩を挟む 料理やパソコン作業など、手を使う作業を長く続けると、腱に負担がかかります。 こまめに休憩を取りながら作業しましょう。 また、スマホを片手で操作しているならば両手で操作する、持ちやすいペンに変えてみる、といった工夫も大切です。 冷えを防ぎ、指先の血流を保つ 冷えは血流を悪くし、腱の柔軟性が失われる原因となり得ます。 気になる場合は、手袋やカイロなどで保温するのもひとつの方法です。 ただし、炎症が強く出ているときは冷やすほうが良い場合もあります。 状況に応じて温冷を使い分けましょう。 ばね指の長引く症状は医療機関を受診して改善させよう ばね指は、手の使いすぎだけでなく、ホルモンバランスの変化や持病など、複数の要因が関係しています。 原因によって最適な治療法も異なるため、正確な診断が大切です。 指の動きに違和感がある、痛みや引っかかりが続くといったときは、迷わず整形外科などの専門医に相談しましょう。 当院「リペアセルクリニック」は再生医療専門クリニックです。公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 ばね指について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 ばね指に関するよくある質問 ばね指は自分で治すことができますか? 症状が軽い場合は、安静によって改善することもあります。 ただし、痛みが長引いたり、症状が強くなってきたりしたら受診が必要です。 悪化すると手術が必要なケースもあるため、早めに医師に相談しましょう。(文献1) ばね指の原因で女性によくあるものは何ですか? 女性におけるばね指の原因のひとつは、更年期や妊娠・出産などの女性ホルモンの変化により、腱の柔軟性が低下することです。 また、女性に多い指に負担のかかる動作として、以下のような要因も考えられます。 赤ちゃんの抱っこ 授乳や哺乳瓶の保持 子どもを抱き上げる動作 料理や洗濯などの家事 また、事務職・看護師・保育士・美容師などの仕事で手先を酷使することも、ばね指の原因のひとつです。 治療には原因となる負担を減らすことが欠かせませんが、仕事や家事・育児を完全に休むのは難しいものです。 そのため、こまめに休憩を入れたり、周囲の人に協力をお願いしたりして、できるだけ手を休ませる工夫をしましょう。 参考文献 (文献1) 「ばね指(弾発指)」|公益社団法人日本整形外科学会 (文献2) ばね指|MSDマニュアル家庭版 (文献3) Hands and Fingers Disorder as a Women’s Disease- Why My Hands and Fingers Hurt or Grow Numb|Clinics in surgery (文献4) Exploring the impact of vitamin D on tendon health: a comprehensive review|J Basic Clin Physiol Pharmacol (文献5) Hands in people with diabetes more often affected by trigger finger|LUND UNIVERSITY (文献6) Tenosynovitis|StatPearls
2025.08.31 -
- ヘバーデン結節
- 手部
「最近、指の第一関節が腫れて痛む」 「関節がこぶのように盛り上がってきた」 このような違和感を覚えている方は、へバーデン結節と呼ばれる病気かもしれません。 へバーデン結節は、指の第一関節に起こる変形性関節症の一種で、加齢にともない有病率が高くなると言われています。 放置すると関節が変形し、痛みが出たり握力が低下したりと、日常動作への支障が出ることも少なくありません。 本記事では、へバーデン結節の原因や症状、受診すべき診療科、治療方法などを医師の知見を交えながら解説します。 「まだ病院に行くほどではないけれど、指の違和感が気になる」「手術は避けたい」などの方は、ぜひ最後までお読みください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 へバーデン結節について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 へバーデン結節とは へバーデン結節は、指の第一関節に生じる変形性関節症です。(文献1) 関節の変形や痛みを引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。 親指にみられるケースもありますが、一般的には人差し指から小指にかけて発症する病気です。(文献1) 40歳代以降の女性に多く発生するとされており、70歳以降では50%以上に所見があるとした報告もあります。(文献1)(文献2) 一度発症すると、完全に元の状態に戻すことは難しい疾患ですが、適切な治療やセルフケアによる痛みの軽減や進行の抑制は可能です。指の違和感に気づいたら、早めに整形外科を受診して専門医に相談するのが重症化予防につながります。 へバーデン結節の主な症状 へバーデン結節では、以下のような症状があらわれます。(文献1) 第一関節の腫れ、赤み、痛み 関節の動きの制限 握力の低下 関節の背側の粘液嚢腫(ねんえきのうしゅ:ミューカシスト) 痛みや変形が強くなると、洗濯バサミをつまむ、ボタンを留める、ペンを持つ、スマートフォンを操作するなど、日常の些細な動作に支障をきたすようになります。 ただし、関節の変形は個人差が大きく、強い変形が起こらないケースもあります。 なお、40代~50代の女性に起こる「更年期関節痛」の症状については、以下の記事も合わせてご覧ください。 へバーデン結節の原因 へバーデン結節の具体的な原因は、明らかになっていません。(文献1) 可能性がある因子として、以下が考えられています。(文献1)(文献3)(文献4) 加齢による関節軟骨の変性 ホルモンバランスの変化 手の使いすぎ 遺伝的要因(とくに母や祖母) 指の関節に違和感を覚えていて、実母や祖母にへバーデン結節の既往がある場合は、体質が似ている可能性があります。指の酷使は避けたほうが良いでしょう。 ホルモンバランスによる指の痛みについては、以下の記事で詳しく解説しています。 へバーデン結節は何科を受診する?|迷ったら整形外科へ へバーデン結節が疑われる場合の診療科は、基本的に整形外科です。 整形外科では、レントゲン検査で指の第一関節に以下の要素があるかを確認し、へバーデン結節かどうかを診断します。(文献1) 関節の隙間が狭くなっている 関節が壊れている 骨棘(こつきょく:骨の一部がトゲのように変形する状態)がある 関節リウマチといった他の疾患と見分けるために、血液検査や画像診断を併用した鑑別診断をおこなうケースもあります。症状が似ていても治療方針が異なることがあるため、自己判断せずに医師の診断を受けましょう。 また、痛みや炎症が慢性化している方は、ペインクリニックやリウマチ科と連携して治療を進める場合もあります。 手の外科医(手外科専門医)が在籍する整形外科では、より専門的で精度の高い診療が受けられるかもしれません。 へバーデン結節の治療法 へバーデン結節の治療は、一般的に保存療法が第一選択です。 具体的には、以下のような方法が中心です。(文献1) 安静・関節の保護:テーピングやサポーターで指関節の使いすぎを防ぐ 消炎鎮痛剤(痛み止め)・ステロイド注射:薬の力で痛みを抑える 場合によって、温熱療法や理学療法などの「物理療法」を、医師の指示の下におこなうことがあります。 安静や痛み止めの使用でも改善が見られないときは、関節の固定や結節を切除する手術療法が検討されます。 また、近年注目を集めているのは、「再生医療」です。 たとえば、再生医療のうち幹細胞治療は、自身の脂肪や骨髄などから抽出された幹細胞を注入する治療法です。 指の違和感や動かしにくさが気になる方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご活用ください。 再生医療に関する最新情報や、へバーデン結節の簡易オンライン診断をご利用いただけます。 ヘバーデン結節の治療法については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 へバーデン結節が疑われるときの注意点【やってはいけないことは?】 へバーデン結節が疑われる場合、症状の悪化を防ぐために避けるべき行動があります。 無意識にくり返していると、症状の進行を早める要因となり得るため、次のような動作に心当たりがある方は、早く見直してみましょう。 指先への過度な負荷 患部を温める行為 強いマッサージ 重いものの運搬 スマートフォン使用による指の動かしすぎ また、状態によっては医療機関で関節を温める治療を実施するケースはあるものの、痛みがあるときに自己判断でおこなうのは避けましょう。 違和感を覚えた段階で日常動作を見直し、指関節をいたわる習慣を身につけることが、重症化の予防につながります。 ヘバーデン結節でやってはいけないことについては、以下の記事もぜひお読みください。 へバーデン結節かもと感じたら早めに受診しよう へバーデン結節は、指の第一関節に痛みや変形が生じる進行性の疾患です。初期には軽い腫れや違和感から始まり、症状が進行すると日常の細かい動作や握力にまで影響を及ぼします。 一度発症すると、関節の変形を完全に元に戻すことは難しいため、早期の発見と適切な対処が重要です。 指の先の腫れや関節の小さなこぶなどの症状に心当たりがある方は、自己判断せずに整形外科を受診し、正確な診断を受けることをおすすめします。 また、症状の進行具合や生活への影響に応じては、保存療法だけでなく、幹細胞治療をはじめとする再生医療の選択肢もあります。 リペアセルクリニックでは公式LINEで再生医療の情報提供と、簡易オンライン診断を実施しております。 「再生医療に興味がある」「再生医療について詳しく知りたい」などの方は、公式LINEをご活用ください。 へバーデン結節に関するよくある質問 へバーデン結節とコーヒーは関係しますか? コーヒーの摂取が直接的にへバーデン結節の原因になるとした医学的根拠は確認されていません。 ただし、カフェインの過剰摂取は血流やホルモンバランスに影響を与えて症状を強くする可能性があるため、飲み過ぎには注意が必要です。 詳しくは、以下の記事も参考にしてください。 へバーデン結節とブシャール結節の違いは何ですか? 両者とも指の関節に起こる変形性関節症ですが、発症する部位が異なります。 へバーデン結節:第一関節に発症 ブシャール結節:第二関節に発症 症状や原因には共通点があるものの、関節の動きに与える影響や治療アプローチが異なるため、正確な診断と適切な対処が必要です。 詳細は以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。 ヘバーデン結節をほっとくとどうなるのでしょうか? へバーデン結節を放置してしまうと、関節の変形が進行し、痛みや可動域制限が強くなる可能性があります。 進行した場合は、手術を含む治療が必要になるケースもあるため、違和感を覚えた段階で整形外科の受診をおすすめします。 へバーデン結節に効果的なマッサージ方法はありますか? へバーデン結節に対して効果が科学的に証明されたマッサージ法は存在していません。 炎症がある時期に無理に指を動かしたり、強く揉んだりするのは症状の悪化につながる可能性があります。 手術後や炎症が落ち着いた時期には、医療機関で状況に応じてマッサージや可動域訓練を実施する場合がありますが、自己判断でおこなうのは危険です。 痛みが強いときは、関節を安静に保ち、保存療法を優先しましょう。 参考文献 文献1 へバーデン結節|日本整形外科学会 文献2 内科医が知っておきたい高齢者の整形外科疾患|中村洋 文献3 肩・肘・手の主な病気:へバーデン結節|東邦大学医療センター大橋病院 整形外科 文献4 Erosive osteoarthritis: a current review of a clinical challenge|PubMed
2025.08.31 -
- 手部、その他疾患
- 手部
仕事やゲームなどでパソコンを使っていて、指や手首に耐えられない痛みを感じる方もいるのではないでしょうか。実はパソコン作業による指や手首の痛みは、腱鞘炎の疑いがあります。 日頃のパソコン操作で、指や手首負担がかかって起きる腱鞘炎は「パソコン腱鞘炎」と呼ばれることもある疾患です。パソコンを使うことが多い現代人ならではの病気ともいえるため、特徴や治し方を知っていると重宝します。 本記事では、パソコン腱鞘炎の症状や原因、治し方を解説します。 パソコン腱鞘炎の症状とは? パソコン腱鞘炎になると、指や手首、腕に痛みや引っかかりの症状が現れます。これらの症状は、日常のパソコン作業に大きな支障をきたすため、早期発見・早期対処が重要です。 症状の現れ方は炎症が起きる部位によって異なり、代表的なものに「ばね指」と「ドケルバン病」があります。 それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。 利き腕の指の引っ掛かり・痛み|ばね指 パソコン腱鞘炎でよく見られる症状として、まず「ばね指」が挙げられます。ばね指は、指の付け根部分に発症する腱鞘炎です。 具体的には、「屈筋腱」と呼ばれる指の曲げ伸ばしに欠かせない腱や、それを覆う腱鞘に過度な負担がかかって発症します。とくにパソコン作業では、長時間にわたるキーボードのタイピングやマウスのクリック操作が主な要因です。 指先を使いすぎると屈筋腱と腱鞘が摩擦し、それによって炎症が生じます。炎症が生じると指を曲げ伸ばす際に痛みを感じるだけでなく、引っ掛かりまで起こるのが特徴です。 親指の痛み|ドケルバン病 腱鞘炎でばね指とともに「ドケルバン病」も、パソコン作業が原因で発症します。ドケルバン病は腱鞘炎のなかでも、手首の親指側に生じるのが特徴です。具体的には、手首から親指にかけて伸びる2本の腱と腱鞘に過度な負担がかかって、痛みや熱感が起こります。 パソコン作業中は手首が反った状態が長時間続きやすく、腱や腱鞘に負担がかかることでドケルバン病を発症するリスクがあります。 腕や肩の痛み パソコン腱鞘炎では、腕や肩が痛む場合があります。これはとくに、マウスを使って長時間作業する方に多く見られる症状です。 マウスを使う際、手首を動かす一方、マウスを持つ方の利き腕は常に固定されます。しかも、肘が浮いている状態で固定されるため、首や肩に大きな負担を与える場合も多いです。もし、マウスを使う作業が長時間に及べば、肩や腕に痛みやしびれが生じることがあります。 なお、マウスを使わない場合でも同じ姿勢で長時間のパソコン作業により、上腕二頭筋周辺の腱に炎症が起こって腱鞘炎に発展するケースも少なくありません。 パソコン腱鞘炎のチェック方法 パソコン腱鞘炎やマウス腱鞘炎になっているか、または発症しかけているかを確認するには、セルフチェックが有効です。以下の項目で当てはまるものがないか確認してみましょう。 長時間パソコン作業に従事している パソコンのモニターが真正面にない キーボードまで距離がある・キーボードの手前に書類などが置いてある パソコン作業中に足を組んでいる 受話器を耳や肩で挟みながらキーボード入力している パソコンを使っている時に指や手首などを痛めたことがある 指や手首、腕などに違和感がある 頭痛や目の疲れがある 歩く時間が1日30分に及ばない 休憩時間などにスマホを操作することも多い 以上の項目で当てはまるものが多いときは、パソコン腱鞘炎やスマホ腱鞘炎の疑いがあります。 加えて、医療機関でも使われる方法として、以下の方法でチェックするのもおすすめです。 【ドケルバン病のチェック方法】 フィンケルシュタインテスト:広げた手で親指を内側に折った後、反対側の手で親指を引っ張る フィンケルシュタインテスト変法:親指握った状態でこぶしを作り、手首を小指側に曲げて痛みの有無を確認 【ばね指のチェック方法】 指の付け根部分を軽く押しながら、指を曲げ伸ばす 曲げ伸ばしがスムーズにできないときは、ばね指の疑いがあります。 パソコン腱鞘炎になる原因 パソコン腱鞘炎を引き起こす主な原因は以下の通りです。 過度なタイピング操作 パソコン作業時の姿勢の悪さ マウス操作時の利き手への負担 これらの複数の要因が重なり合って症状が現れるのが一般的です。 それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。 過度なタイピング操作 過度なタイピング操作は指先に負担をかけ、パソコン腱鞘炎の原因となります。 とくに業務でのパソコン作業では、成果物の提出やメール対応などの迅速さが求められるため、早いタイピングが必要なケースも多くあります。急ぐあまりエンターキーを強めに押す人も少なくありません。 しかし、早いタイピングや強めのキーボード入力は、自然と指先に大きな負担をかけます。もしパソコン作業が毎日長時間に及ぶと、溜まった負担によって指先の腱鞘炎を発症する原因にもなりやすいです。 パソコン作業時の姿勢の悪さ 「パソコン作業時の姿勢の悪さ」も、パソコン腱鞘炎の主要な原因のひとつです。パソコン作業中は、画面やキーボードの位置を確認しながら入力などしていくため、猫背のような悪い姿勢になることもよくあります。 しかし姿勢の悪い状態で作業を続けた場合、肩や腕、手首などに負担がかかります。 猫背になると肩甲骨周りの筋肉が緊張し、肩や腕の動きが制限されてしまいます。その結果、手首に余計な負担がかかって腱鞘炎を引き起こす場合があります。 また、デスクや椅子の高さやキーボードの位置が自分に合っていないのも、パソコン腱鞘炎の原因のひとつです。とくにキーボードやノートパソコンがあまりにも手前側に置かれている状態は、直接手や手首に大きな負担を与えます。デスクや椅子の高さが合っていない状態も、手首や腕に余計な負担がかかるため、腱鞘炎を引き起こす要素となります。 マウス操作時の利き手への負担 パソコン作業中にマウスを長時間使用することで利き手に負担がかかり、これも腱鞘炎を引き起こす原因となります。クリック操作やスクロール操作では、利き手側の人指し指など特定の指に負担が集中しがちです。 加えて、マウスを操作する際は手首を反らした状態になりやすいため、手首の腱や腱鞘にも負担が集中します。 マウス操作では、両手を使うキーボード入力と異なり、利き手の特定の部位に負担が集中する傾向があります。その結果、人差し指や手首で腱鞘炎が発症するリスクを高めます。 パソコン腱鞘炎でできるセルフケア パソコン腱鞘炎の症状が現れた場合、適切なセルフケアをおこなうことで症状の悪化を防ぎ、回復を促せます。 しかし、セルフケアはあくまで補助的な要素として、症状が重い場合や長期間続く場合は医療機関を受診してください。 ここでは、パソコン腱鞘炎の症状を和らげるために自宅でできる4つの基本的なセルフケア方法をご紹介します。 痛みが出たら手を休ませる サポーターやテーピングで固定 症状に応じた温冷療法 作業中にストレッチを取り入れる これらの方法を組み合わせて実践することで、より効果的な症状改善が期待できます。 痛みが出たら手を休ませる パソコン作業で痛みが生じたときは、無理をせず手を休ませてください。早めに休憩を取れば、痛みが和らぎ症状悪化も防げます。とくに仕事中に痛みなどを感じた際には、1時間から2時間に1度は小休止を取ることをおすすめします。 逆に痛みなどがあるにもかかわらず、放置して作業を続行すると、症状がより悪化しかねません。痛みや腫れを感じたら、まずは安静にすることが大切です。 サポーターやテーピングで固定 パソコン腱鞘炎になった際には、手首や指をサポーターやテーピングで固定するのもおすすめです。サポーターやテーピングで指や手首の動かせる範囲を制限することで、患部の負担を抑えられます。 仕事などで作業を中断できない場合でも、サポーターを活用することで負担を軽減しながら作業を続けられます。 ただし、すでに腱鞘炎の症状が見られる状態であるため、こまめな休憩は欠かせません。 症状に応じた温冷療法 症状に応じた温冷療法も、パソコン腱鞘炎に対するセルフケアでよく使われる方法です。腱鞘炎の症状が見られ始めて間もない急性期には、患部を冷やします。アイスパックや氷嚢などをタオルで巻いて患部に当てると、痛みや腫れを緩和できます。 症状が落ち着く慢性期の場合は、反対に患部を温めます。患部をぬるま湯につけることで血行が改善され、症状が和らいだり腱などの柔軟性が高まったりする効果が期待できます。 作業中にストレッチを取り入れる 作業中の休憩時間にストレッチするのもおすすめです。休憩に合わせてストレッチすることで、痛みが和らいだり、血行の促進で腱の動きをスムーズにできたりします。 業務中でも短時間でできるストレッチをいくつかご紹介しましょう。 【背中のストレッチ】 座った状態で両手を前に突き出す 胸を後ろに引いた状態で背中を丸める この状態を30秒間キープする 【胸のストレッチ】 座った状態で両手を後ろで組む 肩甲骨を引いて胸を張る 背中が丸くならないように腕を上げる 胸が伸びたら、その状態で30秒間キープ 【前腕のストレッチ】 一方の腕を前にまっすぐ伸ばす 手を上側や下側に反らせる(痛みを感じない程度に伸ばす) それぞれの方向で10秒間キープ・5セットおこなう 反対の腕でもストレッチ ただし、これらのストレッチは指先や手首に強い症状や違和感があるときは、無理せずに控えてください。 パソコン腱鞘炎の予防法 パソコン腱鞘炎は長時間のパソコン作業や姿勢の悪さが原因で、指先や手首に発症します。 このため、日頃からパソコンを使った作業の時間や姿勢、作業環境などを見直すことで予防が可能です。 パソコン腱鞘炎の予防法には、主に以下の方法があります。 こまめに休憩を取る 普段から長時間パソコン作業をおこなっている方は、こまめに休憩を取ることが大切です。パソコン腱鞘炎は、指先や手首をいたわることなくパソコン作業で使いすぎると発症します。 1時間から2時間に1度、10分程度の休憩を入れて指や手首を休ませるだけでも、腱鞘炎の予防効果が期待できます。 手指のストレッチを取り入れる こまめな休憩に加えて、手指のストレッチも取り入れましょう。疲労が溜まった手指のストレッチで、血行が促されるとともに手指の腱や腱鞘の柔軟性を高められます。 パソコン腱鞘炎は手指などの腱や腱鞘が硬くなって症状が現れるため、日頃からストレッチを習慣づけることで腱鞘炎の発症を防止できます。手指のストレッチの方法は次のとおりです。 指を1本ずつ、手の甲側に反らしていく それぞれの指で何セットかこなす なお、長時間のストレッチは余計に腱鞘炎のリスクを高めるため、指1本につき10秒程度のストレッチをゆっくりとおこないましょう。 姿勢を改善する パソコン腱鞘炎の予防には、作業中の姿勢の改善も欠かせません。パソコン作業中に背中を丸める姿勢は、肩や腕、指先に負担がかかり、腱鞘炎のリスクを高めます。 姿勢を改善する際のポイントは、次のとおりです。 背筋をまっすぐ伸ばし、あごは軽く引く 椅子には深めに腰かける 肘は直角に曲げる一方、手首は曲げないようにする 足の裏はつま先からかかとまでしっかりつける(膝は90度に・足は組まない) マウスはなるべく身体に近いところに置いて操作 これらを意識して、姿勢を改善してみてください。 予防グッズなどでデスク環境を整える 姿勢の改善とともに、腱鞘炎予防グッズなどでデスク環境を整えることも有効な対策です。具体的に以下の方法があります。 デスクや椅子を適切な高さに調整(デスクは60~72cm、椅子は37~43cmの範囲で) ディスプレイは40cm以上離す(上端部分が目の少し下に来る程度に) ノートパソコンはスタンドで目線の高さを調整 リストレストやアームレストなど手や腕の負担を軽減するグッズの導入 エルゴノミクスマウス(人間工学に基づいたマウス)の活用もあり デスク環境を整えて、体への負担を軽減しましょう。 まとめ|パソコン腱鞘炎では長時間の作業は禁物 パソコン腱鞘炎は長時間のパソコン作業で、指や手首などに疲労が溜まって発症する疾患です。発症すると、仕事や日常生活に影響を与えます。 パソコン腱鞘炎になったときは、なるべく指や手首を安静にして、適度にストレッチすることが重要です。また、予防する方法として正しい姿勢を心掛けたり、デスク環境を整えたりする方法もあります。 パソコンを使うシーンが多い現代人にとって、パソコン腱鞘炎は誰もが発症する可能性のある身近な病気です。作業の合間にこまめに休憩を取るなどして、対策をしましょう。 パソコン腱鞘炎になった場合は、安静にするほかにも再生医療の治療選択肢もあります。 詳しくは、公式ラインで公開している無料の再生医療ガイドブックをご覧ください。 パソコン腱鞘炎でよくある質問 パソコン腱鞘炎が左手に発生することはある? パソコン腱鞘炎は左手に発生することもあります。 キーボードは両手で使用するため、右利きの方でも左手にパソコン腱鞘炎を発症します。とくに、シフトキーやCtrlキー、Tabキーなど左手で操作することが多いキーを頻繁に使う場合は、注意が必要です。 また、左利きでマウスを左手で操作する方は、左手に症状が現れやすくなります。 パソコン腱鞘炎が肘に出てくることはある? パソコン腱鞘炎が肘に現れることはあります。パソコン作業中が原因で肘に現れる腱鞘炎は、「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」と呼ばれる症状です。テニスプレーヤーに多いことで知られるテニス肘は、パソコン操作が日常的な方にとっても身近な存在です。 パソコン作業では、キーボード入力やマウス操作の際に指を頻繁に動かすと、手や手首を反らす動作が増えます。この手や手首を反らす動作に影響を与えているのが、肘の外側の筋肉です。そして日頃からパソコン作業が多くなりすぎると、肘の外側の筋肉に大きな負担がかかり、ついにはテニス肘を発症します。 とくに作業中の姿勢やデスク環境が悪い場合は、猫背などで肘に与える負荷が大きくなる分、テニス肘の発症リスクが高まるため、姿勢には注意が必要です。 パソコン腱鞘炎は労災認定されますか? パソコン腱鞘炎は、症状によっては労災認定されるケースがあります。以下の条件に当てはまる場合は、労災認定の可能性が高いです。 6ヵ月以上にわたって、職場で長時間パソコンを使った反復作業に従事している 業務内容と腱鞘炎の症状に明らかな因果関係がある 専門医による診断がある 発症の時期やきっかけがはっきりしている ただし、業務との因果関係の証明や証拠集めにハードルがあるため、労災認定が難しいケースもあります。
2025.06.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
日常的にピアノを弾いている方が指先や手首に痛みを感じるようになったら、その症状はピアノ演奏が原因で発症する、ピアノ腱鞘炎の可能性かもしれません。 ピアノ腱鞘炎は普段の練習のしすぎだけでなく、演奏中のフォームの悪さなどさまざまな原因で起こる病気です。 本記事では、ピアノ腱鞘炎の症状や原因、治療法を解説します。 今後ピアノを長く続けるためにも、ピアノ腱鞘炎のことを理解しておきましょう。 ピアノ腱鞘炎の症状をチェック! 腱鞘炎の中には、ピアノの演奏が原因になる「ピアノ腱鞘炎」もあります。ピアノ腱鞘炎の症状は、主に次のとおりです。 親指の付け根・手首の痛み|ドケルバン病 ピアノ腱鞘炎の症状として、「ドケルバン病」があります。 ドケルバン病は腱鞘炎のうち、手首の親指側にある「短母指伸筋腱」と「長母指外転筋腱」という2本の腱と、それを包む腱鞘が炎症を起こす病気です。 ドケルバン病で炎症が起きる腱や腱鞘は、親指や手首の動きに関係しています。そのため、親指を曲げ伸ばしたり手首を動かしたりする際に、親指の付け根や手首に痛みやしびれを感じるのが特徴です。 指の付け根の痛み・ひっかかり|ばね指 ピアノ腱鞘炎の症状としては、「ばね指」も知られています。ばね指は腱鞘炎でも、各指の付け根部分の手のひら側にある屈筋腱と、それを覆う腱鞘で炎症が起きる病気です。 それぞれの指にある屈筋腱は、指が滑らかに曲げ伸ばしできる役割があります。しかし、ばね指になると屈筋腱で炎症が生じるため、指を曲げ伸ばす際に痛みを感じたり、ひっかかりでうまく動かせなくなったりするのが特徴です。 ピアノ腱鞘炎の原因 腱鞘炎のうち、日常生活でのピアノ演奏をきっかけに発症するものに「ピアノ腱鞘炎」があります。 ピアノ腱鞘炎の原因は、練習などでのピアノ演奏時の正しくない習慣が主です。 過度な練習による指や手首の使いすぎ ピアノ腱鞘炎の原因として、「過度な練習による指や手首の使いすぎ」が挙げられます。 ピアノの演奏では、さまざまな鍵盤を複数の指で押すため、自然と指や手首への疲労が溜まっていきがちです。 オクターブ演奏で少し離れた鍵盤を押そうとして指を大きく広げると、より指に負担がかかります。 ピアノの演奏では多種多様な指の動きが求められる分、練習時間が長いほど指や手首には重い疲労が溜まりやすくなります。 日々の無茶な練習で指や手首を酷使した結果、腱鞘炎を発症してしまうケースも少なくありません。 鍵盤を押すときに力みすぎている 「鍵盤を押すときに力みすぎている」ことも、ピアノ腱鞘炎の原因のひとつです。とくに、演奏中に音の強弱をつけようとして、つい力を入れすぎてしまうシーンが見られます。 しかし、ピアノの音量は鍵盤を押す「速さ(打鍵速度)」で決まるため、力任せにたたいても思うような音にはなりません。 それどころか、指や手首に余計な負担をかけるだけになってしまいます。力んだまま鍵盤を押すクセは無意識に出やすいため、気づいたときには腱鞘炎を発症しているケースもあります。 不適切な姿勢やピアノとの距離 ピアノ腱鞘炎は、「演奏時の姿勢」や「ピアノとの距離」も関係する要素です。 ピアノ演奏では、猫背や肩が上がっている状態などの悪い姿勢は、首や肩に大きな負担がかかります。 腕を支える肩甲骨のスムーズな動きも妨げる分、腕や指先にも気付かないうちに疲労が溜まっていく仕組みです。 加えて、体とピアノの距離が近くても離れていても腱鞘炎の原因になります。 ピアノに近すぎると、自然と背中が丸くなる分、下がってくる頭を支えるために肩や腕に余計な力が入り、手首や指にも負担がかかります。 一方でピアノと離れすぎている場合、腕を余計に伸ばさないといけなくなるため、手首や指先に負担がかかりがちです。適度な距離を保ちましょう。 ピアノ腱鞘炎の治し方 ピアノ腱鞘炎になってしまったとき、どのような治し方があるのかを知っておくと、今後ピアノと長く付き合ううえで役立ちます。 ピアノ腱鞘炎の治し方には、主に以下の方法があります。 痛みを感じたら練習は休む ピアノの練習中に指や手首などに痛みを感じたら、無理せずに練習を休むことが大切です。 長時間連続で練習を続けた場合、指や手首にさらなる負担がかかり、症状が悪化します。こまめに休憩を設けることがポイントです。 患部のテーピングや温熱療法 患部のテーピングや温熱療法も、ピアノ腱鞘炎の治し方のひとつに挙げられます。 テーピングは指や手首の動きを制限しながら、極力負担をかけずに痛みを抑える用具です。 ただし、テーピングによって肌が荒れることもあるため、心配な方にはサポーターの使用をおすすめします。 温熱療法は、すでに腱鞘炎が慢性化している方向けの方法です。練習後にぬるま湯に患部をつけて温めることで、血行の改善や腱鞘炎による症状の緩和などの効果が期待されます。 ただし、炎症が起きている急性期に温めると、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。 なお、腱鞘炎になって間もない場合は、温熱療法ではなく冷却療法が推奨されます。患部を冷やす際には、アイスパックなどをタオルに包んだ状態で患部に当てます。 力を抜いた演奏を心掛ける ピアノ腱鞘炎になったときは、力を抜いた演奏を心掛けることも治し方のひとつです。 腱鞘炎を抱えている状態で力を込めて演奏すると、肩や指先などに過度な負担がかかって、余計に症状が悪化します。 とくに不慣れな曲やフレーズを演奏する際には、つい鍵盤に力が入りがちです。1音ずつ焦らずゆっくりと弾き方に慣れることをおすすめします。 ピアノ腱鞘炎の予防法 ピアノ腱鞘炎には以下のような予防法があります。練習中の方法やフォームを見直したり、ストレッチを取り入れたりして予防を心掛けてください。 練習中に休憩をはさむ ピアノ腱鞘炎を予防するには、練習中に休憩をはさむことが大切です。ピアノ腱鞘炎は長時間にわたって休憩なしで練習するほど、指や手首に疲労が蓄積されます。 このため、途中で休憩をはさめば、指や手首に溜まった疲労を少しでも解消できる分、本格的な腱鞘炎の発症リスクを下げられます。とくに、ピアノ初心者や久しぶりに弾く方は、短時間の練習とこまめな休憩を組み合わせることがおすすめです。 練習中のフォームの見直し ピアノ腱鞘炎を予防するには、練習中のフォームを見直す必要があります。演奏中の姿勢が悪いと、肩や腕、指先などに余計な力がかかる分、腱鞘炎を発症する可能性も高まります。 ピアノ演奏の際の正しい姿勢のポイントは、次のとおりです。 鍵盤の真ん中に椅子を置く 椅子に浅めに腰掛ける(前側3分の1程度) 背筋をぴんと伸ばしつつ、肩やひじは脱力する 手首の角度は鍵盤にまっすぐ伸びている 足はつま先からかかとまで床につける 椅子の高さは肘と鍵盤が同じくらいの高さになるように 手の形は卵をもって折るイメージで ストレッチの習慣を取り入れる ピアノ腱鞘炎を予防するには、指や手首の柔軟性を保つことが大切です。そのために、練習前後にストレッチを取り入れる習慣をつけましょう。 ストレッチによって血行が促進され、筋肉や腱の柔軟性を維持しやすくなります。 腱鞘炎は、指や手首の動きが硬くなることで起こりやすくなるため、日常的なケアが予防につながります。 たとえば、手を開いたり握ったりする「グーパー運動」や、指を1本ずつ甲側に反らすストレッチなどが効果的です。 自分に合う鍵盤のピアノを選ぶ 自分に合う鍵盤のピアノを選ぶことも、腱鞘炎を予防するうえで効果的です。 重いと感じる鍵盤を日常的に押すことも、ピアノ腱鞘炎の発症につながります。鍵盤が重いほど、音を出す際に力をこめる必要があります。 ピアノ腱鞘炎を防止するには、あまり力まずに演奏できる程度の鍵盤を選ぶことが理想的です。もし、今使っているピアノの鍵盤を重く感じるときは、調律師に調律を依頼するか、軽い力で鍵盤を押せるピアノに買い替えを検討しましょう。 電子ピアノにはタッチ調整機能もある 電子ピアノの場合はタッチ(鍵盤)の調整機能もあるため、こちらを選ぶのもひとつの手です。タッチ感度を調整するためのボタンを操作することで、弾くときの力の強弱や音の出方を調整できます。 今使っているピアノの鍵盤の重さに違和感があり、買い替えを考えている方には、タッチ調整機能つきの電子ピアノを選ぶのもおすすめです。 まとめ|ピアノ腱鞘炎になったら無理せず安静にしよう ピアノ腱鞘炎はピアノ演奏のしすぎや、演奏時の姿勢の悪さが主な原因です。 ピアノ腱鞘炎になったときは、練習をすぐにやめて安静にする必要があります。早く演奏を再開したい場合には、姿勢やフォーム、力の入れ方を見直し、患部への負担を減らす工夫も欠かせません。 また、腱鞘炎を予防するためには、日頃からこまめに休憩をとったり、ストレッチを習慣づけたりすることが効果的です。無理のない演奏環境を整えることが、ピアノと長く付き合っていくための第一歩といえるでしょう。 ピアノ腱鞘炎は、適切に対処しないと演奏を長期間休まなければならない場合があります。指先や手首に痛みを感じたら、無理をせず練習を中断し、早めに治療を始めることが大切です。 なお、腱鞘炎の治療法には再生医療という選択肢もあります。腱鞘炎でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 ピアノ腱鞘炎のよくある質問 ピアノ腱鞘炎が治るまでの期間は? ピアノ腱鞘炎が治るまでの期間は個人差はあるものの、早くて3週間から2ヵ月程度、重症化した場合や治療が遅れた場合は、数ヵ月から1年以上かかることもあります。 そのため、なるべく早く治してピアノ演奏を再開するには、痛みを感じてから早い段階で治療を始めることが大切です。 ピアノ腱鞘炎はオクターブも関係ある? ピアノ腱鞘炎はオクターブ演奏で発症する場合もあります。オクターブ練習では無理に手を広げようとするため、指先に負担がかかって腱鞘炎に繋がることがある点に注意が必要です。 ピアノ腱鞘炎は演奏の下手さでなる? ピアノ腱鞘炎は演奏の上手・下手に関係なく発症する人は一定数います。ただし、ピアノの初心者や演奏慣れしていない方の場合、うまく脱力できていなかったり無理な指の広げ方をしたりすることで、腱鞘炎になることがあります。
2025.06.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
日々腱鞘炎に悩まされているものの、忙しいなどの理由でなかなか専門医の診察を受けられない方もいるのではないでしょうか。 腱鞘炎の改善には適切な治療が最も重要ですが、日常の食生活も回復をサポートする要素の一つです。 本記事では、腱鞘炎を早く治す食べ物を、摂取の際の注意点や他にできるセルフケアの方法とともに解説します。 食べ物の力を活用して、腱鞘炎の回復をサポートしていきましょう。 腱鞘炎を早く治すのに効果的な食べ物 腱鞘炎の治療法といえば、患部を安静にしたり薬を使ったりする保存療法が主流です。しかし、腱鞘炎は摂取する食べ物を見直すことでも、改善の効果が期待できます。 腱鞘炎をなるべく早く治すには、とくに以下の食べ物を意識的に摂るのがポイントです。 オメガ3脂肪酸が豊富な食べ物 ビタミンCやビタミンEの多い食べ物 たんぱく質を多く含む食べ物 グルコサミンなどのサプリメント 腱鞘炎の原因や症状についても知りたい場合は、「【医師監修】腱鞘炎とは|症状・原因・治療法から重症度のチェック方法まで解説」の記事もあわせてご覧ください。 オメガ3脂肪酸が豊富な食べ物|青魚や亜麻仁油など オメガ3脂肪酸は、腱鞘炎など関節の炎症を抑える効果が期待できる栄養素です。 オメガ3脂肪酸を意識的に摂取した場合、炎症を誘発する化合物である「サイトカイン」の生成量を減らせます。 オメガ3脂肪酸は青魚や亜麻仁(あまに)油、豆類・木の実類などに豊富に含まれています。より具体的な食べ物は次のとおりです。 青魚類:サーモン・イワシ・サバ・ニシン・マグロなど 植物由来の油:亜麻仁油・キャノーラ油・大豆油・クルミ油など 豆類・木の実類:クルミ・大豆・アマニ・チアシードなど ビタミンC・ビタミンEの多い食べ物|野菜・果物類など ビタミンCやビタミンEを多く含む食べ物も、腱鞘炎を早く治す際に効果的とされています。ビタミンCやビタミンEは野菜や果物類に多く含まれる栄養素です。 とくに、以下の食べ物から豊富に摂取できます。 栄養素 野菜類 果物類・ナッツ類 ビタミンC パプリカ・ブロッコリー・キャベツ・トマト など 柑橘類・イチゴ など ビタミンE ブロッコリー・ホウレンソウ など アボカド・ピーナッツ・アーモンド など ビタミンCやビタミンEは、ともに抗酸化作用があるため、腱鞘炎を早期に改善する効果が期待されます。 酸化は体内の活性酸素のはたらきによる現象で、酸化が進行すると腱鞘炎の回復に時間がかかりやすくなります。 そのため、抗酸化作用に効果が見込めるビタミンCやビタミンEの摂取も、腱鞘炎を早く治すポイントです。 加えて、ビタミンCやビタミンEの摂取は、腱鞘炎で傷ついた腱の回復を助けます。 たんぱく質を多く含む食べ物|大豆食品や肉類 腱鞘炎を早く治すには、たんぱく質を多く含む食べ物を摂取する必要があります。 たんぱく質は、腱鞘炎の原因である腱や腱鞘、筋肉の損傷を改善するうえで必須の栄養素です。同時にたんぱく質は、腱や腱鞘を構成するコラーゲン繊維の主要な材料の1つでもあるため、腱鞘炎からの早期回復に貢献します。 たんぱく質を多く含む食べ物として、大豆食品や肉類、卵などが代表的です。なかでも、大豆食品に含まれるイソフラボンは、腱鞘炎による痛みを和らげる効果があるとされています。 イソフラボンなどたんぱく質を含む食べ物は、次のとおりです。 大豆食品:納豆・豆腐・豆乳・味噌・油揚げ など 肉類:鶏肉(胸肉・もも肉・ササミ)、豚肉(豚ロース・豚肩肉・豚バラ肉など)、牛肉(牛もも肉・牛ひれ肉 など) 上記以外:卵や低脂肪牛乳 など グルコサミンなどのサプリメント グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントは医療機関の処方薬ほどの効果は見込めません。 しかし、関節痛の初期段階や手や指を使う際の予防や症状の進行を抑える効果が期待されます。 ただし、グルコサミンやエクオールなどのサプリメントの腱鞘炎への効果は医学的に十分実証されておらず、個人差もあるため注意が必要です。 腱鞘炎改善に役立つ食生活の注意点 食べ物で腱鞘炎の改善を図るには、症状に効果的な栄養素を多く摂取することが大切です。その一方で、食生活を通じて腱鞘炎を改善していくには、次の点に注意する必要があります。 脂肪分の多い食べ物は避ける 脂肪分の多い食べ物は腱鞘炎の改善を図るうえで避けるべきです。揚げ物や加工食品などの脂っこい食べ物はカロリーが高い分、体内に余計な熱を持たせることで、炎症のさらなる悪化を招く可能性があります。 加えて、脂肪分の多い食べ物は、胃や腸などでの消化に時間がかかるのも特徴です。胃腸に与える負荷も大きく、腱鞘炎の改善に必要な栄養素を吸収する力が弱まるため、回復に時間がかかります。 なるべく早めに腱鞘炎を改善したいのであれば、まず脂肪分の多い食べ物を過度に摂取する習慣を改善することが大切です。 暴飲暴食は控える 腱鞘炎の改善に効果的な栄養素を多く摂取することは大切ですが、暴飲暴食はNG行為です。暴飲暴食も脂肪分の多い食べ物の過度な摂取と同じく、消化器官に大きな負担をかけてしまいます。 食べすぎや飲み過ぎは、腱や筋肉の回復に欠かせない栄養素の摂取にも時間がかかるとともに、血液など体液の流れにまで悪影響を及ぼす点でも問題です。 体液の流れが悪化すると、腱や筋肉にも栄養素が届きにくくなる分、腱や筋肉が硬くなったり回復に時間がかかったりします。 腱鞘炎に効果がある栄養素を積極的に摂取するのは良いことですが、飲食の量はほどほどにするのがポイントです。 栄養バランスを心掛ける 腱鞘炎を食生活の改善によって早期回復させるためには、バランスの取れた栄養摂取が不可欠です。 腱鞘炎の回復過程では、オメガ3脂肪酸、タンパク質、各種ビタミンなど、多種多様な栄養素が必要となります。 症状が重い場合、患部の修復には通常より多くの栄養素が消費されます。これらの栄養素は細胞内で代謝され、組織修復に必要なタンパク質などの合成材料として利用されるのです。 このように多くの栄養素が通常以上に必要となるため、野菜、肉類、魚類、大豆製品などを幅広くバランス良く摂取することが、腱鞘炎の早期回復において重要な役割を果たします。 冷たい飲み物の飲み過ぎに注意する 冷たい飲み物を飲むと、冷えによって体内の血行が悪化するため、飲みすぎに注意してください。血行が悪化すると、腱や筋肉の修復に必要な栄養素が届きにくくなり、腱や筋肉の柔軟性の低下で回復が遅れます。しかも、腱や筋肉が硬くなるために、痛みが強くなることさえあります。 なお夏場は、暑さの影響でつい冷たい飲み物を摂取しがちになるだけでなく、エアコンの風で体が冷えやすいです。他の季節以上に冷えの影響を受けやすいため、冷たい飲み物の飲み過ぎを控えることがより重要になります。 腱鞘炎を早く治すためのセルフケア 腱鞘炎を早く治す際には、食べ物以外の方法もあります。食べ物の摂取以外にできるセルフケアの主なやり方は、次のとおりです。 なるべく指や手首を安静にする 腱鞘炎のセルフケアでは、極力指や手首を安静にする方法が基本です。腱鞘炎は指や手首の酷使(使いすぎ)で炎症が生まれることで発生します。 そのため、腱鞘炎になったときには、症状が落ち着くまではできる限り指や手首を使わないことが大切です。もし、仕事などでパソコンやスマホを日常的に使う方は、30分から1時間おきに1度は指や手首を休ませてください。 パソコンやスマホの操作が長時間に及ぶと、指や手首に疲労が溜まる分、腱鞘炎を発症するリスクが高まります。 そのため、腱鞘炎のリスクを抑えるためには、こまめな休憩を通じて指や手首に溜まった疲労を少しでも解消することが大切です。なお、スマホを使う際には両手で持つことでも、一方の手の指や手首への負担を減らせます。 サポーターなどで固定するのもおすすめ 指や手首を安静にする際には、サポーターやテーピングによる固定もおすすめです。この方法は、とくに指や手首に痛みが生じているにもかかわらず、仕方なく指などを使わなければいけないときに役に立ちます。 サポーターやテーピングで患部のある指や手首を固定すると、実際に手を使う必要のある状況でも負担を軽減できます。 ストレッチで手指の柔軟性を高める 腱鞘炎のセルフケアでは、ストレッチで手指の柔軟性を高める方法も大切です。腱鞘炎は指の腱や筋肉の柔軟性が下がって血流が悪化した結果、発症します。 逆に手指の柔軟性が高まれば、血流が改善されるとともに、腱や筋肉の回復に必要な栄養素も届きやすくなる分、早期の回復も期待できます。予防の面でも、普段からストレッチで手指や手首の柔軟性を高めておくことが大切です。 手指の柔軟性を高めるストレッチの手順は、以下のとおりです。 手首を甲・腕側に軽く曲げる 指を1本ずつなるべく伸ばし、反対側の手でつまんで甲側に軽く反らす 簡単なので、ちょっとしたスキマ時間に試してみてください。 治らないときは医療機関を受診する 腱鞘炎に効果的な食べ物を食べたり、ストレッチなどでセルフケアしたりしても治らないときは、無理せずに医療機関を受診しましょう。 医療機関では専門医の診察・診断を経て、薬物療法やステロイド注射がおこなわれます。薬物療法は以下の方法が代表的です。 外用鎮痛消炎薬:塗り薬や湿布など、痛みのある部位に直接塗ったり巻いたりする 内服薬:飲み薬として服用 もし、薬物療法でも症状の改善が見込めないときは、ステロイド剤を注射します。症状の出ている腱鞘に直接注射する方法で、数日から3週間程度で症状が緩和します。 ステロイド剤注射でもなお、症状が良くならないときは手術も治療の選択肢です。腱鞘炎の場合は、腱鞘を切り開く「腱鞘切開術」がおこなわれます。炎症で厚くなった腱鞘を切り開いて、腱が以前のように円滑に動くようにする方法です。 腱鞘炎を早く治すには「再生医療」も選択肢のひとつ 腱鞘炎を早く治す場合、「再生医療」という選択肢もあります。 再生医療には主に、幹細胞治療とPRP療法があります。 幹細胞治療は、患者様の幹細胞を採取・培養して患部に投与する治療法です。幹細胞の「分化能」という他の細胞に変化する能力を活用します。 PRP療法では、患者様の血液を採取した後、専用の遠心分離器で血小板を濃縮した液体「多血小板血漿(PRP)」を作製し、患部に注射する方法です。 手術をおこなう必要がなく、治療も最短30分程度で終わります。 再生医療に関して詳しくは、以下をご覧ください。 まとめ|腱鞘炎を早く治す食べものを取り入れて早期改善を目指そう 腱鞘炎を早く治すには、早く治すうえで効果的な栄養素の摂取が欠かせません。オメガ3脂肪酸やビタミン、たんぱく質などが重要となる分、大豆食品や野菜、肉、魚を盛り込んだバランスの良い食事が大切です。 同時に、腱鞘炎を早く治すときは、指や手首を安静にすることやストレッチなども役に立ちます。食べ物の摂取と組み合わせて、腱鞘炎の早期改善を目指しましょう。 腱鞘炎を早く治す食べ物の「よくある質問」 腱鞘炎に効く飲み物は? 腱鞘炎に効果的な飲み物は、食べ物と同じようにビタミンC・Eやたんぱく質を豊富に含んだものがおすすめです。具体的には以下のものがあります。 ビタミンC:青汁・アセロラジュース・グレープフルーツジュース・緑茶類 など ビタミンE:豆乳・アーモンドミルク・麦芽コーヒー・きな粉飲料 など たんぱく質:牛乳・豆乳・飲むヨーグルト・プロテインドリンク など ばね指に効く食べ物は? ばね指は腱鞘炎のうち、指に発症するものです。このため、ばね指に効果的な食べ物を摂取したいときも大豆食品・魚類・野菜などのような、腱鞘炎の改善に効果的とされる栄養素を多く含むものをおすすめします。 腱鞘炎は栄養不足が原因でなるの? 腱鞘炎は栄養不足で発症することもあります。腱や腱鞘は主にコラーゲン繊維で構成されているためです。同時にコラーゲン繊維も、鉄分・たんぱく質・ビタミンEを材料に生成されます。 そのため、体内で鉄分などの栄養分が不足した場合、腱や腱鞘の形成に悪影響を及ぼします。その結果、腱鞘炎を発症しやすくなる仕組みです。 腱鞘炎が治らない理由は? 腱鞘炎がなかなか治らない理由としては、以下のようなものが考えられます。 症状があるにもかかわらず、指や手首を使いすぎている 自己判断による誤ったセルフケア 暴飲暴食による胃腸の働きの低下 ホルモンバランスの乱れ 腱鞘炎を確実に治す方法は? 腱鞘炎の治療には個人差がありますが、次の方法が効果的とされています。 症状の出ている指や手首を安静にする・極力負担をかけない 専門医の診察・治療を受ける 指や手首のストレッチ(痛みを感じる場合、無理をしない) 栄養バランスの取れた食事の摂取 症状の悪化や慢性化を防ぐためにも、早めに医療機関を受診しましょう。
2025.06.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
東洋医学に基づくツボ押しは、特定の部位に適度な圧力をかけることで体の不調を和らげるとされる手技療法です。 腱鞘炎の症状に対しても、日常生活の中で手軽に実践できるセルフケアの一つとして取り入れることができます。 本記事では、部位別の腱鞘炎に効果のあるツボを、腱鞘炎の予防法などとともに解説します。 ツボ押しの他に、腱鞘炎に対する治療法として、再生医療も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 腱鞘炎のツボの押し方【基礎知識】 腱鞘炎のツボ押しをする前に先に押し方を理解しておくと、より効果的にツボを刺激できます。 腱鞘炎のツボを押す際には、まずリラックスした状態で、押したいツボにゆっくりと指圧を加えることがコツです。 ツボを押す際は力を入れ過ぎずに、心地よさ(痛気持ちよさ)を感じられる程度がちょうどよいとされています。同時に指圧を加えたら、5秒程度キープするのもポイントです。 もし、「刺激が足りない」と感じるときには、指圧を加えた状態で円を描いてください。 なお、ツボ押しは、毎日継続的に行うことで、腱鞘炎の症状を和らげる効果が期待できます。 ただし、治療法ではないため、痛みが強かったり症状が落ち着かなかったりするときは、医療機関を受診しましょう。 腱鞘炎の原因や症状など包括的な内容に関しては「【医師監修】腱鞘炎とは|症状・原因・治療法から重症度のチェック方法まで解説」で解説しているので、あわせてご覧ください。 手にある腱鞘炎のツボ 腱鞘炎の症状を和らげる効果が期待できるツボは、上半身のさまざまな場所にあります。 まずは、手にある腱鞘炎のツボから紹介します。 陽谿(ようけい) 「陽谿(ようけい)」は、親指の付け根部分、手首に近いところにあるツボです。親指の付け根と手首の境目にある穴のような部分です。 ここを刺激することで、手指や手首を使いすぎたときに生じる痛みを和らげる効果があるとされます。 ツボを押す際は、手首の力を抜いてリラックスした状態で、反対の手で手首をつかみながら親指で5秒程度軽く押します。 合谷(ごうこく) 「合谷(ごうこく)」は、親指と人差し指の付け根の間にあるツボです。親指と人差し指の骨が合わさる部分の、少し指先側のくぼみに当たります。 腱鞘炎による痛みを和らげたり、炎症を鎮めたりする効果が期待できるツボです。 加えて、肩こりや目の疲れにも効果があるとされるため、長時間のスマホ操作やデスクワークに休みを入れて刺激することもおすすめできます。ただし、妊娠中の方の場合、東洋医学では合谷への刺激が子宮の収縮を促すとされているため、避ける必要があります。 合谷を押す際には、反対の手の親指で押しながら、優しくじっくりと円を描くように刺激を与えるのがポイントです。 労宮(ろうきゅう) 「労宮(ろうきゅう)」は、ちょうど手のひらの真ん中にあるツボです。具体的には、中指と薬指を掌側に握るように曲げて先端が当たったとき、両方の指の間に位置するツボを指します。 労宮は腱鞘炎の緩和のほか、手や指の疲労を和らげるうえで効果があるとされるツボです。 とくに腱鞘炎でも、指の付け根の痛みや炎症が特徴的な「ばね指」の症状を改善するとされています。 労宮を刺激する際には、反対の手の親指をやや強めに押すのがポイントです。親指を5秒程度押した後に離す動作を、数回繰り返します。 手首にある腱鞘炎のツボ 腱鞘炎の症状改善が期待できるツボは、手首にも複数あります。 手首にある腱鞘炎の主なツボは、次の2ヵ所です。 大陵(だいりょう) 「大陵(だいりょう)」は、手首を内側に折ったときにしわができる部分の真ん中にあります。大陵を刺激すると、手の痛みやしびれを和らげる効果が期待できます。 加えて、大陵は手根管のすぐ上に位置しているため、手根管症候群の症状改善の効果があるとされるツボとしても有名です。 大陵のツボ押しでは、呼吸しながら反対側の手の親指を使って、数回軽く押す状態で刺激します。 陽池(ようち) 「陽池(ようち)」は、大陵と異なり手首でも甲側にあるツボです。手の外側(小指側)の、手の甲と手首を繋ぐ部分にある関節のくぼみに位置しています。 陽池を刺激すると、手首や腕の痛みやしびれを落ち着かせる効果が期待できます。 また、ストレスの緩和効果もあるとされるため、デスクワーク中の休憩時間など、ちょっとした時間があれば試してみてください。 陽池を刺激する際には、反対側の手の親指を使って、1,2分程度サークルを描くように指圧を加えます。 腕・肘にある腱鞘炎のツボ 腕や肘にある腱鞘炎のツボは、手三里・曲池・外関の3つです。 手三里(てさんり) 「手三里(てさんり)」は、肘を直角に曲げたときに内側にできるしわのうち、最も外側にあるものから手首のほうへ指3本分のところにあります。 腕の疲労を回復させたり、首や肩のコリをほぐしたりするうえで効果があるとされるツボです。加えて、手首や指についてもスムーズに動けるようにする効果も期待できます。 手三里を刺激する場合、反対側の手の親指で痛気持ちよく感じる程度にマッサージするのがポイントです。 曲池(きょくち) 「曲池(きょくち)」は、肘の外側にあります。肘を曲げた際にできるしわの、最も外側の端にあるツボです。首から腕に至る血流の改善効果が期待できるため、手に溜まった疲労を軽減や手首の痛み、肩こりを和らげます。 加えて、便秘や下痢にも効果があるとされるので、お通じの悩みがある方にもおすすめです。曲池のツボ押しは、親指で軽く押した状態で、円を描くようにもみほぐします。 外関(がいかん) 「外関(がいかん)」は、腕の外側でも比較的手首に近い部分にあるツボです。手と手首の境目から、指3本分ほど腕の根元側に行ったところに位置しています。手首の神経や肩の痛みを和らげるほか、ストレスが要因の体調不良や自律神経の乱れにも効果的です。 なお、ツボを押すときは、反対側の手の指を使ってゆっくりと押します。その際に息を吐くのもポイントです。 腱鞘炎を予防する方法 腱鞘炎は普段の過ごし方に気を付けるだけでも予防できます。 とくに予防で心掛けたい方法が、以下の2つです。 スマホの片手持ちなどの習慣の改善 腱鞘炎を予防する際は、まずスマホを片手で持つ習慣を改善する必要があります。 スマホを片手で持って同じ手で操作するのは、親指や手首に大きな負担をかけるためおすすめできません。 日々長時間にわたってスマホを操作した場合、指や手首を動かす腱や、腱を覆っている腱鞘に負担がかかって腱鞘炎を発症します。 このため、片手ではなく両手でスマホを持つのがおすすめです。両手でスマホを持つことで、手にかかる負担を分散できます。 加えてスマホを操作する際には、30分から1時間に1度などこまめに休憩を入れることも大切です。意識的にスマホから離れる時間を持つことで、指や手首にかかる負担を軽減できます。 スマホの片手持ち以外にも、スポーツの練習や競技での無理な姿勢を避けることもポイントです。とくに野球やテニスのように手をよく使うスポーツでは、ボールやバットを無茶な握り方で持つと、指や手首に大きな負担がかかります。 正しいフォームを身につけるとともに、練習前後のウォーミングアップやクールダウンを欠かさずに行うことが重要です。 ストレッチなどで柔軟性を高める 腱鞘炎の予防には、ストレッチなどで指や手首の柔軟性を高めるのも効果的です。習慣的にストレッチをおこなうと、筋肉の緊張がほぐれて血流が促進され、腱への負担も軽減されます。すでに腱鞘炎の症状がある方も、ストレッチを取り入れることで症状が軽くなる効果も期待できます。 指や手首のストレッチの方法は、次のとおりです。 指のストレッチ:それぞれの指を1本ずつ手の甲側に反らす動きを、何セットか繰り返す 指のグーパー運動:手を大きく広げた状態からゆっくり握りこぶしを作り、再度広げる動きの繰り返し 手首の前後ストレッチ:片方の手の指を反対側の手で掴んだ状態で、手首をゆったり前後に動かす 手首のストレッチ:机の上に手を置き、反対側の手で指を1本ずつつまみながら反らせてキープする ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲でゆっくりと行うことがポイントです。 腱鞘炎の治療選択肢のひとつ「再生医療」について 腱鞘炎の治療には、「再生医療」の選択肢もあります。 腱鞘炎に対する再生医療では、患者様から採取した幹細胞を使用する幹細胞治療と、血液に含まれる血小板を濃縮した液体を患部に注射するPRP療法が用いられます。 どちらも大きな手術は必要とせず、とくにPRP療法は所要時間が最短30分程度で済むのが特徴です。 腱鞘炎の治療に再生医療をご検討の方は、当院へお気軽にご相談ください。 【関連記事】 腱鞘炎の治し方は?自宅でできる対処法や治療法・予防法を解説 まとめ|腱鞘炎のツボ押しで手軽にセルフケアを始めよう 指や手首の使い過ぎで発症する腱鞘炎は、東洋医学に基づくツボ押しで軽減できます。 腱鞘炎の症状緩和が期待できるツボを押すことで、日々の慢性的な痛みが落ち着くことも多いです。 ツボ押しは日常生活でも気軽にできる方法であるため、腱鞘炎の痛みに悩まされるときはセルフケアの一環としてお試しください。 ただし、ツボ押しでも効果が見られないときは、無理せずに医療機関を受診してください。 腱鞘炎のツボでよくある質問 腱鞘炎のツボはドケルバン病にも効果はある? 腱鞘炎のツボのなかには、手首の腱鞘炎であるドケルバン病に効果が期待できるものもあります。陽谿や外関のような、手首付近にあるツボがおすすめです。 手首マッサージでの腱鞘炎の治し方は? 手首マッサージで腱鞘炎を治す際には、痛みのある手首を反らします。この際に指の部分を反対側の手で握りながら、手首を反らすのがポイントです。 ただし、手首マッサージは正式な治療法ではないため、症状がひどいときは医療機関の受診をおすすめします。
2025.06.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
スマートフォンが生活必需品となった現代では、指や手首の痛みに悩む人が増えています。 その原因のひとつが「スマホ腱鞘炎」です。 腱鞘炎とは、筋肉と骨をつなぐ腱を包む腱鞘に炎症が起こる状態で、痛みや腫れ、動かしにくさを引き起こします。 とくにスマートフォンの操作では、親指を使ったスクロールやフリックなど同じ動作を繰り返すことが多く、腱と腱鞘の摩擦が増え炎症が生じやすいのです。 本記事では、スマホ腱鞘炎の原因や種類、セルフチェック法などを詳しく解説します。 腱鞘炎治療の選択肢の一つにもなっている「再生医療」について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 スマホの使い過ぎは腱鞘炎の原因になる スマートフォンの長時間使用は手指や手首に不要な負担をかけ、「スマホ腱鞘炎(けんしょうえん)」と呼ばれる障害の発症リスクを高めます。 腱鞘炎とは、骨と筋肉をつなぐ「腱(けん)」を包む「腱鞘(けんしょう)」に炎症が起こる状態です。 痛みや腫れ、動かしにくさなどが生じます。 とくにスマートフォンの操作では、親指を使ったスクロールやフリックなど同じ動作を繰り返すため、腱と腱鞘の摩擦が増えて炎症が生じやすくなるのです。 親指を使った反復動作は一般的な腱鞘炎の原因とも重なり、アメリカでは「スマートフォンサム(スマホ親指)」として社会的に注目されました(文献1)。 腱と腱鞘のしくみ 腱と腱鞘は、手の動きをスムーズにする重要な組織です。 腱は、筋肉と骨をつなぐ丈夫な線維組織であり、筋肉が収縮したときにその力を骨に伝える役割を担っています。 一方、腱鞘は腱を包む鞘(さや)のような構造が特徴で、腱の動きをスムーズにし、摩擦を減らすのが役割です。 また、腱鞘の内側には滑液(かつえき)と呼ばれる潤滑液が分泌されており、腱がスムーズに動くのを助けています。 ただし、スマートフォンを操作するとき、親指を曲げたり伸ばしたりする動作を何度も繰り返すことで、親指の付け根に通っている2本の腱と腱鞘の間で摩擦が生じます。 その結果、腱鞘炎が引き起こされるのです。(文献2) 腱鞘炎については、以下の記事で医師が詳しく解説しています。 スマホ腱鞘炎の原因 スマートフォンやパソコンを日常的に使用する現代では、手や指の酷使が当たり前になりつつあります。 その結果、若い世代から高齢者まで、手首や指に痛みを感じる「スマホ腱鞘炎」に悩む人が増加しているのです。 また、単に使いすぎだけでなく、日常生活や体の変化とも深く関係しています。 ここでは、スマホ腱鞘炎を引き起こす代表的な3つの原因を見ていきましょう。 長時間のスマホやパソコンの操作 スマホ腱鞘炎で最も一般的な原因は、長時間にわたるスマートフォンやパソコンの操作です。 とくに、親指や人差し指を頻繁に使う入力動作やスクロール、画面タップなどは、腱に対して繰り返し負荷をかけます。 腱と腱鞘の間に摩擦が起こり、炎症の引き金となるのです。 慢性化すると痛みや腫れが現れ、指の動きがさらに制限されるケースもあります。 指や手首に負担をかけるスポーツ テニスやゴルフなど、手首をひねる動作が多いスポーツも腱鞘炎の原因になります。 手首に急激な力が加わったり、同じ筋肉を繰り返し使ったりすることで、腱に炎症が起こりやすくなるのです。 スマートフォンの使用と同様に、スポーツの過度な負荷と反復動作がリスクである点を理解しておきましょう。 ホルモンの大きな変化 女性特有のホルモンの変動も、スマホ腱鞘炎の誘因となります。 更年期や妊娠・出産など、ホルモンバランスが大きく変化する時期には、腱や腱鞘の柔軟性が低下し、炎症を起こしやすくなる場合があるのです。 出産後や更年期の女性に多く見られ、エストロゲンなどのホルモン低下により、腱鞘がむくみやすくなるとされています。 スマホ腱鞘炎は主に3種類 スマートフォンの長時間使用によって起こるスマホ腱鞘炎には、いくつかのタイプが存在します。 なかでも、多く見られるのが「ドケルバン病」「バネ指」「変形性関節症」の3種類です。 ここでは、それぞれの疾患について詳しく解説します。 ドケルバン病 ドケルバン病は、親指の使い過ぎによって発症する腱鞘炎の一種です。 手首の親指側にある腱鞘と、そこを通過する短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)および長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)の間に摩擦が生じ、炎症が起こります。 スマートフォンの片手操作で親指を繰り返し動かすことが主な原因とされており、子育て中の女性や長時間スマートフォンを操作するデスクワーカーなどに多く見られるのが特徴です。 親指を広げる・反らす動作で痛みが増し、進行すると物を握るのが難しくなる場合もあります。 ドケルバン病については以下の記事でも詳しく取り上げているので、参考にしてみてください。 バネ指 バネ指は、指の付け根に発症する腱鞘炎です。 腱が腫れたり、腱鞘が狭くなったり、腱の滑りが悪くなったりなど、引っかかるような動作が見られます。 症状が進行すると、指を伸ばそうとした際に「カクン」とバネのように弾かれる感覚が現れるのが特徴です。 とくに朝方に症状が強い傾向があり、指を動かす際の痛みや違和感が顕著に現れます。 スマートフォンの操作で指を酷使する生活スタイルが背景にあると、バネ指のリスクは高まるとされているため注意が必要です。 変形性関節症 長期間にわたる指関節への負担や加齢によって関節軟骨がすり減り、炎症や変形を起こすのが変形性関節症です。 スマホ腱鞘炎のように手や指を繰り返し使う動作が長期間続くと、関節への慢性的なストレスが蓄積し、軟骨が摩耗しやすくなります。 関節の変形が進行すると、指の曲げ伸ばしが困難になり、日常生活にも大きな支障をきたすケースも少なくありません。 高齢者に多い疾患ですが、近年では若年層にも増加傾向が見られるため要注意です。 スマホ腱鞘炎はどこが痛いのか スマートフォンの長時間使用により、手や腕のさまざまな部位に痛みを感じる場合があります。 どの部位が、どのような原因で痛むのかを正しく把握することが、適切な対策や治療への第一歩です。 ここでは、代表的な痛みの部位を4つに分けて解説します。 親指の付け根が痛くなる スマホ腱鞘炎で最も多いのが、親指の付け根に痛みを感じるケースです。 片手でスマートフォンを持ちながら親指でスクロールや文字入力を繰り返すと、親指を動かす腱と腱鞘が摩擦によって炎症を起こします。 進行すると、ペットボトルのキャップを開ける、物をつかむといった簡単な動作も困難になる恐れがあるため注意しましょう。 小指の付け根が痛くなる スマートフォンを片手で支える際に、小指を画面の端に引っ掛けて持つ不自然なスタイルを続けると、小指の付け根に負荷が集中し、痛みや関節の違和感を引き起こす場合があります。 「スマホ指」とも呼ばれています。(文献3) 小指への過度な圧迫がおもな原因とされ、悪化する前に小指の付け根に負担がかからない持ち方に直しましょう。 手首が痛くなる スマートフォンやパソコンを長時間使用すると手首にかかる負担が蓄積し、腱鞘炎や関節炎を発症する場合があります。 とくに、手首を反らしたまま固定する姿勢は腱と腱鞘の摩擦を増加させ、炎症や腫れを誘発するため注意が必要です。 痛みが悪化すると手首の可動域が制限され、日常動作に影響を及ぼします。 腕が痛くなる スマートフォンを長時間使用し続けると、前腕から肘にかけての筋肉や腱にストレスが蓄積して痛みを引き起こすケースがあります。 「スマホ肘」とも呼ばれ、肘の外側または内側に痛みを感じるのが特徴です。(文献4) 一般的に、物を掴んだときにズキッとした痛みが出る場合が多く、放置すると慢性化するリスクがあります。 スマホ腱鞘炎かも?自分でできるセルフチェック法 スマホ腱鞘炎が気になる方は、自宅で簡単にできるセルフチェック法を試してみましょう。 ここでは、「フィンケルシュタインテスト」と「アイヒホッフテスト」をご紹介します。 テストで痛みを感じた場合はスマホ腱鞘炎の可能性が高いと考えられます。ただし、あくまでセルフチェックなので、強い痛みや症状が続く場合は必ず専門医を受診しましょう。 フィンケルシュタインテスト フィンケルシュタインテストは、スマホ腱鞘炎の診断でよく用いられる方法です。 <フィンケルシュタインテストの手順> 手首が小指側に曲がらないようにまっすぐ固定する 反対の手で親指をつかんで曲げる 親指の力を抜いた状態で、反対側の手を使って曲げる方向に引っ張りましょう。 手首の親指側や親指の付け根あたりに、鋭い痛みが生じた場合はスマホ腱鞘炎の可能性があります。 アイヒホッフテスト アイヒホッフテストは「フィルケルシュタインテスト変法」とも呼ばれ、スマホ腱鞘炎(ドケルバン病)を診断するための有効な方法です。 <アイヒホッフテストの手順> 親指を手のひらの中に入れるように握ります 握った手を、小指側に傾けます テストの際は無理に力を入れず、自然な動きで行いましょう。 痛みの強さは個人差がありますが、通常は痛みをほとんど感じないため、親指の付け根から手首にかけ痛みを少しでも感じる場合はスマホ腱鞘炎の可能性があります。 強い痛みがある場合は、すぐに専門医を受診しましょう。 なお、フィンケルシュタインテストと併せて行うことで、よりテストの精度を高められます。 スマホ腱鞘炎を悪化させる生活習慣 スマホ腱鞘炎は、日常の何気ない使い方で悪化する場合があります。 とくに注意すべき習慣は、スマートフォンの片手操作と、手首で捻って両手で横持ちする動作です。 間違った持ち方が習慣化すると知らないうちに親指や手首に負担がかかり、腱鞘炎のリスクが高まるため注意しましょう。 では、以下で詳しく解説します。 片手で持って片手で操作 片手でスマートフォンを持ちながら親指で操作すると、腱鞘炎のリスクが高まります。 画面全体に届くように親指を大きく外側に広げる必要があり、親指の付け根に過度な負担がかかるのです。 とくに大画面のスマートフォンを使用している場合、親指を無理に伸ばして操作すると、腱にさらなる負担がかかるので注意しましょう。 また、片手操作でスマートフォンの下に小指を添えると関節をねじってしまい、小指の負担が大きくなります。 両手でスマホを持って両方の親指で操作すると、スマートフォンを支える手や指の重さが分散されて負担を軽減できるので、試してみてください。 両手でスマートフォンを持つのが難しい方は、片手の手のひら全体を使って持ち、両手で操作すれば手指にかかる負担を軽減できます。 手首を捻って両手で横持ち スマートフォンを横向きに持って操作する「横持ち」も、腱鞘炎のリスクを高める持ち方です。 横持ちして手首を内側にひねる姿勢が続くと、手首の関節に過度な負担がかかります。 とくに、動画視聴やゲームプレイなどで見られる持ち方なので注意しましょう。 スマートフォンをどうしても横持ちで操作したい方は、「小指でスマホを支えない」「画面をできるだけ立てて持つ」を意識してください。 また、長時間の動画視聴やゲームプレイの際は姿勢に気を配るとともに、適度な休憩を取って手首や指への負担を減らしましょう。 スマホ腱鞘炎の症状を軽くするセルフケア スマホ腱鞘炎は早期に適切なセルフケアを行えば、症状の悪化を防ぎながら回復を目指せる障害です。 ここでは、自宅で取り入れやすい4つのセルフケア方法を紹介します。 マッサージする 手首や指の付け根周辺を優しくマッサージすることで、血行を促進し、炎症部位の回復を助けます。 親指の付け根から手首にかけての筋肉を軽く押し、円を描くようにほぐすと効果的です。 ただし、強く押しすぎると炎症を悪化させる恐れがあるため、痛みがない範囲で行いましょう。 また、入浴後や手を温めた後に行うと、より血流が良くなります。 テーピングする テーピングは、炎症部位にかかる負担を減らすサポート方法です。 親指や手首を安定させるようにテープを巻いて動きを制限すれば、腱や腱鞘へのストレスを軽減できます。 テーピングは市販の伸縮テープを使用し、関節を曲げ伸ばししやすい程度に貼るのがポイントです。 巻き方を誤ると逆効果になる場合もあるため、わからない場合は専門家の指導を受けましょう。 湿布をする 炎症や腫れがある場合は、冷感タイプの湿布で患部を冷やすと痛みが和らぎます。 また、慢性的なこわばりや疲労感が強いときは、温感タイプの湿布で血流を促進するのも有効です。 ただし、使用時は肌に異常が出ないか確認し、長時間貼り続けないように注意しましょう。 スマホ腱鞘炎が悪化したら?治療法と再生医療の選択肢 セルフチェックの結果、スマホ腱鞘炎の可能性が高いと感じた場合、どのような対処が必要でしょうか。 初期段階では、「保存的療法」と呼ばれる手術を行わない治療法が効果的です。 保存的療法では、まず患部に塗り薬や湿布を塗布し、スマートフォンの使用時間を意識的に減らして親指や手首への負担を軽減します。 スマートフォンを操作する際は、正しい姿勢を保ち腱への過度な負荷を避けましょう。 あわせて、手首や指の柔軟性を保つためのストレッチを定期的に行って腱の柔軟性を維持し、炎症の改善を図ってください。 ただし、保存的療法を行っても症状が続く、もしくは日常生活に支障をきたす場合は、手術が必要になるかもしれません。 一般的な腱鞘炎の手術は症状により異なりますが、腱鞘を切開する方法が取られることがあり、おおよそ30分前後が手術時間とされています。 また、手術をしたくない場合には、自己の幹細胞や血液を利用する治療法「再生医療」の選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、腱鞘炎に対する再生医療を提供しております。再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。 スマホ腱鞘炎に役立つ予防グッズ スマホ腱鞘炎を防ぐには、手指や手首への負担を軽減するアイテムの活用が効果的です。 スマートフォンの持ちやすさをサポートする「スマホリング」や、滑りを防ぐ「シリコンカバー」などが販売されています。 また、長時間の操作でも手首を固定せずに画面を見られる「スマホホルダー」も便利です。 姿勢の改善にも役立つので、日常的にスマホ腱鞘炎のリスクを下げるためにも試してみてください。 まとめ|スマホ腱鞘炎を予防・改善する習慣を今日から始めよう スマホ腱鞘炎は、現代社会において誰もが発症する可能性がある障害です。 しかしながら、長時間の連続使用を避ける、操作姿勢を改善する、セルフケアや予防グッズを活用するなど、日々の工夫で発症や悪化のリスクを軽減できる可能性があります。 痛みや違和感を感じたら早めに休養を取り、必要に応じて医療機関を受診しましょう。 万が一、手術が必要なほど悪化した場合には、再生医療という治療法もあります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報提供や簡易オンライン診断を行っております。 再生医療についての疑問や気になる症状があれば、公式LINEに登録してぜひ一度ご利用ください。 スマホ腱鞘炎に関するよくある質問 受診すべきタイミングは?専門医への相談の目安を知りたい スマホ腱鞘炎は、初期段階では軽い違和感や動かしにくさから始まりますが、放置すると痛みが強くなり、指や手首の動きが制限される場合があります。 以下に当てはまれば、整形外科や手外科などの専門医を早めに受診しましょう。 1週間以上安静にしても痛みや腫れが改善しない 指や手首を動かすと強い痛みが出る 朝起きたときに指がこわばり、曲げ伸ばしが困難 日常生活や仕事に支障が出ている 早期診断と適切な治療により、症状の悪化を防ぎながら回復を早めることも可能です。 腱鞘炎の治し方や予防については、以下の記事でも詳しく解説しています。 腱鞘炎と再生医療の関係は? 腱鞘炎の治療において、近年注目を集めている選択肢の一つが「再生医療」です。 再生医療とは、自分自身の細胞や成分を利用して損傷した組織の修復を促す方法で、慢性化した腱鞘炎や従来の治療で改善が難しいケースの新たな選択肢となっています。 再生医療についてもっと知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 参考文献 (文献1) スマホの使いすぎによる腱鞘炎(けんしょうえん)|大正製薬 (文献2) 「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)について」2023年 |日本整形外科学会 (文献3) 『スマホ指』に要注意!長時間の利用で手指の痛み・変形が起こる?正しい持ち方を解説|メディエイド (文献4) 『スマホ肘』になる人が増加中?スマホ肘の原因と症状、予防方法を解説|メディエイド
2025.05.30 -
- 足部、その他疾患
- 手部、その他疾患
- 手部
- 足部
「最近、手足が妙にしびれる」 「手足にピリピリした違和感に不安を覚えている」 手足のしびれやピリピリとした感覚、気になっていませんか。その手足のしびれには重大な病気のサインが隠れているかもしれません。 たかが手足のしびれと放置すると、症状が悪化し、重症化する恐れがあります。本記事では、手足のしびれとピリピリ感の関係に加え、以下の内容を解説します。 手足のしびれとピリピリ感の原因 手足のしびれとピリピリ感の治し方(治療法) 手足のしびれとピリピリ感は脳卒中の可能性 記事の最後には、手足のしびれ・ピリピリ感についてよくある質問をまとめているので、ぜひ最後までお読みいただき、症状改善の一助となれば幸いです。 手足のしびれとピリピリ感の関係性 症状 しびれ(感覚鈍麻・感覚消失) ピリピリ感(異常感覚) 自覚される感覚 感覚が鈍い、麻痺したような感覚。触れてもわかりにくい、あるいはまったく感知しない ピリピリ・ジンジン・チクチクするような、実際には刺激がないのに感じる異常な感覚 日常例との比較 正座を長時間した後、足の感覚がなくなるような状態 正座の後、血が戻ってくるときのジンジンした感じ 発生する仕組み 神経の信号が正常に伝わらなくなり、感覚の低下や消失が起こる 神経が過敏になり、実際には存在しない刺激をあるものとして誤認する 主な原因 神経の圧迫・損傷・炎症・血行不良など、末梢神経の機能障害 しびれと同様の原因で起こる(神経の異常興奮や回復途中も含む) 症状が出現するタイミング 圧迫や障害が長引いた場合に出やすい。慢性的な場合も 圧迫の初期段階や、血流再開・回復途中で出やすい 放置によるリスク 感覚障害が進行し、神経の損傷が回復しにくくなる可能性がある 神経の異常を知らせる初期サインであることが多い (文献1) 手足のしびれやピリピリ感は、脳神経系や糖尿病の可能性があります。 しびれ(感覚鈍麻・感覚消失)とピリピリ感(異常感覚)はいずれも神経系に異常をきたしている症状ですが、放置しておくと、症状が進行したり重症化したりする恐れがあります。 また、しびれとピリピリ感は一緒に出ることも、どちらかだけ出ることもありますが、どちらも神経への異常が原因で起こり、どちらも重大な病が隠れている可能性が高いです。症状を放置すると最悪の場合、後遺症になる恐れがあるため、放置せず医療機関を受診しましょう。 以下の記事では、手足がしびれる病気について詳しく解説しています。 手足のしびれとピリピリ感の原因 手足のしびれとピリピリ感にはさまざまな原因が考えられます。その中には重大な病が隠されている可能性もあるため、早期発見が重要です。 手足のしびれとピリピリ感の原因は以下の5つです。 一時的なもの 整形外科的な症状 内科的な症状 脳神経系の症状 糖尿病の症状 しびれの原因を解説します。 以下の記事では、手足がしびれる原因について詳しく解説しています 【関連記事】 手足のしびれの原因となる病気の症状や予防法を解説!前兆も紹介 寝起きに手足のしびれが起きる原因とは?自分でできる対処法もあわせて紹介 一時的なもの 日常生活の中で、手足がしびれたりピリピリしたりする症状は誰にでも起こり得ます。一時的に神経や血管が身体の重みなどで圧迫されることで起こります。 また、血行不良のほかには、寒さや激しい運動や発汗、過労・ストレスなどが挙げられます。一時的なしびれでも症状が毎日のように出る、あるいは数時間続くような場合は、重大な病気のサインかもしれません。 症状が悪化する前に、早めに医療機関を受診しましょう。 整形外科的な症状 病名 原因となる部位 主な症状が出る部位 症状の特徴 椎間板ヘルニア(頚椎/腰椎) 首・腰の椎間板が飛び出し神経を圧迫する 頚椎:首〜腕・指 腰椎:腰〜足 しびれ、動かしにくさ、 しびれのような感覚が続く 脊柱管狭窄症(頚椎/腰椎) 背骨の神経の通り道が狭くなる 頚椎:手・腕・足 腰椎:足・腰・お尻 歩くとしびれや違和感が出て、休むと楽になる 手根管症候群 手首の神経(正中神経)圧迫 親指〜薬指の一部 手のしびれ、細かい動作がしにくくなる 肘部管症候群 肘の神経(尺骨神経)圧迫 小指・薬指 指のしびれ、手を使うと悪化することがある 足根管症候群 足首の神経(後脛骨神経)圧迫 足の裏・足指 足裏のしびれ、熱感や冷感、ピリピリした感覚 胸郭出口症候群 首〜肩の神経・血管が圧迫される 肩・腕・手 しびれ、だるさ、冷感、力が入りにくい 手足のしびれやピリピリ感の原因として、運動器(骨・関節・筋肉・靭帯)の異常が神経を圧迫、または刺激し、しびれや違和感が症状として現れることがあります。頚椎や腰椎のヘルニア、脊柱管の狭窄(きょうさく)などが代表的です ヘルニアなどの症状は、骨や関節、筋肉などの構造に問題があることが原因で起こるため、整形外科での検査が必要です。 内科的な症状 病名・原因 症状の原因 主に症状が出やすい部位 症状の特徴 糖尿病性神経障害 高血糖により末梢神経が損傷される 足の裏・足指(左右対称に出やすい) しびれ、違和感、感覚が鈍くなる。気づかずケガをすることも ビタミンB12不足 神経の働きを保つ栄養素が不足 手足全体 しびれ、感覚異常。貧血や疲れも伴うことがある 甲状腺機能異常 代謝の低下やホルモンバランスの乱れが神経に影響 手足、筋肉 しびれ、冷え、筋肉痛。機能低下・亢進どちらでも起こることがある 閉塞性動脈硬化症など血管系の病気 動脈の血流が悪くなり、神経や組織に酸素が届かない 手足(とくに足) 冷え、しびれ、違和感。歩くと悪化し、休むと楽になることもある 自己免疫疾患(ギラン・バレー症候群など) 免疫が誤って神経を攻撃し、炎症・障害が起こる 手足(左右対称に進行) 急速なしびれ、筋力低下。重い場合は呼吸障害もある その他 薬の副作用、腎臓病、肝臓病、膠原病など多岐にわたる 個人差あり 慢性的なしびれや違和感が持続し、全身疾患がある 内臓の不調やホルモンの乱れでも、神経に異常が出て手足がしびれたりピリピリしたりする症状があります。たとえば、神経の働きに欠かせないビタミンB群などが不足すると、末梢神経の機能が低下し、しびれを感じることがあります。 ビタミンB群の不足や甲状腺ホルモンの異常は、末梢神経の働きが低下し、しびれを引き起こすことがあります。肝臓や腎臓の機能が低下すると体内に老廃物がたまり、神経に悪影響を及ぼすため、早期発見が重要です。 脳神経系の症状 病名・原因 原因のしくみ 主に症状が出やすい部位 症状の特徴・例 脳卒中(脳梗塞・脳出血) 脳の血管が詰まったり破れたりして脳細胞が損傷する 片側の手足、顔、視覚、言語 片側のしびれ・麻痺、ろれつが回らない、急な視力低下など。突然起こる 一過性脳虚血発作(TIA) 一時的に脳への血流が低下する 片側の手足や顔、視覚、言語 脳卒中と似た症状が一時的に出現。通常は24時間以内に回復 脳腫瘍 脳内にできた腫瘍が周囲の脳を圧迫する 手足、視覚、言語、中枢神経機能全般 徐々に進行するしびれや麻痺、頭痛、吐き気、視野異常などがみられる その他の脳神経系疾患 神経への炎症や損傷、脱髄など 手足・感覚神経・運動神経 多発性硬化症、脊髄損傷、重度の末梢神経障害などでしびれや運動障害が出ることがある (文献2) 脳や脊髄といった中枢神経に異常がでると、手足の感覚に大きく影響します。具体的には、脳卒中や脊髄の病気では、突然のしびれや力が入らないといった症状が起こることがあります。 脳神経にかかわるしびれは、命に関わることもある重大な病気のサインです。脳神経の症状は進行がゆっくりな病もあり、違和感が徐々に広がります。 年齢を重ねるにつれてリスクが高まるため、違和感を放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 糖尿病の症状 糖尿病に関する項目 内容 発症のメカニズム 高血糖状態が長期間続くことで、神経や血管が損傷し、とくに末梢神経が障害される(糖尿病性神経障害) 手足に症状が出やすい理由 手足は血流が届きにくいため、糖尿病の影響を受けやすい 主な自覚症状 足の裏や指先から始まる左右対称のしびれ、ピリピリ感、感覚の鈍さが現れる 症状の進行パターン 初期は軽い違和感やしびれだが、放置すると神経障害が進行し、歩行障害や日常生活の支障につながる その他にみられる影響 感覚が鈍くなることで、ケガや火傷に気づきにくくなる (文献3) 糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことで神経が傷つきやすくなり、しびれやピリピリ感が出やすくなります。足先から始まり、徐々に広がるのが特徴です。 症状の初期段階では、軽い違和感にとどまっていても感覚が徐々に鈍くなり、ケガや感染症に気づきにくくなります。糖尿病は生活習慣病であり、発見が遅れると手足の壊死や失明を引き起こす恐れがあります。 糖尿病とすでに診断されている方は、手足のしびれに対して、とくに注意が必要です。 手足のしびれとピリピリ感の治し方(治療法) 治療法 内容 治療の対象となりやすい状態 期待される効 補足・注意点 薬物療法 薬剤(飲み薬・貼り薬など)で症状を和らげる 初期症状、違和感、血行不良など 違和感の軽減・しびれ軽減、血行促進 医師の指示に従い服用し、副作用に注意する 理学療法 運動・温熱・電気刺激などで身体の機能を改善する 神経圧迫、血行不良、筋肉・関節の問題 血行促進、緊張緩和、圧迫軽減 医師の指導のもと行い、自己判断はしないようにする 神経ブロック 神経の近くに注射し、痛みや興奮を抑える 強い違和感、原因神経が特定できる場合 強い違和感を素早く軽減する 効果は一時的なこともあるため、医師と要相談 手術療法 手術で神経圧迫の原因を取り除く 他の治療で改善しない、原因が明らかな重症の場合 神経圧迫の根本的改善 身体への負担・リスクがあるため、医師と要相談 再生医療 自身の細胞などで神経の修復・再生を促す 手術で起こりうる後遺症などを避けたい場合 損傷した神経機能の回復 再生医療を取り扱っている医療機関が限られている 手足のしびれとピリピリ感じる症状は正しい治療法で改善できます。手足のしびれを感じた際は、早期発見と正しい治療の継続が大切です。 手足のしびれとピリピリ感の治療法は以下の5つです。 薬物療法 理学療法 神経ブロック 手術療法 再生医療 治療法について解説します。 薬物療法 薬剤の種類 主な目的 特徴・処方例 神経修復薬 損傷した末梢神経の修復を促進し、神経機能を改善する 主にビタミンB群(B1、B6、B12など)が処方される。神経の栄養補給に役立つ 神経痛治療薬 過敏になった神経の興奮を抑え、違和感やピリピリ感を緩和する 抗けいれん薬(プレガバリンなど)や抗うつ薬(デュロキセチンなど)を使用する 血流改善薬 血管を広げて血流を改善し、神経への酸素・栄養供給を助ける プロスタグランジン製剤などが用いられる。とくに血行不良が原因の場合に有効 漢方薬 体全体のバランスを整え、血流や神経の働きを調整する 体質や症状に応じて処方される(例:当帰芍薬散、八味地黄丸など) 薬物療法は、しびれやピリピリ感の原因や症状に応じて、薬剤が用いられます。原因によって処方内容が異なるため、自己判断ではなく医師の指示に従いましょう。 薬剤によっては副作用が生じることもあるため、服用中は定期的な診察を行いながら処方します。 理学療法 療法分類 主な内容 期待される効果 運動療法 ストレッチ、筋力トレーニング、軽い有酸素運動など 筋肉の柔軟性向上、血行促進、筋力アップ、神経への負担軽減 物理療法 温める、電気をあてる、マッサージするなど 血行改善、違和感の緩和、筋肉の緊張緩和、筋力改善 日常生活動作(ADL)指導 正しい体の使い方・姿勢の指導、杖や装具など福祉用具の活用 神経への負担軽減、日常生活動作の改善 理学療法では、リハビリやストレッチ、電気治療などを通じて神経や筋肉の機能を回復させる治療法です。筋肉のこわばりなどが原因で神経が圧迫されている場合に有効です。 理学療法を実施する場合は、自己判断ではなく、医師の指導のもと無理のない範囲で行いましょう。 神経ブロック ブロックの種類 注射する箇所 主な対象・効果 末梢神経ブロック 手足など、原因となる神経の近く 特定の神経の圧迫によるしびれ・違和感の軽減 硬膜外ブロック 背骨の中、脊髄神経の周辺 腰のヘルニアなど、脊髄神経の圧迫によるしびれ・違和感の軽減 星状神経節ブロック 首の付け根あたり 血行不良が原因と考えられるしびれ・違和感の軽減 (文献4) 神経に局所麻酔薬などを注射し、神経の興奮を一時的に止める治療法です。強いしびれやピリピリ感が長引いている場合や、薬が効きにくいときに神経ブロック療法が選ばれます。 神経からの異常な信号の伝達を一時的に遮断し、症状を和らげるのが目的です。症状を抑えるだけでなく、血行を改善させる効果も期待できます。 注射する場所や薬の種類は、原因や症状の部位によって異なります。神経ブロック注射は注射箇所に傷や感染の症状がある場合、注射ができません。神経ブロック注射を検討する際は、該当箇所に注射が可能かどうかを医師に確認しましょう。 手術療法 手術の種類 主な目的・内容 対象となる状態 神経剥離術 神経への圧迫を取り除く 手根管症候群、肘部管症候群など、神経が締め付けられている状態 脊椎手術 脊髄(神経の束)への圧迫を取り除く 椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など、背骨で神経が圧迫されている状態 神経修復術 損傷した神経を修復する(つなぐなど) 事故や怪我などで神経が切れたり、傷ついたりしている場合 薬剤やリハビリなどの保存療法で効果が不十分な場合や、検査で神経の圧迫がはっきりしている場合、手術が選択肢になります。 たとえば椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では、神経を圧迫している椎間板や骨を取り除く手術が必要です。 手根管症候群では、神経の通り道を広げるために、靭帯を切開する手術が行われることがあります。手術には種類ごとのメリットやリスクがあるため、医師の説明をよく聞き、検討した上で治療方針を決めることが大切です。 再生医療 再生医療は体内の細胞の力を利用し、傷んだ神経や組織の修復を目指す治療法です。 再生医療は自分の細胞を使うため、薬や手術よりリスクが少ないのが特徴です。ただし、現時点では、まだ対応している医療機関が限られています。再生医療での治療を検討されている方は、事前に取り扱いのある施設での受診が必要です。 以下の記事では、当院「リペアセルクリニック」の再生医療について詳しく解説しています。 手足のしびれとピリピリ感は脳卒中の可能性あり! 脳卒中は進行すると、運動障害、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などの後遺症が出る恐れがあります。 脳卒中の危険性がある初期症状は以下の7つです。 片側の手足や顔にしびれ・力が入らない ろれつが回らない・言葉が出にくい 激しい頭痛を伴う めまい・ふらつき・歩行困難などが頻繁に起こる ものが二重に見える 意識障害を引き起こしている 排泄のコントロールができない 脳卒中の可能性を示す初期症状を解説します。 以下の記事では、脳卒中の前兆や見逃してはいけないサインを詳しく解説しています。 片側の手足や顔にしびれ・力が入らない 片側の手足や顔だけにしびれが出たり、力が入りにくくなったりする場合は、脳の血管に異常が起きているサインです。 突然、力の入らない症状が現れた場合、すぐに救急車を呼ぶもしくは、すぐに医療機関を受診しましょう。 脳卒中の発見が遅れるほど、後遺症のリスクが高まるため、すぐに行動に移すことが重要です。 ろれつが回らない・言葉が出にくい 話そうとしてもうまく言葉が出なかったり、ろれつが回らなくなったりするのも、脳卒中の可能性があるサインです。 本人はいつも通り話しているつもりでいるため、自身では気づきにくく、周囲が最初に異変を察知することも少なくありません。 急に会話の意味がわからなくなったり、相手とのやりとりがうまくかみ合わなくなったり変化が見られた場合は、脳や神経の異常が疑われることもあり、注意が必要です。 激しい頭痛を伴う これまでに感じたことのないような突然の激しい頭痛がある場合も、脳内の出血や血管のトラブルが疑われます。 とくにしびれやピリピリ感と同時に起こる場合は、ただの偏頭痛では済まない可能性があります。脳卒中の中でも、くも膜下出血など重大な症状のケースもあるため、違和感があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。 めまい・ふらつき・歩行困難などが頻繁に起こる 強いめまいや、体がふらついてまっすぐ歩けない、立っていられないといった症状も、脳卒中の 可能性があります。 激しい回転性のめまいやふらつき、物が二重に見えるなどの症状が急に現れた場合は、脳卒中の可能性があります。しびれを伴うときはとくに注意が必要です。 ものが二重に見える 視界が急にぼやけたり、ものが二重に見えたりするのも、脳の機能に異常が疑われる症状です。突然、片方の眼球が思うように動かせなくなったり、左右の目の焦点が合わなくなったりすることで、物がダブって見えることがあります。 急に物が二重に見えるようになった場合は、単なる目の疲れなどと自己判断せず、医療機関を受診する必要があります。 意識障害を引き起こしている しびれやピリピリ感があるだけでなく、意識がもうろうとする、呼びかけに反応しにくいといった変化が見られる場合は、脳卒中の症状が疑われます。 呼びかけに対して反応がなかったり、傾眠(眠り込んでしまい、起こしてもすぐにまた眠ってしまう)だったりが頻繁に起こる場合は、非常に危険な状態です。 家族や周囲にいる方が異変に気づいた場合は、本人が平静を装っていても、迷わず救急車を呼ぶことが重要です。 排泄のコントロールができない 突然、尿意や便意を感じずに漏らしてしまう(失禁)、あるいは逆に尿や便が出せなくなるといった排泄のコントロールができない症状も脳卒中の可能性があります。 脳卒中の症状によって、排泄をコントロールする脳の機能が働かなくなり、引き起こされます。 しびれやピリピリ感と同時に現れる場合は、症状が進行しており、危険な状態です。すぐに医療機関を受診する必要があります。 手足のしびれ・ピリピリ感は放置せず医療機関へ相談を 手足のしびれ・ピリピリ感は放置せずに医療機関を受診しましょう。症状が軽度に感じられても、重大な病が隠れている可能性があります。 症状が軽く見えても、進行すると後遺症になることや、重症化して手遅れになるケースがあります。手遅れになる前に早めの受診が大切です。 「これくらいのしびれで相談していいのかな?」と迷っている方も、「リペアセルクリニック」へどうぞお気軽にご相談ください。 当院では、わずかな症状でも丁寧にお話をうかがい、一人ひとりに合った適切な治療法をご提案します。 手足のしびれ・ピリピリ感にお悩みの方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 手足のしびれ・ピリピリ感についてよくある質問 手足のしびれ・ピリピリ感を予防のために気をつけることはありますか? 手足のしびれ・ピリピリ感を予防するには、適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠、ストレスの軽減が大切です。 姿勢に気をつけ、体を冷やさないよう心がけましょう。生活習慣病の管理や禁煙・節酒も予防に役立ちます。 手足のしびれ・ピリピリ感は何科を受診すべき? 症状によって異なりますが、まずは内科や神経内科の受診をおすすめします。 何科を受診すれば良いのか悩まれている方は、当院「リペアセルクリニック」へ「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にて、お気軽にお問い合わせください。 参考資料 (文献1) Mark Freedman, et al.(2023).Numbness.MSD MANUAL Professional Version https://www.msdmanuals.com(最終アクセス:2025年4月11日) (文献2) 日本神経学会「脳神経内科の主な病気」一般社団法人 日本神経学会 https://www.neurology-jp.org/public/disease/shibire_detail.html(最終アクセス:2025年4月11日) (文献3) 一般社団法人 日本臨床内科医会「手足のしびれ・痛み」日本臨床内科医会 https://www.japha.jp/general/byoki/numbness.html(最終アクセス:2025年4月11日) (文献4) 「激しい両足痛を伴う糖尿病性神経障害に対し腰部持続硬膜外ブロックが著効した1症例」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1994/30/11/30_11_1315/_pdf(最終アクセス:2025年4月11日)
2025.04.30 -
- 手部、その他疾患
- 手部
スマートフォン操作やパソコン作業などの繰り返し動作で起こる病気に腱鞘炎があります。「ばね指」や「ドケルバン病」といった症状が進行すると、日常生活に支障をきたす場合もあります。 初期は保存療法で改善するケースもありますが、症状が重い場合はステロイド注射が効果的です。しかし、痛みや副作用、注射後の生活など不安も多いでしょう。 この記事では腱鞘炎の注射治療について詳しく解説します。腱鞘炎でお困りの方は参考にしてください。 腱鞘炎とは 腱鞘炎は、指や手首にある腱(筋肉と骨をつなぐ組織)と腱鞘(腱を包む保護組織)の間で摩擦が起こり、炎症を引き起こす疾患です。繰り返しの動作や過度の使用によっての発症が多く、とくに親指や手首に痛みや腫れ、動かしにくさといった症状が現れます。 ひどくなると、指を曲げる際にひっかかる感覚や「バネ指」と呼ばれる状態になることも。適切な休息と治療を行わないと、日常生活や仕事に大きな支障をきたす可能性があります。 腱鞘炎の症状や原因など包括的な内容に関しては「【医師監修】腱鞘炎とは|症状・原因・治療法から重症度のチェック方法まで解説」をご覧ください。 ばね指(弾発指・屈筋腱腱鞘炎) ばね指は、指を曲げ伸ばしする際に特徴的な「ばね現象」と呼ばれる引っ掛かりが生じる症状です。この状態は、指を曲げるための屈筋腱と、それを包む腱鞘との間で炎症が起こることで発生します。 炎症によって腱が腫れて太くなり、腱鞘の一部である「滑車(プーリー)」と呼ばれる狭い部分を通過する際に引っかかるようになります。とくに手のひら側の親指や人差し指、中指の付け根に痛みが現れることが多く、朝起きたときに指が曲がったままになっていることも多いです。 進行すると、指を曲げる際にカクッと音がしたり、反対の手で助けないと伸ばせなくなったりする場合もあります。 ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎) ドケルバン病は、親指を伸ばしたり広げたりする際に使われる2本の腱(長母指外転筋腱と短母指伸筋腱)とその腱鞘に炎症が生じる疾患です。主に手首の親指側、手の甲に腫れや痛みが現れ、親指を動かす度に手首に鋭い痛みを感じます。 この症状は、繰り返しの動作や過度の使用が原因で発症が多く、とくにスマートフォンで長時間テキスト入力をする際の親指の動きが関連していることから、インターネット上では「テキストサム損傷」とも呼ばれています。 痛みが悪化すると、ペットボトルのキャップを開けるといった日常動作も困難になることがあり、早期の適切な処置と休息が重要です。 腱鞘炎の注射治療は「ステロイド」が一般的 腱鞘炎の症状を早期に改善するため、多くの医療機関では炎症を抑える目的でステロイド注射が行われています。主に「トリアムシノロン」や「ケナコルト」といったステロイド薬と局所麻酔薬を組み合わせて使用するケースが多いです。(文献1)(文献2) 注射は痛みのある指の付け根部分に直接行われ、腱鞘の炎症を効果的に抑制します。治療後、当日から翌日にかけて一時的に痛みが強くなることがありますが、通常は数日以内に症状が軽減します。 効果がまったく見られない場合は、腱鞘炎以外の疾患を考慮する必要があるでしょう。症状が再発した場合には、再度の注射治療や、症状が重い場合には手術も選択肢となります。 注射治療が選ばれるタイミング 腱鞘炎の治療において、注射療法が選択されるのは主に以下のようなタイミングです。 まず、安静やサポーター、湿布などの保存療法を試みても症状の改善が見られない場合に、次の方法として検討されます。痛みや腫れなどの炎症症状が強く、日常生活に著しい支障をきたしている場合にも、早期の症状改善を目的として選ばれる場合があります。 とくにばね指やドケルバン病などの特定の腱鞘炎では、ステロイド注射が高い効果を示すことが知られており、積極的に用いられます。手術による治療も選択肢となる場合でも、注射治療を先に試みたいと考える患者の希望がある場合にも適応となります。 症状の程度や生活への影響を考慮し、医師と相談しながら適切なタイミングでの治療の選択が重要です。 腱鞘炎の注射は痛いのか 腱鞘炎の治療として行われるステロイド注射は、多くの患者さんが不安に感じる点です。痛みの程度は個人差がありますが、適切な処置と工夫によって、不快感を最小限に抑えられます。 注射時の痛みの感じ方 腱鞘炎の注射治療では、針を腱鞘内に直接挿入するため、針が刺さる瞬間や薬剤が注入される際に痛みを感じる場合があります。とくに炎症が激しい部位では、組織が敏感になっているため、健康な組織と比べてより強い痛みを感じやすい状態です。 注射に対する心理的な恐怖や緊張が、実際の痛みを増幅させることもあります。脳は不安や恐怖があると痛みの感覚をより強く処理する傾向があるため、リラックスした状態で臨むことで体感する痛みが軽減するでしょう。 個人の感覚によっても痛みの感じ方は大きく異なり、同じ処置でも「ほとんど痛くなかった」と感じる方もいれば、「かなり痛かった」と感じる方もいます。 痛みを和らげる工夫 医療現場では、腱鞘炎の注射による痛みを軽減するためにさまざまな工夫が行われています。まず、注射前に局所麻酔をして、患部の感覚を一時的に鈍らせます。 たとえば、ばね指の治療では手根管への麻酔、ドケルバン病では橈骨神経浅枝への麻酔を先行して行うと、本注射時の痛みを大幅に軽減できるでしょう。 27ゲージなどの細い針を使用すると、皮膚や組織への侵襲を最小限に抑え、針を刺す際の痛みを軽減する効果があります。近年では、超音波ガイド下での注射が普及しており、医師は腱鞘の正確な位置に針の誘導が可能です。(文献3) 周囲の神経や血管などの重要な組織を避けながら、必要最小限の刺激で処置を完了できます。 腱鞘炎における注射の効果・持続時間 腱鞘炎の治療として行われるステロイド注射は、適切に施術された場合、多くの患者さんの症状の改善につながります。しかし、その効果の現れ方や持続期間には個人差があり、患者さんそれぞれの状態によって異なることを理解しておくことが大切です。 即効性 ステロイド注射は比較的早期に効果が現れるのが特徴です。多くの場合、注射後数日以内に痛みや腫れといった炎症症状の軽減を実感できます。ステロイド薬の抗炎症作用により、腱鞘の腫れが引き、腱の動きがスムーズになることで症状が改善します。 中には注射直後から痛みが和らぐケースもありますが、一般的には数日程度で効果が現れ始めることが多いでしょう。注射の際に併用される局所麻酔の効果と、ステロイドによる炎症抑制効果は区別して考える必要があります。局所麻酔の効果は数時間で消失しますが、その後にステロイドの効果が持続的に働きます。(文献4) 効果の持続期間 ステロイド注射による症状改善の持続期間は、一般的に数週間から数か月程度と言われています。臨床データによれば、注射を受けた患者さんの約70〜80%が、1週間後頃から症状が半減する効果を経験しています。(文献5) ただし、その持続期間には個人差があり、数か月以上効果が持続する方もいれば、数週間で効果が薄れてくる方もいるでしょう。統計的には、1回の注射効果が1年以内に減弱する割合は約50%程度と報告されています。(文献5) 効果の持続期間は、腱鞘炎の種類や重症度、患部の使用頻度、個人の体質などによって変わってきます。 効果が出にくい場合 腱鞘炎の注射治療で効果が乏しい場合、注射位置の不正確さや、ドケルバン病での腱鞘内構造、慢性化による線維化などが原因として考えられます。 ステロイド注射をしても改善がみられない場合は、腱鞘切開の日帰り手術が検討されるでしょう。手指の過度な使用を控える生活習慣の見直しや、装具による固定も効果的です。個々の状態に合わせた治療方針を専門医と相談しながら進めることが重要です。 腱鞘炎における注射の副作用・リスク ステロイド注射は腱鞘炎の治療に効果的ですが、他の医療処置と同様に一定の副作用やリスクが伴います。これらを理解した上で治療を受けることで、より安全で効果的な治療につながります。 副作用やリスクを防ぐ方法 腱鞘炎のステロイド注射による副作用を防ぐには、注射回数の制限が重要です。同じ部位への注射は通常2〜3回までとし、短期間での繰り返しは避けるべきでしょう。(文献4) 注射間隔を3〜6か月程度空けると、ステロイドの局所蓄積によるリスクを減らせます。効果が持続している間は次の注射を急がず、経過観察します。 副作用の出現や症状の再発を繰り返す場合は、早めに医師に相談し、手術や装具療法など他の治療法を検討しましょう。医師との適切なコミュニケーションを通じて、自分に合った治療法の選択が重要です。 関連記事:ステロイド注射による腱鞘炎への効果はいつから感じられる?効果の持続期間や再発の可能性も解説 腱鞘炎の注射をしても改善しない場合 腱鞘炎の治療としてステロイド注射をしたにもかかわらず、十分な効果が得られない場合や症状が再燃する場合があります。このような状況では、治療方針の見直しが必要となり、複数の選択肢が検討されます。 再注射 ステロイド注射で十分な効果が得られないとき、再度の注射を検討する場合があります。ただし、ステロイド注射は同じ部位への投与を3回程度までが医学的に推奨されています。頻繁な注射によって腱の変性や断裂のリスクが高まる可能性があるためです。(文献4) 再注射をする場合は、前回の効果や副作用の有無を医師に伝え、慎重な判断が大切です。 手術 ステロイド注射で十分な効果が得られない場合や、症状が繰り返し再発する場合には、手術治療が選択肢となります。 初期から症状が強く、関節が硬い、指がまったく伸びない・曲がらないといった機能障害がある場合や、注射治療を3〜5回以上繰り返しても症状の改善が見られない場合には、手術による腱鞘の切開が効果的な場合があります。患者さん自身が手術を希望される場合にも検討されるでしょう。(文献5) 手術は多くの場合、局所麻酔下で日帰りで行われ、腱の動きを妨げている腱鞘を切開します。 関連記事:腱鞘炎の痛みから解放されたい!慢性化して薬や注射が効かない場合は手術の選択も! 再生医療 近年では、従来の注射治療や手術に加えて、再生医療の技術を応用した新しい治療法も注目されています。再生医療とは、患者さん自身の幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液から血小板を分離して作製した多血小板血漿(PRP)を注射するPRP療法などです。 再生医療は、組織修復や再生を促進する効果が期待されており、従来の治療で効果が不十分な場合の選択肢となります。ただし、保険適用外の治療も多く、費用や有効性については医療機関によって異なるため、専門医との十分な相談が必要です。 腱鞘炎でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」のメール相談やオンラインカウンセリングにてお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 腱鞘炎の注射は医師と相談してから決めましょう 腱鞘炎の治療においては、まず安静やサポーター、湿布などの保存療法を試みることが基本です。しかし、治療を続けても症状の改善が見られない場合や、痛みが強く日常生活に支障をきたしている場合には、ステロイド注射治療も選択肢の一つとなります。 注射治療は効果的である一方、回数制限や副作用のリスクもあるため、自己判断せず必ず医師と相談しましょう。医師は症状の程度や進行状況、生活背景などを総合的に判断し、適切な治療法を提案してくれます。 注射が効かない場合の手術や再生医療についても、専門医の適切なアドバイスを受けることが重要です。 リペアセルクリニックでは、あなたの症状に合わせた治療プランをご提案します。再生医療による治療も行っておりますので、メール相談やオンラインカウンセリングをご利用の上、お気軽にお問い合わせください。 腱鞘炎の注射に関するよくある質問 腱鞘炎の注射の後にお風呂に入っても良いですか? 腱鞘炎の注射を受けた当日の入浴やシャワーは避けることが望ましいです。 注射部位は一時的に皮膚のバリア機能が低下しており、細菌が侵入して化膿する可能性があります。翌日以降は、注射部位を清潔に保ちながら通常通りの入浴が可能ですが、注射直後は医師からの具体的な指示に従うことが大切です。 不安がある場合は、医療機関に確認すると良いでしょう。 腱鞘炎の注射は妊娠中でも打てますか? 妊娠中の腱鞘炎に対するステロイド注射は、一般的に安全とされています。腱鞘炎の治療で使用される局所ステロイド注射は、使用量が少なく局所的に作用するため、お腹の赤ちゃんへの影響はほとんどないと考えられています。 腱鞘炎の注射は何回打てますか? 腱鞘炎のステロイド注射について、一般的には「3回まで」と説明されることが多いですが、実際には明確な決まりはありません。重要なのは注射の回数よりも、注射と注射の間に適切な間隔を空けることです。(文献6) 参考文献 文献1 築地皮膚と手のクリニック「腱鞘炎(4)〜指の腱鞘炎の治療〜」築地皮膚と手のクリニックホームページ https://hifu-te.jp/blog/%E8%85%B1%E9%9E%98%E7%82%8E%EF%BC%884%EF%BC%89%E3%80%9C%E6%8C%87%E3%81%AE%E8%85%B1%E9%9E%98%E7%82%8E%E3%80%9C/(最終アクセス:2024年4月11日) 文献2 間庭整形外科「腱鞘炎」間庭整形外科ホームページ https://maniwa-seikei.com/%E8%85%B1%E9%9E%98%E7%82%8E(最終アクセス:2024年4月11日) 文献3 古東整形外科・リウマチ科「腱鞘炎に対する注射はこうして工夫しています!」古東整形外科・リウマチ科ホームページ https://koto-orthopaedics.com/injection-of-tendonitis/(最終アクセス:2024年4月11日) 文献4 鶴橋整形外科クリニック「2mm切開術で腱鞘炎の日帰り手術!痛みやダウンタイムを最小限に抑える最新治療」鶴橋整形外科クリニックホームページ、2025年4月4日 https://tsuruhashi-seikeigeka.com/2mm%E5%88%87%E9%96%8B%E8%A1%93%E3%81%A7%E8%85%B1%E9%9E%98%E7%82%8E%E3%81%AE%E6%97%A5%E5%B8%B0%E3%82%8A%E6%89%8B%E8%A1%93%EF%BC%81%E7%97%9B%E3%81%BF%E3%82%84%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BF/(最終アクセス:2024年4月11日) 文献5 千葉市立青葉病院「ばね指(弾発指・屈筋腱腱鞘炎)」千葉市立青葉病院ホームページ https://hospital.city.chiba.jp/aoba/department/section/orthopedics/hand_surgery/trigger_finger/(最終アクセス:2024年4月11日) 文献6 まえだ整形外科・手のクリニック「ばね指の注射は何回まで出来る?」まえだ整形外科・手のクリニックホームページ、2020年5月3日 https://maeda-seikei.jp/blog/%e3%81%b0%e3%81%ad%e6%8c%87%e3%81%ae%e6%b3%a8%e5%b0%84%e3%81%af%e4%bd%95%e5%9b%9e%e3%81%be%e3%81%a7%e5%87%ba%e6%9d%a5%e3%82%8b%ef%bc%9f/(最終アクセス:2024年4月11日)
2025.04.30 -
- 足部、その他疾患
- 手部、その他疾患
- 手部
- 足部
- その他、整形外科疾患
「足のしびれや自律神経の乱れを感じる」 「足にピリピリ感があり、日常生活に影響をきたしている」 最近、原因不明の足のしびれやピリピリ感はありませんか。日常生活や仕事にも影響が出始めると不安になりますよね。 とくに忙しい毎日を送っていると、足のしびれや自律神経の乱れがストレスによるものではないかと気になることでしょう。 それらの原因不明の症状は、末梢神経障害によるものかもしれません。 本記事では、末梢神経障害の症状とともに以下の内容について解説します。 末梢神経障害の原因 末梢神経障害の治療法 末梢神経障害を再発しないための注意点 末梢神経障害を放置せず、症状と原因を正しく理解し、早めに医療機関を受診しましょう。 末梢神経障害とは 区分 主な症状 感覚神経の障害 しびれ・冷感・灼熱感、感覚の低下、ピリピリ・チクチクする異常感覚 運動神経の障害 筋力低下、筋萎縮、歩行困難、運動機能の低下 自律神経の障害 発汗異常、立ちくらみ・めまい、便秘・下痢、排尿障害、動悸 症状の特徴 手足の先から始まる、左右対称に出る、徐々に進行する (文献1) 末梢神経障害とは、脳や脊髄から枝分かれした神経が傷つき、感覚や運動、自律神経の働きに異常が起きる状態のことを指します。 主に糖尿病やビタミン欠乏、ストレス、生活習慣の乱れなどが原因で引き起こされます。症状を放置すると徐々に進行し、重症化する恐れがあるため、早めに医療機関を受診しましょう。 以下の内容では、末梢神経障害に対してタリージェは効果があるのかを解説しております。 末梢神経障害の症状 症状の種類 概要 足のしびれ・冷感・灼熱感 足先にしびれや冷たさ、焼けつくような感覚が現れる 筋力低下 力が入りにくくなり、歩行時につまずきやすくなる 感覚の異常 触れた感覚が鈍くなる、逆に過敏になる 自律神経に異常をきたす 発汗や血圧、消化・排尿などの機能に影響が出ることがある 末梢神経障害の症状は多岐に渡ります。主な症状は以下の4つです。 足のしびれ・冷感・灼熱感 筋力低下 感覚の異常 自律神経に異常をきたす 少しでも違和感を覚えた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 足のしびれ・冷感・灼熱感 症状 内容の概要 足のしびれ 神経の障害で足の感覚が鈍くなり、しびれが起こる 足の冷感 自律神経の障害により血流が悪化し、冷たく感じる 足の灼熱感 足が焼けるように熱く感じられる 感覚神経がダメージを受けると現れる代表的な症状です。足先や足裏にジンジン、ピリピリといったしびれを感じたり、正座の後のような感覚が続いたりします。 また、実際の温度とは関係なく、足が冷たく感じたり熱く感じたりする症状が現れることもあります。 症状の持続性には個人差がありますが、少しでも違和感を覚えた場合は、医療機関を受診しましょう。 筋力低下 症状 内容の概要 筋肉の萎縮 神経の損傷によって筋肉が細くなり、見た目にも痩せてくることがある 歩行困難 足の筋力が低下し、ふらつきや転倒が起きやすくなる 日常生活動作の困難 手の筋力が弱まり、物をつかむ・ボタンを留めるなど細かな作業がしにくくなる (文献2)(文献3) 運動神経がダメージを受けると、筋肉を動かす指令がうまく伝わらなくなり、筋力が低下します。筋力が低下すると足の場合、スリッパが脱げやすくなったり、つま先が上がらずにつまずきやすくなります。 手の筋力であれば、物を落としやすくなり、私生活に支障をきたすでしょう。進行すると、歩行が不安になったり、物を持つことが困難になったりする可能性があります。 感覚の異常 症状 概要 しびれ(感覚鈍麻) 触れた感覚が鈍くなり、とくに手足の先に出やすい 違和感 焼ける・刺す・電気が走るような違和感など、多様なタイプの症状が現れる 異常感覚(錯感覚) 触れていないのに触れたように感じる 感覚過敏 軽い刺激でも強い不快感を覚える 温度感覚の異常 冷たさ・熱さに対する感覚が鈍くなる、または過敏になる 振動感覚の異常 携帯のバイブレーションなど、小さな振動を感じにくくなる 位置感覚の異常 ふらつきや物にぶつかりやすくなることも (文献4) しびれや冷感・灼熱感以外にも、さまざまな感覚の異常が現れます。 触った感じが鈍くなる感覚鈍麻が起こると、やけどや怪我をしても気づきにくくなることがあります。逆に軽い刺激に対して過敏になるアロディニアと呼ばれる状態になることもあり、症状はさまざまです。 感覚の異常は、QOL(生活の質)を低下させる原因になるだけでなく、症状によっては後遺症が出る可能性があります。 自律神経に異常をきたす 自律神経は、血圧、体温、発汗、消化、排泄など、自分の意思とは関係なく体の機能を調整する神経のことを指します。 具体的な症状としては、起立性低血圧や発汗異常、消化器症状、排尿障害など、全体にさまざまな不調が現れるため、重症化する前に早期発見が必要です。 また、自律神経とストレスの因果関係に関して、現時点で明確なエビデンスがありません。 研究段階ではあるものの、ストレスが末梢神経障害を引き起こす原因であるといわれているため、生活習慣に気をつける必要があります。 末梢神経障害の原因 原因 概要 ストレス 自律神経の乱れが血流や神経機能に影響を与え、感覚異常やしびれを引き起こすことがある 糖尿病(糖尿病性神経障害) 高血糖状態が神経にダメージを与え、しびれや感覚異常、違和感などの症状を引き起こす 過度なアルコール・喫煙 長期的な摂取は神経の栄養不足や血流障害を引き起こし、神経の働きを低下させる ビタミンB12欠乏 免疫異常や遺伝性の神経疾患、ウイルス感染などが神経を攻撃・障害し、末梢神経に異常をきたすことがある 末梢神経障害の原因は、主に糖尿病や過度なアルコール摂取・喫煙など生活習慣から来るものや遺伝的なものといわれています。 これから紹介する内容が当てはまる方は、末梢神経障害を発症させないためにも生活習慣の見直しが必要です。 ストレス性によるもの 要因 概要 自律神経の乱れ ストレスにより交感神経が過剰に働き、血管収縮や筋緊張が起こり、神経への血流が悪化する 炎症反応の促進 ストレスが炎症性物質の分泌を促進し、慢性的な炎症が神経を傷つける可能性がある 違和感の感受性亢進 脳の違和感を汲み取る領域が影響を受け、症状を感じやすくなる 生活習慣の乱れ ストレスが睡眠・食事・運動に影響し、神経への負担や回復力低下を招くことがある 過度な精神的ストレスが、直接的に末梢神経障害を引き起こすエビデンスはありません。 しかし、ストレスは血行不良や免疫機能の低下、睡眠不足などを招き、間接的に神経の健康に影響を与える可能性が指摘されています。 他に明らかな原因がなく、精神的な負荷を感じる時期に症状が悪化するような場合は、ストレスの関与が疑われるでしょう。 精神的な負荷が引き金になり、末梢神経障害を引き起こしている可能性を感じた場合は、ストレス環境から距離を取り、休息を取りましょう。 糖尿病(糖尿病性神経障害) 障害の種類 概要 感覚障害 足先のしびれ、ピリピリするような違和感など 運動障害 足に力が入らない、筋力の低下など 自律神経障害 立ちくらみ、便秘、発汗異常など (文献4) 糖尿病で長期間、血糖値が高い状態が続くと、細い血管がダメージを受けて血流の悪化や、糖代謝の異常によって神経細胞そのものが変性する神経障害が引き起こされます。 足先のしびれや感覚鈍麻から始まることが多く、進行すると筋力低下や自律神経症状も現れ、日常生活に大きな支障をきたします。 糖尿病を患っている方は、とくに足先のしびれや感覚鈍麻の症状に注意が必要です。 過度なアルコール摂取・喫煙 要因 概要 アルコールの毒性 神経細胞に直接ダメージを与え、長期摂取で変性や破壊を引き起こす ビタミンB群の欠乏 吸収阻害により神経の維持に必要な栄養素が不足し、障害リスクが高まる 肝機能障害 栄養代謝が妨げられ、神経細胞に必要な成分の供給が不足する 血管収縮・血流低下 ニコチンが血管を収縮させ、神経への酸素・栄養供給が不足し機能が低下する 酸化ストレス増加 神経細胞が酸化ダメージを受けやすくなり、障害のリスクが上がる 長期間にわたる過度なアルコール摂取は、神経毒性やアルコール代謝に伴う栄養障害により、末梢神経障害を引き起こします。 また、喫煙もニコチンによる血管収縮作用や血行不良を引き起こし、神経への酸素や栄養の供給を妨げるため、末梢神経障害のリスクがあります。 普段からお酒を飲む習慣がある、タバコを普段から吸う方は、末梢神経障害の症状に注意が必要です。 ビタミンB12欠乏症 原因 概要 摂取不足 動物性食品を控えた食事や偏った食生活により、ビタミンB12が不足する 吸収不良 胃や小腸の疾患により、ビタミンB12の吸収がうまくいかなくなる 薬剤の影響 一部の薬(メトホルミン、PPIなど)がビタミンB12の吸収を妨げることがある (文献4) ビタミンB12は、神経細胞の髄鞘を維持したり、神経伝達物質の合成を助けたりする役割があります。 偏った食生活でビタミンBの不足や、胃の切除手術後、特定の胃腸疾患などによってビタミンB12の吸収が妨げられると、欠乏症となり末梢神経障害を引き起こす恐れがあります。 普段から偏った食事や胃腸に疾患を持つ方は、ビタミンB12が不足しないよう工夫しましょう。 自己免疫疾患・遺伝性疾患・感染症 分類 代表疾患 特徴・メカニズム 自己免疫性 ギラン・バレー症候群 感染後に免疫が神経を攻撃すると、急に手足が動かしにくくなることがある CIDP(慢性型) 髄鞘を慢性的に攻撃し、筋力低下やしびれがゆっくり進行する 遺伝性 CMT(シャルコー・マリー・トゥース病) 遺伝子の異常で筋力や感覚に障害が出る、手足の変形を伴うこともある 感染症 帯状疱疹 ウイルスが神経にダメージを与えることで、神経痛が起こる その他(HIV、ライム病など) 神経を直接傷つけたり、免疫を介して障害を起こすことがある (文献5)(文献6)(文献7) 自己免疫疾患である、ギラン・バレー症候群やCIDPは、免疫が誤って末梢神経を攻撃し、障害を引き起こします。 遺伝子異常による家族性ニューロパチーや帯状疱疹後神経障害、ライム病、HIV感染などの感染症も原因となることがあります。 自己免疫疾患が疑われる場合は、専門の医療機関での検査が必要です。 末梢神経障害の治療法 治療法 概要 薬物療法 神経の過敏性を抑える薬(抗てんかん薬、抗うつ薬など)や、違和感の軽減を目的とした薬を使用 栄養療法 ビタミンB群や必要な栄養素を補い、神経の修復や維持をサポート 手術療法 神経の圧迫が原因の場合、圧迫部位を除去・緩和するための手術が行われる 再生医療 幹細胞や再生因子を用いて、傷ついた神経の修復や機能回復をめざす治療法 末梢神経障害の改善には、複数の治療法を組み合わせた適切な治療が必要です。以下で詳しく解説します。 薬物療法 分類 主な薬剤 概要 糖尿病性神経障害 血糖コントロール薬(メトホルミンなど) 血糖値を管理し、神経への負担を軽減 メコバラミン(ビタミンB12製剤) 神経の修復や維持に必要なビタミンB12を補う 自己免疫性神経障害 免疫グロブリン製剤、ステロイド薬 自己免疫による神経の炎症を抑える 免疫抑制薬(アザチオプリンなど) 免疫の過剰な働きを抑制し、神経への攻撃を防ぐ ビタミン欠乏性神経障害 ビタミンB1、B12、葉酸など 不足しているビタミンを補い、神経の機能回復を促す 症状に対する治療薬 プレガバリン、ガバペンチン、デュロキセチン 神経の興奮を抑え、しびれや神経障害性疼痛を緩和 抗けいれん薬(カルバマゼピンなど) 神経の過剰な信号を抑え、不快感を軽減 (文献8) 症状緩和を目的とし、しびれや不快な感覚を抑える薬が用いられます。 末梢神経障害の症状によって処方される薬剤が異なり、服用は医師の指示に従いながら服用し、自己判断で量を増減させたり中止したりしてはいけません。 薬剤の服用でも改善が見込めない場合や副作用が出た場合は、医師に相談しましょう。 栄養療法 栄養素 主な役割 多く含まれる食品例 ビタミンB群 神経の修復・機能維持 豚肉、レバー、魚、卵、緑黄色野菜 タンパク質 神経や筋肉の材料となる 肉、魚、大豆製品、卵 食物繊維 血糖コントロールや便通の改善 野菜、果物、海藻、きのこ類 抗酸化物質 神経の酸化ストレスを軽減・保護 緑黄色野菜、果物、ナッツ類 ビタミンB12 神経の構造維持・修復に関与 レバー、貝類、魚、乳製品 シスチン・テアニン 疼痛の緩和に関与するとされるアミノ酸 肉類、魚介類、玉ねぎ、緑茶(※食品によって含有量に差) (文献9) 末梢神経障害では、ビタミンB群(B1、B6、B12など)の補給が大切です。医師や管理栄養士の指導のもと、個々の状態に合わせた栄養管理を行います。 栄養療法を行う場合は、医師の指導に従い、偏った栄養補充は行わないようにしましょう。 手術療法 項目 概要 目的 神経の圧迫除去、損傷した神経の修復 代表的手術 神経剥離術、神経縫合・移植術、脊椎手術、胸郭出口症候群手術 メリット 薬やリハビリで改善しない症状の改善、根本原因の除去が可能 デメリット 手術リスクあり(感染・出血など)、術後リハビリが必要な場合もある、手術が適応外の場合もある 手術の適応例 圧迫や損傷が明確、重度の麻痺、薬剤療法などで症状が改善しない場合 症状が改善しない場合、その圧迫を取り除くための手術が選択肢に入ります。手術療法では、神経圧迫の除去や、神経の修復などが行われます。 手術が適応となるケースは限定的であり、術後もリハビリや後遺症が出る可能性もあるため、患者と医師の慎重な判断が必要です。 再生医療 損傷した神経細胞や組織の修復・再生を目指す再生医療は、末梢神経障害に対して、有効な治療法です。再生医療では、骨髄や脂肪から採取した幹細胞を損傷した神経組織に移植し、症状の改善を目指します。 薬剤療法で起こりうる副作用や、手術を必要としないのが魅力です。 再生医療については、以下の記事で解説しております。 末梢神経障害を再発しないための注意点 注意点 概要 血糖のコントロール 高血糖を防ぐことで、神経へのダメージを抑える ビタミンB群と栄養バランス 神経の修復・維持に必要な栄養素を不足なく摂取する アルコール・喫煙を控える 神経への直接的ダメージや血流悪化を防ぐ 適度な運動 血流促進・筋力維持により神経の機能を保つ ストレス管理・良質な睡眠 自律神経のバランスを整え、神経への負担を軽減する 末梢神経障害の治療後や、症状を悪化させないためには、原因への対処を継続するとともに、神経に負担をかけない生活習慣を心がけることが重要です。 末梢神経障害が再発しないための注意点を解説します。 血糖のコントロールを徹底する 方法 内容の概要 食事療法 バランスよく規則正しく食べる、食物繊維・低GI食品を積極的に摂取する 運動療法 有酸素運動(例:ウォーキング、水泳)を無理なく継続する 薬物療法 医師の指示で血糖降下薬を服用 定期検査 血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を定期的に測定 糖尿病性神経障害の予防・進行抑制において重要なのは、血糖値を良好な範囲に維持することです。 医師の指示に従い、食事療法、運動療法、必要であれば薬物療法を継続し、定期的に血糖値をチェックしましょう。 継続的な血糖コントロールは、末梢神経障害の再発予防だけでなく、糖尿病との合併症などへの予防にもつながります。 ビタミンB群の摂取と栄養バランスを整える ビタミン 主な働き 不足時のリスク B1(チアミン) 糖質をエネルギーに変換、神経細胞のエネルギー源を供給 神経の炎症など B6(ピリドキシン) 神経伝達物質の合成、神経の興奮を抑制 しびれの発生など B12(コバラミン) 神経細胞の修復・再生をサポート 神経の変性・破壊、重度な神経障害のリスク ビタミンB群(とくにB1、B6、B12)は神経の機能維持に重要な役割を果たします。これらのビタミンを多く含む食品(豚肉、レバー、魚介類、豆類、緑黄色野菜など)を意識的に摂取しましょう。 特定の栄養素に偏った食事ではなく、全体的な栄養バランスが取れた食事を心がけることが大切です。 アルコール摂取と喫煙を控える アルコールは神経に直接的なダメージを与える可能性があります。喫煙は血行を悪化させ神経への栄養供給を妨げます。神経の健康を維持するためには、できる限りアルコール摂取を控え(節酒)、禁煙が大切です。 末梢神経障害の予防と症状改善のためにも、神経細胞を傷つける過度のアルコール摂取や、血管を収縮させるタバコは控えましょう。 適度な運動を日常に取り入れる 運動による効果 概要 血行促進 神経に酸素と栄養を届け、機能低下を防ぐ 筋力維持 筋力低下を防ぎ、神経への負担を軽減 血糖コントロール 血糖値を安定させ、神経へのダメージを軽減 ストレス軽減・自律神経調整 ストレスを和らげ、自律神経のバランスを整える 神経再生の促進 神経成長因子(NGF)の産生を促し、神経の修復や再生を助ける ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどの適度な運動は、血行を促進し、神経への酸素や栄養の供給を改善する効果が期待できます。 運動を行う場合は、怪我に注意し、無理のない範囲で行うことが大切です。運動の内容は、医師の指示に従うようにしましょう。 ストレス管理や睡眠の質を高める 項目 主な方法 ストレス管理 リラックス時間の確保(入浴・音楽など)、適度な運動、専門家への相談 睡眠の質向上 規則正しい生活リズム、寝る前のスマホ・カフェイン・アルコールを避ける 過度なストレスや睡眠不足は、自律神経の乱れを招き、血行や免疫力を低下させ、神経症状を悪化させる原因になります。 趣味や入浴、瞑想など、自分に合った方法でリラックスし、ストレスをため込まないことが大切です。 規則正しい生活と十分な睡眠で、神経の修復を促しましょう。 末梢神経障害の症状がある方は早めに医療機関を受診しよう 足のしびれや感覚の異常、力の入りにくさなど、末梢神経障害を疑う症状がある場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診しましょう。 末梢神経障害は放置すると症状が進行し、悪化する恐れがあります。 少しでも末梢神経障害の疑いのある方は当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。「再生医療」で末梢神経障害の改善を促します。 末梢神経障害の症状でお悩みの方は、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にお問い合わせください。 参考記事 (文献1) 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「末梢神経障害」 https://www.pmda.go.jp/files/000145962.pdf(最終アクセス:2025年4月9日) (文献2) Michael C. Levin, et al.(2023)Weakness.MSD MANUAL Professional Version https://www.msdmanuals.com/professional/neurologic-disorders/symptoms-of-neurologic-disorders/weakness (Accessed: 2024-04-09) (文献3) Michael Rubin, et al. (2022).Peripheral Neuropathy.MSD MANUAL Professional Version https://www.msdmanuals.com/professional/neurologic-disorders/peripheral-nervous-system-and-motor-unit-disorders/peripheral-neuropathy (Accessed: 2024-04-09) (文献4) Larry E. Johnson, et al. (2024). Vitamin B12 Deficiency.MSD MANUAL Consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/disorders-of-nutrition/vitamins/vitamin-b12-deficiency (Accessed: 2024-04-09) (文献5) Michael Rubin, et al. (2024). Guillain-Barré Syndrome (GBS).MSD MANUAL Consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/brain-spinal-cord-and-nerve-disorders/peripheral-nerve-and-related-disorders/guillain-barr%C3%A9-syndrome-gbs(Accessed: 2024-04-09) (文献6) Michael Rubin,et al. (2022). Charcot-Marie-Tooth Disease.MSD MANUAL Consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/brain-spinal-cord-and-nerve-disorders/peripheral-nerve-and-related-disorders/charcot-marie-tooth-disease(Accessed: 2024-04-09) (文献7) Kenneth M. Kaye, et al. (2023). Shingles.MSD MANUAL Consumer Version https://www.msdmanuals.com/home/infections/herpesvirus-infections/shingles(Accessed: 2024-04-09) (文献8) ガン科学療法を受ける患者さんへ末梢神経障害『東邦大学医療センター薬学部』, pp.1-2, 2020年 https://www.sakura.med.toho-u.ac.jp/sinryoka/yakuzai/ue7s91000000a3px-att/massyousinnkeisyougai.pdf(最終アクセス:2025年4月9日) (文献9) 木田 耕太「神経疾患における栄養療法,その基礎知識」, pp.1-5, 2020年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/39/1/39_8/_pdf(最終アクセス:2025年4月9日)
2025.04.30