【手首の腫れを識別】ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方
関節が腫れてしこりができると、痛みや不便さを感じるだけでなく「ガン(悪性腫瘍)なのでは?」と心配になりますね。
関節にしこりができる可能性がある病気は、ガングリオンのほかに粉瘤(ふんりゅう)や脂肪腫(しぼうしゅ)、悪性の腫瘍などが考えられます。ガングリオンも悪性の腫瘍も見た目はよく似ていますが、見分けるポイントがあるので、知っておくと安心です。
今回の記事では、ガングリオンの特徴や悪性腫瘍との見分け方、診断から治療までのプロセスなど、詳しく解説します。
関節にしこりができて不安な方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
ガングリオンと悪性腫瘍を識別する
ガングリオンは、関節にできた「こぶ状に膨らんだしこり」で、基本的には治療の必要はありません。しかし、まれに「ガングリオンだと思っていたらガンだった」というケースがあります。しこりがガングリオンなのか別の病気なのか、違いを認識できれば受診のタイミングを決めるときに役立つでしょう。
ここでは、ガングリオンという病気の基本情報と症状、悪性の腫瘍との違いについて解説します。
ガングリオンの基本情報と一般的な症状
ガングリオンとは、一般的に関節の周囲に発生する「こぶ状に膨らんだしこり」です。
手首の甲が最もできやすく、次に手のひら側の指の付け根が好発部位とされています。そのほか、足首や肘、肩など、全身の関節にできる病気です。しこりのなかにはゼリー状の液体が入っています。大きさはさまざまで、米粒ほどの大きさからピンポン玉やウズラの卵ほどの大きさになるケースもあります。
ガングリオン自体、痛みやかゆみは無く、膨らんだしこりができる以外の症状はありません。しかし、大きくなると血管や神経を圧迫し、痛みやしびれがあらわれる場合があります。また、しこりが邪魔をして関節を動かしにくくなり、不便さを感じる場面もあるでしょう。たとえば、手首にできたしこりが大きく、「細身の長袖シャツや手首の辺りがすぼんでいる服が着にくい」や「ブレスレッドや腕時計がつけにくい」などの影響が考えられます。
もちろん痛みがある場合は治療の必要性は高いですが、痛みがない場合でも日常生活への影響を考えて、治療が必要なケースがあります。
悪性腫瘍の警告サインと見分け方
ガングリオンと悪性の腫瘍には、以下のような特徴があります。また、触った感じやしこりの特徴の違いも見分けるポイントです。
ガングリオン | 悪性の腫瘍 | |
|
|
|
|
|
|
これらの特徴は、見分けるポイントにはなりますが、自己判断は危険です。関節のしこりに気づいたら、早めに医療機関を受診し、診察をしてもらいましょう。
手首の腫れの原因を正確に理解する
手首や指、足首など、関節にガングリオンはできやすいですが、なぜ発症するのか、原因については詳しく解明されていません。しかし、メカニズムやリスク要因など、わかっている部分もあります。
ここでは、ガングリオン形成のメカニズムやリスク要因、悪性腫瘍の発生について解説します。
ガングリオンの形成メカニズムとリスク要因
ガングリオンの発生は、以下の2つの組織から発生します。
|
これらの組織につながり形成されたガングリオンの袋のなかに、関節液が溜まります。それが、濃縮しゼリー状に固まったものがガングリオンです。
20代~50代の女性に発症しやすいとされていますが、男性でも発症するケースはあります。また、手や関節をよく動かす方に発症しやすいというわけでもありません。
ただし、ガングリオンができている関節を動かし過ぎて負担が強くかかると、しこりが大きくなるといわれています。しこりがある関節の使いすぎには気をつけましょう。無理はせず、適度に休ませるよう意識してくださいね。
悪性腫瘍発生の背後にある生物学的プロセス
関節にしこりができて腫れている場合、脂肪腫(しぼうしゅ)や粉瘤(ふんりゅう)などガングリオン以外の病気も否定できませんが、どちらも良性腫瘍です。ガングリオンも良性腫瘍のため、ガン化はしません。「ガン化しない」と聞いても、やはりしこりができていると心配になりますね。
万が一、悪性の腫瘍が考えられる場合、以下のような特徴があらわれます。
|
これらの症状がないか、チェックしてみましょう。悪性だった場合、様子をみている間に病状が進行してしまいます。「ガングリオンかも」と思っていても、上記の症状やほかにも心配なことがある場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
診断から治療までのステップ
手首にガングリオンができた場合、痛みやしびれ、関節の動きに支障がなければ、治療をせず様子をみるケースがほとんどです。しかし、日常生活に支障が出ると不便ですよね。そのような場合には治療をおこないます。
ここでは、ガングリオンの診断や治療はどのようにおこなわれるのか解説します。
正確な診断を得るための医療テストとプロセス
正確な診断をするために、問診や触診、視診、検査などは欠かせません。問診や触診、視診の結果、ガングリオンの可能性が高ければ、注射器でしこりの中身を吸引します。ゼリー状の内容物が出てくれば、ガングリオンと診断します。
しこりが小さいものや、表面ではなく外側から触れにくい奥の位置にできたものは、診断しにくいため検査が必要です。MRI検査や超音波検査をおこない、内容物の確認をします。これらの検査は、ガングリオンの診断だけでなく、ほかの病気との鑑別にも有用です。
有効な治療オプションと患者への影響
ガングリオンの治療は、主に保存的療法と外科的療法の2つです。
<保存的治療法>
|
<外科的治療法>
|
どちらの方法でも再発の可能性はゼロではないため、治療後も注意が必要です。一般的に、まずは保存的治療をおこない、再発を繰り返す場合には外科的治療が検討されます。
万が一、ガングリオンではなくガンだった場合には、以下のような方法で治療をおこないます。
|
ガンの進行具合にもよりますが、これらの治療方法を組み合わせて治療を進めていきます。
長期的管理と予防策
ガングリオンは、治療をしても再発を繰り返すケースがあります。「できれば再発を抑えたい!」と考える人が多いでしょう。治療後の再発を防ぐため、ここでは日常生活でできる対策や定期的なチェックの方法を解説します。
また、しこりができたときに「ガングリオンの再発かな?」と安易に考えていると、ガンだった場合に治療開始が遅れる可能性があります。ガングリオンとガンの違いをチェックし、心配な場合は早めの受診をおすすめします。
再発を防ぐための日常生活での対策
治療をおこなった後は、まずは患部を安静にして過ごしましょう。痛みやしびれ、関節の動きにくさなどがなくなると、つい普段通りの生活をしてしまいますね。しかし、患部に負荷がかかることで、関節液が再び漏れだす可能性があり、再発のリスクが高まります。
治療後は、しばらく患部を動かしすぎないようにし、安静が必要です。ついつい動かし過ぎて負担をかけてしまう方は、関節の負担を和らげるサポーターを活用してみましょう。安静の期間や程度は、ガングリオンの大きさやできる関節、治療法によっても異なります。
治療をおこなった医療機関の医師の指示に従いましょう。
定期的な健康チェックの重要性と方法
ガングリオンは、発症の原因もはっきりと解明されていませんが、再発の原因もわかっていません。そのため、ガングリオンが再発をしていないか確認しましょう。また、ガンではないことを確認するために、日常的に以下のようなチェックをしておくとよいでしょう。
|
少しでも「おかしいな?」「ガングリオンじゃないかも?」と感じたら、ガンの可能性も考え早めに受診しておくと安心です。
まとめ
ガングリオンは手首や指の関節にできやすい良性の腫瘍です。支障がなければ、治療をせず放置しても問題ありません。しかし、しこりが大きくなり血管や神経の圧迫をすると、痛みやしびれの原因になります。
また、関節を圧迫すると、手や指が動かしにくくなるため、日常生活に影響が出ます。そのような症状が出るようになれば治療が必要だととらえましょう。
ガングリオンと悪性の腫瘍には、特徴に違いがあるためポイントを押さえれば区別できる場合もあります。しかし、ガングリオンだと自己判断するのは危険です。手首にしこりができた場合には、一度医療機関で診察を受けておくと安心でしょう。
監修:医師 加藤 秀一
|