-
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
腕を上げたときに肩が痛む原因は、五十肩(四十肩)だけではありません。 肩腱板損傷やインピンジメント症候群など、さまざまな疾患が関係している可能性があります。 しかし、その中でも特に中高年層に多く見られ、日常生活に影響を与えるのが五十肩(四十肩)です。 本記事では、腕を上げると肩が痛くなる原因のうち、特に五十肩に焦点を当て、症状の進行段階や治療方法について詳しく解説していきます。 適切なケアを知り、症状の改善を目指しましょう。 腕を上げると肩が痛い原因 腕を上げたときに肩が痛む原因には、大きく3つの疾患が考えられます。 「肩腱板損傷」「インピンジメント症候群」「五十肩(四十肩)」の3つです。 いずれも肩関節の構造や使い方に関連しており、特に加齢や繰り返しの動作によって発症しやすい特徴があります。 肩腱板損傷 肩腱板とは、肩のインナーマッスルである「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋肉で構成される組織のことです。 これらの筋肉が肩関節を安定させ、スムーズな動きを可能にしています。 しかし、加齢やスポーツ、重いものを持つ動作の繰り返しによって肩腱板が損傷すると、腕を上げる際に痛みを感じるようになります。 特に、「腕を上げようとすると肩の奥にズキッとした痛みが走る」「腕を動かすときに引っかかる感じがする」といった症状が特徴的です。 初期段階では痛みが軽度でも、進行すると夜寝ている間に肩が痛んだり腕が上がらなくなることもあります。 肩腱板損傷について詳しくは、以下の記事もご覧ください。 インピンジメント症候群 インピンジメント症候群は、肩を上げる動作を繰り返すことで、肩の骨(肩峰)と腱板・滑液包が衝突し、炎症を起こす疾患です。 スポーツや仕事で頻繁に腕を使う人に多く発症しますが、加齢によって肩関節周囲の筋肉や腱が弱くなったり、摩耗したりすることで発症するケースもあります。 特に、40代以降では肩のクッションの役割を果たす滑液包がすり減りやすくなるため、インピンジメント症候群を引き起こすリスクが高まります。 「肩を上げると痛みが出る」「肩がゴリゴリ鳴る」「ある角度で痛みが強くなる」といった症状がある場合は、早めに対処することが重要です。 放置すると肩の可動域が狭くなり、五十肩と同じように動かしづらくなることもあります。 インピンジメント症候群について詳しくは、以下の記事もご覧ください。 五十肩(四十肩) 五十肩(四十肩)は、肩関節の周りに炎症が起こり、腕を上げる動作や後ろに回す動作が痛みで制限される疾患です。 主に40代〜50代以降の人に発症しやすいことから、このように呼ばれています。 「腕を上げると肩が痛い」「一定の角度以上に腕が上がらない」「夜間痛がひどく、眠れないことがある」といった症状が特徴的です。 発症の原因は明確には分かっていませんが、加齢に伴う関節や腱の変性、炎症が関与していると考えられています。 次の章では、五十肩がなぜ痛みを引き起こすのか、詳しく解説していきます。 五十肩(四十肩)の正式名称である「肩関節周囲炎」は腕を上げるとなぜ痛い? 五十肩(四十肩)は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれ、肩の関節を構成する組織(腱板、関節包、靭帯など)に炎症が起こることで発症します。 腕を上げたときに痛みを感じるのは、関節の可動域が制限されたり、炎症によって肩の動きがスムーズにいかなくなったりするためです。 一般的に五十肩(四十肩)は、「肩関節周囲炎」と言われることが多いのですが、詳細には以下も含まれます。 五十肩(四十肩)の正式な病名 病名 影響を受ける部位 症状 肩関節周囲炎 肩関節の周囲全体 肩関節周囲の炎症により痛みや可動域制限が起こる 腱板炎 腱板(肩のインナーマッスル) 腱板が炎症を起こし、腕を上げると痛みを感じる 上腕二頭筋長頭腱炎 上腕二頭筋の腱 腕を前に上げたり、ものを持ち上げると痛みが走る 腱板疎部炎 肩前方の腱板疎部 肩を回す動きで痛みが強くなる 五十肩(四十肩)の原因|加齢による変化と炎症の関係 五十肩(四十肩)の主な原因は、加齢による肩関節周囲の組織の変性(劣化)と考えられています。 年齢を重ねるにつれて、関節を構成する腱板や靭帯、関節包が硬くなり、炎症を起こしやすくなるためです。 具体的には、以下のような変化が五十肩の発症に影響しています。 関節包の硬化:肩関節を包む関節包が加齢とともに弾力を失い、動かすと痛みを感じるようになる。 血流の低下:加齢により肩周囲の血流が悪くなり、修復能力が低下し、炎症が長引きやすい。 腱板の変性:腱板のコラーゲン繊維がもろくなり、小さな負荷でも炎症が起こりやすくなる。 また、普段から肩を動かす機会が少ないと、関節の柔軟性が低下しやすく、五十肩のリスクが高まることも分かっています。 そのため、肩を適度に動かし、柔軟性を維持することが予防にもつながります。 以下の記事も参考にしてください。 五十肩(四十肩)の症状を3段階のステップごとに解説 五十肩(四十肩)は「炎症期」「拘縮期」「回復期」の3段階で症状が変動していくと考えられており、最初は強い炎症に伴う痛み症状を認めたのちに肩関節の拘縮症状が引き起こされ、次第にその拘縮具合も軽快していくとされています。 それぞれの段階で症状が異なり、適切な対処法を知ることが早期回復のポイントになります。 炎症期(初期) 炎症期は、五十肩の最初の段階で、強い痛みが特徴です。 期間:約2週間〜数ヶ月(個人差あり) 主な症状 痛みが強くなる(特に夜間に激しくなる) 動かすと鋭い痛みが走る(特に腕を上げる・後ろに回す動作) 安静時にもズキズキ痛むことがある 対処法 肩の安静を保つ(無理に動かさない) 痛みを和らげるために消炎鎮痛剤を使用(湿布や飲み薬) アイシング(冷やす)や温めるケアを行う(炎症が強い場合は冷やす) 夜間痛がひどい場合は医師に相談し、痛み止めや注射を検討 拘縮期(中期) 炎症が落ち着くものの、肩の動きが極端に制限される時期です。 期間:約数ヶ月〜1年 主な症状 痛みは減るが、可動域が狭くなる 肩が固まり、動かしづらい 腕を上げたり、背中に手を回す動作が困難 日常生活に支障が出る(服の着脱、髪を結ぶなど) 対処法 無理のない範囲でストレッチ(可動域を広げるため) リハビリを始める(痛みが少ない範囲で軽い運動) 肩を温めることで血流を促進し、回復をサポート 回復期(後期) 肩の動きが少しずつ回復し、日常生活が楽になる時期です。 期間:約半年〜1年以上(症状の程度による) 主な症状 痛みはほとんどなくなる 可動域が広がり、肩の動きが回復 腕を上げたり、後ろに回す動作がスムーズになる 対処法 積極的にストレッチやリハビリを行う 日常生活の動作の中で肩を意識的に動かす 軽い筋力トレーニングで再発予防をする 五十肩(四十肩)おすすめの治療方法 五十肩(四十肩)は放置しても自然に回復することが多いですが、症状が長引いたり、生活に支障をきたすこともあります。 痛みや可動域の制限を改善し、スムーズな回復を促すためには、薬物療法・リハビリ・ストレッチ・手術など、症状に合わせた治療が重要です。 薬物療法|痛みを和らげるための鎮痛剤や注射治療 肩関節部の強い痛みによって夜も眠れない、ほとんど肩を動かせない状態と判断された場合には、その強い炎症を鎮めるために消炎鎮痛剤などの薬物を服用することをおすすめすることになります。 具体的には、炎症を抑える作用があるステロイドを主に肩関節内に関節注射として投与する、あるいは副作用がそれほど強くない非ステロイド系の消炎鎮痛剤を飲み薬として投薬することが多いです。 リハビリ・ストレッチ|肩の可動域を広げるトレーニング 肩の炎症がある程度治まり、痛みが和らいできた段階では、可動域の制限が残ることがあります。 このようなときには、硬くなった肩の動きを改善するために、ストレッチや運動療法(リハビリ)が必要です。 おすすめのリハビリ・ストレッチ 振り子運動 肩にかかる負担を最小限にしつつ、滑らかな動きを促す基本的な体操。 方法:痛みのない方の手で机などに体を支え、上半身を前に傾けます。痛む側の腕を自然に垂らし、前後・左右にゆっくりと揺らすように動かします。 テーブルスライド 肩を前方に伸ばす可動域を広げるストレッチ。 方法:椅子に座ってテーブルに両手を置き、腕を伸ばした状態で前に滑らせながら、上半身を倒します。肩の前面が伸びているのを意識しましょう。 クロスボディストレッチ 肩の後ろ側の柔軟性を高める運動。 方法:立ったまま、痛みのある腕を反対側の肩方向へ横に伸ばします。もう片方の手で肘を軽く押さえながら、胸に近づけるように引き寄せます。 手術|関節鏡手術の適応とは? リハビリや薬物療法を続けても、肩の動きが十分に回復せず、慢性的な痛みが解消しない場合には、「関節鏡下授動術」という手術が選択肢に入ります。 この手術では、関節内部をカメラで確認しながら、癒着して硬くなった関節包を電気メスなどで丁寧に剥離します。 肩の可動域が悪くなる原因のひとつは、炎症によって関節包が厚く固まることです。 この癒着を解除することで、術後には肩の動きが大きく改善することが期待できます。 まとめ|五十肩は適切な治療とリハビリで改善できる! 五十肩(四十肩)は、加齢や肩関節の組織に起こる炎症が原因となり、腕を動かす際に痛みが出たり、動かしづらくなることがあります。 とくに腕を上げる、肩を水平に保つといった動きが難しくなり、洗濯物を干す動作や、背中のファスナーを閉めるといった日常の動作に支障が出るケースも多いです。 ただし、早期に医療機関を受診し、炎症を抑える治療や可動域を広げるリハビリを続けることで、徐々に痛みが和らぎ、日常生活の動作が楽になる人も多くいます。 肩の動きに違和感や痛みを感じたときは、放置せず、悪化を防ぐためにも早めの対応が大切です。 五十肩(四十肩)の治療方法には、再生医療という選択肢もあります。 再生医療について詳しくは、以下をご覧ください。
2022.05.25 -
- 腱板損傷・断裂
- インピンジメント症候群
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
「ただの肩こりだと思っていたけど、なかなか痛みが治まらない…」 「何かの病気かもしれない…」 そんな肩の痛みに不安を感じていませんか? 肩の痛みは肩こりや筋肉疲労・加齢によるものが多いですが、病気が関係している場合もあります。 また、肩の痛み(肩こり)はがんの初期症状として起こるケースもあり、痛みが数週間続く場合や、夜間に痛みが強くなる場合は注意が必要です。 本記事では、肩の痛みと病気の関係性、がんによる肩の痛みの特徴について解説し、注意すべき症状のポイントも紹介します。 肩の痛みで悩んでいる方や、病院に行くべきか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。 肩の痛みの原因として疑われる病気 肩の痛みは、多くの場合「単なる肩こり」として片付けられがちですが、実は深刻な病気が隠れている可能性もあります。 とくに、痛みが長引く、夜間痛がある、腕の動きに制限が出る場合は注意が必要です。 広く知られている代表的な病気として、以下の3つがあります。 肩関節周囲炎 肩峰下インピンジメント症候群 腱板断裂 次に、それぞれの病気の原因・検査・治療について解説いたします。 肩関節周囲炎 肩関節周囲炎は、一般的に「四十肩」や「五十肩」とも呼ばれ、肩の関節や周囲の組織に炎症が起こることで痛みや可動域の制限が生じる病気です。 とくに、40〜50代以降に多く見られ、肩を動かすたびに痛みが走ることが特徴です。 肩関節周囲炎の原因 肩関節周囲炎の原因は明確には分かっていませんが、加齢に伴う組織の変性が関与していると考えられています。 肩の腱や関節包(関節を包む膜)が炎症を起こし、組織が硬くなってしまうことで、痛みと動きの制限が生じます。 肩関節周囲炎の多くは以下のような要因が関係しています。 加齢による組織の変化:肩の腱や関節包が硬くなりやすくなる 過度な肩の使用:スポーツや仕事などで肩を酷使することが影響 長期間の不動:ケガや手術後などで肩を動かさない期間があると発症しやすい 糖尿病などの基礎疾患:糖尿病の人は発症リスクが高い 肩関節周囲炎の検査 肩関節周囲炎の診断は、問診と身体診察を中心に行います。 医師が肩の動きをチェックし、特定の動作で痛みが出るかどうかを確認し、以下の検査が行われることがあります。 X線(レントゲン)検査:関節の変形や石灰沈着の有無を確認 超音波検査:腱や靭帯の炎症や損傷を評価 MRI検査:肩腱板の損傷や炎症の程度を詳しく調べる 肩関節周囲炎の治療 肩関節周囲炎の治療は、症状の程度に応じて行われます。 通常、次のような保存療法(手術をしない治療)が中心となります。 痛みのコントロール 消炎鎮痛剤(NSAIDs)の服用 ステロイド注射(炎症が強い場合に有効) リハビリ・運動療法 ストレッチ:肩の可動域を広げる運動 温熱療法:温めることで血流を改善し、筋肉の緊張を和らげる 理学療法:専門家の指導のもとで行うリハビリ 肩峰下インピンジメント症候群 肩峰下インピンジメント症候群は、肩を動かした際に肩の腱板(けんばん)や滑液包(かつえきほう)が肩峰(けんぽう)と衝突(インピンジメント)し、炎症や痛みを引き起こす疾患です。 とくに、腕を上げる動作で痛みが強くなり、スポーツや日常生活に支障をきたすことがあります。 肩峰下インピンジメント症候群の原因 肩峰下インピンジメント症候群の主な原因は、肩関節の構造や動きの異常により、腱板や滑液包が繰り返し圧迫されることです。 具体的には、以下の要因が関係しています。 過度な肩の使用:野球やテニス、水泳など、肩を頻繁に使うスポーツによる負担 肩関節の不安定性:筋力低下や不適切な肩の動作が原因で、腱板への負担が増える 加齢による変化:40歳以上で腱板が弱くなりやすく、衝突が起こりやすい 骨の形状異常:肩峰の形が先天的に鋭利な形をしている場合、腱板が圧迫されやすい 肩峰下インピンジメント症候群の検査 肩峰下インピンジメント症候群の診断では、医師による問診と身体診察が重要で、以下のような検査が行われます。 Neer(ニア)テスト・Hawkins(ホーキンス)テスト 腕を特定の角度に持ち上げた際に痛みが出るかどうかを確認するテスト X線(レントゲン)検査 肩峰の形状や骨の異常を確認し、肩関節の構造的な問題をチェック 超音波検査・MRI検査 腱板や滑液包の炎症・損傷の有無をより詳しく評価 肩峰下インピンジメント症候群の治療 治療は、保存療法(手術をしない方法)が基本となりますが、重症例では手術が検討されることもあります。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) 安静と負荷の軽減:痛みが強い場合は、過度な動作を控える 消炎鎮痛剤(NSAIDs):痛みと炎症を抑える ストレッチ・筋力強化:肩甲骨周りや腱板の筋肉を鍛えるリハビリ ステロイド注射:炎症が強い場合、一時的に痛みを和らげるために使用 ◆手術療法(重症例の場合) 保存療法で改善しない場合、関節鏡を用いた肩峰下除圧術(肩峰の一部を削る手術)などが検討される 腱板断裂 腱板断裂(けんばんだんれつ)は、肩関節を支える筋肉の腱(腱板)が部分的または完全に切れてしまう疾患です。 とくに中高年に多く見られ、肩の痛みや腕の上げづらさが特徴です。 放置すると肩の機能が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。 腱板断裂の原因 腱板断裂の原因は、大きく分けて加齢による変性と外傷の2つがあります。 ◆加齢による変性(変性断裂) 加齢に伴い腱板の組織が徐々に摩耗し、断裂しやすくなることです。 40歳以降になると、腱板への血流が低下することで修復能力が衰え、自然に断裂することもあります。 また、スポーツや仕事で肩を繰り返し使うことによる負担の蓄積も、変性断裂のリスクを高める要因となります。 ◆外傷(外傷性断裂) 転倒して肩を強く打ったり、腕を強く引っ張られたりすることで腱板が急激に損傷し、断裂が発生することです。 とくに、重い荷物を持ち上げる際に過度な負荷がかかると、腱板が損傷しやすくなります。 さらに、野球・テニス・ラグビーなどのスポーツや、交通事故による強い衝撃も外傷性断裂の原因として挙げられます。 腱板断裂の検査 腱板断裂は、問診と身体診察に加え、画像検査によって診断されます。 ◆身体診察 ドロップアームテスト:腕を持ち上げた状態からゆっくり下げる際にコントロールできず落ちてしまうか確認 ペインフルアークサイン:腕を横に上げる際に一定の角度で痛みが出るかを確認 ◆画像検査 X線(レントゲン):骨の変形や肩峰下の狭小化を確認 超音波検査:リアルタイムで腱板の動きを評価し、小さな断裂も発見しやすい MRI検査:腱板の損傷の程度(部分断裂か完全断裂か)を詳細に診断 腱板断裂の治療 腱板断裂の治療は、断裂の程度や患者の年齢・活動レベルによって異なります。 軽度の腱板断裂や、高齢者で手術を避けたい場合には、保存療法が選択されますが、重症の場合は手術療法が検討されます。 ◆保存療法(軽度の部分断裂や高齢者の場合) 安静・負担の軽減 消炎鎮痛剤(NSAIDs) リハビリテーション ステロイド注射 ◆手術療法(完全断裂や保存療法で改善しない場合) 関節鏡視下腱板修復術 腱移植術 人工関節置換術 石灰沈着性腱板炎 石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)は、肩の腱板にリン酸カルシウム(石灰)が沈着し、炎症や強い痛みを引き起こす疾患です。 40〜50代の女性に多く見られ、夜間や突然の激しい痛みが特徴です。 石灰沈着性腱板炎の原因 石灰沈着性腱板炎の正確な原因は明確には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。 腱板の血流低下:加齢や血流の減少により、腱板の一部が石灰化しやすくなる 過剰な負荷:肩を頻繁に使う動作が多い人は、腱板に負担がかかり石灰沈着のリスクが上がる 体質的要因:特定の人に起こりやすく、遺伝的な影響も示唆されている 沈着した石灰が周囲の組織を刺激し、炎症を引き起こすことで強い痛みが発生します。 石灰沈着性腱板炎の検査 診断には問診と身体診察のほか、画像検査が用いられます。 X線(レントゲン)検査 超音波検査 MRI検査 石灰沈着性腱板炎の治療 石灰沈着性腱板炎の治療は、症状の程度に応じて保存療法と手術療法が選択されます。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) 安静・負担軽減 消炎鎮痛剤(NSAIDs) ステロイド注射 リハビリテーション ◆手術療法(重症例や改善が見られない場合) 超音波ガイド下洗浄療法 関節鏡視下手術 翼状肩甲骨(翼状肩甲) 翼状肩甲骨(よくじょうけんこうこつ)は、肩甲骨が正常な位置に固定されず、背中から浮き上がる状態を指します。 肩甲骨が翼のように突出することからこの名前がついています。 肩や腕の動かしにくさ、痛み、筋力低下などの症状を伴うことがあります。 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の原因 翼状肩甲骨の原因は、主に神経の障害と筋肉の異常に分けられます。 ◆神経の障害 長胸神経麻痺(前鋸筋の機能低下) 副神経麻痺(僧帽筋の機能低下) 肩甲背神経障害(菱形筋の機能低下) ◆筋肉の異常 筋萎縮や筋力低下 外傷や手術後の影響 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の検査 翼状肩甲骨は、視診・触診と機能検査を中心に診断されます。 ◆視診・触診 肩甲骨が背中から浮き上がっているかを観察 肩を動かしたときの肩甲骨の動きを確認 ◆機能検査 壁押しテスト(Wall Push-up Test) 壁に向かって両手をつき、腕立て伏せのように押したときに肩甲骨が異常に突出するかを確認 筋力テスト:前鋸筋・僧帽筋・菱形筋などの機能を評価 ◆神経検査 電気生理学的検査(筋電図)で神経の損傷の有無を調べる MRIや超音波検査を用いて神経や筋肉の状態を確認することもある 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の治療 翼状肩甲骨の治療は、保存療法と手術療法に分けられます。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) リハビリテーション 装具療法 理学療法(電気刺激療法) ◆手術療法(重症例や改善が見られない場合) 神経移行術 筋移植術 肩甲骨固定術 反復性肩関節脱臼 反復性肩関節脱臼(はんぷくせいけんかんせつだっきゅう)は、一度肩関節が脱臼した後に、軽い衝撃や日常動作でも繰り返し脱臼してしまう状態を指します。 とくに若年層のスポーツ選手に多く見られ、肩の不安定感や痛みを伴うことが特徴です。 反復性肩関節脱臼の原因 反復性肩関節脱臼の主な原因は、外傷による関節の損傷と関節の構造的な問題の2つに分けられます。 ◆外傷による関節の損傷 初回の脱臼時に、肩関節の関節唇(かんせつしん)という軟部組織が損傷し、関節が不安定になる(バンカート損傷) 腕を強く後方に引っ張られるような動作で、関節の前方部分が緩み、脱臼しやすくなる スポーツ(野球・バスケットボール・柔道など)や転倒による外傷が原因になることが多い ◆関節の構造的な問題 関節の緩さ(関節弛緩性):生まれつき関節が柔らかい人は、靭帯や関節包が伸びやすく、脱臼しやすい 筋力不足:肩周りの筋力が弱いと、関節の安定性が低下し脱臼しやすくなる 骨の形状異常:関節窩(かんせつか)という肩甲骨側の受け皿が小さい場合、関節がはまりにくく脱臼を繰り返す 反復性肩関節脱臼の検査 反復性肩関節脱臼の診断には、問診・身体診察と画像検査が行われます。 ◆問診・身体診察 過去の脱臼歴、発生状況を確認 肩の不安定感や可動域をチェック 不安試験(Apprehension Test) ◆画像検査 X線(レントゲン)検査 MRI検査 CT検査 反復性肩関節脱臼の治療 反復性肩関節脱臼の治療は、保存療法と手術療法に分けられます。 ◆保存療法(軽症例・手術を避けたい場合) リハビリテーション 装具療法 生活習慣の改善 ◆手術療法(重症例・保存療法で改善しない場合) バンカート修復術 骨移植術(ラタジェ手術) 関節包縫縮術 肩の痛みとがんの関係性 肩の痛みは通常、肩こりや筋肉疲労、関節の疾患などによって引き起こされますが、まれにがんが原因となる場合もあります。 通常の治療で改善しない長期間続く痛みは注意が必要です。 がんによる肩の痛みの特徴 がんが原因となる肩の痛みにはいくつかの特徴があります。 まず、安静時でも痛みが続くことがあり、通常の肩こりは動かすと痛みが出るのに対し、がんによる痛みは夜間や寝ている間に強くなることがあります。 また、痛みが徐々に強くなり、鎮痛剤が効きにくくなることや、肩だけでなく首、背中、腕にも違和感を感じる場合があります。 しびれや筋力低下を伴うこともあり、これらの症状が現れる場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。 肩の痛みを改善・予防するセルフケア方法 肩の痛みは日常的な動作や姿勢から来ることが多いため、普段からのセルフケアがとても重要です。 本章では、肩の痛みを改善したり予防したりするためのストレッチと入浴を取り入れた方法を紹介します。 ストレッチ 肩の筋肉を柔軟に保つことは、肩の痛みを予防し、すでに痛みを感じている場合にも症状を和らげる効果があります。 肩周りの筋肉を適切に伸ばすストレッチを行うことで、血流が改善され、筋肉の緊張をほぐすことができます。 肩回し運動 肩を前後に回すことで、肩の筋肉をほぐすことができます。 両肩を耳に向かって持ち上げ、肩甲骨を回すようにして前後にゆっくり回します。 10回程度前回しと後回しを繰り返します。 肩甲骨ストレッチ 肩甲骨周りの筋肉をストレッチすることで、肩の可動域を改善し、痛みの軽減に繋がります。 立って、または座って両手を肩に置き、肘を大きく円を描くように回します。 回す方向を変えながら10回程度行い、肩甲骨を意識して動かすようにしましょう。 肩と腕の伸ばしストレッチ 肩の痛みがひどくなる前に、肩と腕を伸ばすストレッチを行うことで、予防効果が高まります。 片手をまっすぐ前に伸ばし、反対の手でその手首を引き寄せます。 肩を意識して10秒間伸ばし、その後反対側も行います。 入浴 入浴は肩の痛みを改善するために非常に効果的な方法です。 お湯の温度や入浴の方法を工夫することで、よりリラックスでき、肩の痛みを緩和できます。 温かいお湯に浸かることで血流が促進され、筋肉の緊張がほぐれます。 温浴によるリラックス 肩の痛みがある場合は、ぬるめのお湯(38〜40℃程度)にゆっくり浸かると、筋肉がリラックスし、肩こりの改善に効果があります。 お湯に浸かることで、血行が促進され、痛みの原因となる筋肉の緊張が和らぎます。 半身浴 肩だけでなく、全身を温めるために、半身浴を行うのも効果的です。お湯が肩にまで浸かるようにし、肩を温めることができます。 さらに、半身浴は長時間お湯に浸かることができ、肩だけでなく全身の疲労を軽減することにも繋がります。 入浴後のストレッチ 入浴後は筋肉が柔らかくなっているため、さらにストレッチを行うことで効果が高まります。 肩甲骨や腕を伸ばすストレッチを行うことで、筋肉がさらにほぐれ、肩の痛みの予防や改善に繋がります。 肩の痛みで病院を受診すべきタイミングは? 肩の痛みが日常的に発生しても、多くは軽度の筋肉疲労や肩こりが原因です。 しかし、肩の痛みが3週間以上続く、安静時や夜間に痛みが悪化する場合、またはしびれや筋力低下、体重減少、発熱など他の症状が伴う場合は、重大な病気が隠れている可能性があります。 とくに、肩の痛みが首や背中、腕に広がる場合や、激しい外傷を受けた後は早期受診が必要です。 また、40歳以上の方や、がんや心臓病の既往歴がある場合、肩の痛みが他の疾患のサインとなることもあります。 肩の痛みを軽視せず、適切な診断を受けることで、早期治療が可能となり、症状の悪化を防ぐことができます。 再生医療|肩の痛みに対する治療選択肢 再生医療は肩の痛みに対する新しい治療法として注目されています。 再生医療では、幹細胞を用いて自然修復力を高めます。 PRP療法や幹細胞治療など、患者様自身の血液や幹細胞を用いて肩関節の炎症や軟部組織の損傷にアプローチする治療法です。 再生医療は、手術・入院を必要としないため、治療期間が短い傾向があります。 肩の痛みでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 まとめ|肩の痛みから考えられる病気を理解して適切な治療や検査を受けよう 今回は肩の痛みで疑うべき病気とは何なのか、それらの病気に対する検査および治療方法などについて詳しく解説してきました。 「肩が痛い」、「肩が上がらない」などの自覚症状があり、日常生活においてお困りの方は、専門の医療機関などで早期的に診察や検査を受けましょう。 また、これら整形外科的な治療以外にも、肩の痛みに対しては「再生医療」という新しい治療法も選択肢となります。 再生医療については、以下の動画もあわせてご覧ください。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=YQsu_VT2ZGqSNB2v 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
2022.03.16