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「化膿性脊椎炎はどれくらいで完治する?」 「入院期間や治療期間の目安は?」 化膿性脊椎炎の完治期間は最低6週間が目安です。本記事では、化膿性脊椎炎の完治期間をはじめとして、以下を解説します。 入院期間の目安 病状別、発症部位別、原因菌別、病型別の治療期間の目安 化膿性脊椎炎の回復までの見通しを知りたい方は参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状や再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 化膿性脊椎炎の完治期間は最低6週間が目安 アメリカのガイドラインによると、化膿性脊椎炎の治療期間は6週間としています。(文献1)そのため、完治期間も最低6週間は必要です。 しかし実際には、化膿性脊椎炎の完治期間は病状により異なります。 2008年から2012年までに化膿性脊椎炎と診断され、抗菌薬投与した患者41例を参考にすると以下の通りです。なお、1週目までの感染症の程度を示すCRP値の改善率が中央値以上の方を「良好群」、中央値以下の方を「不良群」と定義しています。 病状 症例数 治療期間の平均 良好群 20例 約38日 不良群 21例 約70日 (文献2) 以上のように不良群は、明らかに治療期間が延長しています。 化膿性脊椎炎の入院期間の目安 化膿性脊椎炎の入院期間について、2001年から2009年までの9年間における化膿性脊椎炎患者100例の調査内容を参考に、以下の表にまとめました。 症例数 入院期間の目安 27例 1カ月以内 33例 1〜2カ月 22例 2〜3カ月以内 9例 3カ月以上 (文献3) 発症から受診までの期間が短いほど入院期間は短い傾向であるため、完治するまでの時間も短くなると考えられます。 化膿性脊椎炎の発症部位別の治療期間 化膿性脊椎炎の発症部位別の治療期間について、2007年から2018年の11年間における入院加療をした化膿性脊椎炎患者117例の調査内容を参考に、以下の表にまとめました。 発症部位 症例数 治療期間の目安 頚椎 17例 約53日 胸椎 28例 約66日 腰椎 76例 約63日 (文献4) 発症部位別の治療期間に明らかな差はありません。 化膿性脊椎炎の原因菌別の治療期間 化膿性脊椎炎の原因菌別の治療期間について、2007年から2018年の11年間における入院加療をした化膿性脊椎炎患者117例の調査内容を参考に、以下の表にまとめました。 原因菌の種類 治療期間の目安 MRSA 約151日 MSSA 約48日 連鎖球菌 約48日 大腸菌 約64日 不明群 約44日 (文献4) 原因菌別で見ると、MRSAが他の菌と比較して明らかに治療期間が延長しています。 化膿性脊椎炎の病型別の治療期間 化膿性脊椎炎の多くは抗菌薬の投与により70〜90%で症状の改善が期待できますが、それぞれ治療期間の目安は異なります。(文献5) ここからは、病型別の治療期間の目安を解説します。 急性発症型 急性型の治療期間の目安は約72日です。(文献4)急性型は、高熱や激しい頚部痛、背部痛、腰痛などで発症するタイプです。 急性型の化膿性脊椎炎は、以下のような痛みが突然現れます。 夜も眠れないほどの痛み 座れないほどの痛み 歩けないほどの痛み 以上のような症状が現れたら急性型を疑い整形外科を受診してください。急性型は、亜急性型と慢性型と比較すると発症する割合は少ない傾向にあります。 亜急性発症型 亜急性型の治療期間の目安は約42日です。(文献4)亜急性型は37度台の微熱や頚部痛、背部痛、腰痛などで発症するタイプです。痛みや発熱が軽度であるからといって、放置すると重症化する恐れがあります。 以下のような症状がある場合は医療機関を受診してください。 体勢を変えても腰痛などが治まらない 背中をたたくと背部痛などが増す 長期間にわたり腰痛がある また、亜急性発症型は脊椎カリエスと間違えやすい傾向です。脊椎カリエスとは結核菌が原因で、発症する部位や症状が異なります。脊椎カリエスの場合は、微熱や食欲不振、倦怠感などの症状が現れますが、腰痛などが起きることは少ないです。 慢性発症型 慢性発症型の治療期間の目安は約55日です。(文献4) 慢性型は、発熱は見られず軽微な腰背部痛のみで発症するなど、気づきにくい特徴があります。 とくに糖尿病などの免疫機能が下がる病気を持っている方で、長期間の腰や背中の痛みに悩まされている方は、慢性型を疑い一度医師に相談しましょう。 なお、慢性型は亜急性型と同様に脊椎カリエスと間違えやすい傾向にあります。 化膿性脊椎炎は、糖尿病や慢性腎疾患を持っている方、高齢者などの免疫機能が低下している方は、悪化のリスクが高いです。疑われる症状が現れたら速やかに医療機関を受診してください。 化膿性脊椎炎の治療方法 化膿性脊椎炎の治療方法には保存療法と手術療法があります。それぞれの詳細を解説します。 保存療法 化膿性脊椎炎の治療は、保存療法が原則です。保存療法において重要な点は以下の通りです。 保存療法 詳細 適切な期間の抗菌薬の投与 適切な診断と適切な期間の抗菌薬の投与が重要。抗菌薬の投与が4週間未満であると再発率が25%に上るとの報告があるため。(文献1) 安静の保持 安静の保持は骨破壊防止と感染の鎮静化につながる。骨破壊とは細菌感染により脊椎が破壊されること。骨破壊が進むと後遺症を残す恐れもある。 手術療法 手術療法には以下のようなものがあります。 手術療法 詳細 脊椎固定術 感染部位をスクリューとロッドで固定して、骨の安定性を高めて骨破壊を防ぐ。感染を抑える働きもある。 経皮的病巣掻爬洗浄術 (けいひてきびょうそうそうはせんじょうじゅつ) 感染部位に溜まっている膿や炎症している組織を掻き出して洗浄する治療。 以下の状態となっている場合は、手術療法が検討されます。 2〜3週間実施した保存療法に効果が見られない 麻痺症状が現れている 骨破壊が進んでいる 麻痺症状や骨破壊の進行であれば手術の適応判断が容易です。しかし、保存療法の効果が見られない場合の手術の適応判断は難しいと言われています。 まとめ|化膿性脊椎炎の完治期間は病状により変動する 化膿性脊椎炎の完治期間は最低6週間が目安です。しかし、病状により治療期間は大きく変動し、良好群では約38日、不良群では約70日が目安になります。 発症部位別の治療期間に関しては大きな差はありません。 原因菌別では、MRSAで約151日、その他原因菌では40〜60日程度と治療期間に大きな差があります。発症型別では、急性型は約72日で亜急性型と慢性型は40〜50日程度です。 化膿性脊椎炎は適切な期間の抗菌薬の投与と安静が大切です。完治までの期間を延ばさないためにも、可能な限り安静を保ち治療を進めましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。気になる症状がある方は、ぜひ一度お試しください。 参考文献 (文献1) 化膿性脊椎炎の診断におけるMRIの有用性:3例報告|日臨救急医会誌 (文献2) 化膿性脊椎炎における治療開始初期のCRP値改善率と保存的治療期間との関係について|日本脊椎脊髄病学会 (文献3) 当院における化膿性脊椎炎100例の検討|昭和医会誌 (文献4) 当院における化膿性脊椎炎の集学的治療 ―11年間11 例の検討―|日本脊椎脊髄病学会 (文献5) 保存治療に抵抗する急性型化膿性脊椎炎の予後予測|日本脊椎脊髄病学会
2025.07.31 -
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- 脊椎、その他疾患
「化膿性脊椎炎に後遺症はある?」 「再発のリスクを下げる方法も知りたい」 化膿性脊椎炎は手足のしびれや痛み、運動能力の低下などの後遺症が発生する場合があります。これらの後遺症を発生させないためには、早期発見や適切な治療、リハビリテーションが重要です。 後遺症が発生してしまった際は、医師やリハビリスタッフの指示のもとで適切なリハビリテーションを進めることが大切です。本記事では、化膿性脊椎炎に関する以下のことを解説します。 後遺症について 後遺症に対するリハビリテーション 治療において安静が重要な理由 再発リスクを下げる方法 再発を早期発見するポイント 化膿性脊椎炎の後遺症や再発リスクの理解を深めるために本記事を役立ててください。 化膿性脊椎炎の後遺症は手足のしびれや痛み 化膿性脊椎炎の後遺症には以下のようなものがあります。 手足のしびれや痛み 運動能力の低下 筋力の低下 排尿障害 化膿性脊椎炎を発症した方の約1/3は、神経症状の後遺症に悩まされていると報告があります。(文献1) 後遺症を発生させないためには、早期発見と適切な治療が重要です。治療が遅れると脊椎に元に戻らない変化が起きてしまう恐れがあるためです。その場合、たとえ治療を行っても、神経症状などの後遺症は期待通りに回復しない恐れがあります。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。気になる症状がある方は、ぜひ一度お試しください。 化膿性脊椎炎の後遺症に対するリハビリテーション 化膿性脊椎炎の手足のしびれや痛みに対するリハビリテーションにおいては、症状を悪化させない方法を身につけることが重要です。 例えば、手のしびれに対しては以下のようなアプローチがあります。 長時間の手の作業は避ける 一定時間ごとに使用する手を替える しびれが現れたら無理をしないで休ませる 手首や肘はできるだけ伸ばした状態にして作業を行う 肘や手首を圧迫しないようにする (文献2) 以上のリハビリテーションはあくまで一例です。必要なリハビリテーションは人それぞれ異なるため、医師やリハビリスタッフに相談しながら進めましょう。 化膿性脊椎炎の治療において安静が重要な理由 化膿性脊椎炎の治療において安静が重要な理由は、骨破壊(細菌感染により骨が破壊されること)を防止するためです。また、脊椎を安定させることにより感染の鎮静化に役立つとされています。(文献3) 実際に、徹底した安静臥床と適切な抗菌薬の治療による保存療法で、良好な治療成績を得られると報告があります。(文献7)しかし、化膿性脊椎炎の治療において、多くの場合に感染部位の安静を保持できていないのが現状です。 安静を保つために、例えば脊椎の場合は体幹ギプスや硬いコルセットを着用することがあります。 化膿性脊椎炎の再発リスクを下げる方法 化膿性脊椎炎の再発リスクを下げる方法は、適切な期間治療を受けることです。化膿性脊椎炎は、医師の診察や画像による診断が難しく、原因不明の発熱として見過ごされやすいです。その結果、十分な期間の抗菌薬の投与ができず再発してしまうこともあります。 実際に抗菌薬の投与による治療が4週間未満である場合は、再発率25%に上ると報告があります。(文献4)適切な診断を受けて必要な期間の抗菌薬の投与をしてもらうために、脊椎等を専門とする医師に相談したほうが良いでしょう。 化膿性脊椎炎の再発を早期発見するポイント 化膿性脊椎炎の再発に気づかず治療が遅れてしまうと、後遺症が発生するリスクがあるため早期発見が重要です。早期発見するポイントは以下の通りです。 基本的な症状を理解する 症状の特徴を理解する それぞれの詳細を解説します。 基本的な症状を理解する 化膿性脊椎炎には3つの型があり、それぞれ発症の仕方が以下のように異なります。 症状の発症の仕方 急性発症型 激しい頚部痛、背部痛、腰痛などの痛みと高熱で発症する。 亜急性発症型 頚部痛、背部痛、腰痛などの痛みと微熱で発症する。 慢性発症型 軽微で治りにくい頚部痛、背部痛、腰痛などの痛みと間欠的な発熱(発熱したり解熱したりすること)で発症する。 痛みの部位は感染の場所により異なります。以上のような症状が現れたら再発を疑いましょう。なお、化膿性脊椎炎の好発部位は、腰椎が最も多く50%以上、胸椎が30%強、頚椎が10%ほどです。(文献5) 症状の特徴を理解する 化膿性脊椎炎の症状の特徴は、腰痛や背部痛などの痛みがいくら時間がたっても治まらないことです。ぎっくり腰などでは体勢を変えると痛みは軽減しますが、化膿性脊椎炎ではどんな体勢をとっても改善はしません。 退院後に以下のような症状が現れた場合は再発を疑ってください。 高熱や微熱、間欠的な発熱などのいずれかが現れている 頚部痛、背部痛、腰痛などの痛みが現れており、体勢を変えても改善しない このような症状が現れている場合は、再発を疑い整形外科を受診しましょう。 化膿性脊椎炎の予後 化膿性脊椎炎は、かつては感染の長期化や再発が多いことに加えて、敗血症(はいけつしょう:感染症が原因で全身の臓器に障害が及ぶ状態)などにより予後が不良な病気でした。 しかし、近年では適切な抗菌薬の投与や手術療法により、死亡率が5〜16%と予後の改善が見られています。(文献6)とはいえ、診断が診断が遅れて適切な治療を迅速に開始できなかった場合、重度の敗血症を合併することはあります。 化膿性脊椎炎は、早期発見と適切な治療により予後が大きく左右されます。前述した症状が現れた際は、化膿性脊椎炎を疑い速やかに整形外科を受診してください。 まとめ|適切な治療とリハビリで後遺症を最小限に抑えよう 化膿性脊椎炎の後遺症は、手足のしびれや痛み、運動能力の低下、筋力の低下などです。 化膿性脊椎炎の後遺症を発生させないためには、早期発見と適切な期間の抗菌薬の投与が重要です。 適切な期間の治療により、再発リスクを下げることもできます。治療中は悪化を防ぐために安静を保持しましょう。 発生してしまったしびれや痛みに対しては、リハビリテーションを通して悪化させない方法を身につけることも大切です。 医師やリハビリスタッフの指示のもと適切な治療やリハビリテーションを進めましょう。 参考文献 (文献1) 化膿性脊椎炎と診断されて手術に至った 30 症例の検討|日本ペインクリニック学会誌 (文献2) 神経のリハビリ|JCHO東京高輪病院リハビリテーション (文献3) 化膿性脊椎炎における治療開始初期のCRP値改善率と保存的治療期間との関係について|日本脊椎脊髄病学会 (文献4) 化膿性脊椎炎の診断におけるMRIの有用性:3例報告|日臨救急医会誌 (文献5) 化膿性脊椎炎|日本脊髄外科学会 (文献6) 化膿性脊椎炎を契機に診断された感染性心内膜炎の1例|信州医学会 (文献7) 当院における化膿性脊椎炎100例の検討|昭和医会誌
2025.07.31 -
- 脊椎
- 頚椎症性脊髄症
「頚椎症性脊髄症の手術、成功率はどのくらいなんだろう?」 医師から手術が必要といわれ、成功率を調べた方も多いのではないでしょうか。首の手術と聞いて、成功するのか、後遺症は残らないのか、不安や疑問を感じることもあるでしょう。 頚椎症性脊髄症の手術成功率は約50~80%です。しかし、この数字だけでは判断できません。手術のタイミング、年齢、症状の進行度によって結果は大きく変わるからです。 この記事では頚椎症性脊髄症の手術の成功率について解説します。 手術内容や後遺症、手術後の過ごし方や注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 頚椎症性脊髄症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 頚椎症性脊髄症の手術成功率は? 頚椎症性脊髄症の手術で症状が改善する割合は、49.4%~79.2%です。(文献1) この数値は、日本整形外科学会が定めた、症状の程度や治療効果を評価する「JOAスコア」によるものです。 およそ50%以上の人が手術によって症状が改善されています。ただし、手術するタイミングによっては症状があまり改善されない場合もあります。 症状が悪化して歩けない状態の場合、手術をしても症状が改善しないことがあります。また、手術による合併症や後遺症のリスクもまったくないわけではありません。 医師と相談し、手術するメリットとデメリットを十分に理解して判断することが重要です。 頚椎症性脊髄症の手術の種類と内容 頚椎症性脊髄症の症状が軽度〜中程度の場合、頚椎カラーや痛み止め薬などを用いて症状を緩和する保存療法で治療を進めます。 しかし、数カ月経っても症状が改善されない場合や、手足のしびれや運動障害が酷くなった場合には手術療法が検討されます。 手術方法は主に、首の前方から手術をする「前方除圧固定術」と首の後ろから患部の手術をする「後方除圧術」の2通りです。 それぞれの手術方法について詳しく紹介します。 前方除圧固定術 前方除圧固定術は、脊髄を圧迫する原因を首の前から取り除き、隙間ができた部分をチタン製のケージや人工骨、プレートなどを用いて固定する方法です。 圧迫要因が前方に近い場合や、圧迫されている範囲が比較的少ない場合この手術が適用されます。 頚椎の変形に関する疾患では一般的に広く用いられる手術方法である一方、手術の難易度が高い点が特徴です。 起こりうる合併症として、移植骨の沈下や隣接椎間障害が挙げられます。 後方除圧術(椎弓形成術) 後方除圧術(椎弓形成術)は背中側から頚椎に侵入し、圧迫要因を取り除く手術です。 人工骨などを用いて脊柱管を広げ、脊髄の圧迫を和らげます。 手術範囲が広い場合に後方除圧術が適用されることが多いです。 後方除圧術で見られる合併症としては移植骨の沈下、隣接椎間障害のほか、腕や肩に麻痺が見られることがあります。 頚椎症性脊髄症の手術をすべきタイミング 頚椎症性脊髄症は、手術するタイミングが重要です。 決め手となるのは、患者様本人の「年齢」と「症状の進行度」です。 それぞれ適したタイミングはいつなのか解説します。 年齢 高齢の患者とそうではない患者の手術後の改善率を比較すると、高齢の患者のほうが改善率は低かったという結果も出ています。(文献2) 高齢者は手術前の時点で症状が既に重くなっていることが多く、病気の進行度を示すJOAスコア(症状の重さを数値で表したもの)が低い状態から治療を始めることになります。これが改善率の低さにつながっています。 そのため、高齢の方が手術を受ける場合は、歩行障害などの症状が完全には改善せず、ある程度残ってしまう可能性があることを理解しておく必要があります。 このことから、手術を検討する場合は、できるだけ若いうちに決断することが重要です。 症状の進行度 頚椎症性脊髄症の手術を検討しているのであれば、歩行ができるうちに手術を受けましょう。症状が進行し重症化してしまうと、手術をしても効果が得られない可能性があります。 頚椎症性脊髄症が重症化すると、足をひきずるなどの歩行障害、ボタンを留めるなどの細かい動作がやりづらくなる巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)などが起こります。 さらに、歩けなくなり身体を動かさなくなると、足の筋肉が衰えてしまいます。衰えた状態から再び筋肉を増やし、歩行ができるまで回復を目指すのは困難です。 そのため、手術を検討しているのであれば、歩行ができるうちに受けた法が良いと考えられます。医師とよく相談の上で決めましょう。 頚椎症性脊髄症手術後の経過とリハビリ 手術後の入院期間はおよそ2〜4週間ほどです。術後は頚椎カラーで首を固定する場合もあります。 手術によって脊髄の圧迫は改善されますが、それだけで治療が完了するわけではありません。 手足のしびれや運動障害によって身体をあまり動かせていないと、日常生活を送るために必要な筋肉が衰えてしまいます。 そのため、手術後は歩行訓練や筋力トレーニングなどのリハビリテーションをします。 手術をしたから大丈夫と油断すると、症状が悪化してしまうこともあります。頚椎に負担がかからないよう、普段の生活の中でも工夫が必要です。 寝る際にはうつぶせ寝や横向きで寝ない。 長時間上向きや下向きになる姿勢をとらない。 読書やテレビ、スマートフォンの使用時は長時間熱中してしまうことがあるため、意識的に休憩を取る。 これらの点を心がけ、症状の回復を目指しましょう。 頚椎症性脊髄症手術後に発生する可能性がある後遺症 頚椎症性脊髄症の手術後、軸性疼痛と呼ばれる首から肩にかけての痛みが強くなってしまう症状や、手足の痺れ、膝関節の可動が悪くなるといった後遺症が見られることがあります。 手術方法によっても、それぞれ異なる合併症のリスクがあります。 前方除圧固定術で手術をした場合、手術時に気道を損傷することがごくまれにあります。 そのほか合併症として嚥下障害や急性的な上気道障害を起こすこともありますが、大半の場合は一過性です。 後方除圧術で手術をした場合は、脊椎が通常よりも後ろに弯曲してしまう「後弯変形」が見られることがあります。 これらのリスクについても事前に医師とよく相談し、十分に理解した上で手術を検討することが大切です。 頚椎症性脊髄症に対する治療の一つ「再生医療」とは 再生医療とは、自己再生能力を持つ「幹細胞」という細胞を用いる治療法です。 幹細胞は神経や血管、筋肉などさまざまな細胞に変化する能力「分化能」があります。この幹細胞を患者様自身の脂肪から採取し、培養したものを患部に投与します。 頚椎症性脊髄症に対する再生医療については、以下の治療内容もご覧ください。 まとめ|頚椎症性脊髄症の手術成功率は50〜80%!手術を受けるタイミングが重要 頚椎症性脊髄症の手術で症状が改善する確率は、およそ50%〜80%です。 手術方法はおもに前方除圧固定術と後方除圧術(椎弓形成術)の2つの方法がありますが、いずれの手術でも同様の改善率が報告されています。 一方で、手術後に首から肩にかけてしびれるような痛みが起こったり、手足のしびれや関節の可動域が下がるといった後遺症が起こることがあります。 合併症を起こすこともあるため、手術によるリスクも理解しておくことが重要です。 また、頚椎症性脊髄症は、手術するタイミングによって症状の改善率が変わる可能性があります。 高齢の場合や症状が進行し重症化している場合、手術をしても大きな改善が見られない場合があります。 とくに歩行が困難になった後の手術は、あまり効果が得られません。手術を検討する場合は、適した時期を医師と相談し決めましょう。 手術を伴わない治療法をご検討の際は、再生医療も選択肢になります。再生医療をお考えの方は、お気軽に当院「リペアセルクリニック」までお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 頚椎症性脊髄症診療ガイドライン2020改訂第3版│日本整形外科学会 (文献2) 高齢者頚椎症性脊髄症手術症例の検討│整形外科と災害外科
2025.07.31 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
40代〜50代を過ぎて、手足のしびれや肩から腕にかけての痛みに悩まされているという人もいるかもしれません。 その症状は「頚椎症性神経根症」の可能性があります。 頚椎症性神経根症と聞き、一見なじみのない病名に「いつごろ治るのか?」「手術は必要?」といった不安を感じる人もいるでしょう。 この記事では、頚椎症性神経根症が治るまでの期間目安や治療法について解説します。 頚椎症性神経根症の予防法についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 頚椎症性神経根症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 頚椎症性神経根症はどれくらいで治る?3カ月程度が目安 頚椎症性神経根症のほとんどは、3カ月程度で症状が改善されます。 装具の装着やリハビリなどの保存療法を実施した患者様のうち60~90%は、自然に症状が良くなっています。(文献1) 一方で、保存療法によって症状が改善されない、もしくは悪化した場合は手術が検討されます。 頚椎症性神経根症とは? 頚椎症性神経根症とは、頚椎の形状が変化してしまうことで神経根が圧迫されて起こる疾患です。 頚椎の形状変化の主な原因は加齢によるものです。年を取ると頚椎椎間板の水分が失われ、変形や潰れなどが起こります。そのため、発症する人の多くは40代〜50代の中高年層です。また、姿勢の悪化も頚椎の形を変えてしまう原因として挙げられます。 頚椎症性神経根症の主な症状 頚椎症性神経根症の主な症状は以下の通りです。 肩から腕にかけて痛みがある 腕や手指がしびれる 上半身の筋力低下や感覚障害 首を後ろに反らすと激しい痛みを感じる 痛みの程度は軽い場合もあれば、日常生活が困難になるほどの激しい痛みまでさまざまです。 頚椎症性神経根症の診断方法 診断では頚椎症性神経根症で見られる腕や手指のしびれ、肩から腕にかけての痛みなどの症状を確認後、レントゲンやMRI検査を行います。 レントゲン撮影では頚椎の骨の形や骨と骨の間隔を確認し、MRI検査ではレントゲンでは映らない椎間板の状態や神経根が圧迫されているかどうかを確認します。 頚椎症性神経根症の治療法 頚椎症性神経根症にかかった場合、ほとんどの人がはじめに「保存療法」を行います。 保存療法とは、手術を伴わない治療法です。 保存療法を実施した60%〜90%の人がそのまま症状が良くなっていますが、数カ月経っても症状が良くならない場合ほかの治療法を検討する必要があります。 それぞれの治療法について、具体的にどのような治療を行うのか紹介します。 保存療法 保存療法では、頚椎を固定して負担を軽減するため「頚椎カラー」を首に装着し、頚椎周辺の痛みを緩和します。 痛みが強い場合、湿布の使用やロキソニン(ロキソプロフェン)をはじめとする炎症を抑える薬を服用することもあります。 そのほか、リハビリを併用するケースも多いです。 リハビリには、首を引っ張り圧迫されている神経を緩和する「牽引療法」や患部を温める「温熱療法」、電気による刺激を加える「電気治療」などが該当します。 ブロック注射 薬やリハビリ治療で症状が改善されない場合、神経に直接注射する「ブロック注射」をする場合もあります。 ステロイドと局所麻酔薬を注入し、神経の炎症を抑えます。 ごくまれに脊髄損傷などの合併症を伴うことがあるため、実施前にはリスクがあることも十分理解しておきましょう。 手術療法 保存療法やブロック注射を行っても痛みが軽減されず日常生活に支障をきたしている場合、手術も検討されます。 手術方法は主に「前方除圧固定術」と「後方除圧固定術」の2つがあります。 入院期間はいずれの治療も10日〜14日ほどです。 前方除圧固定術 首の前方から手術を行い、神経を圧迫している骨や椎間板を除去します。 その後、除去した骨によってできた隙間に人工骨や金属器具を挟み、金属製のプレートとネジで抑え込むことで固定する手術です。 ごくまれに手術の後遺症として、食道や気管への損傷、嚥下障害などが見られることがあります。 後方除圧術 頚椎症性神経根症では、脊髄の通り道である脊柱管が狭くなることで神経根を圧迫し、症状の原因になっていることがあります。このような状況では、首の後ろ側から切開して手術を行う後方除圧固定術が選択されます。 後方除圧術では、脊柱管を広げることで神経根の圧迫を和らげます。 場合によっては前方除圧固定術同様、固定を行う場合もあります。 頚椎症性神経根症に対する再生医療 頚椎症性神経根症に対しては、再生医療という治療選択肢もあります。 再生医療では、患者様の幹細胞を採取・培養して患部に注射します。他の細胞に変化する幹細胞の能力を活用した治療法です。 患者様自身の幹細胞を採取して利用するため、拒絶反応のリスクが比較的少ないのが特徴です。また、再生医療では手術や入院を必要としません。 頚椎症性神経根症に対する再生医療について詳しくは、以下が参考になります。 頚椎症性神経根症の人がやってはいけないこと 頚椎症性神経根症の人は、首を上下にそらす姿勢を長く続けないよう気を付けましょう。 たとえば、スマートフォンを触ったり読書をする際は下を向きやすいため、目の高さに合わせることを心がけてください。テレビを見る際は長時間首を上向きにする姿勢になりやすいため、こまめに休憩を挟むことを忘れないようにしましょう。 また、治療中の運動は症状を悪化させる可能性があるため、できるかぎり避けたほうが良いです。 頚椎症性神経根症の再発を防ぐためにできること 頚椎症性神経根症の再発を防ぐには、頚椎に負担をかけないことが重要です。 就寝時、うつぶせ寝や腕を枕にして横向きに寝る姿勢は頸椎に負担がかかりやすいため、仰向けで寝るようにしましょう。 また、枕の高さも頚椎に影響を与えます。自分に合った高さの枕を選んでください。 普段デスクワークの多い人は、長時間首を下に向ける姿勢をとることが多いため、こまめなストレッチを心がけてください。 デスクワーク以外でも、定期的な首〜肩周辺のストレッチは大切です。 【首のストレッチ方法】 片手で同じ側の肩を軽く押さえる 首をゆっくりと斜め後ろに反らす その姿勢を10~15秒間キープする 首の前側が気持ちよく伸びているのを感じる 反対側も同様に行う 注意点として、無理に伸ばさず心地よい範囲で、痛みを感じたらすぐに中止してください。 まとめ|頚椎症性神経根症は3カ月ほどで改善する場合が多い!改善が見られない場合は専門の医師に相談を 頚椎症性神経根症とは、頚椎の形状変化によって神経根が圧迫され、手指のしびれや肩から腕にかけて痛みが発生する病気です。40代、50代以降の中高年によく見られます。 頚椎症性神経根症はほとんどの場合、3カ月ほどで症状が改善されます。治療は保存療法がメインで、頚椎カラーの装着や、ロキソニンなどの痛み止めの服用、リハビリを実施します。 日常生活の中でも頚椎に負担をかけない工夫が必要です。ずっと下を向く、もしくは上を向くような姿勢は避けましょう。 寝る際の姿勢も重要です。うつぶせ寝や腕を枕にして横を向いて寝ると頚椎に負担がかかります。仰向けで寝苦しいと感じる場合は枕が合っていない可能性があるため、自身の高さに合った枕を選びましょう。 数カ月経っても症状が良くならない、痛みがひどくなる場合は手術療法も検討されます。 手術を避けたい方には、再生医療という選択肢もあります。再生医療について気になる点などございましたら、お気軽にご相談ください。 治療においては医師と十分に相談し、自分自身に合った治療法を選択しましょう。 参考文献 (文献1) 頚椎症性神経根症(椎間板ヘルニア含む)の 外科治療に関する指針│脊髄外科
2025.07.31 -
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寝違えによる首や肩の痛みは、多くの人が経験する身近な症状です。朝起きたときの突然の痛みに困っているものの、すぐに医療機関を受診できない場合もあるでしょう。 そんなときに手軽にできる対処法の一つが湿布の使用です。 ただし、湿布を使う際は適切な使い方を理解し、やってはいけない行為を避ける必要があります。 本記事では、寝違えで湿布の使用が効果的なのかを、正しい使い方やNGな行為などとともに解説します。 ぜひ参考にして、つらい寝違えの症状を適切にケアしていきましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 長期化して治らない痛みやしびれなどお悩みの症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寝違えに効果的な湿布の使い分け 起床した際に見舞われる首や肩の痛みである寝違えになった際、湿布は効果的な対処法の1つです。ただし、湿布を効果的に使うには、タイミングに応じて使い分ける必要があります。 急性期と慢性期の湿布の使い分けについて解説します。 【急性期】冷湿布などで患部を冷やす 強い痛みや炎症のような症状が出ている急性期の場合は、冷湿布などを使って患部を冷やすのがおすすめです。 寝違えの強い症状が出ている間は、患部付近の筋肉で痛みや炎症が起きています。このため、冷湿布を貼って症状を和らげる方法が一般的です。 冷湿布に消炎鎮痛成分が含まれている場合、成分が皮膚から吸収されることで症状の緩和が期待できます。ただし、冷やしすぎは逆に筋肉の緊張や血行の悪化をもたらすため、湿布の貼りっぱなしは避けましょう。 【慢性期】温湿布など患部を温める方法に切り替え 寝違えの症状が和らいだ後の慢性期に入ったら、温湿布などを活用して患部を温める方法に切り替えます。炎症が落ち着いた後は、逆に筋肉が固まるケースがあるためです。 症状が緩和した段階で温湿布を使えば、温熱によって血行が促進されるとともに筋肉の柔軟性が高められ、寝違えの再発を予防できます。 寝違えて湿布を使う際にやってはいけないNG行為 寝違えの対処法で湿布は効果が期待できるものの、いくつかやってはいけない行為があるため、注意が必要です。中でも以下のような行為は避けてください。 患部に多くの湿布を貼る 急性期に温湿布を使う 皮膚に異常がある場所に貼る 妊婦や子供の湿布使用 患部に多くの湿布を貼る できるだけ早く寝違えを治すために、患部に多くの湿布を貼るのは止めておきましょう。湿布には消炎鎮痛成分が含まれていて、貼るだけで薬剤のような効果を発揮するためです。 患部に多く貼った場合、多くの成分が皮膚を通じて浸透する分、体調に悪影響を及ぼす場合があります。種類にもよりますが、とくに大きいサイズであれば、多くても2、3枚程度の使用に留めるべきです。湿布は用法・用量を守って使いましょう。 急性期に温湿布を使う 温湿布は寝違え直後の急性期に使ってはいけません。急性期は寝違えの症状が強く出ているため、温湿布で温めると血行が促進されてかえって症状を悪化させるためです。 基本的には「急性期は冷湿布、慢性期は温湿布」と使い分ける必要があります。なお、冷湿布も長時間の使用は患部を冷やしすぎてしまうため、避けるべきです。長くても1時間程度ではがしましょう。 皮膚に異常がある場所に貼る 肌荒れやかぶれなど皮膚に異常がある場所に湿布を貼ることもNG行為です。肌荒れなどが見られる部分に直接湿布を貼った場合、湿布に含まれる成分の影響で皮膚の異常な状態がより悪化しかねません。 寝違えで痛む部位に肌荒れなどが見られるときは、少し離れた異常のないところに湿布を貼りましょう。 妊婦や子供の湿布使用 妊婦や子供の場合、寝違えがあっても湿布の使用は避けてください。 妊婦が湿布を使用すると、湿布に含まれる非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の成分が胎児に影響を与える可能性があります。また、子供に関しても、種類によって15歳未満であれば使用が禁止されている湿布もあります。 妊婦や子供の場合は湿布を慎重に使う必要があるため、どうしても使わなければいけないときは医師へ相談してください。 寝違えても湿布で治らないときの対処法 寝違えで湿布を使ってもなかなか治らないときは、湿布以外の対処法を試す必要があります。以下の方法と湿布を組み合わせた活用が大切です。 患部を安静にして過ごす 痛みが和らいだらストレッチ 患部を安静にして過ごす 患部が強く痛む状態が続いている場合は、患部を安静にして過ごします。症状が強く出ている時期は「急性期」に当たるため、あまり患部に刺激を与えることは避けるべきです。 この時期は冷たい湿布で患部を冷やすほか、楽な姿勢で患部を動かさないようにしましょう。「症状が強い状態が続くから」と、もみほぐしたりマッサージしたりすると、かえって症状が悪化します。 湿布を使いながら安静にしていても症状が続くようでしたら、無理せずに医療機関で専門医の診察を受けましょう。 痛みが和らいだらストレッチ 症状が落ち着いて慢性期に入ったら、温湿布のほかにストレッチを取り入れるのも一つの方法です。慢性期にはストレッチなどで患部を温めて血行の改善や筋肉の柔軟性の回復を図ることで、痛みの改善が期待できます。 痛みが和らいで間もないときは、首を無理のない範囲で動かすストレッチが向いています。以下のようなストレッチを試してみてください。 【胸の前のストレッチ】 両手を背中の後ろ側で組む 両肘を後ろに伸ばしながら、胸を前に突き出す 元に戻した後で、上記の動きを繰り返す 【広背筋のストレッチ】 両手を組んだ状態で両腕を上に伸ばす(座ったままでOK) 上の状態を維持しつつ左右どちらかに脇腹を伸ばすように傾ける 元に戻り1・2の方法を繰り返す(反対側に倒してもOK) 【首後面ストレッチ】 頭の後ろで両手を組む 両手で首をぐっと抑えながら、後面を伸ばしていく(呼吸は止めない) 元の姿勢に戻し、上記のやり方を繰り返す 寝違えが治らずお悩みの方には、以下の記事も参考になります。 寝違えを繰り返さないための予防法 辛い寝違えを繰り返さないようにするには、日頃から予防に取り組むことが大切です。以下の予防法があります。 予防法 概要 パソコンやスマホの長時間利用を避ける ・1時間に1度などとこまめに休憩を入れる ・休憩時間中にストレッチするのがおすすめ 入浴の見直し 冷やしすぎると筋肉の柔軟性が下がって、寝違えのリスクが高まる 体を冷やしすぎない ・できる限り湯船につかる ・就寝の2~3時間前までに入浴する お酒を飲みすぎない お酒は血流を悪くする分、寝違えのリスクを高める 睡眠環境を見直す ・枕は適度の高さや硬さのものを選ぶ ・ベッドマットや敷布団は硬さのあるものに ・ソファや椅子など布団以外の場所で寝ない 腕を使った運動・首や肩のストレッチ 血行の促進や筋肉の柔軟性の向上で寝違えのリスクを下げられる 上記の方法は、いずれも首や肩の筋肉の柔軟性を維持したり、血行を改善したりする点で寝違えの予防が期待できます。 まとめ|寝違えでは湿布を適切に使おう 寝違えに悩まされている場合、湿布は有効な対処法のひとつです。ただし、症状が強く出ているときは冷たい湿布を、症状が落ち着いた際には温湿布と、状況に合わせて適切に使う必要があります。 一方で湿布を使うときは、多く貼りすぎたり皮膚に異常のある部分に使用するなどのNG行為もある点にも注意しましょう。湿布だけで症状が改善しない場合は、安静にして症状が治まってきたらストレッチをするなど、他の方法もあります。 適切に湿布を使用して、寝違えの改善にお役立てください。 寝違えと湿布に関してよくある質問 湿布で寝違えが治らないときはどうする? 湿布で寝違えがなかなか治らないときは、症状が強ければ安静にしながら様子を見ましょう。それでも改善が見られない場合は医療機関の受診が必要です。 寝違えたときにおすすめの市販の湿布は? 寝違えて間もなく、強く痛むときにおすすめの市販の冷湿布に、「ロキソニンSテープ」や「ボルタレンEXテープ」などが挙げられます。両方とも1日1枚で効果が持続するとともに、肌にも優しいことで定評がある市販薬です。 症状が落ち着いてきた際に役に立つ温湿布の場合は、「フェイタスシップ温感」や「サロンパスEX」がおすすめできます。両方とも血行の促進が期待できるとともに、「サロンパスEX」は匂いが強くない点も魅力です。 首の寝違えで湿布を貼ってはいけない場所は? 首でも肌荒れやかぶれなど肌に異常が見られる部分には、湿布を貼ってはいけません。寝違えに使う湿布には薬剤が含まれているため、肌に異常が見られる部分に貼ると、肌荒れなどが治りにくくなります。 「首に湿布は危険」というのは本当? 基本的に首に湿布を貼る行為は危険ではありません。ただし、肌に異常がある部分に貼ったり、何枚も貼ったりするやり方は体調の悪化をもたらすことがあるため、避けましょう。
2025.07.31 -
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寝違えといえば、朝起きたときに首や肩が痛むイメージがあるものの、背中が痛むケースもあります。寝違えによる背中の痛みを感じると、首や肩の寝違えと同様に生活にも支障をきたすため、原因や対処法を知っていると便利です。 一方でやってはいけない対処法や予防法も理解しておくと、今後寝違えによる背中の痛みに備える意味でも役に立ちます。 本記事では、寝違えによる背中の痛みについて、ぎっくり背中との違いや治し方・予防法とともに解説します。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 突然の背中の痛みやしびれなどの症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寝違えらしき背中の痛みは「ぎっくり背中」? 日常生活の中で、急に背中が寝違えのように痛むことがあります。この突然背中を襲う寝違えのような痛みは、「ぎっくり背中」の可能性があるため、注意が必要です。 ぎっくり背中は、ぎっくり腰と同様に急性の筋肉や筋膜の損傷で、正式には「筋・筋膜性疼痛症候群」と呼ばれます。 背中を巻き込む急な動きや姿勢の悪さ、ストレスの蓄積などが原因で背中の筋肉や筋膜に損傷や炎症をもたらすのが特徴です。睡眠不足が原因で生じることもあるため、背中の寝違えと混同される場合もあります。 「寝違え」と「ぎっくり背中」の違い 寝違えとぎっくり背中はよく似ているため、正確な違いの理解が大切です。両者には以下のような違いがあります。 寝違え ぎっくり背中 発生部位 首や肩が中心 背中 原因 睡眠中の不自然な姿勢 背中に強い負荷をかける急な動きや自律神経の乱れ(ストレス)、姿勢の悪さ 症状 目覚めたときの首や肩の痛み 背中の筋肉の緊張や炎症による痛み 発症する部位は首や肩であるか、背中であるかで明確に異なります。加えて、原因も寝違えが睡眠中の不自然な姿勢である一方、ぎっくり背中は急な動きや自律神経の乱れなどが主なものです。 寝違えで背中が痛む原因 寝違えによる背中の痛みの主な原因とされているものは、以下のとおりです。 急な動作による筋肉への過度な負担 不適切な姿勢による筋肉の緊張 水分不足や睡眠不足 自律神経の乱れ 内臓疾患の可能性 急な動作による筋肉への過度な負担 寝違えによる背中の痛みは、いきなり重い物を持つなどの急な動作をきっかけに生じることがあります。急な動作で背中の筋肉や筋膜に負担がかかり、それが解消されない状態で睡眠環境の悪さをきっかけに寝違えで背中が痛む流れです。 前日などに慣れない肉体労働やスポーツで急に体を動かすなどして、筋肉の緊張や微細な損傷、関節周辺の炎症が生じることが原因と考えられます。急な動作で違和感を感じたら、なるべく早めに医療機関で適切な処置を受けることが大切です。 不適切な姿勢による筋肉の緊張 長時間に及ぶ不適切な姿勢による筋肉の緊張も、寝違えによる背中の痛みを引き起こすことがあります。猫背のような不適切な姿勢が長時間続くと、重い頭を支える首や背中の筋肉に負担がかかるためです。とくに、パソコンでの作業やスマホでのコミュニケーション・ゲームが日常的な方は要注意です。 首や背中の筋肉に負担がかかると筋肉は常に緊張し、血流の悪化や筋肉の柔軟性の低下を招きます。柔軟性の低下によって筋肉の緊張が続く分、寝違えが起こるリスクが高まり、背中まで痛むケースも増えます。 水分不足や睡眠不足 水分や睡眠が足りていない場合も、寝違えで背中が痛む原因です。水分を十分にとっていないと、血管中の血液の粘度が上がり、血流が悪くなります。血流の悪化で首や背中の筋肉に十分な血液がいきわたらないと、筋肉が硬くなって緊張し、不自然な寝方を機に寝違えを引き起こす流れです。 睡眠不足も自律神経が乱れて、交感神経が活発に動いている状態であるため、神経や筋肉にも緊張を強います。緊張が続いた結果、首や背中の筋肉が硬くなり、寝違えを起こしやすくなる仕組みです。 自律神経の乱れ|息苦しい症状も ストレスなどによる自律神経の乱れも、寝違えで背中が痛む要因になります。仕事や人間関係などで継続的にストレスにさらされると、自律神経が乱れて緊張状態になるためです。しかも自律神経が大きく乱れると、呼吸が浅くなって息苦しさまで感じます。 この緊張状態は筋肉の柔軟性が低下する原因でもあり、朝起きたときに寝違えによって背中まで痛むような症状を引き起こすことがあります。 背中右側の寝違えによる痛みは内臓疾患の可能性も 背中の右側の寝違えによる痛みは、単なる背中の筋肉の痛みだけではなく、内臓疾患の可能性もあります。 背中の右側に生じる痛みは、寝違えなどによる筋肉の炎症や緊張が原因であることが多い一方で、胆のうや腎臓などの内臓疾患による関連痛の可能性もあります。 これは内臓体性反射と呼ばれるメカニズムにより、内臓の異常が神経を介して背中の筋肉や皮膚に痛みとして現れる現象です。 背中右側の筋肉に違和感を覚えるときは、整形外科だけでなく消化器科の受診をおすすめします。 寝違えによる背中の痛みの治し方 寝違えで背中が痛む場合、以下の治し方があります。 急性期は湿布や保冷材で冷やす 慢性期は温湿布や入浴などの温熱療法 痛みを和らげるストレッチ 痛みが長期化する時は医療機関を受診 症状の時期に応じて適切な対処法が異なるため、以下で見ていきましょう。 急性期は湿布や保冷材で冷やす 寝違えの症状が強く出ている急性期であれば、患部をなるべく動かさず安静にします。その際になるべく楽な姿勢で過ごすのがおすすめです。 加えて、湿布や保冷剤を使って患部を冷やします。寝違えの急性期は筋肉で炎症が出ている時期であるため、一度につき15分から20分程度を目安に冷やしましょう。 ただし湿布などで患部を冷やしすぎると、さらに血流が悪くなって筋肉が硬まるケースがあります。冷やす時間には十分な注意が必要です。 慢性期は温湿布や入浴などの温熱療法 寝違えの症状が落ち着く慢性期に入ったら、温湿布や入浴などによる温熱療法で対応します。慢性期になって炎症が落ち着くと、患部付近を温めることで血行を改善し、筋肉の柔軟性を回復させられることが期待されるためです。 なお、温湿布がない場合は温めたタオルなどを代用する方法もあります。また入浴は、シャワーではなく湯船に浸かるとより効果的です。 痛みを和らげるストレッチ 寝違えによる背中の痛みは、ストレッチでも緩和が期待できます。ただしストレッチのタイミングは、ある程度痛みが和らいできた時期が適切です。 症状が落ち着いてきたころのストレッチは、首から背中にかけての筋肉をほぐし、血行を改善して柔軟性を高める効果があるとされます。具体的なストレッチ法は以下のとおりです。 【胸を開くストレッチ】 背中側で両手の指を組み、頭が後ろ側に倒す 口からゆっくりと息を吐きながら、両腕を後ろに引いていく 元に戻して1と2の動きを繰り返す 【僧帽筋のストレッチ】 両手を身体の前で組んだ状態で、肘はまっすぐ前に伸ばす 1の状態から背中を少しずつ曲げ、背中の筋肉を伸ばす(伸びきるところまで) 体を元に戻した後、1と2の動きを繰り返す 痛みが長期化する時は医療機関を受診 上記で紹介した対処法を試しても痛みが持続する場合は、無理せずに医療機関を受診してください。寝違えによる背中の痛みは、通常であれば2〜3日程度で落ち着き、1週間経つころまでには症状が改善されるケースが多く見られます。 しかし、3日以上過ぎて強い痛みが続くときや、頭痛などの別の症状まであるときは、専門医の診察が欠かせません。他の疾患の可能性も考えられるため、早いうちに病院に行きましょう。 寝違えで背中が痛いときにやってはいけないこと 寝違えで背中が痛いときの対処法には、やってはいけないこともいくつかあります。以下の対処法はNGとされているため、寝違えで痛むときは避けましょう。 無理に背中を動かすこと 急性期に体を温める 無理に背中を動かすこと 寝違えで背中が痛む時期には、無理に背中を動かさないようにします。寝違えの急性期は、患部の安静に努めることが推奨されるためです。 強く痛むにもかかわらず、仕事やスポーツで無理に背中を動かすと、炎症が発生している部分が拡大し、さらに症状を悪化させます。このため、症状が落ち着くまでは極力背中を動かさずに安静に過ごすことが大切です。 なお、症状を少しでも何とかするための背中のもみほぐしや伸ばしもおすすめできません。もみほぐしや伸ばしも無理に動かす場合と同じく、炎症の部位を広げる恐れがあります。 急性期に体を温める 急性期の場合、体を温める行為もNGです。急性期は炎症が起きている状態であるため、この時期に患部を温めると血行が良くなる分、炎症の部位がさらに広がり、痛みもより増幅されます。 強く痛む状態が続いている間は、温めるのではなく湿布などで冷やすのが適切とされる方法です。入浴も湯船につかるのではなく、シャワーで軽く済ませる程度に留めましょう。 背中の寝違えを予防する方法 背中の寝違えの予防のために、日常生活でできることはいろいろとあります。代表的な予防法は次のとおりです。 適切な姿勢を心掛ける 運動やストレッチの習慣を取り入れる 寝具の見直しなど睡眠環境の改善 十分な水分補給 日頃からこれらの予防法を心掛けて、背中の寝違えが起きないようにしましょう。 適切な姿勢を心掛ける 日常生活や仕事のなかで適切な姿勢を心掛けることは、背中の寝違えを防ぐ大切な一歩です。顎を引いて背中をしっかり伸ばす姿勢を意識すると、猫背のような首から背中の筋肉に緊張を強いる状態を緩和できます。 日常生活で適切な姿勢を維持するには、パソコンやスマホの使い方を工夫するのもおすすめです。パソコンを使ったデスクワークの際に机や椅子の高さを調節したり、スマホの操作中に休憩を取り入れたりするなどの方法があります。 適切な姿勢を意識すれば、首や背中の筋肉への負担を減らせるため、寝違えのリスクも下げられます。 運動やストレッチの習慣を取り入れる 背中の寝違えを防ぐには、運動やストレッチの習慣も有効な手段です。運動やストレッチで背中を動かすクセを付けておくと、背中付近の血行を維持し筋肉の柔軟性を高められる効果が期待できます。 とくに運動の習慣がない方や仕事がデスクワークの方は、同じ姿勢で固定されるケースが多いため、なおさらストレッチなどを心掛けることが大切です。こまめに休憩を挟んだ上で、休憩時間中に背中を伸ばしたり腕を回したりするだけでも、筋肉の柔軟性を高められます。 寝具の見直しなど睡眠環境の改善 寝違えは寝る姿勢や睡眠環境の悪さがきっかけで発生するため、睡眠環境の改善は寝違えの予防に欠かせません。 睡眠環境の改善には、寝具や寝る姿勢の見直しがおすすめです。寝具の場合、とくに適切な枕を選ぶ必要があります。枕の高さや硬さが体に合っていないと、寝違えを繰り返し発症する可能性があるためです。 頭が沈みすぎず寝返りが楽に打てる適度な硬さで背骨が緩やかなS字カーブになるくらいの高さの枕が理想とされています。加えてマットレスも、自分の体が沈み込むことなく、しっかり支えられる程度の硬さが選ぶポイントです。 寝具のほか、寝る姿勢も重要な要素です。寝る際には、必ず布団に入って仰向けの姿勢で寝ます。ソファなど布団以外の場所で寝ると、首や背中の筋肉に負担がかかるため、避けるべきです。 十分な水分補給 水分を十分にとることも寝違えの予防に役立ちます。水分が不足すると、ドロドロした血液が流れる分、血流が悪化するためです。血流の悪化は筋肉の柔軟性の低下をもたらす分、寝違えの原因になります。 このため、十分な水分補給は、筋肉の柔軟性や血流の維持に欠かせません。就寝の1時間から30分前にはコップ1~2杯程度の水を飲む習慣をつけると良いでしょう。 背中の痛みは脊髄梗塞の可能性も!注意したい症状 背中の痛みだけではなく、しびれまで感じる場合は脊髄梗塞の可能性もあります。 脊髄梗塞は脊髄に達する血管がなんらかの理由で詰まることで発症する疾患です。突然の背中の痛み・しびれや両手足に力が入らなくなる状況、排便障害が主な症状で、重篤な場合は歩行が困難になることもあります。 脊髄梗塞の主な原因は、脊髄動脈の疾患や血管の損傷です。しかし、長時間同じ姿勢でいる生活習慣や水分不足によって血栓ができ、脊髄動脈を塞いで発症するケースもあります。とくに長時間のデスクワークに携わる方は、注意が必要です。 脊髄梗塞の治療法の選択肢として、リハビリや手術、再生医療などが挙げられます。再生医療には、患者様ご自身の幹細胞を採取・培養した細胞を脊髄に直接投与する「幹細胞治療」があります。 当院「リペアセルクリニック」では、脊髄梗塞に対する再生医療を行っています。脊髄梗塞でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 まとめ|寝違えで背中が痛いときは無理に動かさずに適切な対処をしよう! 首や肩で症状が見られるイメージの強い寝違えは、背中の痛みまで発症するケースもあります。日頃の不適切な姿勢や自律神経の乱れなどが原因で睡眠中に寝違えることもあるため、注意が必要です。 寝違えで背中を痛めたときは、安静にしながらで対応しましょう。そして、症状が落ち着いたところでストレッチや入浴などで体を温めるのがポイントです。ただし、背中が強く痛む状態が長く続くときは、医療機関の受診をおすすめします。 なお、突然の背中の痛みやしびれの場合、脊髄梗塞が疑われます。脊髄梗塞では再生医療による治療の選択肢もあるため、詳しく知りたい方は当院「リペアセルクリニック」の公式LINEにご登録ください。再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。 寝違えによる背中の痛みに関してよくある質問 通常の背中の寝違えの治し方は?何日で治る? 通常の背中の寝違えは、数日から1週間程度で治るのが一般的とされます。寝違えを治すには、症状が強く出ている間は安静に過ごしつつ、冷たい湿布やアイスパックなどで患部を冷やすことが大切です。 症状が落ち着いたら、今度は温湿布の活用や入浴、軽めのストレッチなどで患部を温めます。患部を温めれば、血行が促進されて筋肉も柔軟性を取り戻し、症状も消えていきます。 背中の寝違えが治らない原因は? 背中の寝違えが治らない原因は、主に以下のものです。 背中付近の関節が固まっている 元から背中にこりがある 寝違えがあるにもかかわらず放置している 頚椎椎間板ヘルニアなど別の病気の疑いがある 寝違えは適切に対処すれば、長くても1週間程度で治るケースが多く見られます。症状が改善されない場合は、整形外科で専門医の診察を受けることが大切です。 背中の寝違えで激痛は来ますか? 背中の寝違えで激痛に見舞われた場合、「ぎっくり背中」の疑いがあります。ぎっくり背中は仕事やスポーツなどでの急な動きで背中の筋肉や筋膜が損傷し、強い痛みに襲われます。 ぎっくり背中になったときの対処法は、基本的に背中の寝違えと同じです。強く痛む間は安静にしながら患部を冷やし、痛みが和らいだら患部を温めて回復を図ります。もし、痛みが持続する場合は医療機関を受診しましょう。 ぎっくり背中は何日で治る? ぎっくり背中は通常5日から2週間程度で治るケースが多く見られます。症状の強い炎症期は、寝違えと同じく3日程度です。 ただ、辛い症状が長引く場合は、無理せず医療機関を受診しましょう。
2025.07.31 -
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数日前に発症した寝違えがなかなか治らず、不安を抱いている方もいるのではないのでしょうか。 寝違えは対処法が不適切だったり、発症後も姿勢などが悪かったりすると治りにくいケースがあります。また、寝違えが長期化している場合、何らかの病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。 本記事では、寝違えがなかなか治らない原因や対処法を解説します。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 長期化する痛みなど気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寝違えがなかなか治らない原因 眠りから目が覚めると首や肩が痛い、そんな寝違えがなかなか治らない原因としては、主に以下の5つが考えられます。 筋肉の炎症が長期化している 不適切な対処法で症状を悪化させている 睡眠環境と姿勢習慣が回復を妨げている 慢性的な首・肩のコリが影響している 寝違えではないヘルニアなど疾患の可能性 寝違えは通常、2日から3日程度で収まるものですが、症状によっては何日も続くケースがあります。 寝違えがなかなか治らず悩んでいる方は、これらの原因に当てはまるかをご確認ください。 筋肉の炎症が長期化している 寝違えが治りにくい原因として、筋肉の炎症の長期化が挙げられます。 寝違えは首や肩などの関節や筋肉に発症する炎症で、通常であれば3日目に症状のピークを迎えるのが特徴です。 しかし、3日目を過ぎても強く痛む状態が続くときは、炎症が起きてからもなお、患部を無理に動かすなどしていることが原因と考えられます。このような場合、痛みが引くどころかさらに症状が悪化します。 もし、筋肉の炎症の長期化を防ぎたいのであれば、極力安静にしながら適切な処置をおこなうことが大切です。 不適切な対処法で症状を悪化させている 対処法が不適切であるために、寝違えの症状を悪化させている可能性もあります。 寝違えの対処法として、温冷処置や適度なマッサージ・ストレッチなどがありますが、やり方を間違えると逆効果になりかねません。 温冷処置については、症状が発生した直後の急性期(発症から2〜3日間)には冷たい湿布などで処置するのが適切です。急性期に温湿布を使用するのは適切ではありません。 血行が良くなることで、かえって炎症がひどくなります。強く痛むときのストレッチやマッサージも、患部への刺激による血行の改善で、同じく症状を悪化させるやり方です。 睡眠環境と姿勢習慣が回復を妨げている 寝違えがなかなか治らないときは、睡眠環境や姿勢習慣に原因が隠れていることがあります。 体型に合っていない枕やマットレス、首や足を十分に伸ばせないソファなどでの睡眠は、体に負担がかかります。また、デスクワークやパソコン・スマホ使用による不良姿勢も回復を妨げる原因です。 どちらも猫背で下側を向いてばかりの状態で首や肩に負担がかかり続けるため、寝違えをより悪化させます。寝違えの症状が3日過ぎても続くときは、睡眠環境の見直しも欠かせません。 慢性的な首・肩のコリが影響している すでに慢性的な首や肩のコリが、寝違えの長期化をもたらすこともあります。この点もデスクワークなどでの姿勢の悪さが関わっていて、悪い姿勢で重い頭を支える首や肩に過大な負担がかかっている状態です。 このような状態では首や肩の筋肉も常に緊張する分、血行が悪化したり筋肉が硬くなったりして、寝違えに対する回復力が下がります。 寝違えではないヘルニアなど疾患の可能性 寝違えではなく、頚椎椎間板ヘルニアのような疾患で痛みが長引いているケースも考えられます。首や肩の痛みが治らないときに疑われる病気や症状は、以下のとおりです。 病名 主な症状 頚椎椎間板ヘルニア 首の骨の間にある椎間板による神経圧迫で痛みやしびれが発生 頚椎症性神経根症 見上げる姿勢の際に、肩から腕にかけて痛みやしびれの症状 頚椎症性脊髄症 手による細かい動きや歩行に支障をきたす・手足のしびれ 転移性脊椎腫瘍 がん細胞による脊椎の損傷や骨折、麻痺 脊髄腫瘍 腫瘍による脊髄の圧迫でしびれや感覚障害、筋力低下 強直性脊髄炎 脊椎や骨盤の関節の痛み(若年者に多い) 関節リウマチ 関節の慢性炎症(貧血や倦怠感、微熱の症状が起こることも) むちうち症 自動車事故時の首への強い衝撃による、首や背中の痛み なかなか寝違えが改善されないときは、上記の病気の疑いもあるため、医療機関の受診をおすすめします。 寝違えが治らないときの対処法 寝違えがなかなか治らないときの対処法に、以下の方法があります。 発症後の安静・アイシング 湿布・薬剤による痛み軽減 血行促進のための温熱療法 薬剤の服用・注射 痛みが引かないときは医療機関へ 発症後は安静・アイシング 寝違えを発症して強い痛みが続くようであれば、安静とアイシングがポイントです。首や肩の患部は極力動かさずに、保冷材や冷たい湿布を使って炎症を抑えます。安静にしてアイシングを行うことで、それ以上の炎症の悪化を防げます。 ただし、長時間のアイシングは逆に血行不良などになるため、注意が必要です。冷やす時間は長くても1回15分程度までにして、様子を見ましょう。 湿布・薬剤による痛み軽減 湿布や薬剤を使って痛みを軽減する方法も、寝違えが治らないときの対処法の一つです。湿布は冷やす必要があるときはフェルビナクを配合したものを、温める必要があるときはカプサイシンを配合したものが向いています。 薬剤については、症状がひどくないときは、炎症を和らげる非ステロイド性抗炎症薬のような市販薬がおすすめです。しかし症状が強いときには、医療機関を受診したうえで、医師が処方する強い症状に効果が見込める薬剤を使う必要があります。 血行促進のための温熱療法 血行促進のための温熱療法も、なかなか治らない寝違えの症状を落ち着かせるうえでよく使われる方法です。 発症直後は冷たい湿布などでのアイシングを使いますが、炎症が落ち着いてきたら逆に患部を温めるのが有効とされます。患部を温めると、血行改善や筋肉の緊張緩和のほか、寝違えの再発の防止も期待できるためです。 温熱療法の主な方法として、温湿布の活用や入浴が挙げられます。とくに入浴は、38度から40度程度のぬるいお湯に20分から30分程度浸かるのがおすすめです。 薬剤の服用・注射 医療機関での治療法としては、薬剤の服用や注射を用いる場合もあります。内服薬(飲み薬)であれば、鎮痛消炎薬や筋弛緩薬のほか、筋肉のけいれんを和らげるのによく使われる漢方薬を活用するのが一般的です。 もし寝違えで強く痛むときは、患部付近の筋肉や筋膜に局所麻酔を注射して、症状を和らげる方法もあります。 痛みが引かないときは医療機関へ アイシングや湿布などで症状が改善されないときは、早めに医療機関を受診しましょう。数日たっても症状が改善しない場合、寝違えにしては深刻な事態が発生しているか、上記で触れた疾患の疑いがあります。 そのため、専門医による診察を受けたうえで、根本的な治療に取り組むことがおすすめです。 寝違えが治らない・長引かせるNG行動 寝違えがなかなか治らない場合でも、してはいけないNG行動がいくつかあります。 以下のような対処法は、寝違えが治らないだけでなく、かえって症状を長引かせてしまうリスクがあるため控えましょう。 痛む部位を無理に動かす 患部のマッサージ 炎症期に温める 痛みを我慢して活動を続ける 痛む部位を無理に動かす 寝違えになった際には、痛む部位を無理に動かすことは禁物です。無理やり動かすと炎症ができている部位が広がるだけでなく、寝違えを克服するまでに余計時間がかかります。 とくに強く痛む急性期は、なるべく患部に負担をかけるような動きは避け、じっとしていることがおすすめです。 患部のマッサージ 寝違えの症状を少しでも落ち着かせるための患部のマッサージも避ける必要があります。無理に動かす場合と同じく、損傷している部分が広がって回復が遅れる原因になるためです。 ただし、手や手首には寝違えに効果があるとされるツボがあるため、これらのツボを押すマッサージは対処法として問題はありません。 炎症期に温める 発症直後の炎症期に患部を温めることも、寝違えが治らない場合にやってはいけないことです。炎症期は患部で強く痛む状態にあるため、患部を温めると炎症がさらに悪化します。 痛みが強い間は、冷たい湿布や氷嚢を使って患部を冷やすのがおすすめです。加えて入浴も、短時間のシャワーに留めます。 痛みを我慢して活動を続ける 痛みを我慢しながらの仕事やスポーツなどの活動もNG行動の一つです。強い症状が現れている状態を放置した場合、日常的な活動を通じて症状がさらに悪化します。 仕事であればパソコン操作や作業中の悪い姿勢で、スポーツであれば急激な動きで炎症が悪化する場合もあるため、注意が必要です。強い痛みを感じるときは、無理せずなるべく安静にしながら患部を冷やすなどして対処しましょう。 寝違えを繰り返さない予防法 寝違えが治った後は再発を防ぐことが大切です。寝違えを予防するには、以下の方法があります。 適度な高さの枕を使う 就寝2~3時間前の入浴 日常生活で実践しやすいこれらの予防法について、それぞれ詳しく紹介します。 適度な高さの枕を使う 寝違えを予防するには、適度な高さや硬さの枕を選ぶことがポイントです。具体的には、寝ている間に寝返りを打った際に、頭が横に反れない程度の高さや硬さの枕が理想とされています。 就寝中に寝返りが打てないと、身体が沈み込んで首を動かせないため、特定の部位に圧力が集中します。その結果、朝起きたときに首などに寝違えが生じる仕組みです。このため、寝違えを防ぐには枕を体に合ったものに変えることが大切です。 就寝2~3時間前の入浴 入浴は寝違えの予防や再発防止に効果的ですが、入るタイミングは就寝の2~3時間前がおすすめです。 質の良い睡眠を得るためには、就寝時に深部体温(臓器部分の体温)が下がっている状態が理想的です。入浴には深部体温を上げてリラックス効果をもたらすメリットがあるため、就寝の2~3時間前に入浴することで、寝る頃には上がった深部体温が自然に下がり、スムーズな入眠につながります。 このようなリラックスした状態での睡眠は、寝違えの防止効果も期待できます。 まとめ|寝違えが治らないときは無理のない対処法で 寝違えがなかなか治らない場合、不適切な対処法や生活習慣の悪さなど、さまざまな方法が原因として考えられます。このため寝違えの症状が長引くときは、なるべく患部を安静にしながら、タイミングに応じた温冷療法など正しい対処法を活用するのが適切です。 ただし、正しい対処法を試しても症状が続くようであれば、深刻な疾患が関係している場合もあるため、医療機関を受診する必要があります。いずれにしても寝違えがなかなか治らないときは、無理せず早めに対処しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供や簡易オンライン診断を実施しております。気になる症状がある方は、公式LINEに登録してご確認ください。 寝違えが治らないときのよくある質問 寝違えをすぐ治すには? 寝違えを早く治すには、症状が強く出ているときは安静にしながら患部を湿布などで冷やし、症状が落ち着いてきたところで温湿布やマッサージなどで温めることがおすすめです。 寝違えが痛すぎて動けないときの対処法は? 寝違えで痛すぎて動けないときも、通常の寝違えへの対処法と同じく、基本的に安静にしつつ冷たい湿布などで患部を冷やすことが大切です。加えて痛みが強すぎる場合は、整形外科で専門医の診察を受ける必要もあります。 寝違えは何日程度で治る? 寝違えは3日から1週間程度で治るケースが多く見られます。なお、2〜3日目が症状のピークです。 痛みが長引く場合は、医療機関の受診をおすすめします。
2025.07.31 -
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「梨状筋症候群に効くストレッチ方法を知りたい」 「梨状筋症候群の悪化を防止したい」 梨状筋症候群は、適切なストレッチによって症状の緩和が可能な疾患です。ただし、効果を得るには、正しい方法と注意点を理解した上での実施が不可欠です。 本記事では、現役医師が自宅でできるストレッチ方法と悪化防止策を解説します。記事の最後には、梨状筋症候群のストレッチに関するよくある質問をまとめておりますので、ぜひ最後までご覧ください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状や再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 梨状筋症候群とストレッチの基礎知識 項目 内容 やり方 仰向けに寝て片足首を反対側の膝に乗せ、両手で太ももを抱えて体に引き寄せる キープ時間 お尻や太ももの筋肉が伸びていることを感じながら20~30秒保つ 回数・頻度 1日2回、30秒を3~5セットずつ両側で実施 ポイント 左右両方行い、バランスよくストレッチ 注意点 強いしびれや違和感が出たら中止し、呼吸を止めずリラックスして行う。症状が続く場合は医療機関へ 梨状筋症候群とは、お尻の奥にある梨状筋が硬くなることで、その下を通る坐骨神経を圧迫し、お尻から太もも、足にかけてしびれや違和感が出る症状です。 長時間のデスクワークや運転、運動不足が原因となりやすく、日常生活に支障をきたすこともあります。こうした症状の緩和には、梨状筋のストレッチが効果的です。筋肉の緊張をやさしくほぐすことで神経の圧迫を軽減しやすくなります。 ただし、無理な姿勢や過度な力で行うと逆に悪化する場合があるため、正しいやり方と注意点を知ることが重要です。 以下の記事では、梨状筋症候群の症状について詳しく解説しています。 梨状筋症候群を改善するためのストレッチ方法 ストレッチ方法 詳細 膝胸抱えストレッチ 仰向けで両膝を立て、片足を組んで太ももを胸へ引き寄せる動作 クロスボディ・ストレッチ(寝ながら膝を反対側に引く) 仰向けで片膝を立て、反対側の手で膝を体の反対側へ倒し、腰からお尻を伸ばす動作 プレッツェルストレッチ(ねじる動きを加えた仰向けストレッチ) 仰向けで片膝を立て、もう一方の足をその膝の上にクロスし、下の足を胸に引き寄せながら上半身をひねる動作 膝胸抱えストレッチは、仰向けで両膝を曲げた状態から、一方の足首を反対の膝に乗せ、両手で太ももを抱えて胸に引き寄せるストレッチです。クロスボディ・ストレッチは、仰向けで片膝を立て、反対側の手で膝を身体の反対側へ倒し、腰からお尻の筋肉を伸ばす方法です。 プレッツェルストレッチは、仰向けで片膝を立て、もう一方の足をその膝にかけ、下の足を胸に引き寄せながら上半身をひねって筋肉を伸ばすストレッチです。これらのストレッチは、いずれも無理をせず、負荷をかけすぎないように注意して行いましょう。 膝胸抱えストレッチ 手順 内容 1.仰向けで寝る マットやベッドなど硬すぎない平らな面に仰向けで寝て、両膝を軽く曲げて胸側にセット 2.ストレッチする脚の準備 片足首を反対側の膝の上に乗せ、「4」の形を作る 3.膝を胸に引き寄せる 両手でストレッチ対象脚の太ももを抱え、ゆっくり胸に引き寄せる(お尻から太もも外側が伸びていれば適切) 4.キープする そのまま30秒間維持。初めてや硬い場合は5秒から始め、慣れたら30秒まで延長 5.ゆっくり戻す 反動を使わず、ゆっくりと元の姿勢に戻す 6.反対側も同様に 同じ手順で反対の脚も行い、左右バランスを整える。各脚3回、1〜2セットが目安 膝胸抱えストレッチは、仰向けで片膝を胸に引き寄せることで、お尻の奥にある梨状筋をやさしく伸ばすストレッチです。梨状筋が硬くなると、すぐ下を通る坐骨神経を圧迫し、お尻や脚のしびれ・違和感の原因になります。 膝胸抱えストレッチは、筋肉の緊張がほぐれ、神経への圧迫がやわらぎやすくなります。仰向けで行うため身体への負担が少なく、自宅でも取り組めるのが特徴です。 毎日続けることで柔軟性が保たれ、再発予防にもつながります。呼吸を止めず、気持ちよく伸びている範囲で行いましょう。 クロスボディ・ストレッチ(寝ながら膝を反対側に引く) 手順 内容 1.仰向けに寝転ぶ 平らな床やマットの上に仰向けで寝て、両脚をまっすぐ伸ばし、背中を床につける 2.ストレッチする脚の準備 伸ばす側の膝を曲げ、足首を反対側の膝の外側に乗せ、「4」の形をつくる 3.膝を反対側に引き寄せ ストレッチする脚の膝を、反対側の肩または床方向にゆっくり引き寄せ、お尻〜股関節外側が伸びる位置まで 4.姿勢を安定させる 腰が浮かないようにし、肩・背中・足は床につけたまま安定させる 5.保持する 呼吸を止めずにゆっくりと30秒キープ。初めては15〜20秒からでもOK 6.ゆっくり戻す 無理なく脚を元の位置に戻し、仰向けの姿勢に戻る 7.反対側も同様に 反対側も同じ流れで実施。左右それぞれ1〜3セットが目安 クロスボディ・ストレッチは、仰向けで片膝を反対側の床へ倒し、腰から背中をねじる姿勢で行うストレッチです。梨状筋にやさしく伸張を与えることで、筋肉の緊張を緩和し、坐骨神経への圧迫を軽減します。 あわせて腰や股関節周辺の柔軟性も高まり、股関節の可動域改善にも効果があります。また、力任せに行わず、無理のない範囲で、じんわりと伸ばすことが重要です。30秒を目安に左右交互で行いましょう。動きがシンプルで継続しやすく、再発予防にもつながる実用的なストレッチです。 プレッツェルストレッチ(ねじる動きを加えた仰向けストレッチ) 手順 内容 1.仰向けに寝る 平らで少しクッション性のある床やマットに仰向けになり、両膝を軽く立てる 2.片足を交差する形にセット 伸ばす側の足首を反対側の膝上に乗せ、「4」の形を作る 3.両膝を胸に引き寄せる 両手で太ももまたはスネを支え、ゆっくり胸に引き寄せる。臀部〜股関節に伸びを感じる位置まで 4.ねじり動作を加える(オプション) 胸に引いたまま膝先を外側に軽く倒し、股関節側面をさらに伸ばす 5.そのまま保持 心地よい姿勢で30秒間キープ。初回は10〜15秒から始め、慣れたら30秒を目標に 6.ゆっくり戻す 無理せずゆっくり元に戻す 7.反対側も同様に実施 左右交互に、各脚2~3回ずつ実施 プレッツェルストレッチは、仰向けで足を組むように交差させ、両膝を胸に引き寄せながら股関節まわりをじっくり伸ばすストレッチです。このストレッチは、お尻から腰、背中まで広い範囲をじっくり伸ばし、梨状筋や股関節外旋筋(股関節を外側に回す筋肉)など深層筋の柔軟性を高めます。 筋肉の緊張をほぐすことで神経の圧迫が和らぎ、症状の改善や再発予防が期待できます。 【悪化を防ぐ】梨状筋症候群におけるストレッチの注意点 注意点 詳細 無理なくゆっくり伸ばして静かに実施する 強い力や反動を使わず、呼吸を止めずに心地よさを感じる範囲でストレッチ実施 しびれや違和感が出たら即中止し姿勢・頻度を見直す しびれや違和感が出た場合はすぐに中止し、無理のない姿勢や回数に調整 長時間の座位や負荷の高い運動を避けて日常生活でも神経圧迫に配慮する 長時間同じ姿勢や激しい運動を避け、こまめな体勢変更や適度な休憩で神経への負担軽減 梨状筋症候群のストレッチは、無理せずゆっくり行うことが大切です。強く引っ張ったり反動をつけず、呼吸を止めずに心地よく伸びる範囲で行いましょう。 ストレッチ中にしびれや違和感が出た場合はすぐに中止し、姿勢や回数を見直してください。また、長時間座り続けることや激しい運動を避けることも、神経への負担軽減に役立ちます。こまめに体勢を変え、日常生活でも神経への負担を軽減できるよう姿勢の調整が重要です。 梨状筋症候群とも関連が深い腰椎椎間板ヘルニアに対するストレッチ方法について詳しく解説しています。 無理なくゆっくり伸ばして静かに実施する 梨状筋症候群のストレッチは、無理せずゆっくり実施しましょう。強く引っ張ったり反動をつけず、呼吸を止めずに心地よく伸びる範囲で行います。 さらに、長時間同じ姿勢で座り続けることや激しい運動は避けましょう。神経への負担を減らすためには、こまめに体勢を変え、日常生活でも神経の圧迫に注意することが重要です。 しびれや違和感が出たら即中止し姿勢・頻度を見直す ストレッチ中にしびれや違和感が出た場合、即中止することが重要です。これは、梨状筋が過度に引っ張られることで坐骨神経が圧迫・刺激され、神経症状が悪化するリスクがあるためです。 無理に続けることで、神経炎や慢性化といった症状の悪化を招く可能性があります。また、同じ姿勢や片側ばかりに負荷をかけると筋バランスが崩れ、骨盤の傾き・左右差や姿勢不良の原因になります。異常を感じたら一度身体をリセットし、姿勢や頻度を見直すことが大切です。同じ症状が繰り返される場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。 長時間の座位や負荷の高い運動を避けて日常生活でも神経圧迫に配慮する 項目 内容 長時間の座位 梨状筋と坐骨神経への持続的圧迫。筋肉の硬直、血流悪化、神経刺激増加 座り姿勢の悪さ 骨盤の歪みや片側への負担増加。足組みや猫背による筋バランスの乱れ 高負荷・高強度運動 梨状筋の過剰使用や筋肥大による神経圧迫。炎症や症状悪化のリスク 姿勢リセットの工夫 1時間ごとに立ち上がり歩く、軽いストレッチで筋の圧迫と血流障害を予防 環境改善 クッションや立ちデスク活用、柔らかい座面で圧迫軽減。骨盤安定と負担分散 長時間の座り姿勢や負荷の高い運動は、梨状筋や坐骨神経に負担をかけ、症状を悪化させる原因となります。ストレッチの効果を高めるためには、日常生活でも姿勢や動作に配慮することが大切です。 1時間ごとに立ち上がって歩く、クッションを使って骨盤を安定させるなどの工夫で神経への圧迫を軽減できます。また、重い物を持ち上げる動作や急な運動も避け、無理のない範囲で身体を動かすことが再発予防にもつながります。 梨状筋症候群のストレッチ効果を高める補助ケア ストレッチ効果を高める補助ケア 詳細 身体を温める 入浴やホットパックで筋肉の血流促進、ストレッチ前の柔軟性向上 日常生活での姿勢を意識する 座り方や立ち姿勢の見直し、骨盤と股関節の安定維持 適切な栄養と水分補給 バランスの良い食事と十分な水分摂取による筋肉と神経の健康維持 ストレス管理 睡眠やリラクゼーションで自律神経の安定、筋緊張の緩和 梨状筋症候群のストレッチ効果を高めるには、日常の補助ケアが重要です。まず、入浴やホットパックで身体を温めることで血流が促進され、筋肉がほぐれやすくなり、ストレッチ前の柔軟性が向上します。 また、座り方や立ち姿勢を見直すことで骨盤や股関節の安定性が保たれ、筋肉や神経への余分な負担を防げます。さらに、バランスの取れた食事と十分な水分補給は、筋肉と神経の健康維持に欠かせません。 加えて、ストレスを溜めすぎないことも大切です。良質な睡眠と適度なリラクゼーションは、自律神経を整え、筋緊張の緩和に役立ちます。ストレッチと併せてこれらのケアを習慣にすることで、より効果的な改善と再発予防が期待できます。 身体を温める ストレッチ前に身体を温めると血流が促進され、筋肉がほぐれて柔軟性が高まります。入浴やホットパック、軽い運動などが効果的です。 とくに慢性期では、温熱療法により筋の緊張が和らぎ、動かしやすくなります。ただし、炎症が強い急性期は悪化の恐れがあるため冷却が適しています。症状に応じた使い分けが大切です。 日常生活での姿勢を意識する 梨状筋症候群の改善には、ストレッチに加えて日常の姿勢を意識することが重要です。長時間座り続けると梨状筋が圧迫されやすく、神経への負担が増します。 定期的に立ち上がることで血流が良くなり、筋肉の緊張が緩和します。背すじを伸ばし、骨盤を正しい位置に保つことで筋バランスが整い、機能の回復が促されます。良い姿勢を保つことでストレッチの効果が持続し、症状の予防や緩和につながるため、姿勢を意識することが大切です。 適切な栄養と水分補給 梨状筋症候群の改善には、栄養と水分補給が重要です。水分不足は神経や筋肉への血流を妨げ、酸素や栄養の供給が不足しやすくなります。これにより筋肉が硬くなり、ストレッチの効果が十分に得られなくなる恐れがあります。 たんぱく質、マグネシウム、ビタミンB群、オメガ-3脂肪酸などの栄養素は、筋肉の修復や神経機能の維持に欠かせません。さらに、十分な水分補給は、可動域の向上や筋肉の柔軟性を保つのに役立ちます。栄養と水分を適切に補うことで、ストレッチ効果が高まり、神経や筋の回復力もサポートされます。 ストレス管理 ストレスは筋肉のこわばりを引き起こし、梨状筋の緊張を慢性化させる原因です。自律神経が乱れて交感神経が優位になると、筋肉が緩みにくくなり、ストレッチの効果も期待しにくくなります。 ストレスを軽減することで筋肉がリラックスし、ストレッチによる柔軟性や効果の持続が期待でき、深呼吸や瞑想などのリラクゼーションは心の緊張を和らげ、ストレッチへの不安や抵抗感を減らすのに役立ちます。セルフケアを継続するためにも、日常的なストレス管理が大切です。 ストレッチで改善しない梨状筋症候群は医療機関を受診しよう 梨状筋症候群の症状は、ストレッチによって改善が期待できます。ストレッチを行う際には無理な力を加えず、しびれや違和感が出た場合は中止し、医療機関を受診することが大切です。 ストレッチで改善しない梨状筋症候群の症状は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、梨状筋症候群と関連する腰椎椎間板ヘルニアなどに対して、腰椎の回復を目的とした再生医療を選択肢のひとつとしてご案内しています。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 梨状筋症候群のストレッチに関するよくある質問 フォームローラーやテニスボールは使っても良い? フォームローラーやテニスボールは、梨状筋をやさしくほぐすセルフケアの補助道具として有効です。お尻の下に当てて体重をかけ、ゆっくり転がすことで深部の筋肉をほぐせます。 片側につき5分程度を目安に、場所を少しずつ変えて行いましょう。同じ部位を長時間刺激すると筋や骨を傷める恐れがあるため避けてください。違和感や炎症がある時は使用を控え、無理のない範囲で行うことが大切です。不安があれば医師に相談しましょう。 医療機関を受診する目安はどのような場合ですか? お尻から太ももにかけての違和感やしびれが数日以上続く、強くなる、または日常生活に支障が出る場合は整形外科を受診しましょう。 とくにセルフケアや市販薬で改善しない場合や、足に力が入らない・感覚が鈍いなどの神経症状がある場合も早急な受診が必要です。自己判断せず、医師の診断を受けることが大切です。
2025.07.31 -
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「交通事故が原因でむち打ちと診断され、湿布を処方された」 「湿布はどのように効くのだろうか?」 「早く治したいのだが、湿布で本当に治るのだろうか?」 むち打ちと診断された方の中には、このように感じている方もいると思います。 結論から申し上げますと、湿布は症状を和らげるものであり、根本的な回復のためには整形外科での治療が必要です。 本記事ではむち打ちに効く湿布や選び方、貼り方などについて解説します。 湿布を上手に活用しつつ、早い回復を目指すためにも、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 長期化する痛みなどお悩みの症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 むち打ちに効く湿布とは|成分と効果について むち打ちで処方される多くの湿布には、非ステロイド性抗炎症薬が含まれています。 非ステロイド系抗炎症薬には、体内で痛みを増強させる物質「プロスタグランジン」を生成する酵素を阻害する作用があります。この作用で、痛みを和らげたり炎症を鎮めたりします。(文献1) 非ステロイド系抗炎症薬としてあげられるのは、主に以下のとおりです。 ロキソニン ボルタレン モーラス インテバン MS温湿布 MS冷湿布 MS温湿布と冷湿布の違いは、含まれている成分です。温湿布にはトウガラシエキスが含まれており、冷湿布にはメントールが含まれています。 むち打ちにおける湿布の効果は痛みや炎症を和らげることであり、根本的な治療は難しいといえるでしょう。 むち打ち時の湿布の選び方 湿布は主に冷湿布と温湿布の2種類に分けられており、どちらを選ぶかは、患者の状況次第です。 冷湿布には、サリチル酸メチル、メントール、ハッカ油などの冷感成分が配合されており、事故や外傷の直後で腫れや熱が著しいときに使われます。 温湿布は、血行促進や温感作用を持つトウガラシエキスや、合成トウガラシのノニル酸ワニリルアミドなどが配合されています。そのため慢性的な痛みやこりがあるときに使われることが多いものです。 自分の症状に応じた湿布を処方してもらうためにも、医師の診察時には症状を正確に伝えましょう。 市販されている湿布を購入する場合は、薬剤師や登録販売者へ相談すると良いでしょう。 むち打ちに対する正しい湿布の貼り方 むち打ちで湿布を使用するときは、痛みや腫れ、こりといった症状が強い部位に直接貼りましょう。主な部位としては、首や肩、背中の上部などがあげられます。 正しい湿布の貼り方は、主に以下のとおりです。 貼る前に患部を清潔にして、汗や水分を拭きとる 傷や湿疹などがある部分を避けて貼る 湿布を皮膚に密着させるために、空気を抜きながら貼る 必要に応じて、テープや包帯などで固定する 湿布を貼る際の注意点 湿布を長時間貼る、もしくは同じ場所に貼り続けることは避けてください。皮膚のかぶれや赤みの原因になるためです。 決められた回数以上に湿布を貼らないことも大切です。必要以上に貼り過ぎると、湿布薬の成分が皮膚から吸収されて、内服薬同様の副作用が現れる可能性があります。 ロキソニン湿布の場合、お腹の痛みや不快感、吐き気といった消化器症状や皮膚のかゆみ、むくみなどの副作用が出現した事例があります。(文献2) 湿布を貼った部分を日光(紫外線)に当てることも避けてください。光線過敏症(日光に当たることで起こる皮膚炎)と呼ばれる副作用を起こす可能性があるためです。光線過敏症では、皮膚の赤みやかゆみ、水ぶくれなどの症状が現れます。予防するためには、長袖の服を着たり、サポーターを着用したりしましょう。 副作用と思われる症状が現れた場合は、すみやかに医師や薬剤師へ相談してください。 むち打ちにおける湿布以外の治療方法 むち打ちにおける湿布以外の治療方法は、急性期と慢性期で異なります。この章では、それぞれの時期に応じた治療法を紹介します。 急性期 外傷によりむち打ち症状が出てきたときは、まず整形外科を受診しましょう。正しい診断や治療のためにも、レントゲンやCT、MRIなどの検査が必要です。 また、交通事故で損害賠償を請求する場合は、医師の診断書が必要です。(文献3) 病院受診後は、できる限り首を安静にしてください。必要に応じて、頚椎カラーを使用する場合もあります。 痛みが強い場合は、医師から処方された鎮痛剤を内服しましょう。炎症が起きている可能性もあるため、首もしくは痛みのある部分を冷やして炎症を落ち着かせてください。 患部を冷やすときは、ビニール袋や氷のうに入れた氷、もしくは冷たいタオルを患部に当てると良いでしょう。 慢性期 慢性期にも痛みが続いている場合は、鎮痛剤の内服やブロック注射などで和らげます。 慢性期では、ストレッチや筋力トレーニングなどの理学療法にくわえ、物理療法が実施される場合もあります。 物理療法としてあげられるのは、主に以下のとおりです。 ホットパック 超音波療法 電気刺激療法 むち打ちの治療については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。 むち打ちは湿布と並行して医療機関での治療が必要 むち打ちで処方される湿布は、症状を和らげる対症療法の1つであり、湿布のみでは根本的な治療は難しいものです。 むち打ちは放置すると痛みが悪化したり、後遺症が残ったりする可能性もあります。そのため、医療機関で適切な治療を受けることが大切です。 痛みが長引く、痛みが強くなる、手足のしびれが出てきた、頭痛や吐き気が続くといった症状が続くときは、放置せずに再度病院を受診しましょう。 むち打ちでは、慢性的な経過をたどるケースも少なくありません。焦らず一歩ずつ回復を目指しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。湿布を貼り続けてもむち打ち症状が続くといったお悩みがある方は、お気軽にお問い合わせください。 むち打ちと湿布に関するよくある質問 むち打ちでやってはいけないことは何ですか? 主に以下の4点があげられます。 診察を受けずに放置する 外傷直後に首を温める 外傷直後に飲酒する 外傷直後にマッサージを受ける 外傷後、診察を受けずに放置すると、症状の悪化や慢性化を招く、後遺症が残るといったリスクがあります。必ず医療機関を受診しましょう。 外傷直後は炎症を起こしており、温めることで悪化し、痛みが強まる可能性があります。冷やして炎症をおさえる方が望ましい状況です。 アルコールは血液循環を良くする作用があります。その結果、炎症が促進され、痛みが強まる可能性があるため、外傷直後の飲酒は避けてください。 マッサージには炎症を促進する作用があります。また、傷ついた筋肉や靱帯にさらなるダメージを与える可能性もあるため、医療機関受診後は安静にしましょう。 寝るときに湿布を貼っていても問題はありませんか? 基本的には寝るときに貼っていても問題はありません。ただし、就寝中にかゆみやヒリヒリした感覚が生じた場合は、一度はがす方が望ましいでしょう。 湿布が入っている袋には、「1日2回」「〇時間おき」など、貼る回数や間隔が記載されています。湿布を貼るときは、その指示を守りましょう。はがし忘れると、皮膚トラブルが生じる可能性があります。 参考文献 (文献1) 非ステロイド性抗炎症薬 (外用薬)の解説|日経メディカル (文献2) ロキソプロフェンナトリウム水和物(外用剤)のリスク区分について|厚生労働省 (文献3) むち打ち症の治療方法~必ず整形外科を受診し治療の方向を相談すること~|交通事故弁護士相談広場
2025.07.31 -
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「数日前、車に追突された後、首や肩が痛むようになった」 「むちうちだと思っていたが、レントゲンでは異常なしだった」 「痛みやしびれが続いているのも辛いが、『気のせいでは?』『大げさではないか?』などと言われるのも辛い」 このようにお悩みの方もいらっしゃることでしょう。 むちうちは、交通事故を中心とした外傷のあと、少し時間が経ってから出現するさまざまな症状を指します。 この記事では、むちうちの痛みやそれ以外の症状、医療機関で症状を伝えるときの方法について解説します。 症状の原因がわかり、適切な治療を受けるための助けになりますので、ぜひ最後までご覧ください。 むちうちの痛みが長期化しているなど、お悩みを抱えている・再生医療について知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 【どんな痛み?】むちうちの疼痛について むちうちで痛む部分は、主に以下のとおりです。 首のうしろ 肩 後頭部 腕 背中 顔面 手首 体を動かすと痛む場合もあれば、安静にしていても痛む場合もあります。痛みの種類も人によって異なり、ズキズキとした痛みを感じる方もいれば、重苦しさを伴う痛みを訴える方もいます。 【痛み以外】むちうちの症状 痛み以外のむちうち症状は、主に以下のとおりです。 首や肩の動かしにくさ 肩こり めまい しびれ 倦怠感 耳鳴り 視力の低下 歩行障害 むちうちは、首に衝撃が加わったことによる筋肉や靱帯、神経の損傷が原因とされる症状の総称です。 むちうちには4つのタイプがあり、タイプごとに異なる症状が現れます。 むちうちの4タイプについては、以下の記事で詳しく説明しています。あわせてご覧ください。 むちうち症状が出るまでに時間がかかる理由 むちうちは、外傷を受けてから症状が出るまでに時間がかかることが多いとされていますが、はっきりとした理由は解明されていません。 一般的には、体への強い衝撃により交感神経が優位にはたらき、アドレナリンやベータエンドルフィンなどの脳内物質が多量に分泌されることが影響するといわれます。これらの脳内物質により、痛みを感じるセンサーが麻痺されたり鎮痛作用が生じたりします。 その結果、むちうちの原因になる事故や頭部外傷直後に症状が現れず、時間がかかることになるのです。外傷が発生してから1日、もしくは2日ほど経過してから症状が出る場合もあります。(文献1) むちうち以外で痛みが生じる原因と対処法 首や肩の痛み、頭痛などが生じる疾患はむちうちだけに限りません。この章では、むちうち以外で痛みが生じる原因と対処法について解説します。 別の疾患がある場合 ここではむちうちと似た症状を呈する2つの疾患を紹介します。症状は似ていますが、原因はそれぞれ異なるため、むちうちだと自己判断せず、医療機関での検査や診察が必要です。 頚椎椎間板ヘルニア 頸椎椎間板ヘルニアは、加齢やスポーツ、外傷などにより、骨と骨の間でクッションの役割をする椎間板の外側に亀裂が入り、髄核(椎間板の中心)を含む椎間板組織が外に飛び出す疾患です。椎間板とは、骨と骨の間でクッションの役割をする組織を指します。 頚椎椎間板ヘルニアの代表的な症状は、首や肩甲骨、腕の痛みやしびれなどであり、進行すると手足にもしびれが生じます。 このような症状が出現した場合は、整形外科を受診し、CTやMRIなどの検査、診察を受けましょう。治療方法としては、ブロック注射や薬物療法、手術などがあります。 頚椎椎間板ヘルニアについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 脳脊髄液減少症 文字どおり、脳脊髄液の漏れや脱水症状などが原因で、脳脊髄液の量が減少してしまう疾患です。 起立性頭痛と呼ばれる、立ったり座ったりすると悪化する頭痛や首の痛み、めまい、倦怠感などの症状が生じます。 脳脊髄液減少症は交通事故やスポーツ時の外傷で発症するケースも多く、むちうちと間違えられるケースも少なくありません。 起立性頭痛や首の痛みがある場合は、脳神経外科や整形外科など、診断・治療が可能な医療機関を受診しましょう。治療方法としては、点滴やブラッドパッチ療法などがあります。 脳脊髄液減少症については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 異常なしと診断された場合 むちうちはレントゲン検査での特定が難しいため、異常なしと診断されるケースもあります。患者の訴えをむちうちの指標とする場合もあるため、具体的な症状を記録し、事故の経緯とあわせて医師に説明しましょう。 症状があるもののレントゲン検査で異常がない場合は、確定診断のためにCTやMRI検査を実施することもあります。 症状によっては、ジャクソンテストやスパークリングテスト、筋萎縮検査、知覚検査といった神経学的検査を実施するケースもあります。 医療機関でこれらの検査を指示された場合は、必ず受けましょう。 受診する際のむちうち症状の伝え方 むちうちは、さまざまな症状が現れますが、目に見える症状はあまり多くありません。正確な診断や治療を受けるためにも、現在の症状を正しく伝えましょう。 この章では、むちうち症状の伝え方に関するポイントを解説します。 伝えるために必要なポイント 医師に症状を伝えるときのポイントは、主に以下のとおりです。 症状出現の時期 症状がある部位および範囲 痛みが生じるタイミング 痛みの種類 これらのポイントをもとに、症状の伝え方の具体例を紹介します。 【具体例1】 「事故の4日後くらいから首の後ろがずっと張っている感じがあります。夜中に寝返りを打つとズキッと痛くて目が覚めることが増えました。朝はとくに首を動かしにくく、洗顔や着替えが大変な状況です」 【具体例2】 「交通事故にあったのは5日前です。最初の2日間はとくに症状はなかったのですが、3日目の朝から首の後ろに鈍い痛みが出てきました。とくに、首を回したときや長時間座っていたあとに痛みを感じます」 医師の前でうまく伝えられるか不安な場合は、症状を具体的に記載したメモの持参をおすすめします。医師にメモを見てもらうことで、症状をスムーズに伝えられるでしょう。 「異常なし」と診断されたときの伝え方 医師の問診やレントゲン検査などで異常なしと診断された場合も、伝え方の基本は同じです。 症状出現の時期 症状がある部位および範囲 痛みが生じるタイミング 痛みの種類 これらの状況を、具体的に医師へ伝えましょう。 異常なしと言われた場合でも、症状があるうちは病院を受診しましょう。通院実績が、むちうち治療の必要性を判断する大きな指標となるためです。 むちうちの痛みを改善させる方法 むちうちの痛みを改善させるためには、医療機関で検査を受けて、検査結果や症状に適した治療を受けることが必要です。加えて、メンタル面でのセルフケアも大切です。 この章では、両者について詳しく解説します。 医療機関での検査および治療 むちうち症状がある場合、医療機関では以下のような検査を実施します。 医師による問診 レントゲン検査 CT検査 MRI検査 神経学的検査 CTはレントゲンではわかりにくい骨折や脱臼を見つける検査であり、MRIは骨折および靭帯や神経などのダメージの有無を見つける検査です。神経学的検査は、痛みやしびれなどの症状を確認するために実施されるものです。 むちうち治療としては、患部の安静や消炎鎮痛剤の内服および湿布による対応、頚椎カラーの装着などがあげられます。症状が緩和されてきた段階では、ストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリも行われます。 検査や治療、リハビリについては、医師および理学療法士の指示に従いましょう。 むちうち時における湿布の活用について、下記の記事で解説しています。あわせてご覧ください。 メンタルケア むちうちは自律神経にも関係する場所である首にダメージを受けるために、めまいや不眠、気分の落ち込みなど、身体の痛み以外の症状が現れる場合があります。 加えてむちうちは、目に見える外傷がほとんどなく、レントゲンで異常なしであることも多い状況です。そのため、周りの人になかなか症状を理解されにくい辛さもあります。 症状を理解してくれる人に悩みを打ち明ける、カウンセリングを受けるなどの方法によるメンタルケアも大切です。 むちうちの痛みを知り改善に向けて行動しよう むちうちは首に限らず、肩や腕、後頭部、顔など体のさまざまな部位が痛みます。 痛みが生じるタイミングは体を動かしているときだけとは限りません。ときには安静にしていても痛む場合があります。 むちうちの痛み改善のためには、適切な治療が必要です。そのためにも、痛みを含めた自分の症状を把握し、具体的かつ正確に医師へ伝えましょう。患者の訴えは、むちうち治療の指標の1つです。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。むちうち症状でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) むちうち症発生のメカニズムに関する生体力学的考察|名古屋大学
2025.07.31 -
- 脊椎
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「後縦靭帯骨化症は進行すると寝たきりになるってほんと?」 「進行させないためにはどうすれば良い?」 後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこつかしょう)は、骨化自体の急激な進行は少ないです。しかし、脊椎に強いショックを受けると急激に症状が進行して、寝たきりになるリスクがあります。 本記事では、後縦靭帯骨化症の寝たきりになるリスクをはじめとして、以下を解説します。 悪化を示す症状 進行を抑える3つの方法 日常生活における2つの注意点 治療方法と予後について 寝たきりになるリスクを下げるための方法や注意点を理解するために役立ててください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 後縦靭帯骨化症の寝たきりになるリスクについて 後縦靭帯骨化症は、骨化が進行すると立った状態を維持するのが難しくなり、寝たきりになるリスクがあります。 骨化が背骨の管(脊柱管)の60%を超えて狭くなると、ほぼすべての方に脊髄障害が現れます。(文献1)脊髄障害とは、体の脱力や感覚障害など寝たきりにつながる症状が現れる状態のことです。 進行している後縦靭帯骨化症は、放置しても自然に良くなることは期待できません。そのため、適切なタイミングで手術を行うことが重要です。 また、脊椎に強いショックを受けると、四肢麻痺(ししまひ:両手足が自由に動かなくなること)を引き起こして寝たきりになることも。些細な動作でも症状が進行する恐れがあるため、首の動きには十分な注意が必要です。 後縦靭帯骨化症の悪化を示す症状 後縦靭帯骨化症の初期症状は、肩から手先までのしびれや痛み、首の痛みなどです。 進行すると以下のような症状が現れます。 股関節から足先にかけてしびれや痛みが現れる 触られている感覚や痛みを感じにくくなる 筋力が低下する 腱の反射異常が現れる 手足がこわばったり突っ張ったりして思うように動かせなくなる さらに麻痺症状が進行すると、排便や排尿のコントロールが難しくなります。 後縦靭帯骨化症の進行を抑える3つの方法 後縦靭帯骨化症の進行を抑える3つの方法は以下の通りです。 転倒や外傷のリスクを下げる 糖尿病や肥満を改善する リハビリテーションを行う それぞれの詳細を解説します。 1.転倒や外傷のリスクを下げる 転倒や外傷は、症状を急激に悪化させる可能性があるため注意が必要です。とくに高齢者は、転倒による外傷が寝たきりの原因となることが多いです。飲酒は、軽度の運動障害を表出させて転倒リスクを高めます。飲酒による転倒は、首に大きな外力を与える恐れがあるため十分な注意が必要です。(文献2) 以下のような工夫を行い転倒予防に努めることが大切です。 自宅に手すりを設置する スロープなどを取り付けて段差を無くす 杖やシルバーカーを活用する 自転車やバイク、車などの転倒と事故のリスクのある乗り物の利用のほか、相撲、ラグビー、レスリングなど首に強く負担をかけるスポーツは避けたほうが良いでしょう。 2.糖尿病や肥満を改善する 後縦靭帯骨化症の発症のしやすさと生活習慣病には関連性があります。実際に広い範囲で骨化が見られている若年発症の後縦靭帯骨化症の方は、肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症を併存している割合が高いです。 とくに重度肥満(BMI40以上)は、後縦靭帯骨化症の進行に強く関連していると報告があります。(文献3)後縦靭帯骨化症を進行させないためにも、適切な治療を受けながら生活習慣を見直し、肥満や糖尿病等の改善に努めることが大切です。運動により肥満改善を目指す場合は、どのような内容が良いか医師やリハビリスタッフに相談してください。 3.リハビリテーションを行う 適切なリハビリテーションを実施すれば、運動能力が回復する可能性があります。実際に歩行ができなかった患者様がサイドケイン(先端が3〜4つに分かれた歩行器のような杖)で、60m歩行できるようになった症例もあります。(文献4) ただし、医師やリハビリスタッフの指示に基づいた適切なリハビリテーションを行う必要があり、効果も人それぞれです。自己判断によるリハビリテーションは、病状を悪化させる恐れがあるため、運動内容は医師やリハビリスタッフに相談してください。 後縦靭帯骨化症の日常生活における2つの注意点 後縦靭帯骨化症における2つの注意点は以下の通りです。 首を大きく後ろに反らさない 自己判断でマッサージを受けない それぞれの詳細を解説します。 1.首を大きく後ろに反らさない 首を過度に反らす動作は、神経症状を悪化させる恐れがあります。例えば、以下のような場合の首の動きには注意が必要です。 肩こりがあっても首をぐりぐり回さない 理髪店の顔剃りや美容室の洗髪、歯医者での治療で首を反らし過ぎない ストレッチ等も医師やリハビリスタッフの指示に従って行ってください。 2.自己判断でマッサージを受けない 整体やカイロプラクティスなどを自己判断で受けるのは避けてください。首に強い刺激を加えるマッサージは、神経症状を悪化させる恐れがあるためです。 神経圧迫による症状を伴わない首や背中の痛みに対しては、あんまや鍼灸、マッサージなどが有効なことがあります。しかし、施術により首を過度に反らす危険性があるため、専門医の指示のもとで行うべきです。 後縦靭帯骨化症の治療方法 後縦靭帯骨化症の主な治療方法には、保存療法と手術療法があります。ここからは、それぞれの治療方法を詳しく解説します。 保存療法 病状が進行していない軽度の場合は、外固定装具や薬物療法による保存療法を行います。外固定装具の着用の目的は、首の安静を保つことによる神経の保護です。 自覚症状に対しては、痛みや筋肉のこわばりを和らげる薬で対応します。病状が進行して、手の動かしにくさや歩行困難、排尿・排便の障害などの症状が現れ始めたら、手術を検討しなければなりません。 手術療法 病状が重度である場合は手術を行います。手術は、骨化の状態や部位に応じたさまざまな方法があります。 主な手術方法である前方法と後方法の詳細は以下の通りです。 手術療法 詳細 前方法 頚椎の神経圧迫を改善するために、骨化部位を摘出して、その部位を自分の骨で固定する方法。 後方法 骨化の部位はそのままにして、神経が通っている脊柱管を広げて圧迫を軽減させる方法。 一般的には後方法が選択されます。骨化が大きい場合や頚椎の並びが良くない場合は、前方法も選択肢になります。(文献5) 再生医療 後縦靭帯骨化症に対しては、再生医療という治療選択肢もあります。 再生医療の幹細胞治療では、患者様自身から幹細胞を採取・培養して、注射にて患部に投与します。患者様の幹細胞を使用するため、副作用のリスクが低いのが特徴です。 後縦靭帯骨化症に対する再生医療については、以下の記事でも紹介しているので、合わせてご覧ください。 後縦靭帯骨化症の予後 後縦靭帯骨化症は骨化が急速に進行することは少なく、神経症状も必ずしも進行性とは限りません。とはいえ、症状が現れていなくても、定期的な画像検査により経過を見ることは重要です。 また、手術により神経症状が改善しても、術後数年から10年あたりに同じ部位または他の部位の骨化が進行して、神経症状が現れることがあります。(文献5)そのため、後縦靭帯骨化症は手術した場合でも、生涯にわたって定期的な画像検査を受けることを推奨します。 まとめ|急激な進行を予防するためにも転倒や外傷に注意しよう 後縦靭帯骨化症は、転倒や外傷により急激に症状が悪化し、寝たきりになるリスクがあります。そのため、日常生活における転倒や外傷のリスクを可能なかぎり下げる必要があります。首を「過度に反らす」「グリグリ回す」ことも避けてください。 また、糖尿病や肥満など、後縦靭帯骨化症を進行させる要因になる生活習慣病を改善することも大切です。症状が進行している場合は、適切なリハビリテーションが有効な場合があります。医師やリハビリスタッフの指示のもとで進めましょう。 近年では、後縦靭帯骨化症による症状の改善のために、再生医療が活用されています。後縦靭帯骨化症の再生医療は、当院「リペアセルクリニック」でも行っているため、症状でお悩みの方はお気軽にお問合せください。 参考文献 (文献1) 後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)概要診断基準等|難病情報センター (文献2) 後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)よくある質問|難病情報センター (文献3) 脊柱後縦靭帯骨化症における肥満に関連する因子の検討|厚生労働省科学研究成果データベース (文献4) 後縦靭帯骨化症を呈した患者に対する術前運動療法の効果の検討|日本理学療法士協会 (文献5) 後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)病気の解説|難病情報センター
2025.07.30 -
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
バスケットボールの練習中や試合前に突然激しい腰痛に襲われ、「もうバスケができないのでは」という不安を抱えていませんか。 腰椎椎間板ヘルニアと診断されても、適切な治療とリハビリテーションにより、多くの選手が競技復帰を果たしています。 この記事では、バスケットボールという競技特有のヘルニア発症メカニズム、症状の詳細、治療法、そして段階的な復帰プロセスまで詳しく解説します。 あなたの不安を解消し、コート復帰への具体的な道筋を示します。 なぜバスケはヘルニアを招きやすいのか?原因となる動作 バスケットボールは椎間板ヘルニアの発症リスクが高いスポーツとして知られています。 日本整形外科学会のデータによると、スポーツ関連の腰椎損傷において、バスケットボールは上位にランクされており、NCAA大学バスケットボールの2009年から2014年までの統計では、男子で79件、女子で45件の腰椎脊椎損傷が報告されています(文献1)。 この高い発症率の背景には、バスケット特有の動作パターンが深く関係しています。 ジャンプ動作と着地衝撃 ジャンプをすると、背骨のクッション役である椎間板に大きな力が加わります。 とくにリバウンドやシュート後にひざが十分曲がらずに着地をすると、衝撃がまっすぐ腰へ伝わり、椎間板を傷めやすくなります。 さらに、着地と同時に体が前へ傾いたりねじれたりすると、「押しつぶす力」に「ひねり」が加わり、椎間板への負担が一段と増します。(文献2) 前かがみディフェンスと回旋負荷 ディフェンスで腰を低く構え、前かがみの姿勢をとりますが、この際に背中が丸まった姿勢だと腰に慢性的に負担がかかります。 さらに、カッティングやピボットのように急に方向を変える動きでは、片足を軸に体がねじれるため、椎間板に「ひねり」のストレスが加わります。 シュート動作では体を伸ばしながらひねるので、「押しつぶす力」と「ひねり」が同時にかかり、腰への負担が大きくなります。 また、シュートフェイントの動きもしますが、フェイントのように急停止する動作も腰への負担が大きいです。 成長期のプレイヤーは骨や椎間板がまだ完全に強くなりきっていないうえ、急に身長が伸びると体の適応が追いつかず、こうした負担に弱い点にも注意が必要です。 バスケによって起こるヘルニアの症状 バスケットボールではジャンプ・着地や急な切り返しで腰に大きな力がかかるため、突然「ズキッ」と強い腰痛が出るケースが目立ちます。ここではヘルニアの進行度別の症状と、ヘルニア発症後の休養期間の目安について説明します。(文献3) これらに加え、前かがみになったり咳・くしゃみをすると痛みが強くなるのもヘルニア症状の特徴です。 軽度の症状 発症直後は腰からお尻、太もも裏、ふくらはぎ、足先まで電気が走るような痛みやしびれが広がります。 咳やくしゃみ、前かがみ動作で一時的に痛みが強くなるものの、歩行も可能です。 この段階では、まず安静を保つことが大切です。同時に、睡眠環境の改善や日常生活の見直しを行い、腰への負担を軽減して症状の悪化を防ぎましょう。 中等度の症状 発症から数週間ほどで、神経圧迫が続くと筋力低下が現れます。 足首を上げにくいとつまずきやすくなり、つま先立ちもできなくなるため、ジャンプ力が大幅に落ちます。 歩行では患部をかばうための歩き方が目立ち、ジャンプや急ターンは痛みでできなくなってしまいます。(文献3) 重度の症状 重度のヘルニアになると、単なる腰痛や足のしびれを超えて、より深刻な症状が現れます。 尿が出にくい・残尿感・便漏れといった排泄障害、股の感覚消失、両脚の強い麻痺などが起こります。これらは「馬尾症候群」と呼ばれ、飛び出した椎間板が腰の奥の太い神経束を圧迫する緊急事態です。 可能な限り早急な手術が必要で、一般的に24~48時間以内の手術が推奨されています。手術が遅れると後遺症のリスクが高まります。 こうした重症例では3~6カ月以上の長いリハビリが必要になり、再びコートに立てるかどうかは個々の回復状況を見ながら慎重に判断されます。 ヘルニアの症状が出たらバスケは何日休む? 休養期間は症状の程度によって幅があります。一般的な目安は次のとおりです。 症状 休養期間 軽度の症状(日常生活は可能) 約1~2週間の安静 中等度の症状(練習に支障をきたすレベル) 約1~3カ月の安静 重度の症状(歩行が困難・安静にしていても痛みがある) 約3~6カ月の長期休養 復帰の判断は自身で行わず、必ず医師の判断を仰いで競技復帰しましょう。 痛みが残る状態で無理に復帰すると再発のリスクが高まるため、焦らず治療とリハビリに専念しましょう。 バスケで発症したヘルニアの治療法について 椎間板ヘルニアの治療は、症状の重さに応じて段階的に進めるのが基本です。軽度から中等度の症状ではまず手術をしない保存療法から開始します。 そして、保存療法で効果がない場合や、重度の神経症状がある場合に手術を検討します。 近年では再生医療といった治療法も選択肢に加わり、とくにスポーツ選手の早期復帰を目指す治療として活用されています。 治療法の決定には、症状の重さ・年齢・競技レベル・復帰の緊急度などを総合的に判断することが重要です。 ヘルニア初期の保存療法 保存療法では以下のような方法を組み合わせて症状の改善を図ります。 治療法 解説 薬物療法 消炎鎮痛薬(NSAIDs)で神経の腫れを抑え、足の痛みやしびれには神経痛専用の薬(プレガバリンなど)を使用します。筋肉の緊張には筋弛緩薬を短期間併用することもあります。 ブロック注射 痛みが強い場合、硬膜外腔へのステロイド注射(神経ブロック)で一時的に痛みを緩和させます。ただし効果は一過性で、長期的な改善効果は限定的です。 理学療法(リハビリ) 症状に合わせて段階的に進めます。急性期は安静にしてコルセットで腰を保護。痛みが軽減したらストレッチや筋力トレーニングを開始します。慢性期は体幹筋強化や正しい動作の指導を行います。 コルセットの活用 腰部コルセットで腰椎を安定化させると痛みの軽減に役立ちます。ただし長期間の装着は筋力低下を招くため、痛みが強い初期に限定して使用し、症状が和らいだら外します。 外科手術での治療 手術が必要となる場合は大きく2つのケースに分けられます。 手術が必要なケース 説明 手術が必要な場合(緊急手術) 膀胱や直腸の障害、高度な運動麻痺、馬尾症候群など重篤な神経症状が現れた場合です。これらは時間との勝負であり、速やかに手術による神経圧迫の除去が必要です。(文献4) 手術を検討する場合 発症から3カ月間の保存療法でも効果がない、競技者など早期社会復帰が強く求められる、あるいは患者本人が手術を希望する場合などです。 再生医療の可能性 再生医療は、主に幹細胞治療とPRP療法(多血小板血しょう療法)があります。 まず、幹細胞治療とは、患者様自身の脂肪組織から幹細胞を採取して培養し、増やした幹細胞を椎間板に注射する治療法です。 そして、PRP療法は患者さま自身の血液から血小板を高濃度に抽出し、成長因子を含む血しょうを患部に注射する治療法です。 臨床研究が進んでおり、腰痛軽減や機能改善が報告されつつありますが、効果には個人差があり、すべての患者様に同様の結果が得られるわけではありません。 再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」へお問い合わせください。患者様の症状や状況にあわせたご提案をいたします。 ヘルニアからのバスケ復帰ロードマップ 安全かつ確実にコートに戻るためには、段階的に復帰プログラムを進めることが重要です。 復帰プロセスの期間や内容は人によって大きく異なり、年齢・症状の重さ・治療法・競技レベルによって調整が必要なので、専門医やコーチとの密な連携は欠かせません。 焦って復帰すると再発リスクが高まるため、専門医と相談しながら慎重に判断しましょう。 フェーズ別セルフケアのポイント セルフケアのポイントを、急性期(発症~2週間)・回復期(2週間~3カ月)・復帰期(3カ月~6カ月)のフェーズ別にそれぞれ解説します。 急性期(発症~2週間)のセルフケア まず炎症を抑えることが最優先です。この時期は安静を基本とし、発症後はしっかり休養してください。 回復期(2週間~3カ月) 痛みが落ち着いてきたら、徐々に身体機能の回復トレーニングを開始します。 以下の基本エクササイズと日常動作の工夫で、腰への負担を減らしながら筋力と柔軟性を取り戻していきます。 【基本エクササイズ】 エクササイズ 手順 ドローイン 仰向けで膝を立てて腹式呼吸をし行います。息を吐きながらお腹をへこませ、その状態で10秒キープ(呼吸は止めない)。 これを5回1セットで1日3セット実施し、腹横筋(インナーマッスル)を鍛えます。 キャット&ドッグ 四つん這いになり、息を吐きながら背中を丸め(猫のポーズ)、吸いながら背中を反らせる(牛のポーズ)。 ゆっくり10回繰り返し×2セット行います。背骨と周囲筋の柔軟性を高め、血流を促進します。 【日常動作の工夫】 動作 工夫する点 座る姿勢 椅子に座る際は深く腰掛け、背もたれに背中を預けます。 足裏を床にしっかりつけ、膝と股関節がそれぞれ直角になる高さの椅子を使いましょう。 立ち上がり動作 椅子から立つときは一旦軽く前かがみになり、上半身の重心を足の真上に移してから立ち上がります。 腰だけでなく太ももの力を使うことで腰への負担を軽減できます。 物の持ち上げ 床にあるボールや重い荷物を取るときは、背中を丸めず膝を曲げて腰を落とす(スクワット動作)ようにします。 背筋を伸ばした状態で太ももの筋力を使い、ゆっくり持ち上げましょう。 復帰期(3カ月~6カ月) 3カ月目以降は、競技復帰に向けた本格的なトレーニングに入ります。段階的に負荷と運動強度を高めましょう。あくまで目安となりますが、復帰に向けた準備を以下のステージ別に行います。 ステージ 説明 ステージ1(基礎体力回復) 長時間の運動に耐えられる体力を戻す段階です。痛みが出ない範囲でウォーキングを行います。 水中ウォーキングやエアロバイクも有効です。腰への衝撃が少ないメニューで持久力を養います。 ステージ2(基本動作回復) ジョギングなど直線方向の軽いランニングを開始します。徐々に距離とスピードを上げ、ボールハンドリングやパス・シュートなどの基本ドリルも再開します。 急激な方向転換や激しいジャンプは避け、軽い切り返し動作までに留めます。 ステージ3(専門動作練習) バスケット特有の動きを集中的に練習します。軽めのジャンプから始め、着地フォームを確認・矯正しながら練習を行います。 ディフェンス時の低姿勢や方向転換のステップワークも練習し、痛みなく実施できるか確認します。徐々に通常強度に近いアジリティドリルも加えます。 ステージ4(実戦復帰) チーム練習への部分参加から始め、非接触メニュー(セットプレーの確認やシューティング練習など)をこなします。 問題なければ対人練習(1対1や5対5)に進み、最終的に試合形式のプレーに復帰します。コンタクトプレーで痛みや不安がなければ、公式戦出場が許可されます。 各ステージの移行は、痛みが出ないこと・動作がスムーズに行えること・専門医や理学療法士と問題がないか確認しながら慎重に行います。段階を飛ばさず着実にこなすことで、復帰後のパフォーマンス低下や再発を防げます。 再発率を抑える体幹メニュー ヘルニア再発予防には体幹(コア)強化が最も重要な要素です。 段階的な体幹トレーニングプログラムを継続して、再発を防ぎましょう。 主に推奨されるトレーニングメニューとして、ドローインやプランク、バードドッグが腰に負担をかけずにできる筋トレメニューです。 以下の記事でヘルニアの際におすすめの筋トレメニューを紹介してますので、気になる方はぜひ参考にしてください。 まとめ|バスケでヘルニアになっても復帰は可能 バスケ選手の腰椎椎間板ヘルニアでも、適切な治療とリハビリをすれば高い確率でコートに戻れます。 大切なのは早期に正確な診断を受け、症状に合った最善の治療法を選択することです。 近年は再生医療という新たな選択肢もあります。 復帰を成功させるポイントは、段階的な復帰プロセスを守ること、継続的な体幹強化トレーニングを怠らないこと、そして再発予防の取り組みを続けることです。 これらによって長期的に競技を続けることが可能となります。ヘルニアと診断されても決してあきらめる必要はありません。 専門医と連携した計画的な治療とリハビリで、確実にコートに復帰しましょう。 ヘルニアに対する再生医療について詳細は、お気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) Staysniak M, et al."Epidemiology of Lumbar Spine Injuries in Men's and Women's National Collegiate Athletic Association Basketball Athletes"American Journal of Sports Medicine, 47(2),pp.428-434, 2019年 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6823986/ (最終アクセス:2025年6月24日) (文献2) Bisseling RW, et al."Biomechanical factors associated with injury during landing in netball players"Clinical Journal of Sport Medicine, 18(2), pp.115-121, 2008年. https://journals.lww.com/cjsportsmed/Abstract/2008/03000/Biomechanical_Factors_Associated_With_Injury.3.aspx (最終アクセス:2025年6月24日) (文献3) Nachemson AL."Disc pressure measurements"Spine, 6(1), pp.93-97, 1981年. https://journals.lww.com/spinejournal/Abstract/1981/01000/Disc_Pressure_Measurements.17.aspx (最終アクセス:2025年6月24日) (文献4) 日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021」2021年 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00645.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b (最終アクセス:2025年6月24日)
2025.06.30