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減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説 減圧症は、ダイビングなどで深いところから突然浅いところに浮上した際、高圧の環境で血液や組織に溶け込んでいた窒素が、減圧に伴って気泡を作り、様々な症状をもたらす病気です。気泡によって脊髄が損傷を受け、神経症状を起こしてしまうこともあります。 今回は、この減圧症についてわかりやすく解説していきます。 減圧症とは 減圧症とは、周りの圧力の低下に伴って、身体の中に溶解していた不活性ガス(主に窒素)が気化し気泡となることが原因となり、さまざまな症状が現れる病気です。 高気圧環境での労働や、高い場所での減圧によるものが知られているのですが、近年はダイビングによる発症が増加し、減圧症全体の20%以上を占めると言われています。 中高年のダイバーが増えている一方で、減圧症に対する知識の教育不足や治療環境が十分に整っているとは言えません。 さて、この減圧症は潜水後に発症することが多いために、潜水病と呼ばれることもあります。症状としては、関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害といったものがあります。 減圧症の症状 減圧症では、身体の中にたまっていた窒素が気泡となり、膨張することで身体の組織を傷つけたり、血管を塞いだりすることでさまざまな症状が現れてきます。 脳の血管が気泡で詰まることで、脳卒中のような症状が現れてしまうこともあります。例えば、身体の片側の筋力低下、めまい、発語困難などです。また、窒素の気泡が生じると組織に炎症が起こり、筋肉や関節、腱の腫れや痛みも起こります。 さて、減圧症は大きく以下の2つのタイプに分けられます。 ・Ⅰ型(比較的軽症) 皮膚や筋肉の症状のみ。 腕や脚の関節、背中などに痛みが生じます。 初めは軽い痛みですが、徐々に増強し、鋭い痛みとなります。 軽度な症状であっても全てが自然治癒するわけではなく、徐々に症状が重くなることもあるので注意が必要です。 ・Ⅱ型(比較的重症) 呼吸器や循環器の症状、中枢神経症状を呈するもの。 軽いしびれから、重度の麻痺や死亡にまで至る場合もあります。 特に脊髄が障害を受けやすいとされています。脊髄が損傷を受けた場合は、腕や脚のしびれ、痛み、筋力の低下がみられます。 減圧症によって脊髄損傷を受けると、後遺症が残る場合もあります。つまり、治療が遅れてしまうか、十分に行われない場合に永続的な神経障害となる恐れもあり、減圧症による症状が治らないということになってしまうのです。 このⅡ型減圧症では、脊髄損傷が最も多いとされています。 脊髄は硬い硬膜で覆われているのですが、脊髄内に発生した気泡によって組織内の圧力が上昇し、血流障害などによって脊髄損傷が起こるとされています。 下位胸髄から腰髄、そして上部から中部胸髄が好発部位とされており、窒素と結びつきやすい脂質が多く含まれている部位が障害されやすいです。 症状は軽い痺れなどの異常感覚から、排尿・排便が難しくなる膀胱直腸障害を含む完全な四肢麻痺まで、さまざまです。 報告によっても異なりますが、日本では33-62%の脊髄損傷の方で後遺症が残ってしまうともされてます。 減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死があります。骨壊死が進むと、日常の生活のレベルが著しく低下し、人工関節置換術などの手術も必要となることがあります。 さらに、減圧症では肺にも障害が現れることがあるのです。気泡が肺に及ぶと、咳や胸の痛み、呼吸困難が起こり、まれに死に至ることもあります。 減圧症の治療法 減圧症の治療法として最も大切なのは、高気圧酸素療法です。 重症であるⅡ型減圧症では、以下のような方法が用いられます。 高気圧酸素療法 ①水深18m相当の加圧下で、20分の酸素吸入 ②5分のインターバルを挟んで3回繰り返す ⇩ ③水深9m相当の加圧下で、60分の酸素吸入 ④15分のインターバルを挟んで2回繰り返す 水深18m相当の加圧下で、20分の酸素吸入を5分のインターバルを挟んで3回繰り返します。そしてその後、水深9m相当の加圧下で、60分の酸素吸入を15分のインターバルで2回行い、減圧します。 この治療法は以下のような作用があります。 ・血液や組織の中で気泡となった窒素を、血液や組織に再び溶解させる作用 ・窒素を身体から排泄させる作用 ・血液の流れが悪い部位に酸素を行き渡らせる作用 脊髄損傷において、高気圧酸素治療を繰り返すことで回復するケースもみられます。 高気圧酸素治療を行なっても、運動機能や知覚障害が残る場合、ステロイドの点滴治療や、歩行訓練・バランス訓練といった理学療法を行っていきます。 減圧症の予防法 ダイビングをするダイバーは、ガイドラインで決められているような減圧停止を行いながら浮上することで、減圧症を予防することができます。 また、注意点として、ダイビングをしてから12〜24時間以内に飛行機に乗ると減圧症のリスクが高まると言われています。そのため、ダイビングを行ったあとは飛行機に乗ったり高地に行ったりする前に、海抜0メートル地点に12-24時間ほど滞在することが勧められています。 まとめ・減圧症による脊椎損傷の症状と治療法について解説 今回の記事では、ダイビングを行う上では知っておくべき潜水病について解説しました。 脊髄損傷の後遺症が残ってしまった場合の最新の治療法として、再生医療があります。 当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。 今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられています。 ▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE 参考文献 スポーツダイビングによる脊髄型減圧症の1例.リハビリテーション医学.2006;43:454-459. p454 減圧症 (げんあつしょう)とは | 済生会 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版 スポーツダイビングによる脊髄型減圧症の1例.リハビリテーション医学.2006;43:454-459. p456-457
公開日:2024.10.07 -
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減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 減圧症は、急激な高気圧から低気圧への移動時に生じる症状の総称です。減圧症は、潜水や高地登山など、急激な気圧の変化が起こる状況で発症することがあります。 この記事では、減圧症対策として、その原因や予防するためのポイントを6つに分け、わかりやすく解説します。 減圧症の原因 減圧症のメカニズムとしては、身体の周囲の気圧が急激に低下することで、体内の血液や組織に溶け込んでいる窒素ガスが血液や皮膚・筋肉・臓器などの組織の中で気泡を作り、血流障害や組織の破壊を引き起こすというものになります。 潜水における減圧症 潜水中に吸い込んだ空気中の窒素は血液や組織に取り込まれますが、水圧が高いところではその量が増えていきます。すると、窒素は急速にそして過剰に血液や組織に溶け込みます。その状態で急速に水面に浮上すると、周囲の水圧が低下するために血管内や組織内で窒素の気泡が形成されます。 この気泡が、血管を詰まらせて血流を阻害したり、組織を破壊したり、炎症反応を引き起こすことで、さまざまな障害や症状を引き起こすのです。 減圧症は潜水後に起こることが多いので、潜水病とも呼ばれます。 減圧症の影響 減圧症では、水面に浮上した後に倦怠感や疲労感、食欲不振、頭痛などの初期症状が現れることがあります。そして、徐々に他のさまざまな症状も現れてきます。 減圧症には、以下の2つのタイプがあります。 症状(Ⅱ型は、Ⅰ 型よりも重症です) ・ Ⅰ型:皮膚や筋肉の症状(ベンズ)のみ ・Ⅱ型:呼吸・循環器症状(チョークス)や中枢神経症状を伴うもの 減圧症では、脊髄損傷も起こりやすいとされています。 その他には、脳障害、呼吸器系の障害(肺塞栓など)、循環器系(心不全や心原性ショックなど)もあります。 また、減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死という骨の障害もあります。この骨障害は、肩関節や股関節によく起こります。特に、大腿骨頭壊死が起こると、歩行障害などの影響がでたり、重症な場合には手術が必要となることもあります。 減圧症の治療の応急処置としては、100%酸素吸入を行っていきます。そして、専門医療機関では、高気圧酸素療法が行われます。 減圧症の予防ポイント6つ! ダイビング時だけでなく、登山時にも引き起こされることがあります。減圧症を予防するためのポイントを6つに分けて解説します。 ①潜水前の注意 減圧症は、以下に述べるような要因があるとそのリスクが増大します。 以下のようなリスクがないかどうか、潜水前にチェックしておくことが大切です。 ここにあげたようなリスクがある方については、医師に事前に潜水をしてよいか、確認をしておく方がよいでしょう。また、潜水前には、適切な訓練と手順を確実にチェックし、それを守ることが必要です。 リスクを避けるためのチェック項目 ・卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)や心房中隔欠損などの心臓の病気 ・疲労 ・肥満 ・高齢 ②潜水時の注意 急激な深さへの潜水や長時間の潜水は避け、適切な休憩を取りましょう。 また、浮上の速度は15〜30cm/秒を超えないようにします。さらに、水深3~4mの地点で3~5分間の安全停止をすることも、圧力の平衡を保つために推奨されています これに関しては、米国海軍潜水マニュアル(United States Navy Diving Manual)といった正式なガイドラインなどを参考にして、浮上したりすることで減圧症の予防につとめましょう。 ③潜水後の注意 ダイビング後12〜24時間以内は飛行機に乗らないようにしましょう。 潜水活動を行った後に飛行機に乗るような場合には、12〜24時間は海抜0の場所にとどまり、一定期間の休息後が望ましいとされています。 ダイビング後12〜24時間以内に飛行機に乗ると、減圧症のリスクが高まることが知られているのです。 ④高地登山の適切な計画 登山中に急激な標高の変化があると、大気中の酸素濃度が減少し、それによって減圧症が引き起こされることがあります。 登山前には、適切な標高への適応期間を確保し、急激な標高の変化を避けるよう計画しましょう。適切な装備の使用や体調管理も欠かせません。 ⑤十分な水分摂取 どの状況においても、十分な水分摂取が重要です。 水分不足は体調不良を引き起こしやすくなりますので、こまめな水分補給を心掛けましょう。 ⑥専門家のアドバイスを仰ぐ 潜水や高地登山など、特定の状況における活動前には、専門の医師や指導者に相談し、適切なアドバイスを得ることが賢明です。 以上のポイントを守ることで、減圧症のリスクを最小限に抑え、安全にダイビングをしたり登山をしたりすることが可能となるでしょう。 まとめ・減圧症の原因と6つの予防ポイント!わかりやすく解説 今回の記事では、減圧症の原因やメカニズム、予防法について詳細に解説しました。 しかしながら、適切な予防法をとっていても、減圧症による脊髄障害や脳障害によって麻痺などの症状が残ってしまう場合もあります。 こうした減圧症による脊髄損傷に対しては、リハビリテーションを行ったり、場合によってはステロイドなどの薬物治療が行われることが一般的です。しかしながら、こうした方法は根本的な治療法ではありませんでした。 そこで当院では、幹細胞治療として、自分の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。この治療は、幹細胞を脊髄腔内に直接注入するというものです。 今までに、脊髄損傷の症状が改善されたという報告も寄せられており、今後に期待が持てる治療の一つと言えます。 ▼減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=5HxbCexwwbE ▼減圧症のセルフチェックは以下です 減圧症(潜水病)は軽度なら自然治癒も!症状のセルフチェックリストをご紹介 参考文献 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDプロフェッショナル版 素潜り漁中に発症した脳型減圧症の1例.臨床神経学. 2012;1052(10):757-761 潜水時の予防措置および潜水障害の予防 - 22. 外傷と中毒 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 減圧症 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版
公開日:2024.10.07 -
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胸椎椎間板ヘルニア、背中や胸が痛むことも!その症状を解説 「背中が痛い」、「胸が痛む」といった症状でお悩み場合、実は「胸椎椎間板ヘルニア」の可能性があることをご存知でしょうか。 胸椎椎間板ヘルニアは、加齢、年齢を重ねることが原因のひとつだと考えられておりいます。他の椎間板ヘルニアと比べて発症する確率は少ない珍しい疾患ではありますが、放置すると「足が動かない」「尿や便が出なくなる」といった重大な問題が発生する疾患でもあります。 胸椎椎間板ヘルニアを放置すると重症化の恐れ ・足が動かない ・尿や便が出なくなる 本記事では、胸椎椎間板ヘルニアとは、どのような疾患なのか、また、胸椎椎間板ヘルニアによる代表的な症状について解説します。 特に背中の痛みや、胸の痛みが気になる方、最近になって足に力が入らない、しびれがあるなどで歩きにくさを感じている方はぜひ参考にしてください。 胸椎椎間板ヘルニアとは 胸椎椎間板ヘルニアとは、老化や強い衝撃を受けて脊椎の胸部にある椎間板が飛び出た状態です。人間の背骨は首から腰まで合計24個ありますが、このうち胸の背骨である胸椎は8個あります。 そして椎間板とは、脊椎と脊椎の間のクッションのような組織であり、飛び出ると周囲の神経や脊髄を圧迫してさまざまな症状が出ます。発症するのは年齢は40~50歳が多く、男性にやや多いです。 胸椎椎間板ヘルニア以外にも、頚椎椎間板ヘルニアや腰椎椎間板ヘルニアなど、ほかの部位でも椎間板ヘルニアは発症します。 しかし、その中でも胸椎椎間板ヘルニアは起こりにくい疾患です。なぜなら、胸椎は肋骨とつながっており安定しているため、椎間板ヘルニアになりにくいと考えられています。 胸椎椎間板ヘルニアの診断 胸椎椎間板ヘルニアを診断するにはMRI検査が有効です。レントゲン検査では特に異常所見が目立たなくても、MRI検査を行えば椎間板ヘルニアの有無や脊髄が圧迫されている程度などを確認できます。また、治療として手術を行う場合にはCT検査などを行うこともあります。 胸椎椎間板ヘルニアの予防 胸椎椎間板ヘルニアを予防する有効な手段はありませんが、放置すると重大な問題を引き起こすことがあるため早めに医療機関を受診することが重要です。 胸椎椎間板ヘルニアの代表的な症状 以下に、胸椎椎間板ヘルニアの症状について解説します。自身に当てはまる症状があれば医師に相談するようにしましょう。 胸椎椎間板ヘルニアによる背中の痛みや胸の痛み 胸椎椎間板ヘルニアが発症した時の代表的な症状として、「背中の痛み」「胸の痛み」があります。しかし、実際に認める頻度としては珍しいです。 椎間板ヘルニアになっている付近で背中の痛みを認めることもありますが、ヘルニアが発生する部位によって圧迫される神経やダメージを受ける神経が異なるため、患者さんによって痛みやしびれを感じる部位は異なります。 胸椎の椎間板の側から肋間神経と呼ばれる神経が左右どちらにも肋骨に沿って出ていますが、胸椎椎間板ヘルニアが肋間神経を圧迫すると「肋間神経痛」という痛みが現れます。肋間神経は背中から胸に向けて走っているため、背部痛や胸痛、わきの下あたりのしびれや痛みなどを引き起こします。 肋間神経痛の痛みは、ぴりぴりと焼けつくような感覚であったり、鈍い痛みとして感じることが多いです。また、痛みはずっと同程度である場合もあれば、姿勢の変化や体の動きに合わせて改善する場合や増悪する場合もあります。 また肋間神経痛による胸の痛みは、心臓が原因の胸痛と間違えられることがあります。 しかし、胸椎椎間板ヘルニアによる胸の痛みは、体の動きや姿勢の変化により変動することが多いため、心臓が原因の胸痛と区別できます。 胸椎椎間板ヘルニアによるその他の症状 背部痛や胸痛以外の胸椎椎間板ヘルニアの代表的な症状として、ふくらはぎや太ももの脱力感やしびれ、痛みなどがあげられます。これらの症状は胸椎椎間板ヘルニアの初期症状として認められることが多いです。 また放置すると急激に足が動かしづらくなっていくこともあります。歩行障害を認める場合は手術を行います。 歩く時に足がもつれる、階段を昇り降りする時に足が心配になって手すりを持つようになるなどの場合には、胸椎椎間板ヘルニアの可能性があるため注意しましょう。 また、胸椎椎間板ヘルニアを発症すると、力をこめて便や尿を出そうとしても出せない状態(膀胱直腸障害)になることがあります。 胸椎の背中側にある脊髄は、便や尿を出す自律神経をコントロする神経が走っており、胸椎椎間板ヘルニアによってこの部位が圧迫されると突然便や尿が出ないという問題が起こってしまいます。膀胱直腸障害以外の症状は認めないこともあるため気をつけましょう。 胸椎椎間板ヘルニアの代表的な症状 ・ふくらはぎや、太もも:脱力感、しびれ、痛み ・歩行障害:足がもつれる、ふらつく ・膀胱直腸障害:尿が出にくくなる ・排便障害:便が出にくくなる ・痛み:背中、胸(肋間神経痛とは区別する必要) まとめ・胸椎椎間板ヘルニア、背中や胸が痛むことも!その症状を解説 胸椎椎間板ヘルニアは40~50歳の方に多く発症する疾患です。代表的な症状として背中の痛みや胸の痛みがあげられます。特に多い症状は、肋間神経痛による背中の痛みや胸の痛みであり、焼けつくような痛みや鈍痛を認めます。 また、初期症状としては下肢のしびれや痛みなどを認めます。薬物治療やリハビリなどでは歩きにくさを改善することはできないため、歩きにくさを認めた場合には手術療法が検討されます。手術には神経麻痺や手術後の痛み、しびれなどの術後後遺症の危険性もありますが、放置すると病状が進行して歩けなくなることがあるため医師とよく相談しましょう。 また、少しでも胸椎椎間板ヘルニアを疑う症状に気づいた場合には、速やかに専門の医療機関を受診するようにしましょう。 ▼同じような症状もある肋間神経痛との違いも参考にされませんか 胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛、どう違う?症状でチェック!
公開日:2024.10.07 -
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胸椎椎間板ヘルニアの保存療法!リハビリの種類や具体的な内容を医師が解説します 足のしびれや脱力感といった麻痺の症状を引き起こす「胸椎椎間板ヘルニア」。腰や首の椎間板ヘルニアに比べて稀な病気ですが、症状が進行すると病院での手術が必要な場合があるので注意が必要です。 麻痺がなく症状が軽い場合は、いきなり手術をするのではなく「薬物療法」や「リハビリ」などの「保存療法」が選択されます。 この保存療法について、本記事では胸椎椎間板ヘルニアのリハビリや運動の方法について解説します。 胸椎椎間板ヘルニアの保存療法について 胸椎椎間板ヘルニアは症状が進行すると筋肉を動かす神経まで圧迫され、脚の力が入りにくくなり歩くのに支障をきたします。 そうなるとリハビリや運動では治療は難しく手術が必要です。症状が軽い場合はまず手術を伴わない保存療法が選択されます。 ここではリハビリを含む保存療法の種類について紹介します。 薬物療法 ヘルニアによる痛みがある場合は、痛み止めの内服薬が利用されます。 また痛みや炎症により生じる筋肉の緊張に対して、筋弛緩薬が利用されることもあります。 内服薬のほかの薬物療法は注射を使った神経ブロックです。痛みの原因となっている神経を一時的に麻痺させることで、痛みの軽減を図ります。 装具療法 背骨が動くことによりヘルニアの症状が悪化する場合は、コルセットにより背骨の動きを制限して症状の悪化を防ぎます。 長期間のコルセットの装着は、背骨の周辺にある筋肉を弱めてしまうため、適切な装着時期は医師の指示を聞きましょう。 胸椎椎間板ヘルニアのリハビリテーション リハビリには胸椎の椎間板にかかる負担を減らすための運動療法や日常生活の指導、痛みの緩和を目指す物理療法があります。 胸椎椎間板ヘルニアのリハビリとして以下のようなものがあります。 りハビリの種類 ・運動療法 ・物理療法 ・生活指導 それぞれ具体的な方法を解説します。 運動療法 運動療法は椎間板にかかる負担を減らすため、周辺の関節の柔軟性を高めたり筋肉の疲労を軽減したりするストレッチや筋力トレーニング(以下筋トレ)があります。 また痛みやしびれによる運動不足で低下した体力を向上するための有酸素運動も運動療法の1つです。 ストレッチ ストレッチでは胸椎の動きをスムーズにして痛みを和らげたり、腰や股関節といった周辺の関節が固まらないようにして胸椎の椎間板にかかる負担を減らしたりします。 具体的なストレッチの方法は「胸椎椎間板ヘルニアの痛みに!ストレッチで痛みを和らげる方法」で詳しく紹介しています。 筋トレ 筋トレにより背骨を支える体幹の筋肉を鍛えて椎間板にかかる負担を減らします。 具体的な方法は以下のようなものがあります。 体幹トレーニングの方法① 1.肩の真下に両手をつき、骨盤の真下に両膝をついて四つ這いになる 2.左手と右足を、体と水平になるようにあげる 3.手と足が離れるように伸ばした状態で10秒キープする 4.反対の手足も同様に行う 体を反ったり、ひねったりしないように意識しましょう。お腹に力を入れながら行うとより効果的です。 体幹トレーニングの方法② 1.両膝を立てた状態で仰向けになる 2.息をできるだけ吸い込む 3.口をすぼめてゆっくり息を吐きながらお腹を凹ます 4.できるだけお腹を凹ませた状態をキープしながら呼吸を繰り返す 5.30秒キープして力を抜く 先ほどの運動が背筋を鍛えるのに対して、今回の運動では腹筋を鍛える運動になります。 どちらも背骨により近い部分にある筋肉であるインナーマッスルを鍛える運動です。 インナーマッスルは体を動かすより、姿勢を安定させる働きがあり、背骨や椎間板にかかる負担を軽くしてくれます。 有酸素運動 有酸素運動により全身の筋力を維持して、健康な体を保ったり、低下した体力を向上させたりすることができます。 有酸素運動の種類としては以下のようなものがあります。 有酸素運動の種類 ・ウォーキング ・自転車こぎ ・水泳 ・軽いジョギング ・ハイキング ヘルニアだからといって症状が軽いのに安静にしすぎると全身の筋力や体力の低下を引き起こすため、かえって症状が悪化する危険性があります。 軽めの有酸素運動で良いので、少しでも体を動かすようにしましょう 物理療法 電気や熱の力を利用して血行を良くして、筋肉をほぐしたり、痛みを緩和したりする治療が物理療法です。 生活指導 椎間板へ負担のかかる作業や動作、姿勢は極力控えるようにしましょう。例えば中腰の姿勢を続けたり、重い荷物を上げ下ろししたりする動作です。 また猫背の姿勢は椎間板に負担をかけます。長時間のデスクワークやスマホの使用は猫背の姿勢を助長するので、適宜休憩を挟んで腰を反らすなどのストレッチを実施しましょう。 胸椎椎間板ヘルニアのリハビリで注意すべきこと 胸椎椎間板ヘルニアで歩行が難しくなるような症状が出ている場合、リハビリでは治療は難しく手術をしなければ回復は困難です。症状があるからといって自己判断で運動を行わず、整形外科を受診して医師の指示を仰ぎましょう。 やってはいけない筋トレがあります。それは、「体を丸めるように腹筋運動」です。椎間板を圧迫するようなストレスがかかるため注意しましょう。 また、筋トレをいつから行うかは大切なポイントです。痛みが強まるときは控えて、症状が落ち着いてきてから始めるようにしましょう。 せっかくのリハビリをしても症状が悪化してはいけないので、医療機関での指示の下、注意点に気をつけて正しく実施しましょう。 胸椎椎間板ヘルニアのリハビリは症状が軽い場合に実施|麻痺がある場合はすぐに病院を受診しよう 胸椎椎間板ヘルニアは症状が軽い場合は、リハビリを含む保存療法を実施して改善を待ちます。 リハビリには筋トレやストレッチ、有酸素運動などの運動療法や物理療法があります。できるだけ整形外科を受診して医師や理学療法士などの専門家に指導を仰いで実施するようにしましょう。 足に力が入らないような麻痺がある場合は、リハビリも有効ではありません。放置せずに病院を受診して必要な治療を受けるようにしましょう。 参照資料 標準整形外科.医学書院,東京,2020,pp550. 日本整形外科学会「胸椎椎間板ヘルニア」
公開日:2024.10.07 -
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胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛の違いについて?症状でチェック! 「胸椎椎間板ヘルニア」と「肋間神経痛」の違いはどのような点にあるのでしょうか。いずれも「背中に痛みを生じる」という症状が出るのですが、その他にも多くの違いがあります。 今回の記事では、胸椎椎間板ヘルニアおよび肋間神経痛について解説し、症状の違いについて述べていきます。 胸椎椎間板ヘルニアとは それでは、まずは胸椎椎間板ヘルニアについて解説していきます。 背骨、つまり脊椎は頭の方からおしりの方まで、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎の順に積み重なったような構造をしています。そして、胸椎は左右12対の肋骨と背中側で連結している骨となります。 胸椎に限らず、椎体と椎体の間には椎間板というクッションのような役割を果たすものがあります。 胸椎椎間板ヘルニアとは、椎間板の変性や損傷によって、椎間板の外側の部分である繊維輪という構造が破れ、内部のゲル状の物質である髄核(ずいかく)が椎間板の外に漏れ出る状態です。これが脊髄を圧迫することで脊髄圧迫症状が現れます。 胸椎は頚椎や腰椎のように前かがみ、後ろかがみでもほとんど動きません。そして、胸椎椎間板ヘルニアは外傷などの誘因がない場合が多いとされています。 胸椎椎間板ヘルニアの治療 胸椎椎間板ヘルニアで、歩行障害や膀胱直腸障害などの症状が現れている場合には、手術が行われます。薬物治療やリハビリでは、こうした症状を抑えることは難しいです。 肋間神経痛とは 肋間神経痛とは、胸椎椎間板ヘルニアのような病名ではなく、肋間神経という肋骨に沿って走っている神経が何らかの要因で障害を受けたことで突発的に生じた痛みのことを指します。 痛みは身体の片側に起こることが多く、深呼吸や咳、そして身体の向きや位置を変えたりすることでも強くなることがあります。 肋間神経痛の原因の一つとして重要なのが、「帯状疱疹」です。帯状疱疹は「水ぼうそうウイルス」によって起こるのですが、このウイルスは肋間神経の神経節という部分に潜んでおり、免疫力の低下などによって再活性化して起こるものです。帯状疱疹による肋間神経痛は、鋭く激しい痛みが片側の肋骨に沿って現れ、水ぶくれを伴う、赤い発疹もできるという特徴があります。 その他、肋間神経痛は特に原因がわからないものや、胸椎椎間板ヘルニアや側弯症によって脊髄から肋間神経が出る部分を圧迫されることに伴うものがあります。また、肋骨骨折で肋間神経が障害されることでも起こりえます。 さらに、稀ではありますが、肺がんなどの胸部の手術の際に、手術で使った器具が肋間神経を圧迫してしまい、それが術後にも影響を残し肋間神経痛として残存してしまうということもあります。 肋間神経痛の治療 肋間神経痛の治療は、原因がある場合にはその病気の治療をしていきます。一方で、特に原因となるような病気がない場合には、肋間神経ブロックという痛み止めの注射を行ったり、鎮痛薬の内服をしたりなどして症状を抑えることとなります。 胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛の症状の違いをチェック 胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛は、同じように背中や胸部の痛みを引き起こす異なる状態です。しかしながら、以下のような違いがあります。 それでは、それぞれについて詳しく述べていきましょう。 胸椎椎間板ヘルニアの症状 胸椎椎間板ヘルニアでは、背中や胸部の痛みは出ることもあるのですが、疼痛がないこともあります。また、体幹から下半身にかけての筋力低下や感覚の異常を伴うことが主な症状となります。 胸椎椎間板ヘルニアが進行すると、歩行障害や膀胱直腸障害も出現することもあります。 肋間神経痛の症状 肋間神経痛の痛みは通常背中から胸部にかけてみられ、特に身体の片側の肋骨の間の領域で感じられることが多いです。また、呼吸や姿勢を変えることによって症状が悪化することがあります。 帯状疱疹による肋間神経痛では、水ぶくれを伴う特徴的な皮疹が痛みと同じ部位に現れます。 肋間神経痛はしばしば局所的な鋭い痛みで、肋間神経の分布に従います。そして、痛みの範囲が明確な場合が多いです。 痛みの程度、場所 痛み以外の症状 胸椎椎間板ヘルニア ・背中や胸部 ・痛みがないこともある ・下半身にかけての感覚異常 ・進行すると下半身の麻痺が起こることもある 肋間神経痛 ・背中から脇腹、胸部にかけての鋭い痛み ・痛みの範囲は明確なことが多い ・肋間神経痛の原因が帯状疱疹の場合には、皮膚の発疹を伴うこともある まとめ・胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛、どう違う?症状でチェック! 今回は胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛の症状の違いについて述べました。 背中から胸部にかけての痛みを生じる原因として、胸椎椎間板ヘルニアや肋間神経痛があります。厳密には、胸椎椎間板ヘルニアでも髄核が真正面でなく外側に飛び出すと、肋間神経痛の原因になることもありますが、腰椎椎間板ヘルニアより稀とされています。 いずれにしても、症状が続く場合や痛みが激しい場合は、早めに医療専門家に相談することが重要です。 胸椎椎間板ヘルニアによる歩行障害などの下半身の麻痺を治すためには、手術が必要となります。一方で、手術にも神経麻痺のリスクがあります。 当院は、大阪・東京・札幌にある再生医療専門クリニックです。胸椎椎間板ヘルニア術後の脊髄の障害に対しても、脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。 この治療は、自分の脂肪から培養した幹細胞を脊髄腔内に注射または点滴投与するというものです。今までにも、麻痺の改善がみられたという患者さまからの声が寄せられています。 ▼胸椎椎間板ヘルニアの術後などの麻痺に対しての再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 https://www.youtube.com/watch?v=4AOGsB-m63Y&t=141s 参考文献 「胸椎椎間板ヘルニア」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる Q8 急に胸が痛くなり続いています。 心臓や肺の病気でしょうか? - 呼吸器Q&A 一般社団法人 日本呼吸器学会 Q11 帯状疱疹とは何ですか? 公益社団法人 日本皮膚科学会 術後合併症について 国立がん研究センター 東病院 ▼胸椎椎間板ヘルニアの治療についてさらに詳しく記しました 胸椎椎間板ヘルニア症状レベルと自然治癒の可能性について
公開日:2024.10.07 -
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胸椎椎間板ヘルニア症状と自然治癒の可能性について こんなお悩みではありませんか? 「胸椎椎間板ヘルニアといわれたが、詳しいことがよくわからない」 「自然に治る可能性はあるの?」 胸椎椎間板ヘルニアは非常に稀な病気のため、腰椎や頚椎のヘルニアよりも情報が少ないのが現状です。 本記事では胸椎椎間板ヘルニアについて解説していきます。特に症状レベルや自然治癒の可能性について知りたい方はぜひ最後までお読みください。 胸椎とはどこの骨? 胸椎とはいわゆる「背骨」=椎骨のなかでも、首の骨(頚椎)と腰の骨(腰椎)の間にあるものです。他の椎骨と異なり、胸椎は肋骨と繋がっているのが特徴です。 第一胸椎には第一肋骨、第二胸椎には第二肋骨…というように合計で十二の胸椎があり、それぞれの左右から肋骨が伸びています。 胸椎椎間板ヘルニアとは? 胸椎と胸椎(あるいは一番下の胸椎と一番上の腰椎)の間にある「椎間板」の成分が胸椎の後ろに飛び出してしまうことを「胸椎椎間板ヘルニア」と呼びます。腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアと比べると、非常に稀な疾患です。 椎間板は、椎骨が動くときに衝撃を吸収するクッションの役割があります。椎間板の外側は強固な線維の束(線維輪)に覆われ、内側には柔らかいゼリーのような「髄核」があります。 体をひねる・前に曲げる・後ろに反るなどの動作のとき、一つ一つの椎骨が滑らかに動いています。これが可能なのは、間にある椎間板が衝撃を吸収しているからです。 ところがヘルニアの方では、椎間板の変性により線維輪が壊れて中の髄核が飛び出してしまっているのです。胸椎椎間板ヘルニアでは、髄核はまっすぐ真後ろに飛び出すことが多いことがわかっています。 飛び出した髄核は、ときに真後ろに走る脊髄を圧迫します。すると、足の痺れや感覚の低下が起こります。病態が進行すれば歩行障害が起こることもあるのです。 なお、腰椎や頚椎では後側方に飛び出したヘルニアが、脊髄から伸びる神経の根本を圧迫して「神経根痛」という「ビリッとした」痛みを起こすことがあります。 一方の胸椎椎間板ヘルニアでは神経根痛は多くありません。横方向に飛び出すことが多くないからです。しかし、ときに肋間神経痛(脇腹の痛み)を起こす方がいます。 症状について 胸椎ヘルニアで多い症状は足のしびれや脱力ですが以下のような症状が起こることがあります。 胸椎ヘルニアの症状チェック・リスト ☐ 背中が痛む ☐ 脇腹が痛む ☐ 足の感覚が鈍い ☐ 足がもつれて歩きにくい ☐ 階段を降りるのが不安定で怖くなった ただし、患者さん全員にすべての症状が起こるわけではありません。また、特異的な症状というものはなく、別の病気でも同様の症状が起こることがあります。 診断はどのようにして行うか 疑わしい症状があれば、MRIを撮影して椎間板の脱出がないかを調べます。レントゲンでは診断はつきませんが、骨折など他の病気を探すためにMRIに先行して行うことが多いです。 ただし、胸椎椎間板ヘルニアは非常に稀な病気である上に、腰椎の病気と似た症状を起こすことが多いです。そのため、最初は腰椎の検査をされ、のちに胸椎椎間板ヘルニアだったと判明することもあります。 症状~軽症から重症まで~ 軽症例ではヘルニアはあるものの、後ろに走る脊髄の圧迫による症状はありません。 背中の痛みが起こることがあります。また、脇腹に「ビリッ」と走るような肋間神経痛を感じる方もいます。無症状で、たまたま画像検査などで発見されることもあります。症状がなければとくに治療の必要はありません。痛みがあれば痛み止めなどを使います。 脊髄の圧迫の初期では足が痺れたような感じがあります。また、足の感覚が鈍くなってくる方もいます。このような症状が出てくると要注意です さらに進行すると、 運動神経が侵されて足の筋力が落ちてきます。そして、段々と歩けなくなってきます。また、排尿に関わる神経が侵され、尿が出にくい、頻尿になるといったことも起こるのです。ひどい場合は全く尿が出ない「尿閉」となります。 歩行障害や排尿障害が進行すると、薬やリハビリなどの保存療法では良くなりません。放置すると日常生活に差し障るため、早期に手術を行う必要があります。 人によっては急激に麻痺が進行することもあります。歩きづらさを感じたら早いうちに受診をすることをお勧めします。 胸椎椎間板ヘルニアは自然治癒するの?可能性と注意点 一般的に椎間板ヘルニアは、自然に消失することのある疾患です。胸椎椎間板ヘルニアも自然経過で良くなる可能性は充分にあると言えるでしょう。その一方で注意しなければいけないこともあります。 胸椎椎間板ヘルニアは疾患自体が非常に稀なので、自然治癒の報告も限られています。ただし、同様の病態である腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアでは自然消失例が報告されているのも事実です。 このことから、胸椎椎間板ヘルニアについても一部の軽症例であれば自然によくなる可能性はあります。 しかしながら、自然に良くなるのを過剰に期待して自己判断で放置してしまうと、取り返しのつかない歩行・排尿機能の障害に陥ってしまうリスクがあります。 手術を受けない場合でも、定期的な経過観察のための受診は怠らないようにしましょう。そしてもし、歩きづらさなどを感じたら、早期に主治医に相談するべきです。 胸椎椎間板ヘルニア|自然治癒の可能性と注意点 可能性 胸椎椎間板ヘルニア:稀な疾患、自然治癒の報告例僅か 腰椎や頚椎の椎間板ヘルニア:自然消失例の報告例有 胸椎椎間板ヘルニア:一部の軽症例で自然治癒の可能性がある 注意点 ✕ 自然治癒を過剰に期待するのはNG ✕ 自己判断で放置すると歩行・排尿障害に陥る「リスクが大きい」 定期的な受診を怠らず、歩きづらさを感じたら、早急な受診をお勧めします 胸椎椎間板ヘルニアは予防できる? 胸椎椎間板ヘルニアは外傷などの特定の原因があって発症する疾患ではありません。そのため、現時点ではっきりとわかっている予防方法などもありません。 また、麻痺が出てしまうと、いくらリハビリテーションなどを行っても進行を予防することはできません。 まとめ・胸椎椎間板ヘルニア症状と自然治癒の可能性について 胸椎椎間板ヘルニアは非常にまれな病気です。 軽症の場合は対症療法のみで様子を見ることができる一方、足の麻痺などが出てしまうと手術を行わなければいけないことがあります。 自然治癒の可能性もありますが、一方で急激な進行を認めるケースがあるのも事実です。すぐに手術しない場合でも通院を怠らず、症状の変化に気をつけて過ごしてください。 この記事が参考になれば幸いです。 ▼こちらも参考にされませんか 胸椎椎間板ヘルニアの痛みに!ストレッチで痛みを和らげる方法 参考文献 大場哲郎, 波呂浩孝. 日本医事新報 (5084): 42-42, 2021. 岡田英次朗. 日本医事新報 (4994): 40-40, 2020. 小西明, 藤井基広, 増本眞悟, 石井秀典, 今井健, 角南義文. 整形外科と災害外科 48:(1) 10-12, 1999. 公益社団法人日本整形外科学会|「胸椎椎間板ヘルニア」
公開日:2024.10.07 -
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「背骨を押すと痛い」「背骨の胸あたりを押すと痛む」部分を胸椎(きょうつい)といいます。首と腰の間にある部分で、胸椎は12個の骨から成り立っており、それぞれが左右12本ずつある肋骨(ろっこつ)とつながっています。 背骨を押すと痛みを感じるとき、ただの疲れや姿勢の問題だと考えられがちですが、実は神経や骨に関連する病気の可能性もあります。 本記事では、背骨に痛みを感じたときに考えられる5つの病気や改善方法などを専門医ができるだけわかりやすく解説します。最後まで読めば、痛みが悪化する前に適切な行動ができるようになるはずです。 背骨(胸椎)を押すと痛い原因 背骨を押すと痛い原因はさまざまですが、姿勢の悪さや筋肉、骨の問題であることがほとんどです。 例えば、主婦や事務労働をする方であれば、背中が丸まったような悪い姿勢(猫背)が主な原因として考えられるほか、年齢に伴う椎間板の老化なども挙げられます。 冒頭でもお伝えしましたが胸椎は肋骨と繋がっています。背中の真ん中あたり、肋骨に近い背骨を押すと、胸椎の後ろにある突起部分(棘突起:きょくとっき)に圧力がかかり、痛みの原因となるのです。 特に胸椎のあたりに痛みがある場合は、神経や筋肉、骨に関わる病気の可能性があります。 背骨(胸椎)を押すと痛いときに考えられる5つの病気 背骨(胸椎)を押すと痛いときに考えられる5つの病気は以下の通りです。 脊椎過敏症 胸椎椎間板ヘルニア 肋間神経痛 強直性脊椎炎 胸椎骨折 各疾患の症状などをできるだけ簡単に説明します。痛みがどの症状に当てはまるのか、チェックしながら読み進めていきましょう。 ①脊椎過敏症(せきついかびんしょう) 背骨を押すと圧痛が生じる病態として、脊椎過敏症があります。この病気の症状としては、背部や棘突起のあたりの痛みや押した際の痛み(圧痛)が出ます。 脊椎過敏症では、背部の痛み以外には特に症状はなく、予後も比較的良好です。この脊椎過敏症は、20歳代の女性、特に事務労働者や主婦に多く、背中が丸まったような悪い姿勢などの原因が あるのではないかと考えられています。数ヶ月から数年の間で自然に治っていくことが普通です。 ②胸椎椎間板ヘルニア(きょうついついかんばんヘルニア) 胸椎椎間板ヘルニアは、胸椎の椎体と椎体との間にあるクッションのような構造である椎間板が変性し、脊椎の外側に飛び出し、脊髄を圧迫する病気です。 胸椎椎間板ヘルニアの症状として、背部痛(背中の痛み)が生じることもあります。その他の症状として、体幹から下半身の感覚が低下することや、筋力低下がみられます。胸椎椎間板ヘルニアは、外傷などの明らかな原因がない場合がほとんどです。 また胸椎椎間板ヘルニアは腰椎や頚椎の椎間板ヘルニアと比べてその頻度は少なく、歩行障害などの症状が現れた場合には手術を要することが多いです。 放置すると重症化の恐れがある胸椎椎間板ヘルニアの概要や症状について、以下の記事でさらに詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。 なお、胸椎椎間板ヘルニアなどの痛みは、手術を必要としない再生医療によって改善が期待できます。興味のある方は、再生医療による回復の事例などを紹介した以下の動画もご覧ください。 ③肋間神経痛(ろっかんしんけいつう) 胸椎椎間板では、椎間板の中にある髄核(ずいかく)という構造が脊髄の真ん中を圧迫するですが、左右方向に髄核が飛び出すと神経根という脊髄から神経が出ていく部分を圧迫することもあります。すると、肋間神経痛の症状が現れます。肋間神経痛の症状としては、背中から胸にかけて、肋骨に沿ったような鋭い痛みが生じるというものです。 なお前述の胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛は、いずれも背中に痛みが出ますが、痛みの場所であったり症状だったりが異なります。 以下の記事で胸椎椎間板ヘルニアと肋間神経痛の違いについて詳しく解説したので、こちらも合わせてご覧ください。 ④強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん) 強直性脊椎炎は、仙腸関節という関節や腰、背中、首の脊椎の靱帯付着部に炎症が生じる病気です。さらに、胸椎の椎間関節にも炎症は起こります。 症状の多くは腰痛やお尻の痛みから始まり、徐々に背中全体や首にまで広がっていきます。症状が進むと、体を曲げ伸ばしすることが難しくなり、前屈みの姿勢となっていきます。体のだるさや疲れやすさ、体重減少、微熱、高熱などの全身の症状がでることもあります。 また、4人に1人の確率で目の病気である虹彩炎(こうさいえん)が起こりますが、早めに眼科治療を受ければ予後は良好です。 ⑤胸椎骨折(きょうついこっせつ) 骨粗鬆症や、腫瘍が骨に転移した際に、背骨が圧迫骨折をきたすことがあります。この場合にも、圧痛や体動時痛といった症状が生じることがあります。 骨折の程度によっては、脊髄損傷をきたすこともあり、胸椎と腰椎の移行部に骨折が生じた場合には、両下肢の麻痺症状などを引き起こす可能性もあります。 骨折の原因が骨粗鬆症などで軽度の圧迫骨折を来している際には、安静と簡易コルセットなどの外固定をすることで、3〜4週間でほとんどの症状が改善するとされています。 転移性骨腫瘍が原因である場合には、癌そのものに対する化学療法やホルモン治療が行われます。骨転移による痛みが強い場合には、放射線治療が有効な場合もあります。骨破壊が進行しており、脊髄への圧迫がみられるような際には、脊椎固定術も行われます。 脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。 背骨(胸椎)を押して痛いときの改善方法 背骨(胸椎)を押して痛いときの改善方法として以下の3つが挙げられます。 医療機関を受診する 正しい姿勢を意識する 普段の姿勢やストレッチなどで痛みを緩和できるかもしれませんが、まずは専門医の診断を受けることをおすすめします。 医療機関を受診する 前述してきたとおり、背骨の胸のあたりにある「胸椎」を押して痛い場合にはさまざまな原因があります。脊椎過敏症のように、胸椎を押したときの痛み以外に特に症状がなく、治療をしなくても自然に改善していくこともあります。 一方で、胸椎椎間板ヘルニアなどは、下半身の筋力低下や感覚低下といった神経症状がみられます。こうした場合、基本的には手術が必要となりますので、早めに整形外科などの専門医療機関を受診することをお勧めします。 背骨(胸椎)を押して痛いときは、自己判断せずに医療機関に相談しましょう。当院「リペアセルクリニック」では、胸椎の痛みなどに関する再生医療や幹細胞治療を得意としていますので、まずはお気軽にご相談ください。 正しい姿勢を意識する 正しい姿勢は背骨にかかる負担を減らすことができます。特に猫背は背骨に負担がかかるので、背筋を適切に伸ばした状態をキープするようにしましょう。 日常の中で特に猫背になりやすい体制として、以下の3つが挙げられます。 スマホを操作するとき デスクワークをするとき 寝るとき 日常生活には背骨への負担がかかる場面が多くあるので、上記を参考にできることからはじめていきましょう。 まとめ|背骨(胸椎)に痛みを感じたらすぐに受診を! 本記事では、背骨(胸椎)を押して痛い原因や5つの病気、治療などについて解説しました。 胸椎椎間板ヘルニアなどの神経を圧迫する疾患では、治療が遅れると脊髄の神経が傷つき、麻痺が完全に治らない場合もあります。現在の医療では、一度傷ついた神経細胞を完全に修復することは難しいですが、当院は自己脂肪由来幹細胞を用いた再生医療を、脊髄損傷にも応用しています。 背骨(胸椎)を押して痛い病気の中には、後々まで症状が残る場合もあるため、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。 再生医療に少しでもご興味のある方は、当院「リペアセルクリニック」までご相談ください。 背骨(胸椎)の痛みに関するよくある質問 Q.背骨(胸椎)が痛むときにストレッチをしても大丈夫ですか? A.痛みや症状によってはストレッチを避けて安静にするのが良いです。 例えば、胸椎自体の痛みがある場合は、骨折や脊椎炎などが考えられ、このような場合はストレッチは避けるのが無難です。 また、胸椎椎間板ヘルニアの場合は、ヘルニアを押し戻すような効果として、猫のポーズが有効な場合があります。 このように、自己判断でストレッチをすると症状を悪化させてしまいかねませんので、医療機関を受診しましょう。 なお、胸椎椎間板ヘルニアの痛みを予防するストレッチについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。 参考文献 胸背部痛.日内会誌.2010;99:1686-1689. 脊椎過敏症 (medicina 14巻13号) | 医書.jp 胸椎(せなか)の症状一覧 - 日本整形外科学会 強直性脊椎炎(指定難病271) - 難病情報センター 「脊椎椎体骨折」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「転移性脊椎腫瘍」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
公開日:2024.10.23 -
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胸椎椎間板ヘルニアの痛みに!ストレッチで痛みを和らげる方法 「足が動きにくい気がする」、「両足のしびれが気になる」このような症状がある場合は、もしかすると胸椎椎間板ヘルニアかもしれません。 ヘルニアは腰や首だけでなく背中にある胸椎でも起こります。 本記事では胸椎椎間板ヘルニアについて解説し、痛みを軽減するためのストレッチを紹介します。自宅でも簡単にできる方法を紹介するので、ぜひ実践してみましょう。 胸椎椎間板ヘルニアとは?原因と症状について解説 ここでは胸椎椎間板ヘルニアとはどのような病気なのかを解説します。原因や症状についても紹介するので、自分自身に当てはまる方は早めに整形外科に受診しましょう。 胸椎椎間板ヘルニアの病態 背骨は脊椎と呼ばれ、椎骨と呼ばれるブロックのような小さい骨が積み重なってできています。椎骨の首の部分を頚椎、腰の部分を腰椎と呼び、頚椎と腰椎に挟まれた背中の部分を胸椎と呼びます。 椎骨と椎骨の間には、衝撃を吸収するクッションの役割をもつ椎間板があります。ヘルニアは、椎間板の中にあるゼリー状の髄核(ずいかく)が、椎間板から突き出してしまい、近くの神経を圧迫してしまう状態です。 胸椎の椎間板で生じるヘルニアを胸椎椎間板ヘルニアと呼びます。胸椎は頚椎や腰椎より動きが少ないため、頚椎や腰椎に比べてヘルニアになることが少ないとされています。 胸椎椎間板ヘルニアの原因 椎間板ヘルニアは加齢や繰り返しかかる負担で椎間板が変化したり断裂したりして起こります。繰り返し椎間板に負担のかかる作業といえば、重い荷物を抱えたり、運転など長時間座ったりする作業です。 また動きや接触の激しいスポーツ、事故などの衝撃もヘルニアの原因となります。 前述のように胸椎は動きが少なく、頚椎や腰椎に比べると上記のような原因でヘルニアになるケースは少ないです。 胸椎椎間板ヘルニアの症状 胸椎椎間板ヘルニアの症状は以下のようなものがあります。 症状例 ・脚がしびれる ・脚に力が入らない ・歩くとふらつく ・お腹がしめつけられる ・背中や脇腹が痛む ・おしっこが出にくい、漏らしてしまう 胸椎椎間板ヘルニアによってうまく歩けなかったり、ふらついたりするのは、脚の筋力が低下してしまい、うまく力が入らないためです。 なぜ筋力低下が起こるのかというと、ヘルニアにより背中を通る神経が障害されてしまい麻痺してしまうからです。 さらに麻痺が進行すると、排尿を支配する神経も障害されるため、おしっこが出にくいなどの症状が出ます。しびれなどの感覚障害も症状の1つですが、痛みをともなうことは多くありません。 まれに、神経の障害の影響で背中や脇腹のあたりが痛む場合もあります。このような痛みを肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)と呼びます。腰椎のヘルニアでよく見られるような、腰から脚に広がる神経痛は胸椎椎間板ヘルニアでは少ないです。 胸椎椎間板ヘルニアの治療 胸椎椎間板ヘルニアの治療は症状の進行度合いによって変わり、保存療法と手術療法に分けられます。 それぞれの治療を選択する基準や治療の内容について紹介します。 胸椎椎間板ヘルニアの保存療法 ヘルニアがあっても症状が軽く、脚の筋力低下や排尿の障害などが伴わない場合は、コルセットや内服薬で痛みの軽減を図ります。 ヘルニアは症状が自然に治る場合もあります。症状が軽い場合は、まず保存療法で様子を見ます。 胸椎椎間板ヘルニアの手術療法 胸椎椎間板ヘルニアの症状が進行し、麻痺の症状が見られると保存療法での治療は困難です。 その場合、放置すると症状が徐々に進行してしまうため、できるだけ早くヘルニアを除去する手術が行われます。 手術は背骨の一部を取り除き、神経を圧迫しているヘルニアを除去する治療をします。 胸椎椎間板ヘルニア(予防)におすすめのストレッチ2選 胸椎椎間板ヘルニアの予防や、痛みの緩和をするためにオススメのストレッチを2つ紹介します。 特別な道具も必要なく自宅でも簡単にできる方法ですので、日頃の生活に取り入れてみましょう。 横になってする胸椎ストレッチ まずは寝た状態でできる胸椎のストレッチです。 胸椎が固くなると猫背になり、胸の前側が固くなります。 このストレッチでは胸の前側の筋肉を伸ばすことができ、姿勢の改善が期待できます。 横になって行う胸椎ストレッチ 1. 左側が下になるように両膝を曲げて背筋を伸ばした状態で横になる 2. 両肘を胸の前でまっすぐ伸ばし、両手のひらを合わせる 3. 右手を大きな半円を描くように頭上を通りながら水平に後ろまで動かす (このとき手の動きを追うように頭も動かす) 4. 右手を元の位置に戻して5往復程度繰り返す 5. 反対も同様に行う ゆっくりと動作を行い痛みが出ない程度の範囲で行いましょう。 四つ這いでする胸椎のストレッチ 四つ這いになって背骨の柔軟性を高めるストレッチを紹介します。 胸椎のストレッチに加えて、背骨を支える筋肉を働かせるためトレーニングの効果も期待できる運動です。 四つ這いで行う胸椎ストレッチ 1. 背中をまっすぐにして四つ這いになる 2. おへそをのぞき込みながら背中を丸めるようにゆっくり動かす 3. 目線を少し上にして両方の肩甲骨寄せながら背中をそらすようにゆっくり動かす 4. 5往復程度繰り返す 最初の姿勢では肩の下に両手を肩幅に広げて置き、腰の真下に膝がくるようにします。また背骨を一つずつ動かすような意識でゆっくりと実施するのがポイントです。 ストレッチを継続して胸椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげよう| 症状がある場合は早めの受診が大切 胸椎椎間板ヘルニアは症状が進行すると歩くのが難しくなり、排尿が障害される怖い病気です。 麻痺の症状は徐々に進行するので、放置せず早めに整形外科へ受診をするようにしましょう。 症状が軽い場合は保存療法が選択されますが、ストレッチを継続して胸椎の柔軟性を高めることで、椎間板への負担を軽減するのもオススメです。 ただし、症状があるからといってマッサージを受けるなど自己判断で治療を進めるのではなく、受診をして医師の指示による正しい治療を受けましょう。 ▼以下も参考医されませんか 胸椎椎間板ヘルニアとは?その症状と原因、治療について 参照資料 標準整形外科.医学書院,東京,2020,pp550. 日本整形外科学会「胸椎椎間板ヘルニア」
公開日:2024.10.07 -
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頚椎椎間板ヘルニアの治療で必要な入院期間と休業期間について解説します 頚椎椎間板ヘルニアで、休職が必要となるのはどんな場合でしょうか? 頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎と頚椎の間にある椎間板が飛び出して、神経を圧迫してしまうことで、首の痛みや腕のしびれが生じる病気です。 今回の記事では、頚椎椎間板ヘルニアでお仕事を休まなければならない。休職が必要な期間と症状、休むときのポイントについて解説します。 頚椎椎間板ヘルニアとは 頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎(首の背骨)と頚椎の間にあるクッションのような役割をしている椎間板が破れたりして、脊髄や神経根が圧迫されることで神経症状が起こる病気です。 症状は首の痛みが急激に生じ、続いて、腕や手指にしびれや痛みを感じます。腕や手指に脱力が生じることもあります。 ヘルニア病変が大きく、脊髄の圧迫が強まると、巧緻(こうち)運動障害を生じ、お箸がうまく使えない、字が下手になる、ボタンを留めることが難しいなどといった、細かな作業ができなくなったり、さらには歩行障害が生じることもあります。 頚椎椎間板ヘルニアでは、まれにヘルニアが自然に吸収され、自然治癒にいたる例も多数報告されています。そのため、症状が軽い場合には保存的治療を行い、経過をみていくことが多いです。 例えば、薬の内服や安静、理学療法や頚椎カラー固定などの保存的治療になります。 保存的治療 ・薬の内服や安静 ・理学療法 ・頚椎カラー固定 ※保存療法でも、症状が悪化することは十分にあるため、常に注意をしておく必要があります。 頚椎椎間板ヘルニアの手術と休業期間の目安 ここでは、頚椎椎間板ヘルニアが原因で休職が必要となる症状について述べていきます。 手指の繊細な仕事が必要な場合 手指の巧緻運動障害や、しびれや脱力症状も、頚椎椎間板ヘルニアの症状になります。 そのため、こうした症状がある場合は、絵を描く、工芸品を作る、など繊細な手作業を要する仕事の場合には、症状が改善するまで休むことが必要となる場合があります。 頚椎椎間板ヘルニアによる症状が重い場合 頚椎椎間板ヘルニアでは、通常は上半身、特に首から肩、腕、手指などにしびれや痛み、時に脱力などの症状が現れます。 一方で、重症になると歩行障害など下半身にも影響がみられるようになります。 そのため、仕事内容によって歩くことが必要となる職種、デスクワーク以外、例えば営業職や販売、倉庫、工場などでの勤務は、治療がある程度完了するまでの間、仕事を休まざるを得ない場合もあるかもしれません。 休んでも筋力低下や脱力、巧緻障害が戻らない時は手術が必要となります。また、第1指と第2指の骨間筋の萎縮が見られることもあり、注意して診察しなければいけません。 手術を受けた場合 頚椎椎間板ヘルニアの症状が「保存的な治療で改善しない場合」、患者様から「強い希望がある場合」、また先ほど述べた「巧緻運動障害や歩行障害がある場合」などでは、全身麻酔のもとで前方除圧術や前方除圧固定術といった外科的治療(手術)が選択されます。 頚椎椎間板ヘルニアでは、頚椎前方除圧固定術という手術がよく選ばれます。 この手術は、頚椎の前側、つまり首の前面から皮膚や筋肉を切り開き、椎間板や頚椎の骨の出っ張っている部分を切除して、神経の圧迫を取り除くというものです。 手術自体は1〜1.5時間くらいで、翌日から歩行可能とされています。しかしながら、入院期間はリハビリなども含めて通常10〜14日程度となります。 そのため、その間はもちろん通勤などはできませんし、仕事を行うのは難しいでしょう。また退院後すぐに出勤できるかどうかは人により様々ですが、手術を行なった場合には休職期間は平均で2〜3週間ほどと考えられます。 外科的治療(手術) 手術時間の目安 入院期間の目安 休職期間の目安 頸椎前方除圧固定術 1〜1.5時間 10~14日 2~3週間 一方で、ヘルニアによって神経根や脊髄の圧迫が強かったために、後遺症として神経症状が残ってしまった場合は、休職、あるいは仕事を辞めることを検討する必要があるでしょう。 このように術後の後遺症で悩まれている方は沢山おられますが、今の保険診療内では根治は難しいとされています。そこで、最先端医療である幹細胞による再生医療が注目されています。 ▼術後の後遺症でお悩みの方へ 頚椎椎間板ヘルニアでも仕事を休めない場合には 基本的には痛みが強い間には安静にしておくことが大切ですが、頚椎椎間板ヘルニアによる腕のしびれや首の痛みがあっても、仕事によっては休めないということもあります。 そのような場合には、頚椎カラーで首を固定したり、首を曲げるような動きは極力避けることで、頚椎椎間板ヘルニアの症状悪化を防ぐことが期待できます。 頚椎椎間板ヘルニアでの症状を軽減させるポイント それでは、頚椎椎間板ヘルニアのために仕事を休んでいる間に注意しておきたいポイントを解説します。 頚椎椎間板ヘルニアの症状を軽減させるためには、頚椎の良い姿勢を保つことが大切です。特に、後屈、つまり後ろに反らす動作を避けることが重要です。 例えば、上を見上げる姿勢は取らない、首をぐるぐると回す運動は避ける、腹ばいでの読書や、そうした姿勢でのテレビ視聴は避けるなどといった注意が必要です。 これらを予防するために、頚椎カラーも有効です。 また、寝る際には首までしっかりと固定できる面積の広い枕を使うことも良いでしょう。 このようなポイントを守ることで、頚椎椎間板ヘルニアによる神経症状の悪化を、ある程度食い止めることが可能と考えられます。 頚椎の良い姿勢を保つ ・上を見上げる姿勢は取らない ・首をぐるぐると回す運動は避ける ・腹ばいでの読書やそうした姿勢でのテレビ視聴を避ける ・首までしっかりと固定できる面積の広い枕の使用をする まとめ・頚椎椎間板ヘルニアの治療、入院期間と休業期間について 今回の記事では、頚椎椎間板ヘルニアの症状の程度によっては仕事を休まざるを得ないケースについて解説しました。 頚椎椎間板ヘルニアによる休業期間の必要性は、症状の種類と程度によって異なります。手指の繊細な作業が必要な場合や症状が重い場合は休職が必要となることがあります。症状の程度に応じて適切な休業期間を確保し、適切な治療と姿勢の管理を行うことが必要です。 頚椎椎間板ヘルニアは、多くは保存的治療もしくは手術によって症状が改善することが期待できます。一方で、神経の圧迫の程度が強く、後遺症が残ってしまう場合も残念ながらあり得ます。手術や保存的治療を受けた後でも、症状が改善せず仕事を続けることが難しい場合があります。 最後に頚椎椎間板ヘルニアによる神経症状を軽減させるためには、適切な姿勢を保つことが重要です。普段から意識して姿勢を整えるようにしたいものです。 ▼当院では、脂肪由来の幹細胞を使用した脊髄内幹細胞を投与することで、傷ついた神経の修復・再生に取り組んでいます。 https://www.youtube.com/watch?v=0hyJR5VW3oY&t=64s 頚椎椎間板ヘルニアの手術を受けてもなかなか症状が改善しない、術後の後遺症に悩んでいる、仕事に早く復帰したい、というような方は、ぜひ一度当院までご相談ください。 参考文献 頚椎椎間板ヘルニア|一般社団法人日本脊髄外科学会 頚椎症性神経根症(椎間板ヘルニア含む)の 外科治療に関する指針.Spinal Surgery.2015;29(3):242-251 p242 頚椎症性神経根症(椎間板ヘルニア含む)の 外科治療に関する指針.Spinal Surgery.2015;29(3):242-251 p245 代表的な手術 脊椎外来(脊椎センター)北里大学北里研究所病院 頸椎症の診療.臨床神経学.2012;52(7)469-479. p476 頚椎症性神経根症(椎間板ヘルニア含む)の 外科治療に関する指針.Spinal Surgery.2015;29(3):242-251 p245 頸椎症の診療.臨床神経学.2012;52(7)469-479. p476 ▼首のヘルニアのリハビリテーションについて解説しています 頚椎椎間板ヘルニアのリハビリ方法や効果と注意点!
公開日:2024.10.07 -
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頚椎ヘルニアは座りっぱなしの人に多い病気で、腕や首の痛み・痺れが特徴です。 「頚椎ヘルニアにはストレッチが有効」という情報を耳にして、具体的にどのような動きをすれば良いのか疑問に思っているのではないでしょうか。 結論、頚椎ヘルニアは首の疾患ですが、実は首だけでなく胸のストレッチ・運動も重要といわれています。 そこでこの記事では、頚椎ヘルニアに対して有効なストレッチのやり方や注意点をくわしく解説します。頚椎ヘルニアでお困りの方はぜひチェックしてください。 頚椎ヘルニアに効果的なストレッチ5選 結論からいえば、頚椎ヘルニアには首・胸のストレッチが効果的と考えられています。 頚椎ヘルニアは頚椎(首の骨)の間にある椎間板と呼ばれるクッションが変性してしまい、後ろに押し出されることで神経を圧迫する病気です。頚椎は本来後ろ向きに湾曲していますが、なんらかの原因で首が前に倒れると椎間板が後ろに押し出されやすくなります。 頚椎が前に倒れる原因は、ストレートネックや猫背といった不良姿勢です。 不良姿勢は首や胸の筋肉の緊張によって引き起こされることも多いため、ストレッチが効果的と考えられています。つまり、不良姿勢を改善するストレッチが頚椎ヘルニアの予防・改善につながるのです。 ここからは首・胸の部位にわけてストレッチの方法を解説します。頚椎ヘルニアでお悩みの方はぜひ最後までチェックしてください。 僧帽筋・肩甲挙筋のストレッチ 首のストレッチでは、僧帽筋(そうぼうきん)・肩甲挙筋(けんこうきょきん)という首〜肩甲骨にかけてついている筋肉を伸ばします。これらは首の後ろに位置するため、固まると頭が前方に突出し、ストレートネックの原因になりかねません。 僧帽筋・肩甲挙筋をストレッチすればストレートネックの改善につながる可能性があります。 アゴを首に近づけるように後ろに引きながらストレッチすることがポイントなので、ぜひ参考にしてください。 首を動かす僧帽筋・肩甲挙筋のストレッチ 1. 椅子に座って正面を向く 2. 左手を頭頂部に置き、右のこめかみ付近に指先を当てる 3. 手の重みを利用してゆっくり左側に頭を傾ける 4. 15秒から30秒程度キープする 5. 元の位置に戻す 6. 左手を後頭部に回し、指先を右耳の後ろに当てる 7. 手の重みを利用してゆっくり左前側に傾ける 8. 15秒から30秒程度キープする 9. 元の位置に戻す 10. 反対も同様に行う このストレッチは息を止めてしまいやすいため、呼吸を意識しながら行いましょう。 また、手で強く押さえつけると首を痛める原因となります。手や頭の重みを血要する程度にとどめ、ゆっくりストレッチしてください。 肩を動かす僧帽筋・肩甲挙筋のストレッチ 1. 椅子に座ってアゴを引き、リラックスする 2. できるだけ強く肩をすくめて持ち上げる 3. 持ち上げ切ったところで肩を止め、5秒間保持する 4. 5秒経ったら力を抜き、ストンと落とす 5. 10〜20回繰り返す このストレッチでは力を入れるところと抜くところのメリハリが重要です。 しっかりと力を入れて肩を持ち上げて、一気に脱力するように意識すればより僧帽筋・肩甲挙筋が伸びるでしょう。 また、ストレッチ中はアゴが上がらないように注意してください。 大胸筋のストレッチ 大胸筋は胸の前方〜鎖骨・腕にかけてついている筋肉です。 大胸筋が固くなると鎖骨や腕が前に引っ張られ、猫背になってしまうことがあります。猫背になると同時に首も前方に倒れ、頚椎ヘルニアの原因になりかねません。 こまめに大胸筋のストレッチを行い、猫背や頚椎ヘルニアを改善しましょう。腕や体を大きく動かしながらストレッチするとよく伸びるので、ぜひ試してください。 立ってできる大胸筋のストレッチ 1. 壁に対して横向きに立つ(右側が壁になるように) 2. 右側の手のひらと腕を壁につける(肩と肘が同じ高さになる位置) 3. ゆっくり体を左側にひねる 4. 右胸の前側が伸ばされるのを感じた状態で15秒から30秒キープする 5. 反対側も同様に行う ポイントは手のひらを壁につけたまま、しっかりと体を捻ることです。体の捻りに腕がついてくると大胸筋のストレッチが弱くなるため、壁に手をつけたまま動かないように体を捻ってください。 座ってできる大胸筋のストレッチ 1. 椅子の背もたれから少し体を離してまっすぐ座る 2. タオルを持ったままバンザイする 3. タオルを引っ張るように腕を開きながら腕を後ろに引く 4. 肩甲骨を背骨に寄せるようにしながら肘を曲げていく 5. バンザイ→肘を曲げる動作を10回程度繰り返す このストレッチでは、胸を張るように肩甲骨を背骨に寄せる動きが重要です。 また、腕を開いて肘を曲げていく際に頭が下を向きやすいため、頭の位置を変えないように注意してください。 寝ながらできる大胸筋のストレッチ 1. 横向きに寝て、上になった側の足を前に出す 2. 上になった側の手を天井に向けて伸ばす 3. 上に伸ばした手を手のひらが前に向いたまま背中に向かって倒していく 4. 後ろに倒した手を元に戻し、10回繰り返す 後ろに倒すときには、肘をしっかり伸ばしたまま倒すようにこころがけてください。 また、後ろに倒しながら息を吸うことで胸が膨らみ、大胸筋が伸びやすくなります。 頚椎ヘルニアの原因は「ストレートネックや猫背」 そもそも頚椎ヘルニアとは、首の骨(頚椎)の間にある椎間板が圧迫されることで、椎間板の中にある髄核(ずいかく)が後ろに突出し、首の後ろにある神経が圧迫される病気です。 頚椎ヘルニアの主な原因は、猫背やストレートネックなど首が前に倒れる不良姿勢です。また、加齢や飲酒・喫煙などの生活習慣の乱れによって起こることもあります。 猫背やストレートネックが原因で頚椎ヘルニアを発症した場合、首や胸のストレッチを行うことで症状が緩和・改善する可能性があります。 しかし、不良姿勢以外が原因である場合は、ストレッチのみでの症状改善は難しいかもしれません。放置すると首〜腕にかけての痛みや痺れが悪化したり、歩行が困難になったりする可能性もあるため、ストレッチをしても症状の変化がない場合には、早めに整形外科を受診しましょう。 ちなみに、当院リペアセルクリニックでは再生医療を中心に、頚椎ヘルニアの治療にも取り組んでいます。頚椎ヘルニアに対しての治療で気になる方は、メール相談もしくはオンラインカウンセリングでお気軽にご相談ください。 頚椎ヘルニアの初期症状についての記事はこちら: 頚椎ヘルニアの詳しい原因と症状についての記事はこちら: ストレッチ以外で頚椎ヘルニアを予防するポイント2つ 頚椎ヘルニアの症状を改善・予防するためには、生活習慣の改善と筋トレが効果的です。 乱れた生活習慣や筋力の低下は猫背やストレートネックにつながるため、意識して改善することで頚椎ヘルニアの改善・予防効果が期待できます。 それぞれどのような効果があるのか、詳しくみていきましょう。 生活習慣の改善 生活習慣の改善には、以下に挙げる3つに気をつけてください。 不良姿勢の改善 適切な枕の使用 首に負担のかかる生活の改善 猫背やストレートネックといった不良姿勢は頚椎ヘルニアを強めるため、普段から姿勢を正す意識を持ちましょう。 また、枕の高さが合っていないと寝ている間首への負担が強くなるため、適切な高さに調整することをおすすめします。 首に負担がかかる生活、とくにスマホの見過ぎには注意が必要です。スマホの見過ぎによってストレートネックになることが予想されるため、姿勢を正して使う意識を持ってください。 なお、以下の記事でも頚椎ヘルニアで注意してほしいことをご紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。 筋トレ 頚椎ヘルニアの原因に多い猫背やストレートネックは、体幹を中心とする筋トレによって矯正できる可能性があります。体幹を鍛え、猫背やストレートネックが解消されれば、頚椎ヘルニアの改善にもつながるでしょう。 ただし、筋トレをするにあたって痛みが強い場合には避けてください。痛みがあるにもかかわらず無理に筋トレをすると、頚椎ヘルニアの症状を強めてしまう可能性があります。 無理のない範囲での筋トレをこころがけ、少しずつ取り組むことが大切です。 まとめ|頚椎ヘルニアには首と胸のストレッチが重要!早めの受診も検討しよう 頚椎ヘルニアに効果的なストレッチは、首だけでなく胸を伸ばすのがポイントです。とくに僧帽筋・肩甲挙筋・大胸筋に対するストレッチをして、猫背・ストレートネックといった不良姿勢の改善を目指しましょう。 毎日続けることでより効果が出やすくなる可能性が高いため、少しずつでも良いので取り組んでみてください。 ストレッチを続けても効果が出ない場合や、腕・首の痛みが強い場合は、整形外科の受診がおすすめです。整形外科ではストレッチでは改善しなかった頚椎ヘルニアに対して、薬物療法や注射といった選択肢があり、専門的な治療が可能です。 ちなみに当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による頚椎ヘルニアの治療も行っています。もしあなたが頚椎ヘルニアの治療法で悩んでいるのであれば、ぜひメール相談もしくはオンラインカウンセリングにてお気軽にご相談ください。 この記事が少しでも頚椎ヘルニアの症状緩和につながれば幸いです。 頚椎ヘルニアについてよくある質問 頚椎ヘルニアはストレッチで良くなりますか? 頚椎ヘルニアはストレッチをすれば症状が改善する可能性があります。 しかし、頚椎ヘルニアの程度が重度である場合、ストレッチのみでは改善しないかもしれません。その場合には、できるだけ早い整形外科への受診をおすすめします。 頚椎ヘルニアに筋トレは有効ですか? 頚椎ヘルニアの原因が不良姿勢の場合、筋トレが有効といえます。 頚椎ヘルニアの原因である猫背・ストレートネックなどの不良姿勢は、筋力不足によって引き起こされることがあります。筋トレによって不良姿勢が改善されれば、頚椎ヘルニアの症状も和らぐ可能性があるでしょう。 ただし痛みや痺れがあるにもかかわらずトレーニングを行うと逆効果になってしまうため、注意が必要です。整形外科の医師に相談の上、無理のない範囲で行いましょう。
公開日:2024.11.06 -
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頚椎椎間板ヘルニア、原因と症状、首や肩の痛みからわかることを解説します 首が痛い、手がしびれるなどの症状で悩む場合は、頚椎椎間板ヘルニアの可能性があります。頚椎椎間板ヘルニアはどなたでも発症する可能性がある疾患の1つであり、首の神経が圧迫されることによりさまざまな症状が現れます。 本記事では頚椎椎間板ヘルニアとはどのような疾患か、頚椎椎間板ヘルニアを発症する原因や症状の変化について解説します。特に首や肩が痛い方や手にしびれがある方など、頚椎椎間板ヘルニアを疑う症状がある方はぜひ参考にしてください。 頚椎椎間板ヘルニアとは 人の首には7個の頚椎(けいつい)と呼ばれる骨があり、頚椎と頚椎の間には椎間板(ついかんばん)という組織があります。頚椎椎間板ヘルニアはこの椎間板が一般的に後ろ向きに飛び出る疾患です。椎間板には首の骨をつなぎあわせるクッションのような役割があり、椎間板が動くことで首が回ったり曲がるなど可動できます。 椎間板はやわらかい組織である髄核のまわりを、固い繊維輪と呼ばれる組織が取り巻いています。そして線維輪がダメージを受けてひびが入ると、中身の髄核が外に飛び出してきて椎間板ヘルニアの状態となります。 頚椎椎間板ヘルニアは30~50代に多く発症し、さまざまな症状により日常生活に支障が生じることがある疾患です。 頚椎椎間板ヘルニアの原因 頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎の椎間板の中にある髄核が脱出することが原因ですが、以下のようなことが原因となり発症することがあります。 原因について ・加齢による椎間板の衰え ・激しく体をぶつけあうスポーツ ・急に強い力が首にかかるスポーツ ・首を前に突き出す動作、反り腰、猫背などの姿勢の悪さ ・喫煙による血行不良での椎間板の劣化 ・合わない枕の使用など、寝方の姿勢 脱出する最大の原因は、加齢による椎間板機能の衰えです。首にある椎間板は、常に頭を支えているため老化しやすいと考えられています。 また、最近では加齢以外でも、スポーツや姿勢の悪さが原因となることもあります。 格闘技や柔道、ラグビー、アメリカンフットボールなど激しく体をぶつけあうスポーツや、急に強い力が首にかかる器械体操やスキー、スノーボードなどでも発症します。 そして、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの画面を見ようとして首を前向きに突き出す動作や、反り腰、猫背なども頚椎椎間板ヘルニアを発症する原因になるため注意が必要です。 そのほか、タバコにより毛細血管の血流が悪くなって椎間板が劣化しやすくなるため、禁煙するようにしましょう。また、寝方によって頚椎椎間板ヘルニアが発症しやすくなり悪化することがあるため、自分に合った枕を使うのがおすすめです。 頚椎椎間板ヘルニアの症状 頚椎椎間板ヘルニアの主な症状は、首が痛い、首がこる、手がしびれる、力が入りにくいなどさまざまな症状が現れます。 椎間板ヘルニアの症状は、原因である髄核の脱出によって圧迫される部位により、大きく2つに分けられます。 一般的に椎間板ヘルニアは、脊髄と呼ばれる脳につながる神経の束がある背中側(後ろの方)に髄核が飛び出しますが、脊髄の左右には脊髄から分岐した神経根という神経があります。髄核が脊髄を圧迫すれば脊髄症、神経根を圧迫すると神経根症の症状が現れます。 脊髄症の症状 脊髄症の代表的な症状は手のしびれです。手のしびれはどちらか片側のみの場合と、時間がたつと反対側にも現れることがあります。 また、手指を細かく動かせなくなって衣服のボタンをとめたり外したりしにくくなる、お箸をうまく使えなくなるなどの症状も出現します。そして次第に手指だけではなく足がこわばってきて、階段の昇り降りがしにくく歩きにくいという痙性(けいせい)歩行と呼ばれる症状も認めます。 神経根症の症状 神経根症の場合は、主に首から肩、手指にかけての痛み、しびれが現れます。 また、多くの場合には両側ではなく片側にのみ認めます。飲料水を飲む時やうがいをする時などに首を後ろ側に傾けると、神経根がより一層圧迫されることで症状が増強するのが特徴です。 頚椎椎間板ヘルニアによる症状の変化 頚椎椎間板ヘルニアを初期症状、中期症状、後期症状の3段階に分けて説明します。 頚椎椎間板ヘルニアは、このように発症段階によって症状の現れ方が異なります。しびれや痛みが強まり、症状が進行すると手術が必要になることもあるため、放っておかずに早めの対処することが大切です。 頚椎椎間板ヘルニアの初期症状 初期の頃は首や肩に違和感が出たり鈍い痛みを感じたりしますが、動かずに安静にすれば症状は改善します。初期段階で医師の診察を受ければ約1~8週間で症状はおさまります。 頚椎椎間板ヘルニアの中期症状 中期の段階になると、首や肩にはっきりとした痛みやしびれを認めるようになり日常生活にやや支障が出てきます。 この段階で病院を受診すれば、初期段階と同様に約1~8週間で症状は改善していきますが個人差が大きいです。 具体的には、痛み止めなどを使いながら安静に過ごしたりリハビリテーションを行ったりします。 頚椎椎間板ヘルニアの後期症状 後期の段階では、首や肩の痛みやしびれが強くなるとともに、顔や手指、足などにも痛みやしびれが広がることがあります。強い症状が影響して首がスムーズに動かせなくなり、基本的には手術が必要な状態です。 具体的には約2週間の入院中に患部の手術とリハビリテーションや薬物療法を行います。手術は体への負担が大きいとともに、脊髄損傷と呼ばれる術後合併症が起こるリスクもあります。 そして退院後も定期的な通院が必要なため、治療期間は数ヶ月から約1年かかってしまいます。 まとめ・頚椎椎間板ヘルニア!原因と症状 頚椎椎間板ヘルニアは、首の骨を支える椎間板の一部が飛び出て神経を圧迫することでさまざまな症状が現れる疾患です。椎間板が脱出する原因として、加齢やスポーツ、悪い姿勢、生活習慣などがあげられます。 頚椎椎間板ヘルニアの主な症状は首や肩の痛みやしびれですが、進行するにつれて症状が強まるとともに、手指や足などにも症状が現れる場合があります。症状が増悪すると手術が必要になることもあるため、首の痛みに気づいたら早めに医療機関を受診するようにしましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼首のヘルニアのセルフストレッチなどご自分でできる事は解説しました 頚椎(首)椎間板ヘルニアを自分で治す!ストレッチと予防のポイント
公開日:2024.10.17 -
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頚椎椎間板ヘルニアの初期症状を見逃さないための3つのポイントを解説します 次のような症状でお困りの方は、もしかすると頚椎椎間板ヘルニアを発症しているかもしれません。 「首が痛いけど寝違えかな?」 「手がしびれている気がする…」 頚椎椎間板ヘルニアは、発症すると非常につらい痛みが出現し、病状によっては手足を使うことが難しくなることもあります。 薬や負担を避けることで症状が落ち着く人がいる一方、生活が不自由になり手術を受ける方もおられます。本記事では、「頚椎椎間板ヘルニアの初期に見られやすい3つの症状」と、「治療の流れ」や放置するとどうなるか?を解説します。 頚椎椎間板ヘルニアの初期に見られやすい3つの症状 頚椎椎間板ヘルニアは、頚椎(首の骨)間のクッションである「椎間板」組織の一部が何らかの理由で本来の場所から逸脱することで起こる疾患です。この椎間板は年齢とともに成分である水分がぬけてきて、脆くなりヘルニアとして突出してきます。「ヘルニア」という言葉は臓器や組織が本来あるべき場所からはみ出してしまうことを指します。 頚椎椎間板ヘルニアの初期に見られやすい3つの症状 ①首の痛み ②片方の腕や手の痛み・痺れ ③両手の痺れ・感覚障害 ①首の痛み 首の痛みは頚椎椎間板ヘルニアの最初期の症状です。 頚椎椎間板ヘルニアの症状の特徴は急激な発症です。ある日突然に首が痛い、とくに後ろが痛いと感じます。寝違えのような疼痛で、後頭部や肩甲骨周りまで痛みが広がることもあります。 ②片方の腕や手の痛み・痺れ 片方の肩から腕、手にかけての痛みや痺れは「神経根の圧迫」が起こることで認められる症状の典型例です。 「神経根」とは脊髄から体の各部位に伸びる神経の付け根のことです。各椎体と椎体の間から、左右それぞれに1本ずつ神経の束が伸びていきます。 神経根が出てくるのは椎体の外側やや後ろです。椎間板組織がやや斜め後ろに飛び出すことにより神経根の圧迫が起こると、その神経の領域を中心に強い痛みをはじめとした症状が起こります。 頚椎から伸びる神経は主に肩から腕、手にかけて分布する神経です。そのため頚椎椎間板ヘルニアの神経根症状は主に肩・腕・手に認められます。症状は圧迫された側のみに起こるため、左右どちらか一方のみが痛んだり痺れたりします。 神経根圧迫による症状は「電気が走るような」「ビリッとした」などと表現されることが多いです。ときに激痛となり、日常生活が困難になる人もいます。 ③両手の痺れ・感覚障害 片手でなく両手が痺れる場合はヘルニアによる「脊髄」のダメージが起こっている可能性があります。脊髄は椎体(いわゆる背骨)の真後ろを走っています。椎間板の組織が体の後方へ飛び出すことで、脊髄が圧迫されます。 脊髄の圧迫による症状は指先から始まり、徐々に範囲が広がっていくことが多いです。片側から始まることも多いですが、最後には両手に認めます。感覚も鈍くなります。その後はさらに体幹部や足へも症状が広がっていきます。 神経根の圧迫と異なり、脊髄の圧迫では強い痛みはあまり感じません。「なんとなく痺れた感じがする」という一見軽そうな症状が、実は脊髄圧迫のサインであるかもしれないのです。 鑑別診断として、ALSなど神経系疾患、糖尿病の合併症である末梢神経障害、手根管症候群、足根管症候群なども注意しなければいけません。 初期段階で対応しない(放置すると)と何が起こるか 神経根症状の場合は悪化すると、支配神経の感覚障害や筋力低下が起こることがあります。 ただし、神経根症状の場合は安静を心がけるだけでも約2ヶ月から3ヶ月で自然治癒する方も多くいます。 一方、脊髄圧迫の症状が進行すると厄介です。進行していくと、まず手の「巧緻(こうち)性運動障害」が起こります。細かく指を使う動作が難しくなり、箸を使う・ボタンをかける・文字を書くなどの当たり前にできていたことができなくなるのです。 続いて、足の運動障害により歩行が難しくなります。さらに進行すると排尿のコントロールに重要な神経の障害が起こり、頻尿・残尿感・失禁などを認めることもあります。 脊髄圧迫の症状が進行すると ①手の「巧緻(こうち)性運動障害」が起こる ・細かく指を使う動作が難しくなる。 ・箸を使う、ボタンをかける、文字を書けなくなる ・当たり前にできていたことができなくなる ②足の運動障害 ・歩行が難しくなる。 ③さらに進行すると ・排尿の障害 ・頻尿、残尿感、失禁 治療について 初期の症状のうちは保存療法が基本です。 保存療法 最も重要なのは首の安静を保つことです。特に後屈動作、つまり顎を上げる動作は症状悪化の原因になります。なるべく首を動かさないように、頚椎のカラーという装具の使用を指示されることもあります。 痛みが強いときは鎮痛薬の内服やブロック注射など選択肢です。 手術療法 一方、脊髄症状が進行してしまい、巧緻運動障害・歩行障害・排尿障害などが起こると手術を考えることになります。また、神経根症状でも治療抵抗性の場合は手術が選択肢となります。しかし、脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。脊髄に対する幹細胞に対する再生医療というものがあります 頚椎椎間板ヘルニアについてよくある質問 Q:頚椎椎間板ヘルニアが心配です。何科に受診すれば良いでしょうか? 頚椎椎間板ヘルニアをはじめとした頚椎疾患は次のいずれかの診療科で診察を受けることができます。 ・整形外科 ・脳神経外科 ただし、これらの診療科であっても医師によって専門領域が異なることもあります。場合によっては他の病院や診療科に紹介となる可能性も否定できません。 受診希望時に迷うようであれば予め「頚椎の病気」を診てもらえるか問い合わせをしておくとスムーズです。 Q:頚椎椎間板ヘルニアはレントゲンで分かりますか? レントゲンで確定診断をすることはできません。同様の症状をきたす他の病気がないかを診る目的で行います。 頚椎椎間板ヘルニアがあるかどうかはMRI撮影を行って調べます。 まとめ・頚椎椎間板ヘルニアの初期症状を見逃さないための3つのポイント 頚椎椎間板ヘルニアはときに自然軽快することもある疾患です。しかしながら、人によっては急激に悪化し、麻痺などの重い神経症状を認めることもあります。 一度重症化してしまうと手術を行わなければならないこともあり、早期に診断して適切な治療を行うことが望ましいです。 今回ご紹介した「首の痛み」「片方の腕や手の痛み・痺れ」「両手の痺れ・感覚障害」があれば、早めに病院を受診しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼こちらのご覧になりませんか 参考文献 山崎正志. 臨牀と研究. 97(7): 790-796, 2020. 鎌田修博. 整形外科看護. 12(9): 856-858, 2007. 中川幸洋. MB Orthop. 33(3): 27-34, 2020. 吉井俊貴, 江川聡. MB Orthop. 30(10): 7-13, 2017. ▼首のヘルニアについて症状のレベルは以下をご覧ください 頚椎椎間板ヘルニアの症状レベル、軽度から重度まで医師が解説!
公開日:2024.10.07