-
- 糖尿病
- 内科疾患
糖尿病は症状が進行していくと、失明といった重大な合併症を発症する場合があります。しかも痛みなく進行するため、前兆に気づくことが視力を守るためには必要です。 本記事では、糖尿病で失明を招く具体的な前兆サイン、進行の仕組み、予防法や治療法まで専門的にわかりやすく解説します。糖尿病の失明が気になる方は、ぜひ参考にしてください。 糖尿病による失明の前兆症状 糖尿病は血糖値が高い状態が続くことで全身の血管を傷つけ、目の奥にある網膜の血管も傷つけられます。これにより「糖尿病網膜症」を発症し、進行すると失明につながることもあります。初期は自覚症状が少なく気づきにくいですが、以下のようなサインが現れたら注意が必要です。 かすみ目・視界のぼやけ 網膜の血流が悪化し、ピントが合いにくくなる 暗い所で見えにくい 網膜の細胞がうまく働かず、薄暗い場所で視界が悪くなる 飛蚊症や黒い点が増えた 硝子体出血や網膜剥離の兆候で、視界に糸くずや黒い点が浮かぶように見える 視野が欠ける・ゆがむ 網膜や黄斑部のむくみ、出血などで、見える範囲が狭くなったり歪んで見えることがある 急激な視力低下 網膜剥離や大きな出血など、失明に直結する深刻な状態 糖尿病網膜症の症状を放置すると、進行して回復が難しくなる場合があります。少しでも「おかしいな」と感じたら早めに眼科を受診し、専門的な検査を受けましょう。 【失明の前兆】糖尿病網膜症の進行と症状 糖尿病網膜症は血糖値が高い状態が続くことで網膜の血管が障害され、段階的に進行します。初期から末期にかけて症状も変化し、最終的には失明のリスクが高まります。 初期|単純糖尿病網膜症 糖尿病網膜症の初期段階は「単純糖尿病網膜症」と呼ばれ、自覚症状がほとんどないのが特徴です。自分では見え方に変化を感じにくいため、気づかないまま進行してしまいます。 初期の症状は以下のとおりです。 点状出血 硬性白斑 網膜浮腫 網膜内の細い血管が高血糖の影響で傷つき、血液や脂質が漏れ出すことで起こります。網膜浮腫によるむくみが進むと視力への影響が出ることもあります。初期段階では血糖値を適切に管理し、食事療法や運動療法、薬物療法を徹底すれば進行を防ぐことが可能です。 眼科での定期的な検査により、わずかな変化を早期に発見し、適切な治療を行うことが大切です。 中期|増殖前糖尿病網膜症 増殖前糖尿病網膜症は糖尿病網膜症の中期段階で、血管障害が進み、より深刻な変化が現れます。多くの場合、この段階でも自覚症状はほとんどなく、異変を感じることはまれです。 中期の症状は以下のとおりです。 軟性白斑 網膜内細小血管異常 軟性白斑は網膜の酸素不足を示すサインで、網膜内細小血管異常は血流が阻害されていることを意味します。進行を抑える治療としては、レーザー光凝固で異常血管を封じ込めたり、抗VEGF薬注射やステロイド注射でむくみを軽減したりします。 進行を防ぐためには、血糖管理を継続し、眼科での定期検診を受けることが不可欠です。 末期|増殖糖尿病網膜症 糖尿病網膜症がさらに進行し末期になると「増殖糖尿病網膜症」と呼ばれ、失明の危険性が非常に高くなります。高血糖により網膜が酸素不足になると、新生血管が異常に増殖し、さまざまな深刻な合併症を引き起こします。 末期の症状は以下のとおりです。 硝子体出血 新生血管の増殖 急激な視力低下 牽引性網膜剥離 新生血管は非常にもろく破綻しやすいため、硝子体出血により視界が急に真っ暗になることもあります。瘢痕組織が網膜を引っ張り牽引性網膜剥離を起こすと、急速な視力喪失が生じます。 治療にはレーザー治療(汎網膜光凝固術)や硝子体手術などが必要です。進行を防ぐには、早期の診断と治療、血糖管理、そして眼科での定期的なフォローが不可欠です。視力を守るため、少しでも異変を感じたらすぐに受診しましょう。 【前兆症状を防ぐ】糖尿病で失明しないための予防法 糖尿病による失明を防ぐためには、毎日の管理と定期的な検査が欠かせません。以下のポイントを意識して予防に取り組みましょう。 血糖コントロール:血糖値を適切に管理し、網膜へのダメージを防ぐ 血圧・脂質管理:高血圧や脂質異常症を改善し、血管障害を予防する 有酸素運動:ウォーキングなどを習慣にし、血糖値や血圧を安定させる 食事の管理:バランスの良い食事でカロリー・糖質をコントロールする 定期的な眼底検査:自覚症状がなくても早期発見のために検査を欠かさない 日々意識して実践すると、糖尿病網膜症の進行を抑え、失明のリスクを大きく減らせます。医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った計画を立て、無理なく続けることが大切です。 失明の前兆段階で適用される糖尿病網膜症の治療法 糖尿病網膜症は進行度に応じてさまざまな治療法があります。失明リスクが高まる前兆段階で適切な治療を受ければ、糖尿病網膜症の進行を抑えることが期待できます。以下は主な治療法です。 血糖コントロール レーザー光凝固術 硝子体手術 抗VEGF療法 再生医療 血糖コントロール 糖尿病網膜症の進行を防ぐためのもっとも基本的な治療は、血糖コントロールです。血糖値が高い状態が続くと、網膜の血管が傷つき、病変が進行しやすくなります。糖尿病治療ではインスリン療法や内服薬を活用し、血糖値を適正範囲に維持することを目指します。食事療法や運動療法を組み合わせ、血糖変動の抑制が非常に大切です。 生活習慣の見直しも欠かせません。バランスの良い食事、適度な運動、規則正しい生活を続ければ全身の血管障害を予防できます。医師や栄養士と相談しながら無理なく継続しましょう。 定期的な血液検査や通院を通じて経過をしっかり管理すれば、合併症の早期発見や治療につながります。ご自身の健康状態を理解し、専門医と二人三脚で取り組むことが大切です。 レーザー光凝固術 レーザー光凝固術は、糖尿病網膜症の進行を抑えるための標準的な治療法です。網膜が酸素不足になると、異常な新生血管が増殖しやすくなり、出血や網膜剥離を引き起こす危険性が高まります。レーザー光凝固術では網膜の虚血部分にレーザーを照射し、組織を凝固させることで酸素需要を抑え、新生血管の発生を予防します。 レーザー光凝固術により、視力低下の進行を抑えられます。ただし、レーザー治療は進行を完全に止めるものではなく、血糖コントロールや定期検診と組み合わせて総合的に管理する必要があります。 早期発見と適切なタイミングでの治療が、視力を守るための大切なポイントです。治療の際は専門医が丁寧に説明を行い、患者様の不安を取り除きながら進めます。 硝子体手術 硝子体手術は、進行した糖尿病網膜症による重篤な合併症に対する治療法です。網膜剥離や硝子体出血が発生した場合、レーザー光凝固術だけでは十分な効果が得られなかった場合に実施されます。 手術では、目の中にある濁った硝子体を除去し、出血や瘢痕を取り除いた上で、網膜を正しい位置に再付着させる処置を行います。急激な視力低下を改善し、さらなる失明を防ぐことを目指します。術後のケアや経過観察も重要になるため、定期的な受診は必要です。 手術の適応やタイミングは患者様一人ひとりの眼の状態に合わせて慎重に判断します。不安な点や疑問があれば担当医に相談してみましょう。 抗VEGF療法 抗VEGF療法は、糖尿病網膜症によって生じる黄斑浮腫を抑制するための治療法です。VEGF(血管内皮増殖因子)は新生血管の増殖を促進し、血管の透過性を高めて黄斑部にむくみを生じさせます。抗VEGF薬を眼内に注射するとVEGFの働きを抑えられるため、むくみが軽減でき視力の維持につながります。 治療は一度で終わるものではなく、症状に応じて繰り返しの注射が必要な場合も多いです。黄斑浮腫は視力低下の大きな原因となるため、早期治療が非常に重要です。眼科専門医が患者様の眼の状態を詳しく評価し、適切な治療計画を立てながら進めます。 再生医療 糖尿病網膜症に対する新たな治療アプローチの一環として、再生医療があります。患者様ご自身の脂肪組織から採取した細胞を培養し、身体に戻す治療法です。当院では再生医療に関する情報や現状をご説明し、患者様に合った治療をご案内しています。 ご関心のある方は、まずはお気軽にご相談ください。ご不明点や不安な点についても丁寧にお話をさせていただきます。 糖尿病による失明を防ぐためにも前兆を見逃さず早期に医療機関を受診しよう 糖尿病網膜症は初期には自覚症状がほとんどなく進行し、気づいたときには重度になっていることも珍しくありません。失明を防ぐには、血糖値のコントロールをしっかり行った上で、内科での定期受診の継続が必要です。目の状態を把握するために眼科の定期受診も欠かせません。視界のかすみやぼやけ、見え方の違和感など、わずかな前兆を見逃さないようにしましょう。 「気になる症状があるけれど受診して良いのかな」と迷わずに、早めに専門医を受診すれば、進行を抑える治療につなげることが可能です。当院でも、糖尿病と目の健康に関する再生医療についてのご相談を受け付けておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。 糖尿病による失明の前兆についてよくある質問 糖尿病網膜症は痛みがなくても進行しますか? 糖尿病網膜症は網膜の血管が傷つき変化していく病気ですが、網膜には痛覚がないため、進行していても痛みを感じることはありません。そのため患者様自身が異変に気づかず、病気がかなり進行してから初めて自覚症状が出るケースも多いのが特徴です。 ただし、飛蚊症(視界に黒い点や糸くずが見える)、視野の一部が欠ける、ゆがんで見えるなど、痛みの代わりに現れる前兆症状が出る場合もあります。症状を見逃さず、少しでも見え方に異変を感じたら早めに眼科を受診しましょう。定期的な検査での早期発見が失明を防ぐポイントです。 糖尿病は血糖値が下がればよくなりますか? 糖尿病網膜症は、血糖値が高い状態が続くことで網膜の血管にダメージを与え、進行していく病気です。血糖値を下げることで傷んだ血管を元に戻すことはできませんが、進行を抑えることは可能です。 血糖コントロールをしっかり行えば、新たな血管障害を防ぎ、既存の病変の悪化を抑えられます。内科での治療を継続し、食事療法や運動療法を取り入れることが重要です。網膜症の進行度に応じた眼科での治療や定期検査を併用し、視力を守るための総合的な管理をしましょう。
2025.07.31 -
- 糖尿病
- 内科疾患
糖尿病性腎症と診断されると、「何を食べたら良いの?」「献立をどう考えれば良いの?」と戸惑う方も多いでしょう。 腎症は腎機能の低下が進むと、やがて透析が必要になるリスクがあります。しかし、早い段階から食事を管理することで進行を抑え、腎臓を守ることが可能です。 本記事では、糖尿病性腎症のリスクを理解した上で「なぜ食事療法が必要なのか」、そして「具体的に何をどう食べれば良いのか」まで、わかりやすく解説します。 日々の献立作りのコツや外食・コンビニを利用する際の工夫も紹介します。今日から実践できる食事管理のポイントをぜひ参考にしてください。 糖尿病性腎症の食事の具体的な献立例 糖尿病性腎症では、たんぱく質や塩分を控えつつ栄養バランスを整えることが大切です。 ここから、朝食、昼食、夕食それぞれの具体的な献立例とレシピをご紹介します。 朝食の献立例 メニュー 材料 ごはん ・低たんぱくごはん1/25 180g(1パック) みそ汁(麩・ねぎ) ・みそ 10g ・だし汁 130cc ・麩 2g ・ねぎ 25g かんぴょうの炒め煮 ・かんぴょう 5g ・にんじん 20g ・ごま油 3g ・砂糖 3g ・しょうゆ 4g ・だし汁 30cc くだもの(オレンジ) ・オレンジ 50g(1/3個) 味付のり・紅茶 ・紅茶 1パック+粉飴40g ・味付のり 2g(1袋) (文献1) このメニューの栄養は、586kcal、たんぱく質18.8g、塩分2.0gでした。(文献1) 昼食の献立例 メニュー 材料 ごはん ・低たんぱくごはん1/10 180g(1パック) チキンカツ ・鶏もも皮なし 70g ・こしょう 少々 ・小麦粉 3g ・生パン粉 10g ・油 9g ・キャベツ 20g ・レモン 10g ・パセリ 2g ・ソース 5cc 海草サラダ ・サラダ用海草 25g ・きゅうり 20g ・ミニトマト 1個 ・ドレッシング 10g さやえんどうの和風ソテー ・さやえんどう 20g ・エリンギ 30g ・生しいたけ 10g ・油 3g ・塩 0.3g ・こしょう 少々 ・しょうゆ 2g (文献1) チキンカツの作り方は以下のとおりです。 鶏肉を観音開きにし、こしょうを振って下味をつける。 小麦粉を水で溶いた衣をくぐらせ、次にパン粉をまぶす。 油でカラリと揚げたら、皿に千切りキャベツを添えて盛り付ける。 仕上げにレモンとパセリを飾る。 このメニューの栄養は、586kcal、たんぱく質18.8g、塩分2.0gでした。(文献1) 夕食の献立例 メニュー 材料 ごはん ・低たんぱくごはん1/10 180g(1パック) さわらの照焼 ・さわら 40g ・しょうゆ 2g ・みりん 3g ・料理酒 1g ・油 1g ・しその葉 1g(1枚) ・甘酢生姜漬 10g かぼちゃの含め煮 ・かぼちゃ 60g ・生しいたけ 20g(1枚) ・砂糖 3g ・みりん 3g ・しょうゆ 3g ・だし汁 20cc マヨネーズ和え(もやし・にんじん) ・もやし 50g ・にんじん 10g ・マヨネーズ 15g ・しょうゆ 3g ・からし 少々 マクトン入り胡麻豆腐 ・マクトンゼロパウダー 20g ・黒すりごま 1.5g ・水 50cc ・粉寒天 0.4g(1/10袋) ・生姜 2g ・しょうゆ 3cc (文献1) マクトン入り胡麻豆腐の作り方は以下のとおりです。 鍋に水と粉寒天を入れて混ぜながら加熱し、寒天をしっかり溶かす。 寒天が完全に溶けたら、さらに2~3分ほど煮詰めて火を止める。 火を止めたら、マクトンパウダーと黒すりごまを加え、よく混ぜながら粗熱を取る。 粗熱が取れたタイミングで型に流し入れ、冷蔵庫で冷やし固める(熱いままだと層が分かれてしまうので注意する)。 型から取り出して器に盛り付け、おろし生姜を添え、しょうゆをかけていただく。 マクトンゼロパウダーは、消化吸収が良く速やかにエネルギーになる粉末油脂です。たんぱく質0gで高エネルギー(100gあたり789kcal)。どんな料理にも手軽に使え、効率的なエネルギー補給に便利です。 このメニューの栄養は、736kcal、たんぱく質12.8g、塩分2.1gでした。(文献1) 糖尿病性腎症は食事管理が重要!献立が必要な理由 糖尿病性腎症の食事療法の最大の目的は、腎不全への進行防止です。 腎臓は血液中の老廃物を排出する重要な役割を担いますが、糖尿病によって徐々にダメージを受け、機能が低下していきます。とくにたんぱく質を多く摂ると腎臓への負担が増えるため、摂取量を適切に制限し、塩分やエネルギー、カリウム、リンなども管理していかなければなりません。 食事管理を怠ると腎症が進行し、最終的には透析治療が必要になる可能性もあります。食事療法は患者様の腎症の進行度や年齢、体格、合併症の有無などによって内容が変わるため、自己判断で行うのは危険です。 医師や管理栄養士と相談しながら個別に献立を立てると、無理なく続けられ、腎機能をできるだけ長く保てます。 糖尿病性腎症の食事療法・献立のポイント 糖尿病性腎症の食事管理は、腎機能を守り進行を遅らせるための大切な治療のひとつです。 以下に、献立を考える上で知っておきたい栄養管理のポイントを解説します。 1日のエネルギー量の目安 糖尿病性腎症の食事療法では、過剰な栄養不足や肥満を防ぐために適正なエネルギー摂取が大切です。 目安は「標準体重1kgあたり約35kcal」ですが、年齢や活動量によって28〜40kcal程度と幅があります。(文献1) エネルギーが不足すると体内のたんぱく質が分解されて腎臓に負担をかける恐れがあるため、十分に確保することが重要です。 糖尿病の血糖管理を両立させるためにも、炭水化物や脂質の質と量を調整しながら、主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせる工夫が必要です。 たんぱく質を制限する 腎臓の負担を減らすため、たんぱく質は「標準体重1kgあたり0.6~0.8g」に制限されるのが一般的です。(文献1) 制限量は、尿たんぱくの排泄量や血清クレアチニン値など腎症の進行度、栄養状態によって変わります。過剰なたんぱく質摂取は腎臓を酷使し、腎機能悪化を早めるリスクがあるため、食材の種類や量を慎重に選ぶ必要があります。 ただし過度な制限は栄養不良を招く恐れがあるため、低たんぱくごはんなどの特殊食品を利用したり調理法を工夫したり、美味しく無理なく続けられることが大切です。 医師や管理栄養士と連携して、自分に合った目標量を決めましょう。 塩分を制限する 高血圧や浮腫を予防・改善するために塩分制限は欠かせません。目標は1日6~7g未満ですが、高血圧やむくみが強い場合は5g以下に制限されることもあります。(文献1) 塩分の摂りすぎは血圧を上げ、腎臓の血管を痛め、病気の進行を加速させる原因になります。 以下は塩分制限のポイントです。 減塩調味料の活用 だしや香辛料、酢などを使って風味を工夫する 外食や加工食品は塩分が多いため、成分表示を確認して選ぶ 毎日の食事を楽しみながら、無理なく続けることが大切です。 水分・カリウム・リンの摂り方 腎症が進行すると、水分やカリウム、リンの制限が必要になる場合があります。 水分はむくみや尿量を考慮して調整し、心不全の予防や血圧管理にもつながります。 カリウムは高くなりすぎると不整脈などの危険があるため、野菜や果物の種類や調理法(ゆでこぼしなど)で含有量を減らす工夫が必要です。 リンは骨からカルシウムを奪い骨粗しょう症を招くリスクがあるため、乳製品や加工食品などリンが多い食品の量を調整します。 必ず医師や管理栄養士と相談し、体調に合った食事を心がけましょう。 糖尿病性腎症に適した食材選びと調理の工夫 糖尿病性腎症の食事療法では、たんぱく質や塩分を抑えつつ満足感を得られる工夫が欠かせません。 治療用の低たんぱくごはんや調味料などを上手に取り入れると、制限内でエネルギーをしっかり確保できます。少ないたんぱく質を多く見せるために、薄切りやみじん切りにしてかさを増やしたり、味付けや盛り付けを工夫したりすることも大切です。 3食のうち1食はおかずがなくても食べられるメニューを用意し、たんぱく質量を調整する方法も有効です。 家族と同じ献立でも主菜を減らし副菜を増やすなど、うまく調整して無理なく続けることで腎機能を長く守りましょう。 外食・コンビニ・宅配弁当の選び方 糖尿病性腎症の食事療法では、自炊が理想ですが、忙しい日常では外食やコンビニ、宅配弁当を利用する機会も少なくありません。 ここからは、腎臓への負担を抑えつつ上手に選ぶコツを紹介します。 外食時の注意点 外食では塩分やたんぱく質が多くなりがちなので、自分で調節する意識が大切です。醤油やタレ、ドレッシングは別添えでもらい、使う量を減らすなどの工夫をしましょう。 カリウムやリンが多い食材を避けるため、サラダのドレッシング、乳製品、加工食品などにも注意が必要です。 主菜は肉より魚を選ぶと脂質やリンを抑えられ、腎臓への負担軽減につながります。麺類や丼ものは汁を残す、単品ではなく定食を選び副菜を増やすなど、組み合わせ方の意識も大切です。 栄養成分表示があるお店では、たんぱく質や塩分量を確認しながらメニューを決める習慣をつけ、外食を楽しみながら食事療法を続けましょう。 コンビニ利用のコツ コンビニ食でも栄養バランスの意識が大切です。おにぎりだけ、菓子パンだけなど主食に偏らず、主菜・副菜を組み合わせて選びましょう。 サラダや煮物、焼き魚、ゆで卵などをプラスしてたんぱく質量を調整し、塩分やリンを抑えます。サンドイッチやおにぎり、ハンバーガーなどは中身の具材をチェックし、ハムやチーズなどリンや塩分が多いものは控えめにします。 以下の項目は注意するポイントです。 減塩表示の商品を選ぶ 飲み物は無糖のお茶や水を選ぶ 成分表示を確認してエネルギーやたんぱく質量を把握する 管理栄養士と相談しながら自分に合った選び方を身につけましょう。 宅配弁当や冷凍食の利用 自炊が難しい日や忙しいときには、腎臓病食や糖尿病食に対応した宅配弁当や冷凍食品を上手に活用するのもおすすめです。 塩分、たんぱく質、糖質などがあらかじめ管理されており、栄養バランスを整えやすいのが魅力です。自分で計算する負担を減らしつつ、適切な制限を守れるため、食事療法を無理なく続けられます。 最近はメニューの種類も豊富で、飽きずに続けられる工夫がされています。定期配送や単品購入などサービス形態も多様なので、生活スタイルや体調に合わせて選びましょう。 糖尿病性腎症には再生医療の選択肢 糖尿病性腎症に対しては、自分の脂肪から採取・培養した幹細胞を体内に投与する「再生医療」も新たな治療選択肢の一つです。患者様自身の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが低いのが特徴です。 しかし、糖尿病性腎症の進行を抑えるには、何よりも血糖管理が欠かせません。食事療法や薬物療法と組み合わせることで、より総合的な治療が可能になります。 将来の腎不全や透析を避けるために、再生医療についても検討してみましょう。詳しい内容は、以下をご覧ください。 糖尿病性腎症の食事の献立はできることから始めよう 糖尿病性腎症の食事療法は、腎臓を守り進行を遅らせるために自分で取り組める治療法です。 しかし「完璧にやらなければ」と思いすぎるとストレスになり、続けるのが難しくなります。減塩や主菜の量を調整するなど、できることから少しずつ始めましょう。 治療用食品を活用したり、家族と同じメニューを工夫するなど、日常生活に取り入れやすい方法の選択も大切です。頑張りすぎず、続けやすい工夫を取り入れながら、医師や管理栄養士と相談し、自分に合ったペースで無理なく進めることが腎機能を長く守るポイントです。 食事管理とともに再生医療による治療をご検討の際は、ぜひ当クリニックにご相談ください。あなたに合ったサポートをご提案します。 糖尿病性腎症の食事の献立におけるよくある質問 果物は食べて良いですか? 果物はビタミンや食物繊維が豊富ですが、糖分を多く含むたみ血糖値が上がりやすいため、食べすぎには注意が必要です。腎症が進行すると、果物に多く含まれるカリウムを制限する必要が出てくる場合もあります。 缶詰の果物を利用する場合はシロップをしっかり切るなどの工夫も大切です。自分に適した量や種類は、医師や管理栄養士と相談しながら確認してください。 たんぱく質を減らすと栄養不足になりませんか? たんぱく質の制限は腎臓への負担を減らす大切な治療法です。しかし過度な制限で栄養不足にならないよう、代わりに十分なエネルギーを確保して筋肉量を維持することが重要です。 低たんぱくごはんや治療用食品を活用し、主食・副菜の組み合わせを工夫するとバランスを整えられます。管理栄養士の指導を受けながら取り組みましょう。 人工甘味料は大丈夫ですか? 一般に認可されている人工甘味料は安全性が確認されており、血糖値を上げにくいため糖尿病患者様でも上手に活用できます。飲み物やデザートに取り入れれば、甘みを楽しみながら血糖管理をしやすくなります。 ただし、商品によって甘味料の種類や量が異なるため、気になる場合は医師や管理栄養士に相談しましょう。 参考文献 文献1 栄養部|茨城県厚生連 JAとりで総合医療センター
2025.07.30 -
- 糖尿病
- 内科疾患
糖尿病性神経障害は、足のしびれや痛み、感覚低下などを引き起こし、進行すると潰瘍や切断といった重大な合併症を招く恐れがあります。 しかし、早期発見と適切な治療によって進行を抑え、生活の質を守ることが可能です。 本記事では、糖尿病性神経障害の原因や症状、治療法までをわかりやすく解説します。気になる症状がある方はぜひ参考にしてください。 糖尿病性神経障害とは?早期治療が必要な疾患 糖尿病性神経障害とは、高血糖状態が長期間続くことで神経が障害を受ける、糖尿病の代表的な合併症の一つです。以下のような障害があります。 感覚障害 しびれ、痛み、感覚鈍麻 運動障害 筋力低下、歩行障害 自律神経障害 立ちくらみ、発汗異常、胃腸運動の乱れ 糖尿病性神経障害には3つの障害があり、左右対称性に足先から進行するのが特徴です。 原因としては、高血糖によりソルビトールといった物質が神経内に蓄積し、神経のむくみや血流障害を引き起こすことが挙げられます。 進行性の疾患であり、放置すると重度の感覚障害や潰瘍、壊疽(えそ:組織の死滅)のリスクが高まるため、早期の診断と治療が重要です。 糖尿病性神経障害の早期治療が必要な理由 糖尿病性神経障害は進行性で、放置すると深刻な合併症を引き起こす危険があります。 早期に診断し治療を始めることで、合併症を予防し、生活の質を守ることが大切です。 合併症のリスクがある 糖尿病性神経障害が進行すると、感覚が鈍くなり小さな傷にも気づきにくく、足潰瘍や感染、壊疽を引き起こすことがあります。 進行後は治りにくく、最終的に切断を余儀なくされる深刻なケースも少なくありません。 自律神経障害による起立性低血圧は、ふらつきやめまいを生じ、転倒による骨折や頭部外傷など高齢者ではとくに危険です。心拍数や血圧を調節する自律神経が障害されると、不整脈や血圧変動が起こり、心臓突然死のリスクも増加します。 合併症のリスクを防ぐためには、神経障害を早期に発見し、適切な治療と管理を行うことが重要です。 患者様自身も日常的な足の観察やセルフケアを心がけることが大切です。 症状の進行を抑えられる 糖尿病性神経障害の進行を抑える最大のポイントは、血糖値の適切な管理です。 高血糖状態が長期間続くと神経へのダメージが進行し、症状が悪化してしまいます。しかし、食事療法、運動療法、薬物療法などで血糖をコントロールし続けることで、神経障害の進行を遅らせたり軽減したりできる可能性があります。 痛みやしびれなどの症状に対する治療薬の使用、生活習慣の改善、足のケア指導などを組み合わせると、患者様のQOL(生活の質)を守れます。 早期に医療機関を受診し、医師や看護師、栄養士などの専門チームと連携した治療が必要です。 糖尿病性神経障害の治療法 糖尿病性神経障害の治療は、血糖管理を基本に痛みの軽減や機能維持を目指す多角的なアプローチが必要です。治療法には、以下の5つがあります。 薬物療法 脊髄(脳)刺激療法 フットケア リハビリテーション 再生医療 患者様一人ひとりに合わせた治療計画を立てることが大切です。 薬物療法 糖尿病性神経障害に伴う痛みの軽減や生活の質の改善を目的に、薬物療法が広く行われます。痛みの程度や体の状態に合わせて薬剤を使い分け、症状を緩和します。 以下のような薬剤が用いられる場合が多いです。 薬の種類 薬剤の例 オピオイド トラマドール、オキシコドンなど Ca²⁺チャネルα2δリガンド リリカ(プレガバリン)、タリージェ(ミロガバリン)など 抗けいれん薬 ガバペンチンなど 抗うつ薬 デュロキセチン、アミトリプチリンなど 痛みの軽減が目標ですが、対症療法として神経ブロックやリハビリテーションの組み合わせも有効です。患者様の症状や副作用のリスクを考慮しながら、医師が最適な治療法を提案します。 脊髄(脳)刺激療法 脊髄(脳)刺激療法は、電気刺激によって痛みの神経伝達を調整する先進的な治療法です。手術で脊髄近くに電極を留置し、刺激装置で電流を流すことで痛みを抑えます。慢性的な神経障害性疼痛が薬や神経ブロックで十分改善しない場合に検討される選択肢です。 脊髄(脳)刺激療法は、神経障害性疼痛の重症例に対し有効性が認められており、生活の質を大きく向上させる可能性があります。試験刺激を行い効果を確認した上で、本格的に装置を植え込むか判断します。 費用や適応条件も含め、医師と慎重に相談しながら治療計画を立てましょう。 フットケア 糖尿病性神経障害では、感覚低下により足の小さな傷や感染に気づきにくくなります。毎日欠かさず足を観察し、赤みや水疱、水虫、爪の変形がないか確認します。靴はサイズが合った通気性の良いものを選び、インソールで足の負担を軽減するのが効果的です。 皮膚を清潔に保つ、乾燥を防ぐ保湿をするなど、セルフケアを続けると重症化を防げます。もし異常を見つけた場合は、早めに受診し適切な処置を受けてください。定期的に専門的なフットケアを受けることも有効です。 神経障害が進むと治りにくい潰瘍や感染につながるため、早期対応と予防の徹底が何より重要です。 リハビリテーション リハビリテーションは、糖尿病性神経障害による筋力低下や転倒リスクを軽減し、日常生活を安全に送るために欠かせません。 有酸素運動や筋力トレーニングを行うと、血流や代謝を改善し、神経機能が維持されます。また、バランス訓練やストレッチは柔軟性を保ち、ふらつきを防ぐ効果があります。 普段から「こまめに動く」ことを意識し、座りっぱなしを避ける意識を持ちましょう。理学療法士による個別指導で、自分に合った安全で無理のない運動プログラムを組めます。 運動療法を続ければ、体力や活動量を維持しながら、痛みやしびれの軽減にもつながります。定期的に評価を受け、運動メニューを見直しながら継続しましょう。 再生医療 再生医療は、患者様自身の脂肪から取り出した幹細胞を培養・増殖させて体に戻す治療法です。 幹細胞には、分化能という他の細胞に変化する能力があります。この能力を生かして、糖尿病に対する治療では点滴で幹細胞を投与し、血管やインシュリンを分泌する膵臓(すいぞう)に幹細胞を届けます。 ただし、幹細胞治療を行っても血糖管理が不十分では十分な効果は得られません。治療の中心はあくまで血糖コントロールであり、その上で再生医療を選択肢の一つとして検討します。 糖尿病に対する再生医療について詳細は以下もご覧ください。 糖尿病性神経障害の受診のタイミング 糖尿病性神経障害は進行性で、早期発見と治療が重要です。症状が軽いうちから受診することで、重症化や合併症を防げます。 以下のような症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。 足先や手先のしびれ、チクチクする痛み 感覚が鈍くなる、熱さや痛みを感じにくい 夜間や安静時に痛みが増す 足の皮膚の変化(赤黒い色、乾燥、ひび割れ、潰瘍) 立ちくらみ、めまい(起立性低血圧) 胃もたれ、下痢や便秘、排尿障害など自律神経の症状 傷や潰瘍が治りにくい、感染を繰り返す このような症状は神経障害の進行を示すサインです。痛みがなくても神経はダメージを受けていることがあります。 小さな変化を見逃さず、早めに専門医に相談し、適切な治療を始めてください。 糖尿病性神経障害だと思ったら早期に受診しよう しびれや痛みは神経障害の初期サインであり、早期発見が病状の進行を抑えるポイントです。 糖尿病の方は自覚症状がなくても神経にダメージが進行している場合があるため注意が必要です。 「こんな症状で受診して良いのかな」と迷わずに、気になる変化があれば早めに医療機関へ相談しましょう。 専門医による診断と適切な治療を受けると、進行を抑え、将来的な足潰瘍や感染、壊疽、切断など深刻な合併症を予防できます。 日常生活での足のセルフチェックや血糖管理も大切で、患者様自身の意識と取り組みが予防につながります。 糖尿病性神経障害は放置せず、医師と一緒に取り組むことが重要です。なかなか良くならずにお悩みの方も、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病性神経障害の治療に関してよくある質問 しびれだけで痛みがない場合も治療すべきですか? しびれだけでも進行を抑えるために早期に医療機関を受診し、血糖コントロールや生活習慣の見直し、医師の指導を受けることが大切です。 しびれは神経障害の初期サインで、痛みがなくても進行している可能性があります。 感覚が鈍くなることで小さな傷ややけど、靴擦れなどに気づかず、感染や潰瘍、最悪の場合は壊疽や切断につながるリスクも高まり危険です。痛みがないからといって放置してしまうと、症状は徐々に進行し、取り返しがつかない状態になることもあります。 自覚症状が軽いうちからの治療が、将来的な重症化や合併症を防ぐポイントです。 神経は再生しますか? 糖尿病性神経障害によって傷ついた神経を完全に元通りに再生させることは、現在の医療では非常に難しいです。ただし、血糖コントロールを適切に行うことで新たな神経ダメージを防ぎ、進行を抑えられます。 しびれや痛みなどの症状を緩和する薬物療法、生活指導、リハビリなどを組み合わせた包括的な治療によって、日常生活への支障を減らし、生活の質を保てます。 早期発見と治療継続が、神経障害の進行を防ぎ、患者様が安心して暮らすためには必要です。 何科を受診すれば良いですか? 糖尿病性神経障害が疑われる場合、「こんなことで受診して良いのかな」と遠慮せずに、まずはかかりつけ医に相談が大切です。 専門的な診療を受けたい場合は、内科、糖尿病内科、内分泌代謝科などが基本で、血糖コントロールや神経障害の程度、合併症リスクを総合的に評価してくれます。 早期に専門医を受診すれば、適切な治療計画を立て、進行を抑えられます。当院でも糖尿病性神経障害に関するご相談を受け付けていますので、しびれや痛みなど少しでも気になる症状があれば、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病の神経障害は治らない? 糖尿病性神経障害は進行性の病気で、完全に治すことは難しいとされていますが、初期の段階であれば血糖値を厳格にコントロールすると症状の改善や進行抑制が可能です。 血糖管理を中心に、しびれや痛みを和らげる薬物療法、生活習慣の見直し、リハビリテーションなどを組み合わせた包括的な治療を続けると、合併症リスクを減らし、日常生活の質を維持できます。 放置せずに早期に治療を開始し、医師と一緒に継続的に管理していきましょう。
2025.07.30 -
- 糖尿病
- 内科疾患
「糖尿病の治療を続けて数年たつが、最近目がかすむようになった」 「糖尿病網膜症があるのではないか」 「糖尿病網膜症は治るのだろうか」 糖尿病治療中の方で、このような状況になっている方も多いことでしょう。 糖尿病網膜症は合併症の1つで、進行すると視力低下や失明のリスクがあります。 完全に治すことは難しい状況ですが、早期発見早期治療により、進行を抑えることは可能です。 本記事では、糖尿病網膜症の治療について解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。 糖尿病網膜症の完治は難しいが進行の抑制は可能 糖尿病網膜症は、糖尿病による高血糖が長期間続くことで、目の網膜にある細い血管が損傷を受ける合併症の一つです。 出血やむくみ、さらには異常な新生血管の増殖を引き起こし、視力低下や最悪の場合は失明に至るケースもあります。 また、進行しても自覚症状の乏しいケースが少なくありません。 一度低下した視力を完全に回復させるのは難しいものの、定期的な眼科検診と早期の治療によって進行を食い止め、視力を保つことは可能です。 糖尿病にかかっているのであれば、糖尿病網膜症のリスクを常に意識し、適切に管理するよう心がけていきましょう。 糖尿病が原因の失明に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。 糖尿病網膜症の治療方法 糖尿病網膜症の治療は、進行の度合いや症状に応じてさまざまな選択肢があります。とくに初期段階では、適切な治療によって視力低下の抑制や合併症の予防が可能です。 ここでは、糖尿病網膜症の主な治療方法について解説します。 レーザー光凝固術 レーザー光凝固術(ひかりぎょうこじゅつ)とは、糖尿病網膜症の進行を抑えるために行われる治療法です。 新生血管の発生予防や退縮、黄斑のむくみ抑制を目指す治療で、主に以下の3種類があります。 直接光凝固 格子状網膜光凝固 汎網膜凝固 直接光凝固は、新生血管や毛細血管瘤の病変そのものにレーザーを当て焼き固める方法です。出血や浮腫の進行を止めたり、新たな出血を予防したりするために利用されます。 格子状網膜光凝固は、網膜のむくみに対して格子状にレーザーを照射する方法です。むくんだ部分の水分を吸収させて黄斑の腫れを軽減したり、視力低下の進行を抑えたりなどに効果が期待できます。 汎網膜凝固は、網膜全体にレーザーを施すことで新生血管の発生を抑制するのが特徴です。酸素不足によってできる新生血管の減少・抑制を目的としています。 抗VEGF治療 抗VEGF治療は、黄斑のむくみや新生血管の発生に関与するVEGF(血管内皮増殖因子)の作用を抑制する治療法です。抗VEGF薬を眼球内に注射し、視力低下やモノのゆがみといった症状の抑制を目指します。 注射は外来で短時間で終了し、初回の注射後は経過を観察しながら追加治療が行われるのが一般的です。 ただし、硝子体注射の傷口から細菌が入り込むと「眼内炎」という感染症を起こすリスクがあります。 頻度はまれではあるものの、重篤な視力障害を引き起こす可能性があるため、硝子体注射前後の抗生剤点眼や消毒などを行う必要があります。 硝子体手術 硝子体手術は糖尿病網膜症が進行し、網膜剥離や硝子体出血が生じた際に行われる外科的治療法です。 硝子体とは水晶体と網膜の間にある透明な組織で、コラーゲン繊維と水から構成されています。 手術によって出血や混濁を起こした硝子体を取り除き、視力の回復や網膜の機能維持を目指します。 レーザー治療が無効だったケースや、重度の合併症がある場合に適応されるのが一般的です。 広く利用されている手術方法ですが、顕微鏡下での細かい操作が必要など高度なレベルの手術となるほか、合併症が起こるケースがあります。 糖尿病性網膜症の分類 糖尿病性網膜症は進行度に応じていくつかの段階に分類されており、治療方針や予後の見通しも段階ごとに異なります。 初期にはほとんど自覚症状がない場合が多いものの、進行すると視力の低下や失明の危険性も高まるため、各段階の特徴を正しく理解しておきましょう。 ここでは、糖尿病網膜症の代表的な3つの分類について解説します。 単純糖尿病網膜症 単純糖尿病網膜症は、網膜の毛細血管が高血糖の影響でもろくなり、小さな出血や毛細血管瘤が生じる初期段階の病態です。 血管からタンパク質や脂肪が漏れ出し、硬性白斑(白い斑点)として網膜に沈着するケースもあります。 また、自覚症状はほとんどなく、気づかないうちに進行するケースも少なくありません。 ただし、血糖コントロールを適切に行えば、症状の進行を防ぐことが可能な段階です。 詳しい網膜の状態を調べるべく眼底の血管造影検査を行う場合もありますが、進行を防ぐためには早期発見と生活習慣の見直しが重要となります。 増殖前糖尿病網膜症 増殖前糖尿病網膜症は毛細血管の障害が進行し、広範囲にわたって血流が途絶える状態です。 網膜に酸素や栄養が届かなくなると体が新たな血管を作ろうと反応しますが、この過程で神経のむくみや静脈の拡張が生じます。 視界のかすみやぼやけといった自覚症状が現れる場合もありますが、無症状のケースも少なくありません。 治療方法は、網膜光凝固術を採用するのが一般的です。 増殖糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症が進行したもっとも重症な段階です。 新生血管が網膜や硝子体に向かって伸びてきますが、新生血管は非常にもろく、破れると硝子体出血を引き起こす恐れがあります。 結果、飛蚊症や急激な視力低下が生じるケースがあるほか、網膜表面に「増殖膜」と呼ばれる膜ができて網膜剥離を引き起こす場合もあります。 また、年齢が若いほど進行が早いとされており、注意しなければなりません。 糖尿病網膜症が進行した段階では手術が必要となりますが、手術が成功しても視力が日常生活に支障がないレベルまで回復しないことがあります。 視力を保つために必要な自己管理 糖尿病網膜症による視力低下を防ぐためには医療機関での治療だけでなく、日常生活における自己管理が重要な役割を果たします。 血糖・血圧・脂質のコントロールに加えて定期的に眼科を受診し、重症化の予防と早期発見につなげていくことが大切です。 では、視力を維持するために実践すべき自己管理のポイントを詳しく見ていきましょう。 血糖・血圧・脂質の管理を徹底する 糖尿病網膜症の発症や進行を抑えるには、血糖・血圧・脂質の3つの項目をバランスよく管理することが重要です。 とくに、血糖コントロールの目安であるヘモグロビンA1cを7%未満に保つように推奨されています。 また、高血圧はとくに収縮期血圧との関連が深く、進行リスクを高める因子です。 さらに、脂質異常症の適切な治療も網膜症の進行抑制に良好な影響を与えるとされています。 血糖値だけでなく、血圧や脂質の管理にも注力しながら視力を保つように自己管理を徹底しましょう。(文献1) 定期的に眼科を受診する 糖尿病網膜症の早期発見と進行防止には、定期的な眼科受診が欠かせません。 2型糖尿病患者の約30%は、診断時すでに網膜症を発症しているという報告があり、耐糖能異常の段階でも網膜症が認められる場合があります。 したがって、2型糖尿病と診断されたら直ちに眼科を受診することが重要ですが、受診頻度としては以下が目安です。 網膜症がない場合:年1回 単純網膜症:6カ月ごと 増殖前糖尿病網膜症:2カ月ごと 増殖期糖尿病網膜症:月1回の検査 (文献2) ただし、上記はあくまで目安です。 患者によって病態や症状は異なるため、実際の受診頻度は眼科医の判断に従いましょう。 まとめ|糖尿病網膜症のポイントは早期発見と継続治療 糖尿病網膜症は、重症化すると視力の著しい低下や失明を招く恐れのある重大な合併症です。しかしながら、早期に発見し適切な治療を行えば、進行を抑えながら視力を保つ効果が期待できます。 糖尿病と診断された段階から定期的に眼科を受診し、状態を継続的に管理していくことが重要です。 また、血糖値に加えて血圧や脂質のコントロールも、進行予防において欠かせません。日々の生活習慣を見直しながら、継続的な治療と管理を徹底していきましょう。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。 公式LINEでは、無料オンライン診断を実施しているので、糖尿病でお悩みの方は一度ご相談ください。 糖尿病網膜症に関するよくある質問 糖尿病患者の失明率はどのくらいですか? 公益社団法人日本眼科医会によれば、糖尿病網膜症が重症化して失明に至る、あるいは失明の危機にある糖尿病患者は全体の約20%と報告されています。(文献3) 糖尿病における眼の合併症がいかに深刻であるかを示しており、失明を防ぐためには血糖・血圧・脂質の適切な管理と、定期的な眼科受診による早期発見と治療が重要です。 糖尿病網膜症は失明原因の何位ですか? 2019年に岡山大学学術研究院が行った全国調査によると、糖尿病網膜症は視覚障害の原因として第3位に位置づけられています。(文献4) なお、第1位は緑内障、第2位は網膜色素変性症です。 視覚障害と失明は完全に同義ではありませんが、糖尿病網膜症は視力障害や失明と密接に関連します。 進行を防ぐためには早期発見と継続的な治療が重要であり、定期的な眼科受診が欠かせません。 参考文献 (文献1) 一般社団法人日本糖尿病学会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」 https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=66 (最終アクセス:2025年6月23日) (文献2) 日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1 版)」 https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf (最終アクセス:2025年6月23日) (文献3) 公益社団法人日本眼科医会「糖尿病で失明しないために」 https://www.gankaikai.or.jp/health/35/index.html (最終アクセス:2025年6月23日) (文献4) 岡山大学「視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位の緑内障の割合が40%超〜2018年の視覚障害認定基準改正の影響が判明〜」 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1082.html?utm_source=chatgpt.com (最終アクセス:2025年6月23日)
2025.06.30 -
- 糖尿病
- 内科疾患
糖尿病治療中の方の中には、ケトアシドーシスを経験された方もいらっしゃることでしょう。糖尿病ケトアシドーシスとは、合併症のひとつであり、時には脳や心臓、筋肉などに後遺症を残す可能性があるものです。 一度経験された方は、後遺症や再発に関する不安を抱えている場合も少なくありません。本記事では、糖尿病ケトアシドーシスの後遺症やケトアシドーシスの症状、後遺症の予防に関して詳しく解説します。ケトアシドーシスに関する不安を解消するため、ぜひ最後までご覧ください。 糖尿病ケトアシドーシスの後遺症一覧 後遺症 詳細 脳浮腫 意識障害、けいれん、記憶障害などの神経障害 低カリウム血症 筋力低下、しびれ、不整脈などの心筋機能障害 低血糖 意識消失、けいれん、脳機能障害のリスク増加 糖尿病ケトアシドーシス(DKA)は治療の過程や重症化した場合、後遺症が出る可能性があります。その中でもとくに脳浮腫、低カリウム血症、低血糖は注意すべき障害です。脳浮腫は意識障害やけいれん、最悪の場合は永続的な神経障害を残すリスクがあります。 低カリウム血症は筋力低下や不整脈を引き起こし、心停止のリスクもあるため注意が必要です。また、治療中に急激に血糖値が下がりすぎると低血糖を起こし、意識障害やけいれんなどが現れることもあります。 これらの合併症は早期発見と適切な治療で予防や軽減が可能なものも多く、早期対応とその後の管理により、症状の軽減が期待できます。 脳浮腫 項目 内容 主な原因 血糖や電解質の急激な補正 発生の仕組み 血液中から脳内への水分移動による腫れ 主な症状 頭痛、意識障害、けいれん、視覚異常 重症時の影響 昏睡、命の危険、後遺症 とくに注意すべき人 小児、若年者、高齢者、慢性高血糖の方 主な後遺症 記憶障害、集中力の低下 予防のポイント 血糖値の緩やかな補正と慎重な治療管理 (文献1)(文献2) 脳浮腫は、糖尿病ケトアシドーシスの中でも、とくに重篤な合併症のひとつです。血糖値や血中電解質を急激に補正すると、脳内に水分が移動し脳浮腫を引き起こすことがあります。 症状としては、頭痛、意識障害、けいれん、視覚異常などが現れ、重症化すると昏睡や生命に関わる重大なリスクもあります。とくに小児や若年者に多いとされますが、高齢者や長期にわたる高血糖状態の方でも注意が必要です。 脳浮腫は一時的に回復するケースもありますが、重度の場合は記憶障害や集中力の低下など、後遺症が出る可能性もあります。治療では血糖を急に下げすぎないことが大切です。 低カリウム血症 項目 内容 主な原因 インスリン投与によるカリウムの細胞内移動 主な役割 心臓や筋肉の正常な働きの維持 主な症状 筋力低下、脱力感、しびれ、不整脈 重症時のリスク 心停止、生命に関わる重篤な状態 観察のポイント 血中カリウムの定期的なモニタリング 予防の方法 点滴や食事によるカリウム補給 退院後の注意 食事管理と定期的な血液検査の継続 (文献2)(文献3) 糖尿病ケトアシドーシスの治療中には、インスリン投与によって血液中のカリウムが急速に細胞内へ移動し、低カリウム血症を引き起こすことがあります。 カリウムは心臓や筋肉の正常な動きを保つために重要な電解質であり、不足すると筋力低下、脱力感、しびれ、不整脈、最悪の場合は心停止に至るリスクもあります。軽度の場合は無症状のこともありますが、重度になると命に関わるため、血中カリウムの綿密なモニタリングと補正が欠かせません。 また、入院期間中に加え、退院後も継続的にカリウムを含む食事の管理や定期的な血液検査を通じて、低カリウム状態を早期に発見し、対処することが大切です。後遺症を残さないためには、治療中の適切な電解質バランスの管理が必須です。 低血糖 項目 内容 主な原因 インスリン投与による血糖値の急低下 配慮の必要性 DKA治療中の慎重な血糖管理 主な症状 冷や汗、ふるえ、動悸、意識障害、けいれん 重症時 昏睡、脳機能障害、命に関わるリスク 軽度の対応 回復可能、ただし頻回の発生に注意 入院中の措置 医療チームによる厳密な血糖モニタリング 退院後の注意 インスリン、薬量、食事、運動バランスの維持 (文献1)(文献4) 低血糖は、糖尿病ケトアシドーシスの治療中にインスリン投与で血糖値が急激に下がることで起こります。とくに重症の糖尿病ケトアシドーシスでは、普段よりも慎重な血糖コントロールが必要です。 低血糖になると冷や汗やふるえ、動悸、意識障害、けいれんなどの症状が現れ、放置すると昏睡や脳機能障害を引き起こす危険もあります。 軽度であれば回復しますが、重度かつ長時間続くと後遺症になる場合があります。入院中は医療スタッフによる厳密な管理が行われますが、退院後もインスリンや内服薬の量、食事、運動のバランスに注意し、血糖の急変を防ぐことが重要です。 糖尿病ケトアシドーシス後遺症の治療 治療 詳細 脳浮腫に対する治療 補液速度の調整、マンニトールやグリセオール投与、脳圧管理、集中治療室での厳重管理 低カリウム血症に対する治療 血中カリウム値の定期測定とカリウム補充、不整脈予防のための心電図モニタリング 低血糖に対する治療 ブドウ糖の静脈投与や経口摂取、インスリン量の調整、血糖値の頻回測定 糖尿病ケトアシドーシスの後遺症は、早期発見と適切な治療により回復が期待できます。脳浮腫、低カリウム血症、低血糖などの合併症には、それぞれの管理と迅速な対応が必要です。 入院中の治療に加え、退院後も定期的な通院やモニタリングを続けることが再発や悪化の予防につながります。後遺症が生じた場合は、リハビリや医師による継続的なフォローに加えて、再生医療も近年注目されています。 以下の記事では、糖尿病に対する再生医療の有効性を詳しく解説しています。 脳浮腫に対する治療 治療内容 詳細 マンニトールの点滴投与 脳内の水分を排出して脳圧を下げる治療 高張食塩水の点滴(3%) マンニトールが効かない場合に検討される 頭部挙上(30度) 脳の血流と圧力のバランスを整えるための体位調整 人工呼吸器による呼吸管理 自発呼吸が困難な場合の呼吸補助 集中治療室での管理(ICU) 脳圧や全身状態の厳密なモニタリング CT・MRIによる画像検査 脳の状態や治療効果の確認 電解質・血糖の調整 浸透圧バランスの安定による後遺症予防 神経科・リハビリ科の支援 認知機能障害への継続的フォローアップ (文献5)(文献6) 糖尿病ケトアシドーシスによる脳浮腫の治療では、まず脳の圧力(脳圧)を下げることが最も重要です。 一般的には、マンニトールと呼ばれる浸透圧利尿薬を点滴で投与し、脳にたまった余分な水分を排出する治療が行われます。マンニトールが効かない場合には、3%高張食塩水の点滴が使われることもあります。(文献5)(文献6) また、頭部を約30度挙上して安静を保つことが推奨されます。これは、脳の血流と圧力のバランスを整えるための重要な処置です。(文献6) 低カリウム血症に対する治療 治療内容 詳細 カリウムの補充 点滴や内服で不足したカリウムを補う治療 インスリン投与の一時停止 カリウム値が十分に補正されるまでインスリンを一時的に中止 インスリンの慎重な再開 インスリン再開時は通常より少ない量から慎重に開始 合併症の注意 横紋筋融解症や心臓の合併症などのリスクに注意 (文献1)(文献6) 低カリウム血症の治療では、まず血液検査でカリウムの量を確認します。軽い場合は経口カリウム製剤で補えますが、重い場合は点滴でのカリウム補充が必要です。 治療中は心電図で心臓の状態をチェックし、カリウムが多すぎたり少なすぎたりしないように慎重に進めます。 また、カリウムが体から出て行きやすくなる薬を使っている場合は、薬剤の見直しや調整も必要です。退院後も、カリウムを多く含む食品を意識してとることや、腎臓の働きを定期的に調べることが再発防止に役立ちます。 低血糖に対する治療 治療内容 詳細 ブドウ糖液の点滴開始 血糖値が約250mg/dL未満になった時点で、10%ブドウ糖液の点滴を開始 インスリン量の調整 インスリンの点滴速度を半分(例:0.1→0.05単位/kg/時)に減らすことを検討 低血糖の予防 インスリンによる過剰な血糖低下を防ぐ 血糖値の厳密な管理 入院中は医療チームが頻回に血糖値を測定し、低血糖や急変を防ぐ 退院後の生活指導 インスリンや薬の量、食事、運動のバランスに注意し、血糖の急変を避ける (文献7) 糖尿病ケトアシドーシスの治療中には、低カリウム血症が起こることがあります。カリウムが不足すると、筋肉の低下や心臓に負担がかかり不整脈を起こすおそれがあるため、早急な対応が必要です。 治療では、まず血液検査でカリウムの量を調べ、不足の程度に応じて補います。軽い場合は飲み薬、重い場合は点滴でカリウムを補充します。補充中は、心臓の動きを確認する心電図モニターを使いながら、治療を進めます。 カリウムは不足しても過剰になっても体に悪影響を及ぼすため、補充の量やスピードに関しては、医師の調整が不可欠です。さらに、服用中の薬や腎臓の機能もカリウムのバランスに影響するため、これらの要因もふまえて治療方針が決められます。 退院後も、食事からのカリウム摂取や腎臓の状態を定期的に確認し、必要に応じて栄養指導や薬の調整を受けることが、再発予防につながります。 糖尿病ケトアシドーシスの後遺症に対する予防法 後遺症に対する予防策 詳細 血糖コントロールを徹底する 血糖測定、薬の調整、食事と運動による血糖値の安定化 体調管理を継続する 発熱、倦怠感、体重減少などの体調変化への早期対応 定期的に必要な検査を受ける 血糖、HbA1c、電解質、腎機能などの定期的な数値チェック 心理的サポートを受ける 不安やストレスの軽減による自己管理意欲の維持 糖尿病ケトアシドーシスの後遺症を防ぐためには、日頃から血糖コントロールと体調管理をしっかり行うことが大切です。血糖値の安定には、食事や運動、薬の調整、定期的な検査による数値チェックが欠かせません。 体調に変化があれば早めの対応を心がけ、心理的なサポートも受けつつ、継続的に管理を行うことが重要です。 血糖コントロールを徹底する 項目 内容 食事 身長、体重、活動量に応じた適切なエネルギー摂取と栄養バランスの維持 運動 有酸素運動や筋力トレーニングを週3日以上実施(事前に主治医へ相談) 内服薬 医師の指示に従った服薬の継続 インスリン 注射の打ち忘れ防止と適切な自己注射の継続 血糖値の乱高下を防ぐことが、糖尿病ケトアシドーシスの基本的な予防策です。毎日の血糖測定やHbA1cの定期チェックを通じて、自分の血糖傾向を把握し、インスリンや内服薬を適切に調整することが重要です。 とくに風邪や感染症、過度なストレスなどによって血糖が急上昇するケースがあります。そのため、体調の変化には注意が必要です。 また、食事や運動の内容が血糖にどのように影響するかを知ることも、自己管理の第一歩です。 以下の記事では、糖尿病の血糖コントロールについて詳しく解説しています。 【関連記事】 糖尿病!運動療法なら改善はもとより予防にも効果を発揮 糖尿病|食事で予防する、食生活を整えて病気の悪化や合併症を防ぐ 体調管理を継続する 予防内容 詳細 感染症、脱水、ストレスへの注意 発熱、下痢、疲労、精神的ストレスによる血糖上昇の予防 シックデイへの対応 水分と糖分の十分な補給(おかゆ、果汁、麺類などの摂取) 医療機関の早期受診 食事がとれない、発熱、嘔吐、下痢などの強い症状時の速やかな受診 ワクチンの接種 インフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナウイルスの予防接種の推奨 (文献8)(文献9) 糖尿病ケトアシドーシスの再発を防ぐには、日ごろの体調管理が重要です。発熱や下痢、体重の急な変化など、いつもと違う症状があれば早めに医師へ相談しましょう。 感染症や脱水、強いストレスが糖尿病ケトアシドーシスの再発の原因になるケースもあります。 とくに体調が悪く血糖管理が難しい、シックデイには、水分とエネルギー補給を心がけ、食事がとれない場合は医療機関を受診してください。予防には、インフルエンザや肺炎球菌、新型コロナのワクチン接種も推奨されます。 定期的に必要な検査を受ける 検査の目的・内容 検査項目・留意点 治療の継続 すでに治療中の方は治療を中断しないこと 定期的な受診・検査 定期的に医療機関を受診し、血液検査や尿検査を受ける 血糖値の検査 空腹時血糖、ヘモグロビンA1c、グリコアルブミンなど インスリン分泌の検査 血液中のインスリン濃度やCペプチドの測定 ケトアシドーシス予防の検査 尿中ケトン体検査 合併症発見のための検査 腎機能検査、眼底検査、神経・知覚検査、動脈硬化に関する検査など (文献10) 糖尿病の状態や体への影響を早期に把握するには、定期的な検査が不可欠です。血糖値やHbA1cに加え、腎機能(クレアチニン、eGFR)や電解質、尿中ケトン体などを総合的に確認することで、再発や後遺症の早期発見につながります。 退院後に症状が緩和しているように見えても、身体の中では変化が進んでいるケースがあります。医師の指示に従い、定期的に通院して必要な検査を受けましょう。 以下の記事では、糖尿病で起こりうる失明について詳しく解説しています。 心理的サポートを受ける 糖尿病ケトアシドーシスを経験した後に、不安や恐怖を抱くのは自然な反応です。こうしたストレスは血糖コントロールを乱す原因にもなるため、心のケアも大切です。 退院後に気分が落ち込んだり、自己管理がつらく感じたりするときは、一人で悩まずに医療スタッフやカウンセラーに相談しましょう。不安が強い方には、同じ病気を持つ人との交流(ピアサポート)や、糖尿病に特化した心理支援の利用も有効です。 心の負担を軽くすることで、前向きに病気と向き合いやすくなり、再発の予防にもつながります。 糖尿病ケトアシドーシスの後遺症は自己管理と継続治療が大切 糖尿病ケトアシドーシスの後遺症を防ぐ上で重要なのは、退院後の自己管理と継続的な治療です。 急性期を乗り越えた後も、血糖コントロールや体調の変化に対する注意、定期的な検査を怠らないことが、後遺症の進行や再発を未然に防ぐカギとなります。 食事や運動、薬の服用を含む自己管理と継続治療を徹底することが重要です。また、後遺症に関する不安はひとりで抱え込まず、医療スタッフやカウンセラーを活用しましょう。 糖尿病ケトアシドーシスの後遺症についてお悩みは、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、後遺症に関するどんな些細なお悩みや不安にも真摯に耳を傾け、丁寧にアドバイスいたします。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 糖尿病ケトアシドーシス後遺症に関するよくある質問 糖尿病でケトン体が増える理由は何ですか? 糖尿病ではインスリンの働きが弱くなり、糖が細胞に取り込まれなくなります。すると、身体は代わりに脂肪をエネルギー源として使い始め、そのときにできる物質が、ケトン体です。 ケトン体が増えすぎると、血液が酸性になり、ケトアシドーシスという危険な状態を引き起こします。ケトン体を増やさないためには、血糖値を安定させることが大切です。(文献11) インスリンや内服薬が必要であれば、正しく服用し、食事や運動のバランスを保ちます。体調が悪いとき(シックデイ)は、こまめに水分と糖分をとり、無理せずエネルギーを補給しましょう。気になる症状があれば、早めの医療機関への受診が重要です。 糖尿病ケトアシドーシスの死亡率はどのくらいですか? 糖尿病ケトアシドーシスの死亡率は1%未満とされています。(文献1) しかし、一部のデータでは1〜9%の患者が亡くなっているとも報告されています。(文献11) 少なからず命に関わる危険があるため、疑わしい症状が生じた場合は、ためらわずにすぐ医療機関を受診しましょう。 参考資料 (文献1) Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)」MSD マニュアルプロフェッショナル版, 2022年9月 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/10-%E5%86%85%E5%88%86%E6%B3%8C%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E4%BB%A3%E8%AC%9D%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E3%81%A8%E7%B3%96%E4%BB%A3%E8%AC%9D%E7%95%B0%E5%B8%B8%E7%97%87/%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E6%80%A7%E3%82%B1%E3%83%88%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%89%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9-dka?query=%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E6%80%A7%E3%82%B1%E3%83%88%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%89%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9(最終アクセス:2025年06月18日) (文献2) Glucagon Physiology. NCBI https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK279127/(最終アクセス:2025年06月18日) (文献3) Diabetic ketoacidosis. Mayo Clinic https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/diabetic-ketoacidosis/symptoms-causes/syc-20371551?utm_source=chatgpt.com(最終アクセス:2025年06月18日) (文献4) 金澤 康.「搬送時に糖尿病性ケトアシドーシスを呈し,治療開始前に著明な脳浮腫を認めた成人糖尿病の1例」『症例報告』, pp.1-7 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/60/4/60_288/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年06月18日) (文献5) CEREBRAL EDEMA IN DIABETIC KETOACIDOSIS. PEDIATRIC, pp.1-6 https://achpccg.com/wp-content/uploads/2021/06/tms-picuc-physician-diabetic-ketoacidosis-cerebral-edema-dka-guideline.pdf(最終アクセス:2025年06月18日) (文献6) Nicole Glaser. (2019). Cerebral Edema in DKA: Symptoms and.Signs.CancerTherapyADVISOR https://www.cancertherapyadvisor.com/home/decision-support-in-medicine/pediatrics/cerebral-edema-dka/(最終アクセス:2025年06月18日) (文献7) The Management of DiabeticKetoacidosis in Adults.JBDS-IP, pp.1-50 https://abcd.care/sites/default/files/site_uploads/JBDS_Guidelines_Current/JBDS_02_DKA_Guideline_with_QR_code_March_2023.pdf(最終アクセス:2025年06月18日) (文献8) 糖尿病情報センター「シックデイ」糖尿病情報センター, 2015年10月27日 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/060/06.html(最終アクセス:2025年06月18日) (文献9) 「20章 糖尿病における急性代謝失調・シックデイ(感染症を含む)」,pp.1-19 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/20.pdf(最終アクセス:2025年06月18日) (文献10) 糖尿病情報センター「糖尿病と関連する検査」糖尿病情報センター, 2024年10月24日 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/030/010/02.html(最終アクセス:2025年06月18日) (文献11) 「くす通信」『熊本医療センターのミ二医療情報誌』227(号), pp.1-2, 2020年 https://kumamoto.hosp.go.jp/files/000208263.pdf(最終アクセス:2025年06月18日)
2025.06.29 -
- 糖尿病
- 内科疾患
「尿酸値を下げるためには何を食べたり飲んだりすれば良いの?」 「摂取を控えたいプリン体の多い食品は?」 尿酸値が高いと指摘された方は、このようなことを知りたいのではないでしょうか。尿酸値のコントロールにおいて食事内容は重要です。 プリン体が多い食品を避けるのはもちろん大切ですが、尿酸値を下げる食べ物・飲み物を意識的に摂れば、高尿酸血症の改善に役立つでしょう。 本記事では、尿酸値が高めと指摘された方に対して以下を解説します。 尿酸値を下げる食べ物・飲み物 摂取を控えたいプリン体の多い食品 尿酸値を下げる3つのポイント コーヒーと尿酸値の関係について 尿酸値を下げる食べ物・飲み物の主な効果を一覧表で紹介するので、ぜひ参考にしてください。 尿酸値を下げる食べ物・飲み物【一覧表】 尿酸値を下げる食べ物・飲み物は以下の通りです。 食品名 主な効果 バナナ カリウムにより尿酸が尿に溶けやすくなる 低脂肪ヨーグルト 乳酸菌により腸管からのプリン体の吸収を抑える チェリー ポリフェノールにより尿酸の生成を抑える マグロ・カツオ アンセリンにより尿酸の生成を抑える レモン ビタミンCにより腎臓での尿酸の吸収を抑える 低脂肪牛乳 腎臓からの尿酸の排出を促す(アミノ酸が関係すると考えられている) 豆乳 フィチン酸により腸管からのプリン体の吸収を抑える ワイン ポリフェノールにより尿酸の生成を抑える 緑茶 ポリフェノールにより尿酸の生成を抑える (文献1)(文献5) 食生活の改善は尿酸値のコントロールにおいて重要です。ただし、関節の痛みや腫れなどの症状が出ている人は、食事内容を意識するだけではなく薬物療法を検討しなければなりません。とくに尿酸値が8.0mg/dL以上の方は、症状が出ていなくても医師に相談してください。(文献2) 【関連記事】 痛風の初期症状は?早期発見につなげて重症化を防ごう【医師監修】 高い尿酸値がもたらすリスクとは?原因や合併症の予防法も解説 バナナ バナナなどに豊富に含まれているカリウムは、尿酸値を下げる効果を期待できます。これはカリウムにより尿がアルカリ性に傾き、尿酸が尿に溶けやすくなるためです。(文献5)とはいえ、バナナには尿酸値を高める果糖も含まれているため、食べ過ぎには注意してください。 尿酸値が高い方は尿が酸性に傾きやすい傾向です。尿が酸性に傾いていると、尿酸が結晶化して痛風を引き起こしやすくなります。尿をアルカリ性に傾けるには、以下のような食品をバランス良く食べると良いでしょう。 尿をアルカリ性に傾ける働きがある食品 ヒジキ、ワカメ、こんぶ、干し椎茸、大豆、ほうれん草、ごぼう、にんじん、さつまいも、里芋 以上の食品を意識的に摂取して、尿から尿酸を排出しやすくすることが大切です。 低脂肪ヨーグルト ヨーグルト(低脂肪)は、腸管からのプリン体の吸収を抑える効果を期待できます。これはヨーグルトに含まれている乳酸菌に、以下のような働きがあるためです。 プリン体を体に吸収されにくいプリン塩基といった物質に分解してくれる 乳酸菌がプリン体を取り込んでくれることで体に吸収されるプリン体の量が減る 実際に男性約47,000人を対象にした12年間の観察研究で、ヨーグルトを1週間に2カップ以上摂取しているグループと、摂取量が最も少ないグループを比較すると、0.76倍痛風の発症が少ないと報告があります。(文献1) チェリー チェリーは、尿酸の生成を抑えて尿酸値を下げる効果が期待できます。この効果は、チェリーに含まれているポリフェノールによるものです。 実際に女性10例を対象にした研究では、280gのチェリーの摂取により尿酸値が低下したと報告があります。(文献1)チェリーの他にポリフェノールが多い食品は、以下のようなものがあります。 ブルーベリー スモモ ブドウ イチゴ チョコレート ココア ワイン コーヒー とはいえ、果糖や砂糖は摂り過ぎると尿酸値を高めてしまいます。摂取は適量にしてください。 マグロ・カツオ マグロ・カツオなどに豊富に含まれているアンセリンは、尿酸の生成を抑える働きがあるため、尿酸値を下げる効果を期待できます。 実際に健康な方および尿酸値の高い方48名を対象に、アンセリンを含む食品(アンセリン25mg/日または50mg/日)とプラセボ食品(有効成分を含まない食品)のどちらかを4週間摂取してもらったところ、アンセリンを摂取したグループの尿酸値が低下しました。(文献1) とくに50mgを摂取したグループにおいては、明らかな低下が見られています。アンセリンが豊富な食材は、マグロやカツオの他に鶏のささみなどがあります。 レモン レモンなどに豊富に含まれているビタミンCは、摂取量が多いほど尿酸値が低下したと報告があります。(文献1)ビタミンCが尿酸値を下げられるのは、以下のような働きがあるためです。 腎臓での尿酸の吸収を抑える 尿へ排出できる尿酸の量が増える これらのメカニズムは詳細に解明できていません。レモンの他にビタミンCが豊富に含まれている果物や野菜は、オレンジやカキ、ブロッコリー、黄色パプリカなどがあります。 低脂肪牛乳 牛乳(低脂肪)には、腎臓からの尿酸の排出を促す効果があると考えられています。詳細なメカニズムは解明されていませんが、アミノ酸が関係すると考えられています。 実際に男性約47,000人を対象にした12年間の研究では、牛乳の摂取が多いグループと少ないグループを比較したところ、痛風の発症率が0.54倍になったと報告がありました。(文献1) 豆乳 豆乳に含まれているフィチン酸は、尿酸値の上昇を抑える効果が期待できます。フィチン酸には、腸管からのプリン体の吸収を抑える働きがあるためです。 実際に尿酸値が高い31名を対象に、フィチン酸が含まれる飲料とプラセボ飲料を昼食と夕食に1本ずつ付けて14日間摂取したところ、フィチン酸を摂取したグループの尿酸値が低下したと報告があります。(文献1) ワイン アルコール飲料は、一般的に尿酸値を上昇させて痛風リスクを高めます。ただし、ワインは他のアルコール飲料と異なり、尿酸値を高める影響が低いと考えられています。実際に米国の調査では、ワイン約150mlまでの摂取はむしろ尿酸値を低下させると報告がありました。(文献1) また、約50,000人の男性が飲用しているアルコール飲料を12年間追跡した調査では、ワインを1日2杯まで飲む人は痛風のリスクが抑えられると報告があります。(文献1)尿酸値が低下した理由は、ワインに多く含まれているポリフェノールによるものと考えられます。 緑茶 30名の健康な方を対象に、緑茶の抽出物を2週間摂取したところ尿酸値が低下の傾向を示したと報告があります。(文献1)これは、ポリフェノールによる尿酸の生成を抑える働きによるものと考えられます。 小規模な研究のため、尿酸値低下効果の確実性はまだ限定的です。しかし、緑茶には抗酸化作用など他の健康効果も期待できるので、日常的に適量を楽しむことをおすすめします。 なお、1日に5〜6杯以上の過剰摂取はカフェインの影響で不眠や動悸を引き起こす可能性があります。飲みすぎには注意しましょう。 摂取を控えたいプリン体の多い食品【 一覧表】 尿酸値を下げるには、プリン体の多い食品の摂取を控えることが大切です。ここからは、プリン体が多い食べ物とアルコール飲料を解説します。 プリン体が多い食べ物 プリン体が多い食品の一例は以下の通りです。 プリン体含有量(100gあたり) 食品名 非常に多い(300mg〜) 干物(マイワシ)、白子(フグ、タラ)、鶏レバー、あんこう、太刀魚など 多い(200〜300mg) 干物(サンマ、マアジ)、豚レバー、牛レバー、マイワシ、カツオ、大正エビなど 中等量(100〜200mg) 鶏ささみ、砂肝、鶏の手羽先、鶏もも(皮付き)、鶏皮、豚ヒレ、牛ヒレ、アジ、マグロ、サワラ、サバ、ほうれん草の芽、ブロッコリースプラウトなど (文献2)(文献3) 飲食店やコンビニで食事を済ませる際は、上記の表を参考にしてプリン体が多い食品を避けてください。ほとんどの肉類や魚類には中等量以上のプリン体が含まれていると捉えましょう。 プリン体が多いアルコール飲料 プリン体が多く含まれているアルコール飲料の一例は以下の通りです。 プリン体含有量(100mlあたり) アルコール飲料名 約5〜7mg ビール 約3〜4mg 発泡酒 約7〜17mg 地ビール 約1mg 日本酒 (文献3) ワインや焼酎、ブランデー、ウィスキーなどに含まれているプリン体含有量は0.5mg以下(100mlあたり)と少ないです。しかし、アルコール自体に尿酸の排出を抑える働きがあるため、飲み過ぎてはいけません。(文献3)(文献5) また、同じアルコール飲料でも、メーカーによってプリン体が含まれる量は異なるため参考程度にとどめてください。 日常生活における尿酸値を下げる3つのポイント 日常生活における尿酸値を下げるポイントは、以下の3つです。 プリン体が少ない食べ物・飲み物を選ぶ 水分を十分に摂取する 有酸素運動の習慣を身につける それぞれの詳細を解説します。 1.プリン体が少ない食べ物・飲み物を選ぶ 尿酸値を下げるには、日頃からプリン体が少ない食べ物・飲み物を選ぶことが重要です。プリン体が非常に少ない食品の種類は以下の通りです。 プリン体含有量(100mgあたり) 食品の種類 非常に少ない(〜50mg) 野菜類、穀類、豆類、キノコ類、鶏卵、乳製品など (文献2) 果糖や砂糖が含まれている飲み物は、尿酸値を高めるため水やお茶にしましょう。 2.水分を十分に摂取する 十分に水分を摂取すると尿からの尿酸排出が増えます。十分な尿量を確保するために必要な一日の水分摂取量は2〜2.5Lです。(文献2) 水分は入浴中や就寝中に失われます。入浴前後や就寝前、起床後に水分を取ることも大切です。水分の種類は前述した通り水やお茶にしてください。アルコール飲料は水分に含まれません。 3.有酸素運動の習慣を身につける 有酸素運動は肥満を改善して、尿酸値の低下も期待できます。推奨されているのは以下のような有酸素運動です。 ウォーキング ジョギング サイクリング 有酸素運動は、脈が少し速くなる程度の強度で1日合計30〜60分ほど行うことが効果的です。(文献2)短時間の激しい無酸素運動は、尿酸値を高める恐れがあるため控えてください。 コーヒーと尿酸値の関係について コーヒーが尿酸値に影響を及ぼすかどうかは明確な根拠がありません。しかし、大規模な研究においては、1日4杯以上コーヒーを飲む人は、まったく飲まない人と比較して、痛風リスクが40%低いと報告があります。(文献4) とはいえ、この研究は因果関係を証明したわけではありません。コーヒーは「適度に楽しむことで痛風予防に役立つかもしれない」と捉えましょう。 まとめ|尿酸値を下げる食べ物・飲み物を意識的に摂取しよう 尿酸値を下げる食べ物・飲み物を意識的に摂取すれば、尿酸値の改善を期待できます。本記事で紹介した食品は効果が期待できますが、いずれも摂り過ぎには注意が必要です。バランス良く取り入れつつ、プリン体の多い食品は控えめにしましょう。 また、1日2~2.5Lの十分な水分摂取と30分以上の有酸素運動を習慣化することで、尿酸値のコントロールをサポートできます。これらの生活習慣の改善は、痛風予防にもつながります。 ただし、尿酸値が8.0mg/dL以上の方は、症状が出ていなくても薬物療法が必要となる場合があります。食事改善に取り組みながらも、主治医と相談して適切な治療方針を決めましょう。 参考文献 (文献1) 藏城 雅文,山本 徹也.「血清尿酸値の低下作用が示唆される食材および食材に含まれる物質の作用機序」『痛風と尿酸・核酸』45(1), pp.13-21, 2021年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnamtsunyo/45/1/45_13/_pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献2) 日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」 https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00476_supplementary.pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献3) 厚生労働省「魚介類50gあたりの脂質とプリン体の関係」 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0619-5d03-05.pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献4) 藤森 新.「痛風・高尿酸血症の病態と治療」『日本内科学会雑誌』107(3), pp.458-463, 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/3/107_458/_pdf(最終アクセス:2025年5月17日) (文献5) 日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版」 https://www.tufu.or.jp/pdf/guideline_digest.pdf(最終アクセス:2025年5月17日)
2025.05.25 -
- 糖尿病
- 脳卒中
- 足部、その他疾患
- 頭部
- 手根管症候群
- 脊椎
- 内科疾患、その他
- 手部、その他疾患
- 脊柱管狭窄症
- 手部
- 足部
- 内科疾患
「寝起きに手足がしびれ原因は?」 「しびれの原因が病気ではないか不安」 寝て起きただけなのに手足のしびれを感じたことがある方には、上記のような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 寝起きの一時的な手足のしびれは、寝ている時の姿勢によるものがほとんどですが、まれに神経系疾患や脳血管疾患の前兆である可能性があります。 とくに脳血管疾患だった場合は、早期回復や重症化を防ぐために初期対応が重要なので、初期症状が見られた時点で医療機関への相談が推奨されます。 「ただの手足のしびれ」と放置されてしまいがちですが、少しでも不安な方はまずは医療機関へ相談してみましょう。 当院リペアセルクリニックでは、寝起きの手足のしびれの原因となっている「神経系疾患」「脳血管疾患」の改善が期待できる再生医療をご提供しています。 「手足のしびれが病気ではないか不安」「病気だった場合にすぐ治療したい」という方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。 \無料相談はこちらから/ 0120-706-313 (受付時間:9:00〜18:00) 寝起きに手足がしびれる原因 寝起きに手足がしびれる原因としてあげられるのは、主に以下の5つです。 寝ているときの姿勢 神経系疾患 糖尿病による神経障害 脳血管疾患 その他の疾患 寝ているときの姿勢 寝起きに手足がしびれる原因の1つが、寝ているときの姿勢です。 腕に頭をのせて寝た 腕を頭より上にして寝た 狭い場所で寝たために寝返りを打てなかった このような体勢が長時間続くと、手足の神経が圧迫されてしまい、しびれを引き起こします。 枕が合わないこともしびれの一因です。枕が高すぎると、あごを強く引いた体勢になります。その結果生じるのが、肩や肩甲骨周辺の筋緊張です。筋肉の緊張が血行不良を引き起こし、しびれにつながります。 神経系疾患 変形性頚椎症や脊柱管狭窄症、手根管症候群、椎間板ヘルニアなどの疾患により、神経が圧迫されて、手足のしびれが生じるケースもあります。 神経系疾患と手足のしびれの関係については、以下の記事でも解説していますのであわせてご覧ください。 糖尿病による神経障害 糖尿病の三大合併症の1つが神経障害です。手足のしびれは、感覚神経の障害に分類されます。 高血糖が続くと神経に栄養を与える血管に傷がつきます。その結果血流が悪くなり、神経の働きが障害されるのです。 糖尿病による神経障害では、手足のしびれのほか、感覚の低下や筋力の低下などの症状も現れます。(文献1) 糖尿病の合併症については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 脳血管疾患 脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管疾患でも、手足のしびれが起こります。 手足のしびれ以外に、手足の麻痺や激しい頭痛、視野の異常などの症状が現れたら、速やかに脳神経外科を受診しましょう。 チェックポイントは「ACT-FAST」です。(文献2) Face:顔の片方がゆがむ Arm:片方の腕に力が入らない Speech:いつもどおり話せない Time:時間を空けずに ACT:救急車を呼ぼう 脳血管疾患は命に関わるものなので、迅速な行動が大切です。 その他の疾患 過換気症候群や更年期障害などでも、手足のしびれが起こる場合があります。 過換気症候群とは、強い不安や緊張などが原因で、何度も激しく息を吸ったり吐いたりする状態です。 二酸化炭素が過剰に吐き出されることで血中の二酸化炭素濃度が低くなり、血液がアルカリ性に傾きます。血液がアルカリ性に傾くと、血管が収縮されてしまい、手足のしびれが生じるのです。 更年期障害の場合、女性ホルモンの低下が手足のしびれに関係しているとされています。 寝起きに手足がしびれるときの対処法(セルフケア) 寝起きに手足がしびれるときに自分でおこなえる主な対処法(セルフケア)は、以下の3つです。 寝る姿勢や枕を調整する 身体を温める 身体を適度に動かす 寝る姿勢や枕を調整する 寝る姿勢や枕の調整に関してのポイントを、表に示しました。 ポイント 調整方法 寝る姿勢 横向きで寝るときは、しびれやすい方を上にする あおむけで寝るときは、膝の下にクッションを入れるか腕の位置を少し高くする 枕選び 横幅50㎝以上、奥行き35㎝以上 中央が低く両サイドが高めの立体的な形 自然に立った姿勢をそのままキープできる高さが望ましい 1日の約3分の1は、睡眠時間です。筋肉の緊張や神経の圧迫がない自然な姿勢が、手足のしびれ予防のポイントといえるでしょう。 身体を温める しびれる部分を温めたり、揉んだりすると血流が改善されて、しびれがやわらぐこともあります。具体的な方法は、ゆっくりお風呂につかる、やさしくマッサージするなどです。 ただし、神経障害の方は皮膚の感覚が鈍くなることがあるため、やけどに注意する必要があります。寒いときも、長時間ストーブの前に座らないように心がけましょう。カイロで温めるときは肌に直接当てず、決められた時間を守ってご使用ください。 身体を適度に動かす ウォーキングやストレッチなどの適度な運動を行うことで、血流改善によるしびれの緩和が期待できます。 手を握ったり開いたりする、手首や足首をゆっくり曲げ伸ばしするなどもストレッチの一種です。 ただし、症状が強いときには無理に動かさず、安静にしましょう。 下記の記事では、手根管症候群による手のしびれを自分で治すためのストレッチが紹介されています。あわせてご覧ください。 まとめ|セルフケアを行っても寝起きに手足がしびれるときは医療機関を受診しよう 寝起きに手足がしびれる原因は、寝るときの姿勢から脳血管疾患までさまざまです。 自分でできるセルフケアもありますが、ケアを続けても手足のしびれが改善されない場合は、放置せず医療機関を受診しましょう。 とくに、手足が動かない、ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は、脳血管疾患の可能性があります。命に関わることもあるので、ためらわず救急車を呼びましょう。 糖尿病を治療している中で、徐々に手足のしびれが出てきた方は、神経障害の可能性があります。早めに主治医へ相談しましょう。 手足がしびれ解消のためには、セルフケアや治療が大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、しびれの原因となる脳卒中や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、糖尿病などの疾患に対して再生医療を提供しています。 手足のしびれでお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。 \無料相談はこちらから/ 0120-706-313 (受付時間:9:00〜18:00) 寝起きに手足がしびれることに関するよくある質問 ここでは、寝起きに手足がしびれることに関するよくある質問を2つ紹介します。 手足がしびれるときは何科に行くと良いでしょうか? 手足がしびれるときの受診先としてあげられるのは、整形外科や神経内科、脳神経外科などです。 しびれが急に出てきて、手足の麻痺があるときは早急に脳神経外科を受診しましょう。 脳血管疾患の可能性が高く、初期症状が見られた時点で医療機関への相談が推奨されます。 「ただの手足のしびれ」と放置されてしまいがちですが、少しでも不安な方はまずは医療機関へ相談してみましょう。 当院リペアセルクリニックでは、寝起きの手足のしびれの原因となっている「神経系疾患」「脳血管疾患」の改善が期待できる再生医療をご提供しています。 「手足のしびれが病気ではないか不安」「病気だった場合にすぐ治療したい」という方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。 ▼まずは無料で電話相談 >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 更年期になると朝起きたら手がしびれるのはなぜですか? 原因として考えられるものが、女性ホルモンの1つ、エストロゲンの減少です。エストロゲンの減少は、自律神経の乱れにも関係しています。自律神経の乱れが、血流の悪化、ひいては手のしびれにつながっています。 エストロゲン減少の影響としてもう1つあげられるのが、皮膚の乾燥です。乾燥した皮膚は敏感であるため、しびれを感じやすくなるといわれてます。 参考文献 (文献1) 出口尚寿,西尾善彦.「糖尿病性末梢神経障害」『日本内科学会雑誌』108(8), pp.1538-1544, 2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/8/108_1538/_pdf (最終アクセス:2025年3月20日) (文献2) 厚生労働省「みんなで知ろう! からだのこと」厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202410_006.html (最終アクセス:2025年3月20日)
2025.03.31 -
- 糖尿病
- 脳卒中
- 足部、その他疾患
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 頭部
- 手根管症候群
- 脊椎
- 脊柱管狭窄症
- 足部
- 内科疾患
「手や足のしびれが続いて困っている」 「何か病気があるのだろうか?」 このようにお悩みの方も多くいらっしゃることでしょう。 手足のしびれを引き起こす病気はさまざまです。なかには原因がわからないものもあります。 本記事では、手足のしびれを引き起こす病気を中心に解説します。 しびれが続くときの受診先や、病気の予防法なども解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 手足のしびれの原因となる病気 手足のしびれを引き起こす病気は、以下の5つです。 脳神経系の病気 脊髄(脊椎)神経系の病気 末梢神経系の病気 内科系の病気 その他の病気 それぞれの病気について解説します。 脳神経系の病気 手足のしびれを引き起こす脳神経系の病気としては、主に以下のようなものがあげられます。 脳梗塞 脳出血 一過性脳虚血発作 脳腫瘍 ここで紹介する症状がある場合は、すぐに救急車を呼んで脳神経外科を受診しましょう。 脳梗塞 脳の血管が詰まって血液が流れなくなり、酸素および栄養不足のため、脳細胞が死んでしまう病気です。 手足のしびれのほかに、手足が麻痺して動かない、ろれつが回らないといった症状が見られます。意識障害を起こすこともあります。 脳梗塞は命に関わる病気でもあるため、これらの症状が現れたら早急に医療機関を受診しましょう。 脳梗塞の症状に関しては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 脳出血 脳の血管が切れて出血した結果、脳細胞が障害を受ける病気です。 手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないなど、脳梗塞と同じような症状のほか、激しい頭痛や吐き気といった症状も見られます。 脳出血も命に関わる病気であるため、早急な受診が必要です。 脳出血の症状に関しては、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 一過性脳虚血発作 一時的に脳の血流が悪くなり、酸素や栄養が不足する病気です。 手足のしびれや麻痺、感覚の低下といった症状が出ますが、通常は24時間以内に消失します。(文献1) 一過性脳虚血発作は、脳梗塞や脳出血の前触れともいわれています。症状が現れてすぐに消えた場合でも、放置せずに医療機関を受診しましょう。 脳腫瘍 その名のとおり脳に発生する腫瘍で、脳そのものにできる「原発性脳腫瘍」と、他の臓器から転移した「転移性脳腫瘍」にわかれます。 症状は、手足のしびれや麻痺、頭痛、吐き気などです。視野が狭くなったり、視力が低下したりといった眼科症状が見られる場合もあります。 脊髄(脊椎)神経系の病気 手足のしびれを引き起こす脊髄(脊椎)神経系の病気は、主に以下のとおりです。 変形性頚椎症 頚椎椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 後縦靱帯骨化症 変形性頚椎症 頚椎(首部分の背骨)内の椎間板の高さが減ったり、椎骨(背骨の一部)に骨のとげができたりするといった変化が生じる病気です。 首や肩が痛むほか、手の神経が圧迫されることにより、手のしびれも出てきます。 頚椎椎間板ヘルニア 頚椎をつないでいる椎間板が変形して飛び出し、脊髄や神経根が圧迫される病気です。 手や腕、首、肩にしびれや痛みが生じたり、足のもつれや歩行障害などが出たりします。首を動かすと痛みが強くなります。 以下の記事で、頚椎椎間板ヘルニアの初期症状を解説していますので、あわせてご覧ください。 脊柱管狭窄症 腰椎(腰部分の背骨)の変形により神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される病気です。50代から80代の方に多いとされています。 手足のしびれ以外には、間欠性跛行や膀胱直腸障害などの症状が見られます。 間欠性跛行や膀胱直腸障害といった症状については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。 後縦靱帯骨化症 頚椎の後ろにある、背骨を安定させる靱帯(後縦靱帯)が骨のように硬く変化して脊髄を圧迫するもので、厚生労働省が定める指定難病の1つです。(文献2) 症状としては、肩こりや手のしびれ、こわばり、痛みなどがあります。病気が進行すると、箸が使いにくい、字が書きにくいといった症状も出てきます。 末梢神経系の病気 手足のしびれを引き起こす末梢神経系の病気としてあげられるのは、手根管症候群や足根幹症候群などです。 手根管症候群 手根管と呼ばれる手首のトンネル部分で神経が圧迫されて、手指のしびれや痛みが発生する病気です。 中高年の女性に多く、進行すると親指の筋肉が痩せてしまい、ものを掴みにくくなります。 足根管症候群 足根管と呼ばれる内くるぶしのトンネル部分で、神経が圧迫されたり傷ついたりするために、足裏や足首にしびれや痛みが生じる病気です。 足の痛みはピリピリとした感じのもので、立ったり歩いたりしたときや、特定の靴を履いたときに生じます。足の冷えや感覚異常を伴う場合もあります。 内科系の病気 内科系の病気によっても、手足のしびれが生じます。代表的なものが、糖尿病性神経障害や閉塞性動脈硬化症です。 糖尿病性神経障害 糖尿病の合併症の1つが、神経障害です。 神経障害は、高血糖が続いたことで血流が悪くなり、手先や足先まで酸素や栄養を含んだ血液が届きにくくなるために起こります。 神経が障害された結果、手足のしびれが生じます。 閉塞性動脈硬化症 動脈硬化により血管が狭くなる、もしくは詰まるために血流が悪くなる病気です。手足の血管が狭くなったり詰まったりすると、しびれや冷たい感覚が生じます。 足の血管に閉塞性動脈硬化症が起こり、進行すると、間欠性跛行と呼ばれる歩行状態になります。 間欠性跛行とは、歩いているうちに足に痛みやしびれが生じて、休憩すると治まるものです。 その他の原因 ビタミン欠乏や更年期障害、うつ病、精神的ストレスなどが原因で手足のしびれが生じる場合もあります。 手足がしびれる病気の前兆をチェックする方法 手足のしびれはさまざまな病気の前兆として現れることがあります。 しびれの特徴からどのような疾患の可能性があるのかをチェックしましょう。 疾患名 しびれの特徴 脳血管疾患 (脳梗塞や脳出血) 片方の手足だけがしびれる 手足が麻痺する、ろれつが回らない、意識障害がある 変形性頚椎症 全体的に手がしびれる 首の後ろを動かすと手のしびれが悪化する 頚椎椎間板ヘルニア 手足のしびれに痛みを伴うことがある 手根管症候群 手の親指や人差し指、中指がしびれる 手首を酷使したあとにしびれが生じる 手足のしびれと病気の前兆について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 手足がしびれるときに受診する病院 手足のしびれが起きる原因はさまざまです。しびれのために病院を受診する際は、しびれ以外の症状や、現在かかっている病気などから受診する科を決めましょう。 ここでは、3つの科について解説します。 脳神経外科 手足のしびれ以外に、片側の手足が動かない、ろれつが回らない、言葉が出てこないなどの症状がある場合は、脳梗塞や脳出血の可能性があります。 この場合の受診先は脳神経外科です。脳梗塞や脳出血の場合は、一刻も早い治療が必要なため、救急車を呼んで早急に受診しましょう。 整形外科 手足のしびれ以外に、腰や手足の痛み、間欠性跛行などの症状がある場合は、整形外科を受診しましょう。 受診時には、医師が状況を把握しやすいように、症状がある部位や出現時期などを伝えると良いでしょう。 内科 糖尿病や高血圧、高脂血症といった内科疾患があり、しびれ以外に症状がない場合は、内科(かかりつけ医)を受診しましょう。 とくに糖尿病治療中で手足のしびれが生じている場合は、神経障害を起こしている可能性が高いため、早めの受診が必要です。 手足がしびれる病気の予防法 手足がしびれる病気の種類はさまざまです。ここでは、3種類の病気について予防法を解説します。 脳神経系の病気 末梢神経系の病気 内科系の病気 脳神経系の病気の予防法 脳梗塞や脳出血、いわゆる脳卒中の予防で大切なことは、高血圧の予防・改善です。高血圧の予防・改善には、日常的な減塩を心がけることが効果的です。 また、糖尿病や高脂血症といった生活習慣病のほか、喫煙、過度な飲酒なども脳血管を痛めます。生活習慣病予防のためにも、バランスの良い食事や適度な運動を心がけましょう。 脳卒中は再発予防も大切です。 当院「リペアセルクリニック」では、脳卒中の後遺症治療・再発予防として再生医療(幹細胞治療)を行っております。 再生医療について詳しくは、以下のページをご覧ください。 末梢神経系の病気の予防法 ここでは手根管症候群の予防について解説します。 手根管症候群の予防や悪化防止のために大切なのは、手を酷使しないことです。とくに、手首を曲げる動作は、神経の通り道である手根管を狭くしてしまいます。 パソコン作業が多い方や、工具(ドライバー)を仕事でひんぱんに使う方は、手首を休める時間を意識して取りましょう。 糖尿病や甲状腺機能低下症の方は、手根管症候群を発症しやすいといわれています。定期的に検査を受けて、病状を確認しましょう。その上で、手首のしびれが見られた場合は、放置せずに整形外科を受診してください。 内科系の病気の予防法 内科系の病気の中でも、糖尿病は生活習慣の改善で予防できます。 糖尿病予防の主なポイントは次の通りです。 栄養バランスの良い食事や腹八分目を心がける ウォーキングやサイクリングといった適度な運動を続ける 適正体重を保つ 毎年健康診断を受ける 喫煙者は禁煙を検討する アルコールは適量を守る 糖尿病患者の方は、病気を放置せずに治療を継続しましょう。 再生医療は、糖尿病治療における新たな選択肢です。 糖尿病治療としての再生医療については、以下のページで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 まとめ|手足のしびれの病気が疑われる際は早めに病院へ 手足のしびれを引き起こす病気は数多くありますが、原因がわからないものも少なくありません。 脳血管疾患のように命に関わる病気が原因のこともあるため、手足のしびれが続くときは放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、しびれの原因となる脳卒中やヘルニア、糖尿病などに対して再生医療を行っています。手足のしびれでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 手足のしびれの病気に関するよくある質問 皮膚の表面がピリピリする原因は? 主な原因は、痛みを伝える神経が損傷されるために起こる神経障害性疼痛や、帯状疱疹などです。 神経障害性疼痛の場合は、痛み止めやブロック注射などの治療があります。帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬の内服、もしくは点滴がメインの治療法です。 手足のしびれの治し方は? 原因になっている病気がある場合は、その病気を治療します。同時に、しびれをおさえる治療も行います。 しびれの主な治療法としては、消炎鎮痛剤やビタミン剤の内服があげられますが、病気によっては手術が必要です。 しびれが続くときは、医療機関で適切な治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「一過性脳虚血発作は、早期に完成型脳梗塞を発症する可能性が高い」国立研究開発法人 国立循環器病研究センターホームページ, 2024年9月27日 https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/scd/cvmedicine/tia-torikumi/ (最終アクセス:2025年3月20日) (文献2)難病情報センター「後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)」難病情報センターホームページ https://www.nanbyou.or.jp/entry/98 (最終アクセス:2025年3月20日)
2025.03.30 -
- 糖尿病
- 内科疾患
妊娠中に「妊娠糖尿病」と診断され、不安や戸惑いを感じていませんか? 「食事に気をつけてください」と言われる中で、「運動も大切です」と医師からアドバイスを受けたものの、妊娠中に体を動かして本当に大丈夫なのか、逆にお腹の赤ちゃんに影響が出ないか、不安になる方も多いでしょう。 本記事では、妊娠糖尿病の管理においてなぜ運動が推奨されているのか、そしてどのような運動なら安心して行えるのかを、わかりやすく解説します。 運動が不安な方でも、今日から無理なく始められるポイントや注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。 妊娠糖尿病には運動が効果的 妊娠糖尿病と診断されると、まず「食事管理」が思い浮かびますが、運動も血糖値のコントロールに効果的な手段のひとつです。 妊娠中でも体に負担をかけすぎない運動であれば、医師の指導のもと安心して取り入れられます。 実際に、妊婦さんの中には運動を取り入れることで血糖値が安定し、体調管理がしやすくなったと感じる方も少なくありません。 本章では、妊娠糖尿病に対する運動の具体的な効果や、安全に取り入れやすい方法について解説します。 歩行のみでも改善効果が期待できる 運動と聞くと、ランニングのような激しい運動が必要と思われがちですが、ウォーキングのような軽い有酸素運動でも血糖値コントロールへの良い影響が報告されています。 たとえば、科学研究費助成事業による調査では、妊娠糖尿病の妊婦において歩行運動を取り入れた妊婦の方が、食事療法のみの妊婦に比べてインスリン治療へ移行した割合が少なかったことが報告されています。(文献1) もちろん、すべての人に同じ効果が現れるわけではありませんが、「歩くだけでも意味がある」と思えるだけでも、日々の活動が変わります。 運動により血糖値コントロール・体重管理・便秘予防などの効果がある 先ほども解説した通り、妊娠糖尿病において、軽めの有酸素運動は血糖値のコントロールに非常に有効ですが、運動の効果は、血糖値の改善だけではありません。 適度な運動を続けることで、過度な体重増加を防ぎ、妊娠中に起こりやすい便秘の予防にも効果があるとされています。 さらに、軽い運動はリフレッシュにもつながり、ストレスの軽減や睡眠の質の向上など、心身のバランスを整える助けにもなります。 妊娠中はホルモンバランスの変化で気分が不安定になりやすいため、体を動かすことで気分転換ができるのも大きな利点です。 安定期(妊娠中期)〜後期では運動が始めやすい 妊娠初期は体調が不安定なことが多いため、無理に運動を始める必要はありません。 しかし、妊娠12~16週以降の安定期に入り、体調が落ち着いてきた頃であれば、医師の許可を得たうえで軽い運動を始めることができます。 ウォーキングやマタニティヨガ、ストレッチなど、お腹に負担をかけずにできる動きから少しずつ取り入れていくのがポイントです。 最初は短時間・軽い内容からスタートし、体調を見ながら続けていきましょう。 妊娠糖尿病の方におすすめの3つの運動 妊娠糖尿病の方にとって、運動は血糖コントロールや体調管理に役立つ大切なセルフケアのひとつです。 ここで、妊婦さんでも無理なく取り入れやすい、妊娠糖尿病の管理にも効果が期待できる、以下3つの運動方法をご紹介します。 ウォーキング(散歩) マタニティヨガ・ストレッチ 軽い筋トレ(スクワット・もも上げ) ウォーキング(散歩) ウォーキングは、妊娠中でも安全性が高く、体への負担が少ない有酸素運動です。 血流が良くなることで血糖値の安定にもつながり、リフレッシュ効果も期待できます。 無理に長時間歩く必要はなく、1日15〜30分程度、気分がよい時間帯にゆっくり歩くだけで大丈夫です。 歩く際は、気温や天候に配慮し、水分補給を忘れずに行いましょう。 マタニティヨガ・ストレッチ マタニティヨガやストレッチは、呼吸を意識しながらゆっくり体を動かす運動です。 筋肉をやわらかく保ち、血行を促進することで、血糖値の安定にも良い影響が期待でき、心身のリラックスにもつながります。 また、腰痛や肩こり、むくみ、便秘といった妊娠中の不調の予防や緩和にも効果的です。 たとえば「猫と牛のポーズ」は、妊婦さんに人気のある基本的な動きのひとつです。 【猫と牛のポーズ】 四つん這いになる 肩の真下に手首、脚の付け根の真下に膝を置く 手のひらを大きく開き、中指を正面に向ける 膝の間は拳1つ分あける 頭からお尻まで一直線にキープ 息を吸いながら背中を反らせて目線を上に 息を吐きながら背中を丸めて目線をおへそに 四つん這いになることで、お腹が自然に下がり、赤ちゃんにとっても居心地の良いスペースが生まれます。 お母さんは呼吸がしやすくなり、赤ちゃんもリラックスできると言われており、息苦しさを感じたときにもおすすめです。 ただし、このポーズは妊娠16週以降で、主治医から運動の許可を得ている方のみ行うようにしましょう。 自宅で動画を見ながら取り組める手軽さも魅力ですが、お腹を圧迫しない姿勢を選び、無理なく行うことが大切です。 軽い筋トレ(スクワット・もも上げ) 妊婦さんでもできる範囲の軽い筋トレもおすすめです。 筋肉を使うことで、インスリンの働きが良くなり、血糖の取り込みがスムーズになるといわれています。 たとえば、椅子につかまりながらのスクワットや、その場でももを軽く上げ下げする運動などは、下半身の筋力を保ちつつ代謝をサポートします。 運動前後のストレッチや呼吸を意識し、お腹に力を入れすぎないよう注意しながら行うのがポイントです。 妊娠糖尿病の方が運動する際の注意点 妊娠糖尿病の管理に運動は効果的ですが、妊娠中という特別な時期であることを忘れてはいけません。 体調や妊娠の経過によっては、運動がかえって負担になる場合もあるため、「無理をしない・安全に行う」ことが最も大切です。 本章では、妊娠糖尿病の方が運動を始める際に、必ず押さえておきたい以下、4つの注意点をご紹介します。 医師に必ず相談してから開始する お腹が張ったらすぐ中止する 水分補給・室温管理など安全に配慮する 激しい運動は避ける 医師に必ず相談してから開始する 妊娠中に運動を始める前には、必ず主治医へ相談しましょう。 妊娠糖尿病の症状の程度や、妊娠の経過、合併症の有無などによっては、運動を控えるよう指示される場合もあります。 また、体調は日によって変化するため、「昨日は大丈夫だったから今日も大丈夫」とは限りません。 医師と相談しながら、そのときの自分の体に合った方法・タイミングで取り組むことが大切です。 お腹が張ったらすぐ中止する 妊娠中の運動で最も大事なのは、「頑張りすぎない」ことです。 少しでもお腹が張る、疲れすぎたと感じる、不調のサインがあれば、すぐに運動を中止しましょう。 妊娠糖尿病の管理には継続が大切ですが、それ以上に大切なのは母体と赤ちゃんの安全です。 「今日は無理しない」という判断も、立派な自己管理のひとつです。 水分補給・室温管理など安全に配慮する 妊娠中は汗をかきやすく、体温調整もしにくくなっているため、こまめな水分補給と室温管理が欠かせません。 とくに夏場や暖房のきいた室内では、熱中症や脱水症状を防ぐためにも常に水分を手元に置いておくようにしましょう。 また、食後30分〜1時間以内の軽い運動が血糖値の上昇を抑えるのに効果的とされており、このタイミングを意識するのもおすすめですが、体調がすぐれないときは無理せず、あくまで自分の体と相談しながら行いましょう。 激しい運動は避ける 妊娠中はお腹に衝撃や強い負荷がかかるような運動は避ける必要があります。 主に、以下の運動は原則NGとされています。 ランニングやジャンプなど、全身に強い負荷がかかる動き サッカーやバスケットボールなど、転倒や接触リスクのあるスポーツ 腹筋運動や体幹トレーニングなど、お腹に直接負担がかかるもの これらは流産や早産のリスクを高める恐れがあるため、妊娠中は控えるのが基本です。 安全第一で「ゆっくり・やさしく・短時間」を心がけましょう。 まとめ|妊娠糖尿病と運動は正しく組み合わせれば心強い味方 妊娠糖尿病と診断されると、不安や戸惑いを感じる方も多いかもしれません。 しかし、適切な運動は血糖コントロールに役立つだけでなく、妊娠中の心身の健康をサポートしてくれる心強い味方にもなります。 大切なのは、「できることから無理なく続ける」ことです。 ウォーキングやストレッチなど、体調に合わせて取り入れやすい運動から始めてみましょう。 少しでも不安があるときは、かかりつけの医師や助産師に相談しながら進めることが安心・安全への近道です。無理のない範囲で体を動かしながら、穏やかな妊娠生活を送りましょう。 参考文献 (文献1) 菅沼信彦「妊娠糖尿病妊婦に運動療法は効果的か?2014年度 実績報告書」京都大学 医学系研究科、2015年(研究課題番号:25670970) https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-25670970/256709702014jisseki/(最終アクセス:2025年5月25日])
2022.06.02 -
- 糖尿病
- 内科疾患
50代女性で糖尿病の初期症状はどんなものがある? 50代になってから、健康診断で血糖値やHbA1cが高いと指摘されてしまった。対策は? この記事を読んでいる方は、50代女性で糖尿病になると、どんな初期症状があらわれるのか気になっているのではないでしょうか。 血糖値が高いと指摘されても、具体的にどんな症状が出るのか、どんな危険性があるのか想像がつきにくい人もいるかもしれません。 50代は糖尿病のような生活習慣病が増えてくる年代でもあります。特に女性の場合は更年期から発症するケースもあるため、初期症状を見逃さないようにしましょう。 本記事では、糖尿病の初期症状について、50代女性に特化して解説します。 記事を最後まで読めば、50代女性における糖尿病の初期症状が分かり、適切な対策法を考えられるでしょう。 当院リペアセルクリニックでも、糖尿病の症状や治療法についてのご相談を受け付けております。メール相談やオンラインカウンセリングより気軽にお問い合わせください。 糖尿病の初期症状は「のどの渇きやだるさ」 血液の中の糖が多くなると、体にさまざまな異変を感じます。 しかし、糖尿病には「進行しないと症状が出にくい」という特徴があります。つまり、初期症状が出る頃には、すでに糖尿病が進行している状態ともいえるのです。 糖尿病の初期症状としては、以下が挙げられます。(文献1) のどが乾く 尿の回数が多い 体のだるさを感じる 体重が減ってくる 血液の中の糖を薄めるために頻回に水を飲みたくなったり、その影響で尿の回数が増えたりします。 また、血糖をエネルギーに変えて、血糖値を下げるホルモンの分泌が悪くなり、疲れやすい、体重が減るといった症状にもつながります。 糖尿病が進行してくると、体には様々な合併症が現れます。糖尿病の主な合併症は以下の通りです。(文献2) 糖尿病の合併症の例 症状 糖尿病性神経障害 手足のしびれ、感覚の鈍りなど 糖尿病性網膜症 目のかすみ、視力低下など 糖尿病性腎症 むくみ、高血圧、尿毒症など もし糖尿病のような症状が気になっている場合には、早めの受診をお勧めします。 【女性向け】糖尿病の初期症状チェックリスト 「甘いものが止められない」「食事のバランスが偏っている」といった糖尿病になりやすい生活習慣を持っている方は、自分が糖尿病ではないか気になりますよね。 以下は、女性向け糖尿病の初期症状チェックリストです。(文献3)(文献4) のどが渇きやすい 尿の回数が多い 疲れやすい 目がかすむ 体重が減ってきた 手足のしびれや痛みがある 感染症にかかりやすい 傷が治りにくい 当てはまる項目が多い場合は、糖尿病の初期症状の可能性も考えられます。 ただし本表はあくまでもセルフチェックに留め、気になる症状は、早めに医療機関に相談しましょう。 糖尿病の初期症状については、以下の記事もぜひご覧ください。 糖尿病患者の9割は「2型糖尿病」 糖尿病は、生活習慣病とも関連する注意すべき病気です。血糖値を降下させる作用のある、インスリンと呼ばれるホルモンの分泌量が低下する、もしくはインスリンの働きが悪くなり発症します。 糖尿病は、大きく「1型」と「2型」に分類されます。 「1型糖尿病」は、自己免疫の異常によって、インスリンを産生する膵臓の細胞が攻撃を受け発症するタイプです。生活習慣の乱れなどはあまり発症に関与しません。一方、糖尿病患者の約9割以上が「2型糖尿病」と言われています。 主な原因は、ストレスや肥満体型、運動不足や暴飲暴食など日々の生活習慣の乱れです。生活習慣の乱れが続くと、インスリンの分泌が少なくなったり、効きが悪くなり、血液中の糖が細胞に十分に取り込まれなくなります。 2型糖尿病でインスリンが出にくくなる、効きが悪くなる原因の多くは、高脂肪、高カロリーなどの食習慣です。また、糖質の取り過ぎや顕著な運動不足が続くとインスリンの働きが弱まり、徐々に血糖値が上昇していきます。 そのほか、妊娠や更年期を契機に発症するパターン、あるいは膵炎や膵臓がんなど膵臓疾患に合併して発症するパターンなども挙げられます。 2型糖尿病について、詳しく以下の記事でも解説しています。ぜひご覧ください。 50代女性の糖尿病リスクが高い理由 50代女性の糖尿病リスクが高い理由は、更年期が関係しています。 一般的に、女性は40代頃から更年期と呼ばれる時期に入ります。この時期は体がほてって疲労を感じやすいなど症状があらわれることが多いです。 更年期の症状は、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌量低下によるものです。 エストロゲンには血糖値を調整する働きがあり、通常は女性を糖尿病から守る役割を果たしています。エストロゲンの分泌量は40代頃から減少し始め、50代の閉経期には急激に低下することから、更年期以降は糖尿病を発症するリスクが高まっていくのです。 更年期には自治体の定期検診や、勤務先の企業健診の結果に注目しましょう。 特に以下の値が基準値を超えている場合は、糖尿病の可能性があるため、医療機関での受診をおすすめします。 空腹時血糖値:126mg/dl以上 HbA1c:6.5%以上 (文献5) また、尿検査で糖が検出される場合も、糖尿病の可能性を示唆する重要なサインとなります。 50代女性が糖尿病を予防する4つのポイント 50代女性に起こりやすい糖尿病は「2型糖尿病」で、生活習慣の乱れが主な原因です。糖尿病を予防し、健康でいられるための4つのポイントをまとめました。 糖尿病予防のために意識したいポイントは、以下の通りです。(文献6) 食事を改善する 運動習慣をつける ストレスを溜めない 禁煙をする この章では、各ポイントについて詳しく解説します。 1.食事を改善する 食事はバランス良く、適量を摂ることが大切です。 糖分や脂質の多い食事は血糖を上昇させたり、体重を増加させたりします。野菜や果物、魚、豆類、雑穀類などを意識して摂ると、急な血糖値の上昇を防げるでしょう。 また、食事を抜くと次の食事で血糖値がいきなり上昇し、体に負担を与えてしまいます。時間がない、忙しいなどの理由で食事がとれない場合があっても、少しでも何か何かを口にすることから始めましょう。 間食もなるべくヘルシーなこんにゃくやゼリーにすると効果的です。 2.運動習慣をつける 有酸素運動は、血糖を筋肉に取り込みやすくする効果や、インスリンの働きも良くする効果があります。 週3回以上、週合計150分以上を目標に、無理のない範囲で行いましょう。 ウォーキングやサイクリングなど、またなるべく階段を使う、ラジオ体操をするなど「日常でプラス10分動く習慣」を作ることもおすすめです。 3.ストレスを溜めない ストレスは、ノルアドレナリンやコルチゾルといったホルモンを分泌させ、血糖値を上げる働きがあります。(文献7) 家事や育児、仕事などでストレスを感じている場合は、趣味を楽しむ、誰かと話す、ゆっくり呼吸をしてみるなど、意識して休む時間を作りましょう。 4.禁煙をする 喫煙はインスリンの働きを弱めるため、血糖値が下がりにくくなってしまいます。 禁煙することで、糖尿病のリスクを下げるだけでなく、他の生活習慣病やがんの予防にもつながるでしょう。全身の健康を保つために、禁煙を検討することをおすすめします。 まとめ|50代女性は糖尿病のリスクが高まる!生活習慣を見直そう 糖尿病は血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気です。 50代女性は更年期のエストロゲン減少によって、血糖値のコントロールがうまくいかなくなり、糖尿病を発症することがあります。 普段から特段の自覚症状がなくても、知らぬ間に高血糖になる可能性があるため周囲が必要です。女性の場合は、更年期前後は生活習慣に特に意識を向けてみましょう。 当院では、膵臓(すいぞう)の再生医療を通じて糖尿病の進行を遅らせる治療も取り入れています。詳しくはこちらのページをご参考ください。 膵臓の再生医療について詳しく知りたいという方は、メール相談、オンラインカウンセリング も承っておりますので、ぜひご活用ください。 女性の糖尿病についてよくある質問 糖尿病は遺伝しますか? 2型糖尿病には、遺伝的要因もあります。 両親から受け継いだ遺伝子の性質により、インスリンの分泌が少なく、糖尿病になりやすい方もいます。 血の繋がった家族に糖尿病がいる方は、食べ過ぎや運動不足など、糖尿病のリスクを高めないように、とくに注意しましょう。 糖尿病は何科を受診すればよいですか? 基本的には内科を受診しましょう。 病院によっては「糖尿病内科」「内分泌科」といった糖尿病に特化した科を持っているところもあります。 また、もし合併症が現れている場合には、眼科や泌尿器科などの専門科の受診も必要です。 参考文献 (文献1) 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病とは」 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html (文献2) 一般社団法人 日本糖尿病学会「糖尿病合併症について」 https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=3 (文献3) 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「糖尿病|病気について|循環器病について知る|患者の皆様へ」 https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/diabetes/ (文献4) 東京都保健医療局「糖尿病発症予防ガイドブック 今日から予防!糖尿病」 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/kensui/tonyo/citizen/6leaflet.html (文献5) 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン 2024」 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/01.pdf (文献6) 厚生労働省「みんなで知ろう! からだのこと」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202411_006.html (文献7) 大下咲子 ほか「<研究報告>2型糖尿病患者のストレスとストレス対処行動」 https://isns.jp/journal_pdf/03-1/03-1-2_rr01.pdf
2022.05.24 -
- 糖尿病
- 内科疾患
糖尿病とは、血液中の血糖値が慢性的に高値を示す病気です。 糖尿病にかかると以下のような初期症状が出る傾向にありますが、顕著な自覚症状が認められないケースも少なくないと言われている点で注意が必要です。 糖尿病は、進行すると様々な合併症を引き起こすことが知られていますので、初期症状と疑われる場合は専門医療施設で精密検査を必要に応じて受けることが重要です。 今回は、糖尿病を初期の段階で知り、早期治療を開始するための「初期症状」と、その際に現れる「身体のサイン」、そして初期症状が出現した際の対処法に関する情報を中心に詳しく解説していきます。 糖尿病の初期症状 糖尿病にかかると、慢性的に高血糖が続くために、喉が渇きやすくなり、尿量増加、体重減少などの症状が現れます。しかし、自覚症状が認められないケースも少なくないです。 万が一、糖尿病の初期症状に気がつけば食事の改善などで健康状態を維持することが可能ですが、糖尿病は、進行するとさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。 この記事では、糖尿病の初期症状や症状のチェックリストを中心に解説します。 このような身体のサイン(症状)に気が付いたら医療機関へ のどが渇きやすくなった 尿の量が増加します 体重が減少した 空腹が満たされない 足がつったり、しびれる 足にひび割れや、乾燥しやすくなった すぐに風邪をひくなど体が弱くなった 体重が減る 糖尿病の症状では、体重減少が見られます。この減少は、体内でインスリンの働きが不十分になることが原因です。通常、インスリンは細胞にブドウ糖を取り込み、エネルギーとして使用しますが、糖尿病ではこの機能が低下します。 その結果、身体はエネルギー不足を補うために、脂肪や筋肉を分解してエネルギー源とします。この過程で体重は減少し、また、多尿によって体液が失われることも体重減少の要因です。 のどが渇きやすくなる 糖尿病の症状の一つにのどの渇きがあります。これは、血糖値が高くなることによって体内の水分バランスが崩れ、多尿状態が引き起こされるためです。高血糖の状態では、腎臓が血液中の余分な糖を排出しようとしますが、同時に大量の水分も一緒に排出されるため、体内の水分が不足してのどが渇きやすくなります。 喉の渇きが続くと、さらに水分を摂取するため、トイレに行く回数も増えます。 尿の回数が増える 糖尿病では頻尿の症状が見られます。血糖値が高くなると、身体が余分な糖を排出するために、大量の水分が必要です。 結果として、尿の量や回数が増えるだけでなく、強い喉の渇きも引き起こされます。多尿は身体から水分が多く失われるため、脱水状態にもつながりやすくなります。 疲れやすくなる 糖尿病の症状として疲れやすくなることが挙げられます。これは、体内でインスリンが十分に働かず、糖分がエネルギー源として細胞に取り込まれにくくなるためです。通常、食事で摂取した糖分はエネルギーとして使われますが、糖尿病ではこのエネルギーの供給がうまくいかず、体が疲労を感じやすくなります。 また、高血糖状態が続くことで、血液の循環が悪化し、酸素や栄養が体の隅々まで行き渡りにくくなることも原因の一つです。 足がつるなどの症状が見られる 糖尿病では、足がつる症状が見られます。これは糖尿病による神経障害(糖尿病性ニューロパチー)が主な原因です。高血糖状態が長期間続くと、末梢神経が損傷を受け、過剰な興奮を引き起こします。その結果、筋肉が正常に機能せず、けいれんを引き起こしやすくなります。 また、糖尿病の影響で血液循環が悪化し、筋肉への酸素や栄養供給が不十分になることも、足がつる原因です。 感染症にかかりやすくなる 高血糖は白血球の働きを弱め、細菌やウイルスに対する防御力が低下します。 また、糖尿病患者では血流が悪くなるため治りにくい特徴も、あります。とくに皮膚や尿路、肺などの感染症が起こりやすく、足の傷が化膿しやすい糖尿病性足潰瘍や、肺炎、尿路感染症などが代表的な感染症です。 空腹感を感じやすくなる 体内でインスリンが十分に働かず、血糖値がコントロールされないため空腹感を感じやすいです。 通常、食事から摂取した糖分はインスリンの働きで細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。しかし、糖尿病ではこの過程が機能しないため、細胞がエネルギー不足の状態になります。その結果、身体がエネルギーを求め、空腹感を感じやすくなるのです。 初期症状を感じたら早めの受診がおすすめです。 糖尿病の初期症状が出ているかセルフチェック|当てはまる方は要注意 糖尿病の症状が出ているかセルフチェックしてみましょう。 トイレの回数が増えた 頻繁に喉が渇く 手足のしびれや痛みがある めまいや立ちくらみをおこしやすい 視力低下や目のかすみがある 体重が急に減少している 食べても満腹感が得られない 上記の症状に当てはまる場合、早めの対策が大切です。 糖尿病が進行すると現れる合併症の特徴 糖尿病が進行すると現れる症状は3つあります。 手足に現れる症状(手足しびれ、痛み) 目に現れる症状(目がかすむ、視力が落ちる) 腎臓が悪化して現れる症状(足のむくみ) それぞれ詳しく解説します。 手足に現れる症状(手足しびれ、痛み) 糖尿病が進行すると、手足にしびれや痛みが現れます。これは糖尿病性神経障害と呼ばれ、末梢神経がダメージを受けると起こります。症状が進行すると、痛みやしびれが悪化し、手足の感覚が鈍くなるため、傷や感染に気づきにくいです。 これが原因で、傷口が悪化しやすく、最終的には潰瘍や壊疽を引き起こすリスクが高まります。 目に現れる症状(目がかすむ、視力が落ちる) 進行すると、目に影響を及ぼす糖尿病性網膜症が出現する場合があります。糖尿病網膜症は、血糖値の高い状態が続くと、網膜の血管が損傷を受け、視力に障害をもたらす疾患です。初期段階では自覚症状は少ないものの、進行すると視力低下、視野のぼやけ、飛蚊症などの症状が現れます。 さらに重症化すると、網膜剥離や硝子体出血などが引き起こされ、失明するリスクが高いです。 腎臓が悪化して現れる症状(足のむくみ) 糖尿病が進行すると、腎臓がダメージを受ける糖尿病性腎症が現れる場合があります。これは糖尿病によって血糖値が高い状態が続き、腎臓の血管が傷つけられるためです。腎臓は血液をろ過して老廃物を排出する役割がありますが、腎機能が低下するとこの機能がうまく働かなくなります。 その結果、足のむくみや疲労感、尿量の変化などが見られ、進行すると血液中に老廃物が蓄積される尿毒症に至る可能性があります。 その他の症状(立ちくらみ、冷や汗) 糖尿病は、自律神経障害を合併する場合があります。自律神経は、心臓、消化器、呼吸器、血管などの器官を調整する重要な神経です。糖尿病が悪化すると、高血糖によって神経が損傷され、この調整機能が正常に働かなくなります。 自律神経障害の症状には、立ちくらみ、冷や汗、消化不良、便秘や下痢、頻尿や失禁などがあり、日常生活に大きく影響します。 まとめ|糖尿病の初期症状を把握して予防に努めよう 糖尿病は、慢性的に血糖値が高い状態が継続する疾患です。 のどの渇き、頻尿、足がつるなどの初期症状を放置して血糖値が高い状態が継続すると、糖尿病性神経障害・網膜症・腎症のリスクにつながります。 今回ご紹介した症状がある場合、リペアセルクリニックへ来院ください。 糖尿病についてよくあるQ&A 糖尿病の自覚症状が出たらもう手遅れですか? 糖尿病の自覚症状が出たからといって、必ずしも手遅れではありません。しかし、自覚症状が現れる段階では、血糖値がすでに高くなっている可能性があり、早期治療が重要です。糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、わずかな症状でも早期に医療機関を受診しましょう。 適切な治療と生活習慣の改善を行うと、症状をコントロールし、合併症の進行を防げるでしょう。 糖尿病は一生治りませんか 糖尿病は現時点で完治が難しい慢性疾患ですが、適切な治療と生活習慣の改善により、血糖値をコントロールし、健康を保てます。1型糖尿病は自己免疫の影響でインスリンの分泌がなく、一生涯インスリン治療が必要です。2型糖尿病は生活習慣が原因で発症する場合が多く、食事や運動の改善で症状を改善できる場合があります。 ただし、糖尿病が進行してた場合、治療を中断すると再び血糖値が上昇し、合併症のリスクが高まるため、継続的な治療が必要です。
2022.05.23 -
- 糖尿病
- 内科疾患
糖尿病の合併症(サイレントキラー)は生活習慣の改善で防ぐためにできることとは 糖尿病が「サイレントキラー」と恐れられる理由をご存知でしょうか? それは、糖尿病の進行がしばしば無症状であるためです。糖尿病は、長期間にわたって血糖値が高い状態が続くことで、様々な合併症を引き起こす可能性がある病気です。 これらの合併症は、特に早期に発見や治療が行われない場合に重篤な結果をもたらすことがあります。 その合併症としては失明の原因となる「糖尿病性網膜症」、人工透析の原因となる「糖尿病性腎症」など、進行すると日常生活に多大な影響を及ぼす症状が出る人がいるため注意が必要です。 糖尿病の治療が必要な理由は、これらの合併症を防ぐ目的があるためです。糖尿病は、些細な生活習慣の乱れが原因であることがほとんどといわれています。 糖尿病の合併症が「サイレントキラー」といわれ、命に関わる怖いものであることを知ることで、「生活習慣改善を変えるきっかけ」にしていただければと思います。 糖尿病は合併症により「サイレントキラー」と呼ばれる 糖尿病は、それ自体には痛みなどの症状はほとんど現れません。そのため、健康診断で糖尿病であることが指摘されても放っておく人も多いのが現状です。しかし、糖尿病は全身に合併症を引き起こします。合併症とは、一つの病気が元になって起こる新たな病気のことを指しています。 糖尿病の合併症は命に関わることから、糖尿病を「サイレントキラー(沈黙の暗殺者)」と呼ぶ医師も多くいるようです。 糖尿病の三大合併症は(し・め・じ)と呼ばれる 糖尿病の合併症には三大合併症と呼ばれる代表的なものがあります。次の病気が、糖尿病三大合併症と呼ばれるものです。 この3つは、糖尿病が無ければ起こらない病気であり、それぞれの頭文字を取って覚えやすく「し(神経症)・め(網膜症→め)・じ(腎症)」と呼ばれ、その危険性を喚起しています。 どの合併症も、多くは無症状で進行し、症状が現れたときには危険な状態となっています。生活に大きな支障をきたす病気であるため、注意が必要です。 糖尿病の三大合併症 し)神経障害 め)網膜症 じ)腎症 しびれや麻痺を全身に引き起こす神経障害(ニューロパシー) 神経障害は、糖尿病になってから適切な治療を受けずに放置すると、約5年で現れることが多く、糖尿病三大合併症の中で最も早く症状が現れるといわれています。 これは、高血糖が神経にダメージを与えることで、これにより感覚を伝える神経や身体を動かす神経が障害され、痛みやしびれ、こむら返りなど自覚しやすいものや、足の感覚が鈍くなる感覚鈍麻など自覚しづらいものが症状として現れます。手足の知覚や運動機能が低下することがあります 病状が進行すると、自律神経という内臓や血管の働きに関わる神経にも影響が出ます。そのため、しびれや麻痺が全身に広がり、身体が動かしにくくなり生活に大きな支障をきたしてしまう恐れがあります。 特に足の神経障害は重要であり、潰瘍が進行して感染を起こし、最悪の場合は切断が必要になることもあります。 視力低下や失明を引き起こす網膜症(糖尿病網膜症) 神経障害の後に現れるのが網膜症です。高血糖により、目の網膜にある毛細血管が傷ついたり破れたりすることで、視力低下や失明を引き起こす病気です。 網膜症の進行は、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値が高いほど早いと考えられています。症状が現れると、治療しても視力を回復することは難しいといわれています。 そのため、糖尿病と診断されたら眼科で定期的に網膜の検査を受けることが大切です。また、視界がぼやけたりシミが見えるなど、目の異変に気付いたらすぐに眼科を受診しましょう。 糖尿病網膜症は進行性の病態であり、早期の発見と治療が重要です。 糖尿病腎症は人工透析の原因第一位 糖尿病腎症は糖尿病三大合併症の中でも比較的遅く現れます。腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として出す働きをしています。 腎症になるとろ過機能が低下し、尿にタンパク質が漏れるようになります。(タンパク尿)症状が悪化すると腎機能のほとんどが失われ「人工透析」が必要になります。現在、日本の人工透析の原因第一位は、こうした糖尿病による腎症なのです。 これらの合併症は、糖尿病患者が血糖値の管理に注意を払い、定期的な健康チェックや医師の指導を受けることで予防・管理が可能です。早期の発見と治療は合併症の進行を遅らせ、重篤な結果を防ぐために非常に重要です。 糖尿病と診断されたら、定期的な尿検査を行い、腎機能の状態を確認するようにしましょう。 糖尿病 日本の人工透析:原因第一位は、糖尿病による腎症 早期発見:進行を遅らせる 合併症:進行を遅らせる 合併症を防ぐために必要なこと 糖尿病の合併症を防ぐためには、症状が現れていないうちから血糖値のコントロールを行うことが必要です。 糖尿病の治療や合併症の予防は、食事療法・運動療法・薬物療法の三本柱で行います。食事療法においては、血糖値が上がりやすい糖質の量を減らし、野菜や食物繊維の多い食品を多くとりいれることで高血糖の改善や体重低下が期待できます。 なお、極端な糖質制限は逆効果です。あくまで糖質を食べ過ぎないように食事の最後に食べるなどに留めましょう。運動療法によって血糖コントロールに関わるインスリンの働きが良くなり、高血糖の改善や体重低下が期待できます。 軽めのジョギングやウォーキングなど、無理なく継続できる方法で運動を取り入れましょう。薬物療法を行う場合は主治医と相談しながら症状に合わせた薬を飲み続けて経過を見てもらいましょう。 また、体質的にインスリン分泌が少ない人はインスリン注射を日常的に行う場合があり、これも薬物療法にあてはまります。 どの治療を中心にするかは個人差があるため、主治医に相談した上で決めていきましょう。 糖尿病の治療や合併症の予防の三本柱 食事療法 血糖値が上がりやすい糖質の量を減らす 野菜や食物繊維の多い食品を多くとりいれる 極端な糖質制限は逆効果 運動療法 インスリンの働きが良くなり、高血糖の改善や体重低下が期待できる 軽めのジョギングやウォーキングなど、無理なく継続 薬物療法 主治医と相談しながら症状に合わせた薬を飲み続ける インスリン分泌が少ない場合、インスリン注射を日常的に行う場合もある まとめ・糖尿病の合併症(サイレントキラー)は生活習慣の改善で防ぎたい 本記事では、糖尿病が進行すると命に関わる合併症を全身に引き起こすことを解説しました。糖尿病三大合併症である神経障害、網膜症、腎症が進行すると、治療して元の状態に戻すことは難しいとされています。 どの合併症も、症状が重くなるまで自覚症状がほとんどなく、自分で気付くのは困難です。糖尿病と診断されたら、内科や眼科での定期的な検査を受けて異常をいち早く発見しましょう。 健康な人と変わらないQOL(生活の質)や寿命を守るためにも、症状が現れないうちから定期的な検査や血糖コントロールを行うことが大切です。サイレントキラーと恐れられる糖尿病の症状にはくれぐれもご注意下さい。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 ▼以下もご参考にしていただければ幸いです 糖尿病を予防するための運動とは、その効果と注意点 ▼糖尿病の合併症|最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、糖尿病の新たな治療法として注目を浴びています
2022.05.19