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大腸がんは日本で死亡数・罹患率ともに上位にある深刻な疾患です。「余命はどれくらいなのか」と不安を抱える方は少なくありません。とくに家族は何を知り、本人をどう支えるべきか悩む場面も多いでしょう。 大腸がんの余命は進行度で大きく異なりますが、現代では治療法の選択肢が広がり、末期でも延命や苦痛緩和が期待できます。 この記事では余命の目安や末期症状、治療法から家族ができる支援をまとめて解説します。正しい情報を得て、納得のいく治療の選択にお役立てください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。気になる方はぜひご登録し、内容をチェックしてみてください。 大腸がんの余命は進行度(ステージ)で変わる 大腸がんの余命(生存率)は、がんが大腸の壁のどこまで進み、リンパ節や遠隔臓器に転移しているかで大きく変わります。 具体的には、進行具合によって次のような5つのステージで分類されます。(文献1)(文献2) ステージ 定義 余命 (5年生存率) ステージ0 がんが大腸の粘膜内にとどまっている状態 93~97.6% ステージ1 がんが固有筋層の深さまで広がっている状態 93.1% ステージ2 がんが固有筋層を越えて、大腸の外側近くまで浸潤している状態 76.4~88.3% ステージ3 がんの深さにかかわらず、周囲のリンパ節に転移が認められる状態 65.8~91.5% ステージ4 がんの深さにかかわらず、他の臓器に転移が認められる状態 26.7% 5年生存率はステージが早いほど高く、他の臓器への転移を伴うステージ4では大きく低下します。ただし、生存率は多数の患者をまとめた統計上の目安であり、年齢や全身状態、合併症などによって個人差が生じます。 余命の数字にとらわれすぎず、主治医と現在の状態や治療の目的を共有し、最適な方針を検討することが大切です。 【ステージ別】大腸がんの余命(5年生存率)と主な症状 大腸がんは、ステージによって余命の目安や症状が異なります。本章では、ステージ別の余命と進行度ごとに目立つ症状・注意点を解説します。 ご自身やご家族の状況を理解し、適切な治療選択やサポートの参考にしてください。 ステージ1|93.1% ステージ1は、がんが大腸壁の比較的浅い層にとどまっている段階で、リンパ節や他臓器への転移は認められません。早期がんに分類される病期です。(文献1) この段階では自覚症状が認められないことが多く、健康診断や大腸内視鏡検査をきっかけに偶然発見されるケースが少なくありません。血便や便秘・下痢などの便通異常がみられることもありますが、症状が軽いため見過ごされやすい点が特徴です。 治療は外科的切除や内視鏡治療など、手術が中心となります。(文献3)適切にがんを切除できれば、術後は定期的な経過観察により再発リスクは低く抑えられます。 定期的な経過観察を行うことで、良好な予後を期待できるステージと言えるでしょう。 ステージ2|88.3~76.4% 固有筋層を越えてがんが広がっているものの、リンパ節への転移は認められない段階が、ステージ2です。ステージ2では便通異常に加え、腹痛や全身の倦怠感、息切れなどの症状が生じることがあります。 ステージ2の大腸がんの治療は手術がメインです。がん本体と、がんが広がっている可能性のある大腸部分、その周辺のリンパ節の切除(リンパ節郭清)を行います。(文献3) 5年生存率はがんがどの程度の深さまで進行しているかによって異なり、76.4〜88.3%とされています。ステージ1より5年生存率は低いものの、早期の治療により良好な予後が期待できるステージです。 ステージ3|91.5~65.8% 周囲のリンパ節に転移が認められる段階が、ステージ3です。 ステージ3では、ステージ2でみられる症状に加えて、体重減少や食欲不振といった症状が出現します。また、腫瘍の進行により腸閉塞を起こすと、強い腹痛や嘔吐、腹部の膨満感などの症状がみられることもあります。 ステージ3では、がん部分の大腸や転移が認められたリンパ節を手術で切除した上で、再発予防を目的とした抗がん剤治療を行うのが一般的です。(文献3)リンパ節転移の数や範囲によって予後は大きく異なり、再発リスクも高くなります。5年生存率はがんの浸潤している深さによって65.8~91.5%と幅がありますが、定期検査と適切な治療を継続することで、予後の改善が期待できるでしょう。 ステージ4|26.7% ステージ4はがんの深さに関わらず、肝臓や肺など他臓器への転移が認められる状態です。ステージ3までにみられた腹部の症状に加え、転移した部位に応じて黄疸や咳・呼吸困難などの症状が出現することがあります。 ステージ4では根治を目指す治療が難しいケースが多く、5年生存率は26.7%と、他のステージと比較して低い数値です。 延命や症状の緩和を目的として、手術や抗がん剤治療、免疫療法、放射線療法を組み合わせた治療が行われます。 ステージ4の大腸がんは余命(生存率)が大きく下がる 前述のとおり、ステージ4の大腸がんでは、5年生存率が大きく下がります。ただし、治療の選択や本人との関わり方によって、生活の質(QOL)や過ごし方は大きく変わる可能性があります。 本章では、ステージ4について症状や治療法をより詳しく解説します。 大腸がんのステージ4でみられる症状 大腸がんがステージ4まで進行すると、全身に影響を及ぼすようになり、日常生活の質が低下しやすくなります。進行した大腸がんでは、これまでの局所的な症状に加え、全身症状が目立つようになるのが特徴です。 ステージ4でみられる主な末期症状には、以下のようなものがあります。 血便や便秘・下痢などの消化器症状 体重減少や強い倦怠感 食欲の低下や疲れやすさ これらの症状により、これまで通りの生活を送ることが難しくなるケースも少なくありません。 さらに、転移した部位に応じた特有の症状が生じることがあります。肝臓に転移した場合は黄疸や腹部の張り、肺に転移した場合は咳や息切れ、呼吸困難、胸の痛みなどが代表的です。 大腸がんステージ4の主な治療法 大腸がんステージ4では、治療の目的が根治よりも「延命」と「症状の緩和」に置かれるケースが多いのが特徴です。 病状や本人の希望に応じて、以下のような複数の治療法を組み合わせながら進めていきます。(文献3) 治療法 詳細 手術 ・症状の改善や合併症の予防を目的として、がんのある部分を切除する ・がんが広がっている場合には、周辺の腸管やリンパ節、他臓器の一部を切除するケースもある 抗がん剤治療 ・手術後の再発予防や、手術でがんを取り切れない場合に行われる ・一般的には、複数の薬を組み合わせて治療する ・副作用が強く出た場合には、減量や一時的な中止など、体調に応じた調整が行われることもある 免疫療法 ・がん細胞に作用する抗がん剤とは異なり、体内の免疫細胞に働きかけてがんを抑える ・すべての患者が対象となるわけではなく、がんの性質や遺伝子の特徴によって適応が判断される(文献4) 緩和ケア ・痛みや不安感などの身体的・精神的苦痛を和らげ、生活の質(QOL)を高めることを目的とした治療である ・症状の緩和だけでなく、気持ちの落ち込みや経済的な不安への支援も含まれる ・患者本人だけでなく、家族の負担やつらさを和らげる役割もある これらの治療は、病状や体調、本人の希望によって選択や組み合わせが異なるため、主治医と十分に相談しながら方針を決めることが大切です。 大腸がんから転移しやすい部位と余命 大腸がんは、血流やリンパの流れに乗って転移しやすく、進行すると他の臓器へ広がることがあります。(文献2) とくにステージ4では、転移の有無や部位が余命や治療方針に大きく影響します。大腸がんで比較的多くみられる転移先は、以下の臓器です。(文献5) 肝臓 肺 腹膜播種 これらの部位に転移が認められた場合でも、すべてが予後不良とは限りません。転移の数や広がりが限られており、外科的に切除できる場合には、長期生存が期待できるケースも報告されています。 実際に、転移部位を切除した症例では、以下のような5年生存率が報告されています。 転移部位 切除できた場合の5年生存率 肝臓 (文献3) 35〜58% 肺 (文献6) 約60% このように、大腸がんは転移があっても、病状に応じた適切な治療を行うことで予後が変わる可能性があります。 転移の部位や数、全身状態を踏まえ、主治医と十分に相談しながら治療方針を検討することが重要です。 大腸がんで余命宣告された患者の家族ができること 大腸がん患者の家族ができることとして、以下の3つがあります。 治療方針の選択は本人の意思を尊重する 病院と密にコミュニケーションをとる 日常生活をサポートする 患者と家族が納得のいく時間を過ごすためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。 治療方針の選択は本人の意思を尊重する 本人が告知を受けている場合は、できるだけ患者本人の意思を尊重することが望ましいとされています。 治療において何を優先したいかは人それぞれです。延命を重視したいのか、症状の緩和を大切にしたいのかなど、考え方は異なります。 家族は「代わりに決めてあげる」のではなく、本人の気持ちを丁寧にくみ取り、寄り添いながら意思決定を支える姿勢が大切です。 一方で、看病や療養生活が長引くと、家族自身が心身ともに疲れてしまうことも少なくありません。患者だけでなく家族自身も無理をせず、自分を大切にできる選択を心がけましょう。 病院と密にコミュニケーションをとる 診察時には余命や治療について向き合う上で、担当医や医療スタッフとの連携が大切です。治療を進める際は、以下の点を意識しながら、病院とこまめに情報共有を行いましょう。 不安点があれば医師や看護師に伝え、疑問点を解消する 自宅での過ごし方や体調の変化、症状の有無を具体的に共有する 治療の目的や選択肢、今後の見通しについて、家族も情報を理解し、医療スタッフと一緒に治療やケアの方針を考えていくことが大切です。家族が気づいた変化を共有することで、より本人に合った治療につなげられるでしょう。 日常生活をサポートする 日常生活において、患者本人ができることは見守りながら、必要な場面でサポートする姿勢が大切です。衣食住のサポートや通院の付き添いなど、無理のない範囲で本人の体調や様子を観察しながら支えていきましょう。 また、身体的な支えだけでなく、共感をもって話を聞き、気持ちに寄り添うことも大切です。病気の話題に限らず、これまで通りの会話を心がけることは、患者が「普段の自分」でいられることにつながります。 一方で、家族も無理をしすぎないことを意識し、必要に応じて外部の支援を頼ることが大切です。 たとえば、全国の医療機関に設置されている「がん相談支援センター」では、治療や療養生活の不安、介護や経済面の相談などを無料で受け付けています。(文献7)こうした支援機関を活用し、家族だけで抱え込まないような工夫も大切です。 なお、大腸がん治療中に適した食事については以下の記事にて詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 大腸がんの余命を把握して納得のいく治療を選択しよう 大腸がんの余命は、ステージや転移の有無、治療内容によって大きく異なります。進行するほど5年生存率は低下するため、数字だけをみると不安になる方も多いかもしれません。 余命は「どのように病気と向き合い、どんな治療を選ぶか」を考えるための大切な判断材料です。 治療の選択肢は一つではありません。患者本人の価値観や希望を大切にしながら家族との気持ちをすり合わせ、納得できる方針を主治医と相談するようにしましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。治療の選択肢について情報を集めたい方や、今後の方向性に悩んでいる方は、ひとつの相談先としてご活用ください。 大腸がんの余命についてよくある質問 大腸がんステージ4が完治することはある? 大腸がんステージ4は、一般的に根治が難しい段階です。ただし、早い段階から主治医と相談し、病状や希望に応じた治療を検討することで予後が良好となるケースもみられます。 また、早期に治療を行うことで症状の進行を抑え、生活の質(QOL)を維持しながら過ごせる期間を延ばせる可能性もあります。 大腸がんにならないための予防策は? 大腸がんの予防と早期発見には、定期的な「検診」と「生活習慣の改善」の両方が重要です。 年齢や家族歴に応じて、自治体が実施する大腸がん検診を定期的に受けましょう。もし異常が見つかった場合は、必ず大腸カメラによる精密検査を受けてください。 あわせて、栄養バランスの良い食事、節酒・禁煙、適度な運動習慣の実践なども、大腸がんのリスク低下に効果的です。これらを並行して行いましょう。 なお、大腸がんの検査については以下の記事にて詳しく解説しています。気になる方はこちらもあわせてご覧ください。 大腸がんになりやすい年代は? 大腸がんは加齢とともに発症リスクが高まる病気で、統計的には50代から80代前半まで罹患率が上昇し始めます。死亡率についても60代から増加し、それ以降の年代でも高くなる傾向があります。 50歳を過ぎたら自覚症状がなくても定期的に大腸がん検診を受けることが大切です。もし気になる症状があれば、早めに消化器内科を受診してください。 大腸がんの進行速度と年齢の関係についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 参考文献 文献1 大腸がんのステージ(病期)について | 国立がん研究センター 中央病院 文献2 大腸がんファクトシート 2024 | Colorectal Cancer Factsheet 2024 | 国立がん研究センター 文献3 患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版|大腸癌研究会 文献4 免疫療法 もっと詳しく:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] 文献5 Stage IV大腸癌の診療実態と予後|日本消化器外科学会雑誌 文献6 結腸・直腸癌肺転移における肺切除後予後予測因子に関する 臨床病理学的検討|日呼外会誌 文献7 「がん相談支援センター」とは:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
2026.01.26 -
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「健康診断を受けたら便潜血が陽性だった。精密検査はどんな内容なのだろう」 「大腸がんの検査では、どのようなことをするの?」 このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 大腸がんは、早期発見・治療により、治癒が見込まれる疾患です。そのためには、定期的な検査と、必要に応じた精密検査が欠かせません。 この記事では、大腸がんの主な検査方法やその流れ、費用の目安、受けるべきタイミングなどをわかりやすく解説します。大腸がん検査の全体像を把握することで、不安を払拭し、早期受診への一助となれば幸いです。 なお、当院リペアセルクリニックでは、がんの予防医療の観点から、公式LINEによるご相談も受け付けております。「将来的なリスク管理として相談先を確保したい」「最新の医療情報を定期的に得たい」とお考えの方はぜひご登録ください。 大腸がんの検査の種類 大腸がんの検査にはいくつかの種類があり、目的や方法、負担の大きさが異なります。代表的な検査方法は以下の通りです。 便潜血検査 直腸指診 大腸内視鏡検査 注腸X線検査 CT検査、MRI検査、超音波検査 PET検査 以下に詳しく解説します。 便潜血検査 会社の健康診断や人間ドックなどの集団検診で広く行われているのが、便潜血検査です。(文献1) 便潜血検査は、肉眼では確認できない微量な血液が便に混じっていないかを調査するものです。大腸がんやポリープなどの病変によるわずかな出血を捉え、病変の有無をスクリーニングします。 なお、便潜血検査には主に以下の2種類が存在します。 化学法 免疫法 日本で主流となっているのは、食事や服薬の制限のない「免疫法」です。痛みがなく、自宅での検体採取が可能な点が特徴です。 定期的に受けることで大腸がんによる死亡リスクを下げる効果が報告されており、最初のスクリーニング検査として有効といえます。(文献2) 直腸指診 直腸指診は、医師が指を挿入し、直腸および周囲のしこりや硬結(硬さ)等の異常を触診によって確認する検査です。(文献1)事前準備が不要かつ短時間で実施できるため、必要に応じて初期の診察時に取り入れられることがあります。(文献3) 直腸指診は肛門に近い直腸の病変を見つける目的で行われますが、検査の範囲は指の届く範囲に限られるため、大腸の奥のほうにある病変までは確認できません。 大腸内視鏡検査 症状があるときや、便潜血検査で陽性となったときは、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)でより詳しく調べます。 カメラのついた細い管を肛門から挿入し、大腸全体の粘膜を直接観察します。ポリープやがんがあればその場で切除したり、組織の一部を採取する「生検」を行って詳しく調べたりすることも可能です。(文献1) 検査前には下剤を服用した腸管洗浄を行い、大腸内を空にする前処置が必要です。 注腸X線検査 注腸X線検査は、大腸に造影剤(バリウム)を注入してX線撮影を行い、腸の形や狭くなっている部分、腫瘍の有無などを確認する検査です。 大腸の全体像を確認したい場合や、腹部の手術歴・大腸の状態などによって内視鏡が奥まで入りにくい場合などに選択されます。 ただし、凹凸の少ないがんや小さな病変は見つけにくい傾向があり、内視鏡のように検査をしながらの大腸の組織採取はできない点はデメリットです。 なお、正確な検査のためには、大腸内視鏡検査と同様に、事前に下剤を服用して大腸を空にする必要があります。(文献1) CT検査、MRI検査、超音波検査 CTやMRI、超音波検査といった画像検査は、大腸がんの正確な位置や周囲への広がりの程度を評価するために行われます。 これらの検査は、がんの「ステージ(病期)」を判定するために欠かせません。がんの深さや、リンパ節・他の臓器への転移の有無などを確認し、治療方針を決める上で重要な情報を得る役割を果たします。(文献1) PET検査 PET検査は、がん細胞がブドウ糖を活発に取り込む性質を利用し、全身のがんの広がりを一度に調べる画像検査です。「形」を見るCTやMRIと異なり、「がん細胞の活動性」を調べられる点がPET検査の特徴です。 一般的には、がんが疑われたあと、ステージ(病期)の分類や治療方針の決定、転移・再発の確認などに用いられます。 検査当日は、5〜6時間前から糖分を含む飲食物の摂取を控える必要があります。正確な検査の実施のためにも、医師や技師の指示を必ず守りましょう。(文献4) 大腸がんの検査にかかる費用の目安 大腸がんの検査費用は、保険診療の自己負担3割の場合で以下のとおりです。 検査 自己負担3割の場合の費用 便潜血検査 数百円 直腸指診 診察料に含まれる 大腸内視鏡検査 約6,000円 注腸X線検査 約5,000円 CT・MRI 約10,000円 超音波検査 約2,000円 PET検査 数万円(保険適用は限られる) ただし、実際にかかる費用は、医療機関の方針や検査内容、造影剤の使用の有無などによって変わります。 便潜血検査は自治体によるがん検診でも広く取り入れられており、保険適用にはならないものの0円~1,000円程度で受診できるケースが多く見られます。 補助を受けずに自主的に検診を受ける場合の費用は、1,000円~2,000円程度が目安です。具体的な検査費用は、受診前に医療機関へ確認しておきましょう。 大腸がんの検査の流れ 大腸がんの検査の一般的な進め方と所要時間は、以下の通りです。(文献1) ステップ 検査内容 所要時間 1 健康診断で便潜血検査を実施、または症状を医師に伝える 採便:数分(自宅で実施) 結果:数日〜1週間 2 便潜血が陽性、または症状がある場合は精密検査へ進む ・大腸内視鏡検査 ・注腸X線検査(大腸バリウム) ・大腸CT検査(CTコロノグラフィー) ・大腸内視鏡検査:10〜30分(※前処置含め半日程度) ・注腸X線検査(大腸バリウム):約15〜30分 ・大腸CT検査(CTコロノグラフィー):約10〜20分 3 大腸内視鏡検査で異常が確認されたらポリープ切除や生検を実施し、がんであるかの確定診断を行う ポリープ切除を含む大腸内視鏡検査:15〜30分 結果:1~2週間 4 CTや超音波検査によりがんの広がりやステージを確認、治療方針を決定する ・腹部CT検査:10〜30分 ・腹部超音波検査(エコー検査):10~15分 なお、それぞれの検査によって事前の準備や注意点、所要時間は異なるため、受診前には必ず医師や医療機関からの指示をよく確認しておきましょう。 大腸がんの検査を受けるタイミング 検査を受ける目安は、年齢や症状の有無などによって異なります。ここでは、以下のような代表的な目安を解説します。 40歳を超えたら1年に1回 健康診断で「要精密検査」となったとき 便に血が混じる、いつもと便が違うなどの症状が現れたとき 本章を参考に、ご自身の適切な受診タイミングをご検討ください。 40歳を超えたら1年に1回 日本のがん検診ガイドラインでは、40歳以上の成人に対して年に1回の便潜血検査が推奨されています。大腸がんは、早期の場合、自覚症状がないケースも多いため、定期的な検診が重要です。(文献5) 毎年の検査を習慣にすることで、早期発見による治癒率の向上が期待できます。 健康診断で「要精密検査」となったとき 健診や人間ドックで「要精密検査」や「便潜血陽性」といった判定を受けた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 便潜血検査で陽性だった場合は、大腸内視鏡検査をはじめとする精密検査が必要です。(文献6)がん以外の要因で便に血が混じっている可能性もありますが、放置すると重大な病気を見逃す恐れがあります。 不安を放置せず、医学的な診断を得ることが精神的な安定にもつながるでしょう。 便に血が混じる、いつもと便が違うなどの症状が現れたとき 血便や排便時の出血、細くなった便など、便の様子に変化が見られるときは、早めの受診がすすめられます。また、便秘と下痢を繰り返す、腹痛、貧血気味などの症状も見逃せません。(文献1) このような変化は、大腸がんの症状のひとつでもあります。とくに40代以降でこうした症状が続く場合は、がんの有無にかかわらず、一度しっかりと検査を受けておくと安心です。 便の異常と大腸がんの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 大腸がん検査による早期発見の重要性 大腸がんは、早期発見によって治癒率を高められ、体への負担も最小限に抑えられます。本章では、大腸がんのステージ基準や早期発見できた場合の予後について解説します。 大腸がん検査で判定される進行度(ステージ)の基準 大腸がんの進行度は、「ステージ(病期)」と呼ばれる分類で判断されます。これは、がんの大きさや深さ、リンパ節や遠隔臓器への転移の有無によって決まるものです。(文献1) ステージ 状態 ステージ0 がんが粘膜の中にとどまっている ステージⅠ がんが大腸の壁にとどまっている ステージⅡ がんが大腸の壁の外まで広がっている ステージⅢ がんがリンパ節に転移している ステージⅣ 腹腔内でがん細胞が散らばる、あるいは広範囲への転移が認められる ステージの進行度に応じて、がんが腸の壁を越えて周囲に広がったり、他の臓器に転移したりするリスクが高まります。このステージ分類は、今後の治療方針を決める上でも重要な指標です。 大腸がんの進行速度については、以下の記事を参考にしてください。 検査で早期発見できれば予後は良好 大腸がんは、早期に見つかれば治る可能性の高いがんとされています。 下の表は、大腸がんのステージ別の5年生存率です。5年生存率とは、「がんと診断されてから5年後に生存している人の割合」を指します。(文献1) ステージ 5年生存率 ステージⅠ 92% ステージⅡ 84% ステージⅢ 65~81% ステージⅣ 21% がんを早期に発見することで、命にかかわるリスクを大きく減らせます。定期的に大腸がん検査を受診しましょう。 大腸がんは治療後も定期的な検査が必要 大腸がんは、治療が終わったあとも再発に注意が必要です。治療後も5年ほどは定期的な検査や経過観察が欠かせません。再発が見つかった場合は、再治療を行い治癒を目指します。(文献7) 治療が終わっても安心せず、医師の指示に従って定期検査を継続することが、長期的な健康維持につながります。 大腸がん検査を受けて早期発見・早期治療につなげよう 大腸がんは、早期の段階で見つかれば治療の選択肢も広がり、良好な経過が期待できる病気です。症状が出にくいがんでもあるため、定期的な検査を受けておくことが、健康を守る上で重要です。 とくに40歳を過ぎた方や、ご家族に大腸がんの既往がある方、便に異常を感じた方は、早めに医療機関での検査をご検討ください。 検査によって現在の状態を正確に把握することが、安心にもつながります。 当院では、大腸がんに関する相談を受け付けています。受診に関するご相談は、公式LINEからも受け付けておりますので、「検査について詳しく知りたい」「不安なことを気軽に相談したい」といった方は、お気軽にお問い合わせください。 大腸がんの検査に関するよくある質問 大腸がんの検査は何科を受診すれば良いですか? 大腸がんの検査を希望する場合は、「消化器科」や「胃腸科」「肛門科」といった専門の診療科を受診するのが一般的です。 受診先に迷う場合は、かかりつけの内科に相談するのも一つの選択肢です。必要に応じて、検査ができる専門機関を紹介してもらえる場合があります。 また、市区町村など自治体が実施しているがん検診を活用するのも良いでしょう。対象年齢や検査内容、費用の助成制度などが設けられている場合もあるため、お住まいの自治体の広報や保健センターの案内を確認してください。(文献8) 大腸がん検査でひっかかったらどうすれば良いですか? 健康診断や自治体のがん検診で便潜血検査が「陽性」と判定された場合は、できるだけ早めに精密検査を受けることが大切です。(文献6) 通常は、消化器内科や胃腸科などを受診し、大腸内視鏡検査を行う流れになります。内視鏡検査では、がんやポリープなどの異常があった場合、その場で組織を採取する「生検」や、必要に応じてポリープの切除を行うことも可能です。 検査後は、採取した組織を病理検査で詳しく調べた上で、数日後に結果が説明されます。 大腸がんとポリープの違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) 患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版|大腸癌研究会 (文献2) 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン 2024 年度版|国立がん研究センター がん対策研究所 (文献3) 1.大腸がん検診検査法のまとめ|がん情報サービス 国立研究開発法人国立がん研究センター (文献4) PET検査とは|がん情報サービス 国立研究開発法人国立がん研究センター (文献5) 「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」2024年度版|国立がん研究センターがん対策研究所 (文献6) 大腸がん検査について|国立がん研究センター中央病院 (文献7) 大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療|がん情報サービス 国立研究開発法人国立がん研究センター (文献8) 大腸がん検診|前橋市
2026.01.26 -
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「便に血が混じる」 「お腹の調子が悪い日が続いている」 「検診で要精密検査と言われた」 このような症状や検査結果に、不安を感じていませんか。 大腸がんは、日本人でもっとも罹患数が多いがんですが、早期に発見できれば治癒率が高いことが知られています。一方で、初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないまま進行してしまうケースも少なくありません。 この記事では、大腸がんの主な症状や原因、検査方法、治療について解説します。 病院を受診すべきか迷っている方や検診結果を正しく理解したい方は、ぜひ参考にしてください。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 大腸がんについて気になることがある方は、お気軽にご登録ください。 大腸がんとは 大腸がんは、大腸の粘膜から発生するがんの総称です。(文献1) 大腸の壁は、内側から「粘膜」、「粘膜下層」、「固有筋層」、「漿膜(しょうまく)下層」、「漿膜」の5つの層でできており、がんは粘膜から発生して次第に深い層へと侵入していくのが特徴です。(文献1) がんの中でも新たに診断される頻度が高く、推計では全がんの中でもっとも罹患数が多い部位として大腸がんは報告されています。(文献2) ここでは、大腸がんの発生部位とその分類、進行度合によって判別されるステージ分類について解説します。 大腸がんの発生部位と分類 大腸は、長さ約1.5〜2mの臓器で「結腸」と「直腸」に分けられ、結腸はさらに盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に細かく分かれます。(文献1) 発生した部位によってがんの呼び名は変わり、日本人の大腸がんの多くは「直腸がん」と「S状結腸がん」です。(文献1) 大腸がんは、その広がり方(深達度)によって「早期がん」と「進行がん」に分類されます。(文献3) 早期がん:がんが粘膜または粘膜下層にとどまっている状態 進行がん:がんが固有筋層に達している状態 また、顕微鏡で見たがん細胞の様子によっても細かく分けられ、その多くは「腺がん」と呼ばれる種類です。(文献1) 大腸がんのステージ(病期)分類 大腸がんの治療方針を決める上で、がんがどのくらい進行しているかを示す「ステージ(病期)」分類は重要な指標です。 ステージは、以下の3つの要素を組み合わせて総合的に判断されます。(文献4) T因子:がんの深さ(壁への広がり、深達度) N因子:リンパ節への転移の有無 M因子:他の臓器やがんができた場所から離れたリンパ節への転移(遠隔転移)の有無 これらをもとにステージ0からステージIVまでの5段階に分類されます。(文献4) ステージ T因子(がんの深さ) N因子(リンパ節転移) M因子(遠隔転移) がんの状態 0 Tis(粘膜内) なし なし 粘膜の一番浅い層にとどまっている Ⅰ T1、T2(粘膜下層~固有筋層) なし なし 粘膜下層または固有筋層まで達しているが、リンパ節転移はない Ⅱ T3、T4(漿膜下層~他臓器へ浸潤) なし なし 大腸の壁の外まで広がっている可能性があるが、リンパ節転移はない Ⅲ T1~T4(深さは問わない) あり なし がんの深さに関わらず、リンパ節への転移が認められる Ⅳ T1~T4(深さは問わない) N因子の有無は問わない あり 肝臓や肺など、大腸から離れた他の臓器への転移(遠隔転移)が認められる ステージによってがんの状態や適した治療は異なるため、正確な治療にはステージ診断が欠かせません。 大腸がんの症状 大腸がんの早期にはほとんど症状が出ない一方、進行すると血便や腹痛など、日常生活に影響する症状があらわれます。 とくに血便は大腸がんで頻度の高い症状でありながらも、痔などがん以外の疾患でも起こるため、「一時的なもの」と放置する方も少なくありません。(文献1) 大腸がんをできる限り早期に発見するためにも、気になる症状があれば早めの受診が推奨されます。本章では、初期症状の特徴と、進行に伴ってあらわれるサインを詳しく解説します。 自覚症状が少ない初期症状の特徴 粘膜内にとどまる0期のがんや、粘膜下層までの早期大腸がんの多くは無症状です。「症状がない自分が大腸がんになることはない」と考えて何も対策しないと、もしがんができていた際に発見が遅れる恐れがあります。 無症状のうちにがんを見つける唯一の方法は、市区町村や健康保険組合などでおこなわれる「がん検診」です。 検診でおこなわれる便潜血検査は、目には見えない微量の血液を検出でき、大腸がんの死亡率を減少させるといわれています。 日本では40歳以上の方に、症状がなくても1年に1回検診を受けることが推奨されています。(文献5) 進行に伴ってあらわれる症状 大腸がんが進行すると、出血や腸の通過障害によってさまざまな症状があらわれます。 自覚症状のなかで高頻度で現れるものが、血便や下血(肛門から血液が排出されること)です。(文献1)出血が慢性的に続くと貧血を起こし、めまいやふらつきなどを自覚する場合もあります。 また、がんが大きくなることで腸の内側の通り道(内腔)が狭くなると、便の通過が妨げられ、次のような症状がみられるようになります。(文献1) 便秘や下痢が続く 便が細くなる 便が残る感じがある おなかが張る さらに進行して腸が塞がると「腸閉塞」を起こし、便が出なくなったり、強い腹痛や嘔吐が出現したりすることもあります。このような症状があらわれた際は、早急な受診が必要です。(文献1) 大腸がんの原因 大腸がんの発生には、遺伝的要因と環境的要因、その他の要因が関与しています。(文献6)(文献7) 大腸がんの要因 具体例 環境的要因 ・肥満 ・加齢 ・過度の飲酒 ・喫煙 ・運動不足 ・高身長 ・赤肉(牛・豚・羊など)の過剰摂取 ・加工肉(ハム・ソーセージなど)の過剰摂取 遺伝的要因 ・家族性大腸腺腫症 ・リンチ症候群 その他の要因 ・炎症性腸疾患 大腸がんは誰にでも起こりうる疾患です。しかし、生活習慣の改善によってリスクを下げたり検診によって早期発見できたりもします。ご自身に当てはまる要因がないかを確かめ、必要に応じて医療機関で相談しましょう。 【関連記事】 大腸がんの原因は?なりやすい人の特徴や症状・検査・治療方法を解説 | リペアセルクリニック東京院 大腸がんと痔の血便や出血の違いとは?見分け方のポイントを解説 大腸がんの検査と診断 大腸がんが疑われる場合におこなう検査の種類と目的は、以下のとおりです。(文献8) 検査の種類 目的 直腸指診 直腸内のしこりや異常の有無を確認する 注腸造影検査 がんの位置や大きさ、形、腸の狭さを調べる 大腸内視鏡検査・生検 大腸全体を詳しく観察し、組織を採取して確定診断する CT検査・MRI検査・腹部超音波検査 周囲臓器への広がりや転移の有無を調べる PET検査 がんの活動性を調べる (他の検査で転移や再発が確定できないケースでおこなう) がん遺伝子検査 薬物療法の選択に役立てる 腫瘍マーカー検査 経過観察や治療効果の判定に用いる 大腸がんの診断は、大腸内視鏡検査で病変を確認し、生検(病理検査)で確定する流れが一般的です。(文献8) がんと確定したあとにCT検査やMRI検査などで、がんの広がりや転移の有無を調べ、治療方針を決めます。 大腸がんの治療に関しては以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。 大腸がんの治療法 大腸がんの治療には、内視鏡治療や外科治療(手術)、薬物療法、放射線治療など、さまざまな選択肢があります。(文献9) 治療の種類 適応・目的 内視鏡治療 がんが粘膜下層の浅部にとどまり(浸潤が1mm未満)、リンパ節転移の可能性が低い場合 外科治療(開腹・腹腔鏡・ロボット手術) 内視鏡治療が難しい場合に、がんとリンパ節を切除 薬物療法 薬を使用して手術後の再発予防や進行がんの治療をおこなう場合 免疫療法 特定の遺伝子検査で適応となった場合は、免疫チェックポイント阻害薬を使用 放射線治療 局所の進行抑制や痛み・嘔吐などのコントロール、直腸がんの術前治療 どの治療が推奨されるかは、がんの深さ(深達度)、転移や浸潤の有無、腹膜播種の有無などから総合的に判断して決定します。本章で、大腸がんの治療法について詳しくみていきましょう。 内視鏡治療 内視鏡治療は、がんが大腸の粘膜内や浅い層にとどまっている早期の場合におこなわれる治療法です。(文献9) 高周波メスや「スネア」と呼ばれる細いワイヤとカメラが一体となった大腸内視鏡を使って、大腸の内側から病変部を切除し、腹部を切らずに治療できる点が特徴です。 病理検査の結果、がんの広がりが浅くリンパ節転移のリスクが低いと判断された場合は、内視鏡治療のみで治療が完結するケースもあります。 一方で、切除後の結果によっては、追加の外科治療が必要になる場合もあります。(文献9) 外科治療(開腹・腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術) 外科治療は大腸がん治療の中心となる治療法で、がんを含む腸管と周囲のリンパ節を切除するいわゆる「手術」です。(文献9) 手術方法には、開腹手術や腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術があり、がんの進行度や患者の状態に応じて選択されます。 また、直腸がんの外科治療では、一時的もしくは永久的な「人工肛門(ストーマ)」を造るケースもあります。(文献9) 薬物療法 大腸がんの薬物療法は、手術後の再発予防や、大腸がんの進行・再発治療としておこなわれます。(文献9) 主に使用される薬は、以下のとおりです。(文献9) 種類 作用 細胞障害性抗がん薬 細胞が増える仕組みの一部を阻害して、がんを攻撃する薬 分子標的薬 がん細胞の増殖にかかわるタンパク質や特徴的な分子を狙って作用する薬 免疫チェックポイント阻害薬 免疫のブレーキを解除し、からだの免疫力でがんを攻撃しやすくする薬 薬物療法の内容は、がんの進行度や遺伝子検査の結果、全身状態などを考慮して決定されます。副作用の種類や程度には個人差があるため、体調の変化を医師に相談しながら治療を進めます。 免疫療法 免疫療法とは、患者自身の免疫機能を活性化してがん細胞を攻撃する治療法です。大腸がん治療における免疫療法は、先述の「免疫チェックポイント阻害薬」が用いられるため、薬物療法の一種ともいえます。(文献9) 免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫のブレーキをかける仕組みを解除し、免疫細胞が腫瘍を認識・攻撃しやすくする薬です。すべての大腸がん患者に適応されるわけではなく、がんの遺伝子検査の結果をもとに適応が判断されます。 例えば、DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)や高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)といった分子的特徴があるタイプの大腸がんでは、一部の従来の標準的な薬物療法では十分な効果が得られにくいことがあります。このようなケースでは、免疫チェックポイント阻害薬が有効です。(文献9)(文献10) また、細胞培養技術を活用し、ご自身の免疫作用に着目した取り組み(再生医療)をおこなう場合もあります。大腸がんの治療として直接結びつくものは2025年12月時点で多くありませんが、再生医療は標準治療の代替ではなく、治療を受ける過程での体調管理や治療を助ける選択肢の一つとして検討されるものです。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療に関する情報提供に加え、簡易的なオンライン診断を実施しています。 大腸がん治療中の体調管理や、再生医療について気になる点がある方は、情報収集の一環として公式LINEをご活用ください。 放射線治療 放射線治療は、主に直腸がんで用いられる治療法です。(文献9)手術前におこなってがんを小さくする目的や、手術後の再発予防、症状を和らげる目的でおこなわれることがあります。 また、肝臓や肺、脳などへ転移したがんによる症状にも効果が期待できます。 放射線治療は、大腸がん全体では適応が限られますが、がんの位置や進行度によっては重要な選択肢です。放射線治療をおこなうかどうかは、手術や薬物療法との組み合わせを含めて総合的に判断されます。 大腸がんの早期発見には検診が必須 大腸がんは早期のうちに自覚症状がほぼないため、検診によって早期発見できるかが治療や予後に影響します。(文献5) 日本では40歳以上を対象に、便潜血検査と問診による大腸がん検診が市区町村単位で実施されています。 便潜血検査は目には見えない微量の血液を検出できる検査です。(文献5)検査は食事制限の必要もなく、2日間に分けて便を採取するだけで済み、からだへの負担がありません。 結果が「要精密検査」となった場合は必ず消化器内科を受診し、大腸内視鏡検査を受けましょう。1回の検診ではがんが見つからないこともあるため、症状がなくても毎年検診を受けることが推奨されます。 大腸がんの予防法 大腸がんの予防には、がんのリスクを上げる日常生活における要因(環境的要因)の改善が重要です。(文献7) 禁煙する 過度な飲酒をひかえる バランスの良い食事をとる 適度に運動する 肥満を防ぐ 感染を予防する とくに運動は、大腸がんの予防に効果的です。食事では食物繊維やカルシウムの摂取を心がけ、赤肉や加工肉を過剰にとらないよう意識しましょう。(文献7) 大腸がんで気になる症状があれば消化器内科を受診しよう 大腸がんは、早期には自覚症状がほとんどなく、検診や検査によって初めて見つかることが多い病気です。 一方で、早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、からだへの負担を抑えた治療が可能になる場合もあります。 血便や便通の変化、おなかの張りなど、これまでと違う症状に気づいた場合は、自己判断せず消化器内科を受診しましょう。また、症状がなくても40歳を過ぎたら、定期的に大腸がん検診を受けることが早期発見につながります。 治療を検討する過程では、標準治療を理解した上で、自分に合った選択肢を知ることも大切です。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療に関する情報提供に加え、簡易的なオンライン診断をおこなっています。治療や体調管理について情報を集めたい方は、選択肢を知る手段として公式LINEをご活用ください。 大腸がんに関するよくある質問 大腸がんの余命(生存率)はどのくらいですか? 大腸がんの予後は、発見時のステージによって異なります。大腸がんのステージごとの5年生存率(ネット・サバイバル:がんのみが死因となる状況)は、以下のとおりです。(文献11) ステージ ネット・サバイバル Ⅰ期 92.3% Ⅱ期 85.5% Ⅲ期 75.5% Ⅳ期 18.3% ステージⅠの大腸がんにおける5年後の生存率は90%以上であり、早期発見ができれば、治癒率も高い傾向といえるでしょう。 ただし、これらの数値はあくまで統計的なデータであり、実際の余命は個々の状態や治療への反応によって異なります。 大腸がんに気づいたきっかけは何が多いですか? 大腸がんに気づくきっかけは、早期がんと進行がんで異なります。早期がんは自覚症状がほとんどないため、検診でおこなう便潜血検査で発見されるケースが多く見られます。 一方、進行がんでは、以下のような症状などがきっかけで受診し、発見されることもあります。(文献1) 血便 下血 便の変化や残便感 おなかの張り 原因不明の貧血やめまい ただし、大腸がんに症状としてよく見られる「血便」は、痔をはじめとする良性の病気でも起こるため、受診して出血の原因を明らかにすることが重要です。気になる症状がある場合は自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。 大腸がんの初期症状でおならに変化はありますか? 大腸がんの初期は、多くの場合で自覚症状がありません。初期のうちはおならに変化がないケースもあります。 ただし、がんが進行すると腸の内腔が狭くなってガスの通りが悪くなり、おならの回数や量が変化したり、おなかの張りを感じたりするケースもみられます。 おなかの張りや排便習慣の変化、血便などの症状が気になる場合は、自己判断せずに消化器内科を受診してください。 参考文献 文献1 大腸がん(結腸がん・直腸がん)について|がん情報サービス 文献2 最新がん統計|がん情報サービス 文献3 早期大腸がんの低侵襲な内視鏡治療 | 国立がん研究センター 中央病院 文献4 大腸がんのステージ(病期)について | 国立がん研究センター 中央病院 文献5 大腸がん検診について|がん情報サービス 文献6 大腸がんとは|国立がん研究センター 中央病院 文献7 大腸がん(結腸がん・直腸がん)予防・検診|がん情報サービス 文献8 大腸がん(結腸がん・直腸がん)検査|がん情報サービス 文献9 大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療|がん情報サービス 文献10 大腸癌治療ガイドライン医師用2022年版の改定ポイントとミスマッチ修復機能欠損大腸癌の話題|日本外科系連合学会誌 文献11 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム|がん情報サービス
2026.01.26 -
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「糖尿病網膜症で治療を受けているけれど、最近目のかすみや見えづらさを感じるようになった」 「網膜症が悪化しているかもしれない」 「糖尿病網膜症の場合、失明率はどのくらいなのだろう」 糖尿病網膜症と診断されている方の中には、失明を心配されている方も多いことでしょう。 糖尿病網膜症の方が失明する確率は、網膜症の進行度合いによって異なります。早期の段階で治療を進めた場合は失明リスクが低く、治療が遅れた場合はリスクが高くなると知っておきましょう。 本記事では、糖尿病網膜症の失明率や失明を予防するために必要な治療と行動について解説します。失明の不安解消のためにも、ぜひ最後までご覧ください。 糖尿病網膜症の原因である糖尿病に関しては、再生医療による治療も選択肢の1つです。 糖尿病治療や再生医療に関して詳しく知りたい方は、ぜひ電話相談をご利用ください。 糖尿病網膜症による失明率 この章では、日本における糖尿病網膜症の有病率と失明率および、糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由を解説します。 日本における糖尿病網膜症の有病率と失明率 日本における糖尿病網膜症の有病率は、糖尿病患者の15%~23%とされています。これは、日本で行われている「舟形町研究」と「久山町研究」のデータから出された数字です。(文献1) 一方で、糖尿病網膜症で失明する方は網膜症患者の一部です。進行した糖尿病網膜症で失明する方や、失明の危険がある方は全糖尿病患者の20%程度と推定されています。(文献2) 糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由 糖尿病網膜症は、中途失明の主要原因の1つです。2019年度は、視覚障害の原因疾患で第3位でした。1位は緑内障で、2位は網膜色素変性症です。(文献3) 1989年には糖尿病網膜症が失明原因の第1位になっています。(文献2) 糖尿病網膜症が中途失明の主要原因とされる理由は、「自覚症状が出てきた時点ですでに進行している」点です。 糖尿病網膜症の初期は自覚症状が乏しく、異変に気づいたときにはすでに進行しているケースが多いとされています。症状が現れた段階ですぐに治療を始めた場合は、視力を保てる可能性があります。しかし、症状を放置して治療を遅らせてしまうと、重症化しやすく、中途失明にもつながるのです。 糖尿病網膜症進行度と失明リスクの関係 糖尿病網膜症の進行度合いは大きく分けると以下の3段階です。 単純網膜症 前増殖性糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症 進行するスピードには個人差があり、血糖コントロールが良好な方は進みが遅いといわれています。また、40代から50代といった比較的若い方は進行が速いとされています。(文献2) 単純網膜症の場合 糖尿病網膜症の初期です。網膜にある毛細血管に小さな出血や血管瘤(けっかんりゅう)、硬性白斑(こうせいはくはん)と呼ばれる症状が見られます。 多くの場合は自覚症状がなく、視力低下もほとんど見られません。この段階では、失明リスクは低いとされています。しかし放置すると進行してしまい、失明リスクが高くなります。 前増殖性糖尿病網膜症の場合 単純網膜症より進行している段階であり、網膜血管の閉塞や酸素不足が目立ち始める時期です。眼の中では、酸素不足を補うための新生血管を作る準備が始まっています。 軟性白斑(なんせいはくはん)と呼ばれるシミが生じたり、静脈が膨れ上がったりするなどの症状が出現する時期です。 この段階では、まだ視力が保たれている場合が多いとされています。しかし、ものを見る中心部である黄斑(おうはん)にむくみが生じると、眼に関する自覚症状が出ることもあります。 増殖糖尿病網膜症の場合 糖尿病網膜症がさらに進行した重症の段階であり、失明リスクが最も高い時期です。 酸素不足を補うための新生血管が作られ、網膜や硝子体に伸びていきます。しかし、新生血管はもろくて破れやすいため、硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)を起こす場合もあります。その結果、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状が現れます。飛蚊症を発症すると、視野に黒い影やゴミのようなものが見えてきます。 さらに増殖組織と呼ばれる繊維状の膜が形成され、網膜を引っ張ることで網膜剥離を生じることも多い状況です。 糖尿病網膜症による失明率が治療により変化する可能性 糖尿病網膜症による失明率は、治療により変化する可能性があります。 この章では、視力回復が期待できるケースと回復が難しいケースに分けて紹介します。 視力回復が期待できるケース 網膜の損傷が軽度な段階では、視力回復も期待できるケースも少なくありません。軽度な段階とは、以下に示したような状況です。 網膜内の出血が少ない 網膜剥離が見られない 黄斑浮腫がない、もしくは軽い 視力の維持や回復のためにも、早期発見および早期治療が大切です。 回復が難しいケース すでに網膜が大きく損傷している場合は回復が難しいといえます。例をあげると、多量の硝子体出血が見られる、牽引性の網膜剥離が発生しているなどです。 糖尿病網膜症が進行した場合、視細胞や視神経も変性されているケースも少なくありません。そのため手術を行っても、日常生活に必要な視力への回復は難しいといえます。 糖尿病網膜症が失明につながる理由 糖尿病網膜症が失明につながる理由は、主に以下のような症状です。 新生血管 黄斑浮腫 硝子体出血 牽引性網膜剥離 詳細を表に示しました。 症状 詳細 新生血管 網膜の血管閉塞による網膜内の酸素不足を補うための血管 網膜や硝子体と呼ばれる部分に発生する 非常にもろくて壊れやすい 硝子体出血 新生血管が破れた結果生じる出血 硝子体とは、眼球の大部分を占める透明な組織である 牽引性網膜剥離 新生血管のまわりにできた増殖組織と呼ばれるものが網膜を引っ張ることで生じる網膜剥離 糖尿病網膜症が進行した段階で発生しやすい 黄斑浮腫 網膜内の黄斑と呼ばれる部分がむくむ現象 黄斑はものを見る上で重要な部分であるため、黄斑浮腫は視力低下の原因とされている 新生血管や硝子体出血、牽引性網膜剥離は、糖尿病網膜症が進行した段階で発生しやすいものです。これに対して黄斑浮腫は、どの段階でも発生する可能性があります。 糖尿病網膜症を治療せず放置したときに起こること 糖尿病網膜症は症状が出る前から進行する疾患です。症状が出ていないことを理由に放置すると、重症化していることに気づけません。 糖尿病網膜症が進行すると、眼内では新生血管の増殖や硝子体出血、牽引性網膜剥離などの症状が出ます。 眼科受診が遅れたり途中で受診を止めたりすると、このような症状に気づきにくいため、視力回復が難しくなります。 以下の記事で、糖尿病を放置した場合のリスクを解説していますので、あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な治療 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な治療は、主に以下のとおりです。 レーザー光凝固術 抗VEGF薬治療 硝子体手術 以下の記事でも、糖尿病網膜症の治療について解説しています。あわせてご覧ください。 レーザー光凝固術 網膜の酸素不足を改善し、新生血管の発生や増殖を抑えることを目的とした治療法です。 網膜の一部をレーザーで焼いて新生血管による出血を予防します。この治療により、硝子体出血や網膜剥離のリスクを下げていきます。 ただし、この治療は視力を改善するものではありません。あくまでも網膜症の進行抑制や視力維持が目的です。 レーザー光凝固術を早い時期に受けると80%に有効であり、治療時期が遅れると有効率は50~60%に低下するといわれています。眼科で勧められた場合は、早めに治療を受けましょう。(文献2) 抗VEGF薬治療 VEGF(血管内皮増殖因子)のはたらきを抑え、新生血管の増殖や糖尿病黄斑浮腫を改善するための治療法です。 麻酔薬を点眼し、目の周囲および表面を消毒してから、抗VEGF薬剤を硝子体に注射します。黄斑浮腫が軽減されると視力改善が期待できます。 一度の注射で完結するケースは少なく、追加の注射や経過観察を必要とする場合が多い治療です。 また糖尿病網膜症が重症の場合は、改善に限界があるとされています。 硝子体手術 硝子体内の出血や混濁、増殖組織などを取り除いたり、剥離された網膜を元に戻したりするための治療法です。視力の回復よりも失明を防ぐための治療といえます。 比較的症状が軽い場合は、成功率が90%近いとされていますが、進行してからの手術では成功率が60%まで下がるといわれています。(文献2) 手術後も定期的な経過観察が必要です。 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な行動 糖尿病網膜症による失明を防ぐために必要な行動は、以下の3点です。 血糖コントロール(HbA1c管理) 血圧や脂質の管理 眼科受診の継続 血糖コントロール(HbA1c管理) 高血糖の持続が糖尿病網膜症の原因であるため、血糖コントロールは大切です。 血糖コントロールの目安であるHbA1cを7.0%未満に維持できれば、網膜症の発症や進展を予防できるとされています。その一方で、重症の低血糖は糖尿病網膜症発生率を4倍に増加させるといった報告事例もあります。(文献4) 重症の低血糖とは、血糖値が下がりすぎたために意識障害やけいれんなどの症状が生じて、他者の介助を要するような状況です。 血圧や脂質の管理 高血圧は血管を傷めやすいため、糖尿病網膜症の重要なリスク因子の1つです。とくに、収縮期血圧(最高血圧)が上昇するとリスクが高まるとされています。脂質異常も、硬性白斑や黄斑浮腫といった症状のリスク上昇と関係しています。(文献4) 眼科の定期受診と並行して内科も受診し、主治医に相談しつつ血圧や脂質を管理していきましょう。糖尿病網膜症による失明予防のために大切です。 眼科受診の継続 糖尿病網膜症は無症状のまま進行するケースが多いため、症状の有無に関わらず定期的な眼科受診が必要です。 単純網膜症では半年に1回程度、前増殖網膜症では2〜3か月に1回程度の受診が目安です。増殖網膜症では病状が変化しやすいため、1か月に1回の受診が推奨されています。(文献4) 受診間隔が空くと病状の進行を見逃す可能性が高くなるため、指示された受診間隔を守ることが失明予防の鍵です。 糖尿病網膜症の失明率は行動次第で低下可能 糖尿病網膜症の失明率は20%程度とのデータもありますが、実際は一人ひとりの病状によって異なります。失明率も大切なデータですが、同じくらい大切なことは、早期に治療を受けて網膜症の進行を遅らせることです。 治療が遅れた場合は、その分失明リスクが高くなるため、糖尿病もしくは糖尿病網膜症と診断されたときは、早いうちに眼科を受診しましょう。また、血糖コントロールや血圧および脂質の管理など、失明予防の行動も必要です。 糖尿病網膜症の失明率は、ご自身の行動によって変わってくることを知っておきましょう。 糖尿病網膜症の治療と同じように大切なものが、糖尿病そのものの治療です。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。電話相談も実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病に関する再生医療については、以下の記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症の失明率に関するよくある質問 糖尿病による失明に前兆はありますか? 糖尿病による失明の前兆症状としては、目のかすみやぼやけ、見えにくさ、視野欠損、急激な視力低下などがあげられます。これらの症状は、糖尿病網膜症が進行した際に出てくるものです。 自覚症状が出てきた場合は、そのままにせず一刻も早く眼科を受診しましょう。 糖尿病による失明の前兆については、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。 糖尿病で失明するまで何年かかりますか? 糖尿病で失明するまでの年数は患者によって異なるものです。糖尿病患者の中には、適切な治療により失明せずに過ごせる方もいます。 糖尿病網膜症を発症するのは、糖尿病と診断されて数年から10年くらい経過してからといわれています。(文献5) ただし、糖尿病網膜症は自覚症状がないまま進行するケースが多いため、糖尿病の方は定期的に眼科を受診して検査や治療を受けましょう。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症の治療戦略|日本視能矯正学会 (文献2) 糖尿病で失明しないために|公益社団法人日本眼科医会 (文献3) 視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位の緑内障の割合が40%超〜2018年の視覚障害認定基準改正の影響が判明〜|岡山大学 (文献4) 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)|日本糖尿病眼学会 (文献5) 糖尿病網膜症|公益財団法人日本眼科学会
2025.12.31 -
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「糖尿病があるため眼科受診を勧められた」 「糖尿病網膜症の疑いありと診断されて、網膜症分類の説明を受けたがよくわからなかった」 「糖尿病網膜症の分類とはいったい何だろう?」 糖尿病のために眼科を受診された方の中には、このような状況の方も多いことでしょう。 糖尿病網膜症の分類とは網膜症の症状や進行度合いを見るもので、ご自身の現状を把握するために大切なものです。 本記事では、糖尿病網膜症の分類や病状進行との関係について解説します。進行を予防するための対策もあわせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病網膜症の分類について知りたい方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 糖尿病網膜症分類とは? 糖尿病網膜症の分類とは、糖尿病網膜症の進行度合いを示すもので、大きく3段階にわかれています。 単純網膜症 前増殖性糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症 単純網膜症 糖尿病網膜症の初期段階です。 高血糖の影響で網膜の毛細血管がもろくなっています。その結果毛細血管の壁が盛り上がり、血管瘤(けっかんりゅう)や点状出血といった症状が生じます。 この時期は、自覚症状がほとんどありません。 前増殖性糖尿病網膜症 単純網膜症から進行した段階です。 網膜の細い血管が広い範囲で閉塞し、酸素不足になり始めます。酸素供給のために新しい血管(新生血管)を作る準備が始まります。 この時期でも、ほとんどの方は自覚症状がありません。しかし中には、目のかすみや見えにくさといった症状を訴える方もいます。 増殖糖尿病網膜症 糖尿病網膜症が進行しており重症な状況です。 酸素供給のために新生血管が作られますが、この血管は非常に弱いためすぐに破れてしまいます。その結果生じるものが、硝子体(しょうしたい)と呼ばれる部分の出血です。 硝子体出血が生じると、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状が出てきたり、急激な視力低下が見られたりします。 増殖組織が網膜を引っ張り、網膜剥離が生じることも少なくありません。 糖尿病網膜症分類の主な体系 糖尿病網膜症の分類には、複数の体系があります。 国際重症度分類 新福田分類 Davis分類 このように複数の体系が存在する背景としては、検査および治療方法の変化、地域や国による違いなどがあげられます。 国際重症度分類 実質的な国際標準の分類です。網膜症なし・非増殖網膜症・増殖網膜症の3つに分類した上で、非増殖網膜症を軽症・中等症・重症の3段階に分けています。(文献1) また、黄斑浮腫(おうはんふしゅ)の重症度分類がある点も特徴です。(文献1) 黄斑浮腫とは、ものを見る上で重要な部分である黄斑部にむくみが起こっている状況を指します。黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の進行度に関わらず発生する可能性があります。(文献2) 新福田分類 糖尿病網膜症を良性と悪性に区別している分類です。比較的軽症の糖尿病網膜症を良性、血管閉塞や新生血管が生じており、網膜光凝固治療が適応になる症例を悪性としています。 治療によって症状が沈静化した場合は、良性網膜症に組み込まれています。合併症について表記している点が、この分類の特徴です。 合併症の表記については、以下のように定められています。 黄斑病変(M) 牽引性網膜剥離(D) 血管新生緑内障(G) 虚血性視神経症(N) 光凝固(P) 硝子体手術(V) Davis分類 糖尿病網膜症の病期を、単純糖尿病網膜症、増殖前糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症の3つに分けているシンプルな分類法です。 日常的な臨床場面に即した分類であるため、日本で広く用いられています。 糖尿病網膜症分類と病状進行の関係 糖尿病網膜症の分類は網膜症の進行や、軽症から重症までの経過をわかりやすく示したものです。 医療機関によって使用している分類体系は異なりますが、分類の概要を知ることで自分の現状がわかります。 糖尿病網膜症が進行すると、失明リスクが急速に高まります。受診先で使用されている分類体系を知り、自分の現状を把握した上で、適切な治療を受けましょう。 糖尿病網膜症分類からわかる失明リスクと治療方針 糖尿病網膜症は、分類が重症になるほど網膜の血管障害が悪化し、新生血管による硝子体出血や網膜剥離などによる失明リスクが急速に高まります。 軽度から中等度の非増殖性糖尿病網膜症では、経過観察が中心であり、定期的な眼科検査が推奨されます。ただし、黄斑浮腫を伴う場合は、速やかな治療が必要です。 重症の非増殖性糖尿病網膜症や増殖性糖尿病網膜症は、光凝固治療や抗VEGF薬、硝子体手術といった治療が必要な段階です。 網膜症の分類(重症度)に応じて、失明リスクや治療方針が変わってくると覚えておきましょう。 糖尿病網膜症による失明のリスクや治療方針については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 【関連記事】 糖尿病による失明の前兆を医師が解説【見え方に要注意】 糖尿病で失明する原因とは|治療法とあわせて現役医師が解説 糖尿病網膜症の進行を防ぐための対策 糖尿病網膜症の進行を防ぐための対策としてあげられるものは、主に以下の3点です。 定期的な眼科受診 血糖コントロール 生活習慣改善 定期的な眼科受診 基本的には、糖尿病と診断された際に眼科を受診して糖尿病網膜症の評価を受けることが推奨されます。 眼科の受診頻度は、網膜症の進行状況によって異なります。軽症の場合は半年に1回程度、中等症や重症の場合は1〜2か月ごとの受診が必要です。(文献1) 自覚症状がない場合も、年に1回は眼底検査を受けましょう。早期に異常が見つかれば、レーザー治療や抗VEGF薬注射などが可能になり、失明リスクを大幅に下げられます。 血糖コントロール 血糖コントロールは網膜症進行を予防するために重要な役割を果たします。 1~2か月間の血糖値の平均を反映し、血糖コントロールの目安であるHbA1cを7.0%未満に維持できれば、糖尿病網膜症の発症や進行を予防できるとのデータもあります。なお、血糖正常化を目指す場合の目標値は6.0%未満とされています。 医師の指導のもと、食事や運動、薬物療法などにより血糖を管理していきましょう。 糖尿病における食事療法や運動療法については、以下の記事をご覧ください。 【関連記事】 【糖尿病】食事治療とエネルギー量の関係性を現役医師が解説|計算方法もあわせて紹介 【医師監修】糖尿病予防に効果的な運動3選|続けるコツや注意点も紹介 生活習慣改善 高血圧や脂質異常症、腎機能障害、喫煙の有無も糖尿病網膜症の発症や進行に関連する因子です。 高血圧や脂質異常症の予防および改善のためにも、食事と運動が大切になってきます。 喫煙はインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなること)を増やす因子です。加えて、心血管疾患や糖尿病腎症など、糖尿病網膜症以外の疾患のリスクも増やすため、できる限り禁煙していきましょう。 糖尿病網膜症分類を正しく理解して自分の現状を把握しよう 糖尿病網膜症分類には複数の体系がありますが、いずれにしても自分の状態を知るために必要な指標です。 そのときの数値や指標を見るだけではなく、眼科を受診する中でどのように推移しているかを見ていくことが大切です。不明な点があれば主治医に相談した上で、適切な治療を受けましょう。 糖尿病網膜症悪化予防のためには、定期的な眼科受診に加えて、血糖コントロールを含めた生活改善が必要です。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリング、LINE相談を実施しています。糖尿病および糖尿病網膜症に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 糖尿病網膜症分類に関するよくある質問 糖尿病網膜症分類のSDRとは何ですか? SDRとは、糖尿病網膜症分類の指標の1つで、単純網膜症を意味します。 高血糖が原因で網膜の血管がもろくなった結果、点状に出血したり毛細血管に瘤が出来たりしている状態です。この段階では自覚症状が出ることが少ないとされています。 この段階では血糖コントロールや眼底検査による経過観察が基本です。 糖尿病網膜症の検査方法にはどのようなものがありますか? 主に以下のような検査があげられます。 視力検査 眼圧測定 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査 眼底検査 光干渉断層計(OCT)検査 眼圧検査は、眼の中の圧力を調べるものです。糖尿病網膜症では、新生血管の影響で緑内障を発症する場合もあるため、緑内障の症状である眼圧を調べることが必要になります。 細隙灯顕微鏡検査では、角膜や結膜、眼底の状態を確認するものです。眼底の検査をするときには、特殊なレンズを使用します。 眼底検査では網膜を観察し、網膜症の診断を行います。網膜症が疑われる場合は、蛍光眼底検査も行います。 蛍光眼底検査とは、造影剤を注射した上で眼底の血管の状態を連続して撮影するものです。通常の眼底検査では発見が難しい病変を詳しく調べられます。 光干渉断層計では、糖尿病黄斑浮腫の診断を行います。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)|日本糖尿病眼学会 (文献2) 糖尿病網膜症について|日本糖尿病眼学会
2025.12.31 -
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「糖尿病網膜症の治療を受けているけれど、思っていたほど視力が回復しない」 「いつも視界がぼやけている上に、近くのものが見えにくい」 「メガネを使えば目が良くなるだろうか?」 糖尿病網膜症の方の中には、このような状況に直面している方も少なくありません。 結論からお伝えしますと、糖尿病網膜症の症状はメガネでの改善が困難なものです。 糖尿病網膜症は、目の中の網膜そのものが損傷した状態であり、カメラにたとえるとフィルム自体が傷んでいる状態であるためです。 メガネはあくまでも、日常生活の中で補助的に用いるものと考える方が良いでしょう。 本記事では、糖尿病網膜症で用いられるメガネの種類や症状に応じたメガネの選び方を解説します。メガネ購入補助を含めた公的支援制度についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病網膜症およびメガネの活用法について知りたい方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 糖尿病網膜症で用いられるメガネの種類 糖尿病網膜症で用いられる主なメガネの種類は以下のとおりです。 遮光眼鏡 拡大鏡 単眼鏡 遮光眼鏡 遮光眼鏡(しゃこうめがね)とは、まぶしさを抑えられる、暗くなりにくいなどの特徴を有する医療用のフィルターレンズです。 糖尿病網膜症では、明暗を見分ける力(コントラスト感度)の低下や、まぶしさを訴える症例が多いため遮光眼鏡が有効とされています。 遮光眼鏡はまぶしさの原因になる部分だけを取り除き、それ以外の光は通すため、輪郭がすっきりして快適に感じるケースが多く存在します。 拡大鏡 拡大鏡は、手元が見えにくいときや細かい作業をするとき、文字を読んだり書いたりするときに便利なツールです。拡大倍率は2倍から12.5倍と幅広く、中にはLEDライトで見たいものを照らせるタイプもあります。(文献1) 拡大鏡の種類には、ルーペと呼ばれる手持ち型や、弱視眼鏡とも呼ばれる眼鏡式などがあります。 単眼鏡 単眼鏡(たんがんきょう)は望遠鏡の一種で、バス停の行き先や駅のホーム表示、各種掲示板、店舗の価格表示などを見たいときに便利な補助具です。拡大倍率や使いやすさ、持ちやすさなどを考慮して選びましょう。 単眼鏡は片手で操作するため、眼科や障害者リハビリテーションセンターなどで練習してから使用する場合もあります。 糖尿病網膜症でメガネを活用するためのポイント 糖尿病網膜症の方がメガネを活用するためのポイントは、主に以下の2点です。 症状別のポイント 病態別のポイント 症状別のポイント 症状別のポイントとしてあげられるものは、主に以下の3点です。 ぼやけやかすみが強い場合 強いまぶしさを感じる場合 近くのものが見えにくい場合 ぼやけやかすみが強い場合 糖尿病網膜症では網膜の血管障害のため、ものを見るときにぼやけたりかすんだりします。この場合、適切な度数で矯正するメガネや、コントラストを補うレンズの活用により見え方が改善するケースも少なくありません。 ただし、物を見る中心部である黄斑部にむくみがある場合は、メガネだけで改善しないケースも多いとされます。 強いまぶしさを感じる場合 糖尿病網膜症が進行すると、網膜の損傷や黄斑部のむくみにより、光が過剰にまぶしく感じる場合があります。屋外での強い日差しだけではなく、室内の蛍光灯や車のライトでもまぶしさを感じる場合も少なくありません。 このような場合は遮光眼鏡が有効です。遮光眼鏡は光の波長を選択的にカットするため、まぶしさが軽減されて、見やすくなります。 遮光眼鏡のレンズカラーは複数存在します。眼科を受診した上で、ご自身の症状に合ったカラーを選択しましょう。 近くのものが見えにくい場合 糖尿病網膜症では、黄斑部のむくみや眼内の出血の影響で視力が低下し、近くのものが見えづらくなります。具体的には、細かい文字が読みづらい、手元の作業がしにくい、焦点が合いにくいなどです。 近くのものが見えにくい場合は、拡大鏡や弱視眼鏡などの補助具を併用する場合が多くなります。適切な補助具は症状により異なるため、眼科での診察を受けた上で選びましょう。 病態別のポイント 糖尿病網膜症の病態は大きく3つにわかれます。 単純網膜症 前増殖網膜症 増殖網膜症 いずれの病態においても発症する可能性がある症状が、黄斑浮腫です。 単純網膜症の場合 単純網膜症とは、高血糖が原因で網膜に張り巡らされた毛細血管が障害されて、斑状出血や硬性白斑といった症状が生じている状況です。硬性白斑とは、血液中のタンパク質や脂質が網膜に沈着した状態を指します。黄斑部と呼ばれる物を見る中心部に網膜症が及ばない状態であれば、自覚症状はありません。(文献2) 近視や遠視、乱視といった屈折異常だけの場合であればメガネによる矯正が期待できますが、網膜の血管損傷による視力障害の場合、回復は難しいと言えます。 前増殖網膜症の場合 前増殖網膜症とは、単純網膜症よりも網膜症が進行した段階です。毛細血管が詰まって、網膜の神経細胞に酸素や栄養がいかなくなり、軟性白斑と呼ばれる神経のむくみや静脈の拡張などが生じます。また、網膜の神経細胞に酸素を補うため、新生血管と呼ばれる血管を作る準備が始まりつつある状態です。(文献2) 自覚症状がないケースが多いのですが、黄斑部がむくんでくると見えづらさが生じます。単純網膜症同様、メガネによる矯正が期待できるのは近視や遠視、乱視といった屈折異常に限られます。 増殖網膜症の場合 増殖網膜症とは、網膜症がさらに進行し、新生血管が多く発生する段階です。新生血管はもろく出血しやすいため、眼の中に大きな出血を引き起こします。これは硝子体出血と呼ばれるものです。加えて、繊維状の組織である増殖網が網膜全体を覆い、網膜を引っ張ります。この結果生じる症状が、網膜剥離です。(文献2) 硝子体出血や網膜剥離により、視力低下をはじめとする自覚症状が出現します。この段階では、メガネでの対応が困難であることが多いとされます。 黄斑浮腫がある場合 黄斑浮腫とは、物を見る中心部である黄斑部の毛細血管が障害されて血液中の水分が漏れ出し、むくみが生じている状態です。単純網膜症から増殖網膜症に至るまで、どの病態でも発症する可能性があります。(文献2) 黄斑浮腫は局所性とびまん性に分けられ、びまん性黄斑浮腫では黄斑部の毛細血管が高度に障害されます。 黄斑浮腫がある場合は、メガネを活用しても十分な視力を得られないケースが多い状況です。 糖尿病網膜症におけるメガネを選ぶ前に必要な検査 この章では、糖尿病網膜症のためメガネを選択する前に必要な検査を3種類紹介します。 視力およびコントラスト検査 視野検査 黄斑浮腫に関する検査 視力およびコントラスト検査 糖尿病網膜症では、視力やコントラスト感度(明暗を見分ける力)の低下が起こりやすいため、メガネを選ぶ前にこれらの検査を受けることが重要です。 視力検査では、「どの程度の矯正が必要か」「近くで見るときにどこまで見えるか」「遠くで見る場合にどこまで見えるか」などを確認します。コントラスト検査とは、文字や物体の輪郭がどれだけ認識できるかを調べる検査であり、まぶしさやかすみといった自覚症状がある場合に必要です。 視野検査 視野検査とは、まっすぐ前を見ているときに、上下・左右・前方において、どのくらいの範囲まで見えているかを調べる検査です。動的視野検査と静的視野検査の2種類があり、いずれも片目ずつ行います。 糖尿病網膜症では、出血や浮腫により視野の一部が欠けたり、見える範囲が狭くなったりする場合があります。メガネ選びの前に視野検査が必要な理由は、見えにくい部分を確認するためです。 黄斑浮腫に関する検査 黄斑浮腫に関する検査は、主に以下のとおりです。 医師による問診 視力検査 眼底検査 光干渉断層計(OCT)検査 眼底検査では、黄斑とその周辺部(眼底)を眼底鏡や顕微鏡で観察し、カメラで撮影します。OCT検査では、網膜の断面を撮影して黄斑部分の状態を確認します。黄斑周辺に膨らみがあるときは、糖尿病黄斑浮腫の疑いが強い状況です。 糖尿病網膜症に関する公的支援制度 糖尿病網膜症に関する公的支援制度としてあげられるものは、主に以下の3種類です。 身体障害者手帳 障害年金 補装具支給 身体障害者手帳 糖尿病網膜症によって視力や視野に障害が生じている場合、視覚障害があるとして身体障害者手帳が交付されます。視覚障害における手帳の等級は、1級から6級までです。(文献3) 身体障害者手帳が交付されると、医療費の助成や各種福祉サービスなどが利用可能になります。 相談先は、かかりつけ医や市区町村の障害福祉担当窓口、福祉事務所などです。 障害年金 病気やけがによって生活や仕事に支障をきたした場合に受けられる年金で、現役世代の方も対象です。障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。(文献4) 障害基礎年金は、以下のいずれかに該当する状況において、法令により定められた障害等級表(1級・2級)に該当する方に支給されるものです。 国民年金加入中 20歳になる前(年金未加入の期間) 60歳以上65歳未満(年金未加入の期間で日本に住んでいる間) 厚生年金加入中に、障害基礎年金の1級または2級に該当する障害を負ったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。 補装具支給 補装具とは、障害を持つ方が日常生活において必要動作を確保するために、損なわれている機能を補完または代替する道具です。視覚障害者のための補装具としては、メガネや盲人安全つえ、義眼などがあります。 補装具支給とは補装具の購入や修理費用のうち、所得に応じた自己負担額から差し引いた分を支給する制度です。 糖尿病網膜症の方はメガネを補助的に活用した上で適切な治療を受けよう 本記事では糖尿病網膜症の方に向けて、メガネ使用に関する内容を解説してきました。 しかし、メガネはあくまでも見えづらさやまぶしさなどを軽減するためのものであり、根本治療にはつながりません。 糖尿病網膜症においては、血糖コントロールを中心にレーザー光凝固術や抗VEGF治療、硝子体手術などの治療が必要です。加えて、網膜症の原因となっている糖尿病の治療も大切です。 糖尿病治療の主な内容は内服治療やインスリン注射などですが、再生医療も選択肢の1つとして考えられます。 リペアセルクリニックでは、糖尿病に対する再生医療にも対応しています。糖尿病でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 糖尿病網膜症とメガネに関するよくある質問 糖尿病網膜症は治りますか? 糖尿病網膜症やそれに伴う視力低下を完全に治すことは難しい状況ですが、適切な治療を続けることで進行を遅らせることは可能です。 食事や内服、インスリン注射などによる血糖コントロールを続けつつ、定期的に眼科を受診して経過を観察していくことが求められます。 糖尿病網膜症の進行を遅らせるための自己管理や治療については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。 糖尿病網膜症にサングラスは有効ですか? サングラスもメガネ同様、糖尿病網膜症の症状改善効果は見込めないものです。 サングラスには、人の目に入る光を均一にカットする役割があります。そのため物を見るために必要な明るさまでカットしてしまい、かえって不便な場合も少なくありません。 サングラスとよく似たものが遮光眼鏡です。遮光眼鏡は、紫外線やまぶしさを感じる光を選択的にカットしているため、サングラスより負担が少ないとされています。 参考文献 (文献1) 糖尿病網膜症治療後の注意点を教えてください|糖尿病サイト (文献2) 糖尿病網膜症について|日本糖尿病眼学会 (文献3) 身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)|厚生労働省 (文献4) 障害年金|日本年金機構
2025.12.31 -
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「いつも寒くなると血圧が上がる」 「なぜ寒いと血圧が上がるのだろう?」 「一度病院にかかる方が良いのだろうか?」 このような疑問や不安を抱えながら、寒い時期を過ごされている方も少なくありません。 寒くなると、もともと高血圧ではない方も血圧が上がりやすくなります。 しかし、寒い時期の血圧上昇を放置すると、思わぬ病気を引き起こすリスクがあります。主な例として挙げられるのは、心筋梗塞や脳梗塞などの血管系の疾患、そしてヒートショックです。 本記事では、寒くなると血圧が上がるメカニズムや医療機関受診が必要なサインなどについて解説します。ヒートショックの予防法もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 寒い時期の血圧上昇について気になる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 寒いと血圧が上がる理由 寒いと血圧が上がる主な理由は、血管の収縮と自律神経の変化です。自律神経の変化とは、交感神経の活発化を指します。 寒さによる血管収縮と血圧上昇のメカニズム 寒いときには、体内からの熱放散を抑えるために、血管が収縮します。そのため皮膚への血流量が低下し、結果として体表面の温度も低下します。体表面と気温との差を小さくして、熱の放散を抑制するしくみです。(文献1) 末梢血管が収縮すると、血液がスムーズに流れにくくなります。血液をスムーズに流すため、動脈内の血液が血管壁を強く押します。これが血圧上昇のメカニズムです。(文献2) 寒さによる自律神経の変化と血圧への影響 寒い時期は交感神経が活発になり、以下のような現象が生じます。 血管の収縮 腎臓からのナトリウム排泄抑制に伴う体内の水分量増加 血液量増加 心拍数の増加 交感神経の活発化によるこれらの現象が、血圧を上昇させる因子です。 寒いと血圧はどのくらい上がるのか この章では、気温と血圧変動の関係と血圧が上がりやすい時間帯について解説します。 気温と血圧変動の関係 外国の論文においても、温かいところから寒いところに移動すると、収縮期血圧と拡張期血圧の両方が著しく上昇したとの報告があります。(文献3) イギリスでの研究では、リビングルームの温度が1℃低下すると、収縮期血圧が1.3mmHg、拡張期血圧が0.6mmHg上昇するとの結果が示されました。日本人高齢者15人を対象とした研究では、平均外気温が1℃低下すると、収縮期血圧が0.43mmHg、拡張期血圧が0.29mmHg上昇しました。(文献3) 血圧が上がりやすい時間帯と日常生活シーン 血圧が上がりやすい時間帯は早朝で、血圧上昇の要因は以下の通りです。 夜間高血圧:夜間に上昇した血圧が朝も維持されるもの モーニングサージ:早朝、起床前後に生じる一過性の血圧上昇 モーニングサージは、心筋梗塞や脳血管疾患との関連性が深いとされる現象です。 日常生活においては、あたたかいところから寒いところへ急に移動すると、血圧上昇のリスクがあります。 部屋があたたまっていないときにトイレに行く、薄着で外出する(ゴミ出しや散歩、雪かきなど)などの行動は避けましょう。 寒さで血圧が上がったときの受診サイン 寒さで血圧が上がった場合、医療機関受診が必要なケースがあります。主な受診サインは以下のとおりです。 高血圧とされる数値が続く場合 高血圧以外に自覚症状がある場合 高血圧とされる数値が続く場合 高血圧とは、繰り返し測っても血圧が正常より高い状況を指します。 日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2019で示している、異なる測定法における高血圧基準値は以下のとおりです。(文献4) 測定法 収縮期血圧 拡張期血圧 診察室血圧 140mmHg以上 90mmHg以上 家庭血圧 135mmHg以上 85mmHg以上 自由行動下血圧 24時間 130mmHg以上 80mmHg以上 昼間 135mmHg以上 85mmHg以上 夜間 120mmHg以上 75mmHg以上 自由行動下血圧とは、24時間自動血圧計を装着して15〜30分間隔で行う血圧測定のことです。この間の日常生活は基本的に自由ですが、入浴や激しい運動は控えてください。 家庭血圧で高値が続く場合は、放置せずに医療機関を受診しましょう。高血圧を放置すると、脳梗塞や心筋梗塞など、命に関わる病気を発症する可能性があるためです。また、徐々に腎機能が低下して、人工透析を受ける可能性もあります。 血圧の正常値については、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 高血圧以外に自覚症状がある場合 高血圧に加えて以下のような症状がある場合も、医療機関を受診しましょう。 頭痛(とくに早朝) めまい 肩こり ふらつき 呼吸困難 足の冷え これらの症状は、高血圧の合併症である可能性が高いためです。 寒い時期における高血圧対策 寒い時期における主な高血圧対策としては、以下の4つがあげられます。 室温管理と防寒対策 塩分を控えたバランスの良い食事 適度な運動 家庭での定期的な血圧測定 高血圧の予防および改善については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 室温管理と防寒対策 あたたかいところから急に寒いところへ出ると、血管が収縮し、血圧が上がります。 冬は室温と外気の差が激しいため、温度差が5度以上開かないように対処しましょう。外出時は手袋やマフラー、帽子、マスクなどで防寒してください。 居間と浴室、居間と廊下、居間とトイレなどは、室内でも温度差が生じやすいため、寒い場所には暖房設備を整えると良いでしょう。 塩分を控えたバランスの良い食事 食塩の過剰摂取は、血圧上昇と深い関連があります。(文献4)食塩に含まれるナトリウムには、血圧を上げる作用があるためです。血圧が高めの方の場合、1日の食塩量の目標は6g未満です。 減塩食の工夫としては、以下のようなことがあげられます。 汁物を具だくさんにする 減塩しょうゆや減塩みそを使う ハムやソーセージといった加工食品を減らす 塩分の排出をうながすカリウムを積極的にとる カリウムは、緑黄色野菜や海藻類、豆類などに多く含まれます。 バランスの良い食事とは、主食(炭水化物)、主菜(タンパク質や脂質)、副菜(ビタミン、ミネラル)をまんべんなく取り入れたものです。 適度な運動 高血圧患者の生活習慣改善法の1つが、適度な運動です。身体を動かす時間を増やすと、血圧低下に加えて体重や体脂肪の減少などがみられます。(文献4)目安としては、1日30分程度です。(文献5) ウォーキングのような有酸素運動やストレッチ、スクワットのような筋トレなどを組み合わせて実施しましょう。 体調が悪いときや天候がよくないときは、運動を控えてください。 家庭での定期的な血圧測定 日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインにおいても、高血圧の判定は家庭血圧が診察室血圧よりも優先されています。(文献4) 家庭では、朝と夜、椅子に座った姿勢で血圧を測定し、血圧手帳に記録しておきましょう。体を動かしたあとは血圧が上がりやすいので1〜2分程度安静にしてから測るようにしてください。 家庭で血圧を測るときは、正確な数値が出やすいタイプがおすすめです。上腕(肘の上)にカフを巻くタイプを選びましょう。家庭で測定した血圧の記録は、病院受診時に必ず主治医へ見せてください。 寒さによる血圧上昇とヒートショックのリスク 寒さによる血圧上昇と関係が深い体調変化が、ヒートショックと呼ばれるものです。 本章では、ヒートショックの概要と予防について解説します。 温度差による血圧変動とヒートショック ヒートショックとは、温度差に伴う血圧変動により、心筋梗塞や脳梗塞といった血管の疾患を起こす現象です。(文献6) ヒートショックの可能性が高いのは、入浴時です。あたたかい室内では血圧が安定していますが、寒い脱衣所では血管の収縮により血圧が上昇します。浴室が寒い場合、さらに血圧が上昇します。その後熱めの浴槽に浸かると、血圧が低下してしまうのです。 ヒートショックの好発時期は、11月~2月頃です。 65歳以上の高齢者や、高血圧や糖尿病などの基礎疾患がある方、肥満気味の方はヒートショックを起こしやすいとされています。 日常生活でのヒートショック予防法 日常生活でのヒートショック予防法としてあげられるものは、主に以下のとおりです 脱衣室と浴室をあたためる。 お湯の温度を41℃以下に設定する 入浴前に水分補給する 浴槽から出るときはゆっくりと立ち上がる 食事直後や飲酒後の入浴を控える 脱衣室と浴室をあたためる方法としては、脱衣室に暖房器具を設置したり、浴室にシャワーをかけてあたためたりするなどがあります。 寒いと血圧があがる理由を理解した上で高血圧対策を実践しよう 寒いと血圧が上がるメカニズムには、血管や自律神経が関係しています。室内と屋外の温度差は血圧上昇および、心筋梗塞や脳梗塞を発症する可能性を高める要因の1つです。 血圧上昇予防のためにも、室温管理と防寒対策を心がけましょう。 寒さで血圧が上がっている方は、自分でも気づかないうちに高血圧を発症している可能性があります。朝と夜、家庭で血圧を測り、自分が高血圧かどうかを理解しておきましょう。 寒さと血圧の関係で考えると、ヒートショックも危険です。とくに入浴時は、室内と浴室、脱衣室の温度差を少なくするように工夫するように心がけましょう。 高血圧によって引き起こされる脳梗塞の後遺症改善や再発予防を目的とした治療法として、再生医療という選択肢があります。脳梗塞に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。高血圧に関してお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 寒いと血圧が上がることに関するよくある質問 足が冷えると血圧が上がるのですか? 血圧の変動は足元からの高さによって異なるとの研究結果があります。(文献7) 室内で高さ1.1mの部分の室温が10℃下がると、血圧が5mmHg上昇しました。高さ0.1mの部分の室温が高いと血圧が9mmHg上昇したとの結果も出ています。 室温が適温でも、足元が冷えていると血管が収縮し、末梢に血液を送る心臓の負担が増えるために血圧が上がる仕組みです。 寒い部屋での血圧測定は良くありませんか? 寒い部屋での血圧を測ると、血圧が高くなりやすくなります。そのため、正確な血圧かどうかわかりにくい状況です。 血圧を測るときは、少なくとも室温を20℃以上に設定しましょう。 参考文献 (文献1) 寒冷下におけるヒトの体温調節と運動時低体温症の発症メカニズム|新潟医療福祉会誌 (文献2) 血圧の生理学|動物の循環器 (文献3) Winter Hypertension: Potential mechanisms|PubMed Central (文献4) 高血圧治療ガイドライン2019|日本高血圧学会 (文献5) 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子高血圧の話|日本高血圧学会ほか (文献6) 冬場に多発‼温度差で起こるヒートショック|社会福祉法人恩賜財団済生会 (文献7) 第19回「足元のひえにご注意!気温感受性高血圧とは?」~気温と血圧、循環器病の関係~|公益財団法人日本心臓財団
2025.12.13 -
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食道静脈瘤は、肝硬変によって発症する重大な合併症のひとつであり、破裂すれば命に関わる危険性もある疾患です。 しかし、自覚症状に乏しく発見が遅れるケースも多いため、正しい知識と早期対応が求められます。 本記事では、食道静脈瘤の原因や症状、診断法、治療の選択肢、日常生活での注意点をわかりやすく解説します。 受診前に不安を抱える方や、ご家族のサポートを考えている方は参考にしてみてください。 なお、肝臓の疾患に対しては、「再生医療」という治療法があります。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。肝臓疾患やその合併症でお悩みの方は、ぜひご利用ください。 食道静脈瘤は肝硬変の合併症のひとつ 食道静脈瘤は肝硬変の合併症のひとつであり、破裂すると命に関わる大量出血を引き起こす危険があります。 肝硬変を抱える患者の約50%に合併するとされており、極めて高い頻度です。(文献1) 肝硬変を患うと、血液の流れが肝臓で滞って血圧が異常に上昇します。 その結果、血液は肝臓を迂回して別の経路を通ろうとしますが、食道の静脈に過剰な血液が流れ込んでこぶ状に拡張するのが「食道静脈瘤」です。 自覚症状が乏しいまま進行することも多いため、肝硬変と診断された時点で定期的に内視鏡検査を受けましょう。 肝硬変の原因や症状について詳しくは、以下の記事をご覧ください。 肝硬変から食道静脈瘤になるメカニズム 食道静脈瘤の主な原因は、肝硬変による「門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)」です。 門脈圧亢進では、肝臓内の血流が障害され、門脈と呼ばれる血管にかかる圧力が異常に高くなります。 通常、腸や脾臓からの血液は門脈を通じて肝臓へ流れ込みますが、肝硬変によって肝臓の組織が線維化すると、血液がスムーズに流れなくなります。 その結果、血液は別の経路を通って食道や胃の静脈などに流れ込み、血管が膨らんで瘤(こぶ)状になるのです。 このように、肝硬変による血流障害は門脈系全体のうっ血を引き起こし、結果として食道静脈瘤が形成されます。 食道静脈瘤が破裂したらどうなる?主な症状 食道静脈瘤が破裂すると、命に関わる大量出血を引き起こす可能性があります。 以下が代表的な症状です。 吐血:口から真っ赤な血液を吐く、もっとも目立つ初期症状 下血:腸内を通って排泄される血液により、黒色のタール状の便が出る 貧血:大量の失血により血圧が低下し、動悸・息切れ・めまいなどを伴う 上記の症状が現れると、短時間で急激に容体が悪化するケースがあり、緊急に治療しなければなりません。 とくに、肝硬変が進行すると血液が止まりにくくなる傾向があるため、破裂前の段階で発見して予防的な治療を行うことが重要です。 肝硬変による食道静脈瘤の診断 肝硬変と診断された患者に対しては、食道静脈瘤の有無を確認するために定期的な内視鏡検査を行います。 なかでも、上部消化管内視鏡(胃カメラ)は、食道内の静脈の拡張を直接観察可能です。食道静脈瘤の有無だけでなく、大きさや形状、表面の変化などをもとに破裂リスクを評価します。 また、必要に応じて色素や特殊光を用いた詳細な観察が行われることもあります。 なお、CT検査や超音波内視鏡が補助的手段として用いられる場合がありますが、診断の中心は内視鏡です。 症状がない段階でも発見できるため、肝硬変と診断されたら定期的な検査を受け、破裂による重篤な出血を未然に防ぎましょう。 肝硬変による食道静脈瘤の治療法 食道静脈瘤の治療は、破裂による出血を防ぐことを最優先の目的としています。 肝硬変に伴って発生する食道静脈瘤は、症状がないまま発見されることも多いため、瘤の大きさや形状、破裂リスクに応じた適切な治療法の選択が重要です。 ここでは、食道静脈瘤の治療法について詳しく解説します。 内服治療 食道静脈瘤に対する内服治療では、主に門脈圧を下げる薬剤が使用されます。 代表的な薬剤が、プロプラノロールやカルベジロールといった「β遮断薬(ベータブロッカー)」です。 β遮断薬は心拍数を下げる薬で、門脈系への血流の減少によって静脈瘤の内圧を低下させ、破裂のリスクを軽減します。 ただし、低血圧や不整脈などの副作用が現れる場合もあるため、定期的な診察と血圧・心拍の管理が重要です。 また、継続的なフォローアップのもとで、他の治療法と併用されるケースもあります。 内視鏡治療 内視鏡治療は、食道静脈瘤の破裂を防ぐための代表的な治療法です。 主に、薬剤を直接注入して血管を固める「静脈瘤硬化療法(EIS)」と、輪ゴムで瘤を縛り壊死させる「内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)」の2つの方法があります。 いずれも出血のリスクを大きく下げる効果があり、瘤の状態に応じて使い分けられます。 処置後は、再発予防のために定期的な内視鏡検査が必要です。 カテーテル治療 細い管状の器具を血管や体内に挿入する「カテーテル治療」は、門脈圧の低下を目的とする手術的治療法のひとつです。 代表的な方法に「経皮的門脈圧シャント術(TIPS)」があります。 肝静脈と門脈の間に人工のバイパスを作って門脈圧を下げ、静脈瘤への血流を減少させるのが特徴です。 主に、内視鏡治療が難しいケースや再発を繰り返す重症例に適用されます。 ただし、高度な技術を要するため、専門の施設で実施されるのが一般的です。 外科手術 外科手術は、内視鏡やカテーテル治療で効果が不十分な重症例に対して検討される治療法です。 門脈と体循環をつなぐ「門体シャント術」や、脾臓を摘出して血流量を減らす「脾摘術」などがあります。 手術は、門脈圧を根本的に下げることが目的です。 ただし、全身への負担が大きく、重度の肝機能障害がある患者には適さないケースがあります。 現在、外科手術は限られた救済的適応とされており、状態に応じて慎重に判断される点に留意しておきましょう。 バルーンタンポナーデ法 バルーンタンポナーデ法は、食道静脈瘤が破裂して大量出血を起こした際に行われる一時的な止血処置です。 専用のチューブを鼻や口から挿入し、食道内でバルーン(風船)を膨らませて静脈瘤を圧迫し、出血を物理的に止めます。 通常、24時間の留置が限度ですが、出血が再発した場合は必要に応じて食道バルーンをさらに24時間再拡張することも可能です。(文献2) ただし、応急処置として有効ではあるものの、再出血のリスクが高いため根本的な治療につなげるまでのつなぎの処置であり、あくまで緊急時の対応策に位置づけられています。 再生医療という選択肢 近年、肝硬変に伴う合併症への対応として「再生医療」が検討されるようになってきました。 再生医療とは、患者様の体から採取した脂肪由来の幹細胞を培養し、点滴で体内に戻す治療法です。幹細胞が持つ、他の細胞に変化する「分化能」が肝組織に対して働きかけることが期待されています。 患者様自身の幹細胞を用いるため、拒否反応のリスクが低いのが特徴です。また、手術や入院を必要としません。 肝硬変や合併症でお悩みの方は、治療法の一つとして再生医療もご検討ください。当院「リペアセルクリニック」での肝硬変に対する症例も参考になります。 肝臓疾患に対する再生医療について詳しくは、以下のページで解説しているのでご覧ください。 肝硬変で食道静脈瘤になった場合の予後・生存率 肝硬変の合併症のひとつである食道静脈瘤は、破裂すると生命を脅かす重大な疾患です。 破裂による初回出血後の6週死亡率は15〜25%に達するとされ、早急な対応が求められます。(文献3) また、一度出血した患者の多くは6か月以内に再出血を起こすリスクが高く、再出血時の死亡率が高い傾向がある点も見逃せません。 予後は、出血の有無だけでなく、肝機能の重症度にも大きく左右されます。 食道静脈瘤の早期発見と適切な予防的治療、肝機能の維持が長期的な生存率向上の鍵です。 肝硬変で食道静脈瘤になった場合の注意点 肝硬変によって食道静脈瘤を発症した場合、命に関わる出血リスクを常に抱えることになります。 適切な治療はもちろん、再発予防を意識した日常生活も大切です。 ここでは、肝硬変の合併症で食道静脈瘤になった場合の注意点を解説します。 疾患と治療のバランスが重要 食道静脈瘤の治療は破裂リスクを抑えるのが最優先ですが、同時に肝機能そのものの管理も欠かせません。 過剰な処置や薬剤の使用は、かえって肝臓に負担をかける場合もあります。 疾患の進行度と体調のバランスを見極めながら、治療方針を選択することが重要です。 経過観察が必要 食道静脈瘤は治療後も再発する可能性が高いため、内視鏡検査による定期的な経過観察が不可欠です。 とくに、静脈瘤の再形成や出血リスクの高まりを早期に察知することで、迅速な対応が可能になります。 治療後も決して油断せず、継続的な受診を欠かさないようにしましょう。 食事の注意点 肝硬変が原因の食道静脈瘤では、食事にも細心の注意が必要です。 硬い食べ物や刺激の強いものは食道粘膜を傷つけ、静脈瘤の破裂を誘発する恐れがあります。 たとえば、以下のような食事は避けたほうが良いでしょう。 乾燥したパンの耳 揚げ物 香辛料の強い料理 柔らかく調理した食事をよく噛んで、ゆっくり食べる習慣が大切です。 ただし、食道静脈瘤以外にも疾患があれば、塩分の摂取制限や栄養バランスに配慮しなければならない場合もあるため、自己判断せず医師に相談しましょう。 肝硬変で注意すべき食事については、以下の記事でも紹介しています。 まとめ|定期的な経過観察で早期発見・治療 食道静脈瘤は、肝硬変によって引き起こされる重大な合併症のひとつであり、破裂すると生命に関わる危険があります。 多くの場合、自覚症状がないまま進行するため、早期発見が極めて重要です。 肝硬変と診断されたら定期的な内視鏡検査を受け、瘤の有無や状態を確認する必要があります。 また、治療を受けた後も再発のリスクは残るため、継続的な経過観察が欠かせません。 医師と連携しながら、食生活や服薬、生活習慣の改善にも取り組みましょう。 なお、肝臓の疾患には「再生医療」が治療の選択肢のひとつとして注目されています。 当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。ぜひ登録してご利用ください。 肝硬変と食道静脈瘤に関連するよくある質問 食道静脈瘤に予兆はありますか? 食道静脈瘤は、破裂するまでほとんど自覚症状がないことが多い疾患です。 ただし、破裂が近づくと胸部の違和感や黒色便、軽度の吐血といった前兆が現れる場合があります。 とはいえ、こうした予兆は非常にあいまいであり、明確なサインとして現れるとは限りません。 したがって、肝硬変と診断された時点で、症状の有無にかかわらず、定期的な内視鏡検査による監視が極めて重要です。 食道静脈瘤は極めて重篤な疾患であり、早期発見が予防的治療と命を守る第一歩となる点を肝に銘じておきましょう。 食道静脈瘤破裂で亡くなった芸能人は? 俳優の石原裕次郎さんは、肝臓がんの出血で亡くなったとされています。 ただし、食道静脈瘤破裂が直接の原因で亡くなったとの、確かな情報は確認できませんでした。 参考文献 (文献1) New index to predict esophageal variceal bleeding in cirrhotic patients|PMC(PubMed Central) (文献2) Medscape|Sengstaken-Blakemore Tube Placement Technique (文献3) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37351074/|PubMed
2025.12.13 -
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「最近お酒の量が増えている」「健康診断で肝機能の数値が悪い」そんな方は、アルコール性肝硬変のリスクがあるかもしれません。 アルコール性肝硬変は、長期間の大量飲酒により肝臓が硬くなり、正常に機能しなくなる病気です。初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると腹水や黄疸、吐血などの深刻な症状が現れ、命に関わる場合もあります。 飲酒習慣があり肝硬変が心配な方に向けて、本記事ではアルコール性肝硬変の原因・症状から治療法・予防法まで、分かりやすく解説します。 なお、肝硬変に対しては再生医療という治療方法があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する症例の紹介や簡易オンライン診断を実施しているので、ぜひご利用ください。 アルコール性肝硬変とは? 日頃から多くお酒を飲む方の場合、アルコール性肝硬変のリスクに注意する必要があります。 アルコール性肝硬変の特徴は以下のとおりです。 長期間の飲酒による肝臓疾患で症状が進んだもの 前段階としてアルコール性肝炎がある アルコール以外で発症する肝硬変との違い 肝硬変について詳しくは以下の記事をご参照ください。 長期間の飲酒による肝臓疾患で症状が進んだ状態 アルコール性肝硬変とは、肝硬変のうち5年以上の長期間にわたる大量の飲酒によって肝臓が硬くなる疾患を指します。お酒に含まれるアルコールには「アセトアルデヒド」と呼ばれる有害物質があり、通常は肝臓で分解された後に体外に排出される仕組みです。 しかし、普段から大量のお酒を飲んでいる場合は、肝臓でアセトアルデヒドが分解しきれずに蓄積します。このアセトアルデヒドが肝細胞を傷つけて破壊すると、傷ついた部分は硬い組織(線維)に置き換わります。この硬化が肝臓全体に広がった状態が肝硬変です。 なお、日本では肝硬変の原因としてアルコール摂取が最も多いことを示す研究結果もあります。(文献1) 前段階としてアルコール性肝炎がある アルコール性肝硬変は、普段の大量の飲酒がきっかけで短期的に発生するわけではありません。日頃からの過剰な飲酒でアルコールを体内に多く摂取すると、肝臓で代謝するなかで中性脂肪が蓄積されます。この中性脂肪が肝臓に溜まった状態が「アルコール性脂肪肝」です。 アルコール性脂肪肝ができてもアルコールの摂取量を減らさない場合、中性脂肪の蓄積がさらに進んでアルコール性肝炎へと発展します。このアルコール性肝炎がより重篤になった疾患がアルコール性肝硬変です。 アルコール性肝炎には、肝細胞の膨張や黄疸、腹痛などの症状が見られます。詳細は以下の記事を参考にしてください。 アルコール以外で発症する肝硬変との違い 肝硬変にはアルコール以外で発症する、「非アルコール性肝硬変」と呼ばれるものもあります。アルコール性肝硬変と非アルコール性肝硬変との違いは、「発症の原因がアルコールかそれ以外か」です。 非アルコール性肝硬変の場合、以下の原因が挙げられます。 肥満や糖尿病などの生活習慣病 B型・C型肝炎ウイルスによる感染 自己免疫疾患 薬剤や有害物質 これらのアルコール以外の要因で肝臓疾患になり、その症状が進行して肝硬変になったものが、「非アルコール性肝硬変」に分類されます。 アルコール性肝硬変の原因 アルコール性肝硬変は、主に長期に及ぶ大量のアルコール摂取が原因です。摂取したアルコールを分解する際に発生するアセトアルデヒドが継続的に肝臓を傷つけることで、肝細胞が損傷・破壊されます。肝細胞の破壊が進むと、肝臓内で硬い部分が広がって肝機能が衰え、肝炎や肝硬変などの症状に発展します。 なお、「長期に及ぶ大量のアルコール摂取」の目安は、男性で1日60g以上、女性で1日40g以上のアルコールを10年以上に渡り摂取している状態です。また、上記の目安に達していなくても短期間で大量飲酒を繰り返す場合も、アルコール性肝硬変のリスクがあります。 ほかにも生活習慣病や遺伝的要因を抱えている状態で、大量にアルコールを摂取する生活を続けている方も注意が必要です。 アルコール性肝硬変の症状 アルコール性肝硬変の症状には、次のようなものが見られます。 肝機能やアルコール分解能力の低下 黄疸(おうだん) 腹水 吐血 肝臓がんを発症するケースも 命に関わる症状もあるため、事前に知識を深めておくことが大切です。 肝機能やアルコール分解能力の低下 アルコール性肝硬変になると、肝臓の働きが悪くなり、アルコールを分解する能力も落ちます。これは、お酒に含まれる有害物質(アセトアルデヒド)が肝臓の細胞を傷つけて壊すためです。毎日お酒を飲み過ぎると、肝臓の細胞が傷つき、最終的には肝臓の線維化が進み硬くなります。 肝機能やアルコール分解能力の低下が続けば、肝臓に中性脂肪が溜まるようになります。この状態が続くと、アルコール性肝炎を起こし、さらに進行するとアルコール性肝硬変になります。 アンモニア臭が発生する アルコール性肝硬変になった人は、アンモニア臭を発生させることがあります。 食事を通じて体内に取り込まれたアンモニアは、本来であれば肝臓で無毒化された上で、尿として排出されます。しかし、肝硬変になった人は肝機能が衰えているため、アンモニアの解毒作用がはたらきません。その結果、残留したアンモニアが血管内に流出し、吐き出す息にもアンモニアのにおいが伴います。 なお、血液中のアンモニア濃度の上昇が脳に影響し、肝性脳症による意識障害を引き起こすケースもあります。 黄疸(おうだん) 黄疸(おうだん)、この黄色に染めるものの正体は、赤血球に含まれるビリルビンです。 赤血球は古くなると肝臓に送られて分解されます。その際に赤血球に含まれるビリルビンも、胆汁とともに排出されます。 しかし、肝機能が低下するとビリルビンがうまく排出されず、血液中に増えてしまいます。そのため、皮膚や目の白い部分が黄色く染まってしまうのです。 腹水 腹水とは、胃などのお腹周りの臓器と、それらを包む膜の間に広がる腹腔に水が溜まる症状を指します。そして腹水も、アルコール性肝硬変がある程度進んだ場合に見られる症状です。 体内の水分バランスは、肝臓で作られる「アルブミン」というたんぱく質が調整しています。しかし、アルコール性肝硬変が進行するとアルブミンの生成量が減り、血管内の水分が腹腔へと流れ出て腹水になります。 なお、腹水が膨らむと呼吸困難のような重篤な状態になるケースもあります。 吐血 吐血もアルコール性肝硬変で見られる症状です。 アルコール性肝硬変では肝臓に向かう血管が狭くなったり閉塞したりするため、血流が低下します。加えて、行き場を失った血液は食道の静脈へと向かうため、圧力がかかり食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)という血管の瘤(こぶ)ができます。 アルコール性肝硬変による吐血は、多くの場合、この食道静脈瘤がいきみや咳などの刺激で破裂することで起こります。 肝臓がんを発症するケースも アルコール性肝硬変になった場合、肝臓がんを発症することもあります。肝硬変から肝臓がんになるのは、肝細胞が損傷と再生を繰り返す過程で、突然変異によってがん細胞に変化するためです。 肝臓がんを発症すると、肺やリンパ節など他の臓器に転移する場合があります。また、他の臓器のがんが肝臓に転移してくるケースもある点にも注意が必要です。 アルコール性肝硬変の末期症状は?余命はどの程度? アルコール性肝硬変が末期になると、肝臓が著しく縮小し、肝機能は大幅に低下します。加えて、腹水による呼吸困難や吐血、肝性脳症による昏睡のリスクが高まるため、非常に危険な状態です。 末期症状とともに気にされることの多い余命については、医学的な重症度分類に基づいた研究では、症状が重度まで進んだ肝硬変患者の3年後も生存している割合は約31%と報告されています。(文献2) ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、適切な治療を継続し、禁酒を徹底することで病気の進行を遅らせることが期待できるため、諦めずに治療を続けることが大切です。 アルコール性肝硬変の診断方法 アルコール性肝硬変の早期発見・治療には、適切な診断が重要です。 主な診断方法として、以下があります。 飲酒歴や生活習慣の聞き取り 血液検査 腹部超音波検査・画像診断 肝生検 医師は患者さんの症状や状態に応じて、これらの診断方法を選択して検査を行います。 飲酒歴や生活習慣の聞き取り アルコール性肝硬変について診断する際は、医師が飲酒歴や生活習慣を聞き取ります。飲酒歴の場合、以下の項目を尋ねるのが一般的です。 お酒を飲んでいる年数 週に飲む日数 1日に飲む量 アルコール濃度 お酒の種類 アルコール性肝硬変かどうかは、5年以上にわたって1日に60g以上(女性は40g以上)の純アルコールを摂取しているかが基準とされます。ただし肥満が見られる人については、摂取量が基準に満たない場合でもアルコール性肝硬変を疑われます。 なお、飲酒歴は本人だけでなく、家族からも聴取します。加えてアルコール依存症の有無も確認される項目です。 飲酒以外にも、普段の食事や運動の状況・体重の変化・服薬の有無・健康状態も問診します。健康状態については、黄疸など明確な症状の有無のほか、倦怠感や食欲不振など本人が感じている症状も聞きます。 血液検査 血液検査では、肝機能を示すASTやALTなどの指標を調べます。アルコール性肝硬変が疑われる場合、これらの数値が異常値を示すことが多く、診断の重要な手がかりとなります。 なお、会社や自治体の健康診断で肝機能の異常が見つかった場合は、その結果を医師に持参して詳しい検査を受けることが大切です。 腹部超音波検査・画像診断 血液検査で異常が見られた場合、より精密な検査として腹部超音波検査や画像診断が必要です。 腹部超音波検査は超音波を使って肝臓の状況を確認します。肝臓のサイズや表面の凹凸の状態、脂肪の蓄積具合などを見ることで、肝臓の線維化の程度や病気の進行度を調べる方法です。 腹部超音波検査とともに、振動波で肝臓の硬さをチェックする手段もよく用いられます。振動波は硬い物体ほど速く伝わるため、その原理を利用した装置で肝硬変の進み具合を見ます。 画像診断は実際の肝臓の状態を直接目で確認できる手段で、MRIやCTによる方法が一般的です。基本的にはこれらの装置を使った方法と、今までの血液検査や問診の結果を総合して最終的な診断を下します。 肝生検 アルコール性肝硬変の診断には、肝生検と呼ばれる方法を用いるケースもあります。肝臓組織の一部を切り取った上で、顕微鏡で観察して病状を確認する方法です。 ただし、すでに説明した超音波などによる検査や画像診断が主流になってきている上に、出血や感染症などの合併症のリスクがあることから、必要性が高いときにのみ実施されます。 アルコール性肝硬変の治療法 アルコール性肝硬変の主な治療法は以下のとおりです。 【最重要】断酒 栄養療法・食事療法 薬物治療 アルコール依存症の治療 肝移植 再生医療 アルコール性肝硬変の治療法について知り、本格的な治療に臨みましょう。 断酒 アルコール性肝硬変の治療においては、お酒を全く飲まない「断酒」が重要です。症状が出ている中で飲酒を続けた場合、アセトアルデヒドによる肝細胞の損傷・破壊や、脂肪の蓄積が進みます。その結果、肝硬変の症状が悪化するため、命の危機に直面する可能性もあります。 アルコール性肝硬変の治療を始めるのであれば、すぐに断酒しましょう。 栄養療法・食事療法 肝機能の回復には十分な栄養補給が必要ですが、アルコール性肝硬変の方は長期の飲酒により、栄養状態が悪化していることが多くあります。そのため、食事内容の見直しが必要です。 医師の指導を受けながら、主食・主菜・副菜で構成される、栄養バランスを考慮した献立で食事をとりましょう。エネルギーやたんぱく質の不足を克服するためにも、高エネルギー・高たんぱく質のメニューにします。 たんぱく質は肉だけでなく魚介類や大豆類などでバランスよくとることが大切です。加えて、野菜や果物などからのビタミンや食物繊維の摂取もポイントに挙げられます。ただしどんなに体に良い栄養素でも、食べ過ぎは禁物です。 一方で、腹水の症状がある方は、塩分や水分を制限します。塩分や水分を多く摂取すると、腹腔に腹水が多く溜まるためです。とくに塩分は1日5~7g以内が推奨されます。(文献3) 薬物治療 薬物治療では、アルコール性肝硬変の症状緩和や合併症の管理を目的として薬剤が用いられます。ただし、肝機能が低下している状態では、薬物の代謝も困難になるため、使用する薬や量は慎重に選択されます。 具体的には、腹水に対して利尿剤、肝細胞の保護には肝保護薬(ウルソデオキシコール酸など)、肝性脳症に対してはラクツロースなどが使用されます。 アルコール性肝硬変の治療で薬物は、あくまでも補助的な意味合いで使われるものと理解すると良いでしょう。 アルコール依存症の治療 アルコール性肝硬変を発症する方には、アルコール依存症にかかっている方も多くいます。生活上の不安や不満などをお酒の力を借りて紛らわそうとするあまり、お酒が手放せない状態になってしまう状態です。 アルコール自体も中毒性を伴う物質であるため、依存症まで発症すると自力での断酒は困難です。そのため、治療を進める中で精神科や心療内科の専門医のカウンセリングを受ける必要があります。 肝移植 断酒や食事療法などによる治療が難しい場合は、肝移植を検討します。肝移植は70歳※までの健康な成人の肝臓の一部を移植する方法です。※日本肝臓学会の基準。施設により異なる場合があります。 移植された肝臓の一部は、高い再生能力で元の形状や大きさに戻ります。 アルコール性肝硬変の治療では、本人が一定期間継続して断酒しているなどの条件を満たすことが欠かせません。加えて自身の体に合う肝臓があることも重要です。 ほかにも移植しなかった場合の余命の長さも、肝移植するかどうかの判断材料になります。肝移植は、ほかの内科的治療では改善が困難な場合に検討されます。 再生医療 近年では再生医療も、アルコール性肝硬変治療で選べる方法のひとつです。再生医療には主に幹細胞治療とPRP療法があります。 幹細胞治療は、患者様の脂肪から幹細胞を採取・培養後、幹細胞を患部に投与する方法です。 一方、PRP療法では患者様の血液を採取し、遠心分離器で血小板を多く含む液体を作製して患部に投与します。再生医療は手術を伴わない治療法で、施術にもあまり時間はかかりません。 当院「リペアセルクリニック」では、随時再生医療に関するご相談を受け付けていますので、興味がある方や気になる方はぜひお問い合わせください。 実際の肝硬変に対する再生医療の治療例については、当院の症例をご覧ください。 アルコール性肝硬変の予防法 アルコール性肝硬変は予防可能な疾患です。 症状が現れる前の早期対策が重要で、主に以下の方法で予防できます。 適量の飲酒・禁酒 栄養バランスのとれた食事 定期健診 発症して厄介な事態になる前に、これらの予防法で早めに対策しましょう。 適量の飲酒・禁酒 アルコール性肝硬変の予防には、適量の飲酒や禁酒への意識が大切です。お酒とうまく付き合いつつ、アルコール性肝硬変も予防するには、お酒の適正量を知っておくと役に立ちます。 お酒の適正量は厚生労働省によると、純アルコールを1日約20gに留めるのが目安です。これはビールであればアルコール度数5%で中瓶1本500ml、清酒であれば15%で1合(180ml)に相当します。(文献4) 肝機能に特別な問題のない方は、上記の摂取量の範囲でお酒を飲むことが、アルコール性肝硬変の予防につながります。加えて、週に1~2日は休肝日を設け、肝臓を休ませましょう。 一方で肝硬変や、その前段階である脂肪肝・アルコール性肝炎が疑われるときは、肝機能が安定するまでは禁酒が必要です。 栄養バランスのとれた食事 栄養バランスのとれた食事も有効な予防法です。食事でアルコール性肝硬変を予防する場合も、基本的には主食・主菜・副菜の構成で、良質なたんぱく質や食物繊維などを積極的に摂取します。また、塩分の取りすぎには注意しましょう。 加えて、食事の回数は1日3回を心掛け、適切な量をよく噛んで食べることも大切です。食事の回数が少ないと、肝臓が貯蔵してある栄養分でエネルギーを補てんしようとするため、余計な負担をかけます。よく噛まなかったり食べすぎたりする習慣も、肝臓への負担や脂肪肝の蓄積の原因になるため、避けるべきです。 定期健診 定期健診は、アルコール性肝硬変の早期発見と予防に重要な役割を果たします。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期段階では自覚症状がほとんど現れないため、定期的な健診で確認しましょう。 血液検査で数値に異常が見られた場合は、早期の段階で飲酒量の見直しや生活習慣の改善を行うことで、肝硬変への進行を防ぐことができます。 とくに日常的に飲酒する習慣がある方は、定期的な肝機能検査を受けることで、肝臓の状態を把握し、適切なタイミングで予防対策を講じることが可能です。 まとめ|アルコール性肝硬変は飲酒を見直すことが不可欠 アルコール性肝硬変は、長期間の大量飲酒が原因で発症する重篤な肝疾患です。 初期は自覚症状がほとんどありませんが、進行すると黄疸や腹水、吐血などの深刻な症状が現れ、命に関わる場合もあります。 治療の中心は断酒です。飲酒を続ける限り肝臓の損傷は進行し続けるため、症状の改善や進行の抑制には完全な禁酒が不可欠です。断酒と併せて、栄養バランスの取れた食事療法や合併症に対する薬物治療も重要な役割を果たします。 日常的に飲酒する習慣がある方は、今一度飲酒量や生活習慣を見直し、肝臓の健康を守ることが大切です。 なお、アルコール性肝硬変を含む肝疾患に対しては、再生医療という治療の選択肢もあります。再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」まで、お気軽にお問い合わせください。 肝硬変とアルコールのよくある質問 アルコール性肝硬変は治るのか? アルコール性肝硬変は、症状が軽いうちであれば治る見込みは十分にあります。とくに健康診断の段階で肝機能に異常が見られたり、肝臓で脂肪肝や炎症が見つかったりしたときには、すぐにでもお酒を控えるなどの対策が治る確率を高めます。 なお、アルコール性肝炎が治るかどうかは、以下の記事も参考にしてください。 肝硬変でお酒をやめないとどうなる? 肝硬変でお酒をやめなかった場合、脂肪の蓄積やアルコールの作用で、さらに肝臓の線維化が進行します。しかも、肝臓がんや肝性脳症のような合併症のリスクも高まるため、注意が必要です。 なお、医学的な重症度分類に基づいた研究では、症状が重度まで進んだ肝硬変患者の3年後も生存している割合は約31%と報告されています。(文献2) ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、適切な治療と生活習慣の改善により、病気の進行を遅らせることが期待できます。 肝硬変になるアルコール摂取量はどのくらい? 肝硬変は、一般的に男性で1日約60g以上、女性で約40g以上のアルコールを摂取する生活を5年以上継続した場合に発症するとされています。(文献4) ただし、飲む側の体質によって発症する摂取量はさまざまです。また、肥満体質の場合は上記よりも少ないアルコールの摂取を数年続けた結果、肝硬変になる場合があります。 参考文献 (文献1) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021, Hepatol Res.2024 (文献2) 肝硬変患者の生命予後の検討|厚生労働省 (文献3) 肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献4) アルコール|厚生労働省
2025.12.13 -
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健康診断で肝硬変を疑われる数値が出てきた場合、より精密な検査を受けながら対策を進めていくことが欠かせません。正常な状態に戻すためにも、検査で使われる数値に関する知識は大切です。 肝硬変に関する数値や目安を知っていると、今後の治療や予防で目標を立てるのに活用できます。 本記事では、肝硬変が疑われる数値や目安、対策・予防法を解説します。なお、肝硬変の血液検査で用いられる指標や、正常とされる数値の目安は日本臨床検査医学会の基準をもとにご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 また、肝硬変に対しては再生医療という治療の選択肢もあります。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 肝硬変の治療法についてお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録いただき再生医療についてご確認ください。 肝硬変の血液検査の指標・正常な数値の目安 肝硬変の疑いで血液検査を受ける際に、検査に使われる指標や正常な数値の目安を知っていると、結果を踏まえての対策や心の準備に役立ちます。 検査で肝機能を調べる際の指標として、以下に挙げるものが一般的です。 AST(GOT) ALT(GPT) γ-GTP(γ-GT) LDH(LD) ALP 血小板数 総ビリルビン 以上の指標を、日本臨床検査医学会の基準を参考に肝硬変が疑われる数値の目安とともに解説します。(文献1) 本章で紹介する血液検査の数値は肝硬変の可能性を示唆するものですが、確定診断には医師による総合的な判断と追加検査が必要です。数値の異常があっても自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。 肝硬変の原因や症状について詳しくは、以下の記事が参考になります。 AST(GOT) 下限値 上限値 13 30 単位:U/L (文献1) ASTは肝細胞がアミノ酸を生成する際に使われる酵素です。肝細胞内に多く含まれているのが特徴で、肝臓疾患をはじめとする原因で肝細胞が壊れると、血液中に漏れ出ます。 このため、高い値が出るときは、肝臓でなんらかの問題が起きていることが疑われます。ただし、ASTは心筋や骨格筋にも多く含まれるため、肝機能の検査では次に触れるALTの数値とともに確認します。 標準とされる目安は13~30単位です。ASTとALTの両方が150単位以下で、そのうちASTが高い場合は肝硬変の疑いがあります。 ALT(GPT) 下限値 上限値 8 36 単位:U/L (文献1) ALTも肝細胞に多く含まれる酵素です。全体の9割程度が肝細胞に含まれているため、チェックする際に数値が極端に高いときは、肝機能の問題が疑われます。 基準値は8~36単位です。 γ-GTP(γ-GT) 下限値 上限値 9 47 単位:U/L (文献1) γ-GTPは肝臓や胆管に多い酵素で、たんぱく質の分解や解毒に役立ちます。肝細胞や胆管細胞がなんらかの原因で破壊されると、血液中に流出して数値が上昇する仕組みです。 とくにアルコールに強く反応するため、日頃お酒を大量に飲む人であれば、たとえ肝障害がなくても数値が上昇します。加えて、すでに脂肪肝があったり薬剤を服用したりする方も、数値が上がるケースがあるために注意が必要です。 基準値は9~47単位で、50単位を上回っていれば肝臓の疾患が疑われます。 LDH(LD) 下限値 上限値 124 222 単位:U/L (文献1) LDH(LD)は、肝細胞のほかに心筋や赤血球などに多い酵素です。通常は体内のブドウ糖をエネルギーに変換する際に活動するものの、疾患をはじめとする原因で肝細胞が破壊された際には血中に流出します。 基準値は124~222単位で、数値が高いほど肝硬変を含む肝臓疾患や心筋梗塞の疑いがあります。 ALP 下限値 上限値 38 113 単位:U/L (文献1) ALPは肝臓や骨、腸などで生成され、リン酸化合物の消化のはたらきがある酵素です。ALPも胆管や肝臓になんらかの異常が発生した際に、血中に流れ出て数値が上昇します。 ALPの基準値は38~113単位で、それ以上高くなると肝硬変が疑われます。 血小板数 下限値 上限値 158 348 単位:10³μL (文献1) ケガをした際に出血を止めるはたらきをする血小板の数も、肝硬変をチェックする際に使われる指標です。肝硬変は症状が進むと、肝臓の線維化(肝臓の組織が硬く変化すること)に併せて血小板の数が減っていくためです。 通常は15.8万個から34.8万個で基準とされる一方、10万個を下回った場合は肝硬変が疑われます。 総ビリルビン数 下限値 上限値 0.4 1.5 単位:mg/dL (文献1) ビリルビンは古くなった赤血球を肝臓で破壊する際に生成される色素です。色が黄色であるのが特徴で、肝機能が低下すると血中に多く見られるようになります。 肝硬変の症状の1つで、皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)は、血中のビリルビンの量が増えることで発生する仕組みです。なお総ビリルビンの基準値は0.4~1.5㎎で、それ以上増えると肝臓疾患が疑われます。 数値で肝硬変が疑われるときの検査 もし、健康診断の数値で肝硬変の疑いがあるときには、より詳しく分析するために次のような検査が行われます。 腹部超音波検査 フィブロスキャン検査 肝生検 胃カメラ 以下の検査についても知っておくと、事前に心の準備をする上で役に立つでしょう。 腹部超音波検査 腹部超音波検査とは、機械が発する超音波を使って肝臓全体を観察・検査する方法です。とくに肝臓の形状の変化や表面の凸凹、脂肪肝が見られるときには肝硬変が疑われます。 ほかにも、肝臓がんが発生しているときには、がん細胞も観察できます。 フィブロスキャン検査 フィブロスキャン検査(肝硬度測定)は、肝臓の硬さを測定する検査です。肝臓に振動波を伝えることで、振動速度から肝臓の硬さを数値として検出します。(文献2) なお、振動速度は肝臓の硬さと密接に関わっていて、硬いほど速度が速くなる傾向です。 肝生検 肝生検は肝臓に直接針を刺すやり方で組織の一部を採取し、実際に顕微鏡で観察する方法です。直接の観察によって肝臓の組織がどの程度硬くなっているのかや、炎症が出現しているのかを医師が自らの目で確認します。 ただ近年では、超音波検査が主要な検査の手段になってきているため、取り扱っていない医療機関も増えています。 胃カメラ 胃カメラも肝硬変の精密検査で推奨される手法の1つです。肝硬変を発症すると、食道や胃の血管が膨らんでこぶ状になる静脈瘤(じょうみゃくりゅう)が発生するケースがあるため、胃カメラでの検査を勧められます。 この食道・胃静脈瘤は、発生する原因の大半が肝硬変の進行によるものと考えられています。しかも、静脈瘤は膜が非常に薄い分、ちょっとしたはずみで大量出血や吐血、黒い便のリスクがあるために、細心の注意が必要です。以上の理由から、肝硬変の疑いがあるときは、胃カメラを使った検査も一緒に受けると良いでしょう。 肝硬変が疑われる数値が出たときの対策・予防法 もし健康診断で肝硬変が疑われる数値が出てきた場合、さまざまな対策や予防法で肝硬変のこれ以上の悪化に備えられます。主な対策や予防法は以下のとおりです。 休肝日を設けるなどして飲酒の量を調整 食事の栄養バランスや量に注意 便秘対策 適度な運動の習慣 以上の方法を活用しながら、少しでも状況を良くしていくことが大切です。 休肝日を設けるなどして飲酒の量を調整 肝硬変の予防には、禁酒や休肝日を設けるなどの対策が欠かせません。肝硬変は日頃から大量のお酒を飲むことによるアルコールの大量摂取が大きな要因であるためです。実際に近年の研究では、わが国で発症する肝硬変の原因で最も多いのがアルコール摂取であることも報告されています。(文献3) アルコールを大量に摂取すると、肝臓で分解されるアセトアルデヒドや、肝臓に蓄積される中性脂肪が処理しきれなくなります。これらを放置すると、肝臓だけでなく他の消化器官にも多大な負担をかけるため、注意が必要です。 肝硬変の疑いがあるときは、ただちに飲酒をやめて適切な治療に臨みましょう。また、現在のところ肝硬変の可能性が低い方も、週に2~3回は休肝日を設けて肝臓をいたわるべきです。 食事の栄養バランスや量に注意 肝硬変の治療や予防には、食事の栄養バランスや量への注意も有効な対策として挙げられます。 主食・主菜・副菜を一通りそろえた献立での食事のほか、損傷が進んだ肝臓の回復に欠かせないたんぱく質の意識的な摂取がポイントです。具体的には肉類だけでなく、魚介類・卵類・大豆類を使った料理を口にするのがおすすめです。 栄養バランス以外にも、食事の量や回数も意識します。食べすぎると肝臓に脂肪肝が蓄積され、より肝硬変を悪化させる原因になるためです。このため腹八分目程度がちょうど良いでしょう。 食べる回数も1日3回が基本です。朝食を抜くなどして1日の食事回数を減らすと、肝臓が蓄えていた栄養分で足りないエネルギーを補てんしようとするため、ただでさえ弱っている肝臓に負担がかかります。 便秘対策 肝硬変が疑われる場合は便秘対策も大切です。便秘になると腸内でアンモニアを発生させる細菌が優位になり、健康な人であればそのアンモニアは肝臓で解毒されます。しかし、肝硬変では肝機能の低下でアンモニアが解毒されないため、アンモニアが血中に流出した上に、脳に達すると肝性脳症を発症する場合があります。 アンモニアの解毒も肝臓に大きな負担をかけるものであるため、肝硬変の疑いがある場合は便秘対策が欠かせません。普段から野菜や果物、きのこ類のようなビタミンや食物繊維を多く含むものを摂取して、お通じを良くしましょう。 適度な運動の習慣 適度に運動する習慣も肝硬変対策に役立ちます。とくにアルコール以外の原因で肝硬変の疑いがある場合は、肝硬変の原因物質である脂肪肝を減らすことで、症状の改善が期待できます。 1日30分以上の運動を、週3回以上行う程度がおすすめです。運動の内容も、ウォーキングやジョギング、サイクリングのような少し汗をかく程度の有酸素運動が良いでしょう。なお、途中に休憩を挟みながらやる方法でも問題ありません。ただし、肝硬変対策に運動を取り入れる際には、事前に担当の医師と運動の頻度や量をよく相談しましょう。 まとめ|肝硬変が疑われる数値の把握と予防が大事 血液検査などによる肝硬変や肝機能に関する数値の把握は、今後の肝硬変の治療や予防には欠かせません。もし、血液検査で肝硬変が疑われる数値が出てきたときは、すぐにより詳しい検査を受けることが大切です。 実際に肝硬変の診断を受けたり、医師からなりかけていることを指摘されたりしたら、禁酒や節酒でお酒を控えながら、食事や運動などの生活習慣を見直しましょう。肝硬変に関係する数値に向き合うことで、肝硬変のこれ以上の悪化や将来なる可能性を防ぐ上で重要です。 肝硬変が判明した方は、再生医療による症例記事も参考までにご覧ください。 肝硬変の数値に関するよくある質問 肝硬変の診断基準は? 肝臓の数値がどのくらいであれば入院が必要? 肝臓の数値が急に上がる原因は? 肝臓で高い数値が出るのはストレスが原因? 肝硬変の診断基準は? 肝硬変の診断基準は、血液検査で肝機能などに関係するASTやAGTなどを確認します。もし数値が正常値を逸脱している場合は、腹部超音波検査をはじめとするより精密な検査を行います。血液検査や精密な検査の結果を総合して、肝硬変かどうかを判断する流れです。 肝臓の数値がどのくらいであれば入院が必要? 肝臓の数値で入院が必要な目安は以下のとおりです。 項目 入院が必要な目安 (参考)正常とされる数値 AST 500U/L以上 13~36U/L ALT 500U/L以上 8~36U/L γ-GTP 500U/L以上 9~47U/L ALP 400U/L以上 38~113U/L 総ビリルビン数 10㎎/dL以上 0.4~1.5㎎/dL ただしこれらは参考値であり、実際の治療方針は医師が全身状態を総合的に判断して決定します。 肝臓の数値が急に上がる原因は? 肝臓の数値が急に上がる原因には肝臓の疾患のほか、過度な飲酒や服用している薬剤の影響、栄養バランスの偏った食事などさまざまな要因が挙げられます。必ずしも肝臓疾患によるものではないものの、場合によっては医師への相談がおすすめです。 肝臓で高い数値が出るのはストレスが原因? ストレスが原因で肝臓の数値が上がる場合はあり、ASTとALTが上昇します。ストレスを受けると交感神経が優位になる一方、肝臓を動かす際に欠かせない副交感神経が機能しないためです。副交感神経が機能しないことで肝細胞が損傷し、中に含まれるASTやALTが血液中に流出すると数値が高くなります。 参考文献 (文献1) 臨床検査のガイドライン JSLM2024|日本臨床検査医学会 (文献2) 関谷千尋・矢崎 康幸・高橋 篤・沼崎 彰・並木 正義 (1979) 腹腔鏡による肝硬度測定に関する研究 ―新しい肝硬度計の試作― | 日本消化器内視鏡学会雑誌 (文献3) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021, Hepatol Res.2024
2025.12.13 -
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「糖尿病はもう治らないのだろうか」 「iPS細胞は糖尿病を治せると聞いたことがある」 糖尿病は、食事療法やインスリン注射などで血糖値をコントロールすることは可能ですが、現在の治療法では根本的な完治には至らず、将来への不安を抱える患者も少なくありません。 しかし近年、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療の研究が進み、インスリンを分泌する膵β細胞を再生して体内で血糖を自律的に調整できる治療法の開発が進められています。 本記事では、現役医師がiPS細胞と糖尿病治療の関係性を詳しく解説します。実用化後の可能性や課題について紹介し、記事の最後には、iPS細胞と糖尿病に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 糖尿病について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 iPS細胞と糖尿病治療の関係性 項目 内容 iPS細胞とは 自分の身体の細胞から作ることができる万能細胞 特徴 さまざまな臓器や組織の細胞に変化できる能力 糖尿病治療での注目点 インスリンを出す膵β細胞を作り直す可能性 1型糖尿病との関係 壊れた膵β細胞を補う再生治療の期待 2型糖尿病との関係 弱った膵β細胞の回復や働きの改善を目指す研究 現状 臨床研究・治験の段階。一般の治療としては未実用 注意点 効果と安定性の確認が必要な発展途中の技術 将来の期待 注射や薬剤に頼らない根本的な治療の可能性 iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、皮膚や血液などから採取した細胞を初期化し、さまざまな細胞に分化させる技術です。 糖尿病では、膵臓の膵β細胞が破壊または機能低下することでインスリン分泌が不足し、高血糖を招きます。iPS細胞を用いれば、失われた膵β細胞を再生し、体内で再びインスリンを生み出す仕組みの回復が期待されています。 日本では1型糖尿病を対象に、京都大学医学部附属病院でiPS細胞由来の膵島細胞シート「OZTx-410」を腹部の皮下に移植する治験が進行中です。また、iPS細胞由来膵島細胞の動物移植でも生着(体内への定着)と機能が確認されています。(文献1) iPS細胞治療は、糖尿病の根本的治療に向けた新たな可能性として注目されています。 iPS細胞を用いた糖尿病治療の可能性 糖尿病治療の可能性 詳細 iPS細胞を用いた糖尿病治療の研究|1型 自分の細胞から作った膵β細胞を移植してインスリンを再び作る治療法 iPS細胞を用いた糖尿病治療の研究|2型 iPS細胞で膵β細胞の働きを回復させ、体の反応を改善する治療法 iPS細胞を用いた糖尿病治療は、失われた膵β細胞を再生し、インスリンを再び体内で作り出すことを目指す研究です。とくに1型糖尿病では、自己免疫によって膵β細胞が破壊されるため、iPS細胞から新たな膵β細胞を移植して補う治療が有望視されています。 一方、2型糖尿病ではインスリン抵抗性と膵β細胞機能低下の両方が関与するため、細胞再生に加え代謝改善も必要となり、研究は慎重に進められている段階です。 以下の記事では、糖尿病の治療について詳しく解説しています。 【関連記事】 【なぜ治らない?】糖尿病が完治しない理由やなってしまったらどうするべきか医師が解説 糖尿病は1型と2型どちらが多い?治療法・それぞれの違いを解説 iPS細胞を用いた糖尿病治療の研究|1型 項目 詳細 治療法について 失われた膵β細胞をiPS細胞から再生し、体内に移植する治療法 研究が進む理由 膵β細胞がほとんど失われるため、細胞再生が有効な治療対象となる点 研究の特徴 自己免疫で壊れた膵β細胞を補い、インスリンを再び作り出すアプローチ 研究が先行する背景 インスリン抵抗性を伴う2型糖尿病よりも理論的に治療設計が明確な点 日本では、iPS細胞を用いた1型糖尿病治療が臨床段階へと進んでいます。京都大学医学部附属病院では、iPS細胞由来の膵島細胞シート(製品名:OZTx-410)を1型糖尿病患者に移植する「医師主導治験」が開始されました。(文献2) また、2025年2月には第1例目の移植手術が行われ、術後1カ月時点の評価では大きな問題は報告されず、患者は退院しています。(文献2) 今後は、インスリン分泌機能や長期的な有効性、免疫反応、合併症の有無を段階的に評価する予定です。初期報告では「大きな問題はない」との結果が示されています。(文献2) 移植後は、移植片の生着と機能維持のために免疫抑制剤を投与します。最大5年間の長期観察が計画されています。(文献3) また、海外では患者自身のiPS細胞由来膵島を移植し、1年以上インスリン注射が不要になった事例も報告されていますが、まだ標準治療には至っていません。(文献4) iPS細胞を用いた糖尿病治療の研究|2型 項目 内容 血糖コントロールが難しい要因 インスリン抵抗性と膵β細胞の機能低下・減少 インスリン抵抗性 筋肉・脂肪・肝臓でインスリンが効きにくくなる状態 膵β細胞の変化 長期高血糖や代謝ストレスによる膵β細胞の疲弊・減少 2つの壁 インスリン分泌不足と作用不足の両立した課題 研究の着眼点 膵β細胞の再生・補填とインスリン抵抗性の改善 研究進行の現状 多面的な改善が必要なため、1型より進行に時間を要する段階 2型糖尿病に対するiPS細胞研究は、1型に比べて臨床試験の開始が遅く、実施件数も限られています。世界の糖尿病に対する幹細胞治療試験の中で、2型糖尿病を対象とするものは少数です。(文献5) 一方で、iPS細胞を用いてインスリン抵抗性の状態を再現する研究も進んでいます。米国ハーバード大学関連機関では、ヒトiPS細胞から作製した細胞を使ってインスリン抵抗性モデルを構築したと報告されています。(文献6) また、iPS細胞由来のβ様細胞を作製する研究は進展していますが、2型糖尿病患者への移植や臨床応用の報告は現時点で限定的です。(文献7) 現在の糖尿病治療との違いとiPS細胞併用の可能性 項目 現在の糖尿病治療 iPS細胞を用いた治療 併用の可能性 治療内容 インスリン注射や経口薬による血糖コントロール 患者自身の細胞から作製したiPS細胞を用いた膵β細胞の再生・移植 免疫抑制剤や薬物療法、生活療法との組み合わせ 対象 1型はインスリン依存状態、2型はインスリン抵抗性と膵β細胞機能低下 膵β細胞を補いインスリン分泌能の回復を目指す治療 血糖管理の相乗効果とインスリン依存度の軽減 血糖コントロール 薬剤による一時的かつ補助的な血糖調整 移植細胞による自然で持続的な血糖コントロール インスリン注射や薬剤使用の減量可能性 リスク・課題 副作用や効果持続の限界 長期安定性、免疫拒絶、コストの課題 適切な患者選択と治療タイミングの確立 (文献8)(文献9) これまでの糖尿病治療は、薬やインスリン注射によって血糖を抑える「管理中心の治療」が主流でした。近年注目されるiPS細胞治療は、失われた膵β細胞を再生し、体が自らインスリンを分泌できる状態を取り戻すことを目指しています。 現在は研究段階にありますが、既存の薬物療法や生活療法と併用することで、将来的にはインスリン注射や薬への依存を減らせる可能性が期待されています。安定性やコストなどの課題は残るものの、糖尿病治療が「症状の管理」から「機能の回復」へと進化する大きな転換期を迎えつつあります。 以下の記事では、iPS細胞で治せる病気について詳しく解説しています。 iPS細胞による糖尿病治療で期待される効果 期待される効果 詳細 膵β細胞の再生によるインスリン分泌機能の回復 失われた膵β細胞をiPS細胞から再生し、インスリンを自ら作り出す仕組みの再構築 インスリン注射や薬剤への依存を減らせる可能性 再生した膵β細胞による自然なインスリン分泌による治療負担の軽減 血糖コントロールが安定し合併症のリスクを軽減できる可能性 持続的なインスリン分泌による血糖値の安定と合併症予防 自己細胞を用いることで拒絶反応のリスクを低減できる可能性 自分の細胞を利用した移植による免疫拒絶の軽減 iPS細胞による糖尿病治療は、失われた膵β細胞を再生して身体が自らインスリンを分泌できるようにし、インスリン注射や薬への依存を減らして血糖コントロールを安定させることを目指しています。 また、自分の細胞を用いるため免疫拒絶のリスクも低く、将来的にはより自然な血糖管理が可能になると考えられています。 リペアセルクリニックは糖尿病に対応している再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しています。 詳しくは、以下の糖尿病に対する再生医療の症例をご覧ください。 膵β細胞の再生によるインスリン分泌機能の回復 人間の体内では、膵β細胞がインスリンを分泌して血糖値を調整しています。しかし、とくに1型糖尿病ではこの細胞が失われ、体内で十分なインスリンを作ることができなくなります。 iPS細胞(誘導多能性幹細胞)は、成人の体細胞を再プログラミングして多能性を持たせたものです。この多能性とは、さまざまな細胞に分化できる能力を指します。現在、iPS細胞を用いた膵β細胞の再生を目指す研究が、世界中で進んでいます。(文献10) 近年では、ヒトiPS細胞から膵β細胞を生成し、動物モデルへ移植して血糖値が改善したという報告もあり、将来的に自らの身体でインスリンを生み出せる可能性が期待されています。(文献10) インスリン注射や薬への依存を減らせる可能性 iPS細胞を用いた糖尿病治療では、体内に膵β細胞や膵島を補うことで、自らインスリンを分泌する力を取り戻し、注射や薬への依存を減らせる可能性が注目されています。 現在の治療は、インスリンの不足を注射や薬で補う方法が中心です。しかし、iPS細胞由来の膵島細胞を移植することで、外部からの補充量を減らすことが期待されます。 実際に、1型糖尿病患者に化学的に誘導したiPS細胞由来膵島細胞を腹部に移植した臨床試験では、移植後75日でインスリンを使わずに済んだ例が報告されています。(文献11) 血糖コントロールが安定し合併症のリスクを軽減できる可能性 iPS細胞から作られた膵β細胞が正常に機能すると、インスリン分泌が改善され、血糖値を安定して保ちやすくなります。 血糖が生理的範囲に近づくほど合併症の発症リスクは低下し、実際に「HbA1c値が1%改善されると、糖尿病関連の合併症および死亡リスクが約21%低下した」という報告があります。(文献12) こうした成果から、iPS細胞による膵β細胞再生は合併症の進行を抑える可能性が示されているのです。 ただし、研究レビューでは「血糖改善や合併症抑制が期待されるものの、現時点では確立された治療法ではない」とされています。(文献13) 自己細胞を用いることで拒絶反応のリスクを低減できる可能性 iPS細胞(誘導多能性幹細胞)の大きな利点のひとつは、患者自身の体細胞(皮膚や血液など)から作製できる点です。 そのため、「本人の細胞=自分のもの」として移植でき、他人の細胞を使う場合に比べて免疫が異物と認識するリスク、拒絶反応の可能性を理論上、低く抑えられます。(文献14) ただし、自己由来のiPS細胞であっても、分化の過程で免疫が反応しうる異常なタンパク質や遺伝子変化が生じる可能性があり、拒絶反応を完全に防止できるわけではありません。(文献15) iPS細胞における糖尿病治療の課題 課題 詳細 移植した細胞の長期的な安定性が確認されていない 移植後の細胞が長期間にわたり正常に働き続けるかの検証段階 免疫拒絶反応の完全な抑制は難しい 自己由来でも免疫反応や拒絶が起こる可能性の残存 実用化後もインスリンや薬物治療を不要にできるとは限らない 治療効果や持続性に個人差があり、補助的治療の継続が必要な可能性 iPS細胞を用いた糖尿病治療は大きな期待を集めていますが、まだいくつかの課題が残っています。 移植した細胞が長期的に安定して働くか、免疫拒絶を完全に防げるかは検証段階です。また、治療後もインスリンや薬物が必要となる場合があり、現時点では補助的治療としての位置づけです。 以下の記事では、iPS細胞の作り方について詳しく解説しています。 内部リンク:片桐KW(ips細胞作り方) 移植した細胞の長期的な安定性が確認されていない iPS細胞を用いた糖尿病治療では、移植された膵β細胞や膵島が免疫反応や代謝ストレスなどの体内環境に適応し、長期にわたり機能を維持することが求められます。 しかし、幹細胞由来の治療では移植後に機能低下が起きる例が、動物実験や初期臨床研究で報告されています。(文献16) また、高血糖や酸化ストレス、血管新生不良などにより細胞が疲弊し、時間とともに働きが弱まる可能性も課題のひとつです。(文献17) さらに、移植部位で十分な血流や栄養が確保されない環境や、わずかに残る免疫反応も、移植細胞の長期生存と機能維持を困難にしています。(文献16) 免疫拒絶反応の完全な抑制は難しい 課題 詳細 拒絶反応の仕組み 他人の細胞や臓器を移植すると、免疫が異物と認識して攻撃する現象 自己由来iPS細胞の特徴 自分の細胞をもとに作ることで、拒絶反応のリスクを下げる可能性 免疫反応が起こる理由 細胞作製の過程で生じるタンパク質の変化や、移植部位ごとの免疫環境の違い 研究段階の技術 HLA操作や免疫遮断コーティングなど、免疫耐容化を目指す技術の開発 現状の課題 完全な免疫反応の抑制はまだ実現しておらず、安定性評価の途上 (文献18)(文献19) iPS細胞を使うことで、拒絶反応のリスクを減らせる可能性があります。自分の細胞を利用する点は大きな利点です。 しかし、作製過程での変化や移植環境の違いにより、免疫反応を完全に防止できるわけではありません。今後は免疫耐容技術の進歩とともに、長期的に安定した治療法の確立が期待されています。 実用化後もインスリンや薬物治療を不要にできるとは限らない 課題・要因 内容 個人差による効果の違い 移植細胞の生着や働きに個人差があり、インスリン分泌の回復にばらつきが生じる可能性 移植細胞の長期安定性 細胞が長期間インスリンを分泌し続けられるかの検証段階 免疫拒絶のリスク 自己由来の細胞でも免疫反応が起きる場合があり、免疫抑制の必要性 病状や合併症の影響 糖尿病の進行や他の合併症により追加治療が求められる可能性 技術発展の途上段階 治療法の発展が続く段階で、既存治療との併用が現実的選択 (文献18) iPS細胞を用いた糖尿病治療は、膵β細胞を再生しインスリン分泌を回復させることを目指す治療法です。すでに臨床試験が進み、有望な結果も得られています。 しかし、移植細胞の働きには個人差があり、すべての患者で十分なインスリン分泌が得られるとは限りません。また、細胞が長期にわたり安定して機能するかや、免疫反応を完全に抑えられるかも課題として残されています。 さらに、糖尿病の進行や合併症の影響も受けるため、実用化後もインスリン注射や薬物治療を完全に不要にできるとは限りません。 iPS細胞を用いた糖尿病治療を受ける方法 手順 内容 1.医師との相談 糖尿病の状態や治療内容を確認し、iPS細胞治療の対象となる可能性の確認 2.臨床研究・治験の募集を探す 大学病院などで実施中の臨床研究・治験の情報を確認 3.適格性の確認 治験参加条件(糖尿病のタイプ、既往歴、年齢、健康状態など)の確認 4.同意と登録 説明を受けた上で同意を行い、治験への正式登録 5.移植・治験開始 細胞移植や治療を実施し、術後の定期的な通院・経過観察の実施 iPS細胞を用いた糖尿病治療はまだ標準治療ではなく、臨床研究・治験の段階にあります。国内では1型糖尿病を対象としたiPS細胞由来膵島細胞シート移植の治験が進められていますが、実用化や保険適用は確立していません。 治験参加には、病状や健康状態など厳密な基準を満たす必要があり、全員が参加できるわけではありません。また、治験は有効性を確認する研究であり、治癒やインスリンの完全不要化を保証するものではありません。 また、長期の通院や検査が必要となる場合もあります。iPS細胞を用いた治療は主治医と十分に相談し、将来の選択肢のひとつとして考えることが大切です。 iPS細胞は糖尿病の根本的治療への新たなアプローチ iPS細胞を用いた糖尿病治療は、失われた膵β細胞を再生し、体内でのインスリン分泌機能の回復を目指す新しい治療法として注目されています。従来の治療が血糖コントロールを中心としていたのに対し、身体の働きを根本から立て直す点が特徴です。 現在はまだ研究段階ですが、国内外で臨床試験が進められており、実用化への期待が高まっています。今後、安定性と有効性が確立されれば、糖尿病治療のあり方を大きく変える可能性があります。 糖尿病についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、糖尿病に対し再生医療を応用した治療を提供しています。 再生医療を用いた糖尿病治療は、幹細胞によって膵臓のインスリン分泌機能を修復・再生し、根本的な治療を目指す方法です。自己の脂肪組織などから採取した幹細胞を培養して点滴投与することで、従来の症状を抑える治療とは異なり、膵臓の働きの回復を目指します。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 iPS細胞と糖尿病に関するよくある質問 糖尿病の治療でiPS細胞のみに期待するのは適切でしょうか? 現時点で、iPS細胞治療にのみ効果を期待するのは適切ではありません。iPS細胞を用いた糖尿病治療は、将来的に根本的な回復につながる可能性を持つ一方で、まだ研究や臨床試験の段階にあり、一般的な医療としては確立していません。 現在の糖尿病治療(食事・運動・薬物・インスリン療法など)は、血糖コントロールと合併症の予防に欠かせません。引き続き継続することが大切です。 以下の記事では、糖尿病予防に効果的な運動について詳しく解説しています。 iPS細胞の治療が適用できないケースはありますか? iPS細胞治療は、現在主に1型糖尿病でインスリン分泌がほとんどない患者を対象に研究が進められています。 2型糖尿病や重い合併症がある場合、免疫抑制が難しい場合などは現時点で適用外です。これらは限られた条件下で行われる研究段階の治療であり、すべての患者が受けられるわけではありません。 参考文献 (文献1) 【1型糖尿病の最新情報】iPS細胞から作った膵島細胞を移植 日本でも治験を開始 海外には成功例も|糖尿病ネットワーク (文献2) 「iPS由来膵島細胞シート移植に関する医師主導治験」の開始について|京都大学医学部附属病院 FOUNDED IN 1899 (文献3) ヒトiPS細胞由来膵島細胞を1型糖尿病患者に移植 医師主導治験の第1症例目を実施 京都大学病院|糖尿病診療・療養指導のための医療情報ポータル 糖尿病リソースガイド (文献4) 《Cell》 全球首例自體iPS細胞療法逆轉第一型糖尿病、可生成胰島素1年多|Global Bio (文献5) From bench to bedside: future prospects in stem cell therapy for diabetes|BMC Part of Springer Nature (文献6) Scientists create human model of insulin resistance using iPS cells|HSCI HARVARD STEM CELL INSTITUTE (文献7) From bench to bedside: future prospects in stem cell therapy for diabetes|PMC PubMed Central® (文献8) The Prospect of Induced Pluripotent Stem Cells for Diabetes Mellitus Treatment|PMC PubMed Central® (文献9) 2型糖尿病はどのように治療するのか?|一般社団法人 日本糖尿病学会 (文献10) Stepwise differentiation of functional pancreatic β cells from human pluripotent stem cells|PMC PubMed Central® (文献11) Transplantation of chemically induced pluripotent stem-cell-derived islets under abdominal anterior rectus sheath in a type 1 diabetes patient||PMC PubMed Central® (文献12) Transplantation of chemically induced pluripotent stem-cell-derived islets under abdominal anterior rectus sheath in a type 1 diabetes patient|Cell A Cell Press journal (文献13) Treatment of Diabetes Mellitus Using iPS Cells and Spice Polyphenols|PMC PubMed Central® (文献14) Autologous Induced Pluripotent Stem Cell–Based Cell Therapies: Promise, Progress, and Challenges|PMC PubMed Central® (文献15) The Immunogenicity and Immune Tolerance of Pluripotent Stem Cell Derivatives|frontiers (文献16) Islet Cell Replacement and Regeneration for Type 1 Diabetes: Current Developments and Future Prospects|Springer Nature Link (文献17) Stem cell therapy for diabetes: Advances, prospects, and challenges|PMC PubMed Central® (文献18) ヒトiPS細胞から膵島をつくり移植 血糖値の正常化に成功 レンコン状ゲルで細胞移植 1型糖尿病の根治をめざす|糖尿病ネットワーク (文献19) Fit-For-All iPSC-Derived Cell Therapies and Their Evaluation in Humanized Mice With NK Cell Immunity|frontiers
2025.12.13 -
- 肝疾患
- 内科疾患
肝硬変は、肝炎やアルコール性肝疾患、脂肪肝などが進行した結果、肝臓に線維化が起こり機能が低下する病気です。初期段階では自覚症状が見られないため、症状が現れた時には既にかなり進行していることがあります。 肝機能の悪化や肝がんへの進行を防ぐには、早期発見・早期治療が重要です。 本記事では肝硬変の原因・症状・治療法・予防法について解説します。 なお、肝硬変を含む肝臓疾患に対しては再生医療という治療法があります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しているので、肝臓疾患でお悩みの方はぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肝硬変とは?肝臓が線維化して機能が低下する重篤な疾患 肝硬変とは、肝臓が長期に及ぶ慢性的な飲酒やさまざまな疾患などにさらされた結果、肝臓が線維化と再生結節の形成により機能が衰える疾患を指します。肝臓は再生能力の高い臓器で、約7割を切除しても再生されるのが特徴です。 ただ、飲酒や疾患の影響で日常的に損傷を受け続けた場合、肝臓に炎症が発生します。炎症が発生した際にも修復は進むものの、その際にたんぱく質の一種であるコラーゲンが生成されます。コラーゲンが過剰に増えて肝臓自体が全体的に線維化が進んだ状態が肝硬変です。 肝硬変の原因 肝硬変の原因には、さまざまな要素が考えられるため、日頃から十分な注意を要します。肝硬変の原因としてよく挙げられるものが、以下のものです。 長期の過剰なアルコール摂取 乱れた生活習慣 ウイルス感染 薬物による肝障害 以上の原因をあらかじめ知った上で、肝硬変のリスクを下げることが大切です。 長期の過剰なアルコール摂取 肝硬変の原因の一つに、長期にわたる過剰なアルコールの摂取があります。 アルコールは肝臓で代謝されますが、その過程でアセトアルデヒドという有害物質が生成され、肝細胞を傷つけます。継続的な大量飲酒により肝細胞の損傷が繰り返されると、肝臓に慢性的な炎症が生じ、やがて肝硬変に進行します。 アルコール性肝疾患は段階的に肝硬変に進行する疾患です。まず肝臓に脂肪が蓄積するアルコール性脂肪肝が起こり、飲酒を続けることでアルコール性肝炎へと進行、最終的にアルコール性肝硬変に至ります。 なお、2018年から2021年の調査によると、日本国内における肝硬変の原因の内訳は以下のとおりです。 アルコール性肝疾患:35.4% C型肝炎:23.4% NASH:14.6% B型肝炎:8.1% (文献1) このように、近年はアルコール性肝疾患が肝硬変の大きな原因となっています。(文献1) 肝硬変に進行する前のアルコール性肝炎の初期症状について解説している以下もご覧ください。 乱れた生活習慣 乱れた生活習慣も肝硬変の原因の一つです。具体的には、日頃の過度なストレスや運動不足、バランスの取れていない食生活などが挙げられます。 生活習慣が乱れて肥満や糖尿病のような生活習慣病を発症すると、肝臓に脂肪肝ができるケースがあります。この脂肪肝も何の対策もせずに放置すると、肝炎を経て肝硬変に発展するリスクがあるため、注意が必要です。 ウイルス性肝炎 ウイルス性肝炎から肝硬変への進行は、一般的に感染から20~30年程度の経過を経て起こります。とくにC型肝炎が肝硬変まで進行した場合、肝がんへの進展リスクが高くなるため注意が必要です。 近年、C型肝炎に対する抗ウイルス薬治療の進歩により、ウイルスの排除が可能となっています。早期にウイルスを排除することで、肝硬変や肝がんへの進行を大幅に抑制できるため、感染が判明した場合は専門医による適切な治療を受けることが重要です。 B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎は、肝硬変の主要な原因の一つです。これらのウイルスが長期間にわたって肝臓に炎症を起こし続けることで、肝細胞の壊死と再生が繰り返され、最終的に肝硬変に進行します。 とくに、高齢者や糖尿病の方は肝臓がんまで進行するリスクが高いため、注意が必要です。 薬物による肝障害 薬物の影響で発症した肝障害が肝硬変の原因になる場合があります。医薬品やサプリメントなどを適正用量を超えて摂取すると、肝臓は損傷を受けます。 また、薬物性肝障害には個人の体質が大きく関わるケースが多く、同じ薬剤でも人によって反応が全く異なります。体質に合わない薬剤では、服用量に関係なく肝障害が起こることがあり、事前の予測は非常に困難です。 肝硬変の症状 肝硬変は進行度により「代償性肝硬変」と「非代償性肝硬変」に分類されます。 代償性肝硬変とは、肝臓の一部が損傷を受けていても、残った健康な肝細胞が機能を補っている状態のことです。この段階では重篤な症状は現れず、多くの患者さんは無症状です。ただし、倦怠感・疲労感・食欲不振などの軽微な症状を感じることがあります。 これらの症状は風邪や日常的な疲労と区別がつきにくく、肝硬変と気づかずに見過ごされることが多いため、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。 病気がさらに進行し非代償性肝硬変になると、以下のような症状が現れます。 腹水 黄疸(おうだん) 食欲不振や体重減少 くも状血管腫 手掌紅斑(しゅしょうこうはん) こむら返り 女性化乳房 これらの症状について解説します。 腹水 腹水はお腹を包む膜(腹膜)とお腹周りの臓器の間にある腹腔に、過剰に水が溜まる症状です。肝硬変の場合、門脈(血管)における圧力の高まりと、血液中のアルブミンの低下が腹水の主な要因です。 肝硬変の進行によって肝臓の機能が衰えると、消化器官から肝臓に向かう血管である門脈の圧力が高まって、流れが悪くなります。すると血液に含まれる成分の血漿(けっしょう)が血管の外に漏れるため、腹水を生じます。 また、肝機能の低下は、血液に含まれるアルブミンと呼ばれるたんぱく質を減少させます。アルブミンには血液中の水分を維持するはたらきがあるのが特徴です。もしアルブミンが減少すると、水分が血管から腹腔に漏れ出て腹水が発生します。 黄疸(おうだん) 黄疸とは、疾患の影響で皮膚や、目の白い部分である眼球結膜が黄色くなる症状です。黄疸もまた、肝硬変の症状が進んだ際に見られます。 黄疸の発生には、赤血球に含まれるビリルビンと呼ばれる色素が関係しています。血液に含まれる赤血球は古くなって機能しなくなると、肝臓で分解されるのが一般的です。赤血球の分解で現れたビリルビンは体外に排出されますが、肝臓の機能が衰えると血液中のビリルビンが増加します。そのために皮膚や眼球結膜が黄色くなります。 なお、皮膚などが黄色くなるほかにも、尿が異常に濃い点や便が白くなる点も特徴です。 食欲不振や体重減少 肝機能が低下した結果、食物に含まれる栄養素の消化吸収能力が衰えるとともに、食欲不振も起こります。十分な栄養を摂取できないため、体重減少や筋肉量の低下、慢性的な疲労・倦怠感が生じます。 くも状血管腫 くも状血管腫とは、皮膚上に発生する、毛細血管が赤い点からクモの足のように広がって見える症状です。肝硬変の場合、首や肩、二の腕などの上半身に起こります。 肝硬変によってくも状血管腫が発生する流れは、具体的には解明されていません。ただ、肝機能の低下でホルモンの代謝が進まなくなったことで発生すると考えられています。 手掌紅斑(しゅしょうこうはん) 手掌紅斑(しゅしょうこうはん)とは、手の親指や小指の付け根部分をはじめ、手のひらに生じる赤い斑点です。紅斑自体に痛みなどの特別な症状はないものの、肝硬変が進んでいるサインとして出現するケースがあります。 こむら返り 夜中寝ている間などに足がつるこむら返りも、肝硬変によって生じる症状です。肝硬変の進行で肝機能が低下すると、体内の水分のバランスや電解質の調整がうまくいかなくなります。 加えて、肝硬変が進むと必須アミノ酸メチオニンの消費量が減ります。メチオニンは筋肉を動かす際に欠かせないタウリンやカルニチンを生み出すのに必要です。しかし、メチオニンの消費量が減る分、2つの物質の生成量も減るため、こむら返りが起きるケースが増えると考えられています。 以下の記事では、こむら返りと肝硬変との関係性について解説しているので、あわせてご覧ください。 女性化乳房 女性化乳房とは、男性の乳房や乳首が肥大化する症状です。男性にも女性ホルモンのエストロゲンはあるものの、通常であれば肝臓の機能によって分解されるため、乳房などは肥大化しません。 しかし、肝硬変を抱えている男性の場合、エストロゲンの分解能力も衰えています。このため、残ったエストロゲンのはたらきによって、男性の乳房や乳首が肥大化する女性化乳房が発生する仕組みです。 肝硬変患者の余命|腹水が溜まった場合は? 肝硬変を診断された際の余命は、病気の進行度によって大きく異なります。腹水が溜まるなどの症状が見られる場合は、肝硬変がある程度進行した状態です。 医学的な重症度分類に基づいた研究では、肝硬変患者の3年後も生存している割合は以下のように報告されています。(文献2) 症状が中程度まで進んだ場合:約71% 症状が重度まで進んだ場合:約31% ただし、実際の経過は患者様の年齢、他の病気の有無、治療への反応などにより大きく異なります。また、腹水などの症状が現れていても、適切な治療を継続することで症状の改善や病気の進行を遅らせることが期待できます。 肝硬変の検査・診断方法 肝硬変への対策には、こまめに検査や診断を受けることが大切です。肝硬変に対して用いられる検査や診断には、次のような方法があります。 血液検査 画像診断 腹腔鏡検査・肝生検検査 それぞれの検査や診断の特徴を知り、有効活用しましょう。 血液検査 血液検査では、肝機能に関する複数の指標を測定し、肝硬変の診断や病態の評価を行います。主な検査項目と基準値は以下のとおりです。 指標 指標が意味するもの 正常値 異常値 AST ・肝細胞の破壊度 ・肝臓の炎症の程度 13~36U/L 51U/L以上 ALT ・肝細胞の破壊度 ・肝臓の炎症の程度 8~36U/L 51U/L以上 γ-GTP ・アルコール性肝障害 ・胆汁の分泌がうまくいっているかどうか 9~47U/L 101U/L以上 血小板数 ・肝臓の線維化の程度 ・門脈圧亢進の指標 15.8~34.8 10⁴/μL 9.9以下・40.0以上 10⁴/μL アルブミン値 ・肝臓でつくられるたんぱく質の量 4.1~5.1g/dL 3.6g/dL以下 (文献3)(文献4) なお、血液検査は会社や自治体、学校の健康診断の一環でも行われています。定期的な健康診断の受診も、肝硬変対策として大切です。 画像診断 血液検査で肝機能の数値に異常がある場合、より精密な画像診断が必要です。画像診断はCTやMRI、腹部超音波など専門の機械によって確認されます。 診断時に撮影された画像をもとに、肝臓のサイズの変化や表面の凹凸、異常な血管の有無をチェックします。肝臓のサイズや形、表面がゴツゴツしているなどの変化が見られる場合、肝硬変の疑いが考えられます。 腹腔鏡検査・肝生検 画像診断とともに腹腔鏡検査や肝生検も行われます。腹腔鏡検査ではお腹に穴を空けた上で、腹腔鏡(内視鏡)を入れて、肝臓の状況を医師が映像で確認する検査方法です。この方法と今までの他の診断結果から肝硬変かどうかを総合的に判断します。 一方、肝生検は、肝臓組織の一部を採取して顕微鏡で観察する方法です。ただし、現在では画像や映像、超音波を用いた方法が主流になっており、肝生検には出血リスクがあることから採用されるケースは必要性が高い場合に限られています。 肝硬変の治療法 肝硬変の診断を受けた場合は、なるべく早い段階での治療が重要です。主な治療法として、以下の方法が挙げられます。 生活習慣の見直し 肝炎の治療 腹水の治療 肝臓の移植 再生医療 肝硬変の治療法を知れば、今後どのように肝硬変を治していくのかをイメージできます。 生活習慣の見直し 肝硬変の治療では、生活習慣の見直しが欠かせません。肝硬変になった際に生活習慣を見直す方法として、以下が挙げられます。 禁酒 食事療法 軽めの運動 肝硬変になっている場合は、禁酒が重要です。とくにアルコール性肝硬変を診断された場合は、それ以上の飲酒は症状をさらに悪化させ、合併症や命の危険のリスクを高めます。肝機能の数値が正常値に下がるまでお酒は控えましょう。 また、肝硬変を改善するためには普段の食事内容の見直しも大切です。野菜や果物でビタミン・食物繊維を、大豆類で良質なタンパク質を摂取しましょう。1日3回、腹八分目でよく噛んで食べると肝臓への負担を軽減できます。 とくに腹水やむくみが見られる場合は、これ以上腹水が増えないように1日に摂取する水分や塩分の制限も大切な要素です。水分は1日1リットル、塩分は1日5~7gに抑えます。(文献5) 運動は軽めに留めることが大切です。肝機能が低下している状態では、激しい運動は体調悪化を招く可能性があります。ただし、休んでいるだけでは筋肉が衰えるため、軽い体操などで筋力を維持しましょう。 肝炎の治療 肝硬変の治療では、原因に応じた肝炎の治療も行います。一言で肝炎といってもさまざまな原因があるため、それぞれに対して適切な方法で治療する必要があるためです。(文献6) 原因 投与する薬剤 B型肝炎ウイルス 抗ウイルス薬の投与: エンテカビルやテノホビルアラフェナミドフマル酸塩など C型肝炎ウイルス 経口抗ウイルス薬 (医師との相談が必要) 脂肪性肝炎 禁酒・食事療法・運動療法 自己免疫性肝炎(免疫異常による肝炎) 副腎皮質ステロイドの投与 なおB型肝炎やC型肝炎の原因ウイルスに対して抗ウイルス薬の効果が見られないときは、肝細胞の破壊を抑える薬剤の投与や、体内の鉄分を減らす瀉血(しゃけつ)療法がとられます。 腹水の治療 腹水が溜まっている状況であれば、塩分の制限とともに、利尿内服薬やアルブミン剤も投与されます。利尿内服薬は尿の生成を促し、体内の余分な水分の排出が期待できる薬剤です。もし通常の利尿内服薬で効果が見込めない場合は、より強力な利尿作用があるトルバプタンなどを使用します。 アルブミン製剤も腹水の改善によく使われる薬剤で、点滴で投与するのが一般的です。腹水を発症している状態は体内の水分量を調整するアルブミンが減少しているため、補うことで腹水の改善効果が期待できます。 肝臓の移植 薬剤の投与などの方法で症状の改善が期待できないときは、肝臓移植を行います。条件に合致する健康な親族の肝臓の一部を移植し、肝硬変自体の改善を図る方法です。 移植の判断は、病状の深刻度や移植しなかった場合に予想される死亡率をもとに判定されます。 再生医療 肝硬変の治療には再生医療をもあります。再生医療では「幹細胞治療」と「PRP(多血小板血漿)療法」と呼ばれる手法が一般的です。 幹細胞治療では、患者様の脂肪から採取した幹細胞を培養してから、患部に投与します。また、PRP療法は患者様の血液から採取した血漿を遠心分離によって血小板の濃度を高め、患部に注射する治療法です。 幹細胞は培養に1カ月ほどかかりますが、施術はどちらも短時間で終了します。入院・手術を必要としないのも特徴です。 当院リペアセルクリニックの肝硬変に対する治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 また、再生医療についての詳細は、以下のページをご覧ください。 肝硬変の予防法 肝硬変を予防し、肝疾患の進行を防ぐには、日常生活での取り組みが重要です。 以下の予防法を実践して、肝臓の健康を守りましょう。 適量の飲酒 バランスのとれた食事 定期的な健康診断の受診 これらの生活習慣を継続することで、肝疾患のリスクを大幅に減らせます。 適量の飲酒 普段から飲酒の習慣がある方は、飲む量の調整が欠かせません。多量のアルコールは肝臓を傷つけるとともに、脂肪肝から症状が進行すれば肝硬変になるリスクがあります。 発症のリスクを抑えるには、お酒と上手に付き合うことが大切です。1日に飲むお酒の量に上限を設けたり、週に1、2日は休肝日を設けて肝臓をいたわるのがポイントです。 なお、厚生労働省では「節度ある適度な飲酒」として、アルコール度数5%のビールであれば1日に中瓶1本分(500ml)、アルコール度数15%の清酒であれば1合180mlとしています。(文献7) バランスのとれた食事 無理な飲酒を抑えるとともに、栄養バランスのとれた食事を心掛けることも肝硬変の予防に役立ちます。 食事のメニューは主食・主菜・副菜の組み合わせを意識し、食物繊維や良質なたんぱく質の多い食材を使った料理を食べることが大切です。 なお食べる量や回数も、すでに肝硬変を発症している場合と同じく、1日3回・腹八分目を心掛けます。 一方で脂肪や塩分の多い食事は、肝臓を傷つける恐れがあるため、なるべく避けるべきです。添加物を多く含むインスタント食品も推奨できません。 定期的な健康診断の受診 肝硬変を予防するために、定期的な健康診断を受けましょう。肝硬変は症状が現れにくいため、血液検査により脂肪肝や慢性肝炎の段階で早期発見することが大切です。 健康診断で肝機能異常が見つかった場合は、専門医による詳しい検査を受けて原因を特定します。 脂肪肝であれば生活習慣の改善により改善可能で、ウイルス性肝炎の場合は抗ウイルス薬による治療でウイルスを排除できます。これらの治療により、肝硬変への進行を防ぐことができます。 年1回の健康診断を欠かさず受診し、異常が指摘された場合は早めに医療機関を受診しましょう。 まとめ|肝硬変の治療は早めの定期検診や生活習慣の見直しで対策を 肝硬変は、肝炎やアルコール性肝疾患、脂肪肝などが進行した病気です。症状が進行するまでほとんど自覚が無く、黄疸や腹水などのはっきりした症状が現れる頃には、病気が進行しています。さらに肝硬変まで進行すると完治が難しく、命にもかかわることがあるため、定期的な健康診断による早期発見・早期治療が重要です。 肝硬変の治療法には、食事や飲酒量などの生活習慣の改善や薬剤の投与、肝臓移植、再生医療などの手段もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、肝硬変を含む肝臓疾患に対する再生医療を提供しております。肝硬変でお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEにご登録いただき、再生医療に関する症例をご確認ください。 肝硬変に関するよくある質問 肝硬変の原因で最多のものは? 近年の研究では、国内で発症する肝硬変の原因として過剰なアルコール摂取が最多である結果が出ています。 アルコール性肝疾患:35.4% C型肝炎:23.4% NASH:14.6% B型肝炎:8.1% (文献1) 肝硬変を予防するためには、アルコールの摂取量を適切な範囲に抑えることが大切です。 肝硬変で死ぬ前は苦しい? 進行した肝硬変では多くの場合、苦しさを伴う症状が現れます。 肝硬変の末期症状は腹水や黄疸、浮腫(むくみ)などが深刻化している状態です。なかでも腹水は症状の進行によって腹部が膨らみ、呼吸困難さえも引き起こします。 また肝機能の低下で体内のアンモニアが分解されないまま脳に達すれば、肝性脳症に陥る場合もあります。肝性脳症では昏睡状態になるケースさえあるほど危険な症状です。 参考文献 (文献1) Hirayuki Enomoto et al. (2024) Etiological changes of liver cirrhosis and hepatocellular carcinoma-complicated liver cirrhosis in Japan: Updated nationwide survey from 2018 to 2021”| Hepatol Res. (文献2) 肝硬変患者の生命予後の検討|厚生労働省 (文献3) 臨床検査のガイドライン JSLM2024|日本臨床検査医学会 (文献4) 判定区分 2025年度版|日本人間ドック・予防医療学会 (文献5) 肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献6) 肝臓病の理解のために |日本肝臓学会 (文献7) アルコール|厚生労働省
2025.11.26







