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- PRP治療
- 免疫細胞療法
PRP療法(多血小板血漿療法)とは、患者様自身から採取した血液から『多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma:PRP)』を抽出し、損傷部位に注射して治療を行う再生医療の一種です。 PRP療法の対象は、関節や筋肉、腱、靭帯の疾患・外傷をはじめ、骨治癒の促進や手術創部の治療補助、美容医療における肌のシワ・たるみまで多岐に渡ります。侵襲の少なさから世界的にも注目されている治療法です。 さまざまな分野で行われるPRP療法ですが、以下の疑問を持つ方もいるでしょう。 「良い話ばかり見るけれど、デメリットはないの?」 「本当に効果はあるの?痛みはどれくらい?」 「実は費用が高いのでは?」 この記事では、PRP療法の6つのメリットと4つのデメリットを解説します。治療に不安のある方は、ぜひ参考にしてください。 PRP療法のメリット|患者様の声も合わせて紹介 最初にPRP療法のメリットを見てみましょう。 認可を受けたクリニックだけが施術できるから安心 施術できる部位(肩・肘・膝・手首・足首など)が多い 副作用(アレルギー反応・合併症など)のリスクが少ない 手術を行わないので最短30分で施術が完了 通院だけで治療でき日常生活に復帰しやすい プロアスリートの成功症例も多数あるので信頼がおける 患者様の声も交えて、この6項目について紹介します。 1.認可を受けたクリニックだけが施術できるから安心 再生医療の一種であるPRP療法は、厚生労働省の認可を受けたクリニックだけが行える治療法です。「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」によって、「再生医療等提供計画(治療)」を作成して審査を受け、厚生労働大臣へ提出するよう定められています。 リペアセルクリニックも「第二種・第三種再生医療提供計画」を厚生労働省に届出し、受理されています。PRP療法は第三種に分類されており、以下のページで届出内容を確認可能です。 参照:届出された再生医療等提供計画(治療)の一覧|厚生労働省 2.施術できる部位(肩・肘・膝・手首・足首など)が多い PRP療法は、以下のように幅広い部位・疾患に対応できるのが特徴です。これらは一例であり、書かれていない疾患や、難治性の疾患にも対応可能な場合があります。 部位 疾患 肩 四十肩・五十肩 肩腱板損傷 インピンジメント症候群 肘 肘内側(ゴルフ肘)上顆炎 肘外側(テニス肘)上顆炎 手首 手首の靭帯損傷 TFCC損傷 股関節 変形性股関節症 膝 変形性膝関節症 半月板損傷 膝靭帯損傷 膝蓋腱炎(ジャンパー膝) オスグッド・シュラッター病 足首 アキレス腱炎 足首靭帯損傷 足底腱膜炎 筋肉 肉離れ(筋断裂) またPRP療法は、肌の再生作用にも効果があります。PRPに含まれる成長因子が皮膚組織の修復や再生にはたらくため、美肌治療としても受けていただけます。 3.副作用(アレルギー反応・合併症など)のリスクが少ない PRP療法は、患者様自身から採取した組織・細胞で自分を治す方法です。 ワクチン接種のような身体に異物を注射するものとは異なり、アレルギー症状などの拒絶反応は引き起こしにくく、副作用は非常に少ないとされています。 また、PRP療法は手術を伴わないため、全身麻酔によるアレルギー症状や手術部の感染など合併症の心配もありません。PRP療法は手術と比較し、安全性の観点でメリットが多い治療法です。 患者様からも、以下のメリットを感じるとの声が挙げられています。 手術自体のリスクや、感染症の不安が無い 副作用が少ない 4.手術を行わないので最短30分で施術が完了 PRP療法において、患者様の体への負担は「血液の採取」と「患部への注射」だけです。手術を行わないため、施術は最短30分で完了します。 身体にメスを入れて切ったり、開いたりといった複雑な操作をしないため、安全に配慮した処置ができます。処置の痕が残りにくいことも特徴です。 実際にPRP治療を行った患者様からは、以下の感想をいただくことがあります。 注射だけの処置で、処置の痛みも一瞬だった 処置がすごく短時間で簡単に終わったのでびっくりした 5.通院だけで治療でき日常生活に復帰しやすい PRP療法は通院による治療が可能です。さらに、PRP療法は実施後から日常生活に戻れるため、患者様への負担が非常に少ない治療法です。 処置当日は、施術部位の感染予防のために入浴やシャワーなどを控えていただくことが多いですが、翌日からは入浴やシャワーも可能になります。激しい運動は数日間控える必要はありますが、軽い動作は問題ありません。 手術を行う場合は、数日から数週間の入院期間に加え、リハビリ期間も必要なことから、日常生活への負担も大きくなりがちです。一方PRP療法では、日常生活への影響を最低限に抑えて治療できます。実際に治療を受けた患者様からは、以下のような声も多く聞かれます。 入院の必要が無い 通院だけで処置を終えることができ、家族の心配や仕事に支障をきたさない 学生の場合は、入院による学業の遅れや、単位の不足など進学や留年の心配がない 家族や友人との時間を犠牲にしない 6.プロアスリートの成功症例も多数あるので信頼がおける PRP療法は、けがをしたプロアスリートにも選ばれています。 プロアスリートは、治療の効果だけでなく、治療後にパフォーマンスを維持できるかも重視しています。彼らに選ばれるPRP療法は、信頼できる治療法といえるでしょう。プロアスリートとPRP療法について興味のある方は、以下の記事をご覧ください。 PRP療法のデメリット ここからは、PRP療法のデメリットを紹介します。以下の順で確認していきます。 効果の程度・現れるまでの期間に個人差がある 処置部位に腫れ・痛みが出ることがある 治療にかかる費用負担が大きくなりやすい 一部の条件に該当する方は治療を受けられない 1.効果の程度・現れるまでの期間に個人差がある PRP療法の効果の程度や現れる時期、効果の持続時間には個人差が見られます。 ただ、個人差自体はどのような治療にも存在しており、PRP療法に特有のデメリットではありません。むしろ、PRP療法は患者様自身の血液を利用するため、この個人差は副作用のリスクが少ないメリットの裏返しとも考えられます。 2.処置部位に腫れ・痛みが出ることがある PRP療法を実施した後の数日間は、処置した部位に痛みや腫れ、発赤などの症状が出ることがあります。この痛みや腫れについても個人差があり、まったく腫れや痛みを実感しない方もいれば、数日間腫れが続く方もいます。もっとも、腫れや痛みは一過性のものであり、抗生物質などの治療を行わなくても自然経過によって改善するケースが多いといわれています。 まれに処置部位が感染するケースもあり、抗生物質による加療が必要なこともあります。ただし、このリスクはPRP療法に限らず、ワクチン接種などの注射を伴う医療行為全般に共通するものです。 腫れや痛みが出る可能性はありますが、PRP療法は手術を伴わないため、手術療法で起こり得る再手術や入院期間の延長といったリスクがありません。この点から、腫れや痛みはデメリットではあるものの、手術の副作用と比べると軽微です。 3.治療にかかる費用負担が大きくなりやすい 再生医療であるPRP療法は、まだ新しい治療法であるため、現在の日本では健康保険の適応がない疾患が多いです。PRP療法の処置のほか、処置後にリハビリテーションを行う場合も自費負担になることもしばしばあります。 例としてリペアセルクリニックの治療費用を見てみましょう。すべて自由診療で治療しており、PRP療法を1回行った場合の費用は165,000円(税込)です。このほか、専門医による初回診察や感染予防のための血液検査にも費用がかかります。 しかし、PRP療法は入院しなくても処置ができます。保険適用の手術でも、入院費用も含めると高額になる傾向があります。それらを踏まえると、保険適用の手術よりPRP療法の処置費用の方が安く済むケースもあります。 4.一部の条件に該当する方は治療を受けられない PRP療法は安全性の高い治療法ですが、すべての方が受けられるわけではありません。以下に当てはまる方は、治療を受けられない場合があります。 心臓や肝臓に疾患がある方 感染症や血液疾患がある方 妊娠をされている方 その他、カウンセリングで医師が不適当と判断した方 最終的には、患者さん一人ひとりの状態を慎重に見極め、医師が判断します。気になることがありましたら、遠慮なく担当医へご相談ください。 まとめ|PRP療法のメリット・デメリットが気になる方はお気軽にお問い合わせください PRP療法は、手術と比べて合併症や副作用のリスクが少なく、安全性が高い点が大きなメリットです。入院不要で施術時間も短いため、日常生活への影響も最小限で済みます。 一方で、効果の個人差や費用面など、PRP療法にもデメリットがあります。どんな治療法でもいえることですが、受診した医療機関や主治医から十分な説明を受けて、自分なりに理解した上で決めていきましょう。 リペアセルクリニックでも、PRP療法に関するご相談を受け付けています。患者様ごとのメリット・デメリットについても丁寧にご説明しますので、お気軽にお問い合わせください。
2022.06.08 -
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膝の痛み|最新の再生医療(幹細胞治療とPRP療法)という治療法について このページでは変形性ひざ関節症について解説します。「変形性ひざ関節症」は、実は全国で3千万人ぐらいの方が悩まれている膝の病気です。ここでは、その症状だったり治療の仕方、そして最新の治療法である再生医療(幹細胞治療とPRP療法)について詳しく解説してまいりましょう。 変形性ひざ関節症は男性より女性がなりやすい! ご存知ですか?!変形性ひざ関節症は、全国で約3千万人の患者さんがいるのですが、男女比でいうと1対4と、圧倒的に女性の方が男性より多い症状なのです。 以下は、この膝の症状に対する先端医療である再生医療を解説しています。それは幹細胞治療とPRP治療と言われるものです。ご一読いただければ変形性膝関節症を治療するための新たなアプローチ方法をご理解いただけるはずです。 変形性ひざ関節症になる原因 変形性ひざ関節症のメカニズム・原因は、関節にある軟骨に起因します。具体的には次のようなものがあります。 変形性ひざ関節症の発症原因 年齢を重ねることによる摩耗 体重増加による負荷 O脚変形 遺伝性の軟骨の柔らかさの影響 年齢を重ねるにつれて軟骨が摩耗したり、体重が増えて負荷がかかると軟骨がどんどんすり減っていきます。それ以外にも、例えばO脚変形と呼ばれる、少し膝がO脚になっている方も原因になりやすいです。あとは遺伝性、つまり生まれつき軟骨が柔らかい方もいらっしゃいます。 このように、軟骨がすり減ってなくなってくると、いよいよ関節が変形して炎症を起こしてしまい、出歩くときに膝が痛かったり、あとは関節に水がたまり動きにくくなるという状態になります。 これがいわゆる変形性ひざ関節症です。 変形性ひざ関節症の症状 次に、変形性ひざ関節症の症状についてお話をしていきます。 変形性ひざ関節症になると、以下のように色々な症状が起こります。私が診ている患者さんの中でも、このような症状を訴えてこられる方々が、たくさん来られます。 立ち上がり時に膝が痛かったり 階段を下りるときにも膝が痛かったり 水がたまり、膝が腫れる 正座が出来なくなったり、曲げにくかったりする 水がたまり、抜いても抜いても水がたまり続ける ヒアルロン酸を打っても数日しか持たなかったり、ほとんど効かない こういた中でも水が溜り続ける、注射が効かなくなった患者さんには「手術をしましょう」という話になってきました。ただ、いきなり手術となると抵抗感もあり、どうしたらいいのかと、困られている患者さんもたくさんおられました。 水もたまる、注射が効かないし、手術もしたくない・・・ そんな患者さまには最近注目されている再生医療という治療があります。 再生医療という新たな選択肢 そこで、この「再生医療」という新たな治療法について解説していきます。再生医療には大きく分けて2つの治療方法があります。まず1つは自己脂肪由来の幹細胞治療、そしてもうひとつはPRP治療です。 https://youtu.be/W2JZQekWJ8w?si=gREVMz9az8O8Shj3 自己脂肪由来の幹細胞治療 まず自己脂肪由来幹細胞治療方法です。これは今、最先端の治療方法です。私は初めてこの治療法を知ったとき、今までの治療概念を覆されました。それほど驚きを覚えたのです。 どういうものかと言いますと、自分の細胞を少しだけ取り出します。その取り出した脂肪の中には「幹細胞」といわれる細胞があって、この幹細胞が身体のいろんな組織に変化する性質持っていて、その性質を活かして治療を行う方法です。 取り出した幹細胞は、約1ヶ月間くらいかけて培養し、たくさんの幹細胞に増殖させることができます。その培養した、たくさんの幹細胞を膝に入れることによって、幹細胞が変化し、失われた軟骨が出来上がったり、壊れた素子が修復されたりします。 これがいわゆる「幹細胞治療」です。 PRP治療 そして、もう一つの「PRP治療」を解説しましょう。 まず自分の血液を採取し、その中から血小板成分を取り出します。この血小板成分は、自分の壊れた組織を修復する能力があります。その特性を利用するため、血小板成分を凝縮して高濃度の血小板成分として取り出し、それを体に戻すことによって、壊れた組織を修復する能力を促します。 これが「PRP治療」です。 まとめ・膝の痛みに最新の治療法!再生医療(幹細胞治療とPRP療法)について 変形性ひざ関節症は、次のような原因で軟骨がすり減ることで起こります。 年齢を重ねることによる摩耗 体重増加による負荷 O脚変形 遺伝性の軟骨の柔らかさの影響 従来はヒアルロン酸の注射や手術によって治療されてきましたが、最近再生医療(幹細胞治療・PRP治療)という新たな選択肢が登場しています。興味のあるかたはぜひお近くのクリニックへご相談してみてください。 以上、幹細胞治療とPRP療法、再生医療で治療する膝の痛みに対する治療法ついて記させていただきました。 ▼こちらも合わせて読んでおきましょう 膝が腫れているときに考えられる病気とは ▼ 再生医療が膝の痛み!変形性膝関節症の治療を変える! 変形性膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善
2022.05.12 -
- ひざ関節
- 膝の内側の痛み
- PRP治療
- 変形性膝関節症
再生医療のひとつであるPRP療法は、患者さん自身の血液を使って自己治癒力を引き出す治療法です。手術や入院の必要がなく、副作用のリスクも極めて低く、体への負担が少ない点が大きなメリットです。 変形性膝関節症にも使われるPRP療法ですが、本当に効果があるのか疑問に思われる方もいるでしょう。この記事では、変形性膝関節症に対するPRP療法が実際どのように行われるかを、患者さんの声を交えながら解説します。効果だけでなく、PRP療法の限界についてもお伝えします。 PRP療法が気になる方は、ぜひ参考にしてください。 変形性膝関節症に有効な「PRP療法」とは? PRP療法(多血小板血漿療法)とは、患者さんから採取した血液から血小板を多く含む「多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma:PRP)」を精製し、傷んでいる場所に注射する再生医療です。 血小板は出血を止めるはたらきを持つほか、さまざまな種類の成長因子を含むため、自己治癒力を高めるはたらきもあります。変形性膝関節症でも、膝の組織の修復を助ける作用や、炎症を抑える作用で痛みを軽減させやすいです。 膝にPRP療法を行う場合は、膝のお皿の外から関節の中をめがけて注射します。膝の関節の中にはちょうど袋があり、その中にPRPを注射する形です。 変形性膝関節症の治療にPRP療法を選ぶメリット PRP療法で変形性膝関節症の治療を行うメリットは、以下のとおりです。 最短30分で治療が完了 手術が不要 入院も不要 PRP療法などの再生医療はシンプルな手順で実施され、即日で完了する場合もあります。 治療の際は、まず腕から少し採血をして、血液を特殊な機械に30分ほどかけて分離します。PRPが精製できるので、膝の関節に注射すれば治療は完了です。 手術をしないため、手術に伴う合併症の心配もありません。入院も不要のため、日常生活への影響も最小限です。さまざまな理由で人工関節をしたくない方にも良い選択肢となります。 以下の記事では、PRP療法のメリットとデメリットを詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 変形性膝関節症でPRP療法がおすすめな人の特徴 変形性膝関節症でPRP療法がおすすめなのは、現在の治療に不満がある方や、手術をしたくない・できない方、治療を急ぐ方などです。 そのほか、以下に該当する方もおすすめできます。 保険診療のヒアルロン酸注射が効かなくなった方 薬を飲んでも痛みが取れない方 慢性化した痛みを治したい方 スポーツや仕事に早く復帰したい方 薬剤アレルギーが怖い方 薬剤アレルギーがあり治療ができない方 手術を避けたい方 長期入院ができない方 持続効果の高い治療がしたい方 PRP療法は自然治癒力を促進させるため、従来の方法では治療が難しかったケースでも効果が期待できます。 また、薬剤ではなく患者さん自身の血液を使うため、アレルギー反応や拒絶反応など副作用のリスクが低い治療法です。 変形性膝関節症でPRP治療を受けられた方の体験談 ここからは、実際にPRP療法を受けられた方の実例を紹介します。最初の2例はPRP療法と幹細胞治療の併用例、最後の1例はPRP療法単独の症例です。 当院で両変形性膝関節症を治療された70代女性の声 3年前からの両膝関節痛の患者さんです。近くの整形外科では、関節軟骨がほぼ消失している末期の変形性関節症と診断され、何度も水を抜いてもらっていました。とくに左膝の痛みは10段階中10と強く、歩くのが困難でトイレにすら行けないこともあったそうです。 幹細胞治療とPRP療法を行い、1年後には左膝の痛みが10から1に、右膝の痛みが6から0に軽減しました。「整形外科で膝の水を何回抜いてもらっても、溜まっていたのに今では水も溜まらなくなり痛みもなくなり、すごくうれしいです。」と喜んでいらっしゃいました。 治療方法 ・幹細胞治療:右膝に4000万個細胞、左膝に6000万個細胞、計4回 ・PRP療法 治療前後の痛みの変化(10段階) ・左膝:10→1 ・右膝:6→0 治療費用 ・幹細胞治療 関節1部位 幹細胞数(2500万個~1億個) 投与回数(1回)132万円(税込)/2500万個 ・PRP治療 16.5万円(税込) この症例については以下の記事で詳しくご覧ください。 当院で変形性膝関節症を治療された60代男性(漁師)の声 10年前からの左膝関節痛と、1年前からの右膝関節痛の患者様です。職業は漁師で「仕事で膝へ負担がかかり両膝の痛みが出た」と語っておられました。 近くの整形外科では、両膝の進行期の変形性関節症と診断されて治療を受けていました。しかし、左膝の痛みが10段階中9まで悪化し、漁師の仕事に支障をきたしていたそうです。人工関節にしてしまうと仕事復帰が難しくなるため、再生医療を考えて来院されました。 初回投与から3カ月後には、左膝の痛みが9から3に、右膝の痛みも3から0まで軽減しました。 治療方法 ・幹細胞治療:左膝に7000万個細胞、右膝には3000万個細胞、計3回 ・PRP療法 治療前後の痛みの変化(10段階) ・左膝:9→3 ・右膝:3→0 治療費用 ・幹細胞治療 関節1部位 幹細胞数 (2500万個~1億個) 投与回数(1回)132万円(税込)/2500万個 ・PRP治療 16.5万円(税込) この症例については以下の記事で詳しくご覧ください。 当院でPRP治療を受けられた50代女性の声 テレビや人づての話で再生治療に興味をもち来院された50代女性の患者様は、膝の痛みにPRP療法を単独で実施しました。 この方は、もともと膝がとても痛くて歩行困難が見られ、ヒアルロン酸の注射をしても1日しかもたないとのことで、PRPの治療を選択されました。かなり膝の変形も強く、人工関節を入れてもおかしくない方だったのですが、手術はどうしても避けたいとのことで注射を選択されています。 最初は不安もあったようですが「いつものような膝の注射をしただけだったので、つらい気持ちは全然感じることなく、スムーズに治療を受けられました」とおっしゃっていました。 治療を通してはじめ10あった痛みが、4回注射した後には2か3になりました。もともと杖で歩かれていたのですが「4回目のときには杖なしで自分の足で立つことができるようになっていて自分でもすごくびっくりしました。『すごく効いた』という実感があってとてもうれしかったです」と喜びの言葉を残されています。 治療方法 PRP療法 治療前後の痛みの変化(10段階) 10→2~3→5で安定 治療費用 PRP治療 16.5万円(税込) 「PRP治療後は立ったまま料理や家の片付けができるようになりました。友だちとUSJに遊びにいったり、ひとりで旅行したり色々なところに自分の足でいきたいと思います」と次の楽しみを見つけられていた点も印象的でした。 PRP療法の効果には個人差がありますが、この方は持続期間も長く認めており効果があった事例といえます。 PRP療法はプロアスリートも実際に靭帯損傷で用いた治療法 PRP療法は手術が不要で、長期の入院も必要ありません。プロアスリートから見ると、治療によるパフォーマンスの低下を避け、早期に復帰できる可能性があります。 このためPRP療法は、多くのプロアスリートに選ばれています。 PRP療法の効果には個人差があるため、早期に復帰できるかは明言できません。しかし、プロアスリートたちは高い効果を期待して、PRP療法を選択しています。 変形膝関節症でPRP治療を選ぶ際の注意点 変形膝関節症でPRP治療を選ぶ際には注意点があります。 まずPRP療法は痛みを止める効果には優れていますが、軟骨を再生する力は持ちません。変形膝関節症の場合、膝関節の軟骨がすり減ることで痛みが出るため、PRP療法では根本的な解決策にならない点に注意が必要です。 またPRP療法単独では、いずれかの段階で痛みが戻る可能性があります。痛みを止め、すり減った軟骨の再生を目指すなら、「幹細胞治療」が必要です。 幹細胞治療はPRP療法のように即日実施できるものではありませんが、PRP療法と同じく手術や入院は不要です。実際の治療では、患者さんから米粒2~3粒ほどの脂肪を採取し、専門施設で幹細胞を抽出して培養します。この幹細胞を患部に戻すことで、軟骨の再生が期待できます。 変形性膝関節症にはPRP療法のほかに運動療法も効果が見込める 変形性膝関節症には、PRP療法のほかに以下の運動・訓練も効果が見込めます。 有酸素運動 筋力強化訓練 可動域訓練 変形性膝関節症の診療ガイドラインには「定期的な有酸素運動・筋力強化訓練および関節可動域訓練を実施し、かつこれらの継続を奨励する」とあります。これらは「非薬物療法の中では最も重要度の高い項目」とされ、根拠のある治療法なのです。 変形性膝関節症の方におすすめの有酸素運動は、ウォーキングやプールでの水中運動です。また、筋力強化訓練で大腿四頭筋などの筋肉を強化すれば、膝の安定性が増します。 可動域(かどういき)訓練とは、関節を動かせる範囲「可動域」を広げる訓練です。可動域が狭くなると関節の柔軟性が低下し、痛みを感じやすくなるため、訓練によって可動域を広げていく必要があります。(文献) 以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 まとめ|変形性膝関節症でPRP療法を検討中なら気軽にお問い合わせください 今回はPRP療法の流れと、治療を受けた方の実際の声をご紹介しました。 PRP療法は、手術や入院を伴わずに膝の痛みの軽減を目指せる治療法です。 ただし、PRP療法には膝の軟骨を再生する効果はありません。症状によっては、治療効果は限定的となります。軟骨の再生を図り、根本的な治療を目指すなら、幹細胞治療も選択肢の一つです。 PRP療法や幹細胞治療に興味がある方は、リペアセルクリニックへお気軽にお問い合わせください。お悩みをうかがい、詳しく説明させていただきます。 参考文献 (文献) 日本内科学会雑誌 106 巻 1 号「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告ーOARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版)」https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/1/106_75/_pdf/-char/ja
2022.04.07 -
- 再生治療
突然の激痛と共に起こる肉離れで「この痛みはいつまで続くのか」「一日も早く元の生活やスポーツに戻りたい」そんな焦りや不安を感じていませんか? 肉離れの全治期間は損傷の程度によって大きく異なりますが、適切な対処と治療法の選択によって回復を早めることが期待できます。 本記事では肉離れが全治するまでの期間を重症度別に詳しく解説します。肉離れを早く治すコツや再発予防のポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。 また、リペアセルクリニックではご自身の治癒力を活用して早期復帰をサポートする「再生医療」を提供しており、筋肉損傷にも効果が認められた症例について、LINEで情報発信しております。 つらい痛みから解放されるための一歩を踏み出すために、ぜひご活用ください。 ▼再生医療に関するガイドブックをプレゼント中! 肉離れの全治までの期間 肉離れの全治までの期間は、重症度によって異なります。肉離れの重症度は以下の3段階に分類されます。(文献1) 軽症 中等症 重症 重症度ごとの全治までの期間を見ていきましょう。 軽症 軽度の場合は、全治までの期間は1〜2週間ほどです。 軽度は、筋繊維が微細に損傷している状態です。筋肉が小さなダメージを受けており、筋肉に出血が見られます。 受傷部を押すと痛みを感じますが、何もしなければ痛みはほとんどありません。歩行やストレッチはわずかな痛みを感じる程度です。 中等症 中等症の場合、全治までの期間は3〜5週間ほどです。 中等症は、筋繊維や筋膜が損傷または一部断裂している状態です。筋肉へのダメージがやや大きく、皮下出血が見られます。 受傷部を押すと強い痛みを感じます。歩行やストレッチはできるものの痛みを伴うため、継続して身体を動かすのが難しくなります。 重症 重症の場合は、全治までの期間は2〜3カ月ほどかかります。 重症は、筋繊維が完全に断裂している状態です。なにもしていなくても強い痛みを感じ、歩行やストレッチといった日常の軽い動作も困難です。 肉離れの全治を目指した代表的な2つの治療法 肉離れに有効な2つの治療法を解説します。 安静・固定・リハビリ 再生医療 順番に見ていきましょう。 固定・安静・リハビリ 肉離れの基本的な治療は、固定・安静・リハビリです。 肉離れは、筋肉が切り傷や裂傷を起こしている状態です。実際に起きていることは、転んだときにできる切り傷や裂傷と一緒といえます。傷は皮膚と皮膚を寄せ合い固定することによって修復していきます。 肉離れが起きた際も、テーピングや包帯などで固定して、症状が落ち着くまで安静にします。そして、徐々に可動域を広げるリハビリをおこなっていくのが基本的な治療パターンです。 再生医療 「再生医療」とは、ご自身の血液中に含まれる、傷を治す働きを持つ「血小板」という成分を利用し、損傷した筋肉組織の修復を促す治療法です。 治療方法は、採取した血液を遠心分離機にかけて、血小板を濃縮した液体を注射で患部に注入するだけです。30分ほどで一連の治療を終えられるので、身体への負担も大きくありません。 再生医療は肉離れを含むスポーツ外傷に高い効果が期待できる治療法なので、スポーツに早期復帰したい方にもおすすめです。 「再生医療はどんな治療方法なの?」と気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』のLINEをご確認ください。 実際の改善症例と合わせて、再生医療の仕組みをわかりやすくお伝えいたします。 ▼無料のオンライン診断も受付中! >>公式LINEはこちら 肉離れを早く治すコツ 肉離れを早く治すには、応急処置の実施がとても大切です。適切な応急処置をおこなえば、腫れや内出血を最小限に抑えられ、結果的に全治までの期間も短縮できます。 肉離れに有効な応急処置は、RICE処置です。RICE処置は、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字から名付けられました。 肉離れにおけるRICE処置の内容は以下のとおりです。 処置 内容 安静 ・無理に身体を動かさず安静にする ・患部の腫れや血管・神経の損傷を防ぐのが目的 冷却 ・ビニール袋やアイスバックに氷を入れて患部を冷やす ・2次性の低酸素障害により患部の細胞壊死と腫れを抑えるのが目的 圧迫 ・テーピングや弾性包帯で軽く圧迫気味に固定する ・患部の内出血や腫れを防ぐのが目的 挙上 ・患部を心臓より高く挙げる ・患部の腫れを予防・腫れの軽減を図るのが目的 参考:日本整形外科学会監修|スポーツ外傷の応急処置(RICE処置) 肉離れを起こしたときは、病院にかかるまでの間にこのRICE処置を試してみてください。 まとめ|肉離れが全治するまでの期間を知って回復を目指そう 肉離れが全治するまでの期間は、重症度によって異なります。 軽症:約1〜2週間 中等症:約3~5週間 重症:約2〜3カ月 上記の期間はあくまで目安です。怪我の具合や回復速度は個々によって違うので、担当医の指示に従いながら、焦らず着実に回復を目指しましょう。 しかし、「安静だけでは物足りない」「より確実に、早く復帰したい」「再発は絶対に避けたい」という方には、損傷した筋肉組織そのものの再生を目指す治療法の検討をおすすめします。 リペアセルクリニックが提供する「再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)」は、まさにその根本的な解決を目指す最先端の選択肢です。 ご自身の脂肪から採取・培養した幹細胞を患部に直接投与することで、幹細胞が持つ高い組織修復能力により、肉離れに効果的な治療法としての効果が期待できます。 痛みの軽減はもちろん、より質の高い回復と早期のスポーツ・社会復帰、そして再発リスクの低減が期待できます。 自分の肉離れの症状にも効果が期待できるか気になる方や、改善が見込めた症例の事例も知りたい方は、ぜひ無料相談をご利用ください。 ▼LINEにて再生医療のガイドブックも配信中! >>【無料】公式LINEはこちら 肉離れに関するよくある質問 最後に肉離れに関するよくある質問と回答をまとめます。 太ももやふくらはぎの肉離れが全治するまでの期間は? 太ももやふくらはぎの肉離れが全治するまでの期間は、重症度によって異なります。重症度別の全治までの期間の目安は、前述した情報が参考になります。以下でもう1度、情報を振り返りましょう。 軽症:約1〜2週間 中等症:約3~5週間 重症:約2〜3カ月 自身の症状の程度にあわせて適切な治療を進めてください。 以下の記事では、ふくらはぎの筋断裂(肉離れ)について解説しています。原因や予防法なども紹介しているので、詳細が気になる方は参考にしてみてください。 軽度の肉離れだと1週間ほどで治りますか? 軽度(筋繊維が微細損傷したレベル)の肉離れであれば、1週間で治るケースもあります。先述のとおり、軽度肉離れの全治までの期間は、およそ1〜2週間です。 ただし、期間を気にして焦って治そうとするのは禁物です。担当医の指示のもと、無理のない範囲で回復を目指しましょう。 肉離れを予防する方法はありますか? 肉離れの予防には、運動前の十分なストレッチが効果的です。 肉離れは、筋肉の疲労や柔軟性の低下が原因となって起こります。運動前にしっかりストレッチをして筋肉をほぐしておけば、筋肉への負担を軽減でき、肉離れのリスクを下げられます。 肉離れが一生治らない可能性もありますか? 肉離れは適切なケアをすれば、完治する可能性が高いケガです。 ただし、1回肉離れを起こした筋肉は再発を繰り返すと言われています。そのため、肉離れが起きたら完全に治すことに集中するのが望ましいといえます。中途半端に治療すると再発のリスクが高まってしまうためです。 また、肉離れが治ったあとは、運動前のストレッチを念入りにおこない、再発防止に努めましょう。 【参考文献】 文献1:https://www.rinspo.jp/journal/2010/files/24-3/331-333.pdf
2022.03.15 -
- 脊髄損傷
- 幹細胞治療
- 再生治療
- 脊椎
脊髄損傷は、手足の運動や感覚が麻痺するなど、日常生活に大きな影響が出やすい疾患です。(文献1)外傷・病気など原因は多岐にわたり、脊髄を損傷した位置(損傷高位またはレベル)によって、症状の出る範囲も異なります。 しかし、リハビリテーションにより回復が見込める場合もあるほか、近年では再生医療も選択できるようになってきました。 この記事では、脊髄損傷の症状や回復可能性について、詳しく解説します。 また、治療方法や再生医療の手法についても紹介するので、脊髄損傷の治療にお悩みの方は参考にしてください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脊髄損傷が治るかは原因・症状の重さ・損傷位置(高位)が関係する 脊髄損傷の原因は、以下のように多様です。 交通事故をはじめとする外的要因により、突然脊髄を損傷する場合があります。また、脊髄や脊椎になんらかの異常(内的要因)が出ると脊髄損傷に発展することもあります。 分類 原因項目 説明 外的要因 交通事故 車・バイク・自転車などの衝突や転倒 転落 高所や階段からの落下 転倒 浴室での転倒や高齢者の転倒事故 スポーツ外傷 ラグビー、スキー、ダイビングなどによる強い衝撃 労働災害 高所作業や重量物の落下などによる事故 暴力行為 殴打・刺傷・銃創など 外科手術中の損傷 脊椎手術や麻酔中の医療事故による損傷 内的要因 椎間板ヘルニア 椎間板が突出して脊髄を圧迫 骨粗鬆症による圧迫骨折 高齢者に多い、骨の脆弱化による脊椎の圧迫骨折 脊髄梗塞 血流障害による脊髄の機能低下・壊死 脊髄出血 脊髄や周囲での出血による脊髄の圧迫 感染症 髄膜炎、脊椎炎などが脊髄に影響 変性疾患 多発性硬化症、ALSなど神経系の進行性疾患 自己免疫疾患 横断性脊髄炎など、免疫異常による神経炎症 腫瘍 脊髄や脊椎にできた腫瘍が神経を圧迫 先天性疾患 二分脊椎、キアリ奇形など、先天的な構造異常 脊髄損傷の症状は、完全麻痺と不全麻痺に分けられます。また、脊髄損傷では、一般的に損傷部位が脳に近い(損傷高位が高い)ほど症状の範囲も広くなります。損傷高位(レベル)別の主な症状は以下のとおりです。(文献2) ※損傷高位:損傷の位置 損傷高位 主な症状 頸椎(C1~C7) ・全身麻痺や呼吸困難(C1~C4) ・手指の一部が動く(C5~C7) 胸椎(T1~T12) 下半身麻痺、体幹のバランス低下、排尿排便障害 腰椎(L1~L5) 歩行困難、膀胱直腸障害、感覚障害 仙椎(S1~S5) 軽度の感覚障害や排尿排便の調整機能低下 軽度の感覚障害や排尿排便の調整機能低下 脊髄損傷が軽度(不完全損傷)の場合は、治療次第で回復が見込めます。 不完全損傷とは、脊髄の一部が損傷した状態です。損傷部位より遠い位置にもなんらかの運動機能や感覚が残っている不全麻痺の症状が現れます。 どの機能にどの症状が残るかは、損傷のタイプによって以下のように異なります。(文献2) 不完全損傷の分類 症状の傾向 中心性脊髄損傷 上肢の麻痺が強く、下肢の影響が少ない Brown Sequard(ブラウン セカール)症候群 片側の運動麻痺+反対側の痛覚・温度覚消失 前脊髄症候群 運動機能と痛覚・温度覚が失われるが、触覚は保たれる 後脊髄症候群 触覚・振動覚・位置覚が失われるが、運動機能は比較的保たれる 腰に近い胸椎(T11)から下の不完全損傷であれば、訓練により歩けるまでに回復する可能性があります。 足の動きをサポートする装具をつけ、杖も使っての歩行となる場合が多いです。 重度の損傷(完全損傷)の場合は治らないことが多い 脊髄の損傷が重度(完全損傷)の場合は、完治しないことが多いです。 完全損傷は、脊髄の機能が完全に絶たれてしまった状態です。脳からの指令が届かないため、損傷部位から下は完全麻痺となり動かなくなります。また、麻痺した部分は感覚もなくなります。 頚髄の高い位置での完全損傷ならば、四肢がまったく動かず全介助となるでしょう。頸髄の低い位置や胸髄の場合は、レベルに応じて上半身は動かせるため、下半身不随の状態となります。 完全損傷は通常、完治が期待できません。ただし、受傷直後に完全麻痺がみられても、数日から数か月で徐々に回復してくることがあります。 この場合は脊髄ショック(脊髄が損傷された直後に起こる、一時的な反射機能の低下または消失)を起こしていたと考えられ、完全損傷とは異なるため、慎重に経過をみるのが大切です。 【時期別】脊髄損傷の治療法 脊髄損傷は、急性期・慢性期の時期によって適切な治療法が異なります。 脊髄損傷の急性期には脊椎の固定や生命維持を優先する、慢性期には症状の程度・損傷部位に応じて長期的な目線で対応するのがセオリーです。 以下では急性期と慢性期に分けて、詳しい治療法を見ていきます。 急性期の治療 外傷をはじめとする急性期には、脊椎をギプスや装具で固定し、損傷が広がらないように対策します。とくに、重症化しやすい頚椎の固定は強く推奨されています。 同時に、頚髄や上部胸髄損傷により自発呼吸ができない場合は、人工呼吸器での呼吸確保が必要です。血圧が下がっていれば、輸液や昇圧剤を投与して管理します。 そして、状況に応じて頭蓋骨の牽引や手術を行い、神経を圧迫している原因を除去します。また、損傷後8時間以内のステロイド治療(メチルプレドニゾロン(MPSS)大量投与)も神経学的回復には有効とされています。(文献3) 脊髄損傷では、ベッド上での安静を余儀なくされることと神経の障害によって、以下のような合併症が現れるかもしれません。(文献4)急性期から合併症予防対策をとることも大切です。 褥瘡(床ずれ) 筋力の低下 関節可動域の低下 消化器合併症(ストレス性潰瘍、腸閉塞など) 呼吸器合併症(痰の詰まり、肺炎など) 尿路感染症 循環器合併症(徐脈、起立性低血圧、深部静脈血栓症など) 慢性期の治療 急性期の症状が落ち着いてきたら、本格的にリハビリテーションを始めます。また、引き続き治療が必要な部分は治療していきます。 以下の項目ごとに確認していきましょう。 リハビリテーション ビタミン剤の投与(栄養補給) 抗生物質の投与 放射線治療 外科手術 リハビリテーション 残った機能を活かして日常生活を送れるように、腰を据えてリハビリテーションを実施します。脊髄損傷の場合は、以下のメニューがよく行われます。(文献5,6) 種類 アプローチ箇所 可動域訓練 全身 筋力トレーニング 上肢・下肢 歩行訓練 下肢 電気刺激 全身(指先への細やかなアプローチも可能) 可動域訓練とは、関節と筋肉の柔軟性を維持するための訓練です。関節が固まるのを防ぐため、受傷後早期から始めます。 筋力トレーニングは、残存した身体機能を最大限活用するために欠かせません。歩行訓練は、全身の機能向上にも有用です。 電気刺激は、麻痺した筋肉を電気で動かすことで機能回復を目指す方法です。脳からの指令を代替し、神経信号の回復を促します。(文献6) ビタミン剤の投与(栄養補給) ビタミンB12が不足すると、神経の機能が低下します。末梢神経障害が有名で、手足のしびれや歩行障害が現れます。(文献7) けがもしていないのに脊髄損傷の症状が現れたときには、ビタミンB12の不足が背景にあるかもしれません。極端に偏食の方、胃切除の手術を受けた方に不足しやすい傾向があります。 必要に応じて、ビタミン剤を投与して補給を行います。 抗生物質の投与 脊椎に感染が起きている場合は、抗生物質を投与して治療します。血流にのって菌が感染するケースがほとんどで、抵抗力が落ちている方が感染しやすいです。 急激に高熱と激しい痛みが出る場合も、症状がはっきりしない場合もあり、個人差が大きいです。 いずれにしても脊椎への感染が疑われれば、抗生物質の投与を開始します。同時に血液培養を行い、細菌を特定できたら、適した抗生物質に切り替えます。 放射線治療 がんが脊椎や脊椎の内部に転移し、脊髄を圧迫して脊髄損傷の症状が出ることがあります。この場合、手術は難しいケースが多く、放射線治療が適応されやすいです。 治療のタイミングとしては、発症後なるべく48時間以内、あるいは72時間以内に行うべきといわれています。ただし、これ以降でも症状が改善するケースもあるため、治療を試みる価値はあるでしょう。(文献8) 外科手術 脊髄損傷の手術には、脊椎を固定する手術や、脊髄の圧迫を取り除く手術があります。 急性期のうちに固定や除圧を図るべきケースも多い一方、急いで手術をしなくても回復が見込めるケースもあり、全身状態が落ち着いてから手術を検討する場合は珍しくありません。 椎間板ヘルニアや腫瘍、血腫によって脊髄が圧迫されている場合は、必要に応じて取り除く手術を行います。また、細菌感染の場合も、感染巣を取り除く手術や、脊椎を固定する手術が必要となることがあります。 脊髄損傷の治療を進めても後遺症が出ることはある 脊髄損傷の治療を行っても、残念ながら後遺症が出ることは少なくありません。損傷の程度や損傷高位をはじめ、さまざまな要因が予後に関係します。 代表的な後遺症は、四肢の麻痺やしびれです。歩く、ベッドから車いすに移る、寝返りをするといった基本的な動作に支障をきたし、日常生活に大きく影響します。 触った感覚や痛みの感覚、温度感覚といった感覚の障害も生活に影響します。たとえば痛みの感覚が消失すると、けがに気づかないほか、胃潰瘍などの内臓の痛みにも気づけません。 排尿や排便の制御困難(膀胱直腸障害)や、体温・血圧の調節機能の低下といった自律神経障害もよくある後遺症です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脊髄損傷(後遺症)の治療法として再生医療も選択肢の一つ https://youtu.be/5HxbCexwwbE?si=-RirI6xZVAHG5H6s 脊髄損傷の一般的な治療では、手術により神経を圧迫している要因を取り除いたあと、リハビリテーションで社会復帰を目指します。 しかし、手足の麻痺や感覚が戻るかどうかは個人差があり、寝たきりや車椅子での生活を余儀なくされるケースも少なくありません。 ただ、近年では脊髄損傷や、その後遺症に対する治療法として、再生医療が登場しました。再生医療とは、体内の幹細胞が持つさまざまな組織に分化(変化)する特徴を活かした治療です。 脊髄損傷の場合は、骨髄由来の幹細胞か脂肪由来の幹細胞が使われます。脂肪由来幹細胞は、骨髄由来幹細胞よりも採取・培養しやすく、感染リスクを抑えて多くの細胞を投与できるのが利点です。 脊髄損傷の治療法として再生医療へご興味のある方は、リペアセルクリニックまでお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 幹細胞を投与する方法として2種類挙げられる 投与方法 メリット デメリット 点滴 特殊な技術なく実施できる 脊髄に到達する細胞が少ない 硬膜内注射 損傷部位に直接幹細胞を届けられる 実施できる医療機関が限られる 脊髄損傷への幹細胞の投与方法は、点滴と硬膜内注射の2種類です。 点滴では、血管へ幹細胞を投与し、血流を介して脊髄へ届けます。硬膜内注射とは、腰あたりから脊椎へ針を刺し、脊髄のある硬膜内に直接投与する方法です。両者を掛け合わせて効果を高める場合もあります。 点滴では脊髄に到達する幹細胞数が少なくなりやすいです。一方で、損傷部位へ直接投与する方法では、幹細胞の数をほとんど減らさず患部へ届けられるため、点滴と比べて神経の再生力が高いです。 ただし、硬膜内へ直接投与する方法は国内でも限られた医療機関でしか行われていません。硬膜内注射を検討される場合、受診予定の医療機関へ問い合わせてみましょう。 まとめ|脊髄損傷の治療で再生医療をご検討の際は当院へご相談ください 脊髄損傷は、大きな事故や転落だけでなく、平坦な道で転んでも発症する疾患です。脳と体をつなぐ脊髄が損傷すると、手足を動かせなくなったり感覚がなくなったりと、これまで通りの生活を送れなくなる場合があります。 脊髄を損傷した直後の治療法としては、脊椎を固定し安静にするほか、手術で脊髄の圧迫を取り除くのが一般的です。また、慢性期にはリハビリテーション、ビタミン剤・抗生物質の投与、外科手術など症状に合わせて処置を施します。 近年では、脊髄損傷や後遺症の治療法として、再生医療も登場しました。 当院リペアセルクリニックでも再生医療を提供しておりますので、ご興味がある方は気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ また、再生医療については下記のサイトでも発信しておりますので、合わせてご確認ください。 再生医療とは?実例やメリット・デメリット、研究ができる大学の学部も紹介 参考文献 (文献1) 公益社団法人 日本整形外科学会「脊髄損傷」日本整形外科学会ホームページ https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spinal_cord_injury.html(最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 一般社団法人 日本脊髄外科学会「脊髄損傷」日本脊髄外科学会ホームページ https://www.neurospine.jp/original62.html(最終アクセス:2025年4月18日) (文献3) 横田 裕行ほか.「急性期脊髄損傷におけるメチルプレドニゾロン大量療法の臨床的意義」『日救急医会誌』 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam1990/6/4/6_4_349/_pdf (最終アクセス:2025年4月28日) (文献4) 独立行政法人 労働者健康安全機構「脊髄損傷とは」労災疾病等医学研究普及サイト https://www.research.johas.go.jp/sekizui/(最終アクセス:2025年4月18日) (文献5) 田島文博ほか.「脊髄損傷者に対するリハビリテーション」『脊髄外科』30(1), pp.58-67, 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/30/1/30_58/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献6) 松永俊樹ほか.「脊髄損傷患者に対する最新のリハビリテーション治療―機能的電気刺激(functional electrical stimulation:FES)『Jpn J Rehabil Med』56(7), pp.555-559, 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/7/56_56.555/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献7) 畑中裕己.「ビタミンB12欠乏性神経障害」『臨床神経生理学』45(6), pp.532-540, 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/45/6/45_532/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年4月18日) (文献8) 笹井啓資.「緩和ケアにおける放射線治療」『順天堂医学』57(6), pp.582-587, 2011年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjmj/57/6/57_582/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日)
2022.03.02 -
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変形性膝関節症|最新治療!手術をしない再生医療(幹細胞治療)の実力 変形性膝関節の痛みに悩まされてきた方は多いのではないでしょうか? 変形性膝関節症は、関節軟骨や半月板の損傷から、膝に痛みや変形がみられる疾患です。その治療法は、運動療法に取り組みながらも、痛みに対しては、薬を服用したり、膝にヒアルロン酸注射をしたりし悪化を防ぎます。 これまでの治療方法としては、運動療法や、薬物療法があり、効果がみられない場合には、「手術という選択肢」が一般的でした。では、一方で「手術はしたくない」「手術が受けられない」方は、どうすれば良いのでしょうか?!この場合、「痛みと付き合っていくしかない」のが現状なのです。 しかし近年、保存療法では効果が感じられず、観血療法(手術)ができない場合でも受けられる治療法に、「再生医療による治療」が確立されたのでご紹介してまいりましょう。 症状が進行した場合 ▶ 従来の医療 最新の医療 手術ができない、受けられない 手術以外の選択肢に乏しい 様子を見る 痛みがあるなら付き合っていくしかない 再生医療(幹細胞治療) 手術をしない 入院不要 手術は嫌だ、避けたい 再生医療|幹細胞治療とは? 人は怪我をして傷ついたとしても、多少の傷なら自然に治り回復します。つまり、修復力を持っているということで、これは人間が本来備えている自然治癒力です。これを活かした治療法が「再生医療」といわれる新たな医療分野なのです。 この再生医療の一種、「自己脂肪由来・幹細胞治療」では、患者様の体から採取した幹細胞を培養後、数万から数億にも増やしたもの(幹細胞)を膝に注射することで、傷んだ軟骨や細胞を自然に修復・再生させる効果を見込むものです。 https://youtu.be/2GCVH-Jw5Ps?si=4kHgIjsG3cFqNsO7 再生医療における幹細胞治療とは 幹細胞とは、人間の骨髄や皮下脂肪にある細胞で、皮膚や骨・軟骨・血管などの、いろんな細胞に性質を変える特徴(分化能)があります。幹細胞治療では、幹細胞の分化能を利用して、傷んだ軟骨や、そのほか組織の修復・再生が期待できる最新の治療法です。 幹細胞は普段は活動的ではありませんが、体が傷つくと、損傷した細胞の代わりになるよう細胞分裂が起こり、修復・再生が行われます。変形性膝関節症の場合、幹細胞の分化能を利用し、自己修復力を高めて、磨耗した軟骨を修復させます。 軟骨が再生すると、本来備わっていた膝のクッション性がアップするほか、関節の動きが滑らかになり、膝の痛みの緩和が期待できます。 つまり、これまで運動療法や薬物療法ではできなかった軟骨の修復・再生が、自己脂肪由来幹細胞治療で可能になったのです。 幹細胞治療はどのように行われる? 変形性膝関節症に対しての自己脂肪由来幹細胞治療では、自分の体から幹細胞を採取し、培養後、幹細胞を体内に戻します。幹細胞を体内に戻す方法には、静脈注射(静脈点滴)と関節注射の2種類があります。 静脈注射は直接注射できない内臓(肝臓疾患や糖尿病など)や脳の病気に用いられ、膝や肩、股関節などには直接関節に注射する方法があります。幹細胞は骨髄や皮下脂肪に存在しますが、体への侵襲(体への負担)が少ないほか、細胞の性質が良いとされることから皮下脂肪から採取されます。 自己脂肪由来幹細胞治療の流れ 腹部(おへそ周り)に局所麻酔をします。 5mmほど皮膚を切開し脂肪を採取します。 採取する脂肪の範囲は、米粒2粒ほどの大きさです。 採取した脂肪から幹細胞だけを分離し、4〜6週間ほどかけて培養します。 増殖した幹細胞を膝に関節内注射します。 幹細胞治療は、体への侵襲が低く、自分の細胞を利用した治療法です。大きな手術と比べて感染症のリスクは低く、拒絶反応やアレルギーも起こりにくいため、安全性が高い治療法です。 膝の痛みを放置するとどうなるか? 変形性膝関節症が進行し痛みが強くなると、治療の基本となる運動療法に満足に取り組めなくなります。さらに進行すると、ちょっとした動作や安静時でも膝が痛み、その痛みをかばうことで、関節の可動域が狭まっていき、余計に痛みを感じやすくなります。 そして、どうしようもなくなったときには、体に負担となる人工関節置換術や骨切り術などの手術が選択肢にあります。手術をすると、痛みの改善は期待できますが、感染症のリスクや、正座ができなくなるなどのリスクがあります。 手術をしたくない、手術ができない場合には、痛みと付き合っていくしかありませんが、痛みが悪化すると、次第に歩行ができなくなり、筋力が低下することで車椅子生活や寝たきりでの生活になってしまう可能性が高まります。 まとめ・変形性膝関節症、最新の治療法!手術をしない再生医療の幹細胞治療という可能性 自己由来幹細胞治療は、人が持つ修復力を引き出す治療法で、これまで不可能だった軟骨の再生が期待できます。幹細胞治療では、自分の細胞を使うことから、大きな手術のような、体にかかる負担はほとんどなく、長期間に及ぶ入院期間を確保できない場合にも、日帰りで行える治療法として注目されています。 変形性膝関節症の治療の基本は、膝周囲の筋力を鍛えることで、必要に応じて変形性膝関節症と診断された初期から幹細胞治療に取り組むことで悪化を防ぐことが期待できます。 幹細胞治療にかかる費用は、保険が効かず自由診療のため、全額自己負担での治療ですが、「現在の治療で効果を感じられない」「関節鏡や人工関節などの大きな手術をすすめられたが抵抗がある」方は、保存療法と観血療法の中間に位置する最新の再生医療による治療法、「自己由来幹細胞治療」を選択肢の一つとして覚えておきましょう。 以上、変形性膝関節症の治療に幹細胞治療/再生医療という新たな選択肢!になっていることについて記させて頂きました。 ▼ 再生医療の幹細胞治療が変形性膝関節症の治療を変える! 変形性膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善できます ▼以下もご参照ください 変形性膝関節症は早期発見が大切!膝の違和感を見逃さない!
2022.01.07 -
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変形性膝関節症でヒアルロン酸、ステロイドでは不可能な軟骨を再生させる再生医療をご紹介 「変形性膝関節症」の治療でヒアルロン酸を注射をしているけど「思ったような結果が得られず困っている・・・」、「ステロイド注射は副作用が怖いと聞いたが・・・」こんなお悩みはありませんか? 変形性膝関節症の炎症や痛みに対する治療と言えば、ヒアルロン酸や、ステロイドを関節内に注射することが多々ありますが、実のところ、これらの注射は一時しのぎで根本的な治療にはなりません。 これらヒアルロン酸や、ステロイドなどの注射による治療では症状を改善させたり、症状の進行を止めることが難しく、最終的に人工関節などの手術に頼ることになりかねません。つまり、これらの治療では根本的な治療にはならないということです。 なぜなら、ヒアルロン酸注射やステロイドは、一時的に痛みを緩和することはできるのですが、痛みの根本原因となっている傷んだ軟骨を再生させる力は無いからです。 しかし、医療の発展で「再生医療」という新たな選択肢が現れました。 再生医療は、手術はもちろん、入院までもが不要という、これまでの常識を覆した最新の治療法として厚生労働省が許認可し、中でも「幹細胞治療」は、変形性膝関節症で軟骨を再生する可能性を持った治療法として非常に期待が持てます。 従来のヒアルロン酸、ステロイドでの治療:その場しのぎで、根本治療にはならない 再生医療(幹細胞治療):変形性膝関節症の根本治療!軟骨を再生させる症例が多数報告されている 安心安全:手術が不要、あなた自身の幹細胞を使う、入院も不要の最新医療 そこで今回は、再生医療の中でも「幹細胞」を培養して注射で投与でき、軟骨を再生させる!「変形性膝関節症の最新治療法」をご紹介します。 まずは、これまで変形性膝関節症の治療に使われてきた、「ヒアルロン酸注射」、「ステロイド注射」をについてご説明し、最新の再生医療での治療法である再生医療、中でも「PRP療法」「自己脂肪由来・幹細胞治療」をご紹介してまいりましょう。合わせて以下の動画もご参照ください https://youtu.be/2GCVH-Jw5Ps?si=ZEHWq8a2WU2MxWZX 従来の治療法①|膝関節へのヒアルロン酸注射について さて、膝関節へのヒアルロン酸や、ステロイドの注射は、関節の潤滑性を高めたり、炎症や痛みを抑える目的で使われるものです。関節内にある関節液は、関節軟骨を保護し、膝の動きを滑らかにサポートする潤滑油の役割を果たしています。 そんな関節液の潤滑成分としてヒアルロン酸が含まれていることから、変形性関節症で枯渇したサラサラの関節液に対して、ヒアルロン酸を関節内へ注射することで潤滑性を高めることで膝の動きをサポートさせます。 今、まさに治療を行われている方なら、お分かりかもしれませんが慣れてくると注射後2〜3日、中には1日ほどで、また痛みに悩まされることも少なくないのです。 ヒアルロン酸注射の頻度・回数は、ヒアルロン酸に含まれる分子量により異なります。この分子量が高いほど関節内で長時間留まるとされています。ただ、実際に痛みを回避するには週に1回から、いずれは3回~注射することになりかねません。 ご注意)ヒアルロン酸を注射で痛みの原因である「軟骨が再生されることはありません」 膝に水が溜る!とは 膝に炎症が起こり、水が溜まることがあります。これを「関節水腫」といい、膝に水が溜っていたらヒアルロン酸注射の前にこの水を抜いてやる必要があります。 なぜなら膝に水が溜まった状態でヒアルロン酸注射をしたところで、溜った水によってヒアルロン酸の濃度が薄められ、効果が半減されてしまうからです。更に、溜まった関節液には、炎症を悪化させてしまうサイトカインという物質も含まれています。 また稀にヒアルロン酸にアレルギー反応を起こす場合もあるため、万人が受けられるわけでもありません。 膝への「ヒアルロン酸注射」 効果 問題 注意事項 膝軟骨を保護 膝の滑らかな動きをサポート 軟骨を再生するものではない 改善等の根本治療にはならない 効果が続かない(3日ほど) 末期になるほど効果が減る ・水が溜る「関節水腫」になる危険性 従来の治療法②|「ステロイド注射」痛みは消えるが注意が必要 痛みや炎症が強い時は、ステロイド薬を関節内へ注射します。ステロイド注射はヒアルロン酸注射と比べ、痛みを抑えるのに非常に高い効果を発揮するとの報告が多くあります。 ただし、注意しておきたいのは、ステロイド注射を多用すると副作用があること。それは骨や、軟骨の新陳代謝をステロイドが阻害したことによって起こる可能性のある「骨壊死」、関節が破壊される「ステロイド関節症」というもので注意が必要です。 注意)ステロイド注射の多用による副作用に注意 ▼「骨壊死」「ステロイド関節症」を防ぐために 最低でも6週間置いての注射とする。 できれば3ヶ月ほどは、間隔を空けるべきであること。 短期での連続した注射や長期間に及ぶ使用は避けるべき。 知識として知っていて欲しい。 繰り返しになりますがステロイド注射による痛みの改善は一過性であり、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではありません。痛いからと、使い方を誤ると副作用という大きな危険性があります。 ここまでヒアルロン酸や、ステロイドとしった痛みを抑える目的で使われる注射を紹介しました。 次に自分の血液や細胞を使うことで「アレルギー反応が起こりにくい」「軟骨の再生を期待できる」最新の注射による治療方法を紹介します。 膝への「ステロイド注射」 効果 副作用 副作用を抑えるための注意事項 膝の意痛みを抑える 膝の炎症を抑える 骨や軟骨の新陳代謝を阻害 → 骨壊死 → 関節が破壊されるステロイド関節症 6週間置きの注射 3ヶ月間は空ける ✕ 短期での連続した使用 ✕ 長期間に及ぶ使用 膝の痛みを消すだけ、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではない 最新|変形性膝関節症の再生医療 再生医療 PRP治療 幹細胞治療 1)PRP治療(Platelet-Rich Plasma=多血小板血漿) PRP療法とは、患者様の血液を採取し、血液中に含まれる血小板の多い血漿だけを抽出し、膝へ注射する治療法です。多血小板血漿には、組織や細胞の成長を促す成長因子が多く含まれています。 そのため、高い治癒効果が期待できる方法といえます。またヒアルロン酸と違い、自分の血液を使用することでアレルギー反応が出にくいのも特徴です。PRP療法は、近年耳にする機会が増えた「再生医療」に分類される治療法です。 まだ日本では保険が適応されない自由診療となるため、ヒアルロン酸注射やステロイド注射のように気軽に打てる金額ではない点がデメリットになります。 また再生医療を扱うには「再生医療等の安全性確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省に届出し、受理された医療機関、専門医にしかできない治療法になっているため、近所の整形外科で簡単にできるわけではありません。 ただ、そのため、安全性が確保されている治療法とも申せます。 2)幹細胞治療 「軟骨の再生」を期待!自己脂肪由来 主に皮下脂肪にある幹細胞組織を使い、軟骨をはじめとして、さまざまな組織に再生させる機能を持つ、可能性に満ちた治療法です。 幹細胞は、軟骨や皮膚、骨などに分化(複雑なものに発展していくこと)する機能があります。体から採取した幹細胞を培養(増やす)して膝の関節内へ注射することで、傷んだ軟骨の再生を期待することができ、これまでになかった治療法になります。 幹細胞は骨髄からも採取することはできますが、より侵襲が少ない皮下脂肪から採取されるのが一般的です。それでは同じ再生医療の分野であるPRP治療と幹細胞治療とは何が、どう違うのでしょうか? PRP治療は、傷んだ組織に対して組織や、細胞の成長を促す栄養素が含まれている「多血小板血漿」を注射します。もともと血小板の役割に成長因子の分泌がありますが、「多血小板血漿」には通常の血小板と比べて3〜5倍もの成長因子があることが特徴です。 これにより、ヒアルロン酸注射にはできなかった慢性化した患部の修復や、治癒を高めることができます。その一方でPRPには幹細胞が含まれていないため、軟骨を再生することはできません。 幹細胞治療では、さまざまな組織に分化(変化)する働きをもつ幹細胞を、何千〜何百万倍にも培養し、膝に注射します。この幹細胞が集中的にすり減った軟骨に働きかけることで、これまで不可能とされてきた「軟骨を再生」させます。 そのため、注射する幹細胞の数にも注目すべきです。海外の臨床データによると幹細胞の数が多いほど治療成績が良いことがわかっているからです。 なぜなら培養せず注射する治療法をADRC(脂肪組織由来再生幹細胞治療)セルーションと言うのですが、培養を行わないため幹細胞の数自体が少ないことになるからです。 その意味で治療を受ける際は、受診するクリニックが幹細胞を培養しているか確認することは大切なことになります。PRP治療は注射で実施できることから、傷口は小さくてすみます。 自脂肪由来幹細胞治療も米粒2〜3粒ほどの脂肪を摂取するために、下腹部周辺を5ミリほど切開しますが、投与自体はPRPと同じく直接膝に注射することため、大きな傷口を作ることはありません。 日帰りで受けられるこれまでには無かった治療法です。なお自己脂肪由来幹細胞治療もPRP治療ともに自由診療で、厚生労働省によって認可された医療機関でしか行えません。 再生医療の比較 PRP治療 幹細胞治療 軟骨 再生できない 再生する アレルギー ⇒ 出にくい 治療 ⇒ 専門医、専門院に限る 種類 再生医療 まとめ・変形性膝関節症の最新治療|ヒアルロン酸、ステロイドでは不可能な軟骨を再生させる再生医療という治療方法 いかがでしたか?変形性膝関節症に対する従来の注射「ヒアルロン酸注射」と「ステロイド注射」、最新治療の注射「PRP治療」「自己脂肪由来幹細胞治療」の役割を紹介しました。 これまで変形性膝関節症に対する注射は、痛みを抑え、少しでも悪化を遅らせる目的で使用されてきたものですが、再生医療であるPRP治療・自己脂肪由来幹細胞治療により、治癒そのものを促進させ、失われた軟骨を再生させることで回復を目指す!といった今までには無かった前向きな治療法です。 変形性膝関節症の痛みで悩み、薬や注射をしたけれど「期待していた効果を感じられなかった」「できるだけ手術はしたくない」という思いがある方は、薬や注射といった薬物療法と手術の中間に位置する再生医療での治療を検討してみてはいかがでしょうか。 以上、変形性膝関節症の最新治療と題し、従来のヒアルロン酸やステロイド注射では不可能な軟骨の再生を期待できる新たな選択肢である再生医療による治療について解説させていただきました。 ご参考にしていただければ幸いです。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下もご参考にされませんか 変形性膝関節症の治療「薬物療法の種類と悪化を防ぐ」ポイントとは
2021.10.23 -
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再生医療の分野で注目されている「PRP療法」と「APS療法」。 どちらも自身の血液を使って行う治療法ですが、目的や仕組みに違いがあります。 本記事では、PRPとAPSの特徴や違い、治療の流れをわかりやすく解説します。 膝などの慢性的な痛みに悩む方や、手術以外の選択肢を探している方は、再生医療という新たな可能性を知るきっかけにしてみてください。 PRP療法とAPS療法の違い|再生医療としての特徴 再生医療とは、怪我や病気によって低下あるいは喪失した生体機能を、細胞や組織の働きを利用して回復を目指す医療分野です。 人為的に加工や培養して作製した細胞や組織などを用いて人体に元来備わっている「自己修復力」を引き出すアプローチとして、可能性が広がりつつあります。 中でも、PRP療法やAPS療法は、患者様自身の血液成分を活用する「自己由来」の再生医療とされ、とくに関節の痛みに関する治療の選択肢のひとつです。 どちらの療法も、血液中に含まれる「血小板」が関係しています。 血小板は止血の働きだけでなく、ケガをしたときに損傷部位の修復に関与する「成長因子」を含んでいるとされます。 PRP療法やAPS療法は、この成長因子を利用した治療法です。 PRP療法は、血小板が多く含まれる血漿(多血小板血漿=Platelet Rich Plasma)を注入する方法です。 一方、APS療法(Autologous Protein Solution)は、PRPをさらに加工・濃縮したもので、炎症に関与するタンパク質や関節の状態に関わる因子に注目した治療法として研究が進められています。 PRP療法とAPS療法とは?それぞれの特徴を解説 PRP療法(Platelet Rich Plasma療法)とAPS療法(Autologous Protein Solution療法)は、どちらも患者様自身の血液を利用して行われる再生医療の一種です。 主に関節の不調や慢性疼痛のケアを目的に導入されるケースがあります。 PRP療法では、採取した自己血液を遠心分離して血小板を濃縮し、それを処置部位に注入する方法が用いられます。 血小板には「成長因子」と呼ばれる物質が含まれているとされており、この成分には組織の修復や細胞の活性化などを促す働きがある可能性が報告されています。 そのため、ケガや関節の違和感に対して使用されることがあります。 APS療法は、PRPをさらに専用の装置で処理し、抗炎症性タンパク質や成長因子などを高濃度に含むとされる成分を抽出した自己タンパク溶液を用いる方法です。 こうした成分の働きにより、関節の炎症性因子に対するアプローチが期待される場面もあります。 なお、どちらの治療も自己血液をもとにしているため、異物による免疫反応のリスクは比較的少ないとされます。 ただし、症状の改善には個人差があり、すべての人に同じような効果が得られるわけではないため、実施の際は医師による十分な説明を受けることが大切です。 PRP療法とAPS療法の比較 項目 PRP療法 APS療法 抽出方法 血小板を多く含む血漿を抽出 PRPをさらに遠心分離・処理して特定タンパク質を濃縮 主な成分 血小板由来の成長因子を含む 成長因子と抗炎症性サイトカインを含む 期待される作用 組織修復や細胞増殖に関与する 炎症を抑える働きがあるとされる成分が含まれる 主な対象 関節・腱・靭帯の損傷など 変形性膝関節症など慢性的な関節の痛み 治療の特徴 自己治癒力を高め傷ついた組織にアプローチ 痛みの緩和を目的とする治療法 抗炎症・鎮痛を重視 痛みの緩和を目的とする治療法 使用する血液量 一般に10〜20ml前後 約50〜60ml程度 手技 採血後、専用機器で処理し注射 採血後、さらに濃縮処理し注射 自己多血小板血漿、注入療法とも呼ばれるPRP療法については馴染みが薄い治療法に感じられるかもしれません。しかし、海外においては10年以上の使用実績がある方法です。 PRP療法は、ご自身の血液を採取し、遠心分離機を用いて血小板を多く含む部分(PRP)を抽出・濃縮し、損傷した部位に使用する治療法です。血小板に含まれる成分が、もともと体に備わっている修復の過程に関与するとされています。 一方、APS治療は、同じく採取した血液を特殊な専用装置で処理し、炎症に関与する物質に着目して特定のタンパク質(抗炎症性サイトカインなど)を選択的に濃縮・抽出したものを用いる治療法です。関節などの炎症に対して使用されることがあります。 APS療法で期待できる効果と治療法 APS療法は、患者自身の血液から抽出したタンパク質濃縮液(Autologous Protein Solution)を患部に注射することで、関節まわりの環境を整えることを目的とした再生医療の一つです。 ここでは、変形性膝関節症に対してAPS療法で期待できる効果や実際の治療法などについて紹介します。 ご注意頂きたいのは、APS療法は再生医療ではありますが、関節の軟骨を修復して再生させるのが目的ではありません。 自己の血液から抗炎症成分のみを濃縮して抽出したあと、関節内に注射することで、膝痛の症状緩和に焦点を当てた特化的治療です。 膝の変形性関節症では、疾患が進行することによって「半月板の損傷」や、「靭帯のゆるみ」など膝関節のバランスが崩れることで軟骨がすり減り、膝関節が変形して発症します。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水が溜まることがあります。 従来、治療としては繰り返し鎮痛剤を内服することや、ヒアルロン酸を関節内に注入するなどが代表的な治療法でした。 しかし、鎮痛剤を飲み続ける是非や、ヒアルロン酸の効果が期待できなくなった変形性膝関節症の患者様の中には、このAPS治療によって症状の改善を示すケースがあることが分かってきたのです。 一般的にAPS治療では、投与してからおよそ1週間から1か月程度で患部組織の修復が起こり始めて、だいたい治療してから約2週間から3ヶ月前後までには一定の効果が期待できると言われています。 海外のAPS治療に関する報告例では、APSを一回注射するだけで、最大約24ヶ月間にもわたって痛みに対する改善効果が継続するとの実例も紹介されていました。 ただし、これは一例で実際の治療効果や症状が改善する持続期間に関しては、患者様の疾患の程度、条件によって様々、個人差があり変化することをご理解ください。 また、このAPS治療は、PRPと同じく、患者様自身の血液を活用して生成するために、通常ではアレルギー反応や免疫学的な拒絶反応は出現しないと考えられている点も良い面でのポイントです。 ヒアルロン酸の効果が感じられない方は以下の記事も参考にしてください。 APS治療の手順 1)まず約50~60mlの血液を採取 2)厚生労働省が認めている特殊な技術で処理し、血小板成分を濃縮したPRPを抽出 3)精製されたPRP物質をさらに濃縮してAPSを抽出 こうして抽出した後、痛みを自覚されている関節部位に超音波エコー画像を見ながらAPS成分を注射して投与する まとめ|PRP療法・APS療法は血液成分を活用した治療法 PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者様自身の血液中に含まれる血小板を活用、APS治療は患者様自身の血液中に含まれる抗炎症性物質を活用した治療法です。 これらの治療を受けた当日は、入浴や飲酒・喫煙・激しい運動やマッサージなどは出来る限り回避するように意識しましょう。 治療後の行動については、くれぐれも十分に主治医と相談してください。 費用は、それぞれの対象医療施設や治療適応となる患部箇所などによって異なりますので、この治療法をもっと知りたい方は私どもほか、専門の外来へお問い合わせされることをおすすめします。 このPRP・APS療法のほかにも再生医療として、当院「リペアセルクリニック」が推進する「幹細胞治療」という治療法も存在します。 いずれにせよ関節に問題があって、「後は手術しかないと」と言われた方は再生医療をご検討されてはいかがでしょうか。 再生医療をご検討の際は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。
2021.10.20 -
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PRP-FDはメジャーリーグで田中選手や大谷選手が靱帯損傷に使った治療法 膝のPRP-FD注射は、再生医療の新たな選択肢!になるか? 従来、膝の変形性膝関節症などに対する注射療法として、ヒアルロン酸の関節内注射が一般的に普及していた時代がありました。その後、近年には再生医療として血液中の血小板中に含まれる多種の成長因子多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: 略してPRP)の関節内注射の効果が報告されてきました。 この自己・多血小板血漿注入療法とも呼ばれる「PRP療法」は、実は海外においては10年以上の使用実績があることをご存知でしょうか。海外では比較的ポピュラーな治療方法なのです。 例えば、プロ野球選手、アメリカのメジャーリーグで当時、ニューヨーク ヤンキースの田中将大選手、あるいは、今も大活躍のロサンゼルス エンゼルスの大谷翔平選手」が右肘の「靱帯損傷」に対して「PRP療法」を行なったことはよく知られています。 一方で、さらにPRP療法は、PRP-FD(又はPFC-FD)療法という新たな再生医療となり注目され始めています。今回は、このPRP-FDに注目して解説してまいりたいと思います。 PRP-FDとは、 Platelet Rich Plasma Freeze Dryの略であり血小板由来因子濃縮物を指します。同様にPFC-FDとは、Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dryの略称であり日本語に訳すと「血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存」したものという意味の頭文字になります。 これらの療法は、患者さんご自身の血液中の血小板に含まれる「成長因子」を活用するバイオセラピー(再生医療)と呼ばれるもので、関節や筋肉、腱の疾患または損傷に対して「手術をすることなく、注射でのアプローチする再生医療」であることを意味しています。 そこで今回は、再生医療の新たな選択肢となり得る膝のPRP-FD注射について解説してまいりましょう。 1)PRP-FD(PFC-FD)の成り立ちとPRPとの違い 従来からあった「PRP療法」は、自己多血小板血漿注入療法のことであり、患者さん自身の血液中に含まれる血小板の要素を利用した再生医療です。 この療法は、血液中の「血小板の成分だけを高い濃度で抽出して、患部に直接的に注射」する方法です。 これによって関節部の損傷した組織へ、血小板の修復能力を用いた自己治癒力を高めることが可能になり、痛みを含めた損傷した患部の改善を目指し、手術などを避けて治癒できることを期待するものです。 この方法は、歴史的にまだ浅いもののイランの医師であるDr.Raeissadatらが過去の研究をもとにPRP関節内注射の方が従来のヒアルロン酸の関節内注射よりも変形性膝関節症における症状を改善させると発表したことにはじまりました。 このPRP関節内投与は、他の再生医療同様、手術等を回避しながら、症状の改善効果が期待できることから、患者さんのQOL(※1)を向上させることにもつながります。 一般的な治療法では解決できなかった「変形性膝関節症」をはじめとした各種関節症の患者さんに対する治療の有効なオプションになり得ると報告されています。 (※1)QOLは、英語でQuality of Lifeの略です Quality of Lifeを医療面から考えると「自分らしい生活、毎日が充実し、心身が満たされた納得のいく生活」を考慮した上で治療を行うというものになります。 患者さんへの治療方針を定めるに場合に治療方法や、その後の療養生活が患者さんへ与える肉体的、精神的はもちろん社会的、経済的といった生活の質といえる各要素を維持すべきではないかというものです。 病気の内容や治療方針によっては、その後の症状や副作用などによって治療する前と同様な生活が不可能になることがあります。そこで治療法を選択する場合には、単に症状の改善や、回復といった治療の効果だけに目を向けるのではなく、QOLの維持にも目を向けて治療方法を選択したいものです。 その意味で今後、再生医療は従来の手術による治療方法を転換させるさせるものとしてQOLに沿った治療法と言えるのではないかと思われます。再生医療は最新の医療技術で手術や入院そのものを避けることができるからです。 だからメジャーリーグをはじめ、スポーツ選手は再生医療に着目する このように再生医療は、治療結果だけに着目するものではなく、治療後を考えた治療方法といえるのです。なぜならスポーツ選手なら誰しも手術を避け、入院を避け、治療後にパフォーマンスを落とすことのない治療が条件になるからです。 スポーツ選手にとって、このパフォーマンスの維持こそがQOLになり、それを維持することこそが治療の条件になります。だからメジャーリーグをはじめ、スポーツ選手は再生医療を目指すのです。 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています PRP-FD(PFC-FD)療法について、 これは、PRP療法と同様に患者さん自身の血液から「PRP-FD(PFC-FD)」を作製します。投与方法も患部に直接注射して行うという治療法の面でも同じになります。 期待する効果としても同様でPRP-FD(PFC-FD)を注射した後には、PRP療法と同じく損傷した組織において自然治癒力が促進されて患部の早期修復や、疼痛軽減に繋がる再生医療としての効果を期待されるものです。 PRP-FD(PFC-FD)療法とPRP療法の決定的な違いは何でしょうか? PRP-FD(PFC-FD)療法では患者さんの血液からいったん作製したPRPをさらに活性化させて、「血小板に含まれる成長因子だけを抽出し、無細胞化した上で濃縮する」ため、成長因子の総量がPRP療法の約2倍程度に及ぶところが大きな相違点です。 また投与のスケジュールも違いがあります。PRP療法であれば採血当日に限り投与が可能ですがPRP-FD(PFC-FD)療法の場合には、採血から投与ができるまでに約1週間~3週間必要です。 尚、PRP-FD(PFC-FD)療法では、濃縮した血小板由来成長因子をフリーズドライ加工するため、長期保存が可能となります。そのため約半年の間に複数回、タイミングを見て何度か投与することが可能になります。 PRP療法 PRP-FD療法 分野 再生医療 再生医療 投与方法 患部に注射で投与 患部に注射で投与 投与タイミング 採血した当日 採血後1~3週間後 保管 できない フリーズドライ化にて長期可能 回数 当日一回 回数を分けて複数回投与可能 有効成分(成長因子) ― PRPの約2倍 期待する効果 損傷した組織の自己治癒力を高めて改善を目指す 2)膝のPRP-FD注射で期待できる効果や実際の治療法 さてここからは、膝のPRP-FD(PFC-FD)注射に期待できる効果や実際の治療法などについて紹介していきます。 このPRP-FDは、従来のPRP療法と効用効能は、ほぼ同じと考えられていますが、PRP-FD(PFC-FD)療法では患者さんから単回の採血で作製する量が多く、フリーズドライ化しているおかげで保存も長期に可能です。 そのため、症状が重いなど、複数回にわたって関節内注射を打つ必要があるケースでは、PRP-FD(PFC-FD)療法が期間を設けて複数回打つことができるため、その面ではPRPよりも適しているとみることもできます。 また、これらのPRP-FD (PFC-FD)注入療法によって、「テニス肘(テニスエルボー)」や、「ゴルフ肘」と呼ばれる肘内側部あるいは外側上顆炎、そして「ジャンパー膝」と呼ばれる「膝蓋腱炎」を修復できる可能性があります。 また、アキレス腱炎、足底腱膜炎などの腱付着部における疾患や、肉離れ(筋不全断裂)や靱帯損傷などの病気をより早期に治癒させる確率を高める効果を期待できます。 そのため、PRP-FD(PFC-FD)治療では、比較的早く、腱や靱帯由来の関節部の痛みを軽減する効果が見込まれるため、手術といった回復が長期化する治療法を避けることができ、重要なシーズンまでに回復しなければならないなど一日も早く復帰を必要とするプロアスリートや、トップアスリートなどに対して有効な治療法となる可能性があります。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水を溜めるような場合にも、PRP-FD(PFC-FD)治療を実践すると軟骨や半月板などの組織の改善を促すと同時に関節部の滑膜炎を抑制して症状を軽減、回復させる効果を期待できるものです。 これら従来の方法では、変形性膝関節症に対する薬物療法としては、一般的な鎮痛剤の内服やヒアルロン酸を含む関節内注射などを施行されてきました。 ところが、これらの既存的治療が最初から効かない場合、あるいは効かなくなってしまった場合でも、PRP-FD(PFC-FD)を関節内注射することで痛みが軽減した例が多く存在します。 PRP-FD(PFC-FD)療法の実際の手順を簡単に紹介します。 まずは、患者さんに問診、診察を行うことから開始します。 次に、治療内容の説明をして同意を得られた患者様から、約50mlの血液を採血します。その後、血液検査結果からHBV、HCV、HIV、梅毒など感染症の除外を行なった上で、PRP-FD(PFC-FD)を実際に作製します。 この際、活性化成分のみを抽出してフリーズドライ化するのに約1~3週間かかることを念頭に置いておきましょう。そして、最後にPRP-FD(PFC-FD)を患部に直接的に注射することになります。 これらのPRP-FD(PFC-FD)療法は、体外で成長因子を抽出して無細胞化する作業を行うため、PRP療法より、痛みが少ない治療法であると言われています。 まとめ・PRP-FDはMLBで田中選手や大谷選手が靱帯損傷に使った治療法です 従来におけるPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者さん自身の血液中に含まれる血小板を活用した再生医療でした。 そして昨今、注目されている再生医療の一つであるPRP-FD(PFC-FD)療法は、血小板が傷を治す際に放出する成長因子の働きに着目したものでPRP療法を応用した技術を使える上、それらを濃縮活用し、我々の生体が生理的に元来有している「自然治癒力」を高めることで治療効果を向上させるものです。 このように、PRP-FD(PFC-FD)療法はPRPと同様に急性あるいは慢性問わず関節症、あるいは関節周囲の靭帯や半月板など軟部組織疾患に対して治療応用が開始されていますので今後の進展に期待が持てます。 尚、今回ご紹介したPRP療法やPRP-FD療法には、更に高度な最先端医療といわれる「幹細胞を培養して患部に投与する幹細胞療法」があり、症状や軽減だけでなく、「軟骨そのものを再生することができ、再生医療の本命」といわれる治療法があります。 当院は、患者様の生活の質、QOLを大切にできる再生医療を推進しています。これまで多くの症例を有する国内でも唯一のクリニックです。いつでもお問い合わせください。 治療後や、療養生活の質を高める再生医療にご注目ください。 ▼QOLを大切にするPRP療法を用いた 再生医療の詳細は以下をご覧下さい PRP療法は、自ら再生しようとする自然治癒力を活かした最先端の治療方法です
2021.10.19