変形性膝関節症の最新治療、再生医療で軟骨が再生する!
目次
変形性膝関節症の最新治療|ヒアルロン酸注射ではできない軟骨の再生!
はじめに
「変形性膝関節症」と診断され、ヒアルロン酸を注射をしているけど「思ったより効果がみられず困っている・・・」こんなお悩みはありませんか?
注射と言えば炎症や痛みに対して、ヒアルロン酸や、ステロイドを関節内にすることが多々ありますが、これらの注射は一時しのぎで根本的な治療にはならず、症状は進行を続け、最終的に人工関節などの手術に頼ることになりかねません。
これらの注射は、一時的に痛みを緩和できても、痛みの原因となっている傷んだ軟骨を再生させる力は無いことが常識でした。しかし、最新の治療法である「再生医療」がこの常識を覆したのです。
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そこで今回は、「注射で軟骨が再生する」変形性膝関節症の最新治療と題して変形性膝関節症に対する治療法をご紹介します。
まずは、これまで変形性膝関節症の治療に使われてきた、「ヒアルロン酸注射」、「ステロイド注射」をについて紹介し、最新の再生医療での治療法である「PRP療法」「自己脂肪由来・幹細胞治療」をご紹介しましょう。
膝関節へのヒアルロン酸注射について
さて、膝関節へのヒアルロン酸や、ステロイドの注射は、関節の潤滑性を高めたり、炎症や痛みを抑える目的で使われるものです。関節内にある関節液は、関節軟骨を保護し、膝の動きを滑らかにサポートする潤滑油の役割を果たしています。
そんな関節液の潤滑成分としてヒアルロン酸が含まれていることから、変形性関節症で枯渇したサラサラの関節液に対して、ヒアルロン酸を関節内へ注射することで潤滑性を高めて動きをサポートさせます。
しかし、ヒアルロン酸を注射をしたところで、痛みの原因である「軟骨が再生されることはありません」
今、まさに治療を行われている方なら、お分かりかもしれませんが慣れてくると注射後2〜3日、中には1日ほどで、また痛みに悩まされることも少なくないのです。
ヒアルロン酸注射の頻度・回数は、ヒアルロン酸に含まれる分子量により異なります。この分子量が高いほど関節内で長時間留まるとされています。ただ、実際に痛みを回避するには週に1回から、いずれは3回~注射することになりかねません。
膝に水が溜るとは
膝に炎症が起こり、水が溜まることがあります。これを「関節水腫」といい、膝に水が溜っていたらヒアルロン酸注射の前にこの水を抜いてやる必要があります。
なぜなら膝に水が溜まった状態でヒアルロン酸注射をしたところで、溜った水によってヒアルロン酸の濃度が薄められ、効果が半減されてしまうからです。更に、溜まった関節液には、炎症を悪化させてしまうサイトカインという物質も含まれています。
また稀にヒアルロン酸にアレルギー反応を起こす場合もあるため、万人が受けられるわけでもありません。
膝へのヒアルロン酸 | ||
効果 | 問題 | 注意事項 |
・膝軟骨を保護 ・膝の滑らかな動きをサポート |
・軟骨を再生するものではなく ・改善等の根本治療にはならない ・効果が続かない(3日ほど) |
・水が溜る「関節水腫」になる危険性 |
「ステロイド注射」で痛みは消えるが、注意すべきこと
痛みや炎症が強い時は、ステロイド薬を関節内へ注射します。ステロイド注射はヒアルロン酸注射と比べ、痛みを抑えるのに非常に高い効果を発揮するとの報告が多くあります。
ただし、注意しておきたいのは、ステロイド注射を多用すると副作用があること。それは骨や、軟骨の新陳代謝をステロイドが阻害したことによって起こる可能性のある「骨壊死」、関節が破壊される「ステロイド関節症」というもので注意が必要です。
このようなステロイド注射による副作用を防ぐためには最低でも6週間置いての注射とし、できれば3ヶ月ほどは、間隔を空けるべきであることを知識として知っていて欲しいと思います。短期での連続した注射や長期間に及ぶ使用は避けるべきです。
繰り返しになりますがステロイド注射による痛みの改善は一過性であり、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではありません。痛いからと、使い方を誤ると副作用という大きな危険性があります。
ここまでヒアルロン酸や、ステロイドとしった痛みを抑える目的で使われる注射を紹介しました。
次に自分の血液や細胞を使うことで「アレルギー反応が起こりにくい」「軟骨の再生を期待できる」最新の注射による治療方法を紹介します。
膝へのステロイド注射 | ||
効果 | 副作用 | 副作用を抑えるための注意事項 |
膝の意痛みを抑える 膝の炎症を抑える |
・骨や軟骨の新陳代謝を阻害 → 骨壊死、 → 関節が破壊されるステロイド関節症 |
・6週間置きの注射 ・3ヶ月間は空ける ✕ 短期での連続した使用 ✕ 長期間に及ぶ使用 |
膝の痛みを消すだけ、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではない |
再生医療|変形性膝関節症に対する最新の幹細胞治療とは
PRP(Platelet-Rich Plasma=多血小板血漿)療法
PRP療法とは、患者様の血液を採取し、血液中に含まれる血小板の多い血漿だけを抽出し、膝へ注射する治療法です。多血小板血漿には、組織や細胞の成長を促す成長因子が多く含まれています。
そのため、高い治癒効果が期待できる方法といえます。またヒアルロン酸と違い、自分の血液を使用することでアレルギー反応が出にくいのも特徴です。PRP療法は、近年耳にする機会が増えた「再生医療」に分類される治療法です。
まだ日本では保険が適応されない自由診療となるため、ヒアルロン酸注射やステロイド注射のように気軽に打てる金額ではない点がデメリットになります。
また再生医療を扱うには「再生医療等の安全性確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省に認可された医療機関、専門医にしかできない治療法になっているため、近所の整形外科で簡単にできるわけではありません。
ただ、そのため、安全性が確保されている治療法とも申せます。
「軟骨が再生する!」自己脂肪由来・幹細胞治療
主に皮下脂肪にある幹細胞組織を使い、軟骨をはじめとして、さまざまな組織に再生させる機能を持つ、可能性に満ちた治療法です。
幹細胞は、軟骨や皮膚、骨などに分化(複雑なものに発展していくこと)する機能があります。体から採取した幹細胞を培養(増やす)して膝の関節内へ注射することで、傷んだ軟骨の再生を期待することができ、これまでになかった治療法になります。
幹細胞は骨髄からも採取することはできますが、より侵襲が少ない皮下脂肪から採取されるのが一般的です。PRP療法と自己脂肪由来幹細胞治療の違いそれでは同じ再生医療の分野であるPRP療法と自己細胞由来幹細胞治療とは何が、どう違うのでしょうか?
PRP療法は、傷んだ組織に対して組織や、細胞の成長を促す栄養素が含まれている「多血小板血漿」を注射します。もともと血小板の役割に成長因子の分泌がありますが、「多血小板血漿」には通常の血小板と比べて3〜5倍もの成長因子があることが特徴です。
これによりヒアルロン酸注射にはできなかった慢性化した患部の修復や、治癒を高めることができます。
その一方でPRPには幹細胞が含まれていないので、軟骨を再生することはできません。自己脂肪由来幹細胞治療では、さまざまな組織に分化(変化)する働きをもつ幹細胞を、何千〜何百万倍も培養し、膝に注射します。
幹細胞が集中的にすり減った軟骨に働きかけ、これまで不可能とされてきた軟骨を再生させます。また注射する幹細胞の数にも注目すべきで海外の臨床データによると幹細胞の数が多いほど治療成績が良いことがわかっているからです。
なぜなら培養せず注射する治療法をADRC(脂肪組織由来再生幹細胞治療)セルーションと言うのですが、培養を行わないため幹細胞の数自体が少ないことになるからです。
その意味で治療を受ける際は、受診するクリニックが幹細胞を培養しているか確認することは大切なことになります。PRP療法は注射で実施できることから、傷口は小さくてすみます。
自脂肪由来幹細胞治療も米粒2〜3粒ほどの脂肪を摂取するために、下腹部周辺を5ミリほど切開しますが、投与自体はPRPと同じく直接膝に注射することため、大きな傷口を作ることはありません。
日帰りで受けられるこれまでには無かった治療法です。なお自己脂肪由来幹細胞治療もPRP療法ともに自由診療で、認可された医療機関でしか行えません。
再生医療 | PRP療法 | 幹細胞治療 |
軟骨 | 再生できない | 再生する |
アレルギー | ⇒ | 出にくい |
治療 | ⇒ | 専門医、専門院に限る |
種類 | 再生医療 |
変形性膝関節症|再生医療なら注射で「軟骨が再生する」/まとめ
いかがでしたか?変形性膝関節症に対する従来の注射「ヒアルロン酸注射」と「ステロイド注射」、最新治療の注射「PRP療法」「自己脂肪由来幹細胞治療」の役割を紹介しました。
これまで変形性膝関節症に対する注射は、痛みを抑え、少しでも悪化を遅らせる目的で使用されてきたものですが、再生医療であるPRP療法・自己脂肪由来幹細胞治療により、治癒そのものを促進させ、失われた軟骨を再生させることで回復を目指す!といった今までには無かった前向きな治療法です。
変形性膝関節症の痛みで悩み、薬や注射をしたけれど「期待していた効果を感じられなかった」「できるだけ手術はしたくない」という思いがある方は、薬や注射といった薬物療法と手術の中間に位置する再生医療での治療を検討してみてはいかがでしょうか。
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変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます
No.026
監修:医師 坂本貞範