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「最近、ダイビング後に体の不調が気になる……」 「もしかして減圧症かも?でも、どうすれば良いのかわからない……」 ダイビング後の体調不良や、減圧症かもしれないという不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 減圧症は、ダイビングなどで深い位置から浅い位置に急浮上した際に起こる病気です。高圧の環境で血液や組織に溶け込んでいた窒素が気泡となり、さまざまな症状をもたらします。 本記事では、減圧症の原因から症状、有効な治療法まで、専門医が詳しく解説します。正しい知識を身につけて、ダイビングを楽しむための参考にしてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。再生医療について詳しくは、公式LINEをご確認ください。 減圧症とは?急激な気圧の変化で起こる疾患 減圧症とは、ダイビングや高所作業など、周囲の圧力が急激に低下する環境で発症する病気です。 体内に溶け込んでいた窒素が圧力の低下により気化し、気泡となって血管や組織を傷つけることで、さまざまな症状を引き起こします。(文献1) 減圧症を引き起こす現象は、ダイバーだけでなく、高所での建設作業員や航空機のパイロット、宇宙飛行士にも起こる可能性があります。 減圧症になるメカニズム 私たちの体は呼吸を通じて酸素を取り込み、二酸化炭素を排出しています。空気の約78%を占める窒素は、通常であれば体内で利用されずに排出される気体です。 しかし、水中に深く潜ると水圧によって周囲の圧力が高まるため、気体の液体への溶解度は、その気体の分圧に比例するヘンリーの法則に基づき、高圧下ではより多くの窒素が血液や組織に溶け込むのです。(文献2) 体内に多くの窒素が溶け込んだ状態で急激に浮上すると、体にかかる圧力が一気に下がり、溶け込んでいた窒素が気化して小さな泡を形成します。 形成された窒素の気泡が血流に乗って全身を巡り、血管を塞いだり組織を圧迫して減圧症特有の症状を引き起こすのです。 このメカニズムは、たとえば炭酸飲料のペットボトルの炭酸が吹き出す現象によく似ています。 フタが閉まっている高圧の状態では、炭酸ガスは液体に溶け込んでいますが、フタを開けて圧力が急に下がると、シュワシュワと音を立ててガスが気泡となって一気に飛び出してきます。 炭酸飲料のガスが気泡となって飛び出すのと同じ現象が、体内で起こっているのが減圧症です。 I型減圧症(関節・筋肉症状中心) I型減圧症は、比較的軽症とされ、主に皮膚、関節、筋肉に症状が現れるタイプです。(文献3) ダイバーの間では、体を折り曲げるほどの痛みが出ることからベンズとも呼ばれています。 症状はダイビング後数時間以内に現れることが多いですが、24時間以上経過してから発症するケースもあります。 代表的な症状は、肩、肘、膝などの関節に生じる鈍い痛みです。 関節の痛みは時間とともに増していくことがあり、動かすと悪化してしまうのも特徴です。 また、皮膚に現れる症状としては、かゆみ、発疹などがあります。 軽症とはいえ、関節痛や皮膚の発疹といった症状は、体内で窒素の気泡が形成された明確なサインです。 とくに、皮膚症状がより重篤な神経症状の前兆である可能性も指摘されています。 自己判断でただの筋肉痛やじんましんと片付けず、専門家に相談しましょう。 主な症状 症状が現れる部位 重症度 緊急性 後遺症のリスク 関節痛(ベンズ) 肩、肘、手首、膝などの関節 軽症 低い 低い(早期治療で回復) 筋肉痛・だるさ 全身の筋肉 軽症 低い 低い(早期治療で回復) 皮膚症状 上半身、肩、胸部などのかゆみ、発疹、むくみ 軽症 低い 低い(早期治療で回復) II型減圧症(神経・循環器症状) II型減圧症は、神経系、循環器系、呼吸器系に気泡が影響を及ぼす重篤なタイプです。(文献3) 生命に関わる危険性があり、緊急の治療を必要とします。 とくに頻度が高いのが、脊髄に気泡が詰まる脊髄型減圧症です。 脊髄型減圧症は手足のしびれや麻痺感覚の鈍化、排尿・排便障害などを引き起こします。脳に影響が及べば、意識障害、視覚異常、めまいなどを起こすこともあります。 また、肺の血管に多数の気泡が詰まると、チョークス(呼吸循環器型減圧症)と呼ばれる激しい胸の痛みや咳、呼吸困難に陥り、非常に危険な状態となります。 一度、脊髄のような中枢神経系が損傷を受けると、完全な回復が難しく、後遺症が出る可能性が高まります。 しびれ、めまい、呼吸の苦しさといった症状は、減圧症における最も危険なサインと認識してください。 主な症状 症状が現れる部位 重症度 緊急性 後遺症のリスク 神経症状 脊髄、脳、末梢神経 重症 高い 高い 呼吸器症状 肺(胸の痛み、咳、呼吸困難) 重症 高い 中程度 減圧症の原因 減圧症の主な原因は、水中で起こる急激な圧力の低下です。水圧が高い環境では、体内に窒素が溶け込みます。 急激に浮上して水圧が下がると、この溶け込んでいたガスが気化して気泡となり、血管や組織を塞いでさまざまな症状を引き起こします。 窒素が気泡になるというメカニズムに加え、発症には以下の要因が複合的に影響します。(文献4) 主な要因 なぜリスクとなるのか 急速な浮上 体内の窒素ガスが気化するスピードが速くなり、気泡ができやすくなるため。 潜水深度と時間 深く、長時間潜るほど、体内に溶け込む窒素量が増加するため。 反復潜水 前回の潜水で体内に残った窒素が蓄積されるため。 脱水・疲労・睡眠不足 血行不良を引き起こし、窒素の排出を妨げるため。 肥満 窒素は脂肪組織に溶け込みやすいため。 寒冷 水中で体が冷えると、血管が収縮し血行が悪くなるため。 飲酒・喫煙 脱水症状や血行不良を招くため。 上記の要因は、それぞれが単独で減圧症のリスクを高めるだけでなく、複数組み合わさることでさらに危険性が増します。 たとえば、疲労した状態で深くまで潜り、かつ急いで浮上するようなケースは、減圧症を発症するリスクが極めて高いと言えます。 安全なダイビングのためには、ダイブプランの遵守に加え、体調管理も非常に重要です。 減圧症の症状|どんな症状が現れる? 減圧症の症状は多岐にわたりますが、中でも神経症状はとくに重症度を判断する上で重要です。 症状の現れ方は、気泡が詰まる場所によって大きく変わってきます。 損傷部位によって変わる症状の特徴 脊髄は脳と全身をつなぐ神経の束であり、体の各部位に神経をつないでいるため、気泡が詰まる場所によって症状が異なります。 損傷部位 主な症状・影響範囲 頸髄(首) 腕や足を含む四肢すべてに麻痺やしびれなどの症状が及びます。 胸髄(胸) 主に下半身に影響が及び、両足が麻痺する対麻痺の状態になることがあります。 腰髄(腰) 足のしびれや脱力、排尿・排便障害といった症状が現れやすくなります。 損傷部位の中でも、減圧症では胸髄の下位から腰髄の上位にかけての損傷が最も多いとされています。 症状が現れた場合は、一刻も早く専門の医療機関を受診してください。 軽症・重症の見分け方と後遺症のリスク 症状の重症度は、生活にどれだけ支障が出るかで大まかに判断できます。 軽度のしびれや一時的な筋力低下であれば軽症に分類されることが多いですが、歩行が困難になったり、排尿・排便に異常が出たりした場合は重症と考え、一刻も早く専門医療機関を受診する必要があります。 しかし、どんな症状であっても自己判断で、軽症だから大丈夫と放置してはいけません。 減圧症は早期治療が予後を大きく左右する疾患です。 神経組織は一度損傷すると自然な回復が難しいため、発症後いかに早く治療を開始するかが、その後の人生を左右する鍵となるのです。 減圧症の治療法 減圧症の治療は、時間との勝負です。 症状の発症が疑われた時点ですぐに応急処置を開始し、根本的な治療である高気圧酸素治療へとつなげることが、後遺症のリスクを最小限に抑える上で極めて重要になります。 治療の目的は、体内で気泡化した窒素を排出し、気泡によって酸素不足に陥った組織を回復させることです。治療は段階的に行われ、まずは現場での応急処置、次に専門施設での高気圧酸素治療が中心となります。 自己判断で様子を見たり、医学的根拠のない民間療法に頼ると回復の機会を逃すことになりかねません。症状の重さにかかわらず、必ず専門の医療機関を受診してください。 発症直後の応急処置 減圧症が疑われる症状が現れたら、パニックにならず、まずは安全を確保して応急処置を開始します。 発症直後の応急処置が、その後の治療効果に大きく影響します。 【対応すべきこと】 安静を保つ:水平に寝かせ、体を動かさない 純酸素の吸入:医療用純酸素(100%)を吸入 水分補給:水かスポーツドリンク(カフェイン・アルコール不可) 保温:濡れたウェットスーツを脱がせ、タオルや毛布で保温 緊急連絡:118番/119番に連絡、ダイビング後の減圧症と伝える 医師に情報を伝えるため、発症時刻、ダイビングの深度・時間、症状の詳細をメモしておくと診断・治療に役立ちます。 【やってはいけないこと】 自己判断で放置:軽症に見えても重症化する可能性あり マッサージや激しい運動:窒素の気泡が全身に広がる 入浴やシャワー:血管拡張により症状悪化リスクあり 症状が軽い場合も、自己判断で様子を見るのではなく、必ず専門医療機関を受診してください。 応急処置は搬送までの症状悪化を防ぐためのものであり、適切な治療には医師の診断が必要です。 高気圧酸素治療 減圧症の標準的な治療法が、高気圧酸素治療です。 高気圧酸素治療は、専用の装置の中で2.8気圧程度まで気圧を高めた環境に入り、100%の純酸素を吸入する治療法です。(文献5) この治療は、物理学の法則を利用して減圧症の根本原因にアプローチします。 1.気泡の収縮・溶解(再圧) まず、チャンバー内の気圧を上げることで、体内の気泡を物理的に小さく圧縮し、再び血液や組織に溶け込ませます。これは、水中に深く潜っていくのと同じ状態を人工的に作り出します。 2.窒素の排出と組織への酸素供給 高い圧力下で純酸素を吸入すると、血液中に溶け込む酸素の量が通常の10〜20倍に増加します。これにより、体内の窒素分圧が相対的に下がり、窒素の排出が効率的に行われます。同時に、気泡で血流が滞っていた組織の隅々まで酸素が供給され、細胞の機能回復が強力に促されます。 治療は症状に応じて数時間にわたり、複数回行われることもあります。後遺症を残さないためには、いかに早くこの治療を開始できるかが最も重要です。 減圧症の予防法 減圧症を予防するためには、ダイビングにおける安全ルールを徹底して守ることが最も重要です。 ルールの一つひとつが、科学的根拠に基づいて体への負担を減らすために作られています。 安全なダイビングのためのルールと注意点 減圧症を予防するためには、ダイビングにおける安全ルールを徹底して守ることが重要です。ルールの一つひとつが、科学的根拠に基づいて体への負担を減らすために作られています。 減圧症を予防するために、以下のポイントを必ず守りましょう。 十分な睡眠をとる 疲労を避ける 飲酒後のダイビングは厳禁 ダイビング前後に十分な水分補給 潜水深度、時間、休憩時間を含むダイブプランを作成 万全の体調を整えた上で、事前に潜水深度、休憩時間などを盛り込んだダイブプランをもとにダイビングを楽しみましょう。 潜水中、とくに重要なのが浮上時の行動です。ダイブコンピューターが示す安全な浮上速度を厳守し、急浮上を避けることで、体内の窒素が急激に気泡化するのを防ぎます。 さらに浮上の最後には、減圧症予防の要となる安全停止を水深5メートル付近で最低3分間必ず行い、体内に溶け込んだ窒素を呼吸によって穏やかに排出させましょう。 そして、ダイビング後の行動も予防には欠かせません。体内に残った窒素が、気圧の低い場所で膨張するのを防ぐためです。 ダイビング後、最低でも18時間から24時間は、飛行機への搭乗や登山、峠越えといった高所への移動は避けてください。 まとめ|減圧症は早期治療が大切!症状を感じたら迷わず受診しよう 減圧症は、ダイビングなどの圧力環境の変化によって誰にでも起こりうる疾患です。 正しい知識を持ち、予防策を徹底すればそのリスクを大幅に減らします。ダイブプランの遵守と、日頃からの体調管理を常に心がけてください。 もし万が一、ダイビング後に体に少しでも異変を感じた場合は、軽症だから気のせいだろうと自己判断してはいけません。早期に高気圧酸素治療を受けることで、後遺症のリスクを最小限に抑え、健やかな生活に戻れる可能性が大きく高まります。 症状を感じたら迷わず、直ちに医療機関を受診しましょう。 参考文献 (文献1) 減圧症 – 25. 外傷と中毒 | MSDマニュアル家庭版 (文献2) 減圧症 - 22. 外傷と中毒 | MSDマニュアル プロフェッショナル版 (文献3) 潜水による障害 再圧治療|高気圧酸素治療法入門第6版 (文献4) 減圧症にならない潜り方|日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 vol.45 (文献5) 減圧障害の最新治療|日本高気圧環境・潜水医学会雑誌 vol.43 No.2
2024.01.18 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷は、交通事故や高所からの転落といった外傷だけでなく、椎間板ヘルニアなどの病気や、高齢者の転倒によっても引き起こされます。(文献1) 脊髄損傷の原因はさまざまですが、患者様やそのご家族にとって、「手足の麻痺は治るのか」「どこまで回復できるのか」という不安は共通のものではないでしょうか。 本記事では、脊髄損傷の原因や損傷レベル別の症状、回復の可能性、3つの主要な治療法について解説します。脊髄損傷の治療や、今後の選択を考える上で、判断材料の一つとしてお役立てください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。脊髄損傷の原因について気になる方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脊髄損傷の主な原因|外傷性(事故)と非外傷性(病気) 脊髄損傷の原因は、以下の2通りに分けられます。 外傷性脊髄損傷 非外傷性脊髄損傷 それぞれ、詳しく解説します。 外傷性脊髄損傷の原因 外傷性脊髄損傷は、脊椎(背骨)に強い力が加わることで発生します。衝撃によって脊椎が骨折したり脱臼したりすると、脊柱管の中にある脊髄が圧迫されたり、直接傷つけられたりして損傷が起こります。(文献1)なお、骨折や脱臼がなくても、強い衝撃で脊髄が損傷することもあります。(非骨傷性頸髄損傷など) 外傷性脊髄損傷の代表的な原因は以下のとおりです。 交通事故(自動車事故、バイク事故) 高所からの転落、平地での転倒 スポーツ外傷(ラグビー、柔道、スノーボード、水泳の飛び込みなど) 労働災害(建設現場での事故など) とくに首(頸椎)は可動域が大きく、強い衝撃を受けやすい部位であるため、交通事故やスポーツでの受傷が多くみられます。 非外傷性脊髄損傷の原因 非外傷性脊髄損傷とは、交通事故や転倒などの外傷ではなく、体内で起こる病変(炎症や腫れなどの異常)によって脊髄に障害が生じる状態を指します。 非外傷性脊髄損傷の代表的な原因は以下のとおりです。 病名 概要 椎間板ヘルニア (ついかんばん) 椎間板が飛び出し、脊髄を圧迫することで症状が現れる 脊柱管狭窄症 (せきちゅうかんきょうさくしょう) 脊柱管が狭くなり、内部を通る脊髄が圧迫される 後縦靭帯骨化症 (こうじゅうじんたいこっかしょう) 背骨の靭帯が骨のように硬くなり、脊髄を圧迫する 脊髄腫瘍 (せきずいしゅよう) 脊髄やその周囲にできた腫瘍によって、脊髄が圧迫される 脊髄梗塞 (せきずいこうそく) 脊髄への血流が途絶えることで、神経の働きに影響が及ぶ 非外傷性の場合、手足のしびれや歩行時のふらつきなどが前兆として現れる場合も多いです。このような症状に気づいたときは、早めに医療機関を受診しましょう。 なお、脊髄損傷についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。 脊髄損傷を発症した人の原因別の割合 日本における脊髄損傷の原因別割合をみると、以下のような順位が報告されています。 交通事故(割合:42.7%) 高所転落(割合:28.9%) 転倒(割合:12.9%) 打撲・下敷き(割合:5.5%) スポーツ(割合:5.4%) 自殺企図(割合:1.7%) その他(割合:1.9%) (文献2) 交通事故は比較的若い人に多く、バイクや自動車を運転中の衝突事故が大きな要因です。一方、高所転落は高所作業や建設現場などの労働環境で発生しやすく、労働災害としての事例もあります。 なお、脊髄損傷のリスクは年齢や生活環境によって異なります。事故を防ぐためには、交通ルールの遵守や安全対策の徹底、転倒予防の工夫が重要です。 脊髄損傷レベル別の症状と回復の可能性 脊髄損傷の症状と回復の可能性を理解する上では、「完全損傷」と「不全損傷」の違いを知ることが重要です。 分類 状態 回復の可能性 完全損傷 ・損傷部位で脊髄の機能が完全に断たれた状態 ・損傷部位より下の運動機能と感覚機能がすべて失われる 回復は困難とされている 不全損傷 脊髄の一部が損傷を免れ、機能が部分的に残っている状態 リハビリテーションなどを通じて機能改善の可能性がある 上記のとおり、完全損傷は一般的に回復が困難とされています。 一方で、不全損傷の場合、リハビリテーションの継続で、歩行能力や日常生活動作に変化がみられることがあります。 また、損傷した部位の高さ(損傷高位レベル)によって、以下のような症状が現れます。 損傷高位レベル 主な症状 頸椎損傷(C1~C8) ・全身麻痺や呼吸困難(C1~C4) ・腕や手の一部が動く(C5~C8) ・排尿・排便障害(C5~C8) ・自律神経障害(C5~C8) 胸椎損傷(T1~T12) ・下半身麻痺 ・体幹のバランス低下 ・排尿排便障害 腰椎損傷(L1~L5) ・歩行困難 ・膀胱直腸障害 ・感覚障害 仙椎損傷(S1~S5) 軽度の感覚障害や排尿排便の調整機能低下 (文献1) 上記のように、損傷高位レベル別で症状は異なります。 なお、以下の記事では、脊髄損傷における回復の可能性を詳細に解説しています。ぜひ参考にしてください。 脊髄損傷が原因で起こる合併症と二次的障害 脊髄損傷は手足の麻痺だけでなく、全身にさまざまな影響を及ぼします。合併症のなかには命に関わるものもあるため、適切な予防と管理が欠かせません。 脊髄損傷が原因で起こる主な合併症は、以下のとおりです。 呼吸器・循環器障害 消化器障害・排泄障害 褥瘡(床ずれ) それぞれ、詳しく解説します。 呼吸器・循環器障害 頸髄(首の位置にある脊髄)の高い位置で損傷を受けた場合、呼吸に関わる筋肉(横隔膜や肋間筋)が麻痺し、呼吸不全を起こすことがあります。また、咳をする力が弱まって痰を排出しにくくなり、肺炎のリスクも高まります。 さらに、自律神経の障害による起立性低血圧(立ち上がったときに血圧が急激に低下し、立ちくらみやめまいが生じる状態)にも注意しなければなりません。 加えて、下半身の麻痺によって足を十分に動かせない状態が続くと、血流が滞りやすくなり、足の静脈に血のかたまり(血栓)ができやすくなります。この血栓が肺に流れると、いわゆるエコノミークラス症候群を引き起こす危険があります。 消化器障害・排泄障害 脊髄損傷によって自律神経が障害されると、消化管の動きが低下することがあります。その結果、ストレス性胃潰瘍が生じる場合もあります。 なお、感覚障害の影響により腹部の違和感や痛みを自覚しにくいため、症状が進行した後に気づくことも多いです。 また、排泄障害は脊髄損傷に伴ってみられる症状の一つです。 膀胱や腸の機能に影響が及ぶため、尿閉(尿が出にくい状態)や尿失禁、便秘などが起こりやすくなります。 適切な排尿管理を行わないと尿路感染症を繰り返し、全身に感染が広がる恐れもあるため注意が必要です。 褥瘡(床ずれ) 脊髄損傷によって感覚に影響が及ぶと、長時間同じ姿勢を続けていても、圧迫による違和感や痛みを自覚しにくいです。その結果、皮膚や皮下組織への血流が低下し、褥瘡(じょくそう:いわゆる床ずれ)が生じやすくなります。 褥瘡が進行すると、皮膚やその下の組織が損傷し、深い傷になる場合があります。また、もしも細菌感染を起こした場合、全身への感染が広がる可能性もあるため注意が必要です。 脊髄損傷患者の褥瘡を防ぐためには、定期的な体位変換や皮膚状態の確認が重要とされています。 脊髄損傷の3つの治療法 脊髄損傷の治療は、受傷してからの時期(急性期・回復期・慢性期)と治療の目的に応じて、大きく3つの柱に分けられます。 原因に対する手術・薬物療法(急性期) 機能回復のためのリハビリテーション(回復期〜) 神経修復を促す再生医療(回復期〜慢性期) それぞれ詳しく解説します。 原因に対する手術・薬物療法(急性期) 脊髄損傷の治療は、原因に応じたアプローチが必要です。脊髄感染症やビタミン欠乏、腫瘍が関与している場合、それぞれに適した治療を行います。 たとえば、感染症なら抗生物質、ビタミン欠乏なら栄養補給、腫瘍なら放射線療法や手術を検討します。 また、椎間板ヘルニアや血腫、膿瘍などが脊髄を圧迫している場合、手術での原因除去が一般的です。たとえば、腰椎椎間板ヘルニアなら突出した髄核(ずいかく)を摘出し、神経の圧迫を軽減します。 さらに、硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)なら血液を排出し、脊髄の機能を回復させます。脊髄膿瘍では、膿を排出する手術と抗菌薬の投与を組み合わせての治療が一般的です。 機能回復のためのリハビリテーション(回復期〜) 受傷直後から月日が経過し、状態が安定した後は、リハビリテーション治療が中心となります。リハビリテーションの目的は、残された機能(残存機能)を強化し、日常生活動作(ADL)の獲得を目指すことです。 具体的には、主に以下のリハビリテーションが行われます。 リハビリテーションの種類 内容 理学療法 筋力訓練、関節可動域訓練、歩行訓練などを行い、身体機能の維持や向上を目指す 作業療法 食事や着替えなどの日常生活動作の訓練や、補助具の使用訓練を行う 排泄リハビリ 排尿・排便動作の自立を目指し、排泄に関わる訓練や指導を行う しかし、標準的なリハビリテーションだけでは、一度失われた神経そのものを回復させることは難しいのが現状です。 そのため、リハビリを継続しても、ある程度の麻痺が残ることが多くみられます。 脊髄損傷のリハビリテーションについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。 神経修復を促す再生医療(回復期〜慢性期) 再生医療は、手術やリハビリテーションと並ぶ、脊髄損傷治療の選択肢の一つです。 再生医療では、患者様自身の脂肪から採取した幹細胞を培養し、点滴や局所注射による体内投与を実施します。 幹細胞には、さまざまな種類の細胞に変化する分化能(ぶんかのう)と呼ばれる性質があり、損傷した神経組織の修復を促す働きが期待されています。 再生医療は、以下のような方に検討されることがあります。 リハビリを続けても改善が見られない方 受傷から時間が経過し、慢性期に入っている方 手術が難しい、または手術後も症状が残っている方 脊髄損傷の後遺症に対する治療「再生医療」について 現在、脊髄損傷に対する治療の選択肢の一つとして、再生医療(幹細胞を用いた治療)が取り入れられています。 幹細胞治療は、患者様ご自身から採取した幹細胞を培養し、体内に投与する治療法です。投与方法として、当院では点滴のほか、注射で脊髄腔内に直接届ける方法を採用しています。幹細胞が持つ「炎症を抑える」「神経の働きを助ける物質を分泌する」といった性質を活用します。 また、リハビリテーションとの併用で、身体機能の維持や回復を目指す取り組みも行われます。 再生医療についての詳細は、当院「リペアセルクリニック」での症例を紹介している以下のページをご覧ください。 まとめ|脊髄損傷の原因や症状を理解して適切な治療法を選びましょう 脊髄損傷の原因は、交通事故などの外傷性のものから、椎間板ヘルニアなどの非外傷性のものまでさまざまです。 また、損傷したレベルや程度によって、症状や回復の可能性も一人ひとり異なります。 脊髄損傷を万が一受傷した場合でも、その後の治療やリハビリテーションの取り組み方によって、症状の軽減を期待できます。適切な治療を施し、機能改善を目指しましょう。 「もう回復は難しい」と諦めている方も、ぜひ一度、再生医療という選択肢について検討してみてください。 当院の公式LINEでは、さまざまな疾患に対する再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。脊髄損傷にお悩みの方は、ぜひご登録ください。 脊髄損傷の原因や回復に関するよくある質問 脊髄損傷から回復した人や歩けるようになった人はいる? 脊髄損傷からの「完全回復」は難しいとされていますが、リハビリテーションや再生医療を通じて「機能改善」を達成した方は多くいらっしゃいます。 たとえば、車椅子生活を送っていた方が杖歩行できるようになったり、介助が必要だった方が車椅子で自立した生活を取り戻したりした事例があります。 改善の程度は損傷の状態や治療への取り組みによって異なりますが、諦めずに治療を続ければ生活の質を向上させることは十分に可能です。 手術をすれば麻痺は治る? 脊髄損傷時の手術は、脊髄への圧迫を取り除いたり、不安定な脊椎を固定したりするために行われます。しかし、手術はあくまで「圧迫を解除する」「骨を安定させる」ことが目的であり、一度傷ついた神経を元どおりに修復できるわけではありません。 そのため、手術を受けたからといって、すぐに麻痺がなくなるわけではないのが現実です。 このような背景から、手術後においてもリハビリテーション継続が重要とされています。また、患者様の状態に応じて、再生医療が併せて検討されることもあります。 参考文献 (文献1) 「脊髄損傷」|公益社団法人日本整形外科学会 (文献2) 「脊髄損傷」|一般社団法人日本脊髄外科学会
2022.06.24 -
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脊髄損傷を負ったあと「リハビリでどこまで回復できるのか?」「効果的なトレーニング方法は?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか? リハビリは早期に始めるほど効果が高く、適切なトレーニングを継続すれば日常生活の質向上が期待できます。 本記事では、脊髄損傷におけるリハビリやトレーニングについて詳しく解説します。リハビリの回復見込みや注意点も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 脊髄損傷のリハビリ内容【主な部位へのアプローチポイント】 さっそく、脊髄損傷のリハビリ内容を解説します。脊髄損傷におけるリハビリでは以下の訓練や療法がよくおこなわれます。 可動域訓練 筋力トレーニング 歩行訓練 電気刺激 順番に見ていきましょう。 可動域訓練|全身へのアプローチが可能 脊髄損傷後のリハビリでは、早期から関節の可動域訓練を行います。 脊髄を損傷すると「正常な筋肉」「麻痺がある筋肉」「筋力低下した筋肉」が混在します。その結果、筋肉のバランスが崩れることで拘縮(こうしゅく:関節が固くなり動きが制限される状態)が発生しやすくなるため、早期の訓練開始が重要です。 下部頸髄損傷による拘縮では、肘・膝・足の関節が屈曲位で固定されるだけでなく、全身の柔軟性が低下します。 拘縮が進行すると、座位の維持や寝返り、起き上がり、移乗(車椅子への移動など)にも支障が出るため、可動域訓練は全身の機能維持において欠かせない訓練といえます。 筋力トレーニング|上肢・下肢の筋力強化に有効 脊髄損傷のリハビリを目的とした筋力トレーニングは、麻痺を負った筋肉とのバランスを整えるほか、残存した機能を活用して日常生活を送るために欠かせない取り組みです。 たとえば、呼吸筋を鍛える「バルサルバ法」(バルサルバ手技とは異なる)は、呼吸機能の回復に有効であり、生活の質(QOL)の向上につながります。このトレーニングは、息を止めて腹部に力を入れることで呼吸筋を鍛える方法で、推奨時間は30秒未満です。 適切な筋力トレーニングを継続すれば、上肢・下肢の筋力を維持・向上させ、日常動作の改善を図れます。 歩行訓練|下肢の機能回復に有効 歩行訓練を早期から実施すると、歩行機能の向上だけでなく、身体機能も高まります。 脊髄損傷のリハビリでは「吊り上げ式免荷歩行」がよく採用されます。 これはジャケットを装着して体を上方へ牽引し、体重負荷を軽減しながら安全に歩行訓練をする方法です。 吊り上げ式免荷歩行を実施するメリットは以下の4つです。 早い段階から歩行練習ができる 身体の一部を支え負担を軽減できる 転倒のリスクを減らし安全に訓練できる 歩く動作に近い運動ができ意欲が向上する この方法により、安全性を保ちながら下肢の機能回復を促進します。 電気刺激|指先への細やかなアプローチも可能 機能的電気刺激(FES:functional electric stimulation)では、電気刺激により、麻痺を起こした筋肉を動かすことで身体機能の回復を図るリハビリ手法です。 具体的には、体の表面に装着もしくは体内に埋め込んだ電極から電気信号を送り筋肉を収縮させる方法です。 電気刺激により、歩行や起立動作などの日常生活動作の改善に加え、高位脊髄損傷者では人工呼吸器が不用になった報告があります。動作の向上は脊髄損傷を負った方にとって、リハビリ意欲の向上につながるでしょう。 電気刺激は、手指や手首の動作改善にも有効であり、握力の向上や指先の細かな動作の回復を促します。これにより、食事や着替え、筆記といった日常生活動作の自立支援にも貢献します。 再生医療|脊髄損傷の後遺症に対する新たな治療法 従来の治療法は主にリハビリで、症状が悪化すれば手術を受けるのが一般的でした。 しかし近年、幹細胞を用いた「再生医療」が新たな選択肢として注目されています。 幹細胞には損傷した組織を修復する働きがあり、筋力の回復や歩行の安定、感覚の改善などが期待されています。 点滴や患部に直接注射することで幹細胞が体内に投与され、血液を介して脊髄へ届けられる仕組みです。 再生医療は、手術のように傷跡が残る心配がなく、体への負担が少ない点も大きなメリットです。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脊髄損傷におけるリハビリの回復見込みは? 脊髄損傷後のリハビリによる回復の見込みは、損傷の程度や種類によって異なります。 脊髄損傷は、大きく分けて以下の2つに分類されます。 分類 症状 完全麻痺 脊髄の神経伝達が完全に断たれた状態で、運動機能や感覚が完全に失われた状態 不全麻痺 脊髄の神経伝達が部分的に残っており、運動機能や感覚の一部が残っている状態 一般的に、完全麻痺の場合、失われた機能の完全な回復は難しいとされています。一方で、不全麻痺の場合は、早期にリハビリを開始して適切な治療を継続すれば、機能回復が期待できます。 リハビリだけでなく、脊髄損傷の後遺症には、再生医療という選択肢もあります。 幹細胞を採取・培養する再生医療は、自己再生能力を持つ幹細胞を利用して、損傷した組織の修復を目指す治療法です。 詳しい治療法については、下記のページをご覧ください。 脊髄損傷のリハビリに関する2つの注意点 脊髄損傷におけるリハビリ時の注意点を2つ解説します。 受傷後すぐは廃用症候群の発症に注意する 脊髄ショックのリスクも念頭に置いておく これらの点を理解した上で、安全なリハビリに取り組みましょう。 受傷後すぐは廃用症候群の発症に注意する 受傷直後は、安静にする必要があるため、ベッド上で過ごす時間が長くなります。 そこで注意したいのが、廃用症候群の発症です。 廃用症候群とは、安静状態が長時間続くことで起こる心身機能のトラブルや疾患の総称です。 たとえば、以下のような症状が現れます。 床ずれ 関節拘縮 尿路結石 起立性低血圧 睡眠覚醒リズム障害 褥瘡(じょくそう:長時間同じ姿勢により身体が圧迫されて皮膚や組織が損傷する状態)を防ぐためには、こまめに体位を変え、圧を分散させるマットやクッションを活用することが必要です。 脊髄ショックのリスクも念頭に置いておく 脊髄損傷のリハビリを進める際には、脊髄ショックのリスクを考慮する必要があります。 脊髄ショックとは、脊髄に損傷を受けた際に、損傷部位だけでなく脊髄全体に影響が及ぶ現象です。 脊髄と脳の連絡が絶たれることで発生し、運動や感覚が麻痺するだけでなく、脊髄反射が完全に消失する特徴があります。 脊髄ショックは通常、1日から2日で急性期を抜けますが、重症の場合は数日から長くて数週間続きます。 その間、体を動かすことができず、安静にして過ごさなくてはなりません。また、回復後も症状が重い場合は、予後が厳しくなる可能性が高くなります。 リハビリを開始する際には、脊髄ショックの発生を念頭に置き、医師の指示に従いながら慎重に治療を進める姿勢が大切です。 まとめ|脊髄損傷におけるリハビリのトレーニングで機能回復を目指そう 脊髄損傷は、体の中枢にある神経が損傷することです。脊髄を損傷すると、損傷した部位や程度により違いがあるものの麻痺が発生します。 損傷する脊髄レベルが高いほど重症度も高くなり、頸髄が横断される形で損傷する完全麻痺では、体を動かせなくなったり、感覚が感じ取れなくなったりします。 脊髄損傷後の主な治療法はリハビリです。リハビリでは、回復・残存した神経機能を日常生活に結び付けるため、体位変換・可動域訓練・筋力トレーニング・歩行訓練・電気刺激などに取り組みます。 また、リハビリで思ったような効果がみられない場合は、「再生医療」も選択肢としてご検討ください。 再生医療は、これまで困難とされていた脊髄の損傷修復や再生を目指す治療法です。 無料のメール相談・オンラインカウンセリングも受け付けていますので「再生医療で脊髄損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は当院「リペアセルクリニック」にお気軽にお問い合わせください。 頚髄の中心部分の損傷による「中心性脊髄損傷」については、以下の記事で詳しく解説しています。
2022.03.28 -
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脊髄損傷を負っても、適切なリハビリやサポートを受ければ、スポーツを再び楽しむことは十分に可能です。 実際、多くの方がレクリエーションから競技スポーツまで幅広く取り組み、社会参加や自己実現の手段として活用しています。 本記事では、脊髄損傷を経験された方やそのご家族、支援者の方にとって、スポーツが前向きな人生を築くきっかけとなるよう、役立つ内容をまとめました。 脊髄損傷後にスポーツを始めるための参考になれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、脊髄損傷の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひ登録してご活用ください。 脊髄を損傷しても可能なスポーツ 脊髄を損傷しても、身体の状況に応じて参加可能なスポーツは数多くあります。 ここでは、パラリンピック正式競技・国内のスポーツ・国内外のスポーツにわけて、それぞれ情報を表にまとめました。 パラリンピック正式競技 以下は、障害のあるアスリート(脊髄損傷を含む身体障害者)が参加できるパラリンピック正式競技です。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 陸上 日本障害者陸上競技連盟 神経機能残存レベルC6前後から可能な例あり。障害の種類・程度で細かくクラス分け。 一般の規則に準じつつ、障害に応じたルール・用具を適用。専用の三輪車(レーサー)を用いて行う。大分国際車いすマラソンが有名。 水泳 日本身体障害者水泳連盟 障害の原因を問わず、運動機能によって10クラスに分類。 一般の規則に準じて実施。下肢障害がある選手は水中スタートが可能。障害の程度により競技内容が調整される。 車いすテニス 日本車いすテニス協会 下肢または上下肢に恒久的障害がある者。 一般のルールに準じ、ツーバウンドルールを追加。車いす操作も技術の一部。専用車いすを使用。 ボッチャ 日本ボッチャ協会 四肢・体幹に重度障害のある者。 ジャックボールにどれだけ近づけられるかを競う。アシスタントによる補助具使用も可能。個人・ペア・チーム戦がある。 卓球 日本肢体不自由者卓球協会 車いす使用者など、障害に応じた5クラス。 サービスやトスのルールが障害に応じて調整される。個人戦・団体戦あり。 アーチェリー 日本身体障害者アーチェリー連盟 五つのクラスに分類され、重度では車いす使用の四肢麻痺者も含む。 一般のルールを基に、用具や補助具(リリーサーなど)の使用が認められる。リカーブ・コンパウンドの種目がある。 車いすフェンシング 日本車いすフェンシング協会 A級、B級にクラス分け。 腕の長さに応じて車いすを固定。フルーレ・エペ・サーブル種目あり。上半身の技術とスピードが求められる。 パワーリフティング 日本パラ・パワーリフティング連盟 障害の程度でなく、体重別に10階級で分類。 ベンチプレス種目を行う。バーベルを胸に下ろし、再度押し上げる試技。 射撃 日本障害者スポーツ射撃連盟 上肢に障害がある者、スタンド使用が必要な者等で2分類。 ライフル・ピストルで射撃し、精密さを競う。精神的集中力も必要。 ウィルチェアーラグビー 日本ウィルチェアーラグビー連盟 頸髄損傷など四肢障害のある者。 前方パスや車いすでのタックルが認められるラグビー。持ち点制度あり。 車いすバスケットボール 日本車椅子バスケットボール連盟 持ち点制度で障害の程度に応じた選手構成。 一般のルールに準じつつ、車いす操作に関する特別ルールあり。 ボート 日本アダプティブローイング協会 使用できる部位によって4分類。 シングル・ダブル・フォアの種目を1000m直線コースで競う。 ハンドサイクル 日本ハンドサイクル協会 肢体不自由者 手で回す自転車型の競技。年齢・性別問わず楽しめる。 スキー 日本チェアスキー協会 座位・立位・視覚障害に分類。係数で公平性を調整。 アルペンスキー4種目に加え、スーパーコンビなどもあり。用具に工夫。 バイアスロン 日本障害者クロスカントリースキー協会 クロスカントリーと射撃の複合競技。 呼吸・精神力のコントロールが必要な耐久系競技。 クロスカントリー 日本障害者クロスカントリースキー協会 専用スキーとストックで雪原を滑走しタイムを競う。 「雪原のマラソン」とも呼ばれる耐久レース。 アイススレッジホッケー 日本アイススレッジホッケー協会 両足麻痺などの障害者 スレッジと短スティックを用いて行う激しい接触競技。 車いすカーリング 日本車椅子カーリング協会 車いす使用者(男女混合) 一般ルールに準じる。戦略性が高く「氷上のチェス」とも呼ばれる。 国内のスポーツ 日本国内では、独自に発展してきた種目が多くあり、パラリンピック競技とは別に地域や全国規模の大会で活発に行われています。 以下は、脊髄損傷を含むさまざまな障害のある方に対して、運動機会や社会参加の一助として広く推奨されている競技です。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 フライングディスク 日本障害者フライングディスク連盟 男女別・座位・立位による4区分。障害の程度や性別による分類はなし。 アキュラシー(10投中の通過数を競う)とディスタンス(飛距離を競う)の2種目。専用ゴールを使用し、全国障害者スポーツ大会の公式競技。 車いすツインバスケットボール 日本車椅子ツインバスケットボール連盟 四肢麻痺者。運動能力に応じて持ち点があり、コート上の合計は11.5点以内 車いすバスケットを基に開発。正規ゴールと1.2mの低い補助ゴールを使い分ける。障害の状態に応じてパスの工夫が求められる。 電動車いすサッカー 日本電動車椅子サッカー協会 自立歩行不可の重度障害者。上体保持が困難な選手も含む。男女の制限なし。 1チーム4人でプレー。ジョイスティックで操作する電動車いすにフットガードを装着し、バスケットコート上でプレー。スピード感と操作技術が魅力。 ハンドボール(車いす) 日本車椅子ハンドボール連盟 車いす使用者6名中、上肢障害を伴う選手が2名以上必要。 スポンジ製ボールを使用し、6人制でゴールを競う。バスケ未満の身体能力でも楽しめる競技として、リハビリ・レクリエーション要素も重視される。 国内外のスポーツ 以下は、競技性とレクリエーション性の両面を持ち、国内外での普及が進んでいるスポーツです。 なかには、健常者と同じ土俵で競える種目も多く、スポーツによる社会参加や自己実現の機会として注目されています。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 車いすビリヤード 日本車椅子ビリヤード協会 車いす使用者。障害の程度によって2クラスに分かれる。 ナインボール中心のポケットビリヤード。健常者と混合でプレーできる国際大会もあり。規則は一般に準じつつ、車いす特有の制限がある。 車いすダンス 日本車いすダンススポーツ連盟 車いす使用者 デュオ(車いす同士)やコンビ(車いす+健常者)で踊るダンス競技。世界大会もあり、芸術性と競技性を兼ね備える 車いすゴルフ 日本障害者ゴルフ協会 車いす使用者 一般のコース・ルールを活用。専用カートや車いすでのプレーが可能で、全国のゴルフ場でも開催例あり。 スキューバダイビング 日本バリアフリーダイビング協会 誰でも(障害の種類を問わず) 浮力により身体への負担が軽減されるため、とくに肢体不自由者に人気。全国に障害者向けスクールがあり、国際的にも広がりを見せる。 脊髄損傷後のスポーツの始め方3ステップ 脊髄損傷後の身体は非常に繊細で、スポーツを再開するまでには段階的なリハビリが欠かせません。 無理のないプロセスを踏むことで、二次的な障害を防ぎつつ、日常生活への適応や社会参加を目指すことが可能です。 ここでは、リハビリからスポーツ参加までの流れを3つのステップにわけて解説します。 ①全身状態を管理しながらリハビリ 損傷直後は、神経の損傷部位の安定を最優先に考え、ベッド上での安静や患部の固定が求められます。 リハビリは、心肺機能・筋力・関節可動域の低下を防ぐことが目的です。 理学療法士などが手足を動かす他動運動(受け身で動かしてもらう運動)や呼吸トレーニングから始め、状態によっては早期に座位練習を導入し、できるだけ早い段階での生活動作の獲得を目指します。 ②退院後は自宅でリハビリ 医療機関での集中リハビリを終えた後は、自宅や地域のリハビリ施設で継続的に運動療法を行うことが推奨されます。 とくに、腰に近い部分の脊髄損傷で神経が完全には断たれていない場合は、、歩行可能となるケースもあり、日常生活動作の改善を中心に無理なく体を動かすことが回復につながります。 ③回復状況を見ながらスポーツを開始 いつからスポーツを再開できるかは、麻痺の程度や体幹の安定性、筋力の回復具合によって異なります。 初期段階ではストレッチや座位での軽運動から始め、医師や理学療法士の指導のもと、徐々に負荷を高めていくのが一般的です。たとえば、軽いウォーキングやプール内運動などは、比較的早期に取り入れられる場合があります。 一方で、腰部への負荷が高いゴルフや野球は、損傷部位や治療内容によって異なりますが、一般的にはコルセットが外せるようになるまで難しいでしょう。 障害者スポーツには、障害の種類や程度に応じた多彩な種目があり、競技志向だけでなく、レクリエーション型のスポーツも存在します。 まずは身体の状態に合った活動から始め、運動の楽しさや達成感を感じることが大切です。 脊髄損傷者のスポーツにおける「クラス分け」とは 障害の有無に関係なく公平に競技が行えるようにするために、パラスポーツでは「クラス分け(Classification)」という制度が導入されています。障害の種類や程度に応じて選手をグループに分け、競技上の優劣が生じないように調整する仕組みです。 脊髄損傷には、完全麻痺や不全麻痺といった種類があり、残っている運動機能も人によって異なります。同じ障害名でも実際の身体機能には差があるため、機能的な公平性を保つ必要があるのです。 クラス分けでは程度の差を考慮し、可能な限り同程度の身体機能を持つ選手同士が競えるよう調整されます。 クラス分けの種類 クラス分けの基準は、競技や大会の種類によって異なります。 たとえば、パラリンピック競技では「国際パラリンピック委員会(IPC)」が定める「IPCクラス分けコード」に従って分類されるのが特徴です。 一方、国内の障害者スポーツ大会やリハビリ施設のイベントでは、それぞれ独自の基準が設けられている場合があります。 また、同じ競技でも種目によってクラス分けの方法は異なりますが、いずれもクラス分けの目的は競技の公平性の確保です。 誰でも競技に参加できるのか 国際大会であるパラリンピックに参加するには、「最小障害基準(Minimum Disability Criteria/MDC)」を満たしていることが必要です。 競技に支障をきたす明確な障害が存在することを示す基準で、該当しない場合は出場資格が認められません。 一方、日本国内の大会や地域スポーツイベントでは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を持っていれば、一定の条件のもとで出場できる場合があります。 競技レベルや開催規模に応じて参加条件が異なるため、主催者への確認が必要です。 どんな人が参加しているのか クラス分けの対象となる障害は、脊髄損傷による四肢麻痺や対麻痺のほか、脳性まひによるアテトーゼ(不随意運動)や、手足の切断、視覚障害など多岐にわたります。 たとえば、脊髄を損傷した方は、筋力低下により筋肉を意図的に動かすことが難しかったり、関節の可動域が制限されたりする場合があります。 こうした機能的な障害の程度を基準に、それぞれの競技で適切なクラスに分類され、公平な条件のもとで競技に参加することが可能になるのです。 クラス分けの流れ パラスポーツの大会で正式な記録を残すには、事前に「クラス分け」を受けておくことが必須です。 クラスを持たずに出場した場合の成績は公認記録とならないため、競技参加前に正式な評価を受ける必要があります。 クラス分けは、身体機能評価・技術評価・競技観察」の3つのプロセスから構成され、障害の程度とスポーツパフォーマンスを総合的に判断して、最も適したクラスに分類されます。 ① 身体機能評価(Physical Assessment) 医師や理学療法士などの専門スタッフによる問診をはじめ、筋力テスト、関節の可動域(どこまで動かせるか)、姿勢保持やバランス能力などを確認します。 スポーツ参加に必要な最低限の身体条件(最小障害基準)を満たしているかが判定されます。 ② 技術評価(Technical Assessment) 競技に必要な動作(例:ラケットの振り、投球、スタート動作など)を事前に実演し、そのパフォーマンスやスキルの程度を評価します。 スポーツごとの特性に基づき、どのクラスに属するかは技術評価で仮決定されます。 ③ 競技観察(Observation Assessment) 実際の大会で初めて競技に出場する際(First Appearance)には、事前評価で仮決定されたクラスが適切かどうかを審判や専門スタッフが観察し、最終的にクラスが確定されます。 不適切なクラス配置による、競技上の不公平を防ぐのが目的です。 クラス分けを実施する人 正式なクラス分けは、専門の資格を持つ「クラシファイヤー(Classifier)」によって行われます。 クラシファイヤーとは、障害の評価と競技特性に関する専門知識・技術を習得し、認定を受けた評価者です。 パラリンピックや公認の国内競技大会では、クラシファイヤーによるクラス分けが前提となっており、非公認の判定では公式記録として認められません。 クラス分けは1名で判断されるのではなく、2〜3名のクラシファイヤーが「パネル」としてチームを組み、ひとりの選手の評価を協議の上で決定します。 この体制により、個人の主観に偏らない公平な評価が保たれているわけです。 なお、クラシファイヤーには次の2種類があります。 国際クラシファイヤー(International Classifier) 国際パラ陸上競技連盟(World Para Athletics)など、世界の競技団体によって認定され、パラリンピックや国際大会でのクラス分けを担当する資格です。 国内クラシファイヤー(National Classifier) 日本パラ陸上競技連盟など国内の競技団体が認定し、日本国内の大会でクラス分けを実施する資格です。 脊髄損傷のスポーツにおけるクラス分け記号の見方 パラスポーツでは、公平な競技を実現するために、クラス分けごとに「記号(クラスコード)」が付与されます。選手がどの競技種目に、どのような障害の状態で、どのクラスに属するのかを明確に示すための記号です。 たとえば、「T33N」のように表示され、左から競技種目・障害の種類・障害の程度・クラス・ステータスの順に配置されます。 以下では、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。 1.競技種目 クラス記号の最初の1文字目は、選手が参加する競技の種別を表しています。 T(Track):陸上の走る・跳ぶ種目に該当(例:100m走、走り幅跳びなど) F(Field):陸上の投げる種目に該当(例:砲丸投げ、やり投げなど) 2.障害の種類 クラス記号の2桁目と3桁目は、障害の種類を示しています。脊髄損傷もここに含まれる分類があります。(文献1) 10番台:視覚障害のある競技者 20番台:知的障害のある競技者 30番台:脳性の麻痺がある立位競技者と車いすや投てき台を使用する競技者 40番台:低身長・脚長差・切断(義足不使用)・関節可動域制限・筋力低下のある競技者 50番台:脚長差・切断・関節可動域制限・筋力低下があり車いすや投てき台を使用する競技者 60番台:足の切断から義足を装着する競技者 3.障害の程度 次に続く1桁の数字は、障害の重さを示します。 0〜9の数字が割り当てられ、数字が小さいほど障害の程度が重く、大きくなるほど機能がより多く残っていることを意味します。 4.クラス・ステータス 最後のアルファベットは、その選手のクラス分けの状態を表しています。 N(New):これまでクラス分けをされたことがなく、新たにクラス分けをされる者 R(Review):クラス分けをされたが、再びクラス分けを必要とする者 C(Confirmed):クラスが確定された者 脊髄損傷後にスポーツをはじめる際の注意点 脊髄損傷後の身体には多様な変化が起こるため、スポーツを再開・開始する際には慎重な配慮が求められます。 筋力や感覚だけでなく、自律神経や姿勢制御といった内部機能も影響を受けているため、適切な知識と準備が欠かせません。 ここでは、脊髄損傷者が安全にスポーツに取り組むために留意すべき3つのポイントを紹介します。 体温コントロールと熱中症 脊髄損傷によって自律神経が障害されると、体温調節機能が低下し、発汗が困難になる場合があります。 その結果、暑い環境では体温が上昇しやすく、熱中症のリスクが高まるため、屋外での活動時や運動前後には以下の点に注意が必要です。 こまめな水分補給(可能であればスポーツドリンクなど電解質を含む飲料を選ぶ) 通気性の良い服装の着用 頻繁な休憩と日陰でのクールダウン 扇風機や冷却グッズの活用 また、体温調節に不安がある場合は、室内での運動を選択するほか、運動前後に体温をチェックしておきましょう。 自律神経過反射と異常高血圧 損傷部位がみぞおちのあたり(T6)より上の方に起こりやすいのが「自律神経過反射」と呼ばれる症状です。 急激な高血圧を伴う発作で、以下のような症状が現れます。 激しい頭痛 顔面紅潮や発汗 鼻づまり、吐き気 損傷レベルより上の発汗や異常感覚 上記の症状が現れた場合は運動を直ちに中止し、衣類や装具の圧迫、排尿・排便のトラブル、座位バランスの崩れなどを確認します。 原因が特定できなければ、すぐに医療者に連絡してください。 車いす競技での二次障害 車いす使用者がスポーツに参加する際に注意すべきなのが、上肢の「オーバーユース(過使用)」による障害です。 とくに、肩関節の故障が頻発しやすく、車いす操作とスポーツ動作の両方で酷使されることが主な要因となります。 二次障害を防ぐためには、以下のポイントを押さえておきましょう。 肩甲骨周囲筋のストレッチ 上腕三頭筋・三角筋などの補強トレーニング 理学療法士によるフォーム指導 姿勢の見直しと座位保持バランスの強化 定期的なメディカルチェック 肩だけでなく、褥瘡(じょくそう:床ずれ)や体幹筋の衰えも見逃さず、予防的な対策を取り入れることが理想です。 スポーツの可能性を広げる脊髄損傷の「再生医療」 脊髄損傷によって一度失われた運動・感覚機能は、回復が困難とされてきました。 しかし近年では、再生医療という新たな治療の選択肢が登場しています。 再生医療とは、体が本来備えている傷の修復プロセスに関わる細胞を活用する治療法です。 脊髄損傷に対しては「幹細胞治療」が用いられており、患者様自身から採取した幹細胞を培養し、損傷した部位に投与します。当院「リペアセルクリニック」では、損傷部位により近いところに幹細胞を届けるため、脊髄腔内への注射によって投与を行っています。 早期回復を目指す方や手術を避けたい方、アスリートでも導入が進んでおり、体への負担を抑えた治療法を検討している方の選択肢となっているのです。 当院で行っている脊髄損傷の再生医療について、以下の記事で症例を紹介しているので、参考にしてみてください。 まとめ|脊髄損傷後もさまざまなスポーツを行える 脊髄損傷があっても、障害の程度や体の状態に合ったスポーツを選べば、無理なく楽しむことが可能です。 競技スポーツからレクリエーションまでさまざまな種目から選択でき、自分に合ったスポーツを選ぶことで、体力を保ちながら社会に参加できます。 医師やリハビリ専門職と相談しながら、安全に取り組んでいきましょう。 また、再生医療などの新しい治療選択肢も広がっています。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、脊髄損傷の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 頚髄の中心部分の損傷による「中心性脊髄損傷」については、以下の記事で詳しく解説しています。 脊髄損傷とスポーツに関するよくある質問 脊髄を損傷して活躍しているスポーツ選手はいる? はい、います。たとえば、車いすテニスの国枝慎吾選手は脊髄損傷を乗り越え世界で活躍しています。 脊髄損傷C6レベルの方の車いすからベッドへの移動方法は? C6(頚髄の下部)損傷の方には、車いすをベッドに直角に寄せ、体幹を支えながら手の力で移乗する「直角アプローチ」という方法があります。 手首を反らせると指が自然に曲がる仕組みを利用した「テノデーシス動作」など、残された機能をうまく使う工夫が重要です。 キャスター上げが可能になる脊髄損傷レベル(部位)は? C7〜C8レベル(首の付け根あたり)の損傷であればキャスター上げが可能となり、屋外移動の自由度が増します。 ツインバスケや車いすテニスなど、上肢機能を使うスポーツにも参加可能です。 脊髄損傷の方の車いすの選び方は? 車いすは、以下のポイントを押さえた上で選びましょう。 どれだけ体を動かせるか 1日どれくらい使うか どうやって乗り移るか 屋内外どちらで使うか 上記をふまえて、予算とのバランスを考慮すると良いでしょう。 また、軽量で小回りの利くタイプや外出向けの頑丈なタイプなど、身体状態と生活スタイルに合った車いすを選ぶことも大切です。 (文献1) TOKYO 2020 PARALYMPIC GAMES HANDBOOK|東京都オリンピック・パラリンピック準備局
2022.03.25 -
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- 幹細胞治療
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- 再生治療
脊髄損傷は、手足の運動や感覚が麻痺するなど、日常生活に大きな影響が出やすい疾患です。(文献1)外傷・病気など原因は多岐にわたり、脊髄を損傷した位置(損傷高位またはレベル)によって、症状の出る範囲も異なります。 しかし、リハビリテーションにより回復が見込める場合もあるほか、近年では再生医療も選択できるようになってきました。 この記事では、脊髄損傷の症状や回復の可能性について、詳しく解説します。 また、治療方法や再生医療の手法についても紹介するので、脊髄損傷の治療にお悩みの方は参考にしてください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脊髄損傷が治るかは原因・症状の重さ・損傷位置(高位)が関係する 脊髄損傷の原因は、以下のように多様です。 交通事故をはじめとする外的要因により、突然脊髄を損傷する場合があります。また、脊髄や脊椎になんらかの異常(内的要因)が出ると脊髄損傷に発展することもあります。 分類 原因項目 説明 外的要因 交通事故 車・バイク・自転車などの衝突や転倒 転落 高所や階段からの落下 転倒 浴室での転倒や高齢者の転倒事故 スポーツ外傷 ラグビー、スキー、ダイビングなどによる強い衝撃 労働災害 高所作業や重量物の落下などによる事故 暴力行為 殴打・刺傷・銃創など 外科手術中の損傷 脊椎手術や麻酔中の医療事故による損傷 内的要因 椎間板ヘルニア 椎間板が突出して脊髄を圧迫 骨粗鬆症による圧迫骨折 高齢者に多い、骨の脆弱化による脊椎の圧迫骨折 脊髄梗塞 血流障害による脊髄の機能低下・壊死 脊髄出血 脊髄や周囲での出血による脊髄の圧迫 感染症 髄膜炎、脊椎炎などが脊髄に影響 変性疾患 多発性硬化症、ALSなど神経系の進行性疾患 自己免疫疾患 横断性脊髄炎など、免疫異常による神経炎症 腫瘍 脊髄や脊椎にできた腫瘍が神経を圧迫 先天性疾患 二分脊椎、キアリ奇形など、先天的な構造異常 脊髄損傷の症状は、完全麻痺と不全麻痺に分けられます。また、脊髄損傷では、一般的に損傷部位が脳に近い(損傷高位が高い)ほど症状の範囲も広くなります。損傷高位(レベル)別の主な症状は以下のとおりです。(文献2) ※損傷高位:損傷の位置 損傷高位 主な症状 頸椎(C1~C7) ・全身麻痺や呼吸困難(C1~C4) ・手指の一部が動く(C5~C7) 胸椎(T1~T12) 下半身麻痺、体幹のバランス低下、排尿排便障害 腰椎(L1~L5) 歩行困難、膀胱直腸障害、感覚障害 仙椎(S1~S5) 軽度の感覚障害や排尿排便の調整機能低下 頚髄の中心部分の損傷による「中心性脊髄損傷」については、以下の記事が参考になります。 軽度の感覚障害や排尿排便の調整機能低下 脊髄損傷が軽度(不完全損傷)の場合は、治療次第で回復が見込めます。 不完全損傷とは、脊髄の一部が損傷した状態です。損傷部位より遠い位置にもなんらかの運動機能や感覚が残っている不全麻痺の症状が現れます。 どの機能にどの症状が残るかは、損傷のタイプによって以下のように異なります。(文献2) 不完全損傷の分類 症状の傾向 中心性脊髄損傷 上肢の麻痺が強く、下肢の影響が少ない Brown Sequard(ブラウン セカール)症候群 片側の運動麻痺+反対側の痛覚・温度覚消失 前脊髄症候群 運動機能と痛覚・温度覚が失われるが、触覚は保たれる 後脊髄症候群 触覚・振動覚・位置覚が失われるが、運動機能は比較的保たれる 腰に近い胸椎(T11)から下の不完全損傷であれば、訓練により歩けるまでに回復する可能性があります。 足の動きをサポートする装具をつけ、杖も使っての歩行となる場合が多いです。 重度の損傷(完全損傷)の場合は治らないことが多い 脊髄の損傷が重度(完全損傷)の場合は、完治しないことが多いです。 完全損傷は、脊髄の機能が完全に絶たれてしまった状態です。脳からの指令が届かないため、損傷部位から下は完全麻痺となり動かなくなります。また、麻痺した部分は感覚もなくなります。 頚髄の高い位置での完全損傷ならば、四肢がまったく動かず全介助となるでしょう。頸髄の低い位置や胸髄の場合は、レベルに応じて上半身は動かせるため、下半身不随の状態となります。 完全損傷は通常、完治が期待できません。ただし、受傷直後に完全麻痺がみられても、数日から数か月で徐々に回復してくることがあります。 この場合は脊髄ショック(脊髄が損傷された直後に起こる、一時的な反射機能の低下または消失)を起こしていたと考えられ、完全損傷とは異なるため、慎重に経過をみるのが大切です。 【時期別】脊髄損傷の治療法 脊髄損傷は、急性期・慢性期の時期によって適切な治療法が異なります。 脊髄損傷の急性期には脊椎の固定や生命維持を優先する、慢性期には症状の程度・損傷部位に応じて長期的な目線で対応するのがセオリーです。 以下では急性期と慢性期に分けて、詳しい治療法を見ていきます。 急性期の治療 外傷をはじめとする急性期には、脊椎をギプスや装具で固定し、損傷が広がらないように対策します。とくに、重症化しやすい頚椎の固定は強く推奨されています。 同時に、頚髄や上部胸髄損傷により自発呼吸ができない場合は、人工呼吸器での呼吸確保が必要です。血圧が下がっていれば、輸液や昇圧剤を投与して管理します。 そして、状況に応じて頭蓋骨の牽引や手術を行い、神経を圧迫している原因を除去します。また、損傷後8時間以内のステロイド治療(メチルプレドニゾロン(MPSS)大量投与)も神経学的回復には有効とされています。(文献3) 脊髄損傷では、ベッド上での安静を余儀なくされることと神経の障害によって、以下のような合併症が現れるかもしれません。(文献4)急性期から合併症予防対策をとることも大切です。 褥瘡(床ずれ) 筋力の低下 関節可動域の低下 消化器合併症(ストレス性潰瘍、腸閉塞など) 呼吸器合併症(痰の詰まり、肺炎など) 尿路感染症 循環器合併症(徐脈、起立性低血圧、深部静脈血栓症など) 慢性期の治療 急性期の症状が落ち着いてきたら、本格的にリハビリテーションを始めます。また、引き続き治療が必要な部分は治療していきます。 以下の項目ごとに確認していきましょう。 リハビリテーション ビタミン剤の投与(栄養補給) 抗生物質の投与 放射線治療 外科手術 リハビリテーション 残った機能を活かして日常生活を送れるように、腰を据えてリハビリテーションを実施します。脊髄損傷の場合は、以下のメニューがよく行われます。(文献5,6) 種類 アプローチ箇所 可動域訓練 全身 筋力トレーニング 上肢・下肢 歩行訓練 下肢 電気刺激 全身(指先への細やかなアプローチも可能) 可動域訓練とは、関節と筋肉の柔軟性を維持するための訓練です。関節が固まるのを防ぐため、受傷後早期から始めます。 筋力トレーニングは、残存した身体機能を最大限活用するために欠かせません。歩行訓練は、全身の機能向上にも有用です。 電気刺激は、麻痺した筋肉を電気で動かすことで機能回復を目指す方法です。脳からの指令を代替し、神経信号の回復を促します。(文献6) ビタミン剤の投与(栄養補給) ビタミンB12が不足すると、神経の機能が低下します。末梢神経障害が有名で、手足のしびれや歩行障害が現れます。(文献7) けがもしていないのに脊髄損傷の症状が現れたときには、ビタミンB12の不足が背景にあるかもしれません。極端に偏食の方、胃切除の手術を受けた方に不足しやすい傾向があります。 必要に応じて、ビタミン剤を投与して補給を行います。 抗生物質の投与 脊椎に感染が起きている場合は、抗生物質を投与して治療します。血流にのって菌が感染するケースがほとんどで、抵抗力が落ちている方が感染しやすいです。 急激に高熱と激しい痛みが出る場合も、症状がはっきりしない場合もあり、個人差が大きいです。 いずれにしても脊椎への感染が疑われれば、抗生物質の投与を開始します。同時に血液培養を行い、細菌を特定できたら、適した抗生物質に切り替えます。 放射線治療 がんが脊椎や脊椎の内部に転移し、脊髄を圧迫して脊髄損傷の症状が出ることがあります。この場合、手術は難しいケースが多く、放射線治療が適応されやすいです。 治療のタイミングとしては、発症後なるべく48時間以内、あるいは72時間以内に行うべきといわれています。ただし、これ以降でも症状が改善するケースもあるため、治療を試みる価値はあるでしょう。(文献8) 外科手術 脊髄損傷の手術には、脊椎を固定する手術や、脊髄の圧迫を取り除く手術があります。 急性期のうちに固定や除圧を図るべきケースも多い一方、急いで手術をしなくても回復が見込めるケースもあり、全身状態が落ち着いてから手術を検討する場合は珍しくありません。 椎間板ヘルニアや腫瘍、血腫によって脊髄が圧迫されている場合は、必要に応じて取り除く手術を行います。また、細菌感染の場合も、感染巣を取り除く手術や、脊椎を固定する手術が必要となることがあります。 脊髄損傷の治療を進めても後遺症が出ることはある 脊髄損傷の治療を行っても、残念ながら後遺症が出ることは少なくありません。損傷の程度や損傷高位をはじめ、さまざまな要因が予後に関係します。 代表的な後遺症は、四肢の麻痺やしびれです。歩く、ベッドから車いすに移る、寝返りをするといった基本的な動作に支障をきたし、日常生活に大きく影響します。 触った感覚や痛みの感覚、温度感覚といった感覚の障害も生活に影響します。たとえば痛みの感覚が消失すると、けがに気づかないほか、胃潰瘍などの内臓の痛みにも気づけません。 排尿や排便の制御困難(膀胱直腸障害)や、体温・血圧の調節機能の低下といった自律神経障害もよくある後遺症です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脊髄損傷(後遺症)の治療法として再生医療も選択肢の一つ https://youtu.be/5HxbCexwwbE?si=-RirI6xZVAHG5H6s 脊髄損傷の一般的な治療では、手術により神経を圧迫している要因を取り除いたあと、リハビリテーションで社会復帰を目指します。 しかし、手足の麻痺や感覚が戻るかどうかは個人差があり、寝たきりや車椅子での生活を余儀なくされるケースも少なくありません。 ただ、近年では脊髄損傷や、その後遺症に対する治療法として、再生医療が登場しました。再生医療とは、体内の幹細胞が持つさまざまな組織に分化(変化)する特徴を活かした治療です。 脊髄損傷の場合は、骨髄由来の幹細胞か脂肪由来の幹細胞が使われます。脂肪由来幹細胞は、骨髄由来幹細胞よりも採取・培養しやすく、感染リスクを抑えて多くの細胞を投与できるのが利点です。 脊髄損傷の治療法として再生医療へご興味のある方は、リペアセルクリニックまでお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 幹細胞を投与する方法として2種類挙げられる 投与方法 メリット デメリット 点滴 特殊な技術なく実施できる 脊髄に到達する細胞が少ない 硬膜内注射 損傷部位に直接幹細胞を届けられる 実施できる医療機関が限られる 脊髄損傷への幹細胞の投与方法は、点滴と硬膜内注射の2種類です。 点滴では、血管へ幹細胞を投与し、血流を介して脊髄へ届けます。硬膜内注射とは、腰あたりから脊椎へ針を刺し、脊髄のある硬膜内に直接投与する方法です。両者を掛け合わせて効果を高める場合もあります。 点滴では脊髄に到達する幹細胞数が少なくなりやすいです。一方で、損傷部位へ直接投与する方法では、幹細胞の数をほとんど減らさず患部へ届けられるため、点滴と比べて神経の再生力が高いです。 ただし、硬膜内へ直接投与する方法は国内でも限られた医療機関でしか行われていません。硬膜内注射を検討される場合、受診予定の医療機関へ問い合わせてみましょう。 まとめ|脊髄損傷の治療で再生医療をご検討の際は当院へご相談ください 脊髄損傷は、大きな事故や転落だけでなく、平坦な道で転んでも発症する疾患です。脳と体をつなぐ脊髄が損傷すると、手足を動かせなくなったり感覚がなくなったりと、これまで通りの生活を送れなくなる場合があります。 脊髄を損傷した直後の治療法としては、脊椎を固定し安静にするほか、手術で脊髄の圧迫を取り除くのが一般的です。また、慢性期にはリハビリテーション、ビタミン剤・抗生物質の投与、外科手術など症状に合わせて処置を施します。 近年では、脊髄損傷や後遺症の治療法として、再生医療も登場しました。脊髄損傷において、リハビリテーションでの回復についても大きな可能性が広がる治療として、再生医療は注目されています。 当院リペアセルクリニックでも再生医療を提供しておりますので、ご興味がある方は気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ また、再生医療については下記のサイトでも発信しておりますので、合わせてご確認ください。 再生医療とは?実例やメリット・デメリット、研究ができる大学の学部も紹介 参考文献 (文献1) 公益社団法人 日本整形外科学会「脊髄損傷」日本整形外科学会ホームページ https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/spinal_cord_injury.html(最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 一般社団法人 日本脊髄外科学会「脊髄損傷」日本脊髄外科学会ホームページ https://www.neurospine.jp/original62.html(最終アクセス:2025年4月18日) (文献3) 横田 裕行ほか.「急性期脊髄損傷におけるメチルプレドニゾロン大量療法の臨床的意義」『日救急医会誌』 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam1990/6/4/6_4_349/_pdf (最終アクセス:2025年4月28日) (文献4) 田島文博ほか.「脊髄損傷者に対するリハビリテーション」『脊髄外科』30(1), pp.58-67, 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/30/1/30_58/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献5) 松永俊樹ほか.「脊髄損傷患者に対する最新のリハビリテーション治療―機能的電気刺激(functional electrical stimulation:FES)『Jpn J Rehabil Med』56(7), pp.555-559, 2019年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/7/56_56.555/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献6) 畑中裕己.「ビタミンB12欠乏性神経障害」『臨床神経生理学』45(6), pp.532-540, 2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/45/6/45_532/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年4月18日) (文献7) 笹井啓資.「緩和ケアにおける放射線治療」『順天堂医学』57(6), pp.582-587, 2011年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjmj/57/6/57_582/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日)
2022.03.02







