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脊髄損傷とは?その原因と症状、治療法について 脊髄損傷という言葉(あるいは「脊損(せきそん)」)を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。大まかなイメージはあったとしても、どういった原因で脊髄損傷になるのか、脊髄損傷になると、どのような症状が出現するのか、また脊髄損傷の治療法についてよく分からない人がほとんどではないでしょうか。 この記事では、脊髄損傷とその症状および治療法について医師が解説します。なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 脊髄損傷とは そもそも脊髄損傷の脊髄とは何でしょうか?脊髄は、脳と体をつなぐ神経の束を含む組織で、脊椎と呼ばれる背骨の中を通っています。脳と身体中の神経をつなぐ重要な役割を担っているため、この脊髄がなんらかの原因によりダメージ、損傷を受けるとさまざまな、そしてしばしば重篤な症状を引き起こすことになります。 これが脊髄損傷と呼ばれるものです。 脊髄損傷の原因 脊髄損傷の原因には様々なものがありますが、その原因が脊髄そのものにある場合と、脊髄の外にある場合といった大きく二つに分けることができます。 ① 原因が脊髄そのものにある場合: 脊髄は様々な神経の束を含みますが、この神経の束に栄養を与える血管が詰まったり破れたりする病態をそれぞれ脊髄梗塞、脊髄出血などと呼びます。またHIVや梅毒など脊髄に感染を起こすものもあります。 さらに脊髄の栄養となるビタミンB12の欠乏症、脊髄腫瘍なども脊髄損傷を引き起こします。しかし、脊髄損傷の原因が脊髄そのものにある場合は稀で、ほとんどの場合は原因が脊髄の外にあります。 ② 原因が脊髄の外にある場合: 脊髄は脊椎とよばれる骨組織のなかに存在し、周囲は脊髄液と呼ばれる液体で満たされています。この脊椎周囲組織の感染や出血により、脊髄が外から圧迫されて脊髄損傷を起こすことがあります。 また、感染や出血以外にも椎間板ヘルニアや放射線、交通事故などの外傷により脊髄の外から脊髄に障害を引き起こすことがあります。 脊髄損傷の症状 脊髄損傷はその原因が様々であるのと同様に、その原因やダメージを受ける部位によって症状が大きく異なります。筋肉を動かす運動神経、触れている・熱い・冷たいなどを知覚する感覚神経といった神経の種類によって脊髄の中での分布が違います。 先に述べた脊髄そのものの原因により脊髄損傷が起きた場合にはこの脊髄の中の特定の領域が影響を受け、感覚のみが傷害される、運動のみが傷害されるといった神経の種類による障害が起きることがあります。 一方で、脊髄の特定の部位が損傷すると、脊髄の中での分布にかかわらず特定の部位の全ての種類の神経が障害されることがあります。その場合は、損傷部位より下に出ていくまたは損傷部位より下から入ってくる全ての神経の伝達が不可能になるため、下半身の運動・感覚など全てが障害を受けるいわゆる下半身不随などが起きることがあります。 脊髄損傷の治療法 脊髄損傷の治療は、その原因および目的によって多岐にわたります。今回の記事ではその治療法を、下記の3つに分けて解説します。 (1) 原因に対する治療 (2) 救命のための治療 (3) 障害の影響を減らすための治療 (1) 原因に対する治療 先に述べたように、脊髄感染症やビタミン欠乏、腫瘍などの原因がある場合はそれぞれに応じた治療を検討することになります。椎間板ヘルニアや血腫(血溜まり)・膿瘍(膿溜まり)などが原因の場合、脊髄の圧迫を減らすために手術で原因を除去することもあります。 (2)救命のための治療 頸髄など頭に近い部位の脊髄は、呼吸や血液循環など生命を維持するために必要不可欠な臓器を制御する神経を含んでいます。そのため、こういった部位で脊髄損傷が起きた場合、生命の維持が危機に晒されることになります。 その場合には原因の検索や治療に先行して、人工心肺・人工呼吸器などを使って生命の維持を目的とした治療を行うこともあります。 (3) 障害の影響を減らすための治療 最大限の治療を尽くしても、残念ながら障害が残ってしまうことがありますが、そういった場合でも、とても重要な治療があります。それがリハビリテーションを中心とした、障害とともに暮らしていくための治療です。 リハビリテーションを行うことで、障害を受けた機能をほかの機能で代替することができたり、行政や医療サポートを受けながら脊髄損傷を発症する前により近い生活を送ることができたりする可能性があります。 まとめ・脊髄損傷とは?その原因と症状、治療法について 今回の記事では脊髄損傷とその症状および治療法について解説しました。 脊髄損傷と聞くと一般的には重篤な病態でしばしば身体障害を伴うなどのイメージがあると思いますが、実際にはその原因や治療法が多岐にわたることをご理解いただけたと思います。 そのため、個々の事例によって状況が大きく異なるため、より詳しく知りたい場合は既に受診している、または最寄りの医療機関に問い合わせることを推奨します。 No.071 監修:医師 坂本貞範 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.06.24 -
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脊髄損傷後の機能回復に効果的なリハビリについて 脊髄損傷は、外傷または病気により脊髄に損傷が起きることで発生し、原因は外傷性と非外傷性にわけられます。 外傷性では強力な外力が加わったときに、脊椎が脱臼・骨折・過剰伸展・過剰屈曲することが原因で、非外傷性では、腫瘍・循環障害・感染症・先天的がきっかけとなります。 脊髄を損傷すると、自分で歩けなくなる、呼吸できなくなるなど、日常生活に大きな影響をもたらします。そうした中でも社会復帰を目指し、残された機能を使って取り組むのがリハビリです。 この記事では、脊髄損傷の概要から、機能回復に効果的なリハビリなどを紹介します。 脊髄を損傷した場合 脊髄損傷になる外傷には、交通事故・高い所からの転落・平地での転倒・スポーツなどがあります。非外傷性では、癌性骨粗鬆症・多発性硬化症・炎症性脊髄炎・脊椎関節症などがあります。 好発年齢は20歳と59歳ですが、近年の調査では70代での発症が多発していると報告されています。これは、加齢により平地での転倒が増加するためと考えられています。 脊髄損傷の分類 脊髄が損傷すると、運動や感覚神経に障害が起こるほか、自律神経や膀胱直腸障害の症状がみられます。 脊髄損傷は、完全麻痺と不全麻痺にわけられます。脊髄損傷の約40%を占める完全損傷では、脊髄の連続性が完全に断たれてしまい、「手足を動かせない、感覚がわからない」状態に陥ります。 残りの約60%は不全麻痺で、脊髄の連続性は保たれているものの、麻痺の重症度は損傷部位と程度によりさまざまです。 受傷してすぐ気をつけたいこと 脊髄を損傷すると、受傷した位置から下に麻痺などの症状が出現します。脊髄損傷の約60%は頚髄損傷が占め、完全麻痺では手足が全く動かせないなど、麻痺の程度は大きくなるのが特徴です。 受傷直後は、脊椎に負担が加わらないよう極力動かさないようにすることで損傷の拡大を抑えます。交通事故など、外部からの強い力が入ったときには、頚髄へ外力が加わったことを念頭に、頸部の安静と固定が推奨されています。 また、脊髄に損傷を受けた際に発生する「脊髄ショック」がみられることがあります。脊髄ショックを起こすと、運動や感覚麻痺だけでなく、脊髄反射も消失します。1日から2日続くショック状態を抜けても症状が重たければ予後は期待できにくくなります。 脊髄ショック 脊髄損傷を負った場合に損傷した部位だけにとどまらず脊髄全体に損傷した影響が現れることがあります。これは脊髄から脳への連絡が絶たれることで起こり、数日程度から、長いと数週間続くことがあり、安静を継続しなければなりません。 受傷後の過ごし方 ベッド上で過ごす時間が長いと、褥瘡(床ずれ)・筋力の低下・起立性低血圧・関節可動域の低下・呼吸器疾患・尿路感染症などの合併症に注意しなくてはいけません。 褥瘡予防には体位変換を行います。褥瘡になると、皮膚や筋肉が壊死するだけでなく、感染リスクが高まります。こまめに寝る姿勢を変えたり、圧を分散できるマットやクッションを使用するなどの工夫が必要です。 脊髄損傷の機能回復に効果的なリハビリ 脊髄損傷の主な治療法はリハビリになります。残った機能を活かして社会復帰できるように取り組みます。 可動域訓練 拘縮を予防するために早期から関節可動域訓練を行います。脊髄を損傷すると、正常な筋肉・麻痺がある筋肉・筋力低下した筋肉が混在するようになります。そうした筋肉の均等が乱れることで拘縮が起きるのです。 下部頸髄損傷による拘縮では、肘・膝・足の関節が屈曲位で固定されるだけでなく、全身の柔軟性が低下します。また、拘縮があると座り姿勢・起き上がり・寝返り・移乗などに支障が出ます。 筋力トレーニング 筋肉を鍛えることで、麻痺を負った筋肉とのバランスを保つだけでなく、残存した機能を使い、日常生活を送れるようにします。 呼吸を止めお腹に力を入れることで、呼吸筋を鍛えるバルサルバ手技では、呼吸機能の回復が期待でき、呼吸機能の向上は生活の質を高めることにもつながります。バルサルバ手技を実施する際の推奨時間は30秒未満です。 歩行訓練 歩行訓練を早期から実施すると、歩行機能の向上だけでなく、身体機能も高まります。脊髄損傷の歩行には、吊り上げ式免荷歩行が行われます。ジャケットを装着し、体を上方へ牽引することで、負担や転倒リスクなく訓練ができます。 電気刺激 機能的電気刺激(FES:functional electric stimulation)を入れることで、麻痺を起こした筋肉を動かし、身体機能を取り戻します。具体的には、体の表面に装着、もしくは体内に埋め込んだ電極から電気信号を送り筋肉を収縮させる方法です。 電気刺激により、歩行や起立動作などの日常生活動作の改善から、高位脊髄損傷者では人工呼吸器が不用になった報告があります。また、動作の向上は脊髄損傷を負った方にとって、リハビリ意欲の向上につながります。 まとめ・脊髄損傷後の機能回復に効果的なリハビリについて 脊髄損傷は、体の中枢にある神経が損傷することです。脊髄を損傷すると、損傷した部位や程度により違いがあるものの麻痺が発生します。 損傷する脊髄レベルが高いほど重症度も高くなり、頸髄が横断される形で損傷する完全麻痺では、体を動かせなくなったり、感覚が感じ取れなくなったりします。 脊髄損傷後の主な治療法はリハビリで、回復・残存した神経機能を日常生活に結び付けるため、体位変換・可動域訓練・筋力トレーニング・歩行訓練・電気刺激などに取り組みます。 また、リハビリで思ったような効果がみられなかった場合、最新の治療法である再生医療を覚えておくと良いでしょう。再生医療では、これまで不可能だった損傷した脊髄の修復・再生が期待できるようになりました。 以上、脊髄損傷後の機能回復に効果的なリハビリについて記しました。参考にしていただければ幸いです。 No.048 監修:医師 坂本貞範 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.03.28 -
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障がい者スポーツ・脊髄損傷者の代表的なスポーツとクラス分けについて 毎年4000〜5000人が受傷するという脊髄損傷。 事故や転落・転倒などで脊髄を損傷すると「動かせない、感じない」といった麻痺が出現します。脊髄損傷後は、日常生活への復帰を目指して、残存する機能を使いリハビリに取り組みます。 リハビリでは日常生活動作を練習をしたり、運動に取り組んだりします。その中でスポーツにやりがいを見出し、競技として取り組むことになった場合のことについてお話します。 障がい者スポーツとして取り組む場合は、各人、残存する機能には個人差があるため、運動に取り組む際には公平性を保つため「クラス分け」が行われます。 そこで今回の記事では、脊髄損傷者がスポーツを行う際のクラス分けについて解説します。 脊髄損傷者とスポーツ 脊髄を損傷すると、損傷部より下に麻痺が発生します。麻痺は「筋肉を全く動かせない」「感覚が全くわからない」といった完全麻痺や、一部の運動・感覚機能を残した不全麻痺に分けられます。 脊椎損傷、麻痺の程度 完全麻痺 ・筋肉を全く動かせない ・感覚が全く分からない 不全麻痺 ・一部、運動、感覚機能がある 脊髄損傷後に取り組むのがリハビリです。リハビリでは残存した機能を使い、寝返りや歩行練習などを行うことで社会復帰を目指します。退院後は、リハビリや生きがいを目的に単なる運動ではなく、スポーツに取り組まれる方もいらっしゃいます。 運動は脊髄損傷者にとって、日常生活動作の向上だけでなく、充実した生活にもつながる大切なものです。また、運動と言っても個人での歩行練習から、スポーツ競技までさまざまです。 中でも他者と競い合うスポーツにおいては、公平に競技に取り組むことを目的に「クラス分け」が行われます。 クラス分けが行われる代表的なスポーツの一例 ・陸上 ・ツインバスケットボール ・水泳 ・車椅子マラソン ・ボート ・ウィルチェアーラグビー ・ボッチャ ・アーチェリー ・車椅子サッカー ・その他 運動レベルのクラス分け 脊髄損傷者など障がい者が運動に取り組むにあたり実施されるのが「クラス分け(Classification)」と言われるものです。 脊髄損傷でも完全麻痺か不全麻痺によって残存する機能が違うように、同じ病気・怪我・事故にあっても、障がいの程度は人によって様々です。クラス分けは、障害があっても、できる限り公平に運動やスポーツに取り組めることを目的にしてグループ分けが実施されます。 クラス分けの種類 クラス分けの規則は、競技や大会によって違います。「国際クラス分け基準/IPC Classification Code」から分けられる「パラリンピック」や、独自の規則を設けている国内の競技大会・リハビリ施設での運動大会などさまざまです。 また、競技種目によってクラス分けの規則が変わることがありますが目的は同じで公平さの確保です。 誰でも競技に参加できるのか パラリンピックのような国際的な大会に参加するには、最小の障がい基準(Minimam Disability Criteria/MDC)をクリアしていることが条件になります。この基準を満たさない場合は、国際大会に参加することはできません。 日本国内の競技大会や地域のスポーツ大会であれば、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちであれば、出場することができます。 どんな人が参加しているのか 脊髄を損傷した場合、筋力低下により意図的に筋肉を動かせなかったり、関節可動域に制限がかかったりするなどの障がいがある方です。他の疾患では、脳疾患からアテトーゼがある方、手足の一部か全てが欠損している方など、さまざまな障がいのある方が参加されます。 クラス分けの流れ スポーツ大会に参加し、記録を認めてもらえるのは、事前にクラス分けを受けた「クラスを持った方」です。このクラスを持っていなければ大会に出場しても記録が公認されることがありません。従って、出場前にクラス分けを受ける必要があります。 クラス分けは身体機能・技術から評価され、グループ分けされます。さらに、クラスが適切なのかどうかを出場した競技から観察されます。 身体機能評価では、筋力・可動域検査・バランス力などの検査が実施されます。技術評価では、出場予定の種目に取り組み、どの程度のパフォーマンスやスキルが発揮できるのか見られます。 クラス分けの 3 つのプロセス 1)身体機能評価/Physical Assessment 問診や筋力、関節可動域、バランスなどの各種検査を実施。参加資格の有無を判定する 2)技術評価/Technical Assessment 大会前に競技試技を行い選手のパフォーマンスや競技スキルを評価。適切なグループ(参加クラス)を割り当てる 3)競技観察/Observation Assessment クラス分けを実施した大会の一番最初の出場種目(First Appearance)を観察し、上記1)2)で判断した参加クラスが適切であるかを確認する クラス分けを実施する人 パラリンピックや国内での競技大会のように記録が認められる場合、「クラシファイヤー/Classifier」と呼ばれる専門の資格を持った人によりクラス分けされます。クラシファイヤーとは、クラス分けを行うために必要な知識や技術を学び、資格を取得した者をいいます。 このクラシファイヤーは、国際大会でクラス分けを行える World Para Athleticsによって公認された「国際クラシファイヤー」と、国内の大会でクラス分けを行える日本パラ陸上競技連盟公認の「国内クラシファイヤー」の2種類があります。 国際クラスファイヤーと国内クラスファイヤーの2種類あります。また、陸上競技ではクラシファイヤーの有資格者2~3 名で組織された パネルと呼ぶ単位で一人の選手に対するクラス分けを行っています。 クラス分けを理解しよう クラス分けは、4桁のアルファベットと数字から構成されます。 例)T33N 1)競技種目:T > 走競技や跳躍競技 2)障がいの種類:30番台 > 脳性の麻痺がある立位競技者と車椅子や投てき台を使用する競技者 3)障害の程度:3 4)クラスステータス:N > (New)これまでクラス分けをされたことがなく、新たにクラス分けをされる者 1)競技種目 左から競技種目・障がいの種類・障がいの程度・クラス・ステータスの順に配置されます。 T(Track):走競技や跳躍競技 F(Field):投てき競技 2)障がいの種類 10番台:視覚障がいのある競技者 20番台:知的障がいのある競技者 30番台:脳性の麻痺がある立位競技者と車椅子や投てき台を使用する競技者 40番台:低身長・脚長差・切断(義足不使用)・関節可動域制限・筋力低下のある競技者 50番台:脚長差・切断・関節可動域制限・筋力低下があり車椅子や投てき台を使用する競技者 60番台:足の切断から義足を装着する競技者 3)障がいの程度 0〜9の数字が割り当てられ、数字が小さいほど障がいの程度は重たくなる 4)クラス・ステータス N(New)これまでクラス分けをされたことがなく、新たにクラス分けをされる者 R(Review)クラス分けをされたが、再びクラス分けを必要とする者 C(Confirmed)クラスが確定された者 まとめ・障がい者スポーツ・脊髄損傷者の代表的なスポーツとクラス分けについて 脊髄損傷から麻痺が残っても、生活に支障がでる程度は人によって違います。たとえ、重度の障がいが残ったとしても、残存する機能を把握、活かすことでスポーツ活動をされている方はいらっしゃいます。 スポーツに取り組む際には、同じ程度の障がいがあるグループに分けるクラス分けが行われます。クラス分けは、国際的な大会・国内や地域の大会によって規則が変わりますが、どれも参加者が公平に競技に取り組めることを目的に実施されています。 このように障害者スポーツは、障害の程度や状況に応じて競技の規則や、実施方法を変更したり、用具等を使うことで障害を補えるよう工夫されたスポーツであることからアダプテッド・スポーツとも言われます。 初めは、医学上のリハビリテーションを目的として発展してまいりました。 今ではパラリンピックを頂点として大きな隆盛を遂げるなど、障害のある人であってもクラスを分けることで、障がい者同士が競い合い、生きる目標や生きがいを創造することに活かせれば良いと考えます。 このように、たとえ脊髄損傷であってもクラス分けが存在することでスポーツへ参加する道があります。この仕組みを利用すれば単にリハビリに留まらない活き活きとした目標ある人生を過ごすことが可能ではないでしょうか。 以上、脊髄損傷、障がい者スポーツのクラス分けについて記させて頂きました。これからも障がい者スポーツを応援してまいりたいと考えています。 No.047 監修:医師 坂本貞範 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.03.25 -
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脊髄損傷!再生医療が画期的な治療法と言われる訳とは! 脊髄損傷の患者様は、日本に15万人ほどおられ、毎年4000〜5000人が受傷していると言われています。脊髄を損傷する原因は、交通事故・高所からの転落・スポーツでの事故・平地での転倒などさまざまです。 脊髄を損傷すると、手足の運動や感覚が麻痺するなど、身体機能に大きな影響をもたらす可能性が高いものの、これまで損傷した脊髄を再生させたり、麻痺を回復させたりするような効果的な治療法はありませんでした。 しかし、再生医療という新たな医療分野の出現によって損傷した脊髄を再生させ、体の機能を取り戻す、回復するといった画期的な方法が登場しました。この医療は、これまでは難しかった症状を手術や入院をせずに回復に向かわせる奇跡的ともいえる手法と言われています。 この記事では、これまでの脊髄損傷の治療法と、新たな治療法である再生医療での治療法をわかりやすく解説します。 脊髄損傷とは 脊髄とは脳から骨盤にかけて出ている神経で、脳と体の各部位を連結させる通信経路の役割があります。脊髄が損傷すると、体の機能に大きな影響を与えるため、脊椎(頚椎・胸椎・腰椎・仙骨)が形成する脊柱管に守られるようにして体の各部位へ分岐します。 脊髄損傷はあらゆる年齢に発生しますが、特に20歳と59歳に発生頻度が高まるとされてきました。しかし、近年の調査では70代に最も多く発生することがわかっています。これは、加齢とともに転倒リスクが上がるためと考えられます。 脊髄損傷は、完全麻痺と不全麻痺に分けられます。完全麻痺は、脊髄が完全に離断されると発生し、手足の感覚がわからない、全く動かなせないといった状態で、不全麻痺は、運動機能や感覚麻痺が一部だけ残っている状態です。残存する機能は、損傷部位や程度により変わります。 脊髄を損傷の特徴として、高い位置で損傷するほど重症度が高くなります。一般的に、上位頚髄の損傷では、自分で呼吸ができなくなり、呼吸器を必要とする重篤な麻痺を生じることがあります。また、胸髄の損傷では頚髄損傷と比較して、完全麻痺の可能性が高まります。 脊髄損傷のこれまでの治療法 脊髄を損傷すると、損傷部位の安静を確保し、手術によって脱臼・骨折した脊椎を安定させます。その後、残存した機能を活かしてリハビリテーションに取り組みますが、受傷時に負った麻痺がそのまま残ってしまうのが現状です。 急性期の治療 損傷時は、脊椎をギプスや装具で固定して安静を図ります。特に、重症化しやすい頚椎の固定は強く推奨されているほか、頭蓋骨の牽引や手術により神経を圧迫している原因を除去します。 また、頚髄や上部胸髄損傷により自発呼吸が機能しなくなった際には呼吸確保が実施されます。 脊髄損傷をしてすぐは、ベッド上で安静にすることが多く、褥瘡(床ずれ)などさまざまな合併症に気をつけます。 脊髄損傷による合併症 ・褥瘡 ・筋力の低下 ・関節可動域の低下 ・呼吸器疾患 ・尿路感染症 ・起立性低血圧 慢性期の治療 脊髄損傷後に残存した機能を活かし、日常生活を送れるようにリハビリテーションが行われます。リハビリでは、筋力トレーニングや関節可動域訓練など、日常に即した訓練が実施されます。 また、寝返りの練習により床ずれを防止したり、排泄の練習をしたりと、個人の状態に合わせた訓練に取り組み社会復帰を目指します。 再生医療が画期的な治療法と言われる訳 これまでは脊髄を損傷すると、手術により神経を圧迫している骨片を取り除き、リハビリによって社会復帰を目指してきました。しかし、手術やリハビリでは損傷した神経を再生させたり、麻痺を回復させる効果はなく、損傷した神経に対し有効な治療法がないのがこれまでの現状でした。 さらに、手足の麻痺や感覚が戻るかどうかは個人差があり、損傷した部位によっては寝たきりや車椅子での生活を余儀なくされるケースもありました。そんな中、最新医療である再生医療の出現によって、損傷した神経の再生が期待できるようになったのです。 再生医療とは 再生医療とは人間が持つ自己修復力を高める最新医療で、脊髄損傷に対しては体内に存在する幹細胞が使われます。幹細胞が持つさまざまな組織に分化(変化)する特徴を活かして、損傷した神経の修復・再生が期待されます。 幹細胞を使った治療法とは 脊髄へ使われる幹細胞は、骨髄由来の幹細胞か脂肪由来の幹細胞です。 骨髄由来幹細胞は、神経に分化しやすいとされていますが、培養しにくい上に感染リスクがあります。それに対して、脂肪由来幹細胞は、採取・培養しやすく、感染リスクもほとんどありません。 脂肪由来の幹細胞は、骨髄由来の幹細胞と比べてより多くの細胞を投与できることから高い治療効果が期待されます。最近の研究では、脂肪由来の幹細胞治療の方が治療成績は高いことがわかっています。 脊髄への投与方法 脊髄損傷への幹細胞の投与方法は、点滴と硬膜内注射の2種類があります。点滴では、血管へ幹細胞を投与し、血液を介して脊髄へ届けます。硬膜内注射では、腰あたりから脊髄のある硬膜内に直接投与します。または、両者を掛け合わせて効果を高める場合もあります。 点滴では脊髄に幹細胞が到達するまでに数が少なくなってしまいますが、損傷部位へ直接投与する方法では、幹細胞の数を減らすことなく確実に患部へ届けられるため、点滴と比べて神経の再生力が高いです。 ただし、硬膜内へ直接投与する方法は国内でも限られた医療機関でしか行われていません。硬膜内注射を検討される場合、受診予定の医療機関へ問い合わせてみると良いでしょう。 まとめ・脊髄損傷!再生医療が画期的な治療法と言われる訳とは?! 脊髄損傷は、大きな事故や転落だけでなく平坦な道で転んでも発生する疾患です。脊髄神経が損傷されると、手足を動かせなくなったり感覚を感じとれなくなったりと、これまで通りの生活を送れなくなる場合があります。 急性期には、脊椎を固定し安静にするほか、手術で骨のかけらを取り除きます。ただ、慢性期にリハビリに取り組んだとしても、一度傷んだ神経が元通りになることはなく、これまで効果的な治療法はありませんでした。 しかし、最新の治療法である再生医療では、損傷した神経の修復や再生が期待できるようになりました。再生医療は、これまで効果的な治療法が存在しなかった脊髄損傷に対して、大きな可能性が広がる治療として注目されています。 以上、脊髄損傷の画期的な治療法と言われる再生医療について記させていただきました。参考になれば幸いです。 No.046 監修:医師 坂本貞範 ▼ 脊髄損傷の再生医療|最新の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脊髄損傷の新たな治療法として注目を浴びています
2022.03.02