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脊髄損傷、障がい者スポーツのクラス分けについて

脊髄損傷、障がい者スポーツのクラス分けについて

毎年4000〜5000人が受傷している脊髄損傷。

事故や転落・転倒などで脊髄を損傷すると「動かせない、感じない」といった麻痺が出現します。脊髄損傷後は、日常生活への復帰を目指して、残存する機能を使いリハビリに取り組みます。

リハビリでは日常生活動作を練習をしたり、運動に取り組んだりします。その中でスポーツにやりがいを見出し、競技として取り組むことになった場合のことについてお話します。

障がい者スポーツとして取り組む場合は、各人、残存する機能には個人差があるため、運動に取り組む際には公平性を保つため「クラス分け」が行われます。

そこで今回の記事では、脊髄損傷者がスポーツを行う際のクラス分けについて解説します。

障がい者スポーツ

脊髄損傷者とスポーツ

脊髄を損傷すると、損傷部より下に麻痺が発生します。麻痺は「筋肉を全く動かせない」「感覚が全くわからない」といった完全麻痺や、一部の運動・感覚機能を残した不全麻痺に分けられます。

  • 脊椎損傷、麻痺の程度
  • 完全麻痺
  • ・筋肉を全く動かせない
  • ・感覚が全く分からない
  •  
  • 不全麻痺
  • ・一部、運動、感覚機能がある

脊髄損傷後に取り組むのがリハビリです。リハビリでは残存した機能を使い、寝返りや歩行練習などを行うことで社会復帰を目指します。退院後は、リハビリや生きがいを目的に単なる運動ではなく、スポーツに取り組まれる方もいらっしゃいます。

運動は脊髄損傷者にとって、日常生活動作の向上だけでなく、充実した生活にもつながる大切なものです。また、運動と言っても個人での歩行練習から、スポーツ競技までさまざまです。

中でも他者と競い合うスポーツにおいては、公平に競技に取り組むことを目的に「クラス分け」が行われます。

  • クラス分けが行われる代表的なスポーツの一例
  • ・陸上
  • ・ツインバスケットボール
  • ・水泳
  • ・車椅子マラソン
  • ・ボート
  • ・ウィルチェアーラグビー
  • ・ボッチャ
  • ・アーチェリー
  • ・車椅子サッカー
  • ・その他

運動レベルのクラス分け

脊髄損傷者など障がい者が運動に取り組むにあたり実施されるのが「クラス分け(Classification)」と言われるものです。

脊髄損傷でも完全麻痺か不全麻痺によって残存する機能が違うように、同じ病気・怪我・事故にあっても、障がいの程度は人によって様々です。クラス分けは、障害があっても、できる限り公平に運動やスポーツに取り組めることを目的にしてグループ分けが実施されます。

クラス分けの種類

クラス分けの規則は、競技や大会によって違います。「国際クラス分け基準/IPC Classification Code」から分けられる「パラリンピック」や、独自の規則を設けている国内の競技大会・リハビリ施設での運動大会などさまざまです。

また、競技種目によってクラス分けの規則が変わることがありますが目的は同じで公平さの確保です。

誰でも競技に参加できるのか

パラリンピックのような国際的な大会に参加するには、最小の障がい基準(Minimam Disability Criteria/MDC)をクリアしていることが条件になります。この基準を満たさない場合は、国際大会に参加することはできません。

日本国内の競技大会や地域のスポーツ大会であれば、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちであれば、出場することができます。

どんな人が参加しているのか

脊髄を損傷した場合、筋力低下により意図的に筋肉を動かせなかったり、関節可動域に制限がかかったりするなどの障がいがある方です。他の疾患では、脳疾患からアテトーゼがある方、手足の一部か全てが欠損している方など、さまざまな障がいのある方が参加されます。

クラス分けの流れ

スポーツ大会に参加し、記録を認めてもらえるのは、事前にクラス分けを受けた「クラスを持った方」です。このクラスを持っていなければ大会に出場しても記録が公認されることがありません。従って、出場前にクラス分けを受ける必要があります。

クラス分けは身体機能・技術から評価され、グループ分けされます。さらに、クラスが適切なのかどうかを出場した競技から観察されます。

身体機能評価では、筋力・可動域検査・バランス力などの検査が実施されます。技術評価では、出場予定の種目に取り組み、どの程度のパフォーマンスやスキルが発揮できるのか見られます。

  • クラス分けの 3 つのプロセス
  •  
  • 1)身体機能評価/Physical Assessment
  • 問診や筋力、関節可動域、バランスなどの各種検査を実施。参加資格の有無を判定する
  •  
  • 2)技術評価/Technical Assessment
  • 大会前に競技試技を行い選手のパフォーマンスや競技スキルを評価。適切なグループ(参加クラス)を割り当てる
  •  
  • 3)競技観察/Observation Assessment
  • クラス分けを実施した大会の一番最初の出場種目(First Appearance)を観察し、上記1)2)で判断した参加クラスが適切であるかを確認する

クラス分けを実施する人

パラリンピックや国内での競技大会のように記録が認められる場合、「クラシファイヤー/Classifier」と呼ばれる専門の資格を持った人によりクラス分けされます。クラシファイヤーとは、クラス分けを行うために必要な知識や技術を学び、資格を取得した者をいいます。

このクラシファイヤーは、国際大会でクラス分けを行える World Para Athleticsによって公認された「国際クラシファイヤー」と、国内の大会でクラス分けを行える日本パラ陸上競技連盟公認の「国内クラシファイヤー」の2種類があります。

国際クラスファイヤーと国内クラスファイヤーの2種類あります。また、陸上競技ではクラシファイヤーの有資格者2~3 名で組織された パネルと呼ぶ単位で一人の選手に対するクラス分けを行っています。

クラス分けを理解しよう

クラス分けは、4桁のアルファベットと数字から構成されます。

  • 例)   T33N 
  • 1)競技種目:T > 走競技や跳躍競技
  • 2)障がいの種類:30番台 > 脳性の麻痺がある立位競技者と車椅子や投てき台を使用する競技者
  • 3)障害の程度:3 
  • 4)クラスステータス:N > (New)これまでクラス分けをされたことがなく、新たにクラス分けをされる者

1)競技種目

左から競技種目・障がいの種類・障がいの程度・クラス・ステータスの順に配置されます。

  • T(Track):走競技や跳躍競技
  • F(Field):投てき競技

2)障がいの種類

  • 10番台:視覚障がいのある競技者
  • 20番台:知的障がいのある競技者
  • 30番台:脳性の麻痺がある立位競技者と車椅子や投てき台を使用する競技者
  • 40番台:低身長・脚長差・切断(義足不使用)・関節可動域制限・筋力低下のある競技者
  • 50番台:脚長差・切断・関節可動域制限・筋力低下があり車椅子や投てき台を使用する競技者
  • 60番台:足の切断から義足を装着する競技者

3)障がいの程度

0〜9の数字が割り当てられ、数字が小さいほど障がいの程度は重たくなる

4)クラス・ステータス

  • N(New)これまでクラス分けをされたことがなく、新たにクラス分けをされる者
  • R(Review)クラス分けをされたが、再びクラス分けを必要とする者
  • C(Confirmed)クラスが確定された者

まとめ・脊髄損傷、障がい者スポーツのクラス分けについて

脊髄損傷から麻痺が残っても、生活に支障がでる程度は人によって違います。たとえ、重度の障がいが残ったとしても、残存する機能を把握、活かすことでスポーツ活動をされている方はいらっしゃいます。

スポーツに取り組む際には、同じ程度の障がいがあるグループに分けるクラス分けが行われます。クラス分けは、国際的な大会・国内や地域の大会によって規則が変わりますが、どれも参加者が公平に競技に取り組めることを目的に実施されています。

このように障害者スポーツは、障害の程度や状況に応じて競技の規則や、実施方法を変更したり、用具等を使うことで障害を補えるよう工夫されたスポーツであることからアダプテッド・スポーツとも言われます。

初めは、医学上のリハビリテーションを目的として発展してまいりました。

今ではパラリンピックを頂点として大きな隆盛を遂げるなど、障害のある人であってもクラスを分けることで、障がい者同士が競い合い、生きる目標や生きがいを創造することに活かせれば良いと考えます。

このように、たとえ脊髄損傷であってもクラス分けが存在することでスポーツへ参加する道があります。この仕組みを利用すれば単にリハビリに留まらない活き活きとした目標ある人生を過ごすことが可能ではないでしょうか。

以上、脊髄損傷、障がい者スポーツのクラス分けについて記させて頂きました。これからも障がい者スポーツを応援してまいりたいと考えています。

 

No.047

監修:医師 坂本貞範

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