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【医師監修】糖尿病を5年放置するとどうなる?合併症を防ぐためにできること

糖尿病は自覚症状がほとんどなく、「まだ治療しなくても大丈夫」と放置してしまう人も少なくありません。
しかし、治療を受けずに5年、10年と放置すると、知らないうちに全身の血管や神経が傷つき、取り返しのつかない合併症を引き起こす恐れがあります。
本記事では、糖尿病を5年間放置した場合のリスク、そして合併症を防ぐために今からできることを医師監修のもとで解説します。
正しい知識を持って、重症化を防ぎましょう。
糖尿病に対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。
糖尿病のお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。
目次
糖尿病を5年間放置すると合併症が進行
糖尿病は、病気が無症状で進行する「サイレントキラー」と呼ばれています。
糖尿病は、長期間にわたって血糖値が高い状態が続き、様々な合併症を引き起こす可能性がある病気です。
これらの合併症は、とくに早期に発見・治療が行われないと、重篤な結果をもたらす恐れがあります。
合併症は重症化すると、足が壊疽する「糖尿病性神経症」や失明の原因となる「糖尿病性網膜症」、人工透析の原因となる「糖尿病性腎症」など、進行すると日常生活に多大な影響を及ぼします。
糖尿病の治療が必要な理由は、これらの合併症を防ぐためです。糖尿病は、些細な生活習慣の乱れが原因であるといわれています。
糖尿病が「サイレントキラー」といわれ、命に関わる怖いものであると知ることで、「生活習慣を変えるきっかけ」にしましょう。
糖尿病が「サイレントキラー」と言われる理由
糖尿病は、症状がほとんど現れません。そのため、健康診断で糖尿病が指摘されても放っておく人も多いのが現状です。しかし、糖尿病を放置すると全身に合併症を引き起こします。合併症とは、一つの病気が元になって起こる新たな病気のことです。
糖尿病の合併症は命に関わることから、糖尿病は「サイレントキラー(沈黙の暗殺者)」と呼ばれることがあります。
糖尿病の三大合併症「し・め・じ」について
糖尿病には三大合併症と呼ばれる代表的な合併症があります。
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糖尿病の三大合併症 し)神経障害 め)網膜症 じ)腎症 |
この3つは、糖尿病が無ければ起こらない病気であり、それぞれの頭文字を取って「し(神経障害)・め(網膜症→目)・じ(腎症)」と呼ばれ、その危険性を喚起しています。
どの合併症も多くは無症状で進行し、症状が現れたときには危険な状態となっています。生活に大きな支障をきたす病気であるため、注意が必要です。
放置した糖尿病が引き起こす三大合併症
糖尿病を治療せず放置していると、血糖値が普段より高い状態がずっと続きます。血糖値の増加は血管や神経を次第に傷つけ、さまざまな臓器に障害をもたらします。
とくに三大合併症は、自覚症状がないまま進行するのが特徴です。血糖コントロール不良により、細い血管がダメージを受け症状が進行します。
これらの合併症は、軽度であれば血糖コントロール改善により回復が見込めますが、進行してしまうと改善は難しくなります。
三大合併症について、詳しく説明します。
しびれや麻痺を全身に引き起こす神経障害(ニューロパシー)
神経障害は、糖尿病を治療せずに放置すると、約5年で発症することが多いとされています。(文献1)糖尿病三大合併症の中で最も早く現れやすい症状です。
高血糖が神経そのものや周囲の細い血管にダメージを与え、感覚を伝える神経や筋肉を動かす神経が障害されます。痛みやしびれ、こむら返りなど気づきやすいものや、足の感覚が鈍くなる「感覚鈍麻」のように自覚しづらい症状もあります。手足の知覚や運動機能が衰え、日常生活にも悪影響を及ぼしかねません。
さらに病状が進行すると、自律神経という内臓や血管の働きに関わる神経にも影響が及び、しびれや麻痺が全身に広がります。身体が動かしにくくなるといった生活に大きな支障をきたすケースも少なくありません。
とくに注意が必要なのは、足の神経障害です。感覚が鈍ると小さな傷にも気づきにくくなります。潰瘍や感染を起こし、最悪の場合は切断が必要になることもあります。
視力低下や失明を引き起こす網膜症(糖尿病網膜症)
神経障害の後に現れるのが網膜症です。高血糖により、網膜にある毛細血管が傷ついたり破れたりして、視力低下や失明を引き起こす病気です。
網膜症の進行は、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値が高いほど早いと考えられています。症状が現れると、治療しても視力の回復は難しいといわれています。
そのため、糖尿病と診断されたら眼科で定期的に網膜の検査を受けることが大切です。また、視界がぼやけたりシミが見えたりするなど、目の異変に気付いたらすぐに眼科を受診しましょう。
糖尿病網膜症は進行性の病態で、早期の発見と治療が重要です。
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人工透析の原因第一位となる糖尿病腎症
糖尿病腎症は糖尿病三大合併症の中でも比較的遅く現れます。腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として出す働きをしています。
腎症になるとろ過機能が低下し、尿にタンパク質が漏れるようになります(タンパク尿)。症状が悪化すると、腎機能のほとんどが失われ「人工透析」が必要になります。糖尿病腎症は現在、日本の人工透析の原因第一位です。
糖尿病と診断されたら、定期的に尿検査を行い、腎機能の状態を確認するようにしましょう。
これらの合併症は、糖尿病患者が適正に血糖値を管理し、定期的な健康チェックや医師の指導を受けることで予防・管理が可能です。早期の発見と治療は合併症の進行を遅らせ、重篤な結果を防ぐために非常に重要です。
糖尿病を放置すると取り返しがつかない理由
糖尿病を放置すると、一度壊れた神経や血管は元に戻りません。
血糖値の高い状態が続くと血管の内側が傷つき、神経や臓器に酸素や栄養が行き届かなくなります。最初の頃はほとんど自覚症状がないため放置されがちですが、徐々に全身の機能が損なわれて気が付くと取り返しのつかない状態になっているのが特徴です。
治療を怠ると合併症が進行し、日常生活に支障をきたすようになります。これらの障害は一度起こると完治するのは難しいため、早期の血糖コントロールが唯一の予防策といえます。
放置して、「症状が出てから」では手遅れになるのが糖尿病の怖さです。
「合併症の連鎖」で生活の質が落ちる
糖尿病を放置すると、神経障害・網膜症・腎症といった三大合併症が次々と発症します。
神経障害によって手足のしびれや痛みが出ると、歩行や運転、仕事に支障が生じます。さらに、足の感覚が鈍くなり、傷に気づかず感染を起こすと「壊疽(えそ)」を引き起こし、切断が必要となる場合もあります。
また、網膜症では視力の低下や失明のリスク、腎症の進行により倦怠感やむくみが強まり、最終的には透析が必要になる場合もあります。
これらの合併症が重なると、仕事や趣味を続けるのが難しくなり、生活の質(QOL)は大きく低下します。
血糖を適切にコントロールし、合併症の連鎖を断ち切ることが、健康的な生活を維持するために重要です。
脳卒中・心筋梗塞など命に関わる病気にもつながる
高血糖状態が続くと、細い血管だけでなく太い血管(動脈)もダメージを受けます。これが「動脈硬化」を早め、脳や心臓の血流を妨げる原因です。結果として、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる重大な疾患のリスクが2〜4倍に高まることがわかっています。(文献2)(文献3)
血糖値が高いだけで症状がないように見えても、血管のダメージは着実に進行します。合併症を発症した後の治療では、後遺症や再発のリスクが高くなるため、適切な治療が最も重要です。
血糖コントロールは単に糖尿病治療ためだけでなく、命に関わる病気を予防するためにも欠かせません。
糖尿病の合併症を防ぐために必要なこと
糖尿病の合併症を防ぐには、症状が現れていないうちからの血糖コントロールが重要です。
糖尿病の治療や合併症の予防は、食事療法・運動療法・薬物療法の三本柱で行います。
どの治療を中心にするかは個人差があるため、主治医に相談した上で決めていきましょう。
糖尿病の治療や合併症の予防の三本柱
食事療法
血糖値が上がりやすい糖質の量を減らし、野菜や食物繊維の多い食品を多くとりいれると高血糖の改善や体重低下が期待できます。
極端な糖質制限は逆効果です。あくまで糖質を食べ過ぎないように食事の最後に食べるなどに留めましょう。
運動療法
運動はインスリンの働きが良くなり、高血糖の改善や体重低下が期待できます。
軽めのジョギングやウォーキングなど、無理なく継続できる方法で運動を取り入れましょう。
薬物療法
主治医と相談しながら、症状に合わせた薬を飲み続けましょう。
また、体質的にインスリン分泌が少ない人はインスリン注射を日常的に行う場合があります。
糖尿病治療に「再生医療」という選択肢
合併症予防のために、早めの治療の重要性を認識頂けたと思います。これまでの治療は、糖尿病の進行を遅らせることが主流でした。しかし最近では、再生医療という新しい選択肢があります。
再生医療により期待できる効果は、次の通りです。
- 合併症の症状が改善する
- 手足のしびれが改善する
- 糖尿病性網膜症が改善する
- 腎機能が改善する
再生医療を提供する当院では、メール相談、オンラインカウンセリングを承っております。
再生医療について詳しく知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。
糖尿病のお悩みに対する新しい治療法があります。
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本記事では、糖尿病が進行すると命に関わる合併症を引き起こすことを解説しました。
糖尿病三大合併症の神経障害、網膜症、腎症は進行すると、治療で元の状態に回復するのは極めて困難です。どの合併症も自覚症状がほぼなく、気づいたときには重症化しているケースがほとんどです。
健康な人と変わらないQOL(生活の質)や寿命を守るためにも、症状が現れないうちから内科や眼科での定期的な検査や、血糖コントロールの管理が大切です。サイレントキラーと恐れられる糖尿病の症状にはくれぐれもご注意ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
糖尿病の放置に関するよくある質問
糖尿病を治療せず放置すると寿命はどうなりますか?
糖尿病を治療せずに放置すると、神経症や網膜症、腎症といった細小血管合併症や、心筋梗塞や脳卒中、腎不全といった命に関わる大血管合併症を引き起こし、結果として寿命が短くなることがわかっています。
一方、アメリカでの研究で、糖尿病の治療を続けて血糖値を適切にコントロールしていれば、寿命が平均4年ほど延びる報告が確認できました。(文献4)なおこの報告では、糖尿病の治療によりHbA1c、血糖値、BMI、血圧値、LDLコレステロール値のすべてを改善できれば、寿命が10年以上伸ばせる可能性を示唆しています。
一方で、血糖値を適切に管理できていない場合は、寿命が4年短くなる恐れもあり、健康管理のためには血糖コントロールが重要です。(文献5)
糖尿病は何年放置すると症状が出ますか?
糖尿病は初期症状がほとんどなく、自覚できる症状が現れるまでには数年かかります。
三大合併症の中で最も早く現れやすい神経障害は、治療せずに放置すると約5年で足のしびれといった症状が出始めると言われています。その後、網膜症は約10年、腎症は約15年で発症する傾向があります。(文献6)
症状がないからといって放置せず、診断を受けたらすぐに治療を開始するのが、将来の深刻な合併症を防ぐために極めて重要です。
参考文献
2型糖尿病の罹病期間と神経学的合併症の関連、パキスタンの横断研究|CareNet
糖尿病と冠動脈疾患死亡との関連( NIPPON DATA80,19年追跡,男女計 )|NIPPON DATA
Diabetes and cardiovascular risk factors: the Framingham study|Circulation
UF Health study shows years of life gained by ideal Type 2 diabetes control |UF Health











