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【最新版】帯状疱疹後神経痛の解消法|後遺症でピリピリする際の治療法を紹介

帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹の合併症の中で最も頻度が高いといわれています。「触れただけで痛みを感じる」「ピリピリと電気が走るような痛みが続く」などの症状が現れるため、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
この記事では、帯状疱疹後神経痛や治療法などについて解説します。
病院で行う治療はもちろん、自分でできるケア方法についても説明していますので、自分に合った痛みの緩和方法を見つけ、生活の質を下げないようにしていきましょう。
目次
帯状疱疹後神経痛とは帯状疱疹の後遺症の一種
帯状疱疹後神経痛とは、帯状疱疹を発症した後、皮膚の症状が治まったにもかかわらず痛みが残ってしまう病気です。(文献1)
ここでは、以下の帯状疱疹後神経痛になりやすい人の特徴や、主な原因・症状について解説します。
- 帯状疱疹とは水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気
- 帯状疱疹後神経痛になりやすい人の特徴
- 帯状疱疹後神経痛の原因と主な症状
帯状疱疹とは水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気
帯状疱疹とは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気です。はじめて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染した場合、「水ぼうそう」として発症します。
この水痘・帯状疱疹ウイルスは厄介であり、水ぼうそうが治ったあともウイルスが体の中から消えることはありません。神経節と呼ばれる神経細胞が集まっている部分に身を潜め、再び活発になる機会をうかがっています。このとき、症状が現れることはありません。
そして、加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が下がると、潜んでいたウイルスが表に出てしまい、帯状疱疹を発症します。そのため、水ぼうそうに一度でもかかった人は、帯状疱疹になる可能性があります。
帯状疱疹の症状は、ピリピリとした痛みや小さな水ぶくれ(水疱)、皮膚の赤みなどです。皮膚の症状が出てからすぐに治療を開始するのが望ましく、早めに病院を受診する必要があります。治療は抗ウイルス薬の投与が主です。また、痛みがあれば鎮痛剤を服用する場合もあります。
帯状疱疹後神経痛になりやすい人の特徴
帯状疱疹後神経痛は、加齢や初期症状の重さなどにより発症リスクが高まるとされています。以下のような特徴を持つ方はとくに注意が必要です。
- 50歳以上の高齢者
- 女性
- 発疹の前から痛みや異常感覚がある方
- 発疹や痛みの程度が重度な方
これらに該当する場合は、帯状疱疹の初期段階から適切な治療を講じましょう。
帯状疱疹後神経痛の原因と主な症状
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の合併症の中で最も多いといわれています。合
併しやすい人は、高齢者や女性、帯状疱疹を発症しているときに痛みが強かった人などです。
帯状疱疹後神経痛の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化したときに神経が傷つけられることで発症すると考えられています。そのため、痛みを感じやすくなったり、神経の過剰な興奮によって痛みが現れたりする場合があります。
帯状疱疹後神経痛の症状は、下記の通りです。
- 持続的な痛みがある
- ヒリヒリと焼けるような痛みがある
- ピリピリと電気が走るような痛みがある
- 触れるだけで痛みを感じることがある(アロディニア)
- 痛みがある部分の皮膚の感覚が鈍くなる
痛みの程度は個人差があります。そのため、痛みによって眠りが浅くなったり、動くと衣服が擦れて痛かったりと、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
痛みは1~2カ月程度で治まってくることが多いですが、長い場合は1年以上続くこともあります。また、高齢であればあるほど痛みが続きやすいといわれています。
帯状疱疹後神経痛の治療(解消法)
帯状疱疹後神経痛の治療では薬物療法が基本とされますが、痛みの強さや日常生活への影響によっては、より専門的な治療が検討されます。
以下で主な治療法を紹介します。
- 薬物療法
- 神経ブロック注射
- 脊髄刺激療法(SCS)
- イオントフォレーシス
- 低出力レーザー照射療法
- 運動療法
薬物療法
薬物療法は、痛みや神経の興奮を薬でコントロールする治療法です。
帯状疱疹後神経痛は神経の痛みであり、適切な薬を医師に処方してもらう必要があります。
薬物療法で主に使われる薬は、以下の通りです。(文献2)
- 抗うつ薬
- 抗てんかん薬
- 神経障害疼痛に用いる鎮痛薬
- オピオイド鎮痛薬
帯状疱疹後神経痛の痛みに対し、使われる薬は効果や副作用などのバランスによって第一選択薬、第二選択薬、第三選択薬と分かれています。
まずは、抗うつ薬や抗てんかん薬、神経障害に用いる鎮痛薬の服用で様子をみます。痛みの緩和が見られない場合は徐々に選択範囲を広げ、より強い鎮痛効果を示す薬を使用します。
たとえば、第一選択薬と挙げられるのは、抗てんかん薬の「プレガバリン(リリカ®)」や「ミロガバリン(タリージェ®)」、抗うつ薬の「三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)」や「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(サインバルタ®)」などです。
効果が不十分な場合には、第二選択薬として「ノイロトロピン®」、第三選択薬としてオピオイド鎮痛薬の「トラマール®」や「トラムセット®」を使用するケースもあります。(文献3)
とくに、オピオイド鎮痛薬は効果が強い薬です。オピオイド鎮痛薬以外の薬では痛みの緩和ができない場合に使用され、適応条件もあります。注意点として、腎機能が悪い人には使用できません。
神経ブロック注射
神経ブロック注射とは、痛みを感じる神経やその周囲に局所麻酔薬を注射する治療です。(文献4)
痛い部位がはっきりとわかっている場合は、注射後すぐに効果を実感できます。また、内服薬とは違い直接的に痛みに効くため、より痛みの緩和につながります。
神経ブロック注射にはいくつかの種類があります。たとえば、顔や首、腕など上半身の帯状疱疹後神経痛には「星状神経節ブロック」が使われます。交感神経の働きを抑えて血流を改善すれば、痛みの軽減が期待できます。
また、首から足先まで、体のあらゆる部位に対応できる「硬膜外ブロック」もあります。これは脊髄の周囲にある硬膜外腔に局所麻酔薬を注入する方法で、神経を一時的にブロックし、強い痛みを緩和するのに有効です。
なお、神経ブロック注射の持続効果は、人によって異なります。1日しか効かない人もいれば、数日効果が持続する人もいます。しかし、早めに神経ブロックを行うと、治療の効果が高まるといわれています。
神経ブロック注射の治療は入院の必要がなく、外来で受けられます。注意点として、血をサラサラにする薬(ワーファリン、バイアスピリンなど)を使用している場合は、針を刺したときに出血が止まらないことがあるため、行えないことがあります。
脊髄刺激療法(SCS)
脊髄刺激療法(SCS)は、脊髄に微弱な電流を与え、脳に伝わる痛みを妨げる治療法です。(文献5)
通常、体に痛みを感じると神経を通じて痛みの信号が脊髄から脳に伝わります。この神経路に微弱な電流を流すと脳に痛みが伝わりにくく、痛みの緩和につながります。
体の中に脊髄刺激リードと刺激発生装置を埋め込む手術が必要になるため、入院が必要です。手術は局所麻酔で行われ、一度の入院期間もそこまで長くありません。
イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは薬をより深い部分に浸透させて痛みを和らげる治療です。
局所麻酔薬を浸透させたパットを痛みのある部分に貼り付け、微弱の電流を流します。電流によって薬がイオン化すると皮膚の深い部分へと浸透し、痛みを和らげます。
皮膚表面だけではなく、神経を伝達する深い部分にまで薬が浸透するため、脳に痛みを伝えにくくする効果もあります。治療時間は15分程度であり、外来で行えます。また、痛みを伴わない治療であり、注射に抵抗のある人にも行えます。
一度の治療で痛みを和らげることは難しく、根気よく治療を続けることが必要です。
低出力レーザー照射療法
低出力レーザー照射療法は痛みがある部分にレーザーを当て、痛みを和らげる治療法です。
レーザーによって血行がよくなると痛みを感じにくくなります。また、痛みによって興奮している気持ちを落ち着ける効果もあります。
痛みをほとんど伴わない治療であるため、注射に抵抗がある人にもおすすめです。痛みがより強い人向けに、通常の治療に追加して実施されやすいです。
運動療法(マッサージ・エクササイズ等)
マッサージ・エクササイズ等の運動療法は、痛みによって過度に活動が制限された場合に行われます。
マッサージやストレッチ、エクササイズなどを理学療法士と一緒に行うことで、筋肉や関節のこわばりを和らげ、血流の改善や緊張の緩和が期待できます。
また痛みの軽減だけでなく、痛みに対する恐怖心を和らげ、日常生活の活動範囲を少しずつ広げていく効果も見込めます。
帯状疱疹後神経痛を治療する上での注意点
帯状疱疹後神経痛を治療する際は、以下のいくつか注意すべき点があります。
- 帯状疱疹後神経痛の治療で副作用が出る場合がある
- 保険適用外の治療法もあり費用の負担がかさみやすい
- 帯状疱疹後神経痛のほかにも後遺症が出る可能性がある
帯状疱疹後神経痛の治療で副作用が出る場合がある
帯状疱疹後神経痛の治療法別の副作用と対処法について、以下にまとめました。
治療方法 | 副作用 | 副作用への対処 |
---|---|---|
鎮痛剤 | オピオイド鎮痛薬の場合、吐き気や便秘、眠気など | ・薬の処方時に副作用を確認 ・症状が出たらすぐ医師に相談 |
神経ブロック注射 | 副作用は、飲み薬と比べて少ない。まれに下記が現れる場合がある ・注射部位の痛みや出血、感染 ・投与する薬に対するアレルギー |
・症状が出たらすぐ医師に相談 |
イオントフォレーシス | 副作用はほとんどなし | ー |
脊髄刺激療法(SCS) | 脊髄刺激装置は、IH調理器や金属探知機などの強い電磁波に反応し、刺激が変化する場合がある。体内に埋め込む装置のため、使用状況によっては破損ややけどのリスクもある |
・IH調理器や金属探知機の使用時は、できるだけ距離を取り一時的に電源を切る |
低出力レーザー照射療法 | 副作用はほぼないが、照射部位の乾燥や軽度のかゆみが現れることがある | ・症状が出たらすぐ医師に相談 |
治療法にはそれぞれ副作用が伴う可能性があります。治療を選択する際は、効果だけでなくリスクも理解した上で、医師と相談しながら進めることが大切です。
保険適用外の治療法もあり費用の負担がかさみやすい
帯状疱疹後神経痛にはさまざまな治療法がありますが、保険で行えるものと保険適応外のものがあります。
薬物療法や神経ブロック、脊髄刺激療法は保険が適応されます。一方、レーザー治療、イオントフォレーシスは比較的新しい治療法であり、保険は適応外です。
保険適応外の治療法は、金銭的な負担が大きくなりやすいのが現状です。医師とも相談しながら金銭的な面も含めて、適切な治療法を選択してください。
帯状疱疹後神経痛のほかにも後遺症が出る可能性がある
帯状疱疹の後遺症は神経痛だけではありません。発症部位によっては、顔面神経麻痺や耳鳴り、めまい、難聴などを引き起こすラムゼイ・ハント症候群や、角膜炎・結膜炎などの目の疾患が残ることもあります。
これらは視力や聴力に影響を与えることもあるため、日常生活への支障が大きいのが特徴です。また、強いストレスによって頭痛が悪化するケースも見られます。
こうした症状が長引くと、心身ともに大きな負担となり、一般的な治療では改善しにくい場合もあります。
帯状疱疹後神経痛をはじめ後遺症の解消には再生医療をご検討ください
帯状疱疹の後に残る神経の痛みやしびれ、顔面麻痺、めまいなどは、症状の程度や回復の経過に個人差があります。そのため、一般的な治療だけでは十分な対応が難しいと感じるケースもあります。
しかし、近年では患者様自身の幹細胞や血液を用いた再生医療が選択肢の一つとして挙げられるようになってきました。
再生医療を検討する際は、医師による診察と適応の確認が必要となるため、まずは専門の医療機関で相談してみることをおすすめします。
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帯状疱疹後神経痛の解消にはセルフケアも大切
帯状疱疹後神経痛は、治療とあわせて日々のセルフケアも重要です。症状の緩和をめざして、以下の生活習慣を見直してみましょう。
日常生活での工夫
自分でできる日常生活での工夫は以下の通りです。
- 体を温める、冷やさない
- 痛みのある部位を刺激しない
- 痛み以外のことを考える
- 生活リズムを整える
体を温める・冷やさない
体を温めると血行がよくなり、痛みが軽くなることがあります。温かい湯船にゆっくりつかり、全身を温めましょう。入浴はリラックス効果も期待できるため、おすすめです。
また、患部にホットタオルを当てるのも有効です。ただし、感覚が鈍くなっている場合もあるので、熱くなりすぎないよう注意しましょう。
患部を刺激しない
患部への刺激は、痛みの悪化につながります。チクチクとした素材や金属などが付いている服は着用を避けてください。服は肌に優しい素材を選び、装飾がないシンプルなものを選ぶと刺激が少ないです。
それでも服が擦れて痛い場合は、さらしや包帯を巻く方法もあります。注意点として、さらしなどがずれてしまうと刺激の原因となります。きつめに巻き、緩んだら締め直しましょう。
痛み以外のことを考える
痛みは精神面との関連が深く、帯状疱疹後神経痛の患者さんは不安や抑うつ傾向の方が多いといわれています。
そのため、痛みを考え続けるのではなく、自分の好きな仕事や趣味などを積極的に取り入れ、痛み以外に意識を向ける時間を作りましょう。
また、痛みを回避しようと行動を制限してしまい、活動の幅が狭くなることも多いです。痛みに対する恐怖や不安を抱えている方もいるでしょうが、じっとしていることで筋肉が固まり、痛みを感じる原因となります。
少しでも痛み以外のことを考えられるよう、外の空気を感じながら散歩するのもおすすめです。
生活リズムを整える
帯状疱疹後神経痛の痛みは、疲労やストレス、睡眠不足などで悪化しやすいといわれています。
日頃から規則正しい生活を送り、免疫力が低下しないよう体の調子を整えましょう。しんどいと感じたら、すぐに休息を取れるようにしておくことも大切です。
心理的サポートの重要性
帯状疱疹後神経痛の患者の中には不安などを抱えている方が多くいます。(文献6)
痛みを感じ続けると何をするにも億劫になり、気持ちが塞ぎ込みやすくなります。また、痛みばかり考えていると精神的につらくなり、精神疾患を発症しやすいです。
ペインクリニックでは、メンタルケアを含めた治療を行っています。もし精神的なつらさを感じているのであれば、一般的なクリニックではなくペインクリニックの受診をおすすめします。
帯状疱疹後神経痛は適切な治療を選択して痛みを解消しましょう
帯状疱疹後神経痛は、早期からの適切な治療が非常に重要です。
薬物療法や神経ブロック注射などの治療法から、症状に合わせて適切に選択するのが痛みの解消への近道です。諦めずに専門医と相談し、多角的なアプローチで痛みの緩和を目指しましょう。
当院リペアセルクリニックでは、帯状疱疹後神経痛による慢性的な痛みに対し、再生医療の選択肢を提供しております。
患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧なカウンセリングを実施し、症状の原因にアプローチする治療をご提案します。
長引く神経の痛みが気になる方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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(文献1)
帯状疱疹予防.JP「帯状疱疹の合併症(後遺症)」
https://taijouhoushin-yobou.jp/sequela.html (最終アクセス:2025年6月12日)
(文献2)日本ペインクリニック学会「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版」
https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/kaiin_guideline06.html(最終アクセス:2025年6月12日)
(文献3)
日本ペインクリニック学会「オピオイド」
https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keyopioid.html(最終アクセス:2025年6月12日)
(文献4)
日本ペインクリニック学会「発症 3 カ月以内の帯状疱疹関連痛に神経ブロックは有効である」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/26/4/26_18-0046/_pdf(最終アクセス:2025年6月12日)
(文献5)
一般社団法人 日本定位・機能神経外科学会「脊髄刺激療法(SCS)」
https://jssfn.org/patient/treatment/scs.html(最終アクセス:2025年6月12日)
(文献6)
日本ペインクリニック学会「帯状疱疹後神経痛患者の精神・心理的評価」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc1994/14/4/14_4_401/_article/-char/ja/(最終アクセス:2025年6月12日)