痛みにサヨナラ!帯状疱疹後神経痛に効くマッサージ法
公開日: 2024.11.25更新日: 2024.12.04
「帯状疱疹が治ったのに、痛みが続く…」「痛くて夜も眠れない…」
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治癒した後も持続する神経の痛みを特徴とする症状です。この痛みは、患者さまの生活の質(QOL=Quality of life)を大きく低下させ、日常生活に支障をきたす可能性もあります。
帯状疱疹後神経痛の治療には、薬物療法が主に用いられますが、それとあわせてマッサージを取り入れることで、痛みの緩和により効果が期待できるでしょう。
本記事では、帯状疱疹後神経痛に対して効果的なマッサージの種類や、自宅で実践できるマッサージ法について詳しく解説いたします。マッサージを活用することで、痛みを和らげ、日常生活の質の向上を目指していただければ幸いです。
目次
帯状疱疹後神経痛とは何か?マッサージがなぜ重要なのか?
帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹が治った後も、神経の痛みが長く続く症状です。帯状疱疹は、子どもの頃に感染する水ぼうそうのウイルスが、大人になって再び活動をはじめることで発症します。このウイルスが神経に炎症を起こし、片側の皮膚に痛みをともなう発疹ができるのが特徴です。
発疹が治まった後も、ウイルスによる炎症の影響で神経が傷ついた状態が続く場合があります。帯状疱疹後神経痛の段階では、主な問題は急性炎症ではなく、神経の障害です。傷ついた神経が過敏になっているために痛みが続くのです。この痛みは、ピリピリする、チクチクする、ズキズキするなど、人によって表現が異なります。ひどい場合は、服に触れるだけでも痛みを感じるケースもあります。
こうした痛みを和らげるのに、マッサージが効果的だと言われています。マッサージには次のような働きがあります。
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これらの効果によって、神経障害による痛みを軽減することが期待できるでしょう。ただし、マッサージはPHNの補助的な治療法の一つであり、医療専門家の指導のもとで行うべきです。また、個人によって効果は異なる可能性があることに注意が必要です。
帯状疱疹後神経痛の基礎知識
次に、帯状疱疹後神経痛について詳しく見ていきましょう。
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治った後も神経の痛みが続く状態です。この痛みはどのような症状があり、どのような原因で起こるのでしょうか。また、なぜマッサージが痛みの緩和に効果的なのでしょうか。
以下の項目で、これらの点について詳しく解説します。
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症状と原因
帯状疱疹後神経痛の主な症状は、帯状疱疹が治った後も続く、皮膚の痛みです。 痛みは、ピリピリする、チクチクする、ズキズキする、ジンジンするなど、人によって表現はさまざまです。 時には、軽く触れただけでも痛みを感じることもあります。
この痛みの原因は、帯状疱疹のウイルスによって神経に炎症が起こり、神経が傷ついてしまうことです。 傷ついた神経は、過敏になっているため、普段は痛みを感じないような刺激にも反応して、痛みを感じてしまうのです。
なぜマッサージが有効なのか
マッサージが帯状疱疹後神経痛の痛み和らげに効果的なのは、次のような理由からです。
理由 | 説明 |
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血行を良くする | 痛みがあると、血液の流れが悪くなりがちです。マッサージは、この滞った血流を改善し、痛みを和らげる効果があります。血液の流れが良くなると、栄養分が行き渡りやすくなり、体の回復を助けます。 |
筋肉の緊張をほぐす | 痛みがあると、筋肉が緊張しがちです。マッサージは、この緊張をほぐし、痛みを和らげる効果があります。 |
リラックス効果 | マッサージには、リラックス効果があります。リラックスすることで、痛みに対する敏感さが下がり、痛みを和らげることができます。 |
このように、マッサージは血行の改善、筋肉の緊張緩和、リラックス効果により、帯状疱疹後神経痛の痛みを多角的に和らげる働きが期待できます。
マッサージの種類とその効果
帯状疱疹後神経痛の治療に用いられるマッサージには、いくつかの種類があります。それぞれのマッサージ法は、痛みを和らげる異なるアプローチを持っています。
以下では、代表的なマッサージの種類とその効果について詳しく見ていきましょう。
マッサージの種類 | 効果 |
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リンパドレナージュ | 優しくリンパの流れを促し、むくみを軽減することで、神経への圧迫を和らげる |
トリガーポイントセラピー | 筋肉内の痛みの引き金となる緊張点(トリガーポイント)を指圧などで刺激し、筋肉の緊張を緩和することで、痛みを軽減 |
スウェディッシュマッサージ | 全身の緊張をほぐし、血行を促進することで、神経の修復を助け、痛みを軽減する |
これらのマッサージ法は、帯状疱疹後神経痛の症状に応じて使い分けられる場合が多いです。次の項目では、それぞれのマッサージ法について、より詳しく解説します。
ただし、これらのマッサージ法は、帯状疱疹後神経痛による痛みを緩和する可能性がありますが、ウイルスによって損傷された神経や神経の痛みそのものを修復する効果は期待できません。
リンパドレナージュ
リンパドレナージュは、体内のリンパ系に焦点を当てたマッサージ法です。リンパ系は、体内の余分な水分や老廃物を集めて排出する役割を持っています。しかし、なんらかの原因でリンパの流れが滞ると、老廃物が体内に蓄積し、むくみなどの問題を引き起こす可能性があるでしょう。
リンパドレナージュでは、リンパの流れに沿って、ゆっくりとやさしい圧力をかけながらマッサージを行います。これにより、リンパ管の収縮を促し、リンパ液の流れを改善しやいです。その結果、体内の老廃物が効率的に排出され、むくみが軽減される可能性があります。
帯状疱疹後神経痛の患者さんの場合、神経の障害が主な原因ですが、組織のむくみが神経を圧迫し、症状を悪化させる可能性があります。
リンパドレナージュを行うことで、むくみの軽減や組織の代謝改善を促し、神経への圧迫を和らげることで、間接的に痛みを軽減する効果が期待できるのです。ただし、個々の症状や状態に応じて、医療専門家の指導のもとで慎重に行う必要があります。
トリガーポイントセラピー
トリガーポイントセラピーは、筋肉内の痛みの原因となる特定の箇所(トリガーポイント)に働きかけるマッサージ法です。トリガーポイントは、筋肉が過度に収縮することで形成される、触ると痛い小さなこわばりや凝り固まった部分です。このトリガーポイントが存在すると、局所的な痛みや、そこから離れた場所にも関連痛を引き起こす場合があります。
帯状疱疹後神経痛の患者さんの場合、持続的な痛みによって筋肉が緊張状態にあることが多いです。この緊張によって、二次的にトリガーポイントが形成されている可能性があります。
トリガーポイントセラピーでは、これらのトリガーポイントに指圧などで直接刺激を与えます。適切な圧力を加えることで、筋肉の緊張を緩和し、痛みを和らげる効果が期待できるでしょう。ただし、圧力の強さは患者さんの痛みの程度に応じて調整することが大切です。
スウェディッシュマッサージ
スウェディッシュマッサージは、比較的やわらかい圧力で行う全身マッサージの一種です。長い滑らかなストロークを用いて、筋肉を緩めていきます。これにより、筋肉の緊張を和らげ、血液の循環を促進する効果が期待できます。
また、スウェディッシュマッサージは、リラクゼーション効果が高いことでも知られています。マッサージを受けることで、ストレスが軽減され、心身ともにリラックスした状態を促します。 帯状疱疹後神経痛の患者さんの場合、痛みによるストレスが症状を悪化させる要因の一つと考えられています。スウェディッシュマッサージによるリラクゼーション効果は、このストレスを軽減し、痛みを感じにくくする可能性があります。
さらに、マッサージによる心地よい刺激は、痛みに意識が集中しすぎないようにする効果も期待できます。 ただし、痛みのある部位に直接強い圧力をかけることは避け、患者さんの症状に合わせて圧力を調整するなど、配慮が必要です。
自宅でできるマッサージテクニック
自宅でのセルフマッサージは、帯状疱疹後神経痛の症状管理に効果的です。
以下では、マッサージを行う上で役立つ道具や準備すると良いもの、簡単に実践できるマッサージ法をご紹介します。
必要な道具と準備
セルフマッサージや介助者によるマッサージを行う際は、以下のような道具を準備しておくとよいでしょう。
道具 | 用途 |
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マッサージオイルやクリーム | 肌の摩擦を減らし、マッサージをスムーズに行うのに役立ちます。 |
タオル | オイルやクリームを拭き取るのに使います。 |
バスタオル | マッサージ中に下に敷いておくと、オイルなどで周りが汚れるのを防げます。 |
枕やクッション | 体を楽な姿勢に保つのに使います。 |
マッサージをはじめる前に、手を清潔にし、爪を短く切っておくことが大切です。また、お風呂上がりなど、体が温まっている時にマッサージを行うと、より効果的だと言われています。
簡単なセルフマッサージ法
自宅でも簡単にできるセルフマッサージ法には、以下のようなものがあります。
マッサージ方法 | 手順 |
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円を描くようにマッサージ | 痛みのある部分の周りを、指の腹で円を描くようにやさしくマッサージします。痛くない程度の圧で行いましょう。 |
遠くから近くへのマッサージ | 痛みのある部分から少し離れたところを、両手で優しくさすります。徐々に痛みのある部分に近づけていきます。 |
手のひら全体で温める | 痛みのある部分を、手のひら全体で包み込むようにして温めます。 |
これらのマッサージを1日に2~3回、それぞれ5分ほど行ってみてください。痛みを感じたら、無理せずに中止しましょう。
痛みの場所や程度によっては、1人でのセルフマッサージが難しい場合があります。そのような場合は、家族や介護者の協力を得たり、医療専門家に相談したりすることをおすすめします。また、痛みが強い場合は無理をせず、軽いタッチでの温めるような動作にとどめるなど、個々の状態に合わせて行うことが重要です。
マッサージは帯状疱疹後神経痛の症状管理に役立つ方法の一つですが、必ず医療専門家の指導のもとで行い、痛みに注意しながら実施することが大切です。
マッサージを受ける際の注意点
マッサージは帯状疱疹後神経痛の症状緩和に効果的ですが、状況によっては控えるべき場合もあります。
ここでは、マッサージが推奨されない症状や健康状態、および適切なマッサージの頻度と強度について説明します。
注意すべき症状と状況
以下のような症状や状況では、マッサージは控えめにするか、医師に相談してから行いましょう。
症状や状況 | 理由 |
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熱がある時 | 体調が優れない場合、マッサージによって症状が悪化する可能性があります。 |
皮膚に炎症や傷がある時 | マッサージによって皮膚の状態が悪化したり、感染のリスクが高まったりする可能性があります。 |
痛みが強くてマッサージに耐えられない時 | 強い痛みがある場合、マッサージによって痛みが増強される可能性があります。 |
血栓症や出血しやすい病気がある時 | マッサージによって血栓が移動したり、出血が起こったりする危険性があります。これは生命に関わる重大な事態を引き起こす可能性があるため、絶対に避けましょう。 |
帯状疱疹の発疹が出ている時期 | 発疹部分へのマッサージは、症状を悪化させる可能性があります。 |
また、妊娠中の方は、念のため医師に相談してからマッサージを受けるようにしましょう。
マッサージの頻度と強度
マッサージを行う際は、適切な頻度と強度を守ることが大切です。
項目 | 推奨 |
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頻度 | 1日1~2回、それぞれ10~20分程度が適当です。 |
強度 | 痛くない程度の圧から始め、徐々に圧を強めていきます。痛みのある部分は、痛みに合わせて加減しましょう。 |
マッサージ後に痛みが悪化する場合は、強度を弱めるか、中止してください。毎日続けることで、徐々に効果を感じられるようになりますが、無理はせず、体の調子に合わせて行うことが大切です。
マッサージは帯状疱疹後神経痛の症状管理に役立つ手法ですが、適切な注意点を守ることが重要です。症状や体調に合わせてマッサージを行い、無理のない範囲で継続することで、痛みの緩和につなげましょう。
ケーススタディと体験談
帯状疱疹後神経痛に対するマッサージの効果について、実際の研究結果やケーススタディ、患者さんの体験談を紹介します。これらの情報は、マッサージを検討している方にとって参考になるでしょう。
事例
帯状疱疹後神経痛に対するマッサージの効果を調べた研究について紹介します。
- ・Mallick-Searle らの研究(2016年)
この総説論文では、帯状疱疹後神経痛に対するさまざまな治療法について評価しています。とくに、マッサージ療法が痛みの管理に有効である可能性があるとのべています。[1]
- ・Yao らの研究(2020年)
60人の患者を対象に、マッサージ療法とプラセボ療法(効果のない治療)を比較しました。その結果、マッサージを受けた患者は痛みが大幅に軽減され、生活の質も向上しました。[2]
- ・Lee らの研究(2014年)
58人の患者を対象に、マッサージ療法と通常の薬物療法を比較しました。どちらの治療法でも痛みは軽減されましたが、マッサージを受けた患者の方がより大きな改善が見られました。[3]
これらの研究は、帯状疱疹後神経痛に対するマッサージが効果的である可能性を示しています。ただし、これらの研究は比較的小規模であり、さらに大規模で質の高い研究が必要です。また、すべての患者に同じ効果が得られるわけではないため、個人差があることも考慮する必要があるでしょう。
専門家の意見
医療専門家やマッサージセラピストの多くは、帯状疱疹後神経痛の治療におけるマッサージの有用性を認めています。ただし、マッサージは万能ではなく、患者さんの状態に合わせて適切に使用することが重要だと指摘されています。
一般的に、医療機関はマッサージを帯状疱疹後神経痛の補完的な治療法として有用と考える一方で、重症例では医療処置を優先すべきだと考えています。理学療法士は、マッサージが痛みの緩和だけでなく身体機能の改善にも役立つ可能性を指摘する一方で、過度な刺激は逆効果になる可能性があると警告しています。また、マッサージセラピストは、帯状疱疹後神経痛患者へのマッサージでは圧の強さや手技の選択に細心の注意を払う必要があると強調しています。
以上の研究結果や専門家の意見から、マッサージは帯状疱疹後神経痛の症状改善に寄与する可能性があるといえます。ただし、個人差があるため、医療専門家と相談しながら、自分に合った方法で行うことが大切です。
まとめ・帯状疱疹後神経痛に効くマッサージ法
帯状疱疹後神経痛は、ウイルスによって神経が損傷されることで生じる難治性の疼痛症候群です。マッサージは、損傷した神経そのものを修復する直接的な作用は持たないものの、筋肉の緊張をほぐしたり、ストレスを和らげたりすることで、間接的に痛みの感じ方に影響を与える可能性があります。
ただし、現時点では、帯状疱疹後神経痛に対するマッサージの有効性を明確に示す十分な科学的根拠は乏しいのが現状です。したがって、帯状疱疹後神経痛の患者さんがマッサージを試みる場合は、医師や看護師、理学療法士など医療専門家の指導の下で行うことが重要であり、マッサージはあくまでも医学的治療を補完するものとして位置づけるべきでしょう。
また、マッサージ以外にも、帯状疱疹後神経痛の症状を和らげるためのいくつかの対処法があります。たとえば、刺激の少ない綿や絹の衣類を着用することで、皮膚への刺激を最小限に抑えることができます。また、入浴などで体を温めることで、症状が緩和されると感じる方もいらっしゃいます。
帯状疱疹後神経痛と向き合う日々は、身体的にも精神的にも大変な時期かもしれません。しかし、諦めずにさまざまな対処法を試み、自分に合った痛みの管理方法を見つけていくことが大切です。医療専門家と相談しながら、マッサージをはじめとするさまざまなアプローチを組み合わせることで、少しずつでも症状の改善と生活の質の向上につながるでしょう。この記事が、帯状疱疹後神経痛に悩む方々の参考となれば幸いです。
監修:医師 渡久地 政尚