アルコール性肝炎の初期症状を見逃すな!原因や症状を徹底解説
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アルコール性肝炎の初期症状を見逃すな!原因や症状を徹底解説
長期のアルコール多飲が引き起こすアルコール性肝炎ですが、重症化すると救命率が下がるため、早期発見が大切です。
多量飲酒後の食欲不振や発熱、倦怠感、右上腹部痛、黄疸が出たら要注意です。
この記事では主にアルコール性肝炎の原因や症状に的を当て、説明していきます。
アルコール性肝炎の原因とは
長期にわたり常習的にアルコールを大量に摂取することで生じる肝疾患の総称を、アルコール性肝疾患といいます。
これらのアルコール性肝疾患が起きる原因は、長期の多量飲酒によって肝臓がダメージを受けることです。
アルコール代謝の中で生じる毒素や炎症物質が肝細胞を損傷するほか、肝臓の脂肪化や栄養の偏りも肝機能低下 を助長させるのです。
アルコール性肝疾患には、具体的に以下のようなものが挙げられます。
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この中でアルコール性肝炎は、炎症が特に強い状態となります。
アルコール摂取が肝臓の許容量を超え、アルコール性脂肪肝になり、その状態でさらに飲酒を継続するとアルコール性肝炎が引き起こされます。
脂肪肝と肝炎が混在する状態を、アルコール性脂肪性肝炎と呼びます。重症型になると死に至ることもあるため、早期発見・早期治療・継続的な断酒が大切になります。
また、アルコール性肝炎の診断を受けた時点で多量飲酒が習慣化されている人は、すでにアルコール依存症になっている可能性があります。その場合は、休肝日を設けたり飲酒量を少なくするのではなく、完全に断酒する方法を考えていかなくてはなりません。
担当医師から専門の医師に紹介してもらい、必要に応じて入院診療を受け、さらに自助グループやデイケアなどで継続的な断酒のサポートを受けましょう。禁酒により一旦肝炎が改善しても、飲酒を再開すれば肝硬変に至るかもしれません。一時的な肝炎の改善だけでなく、病気の再燃や肝硬変の予防のため、長期的な努力が必要です。
アルコールの分解過程
肝臓は様々な働きを持つとても重要な臓器です。その働きの一つが解毒であり、アルコールも分解してくれます。
お酒を飲むと、胃や腸管などの消化器官がアルコール成分を吸収し、血管を通って肝臓に届けられます。アルコールはエタノールという成分になりますが、このエタノールはまず肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)によって酸化され、アセトアルデヒドという物質に分解されます。
アセトアルデヒドとは、二日酔いの原因となる物質です。これが体内に蓄積することで、吐き気やめまいなどの症状が出現します。
続いて肝臓内では、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によってアセトアルデヒドは酢酸に分解され、酢酸は血流に乗って全身に送られます。
酢酸は筋肉や脂肪組織でエネルギー代謝を受け、最終的に水や二酸化炭素となります。こうして水は尿へ、二酸化炭素は呼気として体外に排出されるのです。
しかし、必ずしも1回で全てのアルコールが分解できるわけではありません。分解できずに残ったアルコールは、体内を巡って肝臓に戻り、分解できるまで同じ過程を繰り返します。
どれくらいの飲酒量なら許容されるのか?
どれくらいのお酒なら健康被害を出さずに飲めるのかについては、人種や性別、遺伝子などが関係しているため、個人差があります。
上記のアルコール分解過程で必要なALDHには1型と2型があり、2型はアセトアルデヒド濃度が低いうちから働くため、この酵素が多い人間が“お酒に強い人”となります。
しかし、日本人の4割以上はこの2型が低活性型で、さらに日本人の4 %はこれが全く機能しない不活性型であるとされています1)。
お酒を飲むとすぐ気持ち悪くなってしまう“お酒が合わない人”というのは、これが原因かもしれません。
性差に関しては、女性のアルコールを分解する能力は男性の2/3 程度しかなく1)、一般的に女性は男性よりも酔いやすいとされます。
厚生労働省が提唱する適切な飲酒量は、純アルコールで1日あたり約20 gまでとなっています2)。
また、日本人を対象にしたある研究では、アルコール量の摂取が1日あたり23 g/d以下の男女では死亡率(全死因を含む)が12~20 % 減少したと報告されています3)。
【アルコール約20 gの換算表】
お酒の種類 |
量 |
アルコール度数 |
アルコール量 |
ビール |
中瓶1本 (500ml) |
5 % |
20 g |
ワイン |
グラス2杯 (240 ml) |
12 % |
24 g |
日本酒 |
1合 (180 ml) |
15 % |
22 g |
焼酎 |
半合 (90 ml) |
35 % |
25 g |
ウィスキー |
ダブル (60 ml) |
43 % |
20 g |
上記の換算表を用いて、飲みすぎないように注意しつつ、休肝日を設けて肝臓を労ってあげましょう。
お酒に強くなったら肝臓も強くなる?
最初はお酒に弱くても、飲み続ければ強くなると言われたことはありませんか?実はそれ、事実なのです!
上記のアルコール分解過程で示したADHやALDHの他に、ミクロソームエタノール酸化酵素(MEOS)というものがエタノール分解に関わっています。
MEOSはアルコール摂取によって活性化する特性があるため、“お酒を飲めばお酒に強くなる”という現象が起きます。
しかし、だからと言って肝臓の負担が減るわけではありません。飲酒量や飲酒の頻度が増えれば増えるほど、肝臓はダメージを受け、肝障害へと繋がります。他者にお酒を勧められようとも、自分の身を守れるのは自分だけです。必要な時には断るなり、誰かに相談するなりして、適切な飲酒量を守りましょう。
アルコール性肝炎の症状とは
肝臓は別名“沈黙の臓器”と呼ばれ、重症化するまで気が付かないのが怖いところです。
脂肪肝のうちは多くの場合症状はありませんが、肝腫大はみられることがあります。それがアルコール性肝炎に進行すると、以下のような症状が現れます。
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アルコール依存症に陥っている場合、飲酒によって空腹を感じず、栄養失調になっていることが多いです。
さらに、肝炎が重症化すると、禁酒しても症状が改善せず、以下のような重篤な症状が現れるようになります。
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重症型アルコール性肝炎になってしまうと死に至ることもあり、注意が必要です!
上記の症状を自覚したら、すぐに消化器内科を受診しましょう。大事に至る前にお酒をやめ、早期に治療を受けることが大切です。
アルコール性肝炎の検査方法
1. 血液検査
血液検査では、肝臓の機能を測る値(AST/ALT, γ-GTP)が高いだけでなく、高脂血症や白血球の増加、ビリルビンの上昇、アルブミンの低下、プロトロンビン(PT)時間の延長、高乳酸決症を認めます。
また、アルコール性肝炎ではALTと比してASTが高くなるのも特徴です。採血項目に関する説明は下記をご覧ください。
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2. 画像検査
エコー(超音波)検査やCT検査、MRI検査を行い、肝臓の状態を画像的に評価します。
検診などでも行われるエコー検査ですが、アルコール性肝炎では肝臓の腫大や肝辺縁の鈍化、肝臓が明るく見えるbright liver等の脂肪肝に特徴的な所見を認めます。
エコー検査はアルコール性脂肪肝を確認する際には有用ですが、肝炎の重症度を確認するには至りません。
その点、CT検査やMRI検査では脂肪化の程度や重症度までしっかり確認できます。
3. 肝生検
肝生検とは、エコーで肝臓の位置を確認後、消毒や局所麻酔を行い、生検針で肝臓を穿刺し、採取した組織を病理学的に診断する方法です。
特徴的な所見として、肝細胞の風船化や壊死、炎症細胞の浸潤、マロリー体と呼ばれる肝細胞の脂肪化に伴って現れるタンパク質などがみられます。
4. 飲酒習慣のスクリーニングテスト
AUDITと呼ばれる飲酒関連の問題をスクリーニングするテストがあります。
飲酒量や頻度などを質問形式で問われ、問題飲酒の重症度を判定していきます。
病院に行かずとも、インターネット上で気軽にアクセスできるので、気になった方は試してみてください。
まとめ・アルコール性肝炎は早期発見が大切!
アルコール性肝炎の原因や症状について理解することができましたでしょうか?
基本的には長期に渡る過剰な飲酒が原因となりますが、アルコール分解能が低い人では多量飲酒とはいかない量でもアルコール性肝炎を発症し得ます。肝臓の腫大や右上腹部痛、黄疸、発熱がみられたらすぐに消化器内科の診察を受けましょう。
一時的な断酒や肝炎の治療で病状が回復しても、飲酒を再開すれば肝炎の再燃や肝硬変への移行につながります。アルコール依存症になっている場合は、必ず専門の医療機関にかかり、時間をかけながらでも断酒に努めましょう。
この記事がご参考になれば幸いです。
参考文献一覧 |
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