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大転子滑液包炎の治療法とは?原因と対策、効果的なストレッチまで徹底解説

大転子滑液包炎(だいてんしかつえきほうえん)は、特にランニングやスポーツなどをおこなう方に多く、1,000人中の5〜6人が発症します。また、男性よりも女性、40~60歳の方が発症しやすいと言われてます。

大転子滑液包炎について以下のようなお悩みがありませんか?

  • ・痛みの改善方法が分からない
  • ・症状を悪化させる原因を知りたい
  • ・ストレッチや運動などの予防策を知りたい

この記事では大転子滑液包炎を改善・予防するための正しい知識を身につけ、原因や生活習慣、予防策について解説しています。

将来、自分の足が大転子滑液包炎になるのを防ぐためにも、適切な対策を行えるようになりましょう。

大転子滑液包炎の治療法

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大転子滑液包炎とは?

大転子滑液包炎とは、股関節の外側に存在する大転子という骨の周囲の滑液包が炎症を起こす症状です。滑液包とは、関節や筋肉がスムーズに動くために存在する滑液という潤滑液を含む袋のことで、滑液包が炎症を起こすと関節や筋肉の動きが制限され、多くの場合、痛みを伴います。

ここでは、以下の2点について解説します。

  • ・症状と診断プロセス
  • ・発症の原因とリスク要因

まずは基本的な概要から理解していきましょう。

症状と診断プロセス

発症初期のころの痛みは股関節の外側と局所的ですが、症状が悪化すると大腿の外側まで痛みの範囲が拡大します。また、大転子を圧迫すると痛みが出現するため、横を向いて寝ることが大変になります。

また、痛みの程度により、日常生活やランニングなどの趣味活動に制限される場合もあるのです。

また、大転子滑液包炎の診断は以下を用いて総合的に行われます。

  • ・問診
  • ・身体所見の確認
  • ・MRI

問診では、これまでの病歴や痛みが出現する前に行っていたこと、どのような時に痛いのかを確認します。身体所見の確認では、大転子を圧迫し痛みが出現するのかを確かめます。関節包に水が溜まっているかどうかや関節包の炎症の有無の判断は、MRIを使用しなければ分かりません。

発症の原因とリスク要因

大転子滑液包炎の原因には「大腿筋膜張筋」と「腸脛靭帯」の2つが関係しています。この2つの組織は大転子の上部を通過しているため、ランニングやサイクリングなどの同じ動作が行われ大転子滑液包と摩擦が起きることで炎症すると言われています。

また、大転子滑液包炎のリスクとなる要因は以下の4つです。

  • ・転倒やスポーツなどによる外傷
  • ・大転子に付着する組織(中殿筋・小殿筋など)の損傷に伴う二次的な滑液包炎
  • ・滑液包自体の摩擦・微細損傷による炎症
  • ・関節リウマチや痛風などの疾患

大転子滑液包炎の原因とは?

大転子滑液包炎の原因は大きく分けて以下の2つがあります。

  • 活動レベルと生活習慣の影響
  • 姿勢の問題と身体的負荷

それぞれ以下で詳しく解説します。

活動レベルと生活習慣の影響

ランニングやサイクリングなどを頻繁に行う方は、大転子滑液包に対する摩擦が増え、炎症を引き起こす可能性があります。

また、生活習慣では肥満も大転子滑液包炎の発症に影響を与えます。なぜなら、体重が増えると大転子滑液包にかかる負担も増加するためです。

このため、同じ動作を繰り返すスポーツや不摂生な食事をしている方は、大転子滑液包炎になる可能性が高いため注意が必要です。

姿勢の問題と身体的負荷

一般的に長い時間立っている方は、大転子滑液包にストレスがかかりやすいため、大転子滑液包炎を発症しやすくなります。

また、散歩やランニングの際に体が左右どちらかに傾いていたり猫背などの不良姿勢であることも、大転子滑液包にストレスがかかる原因となります。

このため、立ち仕事が増えたことや、ランニングを始めてから大転子周囲に痛みが出現した方は、大転子滑液包にストレスがかかっているかもしれません。

大転子滑液包炎の効果的な治療方法

大転子滑液包炎の治療方法は大きく分けて以下の2つです。

  • 保存的治療:アイシングと抗炎症薬
  • 手術療法:運動器カテーテル治療

それぞれ以下で詳しく解説します。

保存的治療:アイシングと抗炎症薬

大転子滑液包炎の保存的治療の重要な目標は、痛みの軽減を図ることです。大転子滑液包炎に限らず、炎症があり痛みが強い場合にはアイシングが有効です。アイシングをすることで炎症を抑え痛みを抑制できます。

また、大転子滑液包の炎症を抑えるためには、ステロイドの注射や消炎鎮痛剤の内服も有効です。しかし、30%の方は痛みが改善しないと言われているため、保存的治療で痛みを改善できない場合には以下の方法の検討も必要となります。

手術療法:運動器カテーテル治療

大転子滑液包炎が長期化し慢性化すると、大転子滑液包内に異常な血管が生じてしまいます。この場合、ステロイドや消炎鎮痛剤の使用により一時的に痛みは軽減しますが、再度痛みが出現します。

そのため、大転子滑液包炎が長期化している場合は、運動器カテーテル治療を行い、異常な微小血管を減らす治療が有効です。施術時間は20〜30分ほどで終了します。

運動器カテーテル治療後は、大転子滑液包炎による痛みが改善します。しかし、他にも原因がある場合は、痛みが残存する可能性があるため、医師への相談が必要です。

大転子滑液包炎を改善・予防するためのストレッチと運動療法

大転子滑液包炎の治療には保存的治療や手術療法で炎症や痛みの改善を図りますが、その後に痛みの再発を予防するためにもストレッチや運動療法が必要です。大転子滑液包炎は、同じ動作の繰り返しや長期間の不適切な動きや姿勢によるストレスが原因となるため、適切な予防を講じることが大切です。

痛みを和らげるストレッチ

大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋肉、特に「大腿筋膜張筋」の柔軟性を高めることが重要です。大腿筋膜張筋のストレッチは座った状態と寝た状態どちらでも行えます。

まずは座った状態でのストレッチから解説します。椅子に浅く腰掛け、片方の足を反対側の太ももの上に乗せます。上体をゆっくりと前に倒し、太ももの外側に軽い張りを感じるところで20~30秒ほど保持します。反対側も同様に行います。

次に、寝た状態でのストレッチを説明します。両膝を立てて膝を左右どちらかに倒し、20~30秒ほど保持します。膝を右側に倒した時は左足の大腿筋膜張筋、左側に倒した時は右足の大腿筋膜張筋が伸ばされます。

どちらのストレッチも、1日に数回行うことで筋肉の柔軟性を維持できます。ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めないように注意しましょう。膝を倒した時に痛みが強い場合は、痛みが出る直前まで倒すことで痛みなくストレッチできます。

無理なストレッチは症状を悪化させる可能性があるため、痛みのない範囲で行うことが大切です。

再発予防のための運動療法

大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋力アップが必要です。

ここでは、自宅で簡単に行える以下2つの運動をお伝えします。

  • ・スクワット
  • ・足を横に開く運動

スクワットの方法は以下のとおりです。

  1. 足を肩幅にひらく
  2. 膝がつま先より前に出ないように膝を90度ほど曲げる
  3. 膝を伸ばし1の状態に戻る
  4. 上記を10回繰り返す

この時に1つ注意点があり、膝を曲げている時は膝が内側に寄らないようにしましょう。スクワットを行うことで「大腿四頭筋」や「大臀筋」などの筋肉を強化できます。

また、足を横に開く運動は以下のとおりです。

  1. 立った状態で椅子や手すりなどに軽くつかまる
  2. 体が横に傾かない範囲で片方の足を横に開いて戻す
  3. 上記を10回繰り返す

この時に1つ注意点があり、足を横に開く時はつま先が外側へ向かないように注意しましょう。足を横に開く運動では「中臀筋」や「小臀筋」の筋肉を強化できます。

大転子滑液包炎の日常生活での予防策

大転子滑液包炎は一度発症すると再発しやすい疾患ですが、日常生活での予防策を実践することでリスクを大幅に減らすことが可能です。

ここでは以下の2点について解説します。

  • 正しい運動技術とトレーニングの調整
  • 再発防止のための生活習慣の改善

これらの予防策は大転子滑液包炎だけでなく、他の関節疾患や筋肉疲労の予防にも役立ちます。正しい予防策を身につけることで大転子滑液包炎を未然に防ぎ、これからもランニングを楽しんでいきましょう。

正しい運動技術とトレーニングの調整

ランニングやウォーキングに限らず、運動技術が不適切な場合、大転子周辺の筋肉に過度な負荷がかかり、大転子滑液包炎を引き起こす可能性があります。このため、大転子滑液包炎を予防するためには、適切なフォームで運動を行うことが求められます。

また、トレーニングの量の調整も必要です。過度なトレーニングは筋肉が疲労してしまい炎症につながる可能性があります。このため、適度に休息をとり、適切なトレーニング量に設定することが大切です。

再発防止のための生活習慣の改善

大転子滑液包炎を生活習慣から予防するためには以下の2つが大切です。

  • ・定期的な運動習慣
  • ・バランスの良い食事

定期的な運動習慣がなければ足腰の筋力が低下してしまい、大腿筋膜張筋にストレスがかかりやすくなります。また乱れた食生活では肥満につながり、体重が増えることでも大腿筋膜張筋へのストレスが増加します。

これらの日常生活での予防策は、大転子滑液包炎の予防だけでなく、他の整形外科疾患の予防にもつながります。

大転子滑液包炎の原因を理解して予防していきましょう

この記事を通じて、大転子滑液包炎の基本的な知識から原因、治療方法、ストレッチと運動療法、さらには日常生活での予防策について学びました。

これからランニングやウォーキングを楽しく継続するためにも、正しい運動姿勢やトレーニングの量を把握し、体重の増加には気をつけましょう。

ただし、予防策を講じても大転子周囲の痛みが強い場合は、整形外科の受診を検討する必要があります。

 

監修:医師 渡久地 政尚

参考文献一覧
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・渡邉 博史.静的ストレッチングの効果的な持続時間について.第47回日本理学療法学術大会.

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