トピックスtopics
  • HOME
  • トピックス
  • エクソソームの点滴治療は本当に有効なのか?医師が解説!

エクソソームの点滴治療は本当に有効なのか?医師が解説!

公開日: 2024.08.02
更新日: 2024.10.07

エクソソームとは、体の中にある多くの細胞から分泌される顆粒状の物質です。

近年、アンチエイジングなどの美容や健康ために点滴などの方法で治療にも用いられるようになってきましたが、その安全性についてはまだ研究段階でもあります。

今回の記事では、エクソソームによって期待できる効果や課題について再生医療の専門医師が解説します。

エクソソームの点滴治療は本当に有効なのか?医師が解説!

\クリック\タップで電話できます/

電話をかける

エクソソームとは何か

エクソソームとは、細胞から分泌される大きさ30~200mmほどの顆粒状の小胞です。

幹細胞を培養し、培養液から幹細胞を取り出し処理を行ったあとの上澄みのことを、ヒト幹細胞培養上清液(じょうせいえき)といいます。エクソソームは、この上清液の中に含まれます。*1

エクソソームは1980年代に見つかったのですが、当初は細胞内の不要な物質を捨てるための「ゴミ袋」のようなものだと考えられてきました。

しかし、研究が進むにつれて、エクソソームは細胞同士の相互作用に関して情報伝達の役割を果たすことが分かってきました。*2

つまり、エクソソームは細胞間の情報伝達物質の「運び手」とも言えます。

また、エクソソームはその分泌された細胞由来の細胞膜の成分や核酸、タンパク質などを含んでおり、その細胞の特徴や生理的な機能を持っているとも考えられており、いろいろな疾患に対する新しい治療方法の候補としても注目されています。*3

エクソソームは点滴や局所注射、塗布などの投与方法があります。エクソソームによる治療は自由診療のため、費用は各医療機関で幅があります。一般的な相場は、5万円から20万円程度のようです。

エクソソームの可能性

さて、再生医療の分野でよく用いられるものに、間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう:Mesenchymal stem cell:MSC)があります。

これは、結合組織の中に存在する、多分化能を持つ幹細胞です。MSCは組織が損傷を受けた際に修復を手助けすることが知られています。

最近の研究ではMSCそのもののみならず、MSC由来のエクソソーム、つまりMSCから分泌されるエクソソームにMSC自身と同じような治療効果を示すことも明らかになりつつあります。*4

これまでに報告されている、MSC由来のエクソソームが治療効果を示す疾患には以下のようなものがあります。*5

  • ・腎臓疾患
  • ・心筋障害
  • ・脳疾患(脳卒中やアルツハイマー病)
  • ・肺疾患

このような病気に対して、MSC由来のエクソソーム治療は効果があることが分かってきており、今後の研究が期待されるところです。

また、MSC由来のエクソソーム治療は、MSC細胞よりサイズが小さいために、塞栓などの可能性が理論上は低いことや、組織へうまく移行してくれること、また複数回の投与ができることなどのメリットがあります。

また、厚生労働省のワーキンググループでの報告によると、日本の自由診療を行っている121医療機関で、美肌、毛髪再生、勃起不全などが期待される効果や対象疾患に含まれていたとのことです。*6

エクソソームの課題

一方で、エクソソーム治療については課題もあります。

MSC由来のエクソソーム治療では、MSC細胞による治療よりも多くの細胞数が必要なことや、安全性や有効性を確保するためのリスクがまだ研究段階であること、さらに品質の管理や製造管理とともに法律の整備がまだ未成熟なことなどがあります。*7

その他の課題としては、まだエクソソームに関しての基本的な理解が十分ではない可能性があることです。例えば、免疫系の細胞が貪食(どんしょく)作用によってエクソソームを取り込むことが知られているのですが、免疫系の細胞以外の細胞による取り込みの様子は世界でもまだほんのわずかしか報告がない、という状況です。このように、基礎的なメカニズムについて見解がまだ定まっていないという現状があります。

また、エクソソームを回収する方法が統一されていないということも問題となっています。

エクソソームの回収方法は、さまざまな企業が抽出試薬などを販売しつつあるのですが、果たして異なる方法で回収したエクソソームが「同じ」ものとして治療に用いてよいのかどうかという疑問が残ります。*8

さらに、副作用の危険性もあります。

実際に、正常なMSCが分泌するエクソソームには抗がん作用があるのに対して、異常なMSCが分泌するMSCが分泌するエクソソームは、がんの悪性化を促してしまうという報告もあるようです。*9

MSCでもMSC由来のエクソソームであっても、正常な自分の細胞から培養されたものであれば、拒絶反応などのリスクは高くないかもしれませんが、さらなる研究によって安全性が確保されることが期待されるでしょう。

まとめ

リペアセルクリニックでは、エクソソームを産生する細胞の元の一つである、自己脂肪由来幹細胞による再生医療を行なっています。

当院での細胞加工の強みとしては、幹細胞を冷凍保存しない都度培養のため細胞の生存率や質が高いこと、2億個の細胞を投与できるので治療成績が良好であること、採取する脂肪の量は米粒3つ分くらいと少量であり負担が少ないこと、さらに患者さん自身の血液を用いるため安全性が高いことが挙げられます。

脳や神経の病気をはじめ、さまざまな疾患に効果があると示されている再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談ください。

 

▼その他のコラムはこちらからもお読み頂けます。

参考文献
*1 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p11
*2 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p140
*3 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p10
*4 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p141
*5 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p143-147

*6 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p16
*7 エクソソーム等の調製・治療に対する考え⽅ 一般社団法人日本再生医療学会 p4,5
*8 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p147,148
*9 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p149
日本再生医療学会|エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言

 

カテゴリ

人気記事ランキング

イメージ画像トップ