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肩関節唇損傷に効果的な治療方法とは?リハビリテーションや予防方法についても解説

肩関節唇の損傷は、野球やテニスのような腕を上から振り下ろすオーバーヘッドスポーツで起こりやすい疾患です。

肩関節唇損傷から回復して競技が継続できるか、将来的に症状は改善するのか不安に思っている方はいるのではないでしょうか。適切な治療により症状は改善し、リハビリテーションにより肩関節の安定化を図ることで競技復帰も望めます。

この記事では、競技復帰するためのリハビリテーションや再発予防の方法について解説します。怪我から早く競技復帰したいと考えている方は、ぜひご覧ください。

肩関節唇損傷に効果的な治療方法とは?リハビリテーションや予防方法についても解説

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肩関節唇損傷とは

肩関節唇損傷とは、肩関節を安定させる機能をもつ関節唇の損傷です。発症の原因は、オーバーヘッドスポーツ、肩の過剰な使用、脱臼に伴う損傷などがあります。特に、野球やテニスなど投球動作を伴うスポーツをしている人に多く見られます。これらのスポーツでは、特に上方や後方の関節唇を損傷しやすいです。主な症状は、肩の痛み、不安定感、可動域制限などがあります。安静により痛みは治まることが多いですが、肩の不安定を軽減するためにリハビリテーションが必要です。また、関節唇は再生することはないため、重症例では手術が必要です。

肩関節唇損傷の治療方法

肩関節唇損傷の治療は、保存療法や手術療法が実施されます。保存療法では、痛みを抑えるために鎮痛薬の投与や安静の確保、痛みが治まれば肩関節の安定性を高めるためのリハビリテーションが行われます。

一方、手術療法では関節唇の修復や再建が行われます。具体的な内容は以下で解説します。

保存療法

軽症例では保存療法を実施する場合が多いです。保存療法では、薬物療法やリハビリテーションを行います。具体的には以下で解説します。

薬物療法

発症直後で痛みが強い場合には、ロキソニンやボルタレンなどの消炎鎮痛薬の内服やヒアルロン酸の関節内注入を行い安静にします。それでも痛みが軽減しない場合はステロイドを注射します。そして、痛みや炎症が落ち着いてきたらリハビリテーションを開始する流れです。ただ、可動域訓練やリラクゼーションは拘縮予防のために多少痛みがあっても実施する場合があります。

リハビリテーション

リハビリテーションでは、肩関節周囲のリラクゼーション・可動域の改善・筋力強化を行います。肩関節唇損傷では、肩後面の組織が硬い場合が多いため、後面の組織を中心にリラクゼーションを実施します。また、痛みにより筋肉が反射的に緊張しやすく、可動域制限になりやすいため可動域訓練が大切です。さらに、肩関節の安定性を高めるために腱板筋群の筋力強化を行います。テニスや野球の投球動作では、腱板筋群に大きな負荷がかかるため、負荷に耐えられるように筋力強化が必要です。

手術療法

手術療法は、重症例や脱臼を繰り返してしまう方に適用されます。手術と入院は、数日〜10日間程度であり、術後2〜3週間はリハビリ以外では装具で肩関節を固定します。手術方法はさまざまですが、代表的な手術方法を2つ紹介します。

鏡視下関節唇修復術

鏡視下関節唇修復術は、関節鏡で確認しながら関節唇を元の位置に縫い合わせる方法です。手術は全身麻酔で実施し、皮膚に小さな穴を3か所ほど開けて手術します。ただ、鏡視下関節唇修復術の中でもさまざまな術式があるため、実施方法は微妙に異なります。

保存療法と手術療法のメリット・デメリット

保存療法と手術療法のメリット・デメリットを表で解説します。

  メリット デメリット
保存療法
  • ・身体への侵襲がない
  • ・通院での治療が可能
  • ・関節唇自体が治るわけではないため、再発や脱臼の可能性がある
  • ・症状が良くなるまでに期間がかかる
手術療法
  • ・術後の回復が早く、約1ヵ月後には日常生活に戻れるほど早期復帰が可能
  • ・脱臼のリスクが低い
  • ・身体への侵襲がある
  • ・手術や入院で約30万円と高額な治療費がかかる

どちらにもメリット・デメリットがあるため、上記表や医師の意見を参考にして選択しましょう。

治療後の注意点

保存療法では、関節唇自体が治るわけではないため肩関節の緩さが少なからず残りやすいです。そのため、肩関節を過度に動かすと脱臼や再び症状を再発する可能性があり、肩のリハビリテーションをしっかり行うのが大切になります。

一方、手術療法では、範囲は狭いものの関節包など深部への侵襲があるため、組織が癒着して可動域が制限されないように術後早期からリハビリテーションが必要です。1ヵ月ほどリハビリを行うと通常の生活レベルに戻れますが、スポーツ復帰には3〜6ヵ月必要です。

競技復帰までのリハビリテーション

肩関節唇損傷のリハビリテーションは、競技復帰で重要です。競技復帰までの期間や具体的なリハビリテーション内容を以下に紹介します。

術後~1ヵ月(炎症管理)

術後初期では、痛みや炎症が残存しているため、まずは安静や消炎鎮痛薬により改善を図ります。夜間に肩を動かさないように、術後2週間ほどは装具を着用します。ただ、癒着予防のためにリハビリは手術翌日から開始する場合が多いです。この時期にたくさん筋トレしてしまうとより悪化してしまうため運動量や負荷には注意です。

術後1ヵ月~2ヵ月(可動域向上・筋力強化)

この時期では、特にテニスや野球の投球動作で必要な肩関節外旋・外転可動域の向上を目指します。可動域が狭いと肩関節に負担がかかりやすいです。また、スポーツ復帰を目指す場合、全身の心肺機能を戻すのも大切なので、有酸素運動など持久力トレーニングも実施します。肩の筋力トレーニングは低負荷から実施し、段階的に難易度を上げていきましょう。

術後2ヵ月~3ヵ月(動作練習)

筋力トレーニングの負荷を上げつつ、スポーツに特化した動作練習を行っていきます。スポーツの中では、予測不能な外力が加わる場合や瞬発的な動作が多いため、素早い動作にも対応できる身体づくりが大切です。特に、受傷のきっかけとなった動作を入念にチェックし、再発を防止しましょう。

肩関節唇損傷の再発を予防する方法

肩関節唇損傷の再発を予防するには、腱板筋群のトレーニングや肩後面のストレッチが大切です。以下に具体的な内容を解説します。

腱板筋群のトレーニング

腱板筋群は、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋で構成されており、肩関節の安定化に必須の筋群です。投球動作の繰り返しにより、腱板筋群は大きなストレスを受けるため、これらの筋群が弱化しやすくなります。そのため、練習時間の制限や投球動作の回数制限を設けて練習しましょう。具体的な腱板筋群のトレーニングを以下に記載します。

<やり方>

  1. イスに座り、わきをしめて肘を90度に曲げる
  2. わきをしめたまま腕を外に開く

負荷はチューブなどを用いて行い、低負荷・高回数で実施します。腱板筋は小さい筋肉であり、負荷が高いと間違った動作になってしまうため気をつけましょう。

肩後面のストレッチ

テニスや野球などの投球動作を頻繁に行うスポーツでは、肩後面の棘下筋・大円筋・小円筋・三角筋が硬くなりやすいです。そうすると、上腕骨頭の動きがぎこちなくなり、腱板筋群が作用しづらくなります。結果、肩関節への負担が増加します。そのため、肩後面のストレッチにより肩の滑らかな動きを獲得するのが大切です。具体的なストレッチの方法を以下に記載します。

<やり方>

  1. 両手の甲を脇腹につけます
  2. 肘を前方に向けるように閉じていきます
  3. 肩の後面が伸びているのを意識します

肩をすくめたり体幹だけを回したりしないように、肩後面が伸張されているのを意識して実施しましょう。

競技を継続できるように肩関節のケアを行いましょう

肩関節唇損傷は、テニスや野球などオーバーヘッドスポーツで発症しやすい疾患です。関節唇は、肩の安定化に欠かせない組織であり、再生もしないためリハビリテーションによる訓練が大切になります。

また、投球フォームによっては肩後面の組織が硬くなりやすいことや腱板筋群が弱化しやすいため、入念にトレーニングやストレッチを行います。スポーツの実施前後で行うことで肩の柔軟性や筋力を保てるでしょう。

今回ご紹介したストレッチや筋力トレーニングにより、可動域向上・筋力向上を目指せるため、再発予防のためにも毎日ケアしましょう。

参考文献一覧

舟橋整形外科病院,肩関節の疾患と手術
Jpn J Rehabil Med 2018;55:495-501,投球障害のリハビリテーション治療
日本臨床スポーツ医学会誌,投球障害肩の現況,Vol. 26 No. 3, 2018.

 

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