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【医師監修】ぎっくり腰とは?原因から治療・予防法まで紹介
「魔女の一撃」― ぎっくり腰。
くしゃみや咳といった日常の何気ない動作で、突然、動けないぐらいの腰痛を経験したことはありますか?
ぎっくり腰、正式名称「急性腰痛症」は、誰もが経験する可能性のある身近な腰のトラブルです。
1999年の調査では、約40万人が急性腰痛症を経験したというデータも存在します。
どうしてぎっくり腰になるのか?
その答えは、腰への大きな負担、姿勢の悪さ、筋力不足、急な動作、そして加齢による体の変化など、多岐にわたります。
この記事では、ぎっくり腰の原因から治療、そして予防法まで医師の監修により詳しくご紹介します。
ぎっくり腰の不安を解消し、快適な日常生活を送るためのヒントが満載です。
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目次
【基礎知識】ぎっくり腰とは
ぎっくり腰は、「急性腰痛症」とも呼ばれ、誰にでも起こる可能性のある身近な腰のトラブルです。医学的に急性腰痛とは、発症から4週間未満の腰痛と定義されており、ぎっくり腰はその代表的なタイプに位置づけられます。(文献1)
くしゃみや咳といった何気ない動作や重い荷物を持ち上げた瞬間、前かがみになったときなど、日常生活のふとしたきっかけで、突然強い腰の痛みに襲われるのが特徴です。
急激に発症するため、ぎっくり腰は「魔女の一撃」と表現されることもあります。まるで魔法をかけられたかのように突然痛みが生じることから、この名がつけられています。
ぎっくり腰は、腰の筋肉や靭帯、関節などの組織に急激な負荷がかかり発症すると考えられています。その一方で、画像検査などでは明確な損傷部位が特定できないことも少なくありません。
本記事では、ぎっくり腰の原因をより深く掘り下げて解説することで、どうしてぎっくり腰が起きるのかを理解し、効果的な対処法や予防策を身につけるためのお手伝いをいたします。
ぎっくり腰と他の腰痛の違い
ぎっくり腰と他の腰痛との最も大きな違いは、症状の現れ方と痛みの出方にあります。
ぎっくり腰は、特定の動作をきっかけに突然発症し、動くのが困難になるほどの強い腰痛が特徴です。
一方で、他の腰痛では急な痛みではなく、徐々に痛みが強くなっていく場合が多く見られます。
また、ぎっくり腰は比較的短期間で痛みが軽減することが多い一方、他の腰痛では痛みが長引いたり、再発を繰り返したりするケースもあります。
ぎっくり腰だと思っていたら実は別の病気が隠れているケースもあり、他の腰痛の原因として挙げられるものは以下の通りです。(文献1)
- 重篤な基礎疾患(悪性腫瘍、感染、骨折など)
- 下肢の神経症状を併発する疾患
- 脊柱構成体の退行性病変(椎間板変性、椎間関節変性など)
そのため、次のような症状が見られる場合は、医療機関を受診してください。
- 腰の痛みに加えて下肢にしびれや力が入りにくい症状がある
- 尿・排便の異常がみられる
- 発熱や全身のだるさを伴う
- 転倒や事故などの強い外傷後に痛みが出た
- 安静にしていても痛みが改善しない、または悪化している
ぎっくり腰になる3つの要因
ぎっくり腰にはいくつかの要因があります。
厚生労働省の「腰痛予防対策」では、腰痛の発生要因として、動作要因・環境要因・個人的要因の3つに分類しています。(文献2)
ぎっくり腰も、これらの要因が複合的に重なることで発症しやすくなります。
以下サイトでは、ぎっくり腰の症状チェックについて解説しておりますので、併せてお読みください。
動作要因
動作要因とは、腰に急激または過度な負荷や負担がかかる体の動かし方を指します。
ぎっくり腰の代表的なきっかけは、
- 重い荷物を持ち上げた瞬間
- 中腰や前かがみの姿勢から体をひねったとき
- 急に立ち上がる、振り返るといった突発的な動作
- デスクワークや車の運転などで長時間同じ姿勢が続く
など、日常の何気ない動作です。
長時間同じ姿勢でいると、腰回りの筋肉は緊張し続け、血行が悪くなります。その結果、筋肉や靭帯の柔軟性が低下し、ちょっとした動きでも痛みが出やすくなります。
そのため、
- 重い物を扱う仕事をしている人
- 中腰での作業が多い人
- 急いで動くことが多い人
- デスクワーク中心で座りっぱなしの人や1時間以上続けて同じ姿勢で作業することが多い人
は、動作要因によるぎっくり腰のリスクが高いといえます。
環境要因
環境要因とは、寒い場所・暗い場所での作業や、作業空間が不良な状態などにより、腰に負担をかけている状態を指します。
代表的な例として、
- 狭い作業場所で体を動かしにくい
- 車の運転などで長時間全身が振動にさらされる
- 寒い環境で体が冷えやすい
といった状況があげられます。
- 工場や倉庫などで、限られたスペースの中で作業を行う人
- 配送業や営業職で、車移動が多く長時間座り続ける人
- 冷房の効いた室内や冬場の寒さにさらされやすい人
は、腰への負担が蓄積しやすく、ぎっくり腰の発症リスクが高まりやすい傾向があります。
個人的要因
個人的要因とは、体の状態や年齢、性別など本人に由来する要因です。
まず挙げられるのが、筋力不足です。腹筋や背筋など体幹の筋肉が弱いと、腰を支える力が不足します。運動不足の人ほど腰痛を招きやすくなるため、日常的な運動習慣が重要です。
また、猫背や反り腰といった姿勢の悪さも腰への負担を増大させます。長時間のスマホ操作やパソコン作業で、無意識に悪い姿勢が習慣化している人は注意が必要です。
さらに、
- 体重増加(肥満)による腰への負担
- ストレスによる自律神経の乱れ
- 冷え性による筋肉のこわばり
- 加齢による筋力や骨(骨粗鬆症など)の変化
も、ぎっくり腰の発症リスクを高めます。
このため、
- 運動不足の人
- 体重が増えてきた人
- ストレスをため込みやすい人
- 冷えやすい体質の人
- 年齢とともに体力が低下している人
は、個人的要因からぎっくり腰になりやすいと考えられます。
ぎっくり腰の初期症状
ぎっくり腰の初期症状で最も特徴的なのは、突然現れる激しい腰痛です。
この痛みは、くしゃみや咳、重いものを持ち上げた瞬間など、何気ない動作がきっかけで起こることが多く見られます。
痛みの出方は個人差があり、激痛で動けなくなる人もいれば、ズキズキとした痛みが続く人もいます。発症直後は、腰を動かそうとすると痛みが増すため、無理に動かさず、まずは安静を保ちましょう。
ぎっくり腰が慢性化する原因
ぎっくり腰の症状は、適切な処置を行わないと慢性化する恐れがあります。
初期の痛みが出た段階で、無理に動いたり、間違ったケアを行ったりすると、炎症が長引き、痛みがさらに強まる可能性があります。
慢性腰痛に移行すると、日常生活に大きな支障をきたし、痛みへの不安やストレスなど精神的な負担も増大させてしまう可能性があります。また、神経が圧迫されると、臀部~下肢にかけてしびれや痛みが現れる場合もあります。
重篤な例では、排尿や排便のコントロールがうまくいかなくなる膀胱直腸障害が現れます。
腰痛は世界中の主要な障害原因で、大きな社会問題となっています。
ぎっくり腰の禁止行動
ぎっくり腰になった直後は、症状を悪化させないために避けるべき行動があります。
まず、患部を揉んだり、無理にストレッチを行ったりするのは避けましょう。炎症が起きているときに刺激を加えると、かえって痛みが強くなる可能性があります。
また、温めるのも逆効果です。発症直後は、炎症を抑えるためにクーリングが必要です。熱いお風呂に長時間浸かるのは避け、シャワーで済ませるようにしましょう。
その一方で、安静にしすぎるのも良くありません。痛みが落ち着いてきたら、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。ウォーキングや軽いストレッチなどがおすすめです。
くわえて、痛みを確かめるために腰を何度も動かしたり、押したりする行為は避けるべきです。
ぎっくり腰の応急処置
ぎっくり腰になった直後は、突然の強い痛みによりパニックになってしまうかもしれませんが、落ち着いて適切な応急処置を行うことが重要です。
ぎっくり腰の応急処置として有効なのが、RICE処置です。
RICEとは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字で、RICE処置はスポーツによる怪我の応急処置として広く知られています。
【ぎっくり腰に対するRICE処置の考え方】

|
項目 |
内容 |
ポイント |
|---|---|---|
|
Rest(安静) |
楽な姿勢で安静にする |
横になるのが良いが、難しい場合は椅子に座っても良い |
|
Ice(冷却) |
患部を冷やす |
炎症と痛みを抑えるため氷水を入れた袋や保冷剤を用いる 凍傷を避けるためにタオルを挟み、冷やし過ぎに注意 |
|
Compression(圧迫) |
テーピングなどで圧迫して腫れを抑える |
ぎっくり腰では行わない |
|
Elevation(挙上) |
患部を心臓より高くする |
腰痛には該当しない |
RICE処置を行っても強い痛みが続く場合や、しびれや麻痺などの神経症状が現れた場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
ぎっくり腰の前兆と対処法について、併せてお読みください。
ぎっくり腰の治療方法
ぎっくり腰の治療は、症状の強さや経過などを考慮して選択されます。多くの場合、手術を行わない保存的治療が第一選択です。
医師は、症状や状態を確認し、最適な治療法を選択します。
重度の神経症状や腫瘍、骨折が疑われる場合には、初期段階での画像診断を行うべきです。
なお、アメリカ理学療法士協会では、急性腰痛の管理には、患者の状態に応じた運動療法が重要であるとしています。(文献3)
また、稀ではあるものの保存的治療で改善しない場合は、手術が必要となるケースもあります。
腰の痛みは手術しなくても治療できる時代です。
保存療法
保存療法とは、手術以外の方法で症状の改善を目指す治療法です。ぎっくり腰の治療の中心となり、多くの方は保存療法のみで回復します。
薬物療法
腰痛診療ガイドラインでは、薬物療法は疼痛の軽減や機能改善に有用とされています。(文献1)
とくにNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、急性腰痛に対して強く推奨されています。そのほか、推奨度は高くありませんが、症状に応じて以下の薬剤が用いられることもあります。
- 筋弛緩薬
- アセトアミノフェン
- 弱オピオイド
- ワクシニアウイルス摂取家兎炎症皮膚抽出液
物理療法・装具療法
物理療法や装具療法は、弱く推奨されています。
- 牽引療法
- 超音波療法
- 経皮的電気神経刺激(TENS)
- 腰椎サポート(コルセット)
痛みの軽減や動作の補助として役立つ場合がありますが、過度に頼りすぎないことが重要です。
運動療法
急性腰痛に対する運動療法そのもののエビデンスは明確ではない一方で、安静よりも可能な範囲で活動性を維持する方が有用とされています。日常生活動作を少しずつ再開することが回復につながります。
手術
ぎっくり腰は、多くの場合保存療法で十分な効果が得られます。そのため、手術が必要となるケースは稀です。
保存的治療を行っても症状が改善せず、
- 強い神経症状が続く
- 日常生活に大きな支障が出ている
といった場合に、手術が検討されることがあります。
再生医療
保存療法で十分な改善が得られず、かつ手術をできるだけ避けたい場合の選択肢として、再生医療が検討されることがあります。再生医療は、脂肪由来の幹細胞を用いて、損傷した組織の修復や炎症の抑制を目指す治療法です。
慢性化した腰痛や再発を繰り返すケースでは、専門医に相談の上で新たな治療の選択肢となる可能性があります。
ぎっくり腰の予防方法
ぎっくり腰は、一度発症すると再発しやすい腰痛です。そのため、過去にぎっくり腰を経験した方は、予防を心掛けることが大切です。日頃の姿勢や運動習慣、体調管理により、ぎっくり腰のリスクを減らせます。
なお、コルセットやインソールは、痛みがあるときの補助として用いられることはありますが、予防の基本は生活習慣の改善とされています。
また、厚生労働省の公式サイトでは、職場や日常における腰痛リスクを確認できる「腰痛予防チェック」も紹介されていますのでご参照ください。(文献2)
正しい姿勢
ぎっくり腰の予防に正しい姿勢を保つことは不可欠です。
猫背や反り腰といった悪い姿勢は、腰に負担をかけてしまいます。
日頃から正しい姿勢を意識し、立っているときも座っているときも、背筋を伸ばし、お腹に力を入れるようにしましょう。
デスクワークが多い方は、長時間同じ姿勢を続けないことが大切です。1時間に1回程度は立ち上がり、軽く体を動かすなど、こまめに休憩を心掛けてください。

適度な運動
適度な運動は筋肉を強化し、ぎっくり腰の予防につながります。ウォーキングや水泳など、腰への負担が少ない運動を習慣的に行いましょう。
厚生労働省は、1日60分以上のウォーキングを推奨しています。(文献4)
また、腹筋や背筋といった、体幹の筋肉を鍛えることも重要です。体幹トレーニングは、特別な器具を使わずに自宅で行えるのが特徴です。
一方で、腰痛予防に運動療法は有用とされているものの、すべての運動が適しているわけではないとされています。専門医が状態を評価した上で、適切にプログラムされた運動であることが重要です。(文献1)
なお、急な動作は腰に負担をかけます。勢いよく物を持ち上げたり、急に体をひねったりする動作は避け、日常生活でも動作はゆっくり行うよう心掛けましょう。
また、精神的なストレスは自律神経のバランスを崩し、筋肉の緊張を高めるため、ぎっくり腰を引き起こしたり再発しやすくしたりします。運動や入浴、十分な睡眠など、自分に合った方法でストレスを解消することは、心身の健康維持だけでなく、腰痛予防にも重要です。
体重管理
体重増加は腰への負担を増大させます。バランスの良い食事と適度な運動を心掛け、適切な体重を維持することも重要です。肥満気味の人は、BMI(体格指数)を指標として自身の適正体重を確認し、体重管理を意識しましょう。
冷え防止
体が冷えると筋肉がこわばり、血行が悪化しやすくなるため、ぎっくり腰のリスクが高まります。とくに冬場は、体を冷やさないよう、温かい服装を心掛け、必要に応じてカイロや温熱シートなどを活用しましょう。
また、朝の寝起きは体が温まっていないため、腰の筋肉が固まりがちです。急に動くとぎっくり腰を起こしやすくなります。起床後はゆっくり体を動かし、腰を慣らしてから行動すると良いでしょう。
ぎっくり腰のメカニズムを理解し痛みに悩まない生活を送ろう
ぎっくり腰はふとしたきっかけで突然起こる激しい腰痛で、その原因は腰にかかる負担の積み重ねです。
日常生活で悪い姿勢や運動不足、体重増加、冷え、ストレスなどが重なると、腰回りの筋肉や靭帯が硬くなり、柔軟性が低下します。その状態で、くしゃみや中腰での動作といった刺激が加わると、筋肉や関節に炎症が起こり、ぎっくり腰を発症すると考えられています。
ぎっくり腰を経験すると、必要以上に動かなくなったり、自己判断で誤った対処をしたりするケースも見られますが、こうした対応はかえって回復を遅らせ、慢性腰痛へ移行する原因になるため注意が必要です。
ぎっくり腰のメカニズムを正しく理解し、発症時の適切な対処と、日頃から姿勢・運動・生活習慣を意識した生活が、再発予防と痛みに悩まない生活につながります。
不安が強い場合や症状が改善しない場合は、早めに専門医へ相談することも大切です。保存療法で十分な改善が見られず、手術を避けたい場合に、再生医療という選択肢があります。
再生医療について、さらに詳しく知りたい方は、メール相談やオンラインカウンセリングも承っておりますのでご利用ください。
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ぎっくり腰に関するよくある質問
ぎっくり腰で「歩けるけど痛い」場合は仕事を休むべきですか?
歩ける状態であっても、強い痛みがある場合は、無理は禁物です。とくに、重い物を持つ、長時間同じ姿勢を続ける、前かがみや中腰になることが多い仕事の場合は、症状を悪化させる可能性があります。
発症直後はできるだけ安静を保ち、必要に応じて仕事を休む、もしくは業務内容を調整するのが良いでしょう。
一方で、痛みが落ち着いてきた場合は、無理のない範囲で体を動かすのが回復を促すとされています。
痛みの程度や仕事内容によって対応は異なるため、「歩けるから大丈夫」と自己判断せず、医師や専門家に相談することをおすすめします。
ぎっくり腰はどれくらいで治りますか?
ぎっくり腰は、適切な対処を行えば、多くの場合1週間から2週間程度で痛みが軽減するとされています。(文献5)軽症であれば数日で日常生活に支障がなくなるケースもあります。
ただし、無理をして動いたり、誤った対処をしたりすると痛みが長引き、慢性腰痛へ移行するケースがあります。
また、痛みが長期間続く場合や、しびれ・力が入りにくいなどの神経症状を伴う場合は、他の疾患が隠れている可能性もあるため、医療機関を受診しましょう。
回復期間には個人差があります。ぎっくり腰を発症したら、悪化させない行動の意識が重要です。
参考文献
Acute low back pain: clinical course and prognostic factors|Disability and Rehabilitation














