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ぎっくり腰とは?原因から治療まで医師が解説
「魔女の一撃」― ぎっくり腰。くしゃみや咳といった日常の何気ない動作で、突然、動けないぐらいの腰痛を経験したことはありますか?ぎっくり腰、正式名称「急性腰痛症」は、誰しもが経験する可能性のある身近な腰のトラブルです。1999年の調査では、約40万人が急性腰痛症を経験したというデータも存在します。
どうしてぎっくり腰になるのか?その答えは、腰への大きな負担、姿勢の悪さ、筋力不足、急な動作、そして加齢による体の変化など、多岐にわたります。
この記事では、原因から治療、そして予防法まで医師の解説を交えながら詳しくご紹介します。ぎっくり腰の不安を解消し、快適な日常生活を送るためのヒントが満載です。
目次
ぎっくり腰の原因を詳しく解説
ぎっくり腰は、「急性腰痛症」とも呼び、誰しもが経験する可能性のあるありふれた腰のトラブルです。くしゃみや咳といった何気ない動作、荷物を持ち上げる瞬間など、日常生活のふとした瞬間に激痛に襲われることが特徴です。「魔女の一撃」と表現されるように、まるで魔法をかけられたかのように突然痛みが生じるため、ぎっくり腰を経験した方はその痛みをよく理解されていることでしょう。
この章では、ぎっくり腰の原因をより深く掘り下げて解説することで、どうしてぎっくり腰が起きるのかをを理解し、効果的な対処法や予防策を身につけるためのお手伝いをさせていただきます。
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ぎっくり腰の主な原因5つ
ぎっくり腰の主な原因は、次のようなものがあります。
- 腰への負担: 重い荷物を持ち上げたり、急に捻るなど腰に大きな負担をかけます。特に、中腰での作業や前かがみの姿勢で重いものを持ち上げる動作も発症のリスクが高くなります。
- 姿勢の悪さ: 猫背や反り腰といった姿勢の悪さは、腰への負担を増大させ、ぎっくり腰の発生を助長します。長時間のパソコン作業やスマホの操作などで、知らず知らずのうちに猫背になっている方も多いのではないでしょうか。
- 筋力不足: 腹筋や背筋、特に体幹と呼ばれる胴体部分の筋肉が弱いと、腰を支える力が不足してしまいます。例えば、椅子に座った際に背もたれに寄りかからず、正しい姿勢を維持できるかどうかで、体幹の強さをある程度判断できます。私の経験では、筋力をつけるとほとんどの方は腰痛はかなり軽減します。ただ、筋トレを継続するのはなかなかむずかしいですが、行えば必ず効果は感じるでしょう。
- 急な動作: 突然振り返ったり、勢いよく重いものを持ち上げたりすることは避けましょう。また、朝の寝起きで体がまだ温まっていない時に、急な動作は危険です。身体を温めるために、朝の準備運動は大切です。
- 加齢による変化: 年齢を重ねるとともに、骨や筋肉は徐々に衰え、ぎっくり腰のリスクも高まります。特に、骨粗鬆症は骨を脆くし、骨折しやすくするため注意が必要です。骨粗鬆症は、閉経後の女性に多く見られますが、男性も年齢が高くなるとともに発症リスクが高まります。
ぎっくり腰になる人の特徴
- デスクワークなどで長時間同じ姿勢で作業をする人: 座り仕事で長時間同じ姿勢を続けると、腰の筋肉は緊張し続け、血行不良に陥ります。結果として、筋肉や靭帯の柔軟性が低下してしまいます。1時間に1回程度は立ち上がって軽いストレッチを行うなど、こまめな休憩を挟むようにしましょう。
- 運動不足の人: 運動不足は筋力の低下を招き、腰痛が出やすくなります。適度な運動は筋力アップだけでなく、血行促進にも効果的です。厚生労働省は、1日30分程度のウォーキングなどの運動を推奨しています。
- 肥満気味の人: 体重の増加は腰への負担を大きくします。ダイエットは腰痛予防だけでなく、健康全般にとっても重要です。BMI(体格指数)を指標として、自身の適正体重を確認してみましょう。
- ストレスをためやすい人: ストレスは自律神経のバランスを崩します。それが引き金となり腰痛が誘発されます。ストレスをうまく解消する術を見つけることは、心身の健康維持に不可欠です。
- 冷え性の人: 体が冷えると筋肉が硬くなり、血行が悪化し、ぎっくり腰のリスクが高まります。特に冬場は、体を冷やさないよう保温に気を配り、温めましょう。カイロや温熱シートを活用するのも有効です。
▼ぎっくり腰の症状チェックについて、併せてお読みください。
ぎっくり腰と他の腰痛との違い
最も大きな違いは、症状の現れかたと痛みの強さとなります。ぎっくり腰は、特定の動作をきっかけに突然、動けないぐらいの腰痛が出るのが特徴です。これが「魔女の一撃」と呼ばれる所以です。
一方、他の腰痛は、急な腰痛ではなく、徐々に痛みが強くなっていく場合が多く見られます。また、ぎっくり腰は比較的短期間で痛みが治まることが多い一方、他の腰痛は長期間にわたって痛みが続く場合もあります。
基本的に腰痛というものは、進行性の運動麻痺や感覚障害、排尿障害、癌の既往、最近の手術歴、年齢に不相応な外傷などの危険信号がない場合は、保存的治療が第一選択となります。保存的治療とは、手術を行わず、薬物療法や理学療法などの方法で治療を行うことです。
ぎっくり腰でやってはいけないこと
誰にでもぎっくり腰は起こりうる身近な症状です。しかし、正しい知識があれば、その対応で腰痛は軽減します。正しい知識を身につけて、ぎっくり腰の不安を少しでも減らしましょう。
ぎっくり腰の初期症状
ぎっくり腰の初期症状で最も特徴的なのは、急な腰痛です。この痛みは、くしゃみや咳、重いものを持ち上げた瞬間など、何気ない動作がきっかけで起こることが多く見られます。痛みの出方は人それそれで、全く身動きが取れなくなるほどの激痛を感じる人もいます。
ぎっくり腰の症状が悪化する場合
初期の痛みが出た時に、対処を間違えてしまうと、痛みがさらに強まったり、慢性的な腰痛に移行したりする可能性があります。慢性腰痛に移行すると、痛みが長引くことで日常生活に大きな支障をきたし、精神的な負担も増大させてしまう可能性があります。
また、神経が圧迫されると、下肢へのしびれ、痛みが走ることもあります。重篤になると、膀胱直腸障害が見られます。世界中で腰痛は主要な障害原因となっており、大きな社会問題となっています。
ぎっくり腰でやってはいけないこと
まず、患部を揉んだり、無理にストレッチしたりするのは避けましょう。
また、温めるのも逆効果です。クーリングが必要です。熱いお風呂に長時間浸かるのも避け、シャワーで済ませるようにしましょう。
そして、安静にしすぎるのも良くありません。症状が落ち着けば、無理のない範囲で動きましょう。ウォーキングや軽いストレッチから始めるといいでしょう。
痛みを何度も確認するのも避けるべき行動です。
ぎっくり腰になったら安静にするべき?
とりあえず、安静にすることで、炎症の悪化を防ぎ、痛みの山は超えることができます。長期間の安静は、筋肉の衰えや関節の硬直を招きますので、適度のストレッチは必要です。
アメリカ理学療法士協会は、症状が落ち着けば、少しずつ体を動かすことを推奨しています。痛みが強い場合は、医師に相談の上、適切な薬を処方してもらうようにしましょう。過剰な画像診断、オピオイドの使用、手術は依然として問題となっているため、まずは保存的治療を試みることが推奨されています。
ぎっくり腰の正しい対処法と予防策
ぎっくり腰は、誰しもが経験する可能性のある、非常に身近な症状です。普段通りの生活を送っていたはずなのに、くしゃみや咳、あるいはちょっとした動作がきっかけで、突然腰に激痛が走る…まさに「魔女の一撃」と表現されるように、予想だにしないタイミングで襲ってくるため、大変恐ろしい経験となるでしょう。
正しい知識があれば、痛みを早期に和らげ、日常生活への復帰を早めることができます。また、予防策を講じることで、ぎっくり腰の再発を防ぎ、健康な毎日を送ることも可能です。
この章では、ぎっくり腰になった際の正しい対処法と、日頃から心掛けていただきたい予防策について、分かりやすく解説します。
ぎっくり腰の応急処置と治療法
ぎっくり腰になった直後は、強い痛みと不安でパニックになってしまうかもしれません。しかし、落ち着いて適切な応急処置を行うことが重要です。
では、どのように対処すれば良いのでしょうか?ぎっくり腰の応急処置として有効なのは、RICE処置です。
RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとったもので、スポーツによる怪我の応急処置として広く知られています。
- Rest(安静): 楽な姿勢で安静にします。横になるのが一番ですが、どうしても難しい場合は、椅子に座って安静にすることも可能です。この時、楽な姿勢を保つことが大切です。
- Ice(冷却): 氷水を入れた袋や保冷剤をタオルに包み、患部を冷やします。冷却は炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。ただし、冷やしすぎると凍傷を起こす可能性があるので、注意が必要です。
- Compression(圧迫): 通常、ぎっくり腰で圧迫は行いません。
- Elevation(挙上): ぎっくり腰では、挙上は特に必要ありません。
RICE処置を行っても痛みが改善しない場合や、しびれや麻痺などの神経症状が現れた場合は、かかりつけ医に相談しましょう。ぎっくり腰の治療法には、薬物療法や理学療法などがあります。医師は、あなたの症状や状態に合わせて最適な治療法を選択します。深刻な神経症状、腫瘍、骨折、または感染が疑われる場合にのみ、初期の画像診断を行うべきです。アメリカ理学療法士協会は急性腰痛の管理には、患者の状態に合わせた運動療法が重要であると推奨しています。
保存的治療で改善しない場合は、手術が必要となるケースもありますが、これは稀です。多くの場合、保存的治療で十分な効果が得られます。保存的治療とは、手術以外の治療法のことで、薬物療法や理学療法、運動療法などが含まれます。
▼ぎっくり腰の前兆と対処法について、併せてお読みください。
ぎっくり腰の予防法
ぎっくり腰は再発しやすい症状です。そのため、一度ぎっくり腰になったことがある方は、再発を防ぐための予防策を心掛けることが大切です。
ぎっくり腰の予防には、以下ようになります。
- 正しい姿勢を保つ: 猫背や反り腰などの悪い姿勢は、腰に負担をかけてしまいます。日頃から正しい姿勢を意識し、立っている時も座っている時も、背筋を伸ばし、お腹に力を入れるようにしましょう。デスクワークが多い方は、1時間に1回程度は立ち上がって体を動かすなど、こまめに休憩を取るように心掛けてください。
- 適度な運動: ウォーキングや水泳など、腰に負担の少ない運動を習慣的に行いましょう。厚生労働省は、1日30分程度のウォーキングなどの運動を推奨しています。
- 筋力トレーニング: 腹筋や背筋を鍛えることは、腰を支える力を強化し、ぎっくり腰の予防に繋がります。特に、体幹と呼ばれる胴体部分の筋肉を鍛えることが重要です。体幹トレーニングは、専用の器具を使わずに自宅でも簡単に行うことができます。
- 体重管理: 肥満は腰への負担を増大させるため、適切な体重を維持することも重要です。バランスの良い食事と適度な運動を心掛けましょう。
- 急な動作を避ける: 急な動作によって、腰に負担がかかりますので気をつけましょう。特に、朝の寝起きで体がまだ温まっていない時は、腰の筋肉が固まっているので、ぎっくり腰を起こしやすい環境となります。
- 体を冷やさない: 体が冷えると、身体が固まっているので、ぎっくり腰のリスクが高まります。特に冬場は、体を冷やさないよう、温かい服装を心掛け、カイロや温熱シートなどを活用するのもいいでしょう。
このような心がけで、ぎっくり腰を対処し、健康な腰を維持することができます。ぎっくり腰は、一度経験するとその痛みの辛さが忘れられないものです。日頃から予防を心掛け、健康な毎日を送りましょう。
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参考文献
- Maher C, Underwood M, Buchbinder R. “Non-specific low back pain.” Lancet (London, England) 389, no. 10070 (2017): 736-747.
- George SZ, Fritz JM, Silfies SP, Schneider MJ, Beneciuk JM, Lentz TA, Gilliam JR, Hendren S, Norman KS. “Interventions for the Management of Acute and Chronic Low Back Pain: Revision 2021.” The Journal of orthopaedic and sports physical therapy 51, no. 11 (2021): CPG1-CPG60.
- 機械性腰痛ガイドライン2018
監修者
坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。