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梨状筋症候群について 医師が詳しく解説

お尻や足に、電気が走るような痛みやしびれを感じたことはありませんか?もしかしたら、それは「梨状筋症候群」のサインかもしれません。
現代社会のデスクワーク中心の生活は、知らず知らずのうちに梨状筋への負担を増大させて、痛みやしびれを引き起こす疾患です。
放置すると慢性化し、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。
この記事では、セルフチェックの方法、そして具体的な治療法まで、医師が分かりやすく解説します。
つらい痛みやしびれから解放されるための第一歩を、この記事で踏み出してみませんか?
目次
梨状筋症候群の症状と原因5選
お尻や足に痛みやしびれがある場合、梨状筋症候群の可能性があります。
梨状筋症候群は、お尻の奥深くにある梨状筋という筋肉が、坐骨神経を圧迫することで起こる症状です。
痛みやしびれの症状
梨状筋症候群の痛みやしびれは、お尻から太もも、ふくらはぎ、そして時には足先まで広がり、まるで電気が走るようなピリピリとした感覚や、ジーンと響くような感覚、焼けるような痛みなど、症状は人それぞれです。
これらの症状は、長時間座っていたり、股関節を動かしたりすることで悪化し、同じ姿勢を続けていると、さらに症状が強まる場合があります。
このような症状が現れた場合、日常生活にも支障をきたす可能性があります。
症状の種類 | 感じ方 | 範囲 | 具体的な日常生活への影響例 |
---|---|---|---|
ピリピリする | 電気が走るような感覚 | お尻から足先まで | 靴下の素材がチクチクと感じたり、足先が常に痺れて違和感がある |
ジーンとする | 重いものが乗っているような感覚 | お尻からふくらはぎまで | ふくらはぎが重だるく、長時間の歩行が困難になる |
焼けるような痛み | 熱いものが当たっているような感覚 | お尻から太ももまで | 座っているとお尻から太ももにかけて熱く感じ、落ち着いて座っていられない |
このような症状は、当初は軽い違和感程度から始まり、徐々に増悪するケースが多いです。
初期の段階では、「少し疲れているだけだろう」と安易に考えてしまいがちですが、放置すると慢性化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性がありますので、早めの対応が重要です。
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臀部から太もも、ふくらはぎにかけての痛み
梨状筋は、股関節を外側に回す働きをする筋肉です。この筋肉が硬くなったり、腫れたりすることで、近くを通る坐骨神経を圧迫し、症状が出ます。坐骨神経は、人体で最も太い神経であり、腰から足先まで繋がっています。
梨状筋症候群は、比較的まれな疾患であるものの、坐骨神経痛の原因の一つとして無視できない存在です。診断が難しい場合が多く、他の疾患との鑑別が重要になります。
例えば、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症なども坐骨神経痛を引き起こす可能性があるため、これらの疾患との鑑別が必要となります。
かかりつけ医から、『坐骨神経痛の原因は、腰のヘルニアが原因と言われた』とよく外来に来られる患者様がいました。
よく調べてみると、この梨状筋症候群だったということは多々ありました。整形外科医でも、中々判断するのは難しい疾患となります。
▼椎間板ヘルニアについて、こちらでも分かりやすく解説しています。
長時間座っていると悪化する痛み
デスクワークや車の運転などで長時間同じ姿勢を続けていると、梨状筋が圧迫され、坐骨神経への刺激が強まります。
特に、足を組んだり、片方に体重をかけたりする姿勢は、梨状筋への負担が大きくなるため、注意が必要です。
こまめに立ち上がったり、ストレッチをしたりすることで、筋の緊張を和らげ、症状をやわらげることができます。
現代社会では、デスクワークやスマートフォンの使用など、長時間座っている機会が増えています。そのため、梨状筋症候群のリスクも高まっていると考えられます。
長時間座っている際には、1時間に1回程度は立ち上がって歩いたり、身体を動かしたりしましょう。
股関節の動きに伴う痛み
梨状筋症候群では、股関節を動かすと痛みが増強することがあります。この梨状筋は、股関節を内側や外側に回したり、曲げ伸ばししたりする際に活躍する筋肉です。
この時に、梨状筋が伸縮し、坐骨神経を刺激します。特に、股関節を外側に回す動きは、梨状筋を強く収縮させるため、痛みを感じやすいです。
階段の上り下りや、足を組む動作など、日常生活での動作でも痛みが出現する可能性があります。
梨状筋症候群のセルフチェックと診断
お尻や足に痛みやしびれがあると、日常生活にも支障が出てつらいですよね。もしかしたら、それは「梨状筋症候群」かもしれません。
梨状筋症候群は、お尻の奥深くにある筋肉「梨状筋」が、近くを通る坐骨神経を圧迫することで起こる病気です。
今回は、梨状筋症候群のセルフチェック方法や医療機関における診断方法について詳しく解説します。
梨状筋症候群のセルフチェック方法
ご自身で梨状筋症候群の可能性をチェックする方法をいくつかご紹介します。これらのセルフチェックは、あくまで梨状筋症候群の疑いがあるかを調べるためのものです。
セルフチェックで陽性反応が出ても、必ずしも梨状筋症候群であるとは限りません。確定診断のためには、医療機関を受診し医師の診察を受けることが重要です。
FAIRテスト(股関節屈曲、外転、内旋テスト)とPace徴候は、梨状筋症候群のセルフチェックとして広く知られています。
FAIRテスト:FAIRテストでは、仰向けに寝て片方の足をもう片方の足の上に組み、上の足の膝を外側に倒していきます。
この時、お尻や太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれが出たら、梨状筋症候群の可能性があります。
このテストは、梨状筋が緊張・短縮することで坐骨神経が刺激され、神経のインパルスが妨げられることで症状が出現するというメカニズムに基づいています。
Pace徴候:Pace徴候では、痛みのある側の足を組んで座り、そのまま上半身を前に倒します。
お尻や太ももに痛みやしびれが増強する場合、梨状筋症候群の可能性があります。
これらのセルフチェックは、梨状筋の緊張や炎症によって坐骨神経が圧迫されることで生じる痛みやしびれを誘発することで、梨状筋症候群の可能性を探るものです。
しかし、これらの症状は他の疾患でも起こり得るため、鑑別診断が重要です。
例えば、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症も同様の症状を引き起こす可能性があります。
鑑別診断:坐骨神経痛との違い
梨状筋症候群は、坐骨神経痛の一つの原因です。
坐骨神経痛とは、腰からお尻、太ももの裏、ふくらはぎ、足にかけて伸びている坐骨神経が何らかの原因で刺激され、痛みやしびれなどの症状が現れる状態を指します。
梨状筋症候群以外にも、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腫瘍など、様々な病気が坐骨神経痛を引き起こす可能性があります。
▼坐骨神経痛を和らげるストレッチについて、併せてお読みください。
梨状筋症候群の治療法と治る期間
ここでは、梨状筋症候群の具体的な治療法と、どれくらいの期間で治るのかについて、詳しく解説します。
どの治療法が自分に合っているのか、不安に思っている方も、ぜひ参考にしてみてください。
梨状筋症候群の治療期間
梨状筋症候群の治療期間は、症状の重さや治療法、そして個人差によって大きく異なります。
多くの場合、保存療法と呼ばれる手術をしない治療で、2ヶ月ぐらい経てば、かなり軽快するという報告があります。
具体的には、初期段階で症状が軽い場合は数週間から数ヶ月で、ほとんどが軽快します。
しかし、症状が重い場合や慢性化している場合は、数ヶ月から半年以上かかる場合もあります。
さらに、日常生活での姿勢や体の使い方が悪ければ、さらに治癒期間は長くなります。
梨状筋症候群は、他の疾患、例えば腰椎椎間板ヘルニアなどと症状が似ている場合があり、誤診される可能性も否定できません。
そのため、医療機関を受診し、医師の診察を受けることが重要です。
保存療法:ストレッチや薬物療法
梨状筋症候群の治療は、多くの場合、保存療法から始めます。
梨状筋症候群は、梨状筋の緊張や炎症が原因で起こることが多いため、保存療法では、主に梨状筋の緊張を和らげ、炎症を抑えることを目的とします。
具体的には、ストレッチ、薬物療法、温熱療法、注射などがあります。
ストレッチ:ストレッチは、梨状筋を伸ばすことで、神経への圧迫を軽減し、症状の改善を図ります。
理学療法士による坐骨神経モビライゼーションや梨状筋リリースといった専門的な手技も有効です。
股関節の屈曲角度が90度以上と90度未満のストレッチ方法があり、症状や身体の状態に合わせて適切な方法を選択することが重要です。
薬物療法:薬物療法では、痛みや炎症を抑える薬を服用します。痛み止めや消炎鎮痛剤など、症状に合わせて医師が適切な薬を処方します。
温熱療法:温熱療法は、温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。ホットパックや温湿布などを使用します。
注射療法:注射療法では、梨状筋や坐骨神経周囲に局所麻酔薬やステロイド薬を注射します。
痛みを軽減し、炎症を抑える効果が期待できます。近年では、ボツリヌス毒素注射も効果的であると報告されています。
ボツリヌス毒素は、筋肉の過剰な収縮を抑制する効果があり、梨状筋の緊張を和らげ、坐骨神経への圧迫を軽減します。
手術療法の適応
梨状筋症候群の手術療法は、保存療法を数ヶ月間継続しても症状が改善しない場合や、他の疾患が疑われる場合に検討されます。
しかし、梨状筋症候群で手術が必要となるケースは非常に稀です。
家庭でできるストレッチと注意点
梨状筋症候群の代表的なストレッチとして、仰向けに寝て、片方の足首を反対側の膝の上に乗せ、両手で太ももを抱えてゆっくりと胸に引き寄せる方法があります。この姿勢を30秒ほど維持し、反対側も同様に行います。
ストレッチは無理のない範囲で行いましょう。ストレッチは、朝起きた時やお風呂上がりなどが効果的です。
また、ストレッチだけでなく、日常生活での姿勢や体の使い方にも気を配ることが重要です。
長時間の同じ姿勢を避け、適度な運動を心がけることで、梨状筋症候群の予防や再発防止にも繋がります。
椅子に座っている時に足を組む癖がある方は、梨状筋への負担が大きくなるため、意識的に足を組まないようにしましょう。
また、立ち仕事が多い方は、適度に休憩を取り、股関節周りのストレッチを行うことをおすすめします。
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参考文献
- Kirschner JS, Foye PM, Cole JL. “Piriformis syndrome, diagnosis and treatment.” Muscle & nerve 40, no. 1 (2009): 10-8.
- Probst D, Stout A, Hunt D. “Piriformis Syndrome: A Narrative Review of the Anatomy, Diagnosis, and Treatment.” PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation 11 Suppl 1, no. (2019): S54-S63.
- Kim B, Yim J. “Core Stability and Hip Exercises Improve Physical Function and Activity in Patients with Non-Specific Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial.” The Tohoku journal of experimental medicine 251, no. 3 (2020): 193-206.
- Ahmad Siraj S, Dadgal R. “Physiotherapy for Piriformis Syndrome Using Sciatic Nerve Mobilization and Piriformis Release.” Cureus 14, no. 12 (2022): e32952.
監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。