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脳梗塞の後遺症について医師が詳しく説明

脳梗塞とは 医師が解説
公開日: 2025.02.10

脳卒中の中でも、血管が詰まることで発症する脳梗塞。一命を取り留めても、麻痺やしびれ、言語障害といった後遺症が残る可能性があり、人生を大きく変えてしまうほどの影響を及ぼすケースも少なくありません。

脳梗塞の後遺症は、発症場所や範囲、治療開始までの時間によって症状の重篤度が大きく異なり、早期の治療開始が後遺症を最小限に抑える鍵となります。

この記事では、脳梗塞の後遺症の種類や症状、そして後遺症と共に生きるための治療法やリハビリテーション、日常生活の工夫、社会支援まで、幅広く解説します。ご自身やご家族が脳梗塞に直面した際に、少しでもお役に立てれば幸いです。

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脳梗塞後遺症の種類と症状

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳細胞に酸素や栄養が届かなくなり、脳の機能が損なわれる病気です。一命を取り留めたとしても、後遺症が残ってしまう可能性があります。後遺症の症状や程度は、脳梗塞が起こった場所や範囲、そして治療開始までの時間などによって大きく異なります。一刻も早い治療開始が、後遺症を最小限に抑える鍵となります。

後遺症の種類や症状を正しく理解することは、患者さん本人だけでなく、ご家族にとっても、その後のリハビリテーションや日常生活の工夫、社会資源の活用を考える上で非常に重要です。

運動麻痺(片麻痺、対麻痺)

運動麻痺は、脳梗塞で最も多く見られる後遺症の一つです。脳梗塞によって運動機能を司る脳の領域が損傷すると、筋肉を動かす指令がうまく伝わらなくなり、手足の麻痺が生じます。

麻痺には、体の片側だけに症状が現れる「片麻痺」と、両側に現れる「対麻痺」があります。多くの場合、右脳に梗塞が起こると左半身に、左脳に梗塞が起こると右半身に麻痺が現れます。これは、脳の神経線維が交差しているためです。

麻痺の程度は、軽度であれば少し動きにくい、力が入りにくいといった症状ですが、重度になると全く動かせなくなってしまいます。また、麻痺が続くと、関節が硬くなって動かなくなる「関節拘縮」も起こりえます。

例えば、箸がうまく使えない、ボタンが留められない、歩行が困難になるといった日常生活の動作に支障をきたすだけでなく、寝返りが難しくなることで床ずれのリスクが高まったり、手足のむくみが生じやすくなるなど、二次的な合併症を引き起こす可能性も懸念されます。

脳梗塞後の痙縮に関する研究では、麻痺の重症度が高いほど、後遺症として痙縮(筋肉が異常に緊張した状態)が生じやすいことが報告されています。痙縮は、関節の痛みや運動制限を引き起こし、日常生活の質を低下させる一因となります。

麻痺の種類 症状
片麻痺 体の片側の麻痺(右半身もしくは左半身)
対麻痺 体の両側の麻痺

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感覚障害(しびれ、痛み)

感覚障害も脳梗塞の代表的な後遺症です。皮膚の感覚を司る脳の領域が損傷を受けると、触覚、温度覚、痛覚などを感じにくくなったり、逆に過敏になったりします。

「しびれ」は、感覚が鈍くなる症状で、手足の先端などによく起こります。まるで手袋や靴下を履いているように感じたり、何も触っていないのに何かが触れているような感覚が生じることがあります。

また、損傷を受けた神経が過剰に反応することで、「痛み」を生じることもあります。痛みの程度や種類は人それぞれで、ピリピリとした痛み、ズキズキとした痛み、焼けるような痛みなど様々です。

これらの感覚障害は、日常生活においても様々な困難をもたらします。例えば、温度感覚が鈍くなると、やけどに気づきにくくなります。また、触覚が鈍いと、物を持つときに適切な力加減ができず、物を落としてしまったり、逆に握りすぎて物を壊してしまうこともあります。

言語障害(失語症)

脳梗塞によって言語中枢が損傷すると、言葉の理解や発話が難しくなる失語症が起こることがあります。失語症は、単に言葉が出ないだけでなく、言葉の理解にも影響を及ぼすことがあります。

失語症には、大きく分けて3つの種類があります。

  • 表出性失語: 言葉を発することが難しくなる症状です。話したい言葉がなかなか出てこなかったり、間違った言葉を使ってしまったり、言葉がつっかえたりします。
  • 受容性失語: 相手の言葉が理解できない症状です。相手が何を言っているのか理解できず、会話が成立しなくなります。
  • 混合性失語: 表出性失語と受容性失語の両方の症状が現れるものです。

失語症はコミュニケーションを大きく阻害するため、社会生活や日常生活に大きな影響を与えます。

高次脳機能障害(記憶障害、注意障害)

高次脳機能障害は、記憶、注意、思考、判断など、高度な精神活動を司る脳の機能に障害が起こることを指します。

  • 記憶障害: 新しいことを覚えられなくなったり、過去の出来事を思い出せなくなったりします。
  • 注意障害: 集中力が続かなかったり、気が散りやすくなったり、複数のことに同時に注意を払えなくなったりします。

その他にも、計画を立てたり、物事を順序立てて行うことが難しくなる「実行機能障害」、体の片側を認識できなくなる「半側空間無視」、意図した動作ができなくなる「失行」、対象が認識できなくなる「失認」など、様々な症状があります。

嚥下障害

嚥下障害は、食べ物や飲み物をスムーズに飲み込めなくなる症状です。脳梗塞によって、飲み込むための筋肉や神経がうまく働かなくなると、食べ物が気管に入ってむせてしまったり、うまく飲み込めずに口の中に残ってしまったりします。

嚥下障害があると、誤嚥(食べ物が気管に入ること)を起こしやすく、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。誤嚥性肺炎は、命に関わる危険性もあるため、食事の際には細心の注意が必要です。

排尿障害・排便障害

脳梗塞によって、排尿や排便をコントロールする神経が損傷すると、排尿障害や排便障害が起こります。尿意や便意を感じにくくなったり、逆に頻繁に感じたり、我慢できずに失禁してしまうこともあります。また、尿や便が出にくくなることもあります。これらの症状は、生活の質を大きく低下させる可能性があります。

これらの後遺症は、単独で現れることもあれば、複数組み合わさって現れることもあります。脳梗塞は、後遺症の種類も多岐にわたり、その症状の程度も人それぞれです。

脳梗塞後遺症の治療とリハビリテーション

脳梗塞の後遺症は、患者さん一人ひとりの生活に大きな影を落とす可能性があります。後遺症の種類や重症度は、脳梗塞が発生した場所や範囲、そして迅速な治療開始の可否によって大きく異なります。

後遺症による様々な困難を少しでも軽減し、より良い生活を送るためには、適切な治療と地道なリハビリテーションが欠かせません。

薬物療法

薬物療法は、脳梗塞の再発予防と後遺症の症状改善を目的として行います。脳梗塞は再発率の高い病気であるため、再発予防は特に重要です。

用いられる薬剤の種類や服用方法は、患者さんの状態や病歴、他の病気の有無などを考慮して決定します。主な薬剤として、血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)血小板がくっつくのを防ぐ薬(抗血小板剤)血液が固まるのを防ぐ薬(抗凝固剤)などがあります。

血栓溶解剤は、発症早期に投与することで閉塞した血管を再開通させる効果が期待できます。しかし、投与可能な時間は限られており、全ての患者さんに適用できるわけではありません。

抗血小板剤と抗凝固剤は、血栓の形成を防ぎ、脳梗塞の再発リスクを低下させる薬です。これらの薬剤は、医師の指示に従って継続的に服用することが重要です。自己判断で服薬を中断すると、再発のリスクが高まる可能性があります。服用中に気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。

リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法)

リハビリテーションは、脳梗塞後遺症による運動麻痺、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などの改善を目的として行います。患者さん一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドのプログラムを作成し、日常生活の自立を目指します。

理学療法では、体の動きや機能の回復を目指します。筋力トレーニングや関節可動域訓練、歩行訓練などを通して、日常生活に必要な動作の改善を図ります。

作業療法は、日常生活動作(食事、着替え、トイレ、入浴など)の改善を目的としています。患者さんの生活環境や生活スタイルを考慮し、自宅での生活をスムーズに行えるように訓練を行います。

言語療法は、脳梗塞によって損なわれた言語機能の回復を目指します。発声練習や言葉の理解・表現の訓練などを通して、コミュニケーション能力の向上を図ります。

リハビリテーションの効果を高めるには、早期開始と継続が重要です。根気強く取り組むことで、症状の改善や日常生活の自立に繋がる可能性が高まります。

再発予防(生活習慣改善、服薬管理)

脳梗塞の再発を防ぐためには、生活習慣の改善と服薬管理が重要です。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は脳梗塞の危険因子となるため、適切な管理が必要です。

バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒など、健康的な生活習慣を心がけましょう。食生活においては、塩分や糖分、脂肪分の過剰摂取を避け、野菜や果物を積極的に摂ることが大切です。適度な運動は、血圧や血糖値の調整に役立ちます。また、禁煙は血管の健康維持に不可欠です。

医師から処方された薬は、指示通りに正しく服用しましょう。自己判断で服薬を中断することは危険です。

最新の治療法

近年、脳梗塞後遺症に対する新たな治療法として、再生医療が注目されています。

本来、人には、損傷したところを修復させる力があります。それを担っているのが、幹細胞です。この幹細胞を利用して、脳梗塞の後遺症の改善が期待できるのです。

リペアセルクリニックでは、脳梗塞の後遺症に特化した再生医療を行なっています。

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参考文献

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監修者

圓尾 知之(医療法人美喜有会 脳神経外科 部長)

圓尾 知之 医師 (医療法人美喜有会 脳神経外科 部長)

Tomoyuki Maruo

日本脳神経外科学会 所属

脳神経外科の最先端治療と研究成果を活かし、脳卒中から1日でも早い回復と後遺症の軽減を目指し、患者様の日常生活の質を高められるよう全力を尽くしてまいります。

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