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坐骨神経痛は歩いたほうがいい?ウォーキングの注意点とその他セルフケアを紹介

坐骨神経痛があると、「歩いても大丈夫だろうか?」そんな不安を抱く方は多いでしょう。
痛みが悪化するかもしれない恐れから、なるべく動かないようにしてしまうケースも少なくありません。
しかし、正しくウォーキングを取り入れることで、痛みの改善を目指せる可能性があります。
この記事では、「本当に歩いて良いのか」「どのように歩けば良いのか」そんな疑問を持つ方に向けて、ウォーキングのメリットや注意点、さらにセルフケアまでわかりやすく解説します。
目次
【前提知識】坐骨神経痛とは
坐骨神経痛とは、お尻から太もも、ふくらはぎまで伸びる坐骨神経がなんらかの要因で圧迫・刺激されることで、痛みやしびれなどの症状が現れる状態です。
原因としては、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、加齢に伴う椎間板や骨の変性などが挙げられます。
いずれの場合も、神経への圧迫や炎症が痛みやしびれを引き起こす仕組みです。
症状が進むと、歩行や座位を続けることが困難になるなど、日常生活に大きな支障が出るケースもあります。
- 坐骨神経痛の主な原因
下記は代表的な原因を整理したものです。いずれも神経への圧迫を招きやすい要素といえます。
原因 | 概要・特徴 |
---|---|
腰椎椎間板ヘルニア | 椎間板が飛び出し、神経を圧迫して強い痛みやしびれを起こす。若い世代でも発症しやすい。 |
脊柱管狭窄症
(せきちゅうかんきょうさくしょう) |
加齢により脊柱管が狭くなり、坐骨神経を刺激して痛みやしびれが現れる。中高年に多い。 |
下半身の筋肉の衰え | 筋肉が衰えると下半身に過度の負担がかかることで神経を圧迫し、坐骨神経痛を誘発する場合がある。 |
- 坐骨神経痛のよくある症状
主な症状としては、足やお尻にかけてのしびれや痛みが代表的です。下記はよく見られる症状を一覧にまとめたものです。
症状 | 特徴 |
---|---|
下肢のしびれ・痛み | お尻から太もも、ふくらはぎにかけてピリピリした痛みやジンジンするしびれが出る |
長時間椅子に座れなくなる | デスクワークや車の運転など、座位を続けると痛みが強くなる。 |
歩行が困難 | 歩き始めや長距離の歩行で痛みが強くなり、スムーズに歩けなくなる場合がある。 |
姿勢による痛みの変化 | 前かがみや後ろに反る動作によって、痛みが強まったり和らいだりする可能性がある。 |
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結論|坐骨神経痛における歩行の有効性はケースによって異なる
結論として、坐骨神経痛は歩いた方がいいのか、悪いのかについてはケースによって異なります。(文献1)(文献2)
痛みが長引く、もしくは日常生活に支障をきたすようであれば、無理せず病院を受診し、適切な診断と治療方針のもとでリハビリやウォーキングを進めることが大切です。
一方で、症状が軽度な場合やリハビリ段階では、ウォーキングによって筋力維持や血行促進が期待できます。
歩行の可否は症状の度合いや原因によるため、まずは医療機関で状態を確認することが大切です。
歩いた方がいい場合
1.症状が比較的軽度または痛みが落ち着いているとき
急性期の激しい痛みが和らいできた段階であれば、適度なウォーキングによる血行促進や筋力維持が有効とされています。安静にしすぎると筋力低下を招き、かえって痛みが長引く可能性があるため、痛みが許容範囲であればむしろ動くことが大切です。
2.医師や理学療法士から運動療法を勧められているとき
近年の研究では、坐骨神経痛になっても運動療法を取り入れたグループと、経過観察のみを行なったグループを比較した際に、運動療法を取り入れたグループの方が早く症状が収まったという報告があります。(文献3)
医師や理学療法士からウォーキングを提案された場合は、痛みを軽減しながら回復を促しましょう。
3.体力や筋力の低下を防ぎたい場合
デスクワーク中心や加齢による筋力の衰えが原因で腰回りが不安定になっている場合、適度な歩行は下半身の筋肉を刺激し、血流を良くして回復を助けます。
過度な負荷をかけずに動くことで、腰椎や骨盤周りへの過剰な負担を避けながら、筋力低下を予防。
また、デスクワークの方は30分に1回は立ち上がったり、ストレッチをしたりして、体を動かす習慣をつけましょう。
歩かない方がいい場合
1.わずかな動作でも強い痛みを感じる場合
炎症が強く、痛みをこらえて無理に歩くと神経への刺激がさらに増すため、症状を長引かせるリスクがあります。痛みが強い状態が続く場合は、まずは医師に相談して安静を保ちつつ治療を優先し、痛みが落ち着いてから運動を再開しましょう。
2.膀胱直腸障害や重度のしびれ・麻痺を伴う場合
坐骨神経痛の原因がヘルニアや脊柱管狭窄症など重度の神経圧迫によるもので、下肢のしびれや麻痺が強い、あるいは膀胱直腸障害などの重度の神経障害があるケースでは、歩くことでさらなるダメージを与える可能性があります。
このような場合は早めの精密検査や手術を含む専門的な治療を検討しましょう。(文献4)
3.歩行で痛みが著明に増し日常生活がままならない状態
歩き始めに強い痛みが出てしまい、数メートル歩いただけで中断を余儀なくされる状況であれば、ウォーキング自体がストレスとなり、回復を妨げる要因になります。
こうした場合は理学療法士や医師と相談し、まずは痛みの緩和を図る治療や別の運動方法を検討しましょう。
坐骨神経痛でも歩いたほうがいい理由
「歩くことで痛みが増すのでは」と心配する方もいらっしゃると思いますが、正しい方法で無理のない範囲ならば、むしろ改善が見込める場合があります。
大きく分けると、次の二つが主なメリットです。
歩いた方が下半身や骨盤周りの血行を促進できる
歩行によって下半身を動かすと、血行が良くなり、筋肉や神経まわりの組織に十分な酸素と栄養が行き渡りやすくなります。
炎症物質の排出も促されるため、痛みの軽減につながる可能性があるのです。
歩いた方が筋力低下の防止になる
痛みを恐れて動かないままでいると、腰や脚の筋力が衰えてしまいます。
筋力が落ちると、かえって腰や椎間板に負担がかかり、慢性的に痛みが続くリスクが高まります。
適度なウォーキングは筋力低下を防ぎ、腰回りを安定させるのに役立つと考えられます。
坐骨神経痛におけるウォーキングの注意点
ウォーキングが有効とはいえ、無理すると症状を悪化させてしまうかもしれません。
以下の注意点を守って、痛みが出にくい方法で歩くようにしましょう。
また、下記リンクの記事でも坐骨神経痛でやってはいけないことについてまとめておりますので、こちらもご参照ください。
- 痛みが強いときは無理しない
座っていてもズキズキと痛む、歩き始めると激痛が走るといった場合は、安静を優先してください。
炎症が強い時期は、歩行の振動や姿勢の変化によって悪化する可能性があります。
ある程度痛みが落ち着いてから、医師や専門家の指導のもと始めるのが望ましいでしょう。
- 歩く前の注意点
歩行前に簡単なストレッチやウォームアップによって、筋肉がほぐれて痛みが出にくくなります。
また、靴選びも重要です。できればウォーキングシューズを履き、足の固定が確実にできるヒモ靴をえらびましょう。
足裏への負担を減らすため、インソールを使うのも良いでしょう。
クッション性の高い靴でウォーキングすると、腰や脚にかかる負担を軽減できます。
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坐骨神経痛には歩行だけでなくストレッチも効果的
ウォーキングによる筋力維持と同時に、筋肉の柔軟性を高めるストレッチを取り入れると、相乗効果が期待できます。(文献5)
本記事では「座っているときにできるストレッチ」と「寝ているときにできるストレッチ」を紹介します。(文献6)
座っているときにできるストレッチ
椅子に座ったままでも、太ももやお尻まわりの筋肉を伸ばす方法があります。
片足をもう片方の太ももの上に乗せ、背筋を伸ばしてゆっくりと前に倒れるストレッチです。
お尻や腰まわりが伸びる感覚を得られ、デスクワーク中の合間にも取り組めます。
寝ているときにできるストレッチ
仰向けに寝て、膝を立てた状態でストレッチする方の太もも裏を手、またはタオルで抱え込み、膝を90度に曲げた状態から膝下をまっすぐ伸ばします。
そうすると、お尻や足の筋肉が伸びて効果的なストレッチになります。
痛みを感じない範囲で、10回×3セットで行いましょう。
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坐骨神経痛の再発を防ぐための日常生活のコツ
坐骨神経痛は再発しやすい症状でもあります。一時的に痛みが軽減しても、日頃の姿勢や生活習慣を見直さなければ、再び悪化するリスクがあります。
1. 体重管理を意識する | 体重が増えすぎると、腰や下半身への負担が大きくなり、痛みを再発させるリスクが高まります。
適正体重を保つようにバランスの良い食事や適度な運動を心がけましょう。 |
---|---|
2. 適切な寝具の選択 | 柔らかすぎる寝具を使うと腰が沈み込み、背骨の自然なカーブを保ちにくくなります。身体に合った、ある程度の硬さがあるマットレスや枕を選ぶことが大切です。 |
3. 冷え対策 | 冷えは筋肉のこわばりを招きやすく、血流を悪化させる原因にもなります。腰や足を冷やさないために、レッグウォーマーや湯たんぽ、カイロなどを活用すると良いでしょう。 |
4. ストレスケア(自律神経のバランスを整える) | ストレスは筋肉を緊張させ、痛みを長引かせる要因となります。趣味やリラクゼーションを取り入れる、十分な睡眠をとるなどして、日頃からストレス解消を意識しましょう。 |
5. 適度な筋力トレーニング | お尻や太ももの筋力を鍛えると、体幹が安定し坐骨神経への負担が軽減されます。痛みが少ない時期に、無理のない範囲でトレーニングをしましょう。 |
6. 適度な水分補給 | 水分不足になると血流が悪くなり、筋肉や椎間板への栄養補給が十分に行われなくなる可能性があります。のどが渇く前にこまめに水分を補給する習慣をつけてみてください |
7. ヒールの高すぎる靴を避ける | ヒールが高い靴を履くと、足先に負荷が集中して骨盤や腰のバランスが乱れやすくなります。ヒールを選ぶ場合は、なるべく低めのものやクッション性に優れた靴を検討しましょう。 |
8. デスク・椅子の高さや配置を見直す | 長時間のデスクワークでは、机や椅子の高さが合っていないと腰に大きな負担がかかります。ひじが机とほぼ水平になるよう調整し、パソコンの画面は目線より少し下になるように配置しましょう。 |
9. 専門家による定期的なケアやメンテナンス | 痛みが軽くなったあとも、整体やフィジカルセラピーなど専門家のケアを受けると再発リスクが下がります。定期的に身体をメンテナンスして、日常の姿勢や動作を見直す機会を持つと良いでしょう。 |
10. 定期的なクリニック受診で状態をチェック | 痛みが軽減してもしばらくして再発するケースは少なくありません。気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、身体の状態を把握して適切に対処しましょう。 |
歩いた方がいい・悪いケースを見きわめて坐骨神経痛の改善に努めよう
坐骨神経痛は、痛みの原因や症状の度合いによって「積極的に歩いたほうがいいケース」と「安静を優先すべきケース」があります。
軽症であれば、ウォーキングやストレッチで筋力維持と血行促進を図るのがおすすめです。
一方、痛みが強い時期や急性期には、無理せず休養を取り、医療機関で適切な診断を受けてください。
リペアセルクリニックでは、再生医療をはじめ、患者さま一人ひとりの状態に合わせた治療プランを提案しています。
「症状がどの程度なのか」「歩いたほうがいいのかどうか判断がつかない」といった不安があれば、ぜひ早めに受診してみてください。
痛みを抱えたまま過ごすと、日常生活に支障をきたすだけでなく、精神的にも大きなストレスになります。
専門家のサポートを受けながら、自分の身体に合ったペースでウォーキングやストレッチを取り入れて、坐骨神経痛の改善と再発予防に努めていきましょう。
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監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。