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花咲乳がんとは?ステージと余命の関係や初期症状・治療法を医師が解説

「花咲乳がん」と診断されたものの、どのような病気なのかわからず不安になっていませんか。あるいは「自分の症状が花咲乳がんなのでは?」と感じている方もいるかもしれません。
花咲乳がんは、進行した乳がん症状の一種で、がん組織が皮膚の表面にあらわれた状態です。見た目や悪臭に困っている方も少なくありませんが、適切な薬物療法や放射線療法などで痛みや悪臭の軽減、QOLの改善が可能です。
本記事では、花咲乳がんの特徴やステージとの関係性、治療法について詳しく解説します。本記事を参考に、花咲乳がんの特徴や治療法を理解し、自分にとって納得のいく治療を検討してみてください。
目次
花咲乳がんとは「がん組織が皮膚の表面にあらわれた状態の乳がん」
花咲乳がんとは、乳がんが進行し、がん組織が皮膚の表面にあらわれた状態です。
医学的には「がん性皮膚潰瘍」や「がん性皮膚創傷(そうしょう)」とも呼ばれ、皮膚が破れて盛り上がり、花が咲いたように見えることから名付けられました。(文献1)
見た目の症状に加えて、悪臭や出血、膿など他の症状を伴う場合もあります。放置すると状態が悪化しやすいため、早期の対応が重要です。
花咲乳がんの症状
花咲乳がんでは、皮膚の変化に加えて、乳がんに共通するさまざまな症状が見られます。代表的な症状は以下のとおりです。
- 乳房の痛み
- 出血
- 悪臭
- 膿
- しこり
- 皮膚の赤み
花咲乳がんの見た目やにおいの変化は、日常生活や精神面にも影響を及ぼすことがあります。気になる症状があれば、早めに専門医に相談しましょう。
花咲乳がんの初期症状
花咲乳がんの初期には、一般的な乳がんと似た症状があらわれます。代表的な初期症状は以下のとおりです。
症状 |
説明 |
---|---|
乳房のしこり |
|
乳房の皮膚の赤みや腫れ |
|
乳房のへこみ |
|
初期症状を放置すると、花咲乳がんのように皮膚の表面にがん組織があらわれる状態に進行するケースがあります。違和感がある場合は、早めに専門医への受診が大切です。
花咲乳がんの原因
花咲乳がんは、進行したがんで見られる症状です。乳がんを治療せずに放置した場合や、治療の効果が十分に得られなかった場合にあらわれることが多くあります。
乳がんが進行すると、腫瘍が皮膚の表面に達して破れてがん組織が皮膚表面に露出し「花が咲いたような状態」になります。
乳房に異変を感じたときは、早めに受診して治療を始めることが大切です。初期に治療を行えば、がんの進行を防げる可能性が高まります。
花咲乳がんのステージと余命の関連性
花咲乳がんは、乳がんが進行した状態であらわれる症状のひとつです。ステージやがんの広がり方によって、予後や余命の目安も変わります。
本章では、花咲乳がんとステージ・余命の関係について解説します。今後の治療方針を医師と相談する際の参考になれば幸いです。
花咲乳がんのステージの目安
乳がんの進行度は以下のように、ステージ0〜Ⅳの5段階に分かれており、数字が大きいほどがんの進行度は高まります。(文献2)
皮膚に潰瘍があらわれる花咲乳がんは「局所進行乳がん」に分類され、ステージⅢB以上と判断される場合が多いです。
ステージ |
症状 |
---|---|
0期 |
|
ⅠA期 |
|
ⅠB期 |
|
ⅡA期 |
|
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|
ⅡB期 |
|
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|
ⅢA期 |
|
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|
ⅢB期 |
|
ⅢC期 |
|
Ⅳ期 |
|
ステージⅢでは、がんが乳房内だけでなく皮膚や胸壁に及んでいる状態を意味します。
さらにステージⅣと診断されると、がんが他の臓器にまで広がっているため、根治を目指す治療は困難とされています。ただし、症状の緩和や延命を目的とした治療によって、生活の質(QOL)の維持や長期的なコントロールを目指すことも可能です。
5年生存率(余命)の目安
乳がんはステージが進むほど生存率が下がる傾向があります。乳がんの実測生存率の目安は以下の通りです。(文献3)
ステージ |
実測生存率(%) |
---|---|
Ⅰ期 |
95.2 |
Ⅱ期 |
90.9 |
Ⅲ期 |
77.3 |
Ⅳ期 |
38.6 |
ステージが進むほど生存率は下がってしまいます。しかし、近年は治療法の選択肢の増加や医療の進歩により、進行がんであっても長期生存や症状の緩和を目指せるようになりました。
花咲乳がんにおける3つの治療法
花咲乳がんの治療法は一般的な乳がんと同様、以下の3種類が中心です。
- 薬物療法
- 手術療法
- 放射線療法
治療法は、がんの進行度や個人の体調・意向に応じて選択されます。それぞれの特徴を理解し、今後の治療方針を考える際の参考にしていただければ幸いです。
薬物療法
薬物療法は、花咲乳がんのような進行乳がんで選ばれる場合が多い治療法です。以下のような目的で選択されます。(文献4)
- 再発のリスクを抑える
- 手術前に腫瘍を小さくする
- 症状を和らげる
使用される薬には、がんの種類や体質により異なるものがあります。乳がんの治療に使われる薬剤の種類は、主に以下の3つです。(文献5)
薬剤の種類 |
効果 |
---|---|
ホルモン剤 |
|
分子標的薬 |
|
抗がん剤 |
|
また、使用する薬剤による副作用への対応も必要です。医師と相談しながら無理のない治療計画を立てましょう。
手術療法
手術療法では、がんが存在する乳房や周囲の組織の切除が目的です。
主な手術の種類は主に以下の3つです。(文献4)
- 乳房の一部を取り除く「乳房部分切除術」
- 全体を取り除く「乳房全切除術」
- 脇の下のリンパ節を取る「腋窩リンパ節郭清」
ただし、ステージ4のようにすでに遠くの臓器に転移している場合、手術でがんを取り除いても生存期間の延長が難しいとされています。そのため、薬物療法を中心に行うのが一般的です。(文献5)
乳がんの手術については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
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放射線療法
放射線療法は、がんにX線を照射することでがん細胞を死滅させたり、腫瘍を縮小させたりする治療法です。手術後に放射線療法を行う場合、残った乳房に対して照射するケースも多くあります。(文献4)
また、花咲乳がんのように骨や脳へ転移した進行がんでは、痛みの軽減や日常生活の質(QOL)を保つために放射線療法が用いられることもあります。(文献7)
なお、放射線療法後には一時的に倦怠感や皮膚炎などの副反応があらわれるリスクもあるため、体調の変化には注意が必要です。(文献7)
花咲乳がんは専門医のもとで適切な治療を受けよう
花咲乳がんは、進行した乳がんであらわれる代表的な症状のひとつです。できるだけ早い段階で専門的な治療を受けることが大切です。今回解説したような兆候に心当たりがある方は、予後を良好に保つためにも、早めに受診して適切な治療を受けましょう。
また、近年では薬物療法・手術療法・放射線療法の3本柱に加え「免疫療法」が新たな乳がん治療の選択肢として注目されています。(文献8)免疫療法は、免疫力を高め、がんの予防や再発予防を目的とした治療法です。従来の治療と組み合わせることも可能です。
当院「リペアセルクリニック」では、免疫療法にも対応しております。メール相談やオンラインカウンセリングも実施していますので、気になる方はお気軽にご相談ください。

再⽣医療で免疫⼒を⾼めることができる時代です。
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花咲乳がんについてよくある質問
花咲乳がんはなぜ切除できないのですか?
花咲乳がんがあらわれている場合、進行したがんが他の臓器へ転移している恐れがあります。そのため、すぐに切除できるとは限りません。
まずは薬物療法でがんの進行を抑えたり、腫瘍を小さくしたりする治療が優先されます。
状態が安定し、がんが部分的にとどまっていると判断された場合には、手術による切除が検討されることもあります。(文献9)
治療方針は進行度や体の状態によって異なるため、必ず専門医と相談するようにしましょう。
花咲乳がんはどんなにおいですか?
花咲乳がんでは、皮膚の表面に露出したがん組織から出血や浸出液がにじむと、腐敗臭のような強いにおいが生じることがあります。(文献10)
花咲乳がんによる悪臭は患者本人の生活の質にも大きく影響し、ストレスとなる場合も多く見られます。においに困る場合は、以下の消臭ケアがおすすめです。
- メトロニダゾール(塗り薬)を塗る(文献11)
- 患部を洗う
- 吸水シートを使用し浸出液の漏れを防ぐ
- 部屋をこまめに換気する
花咲乳がんによるにおいでお困りの方は、医師と相談のうえ実践してみてください。
参考文献
(文献1)渡部 一宏.「がん性皮膚潰瘍臭改善薬:メトロニダゾールゲル」『昭和薬科大学紀要』50巻,p15-p19.2016年https://www.shoyaku.ac.jp/upload/AdminNews/528/rel_doc1/watanabe-kiyou-50.pdf
(文献2)一般社団法人日本乳癌学会 「Q15 乳がんのステージとステージごとの治療の流れについて教えてください」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版, 2022年12月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/30-2/q15/
(文献3)国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録2014-2015年5年生存率」2023年https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/latest.html
(文献4)国立がん研究センターがん情報サービス「乳がん 治療」2024年10月22日https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html
(文献5)一般社団法人日本乳癌学会「Q16 乳がん治療に使われる薬剤にはどのようなものがありますか」患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版, 2022年12月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/gindex/30-2/q16/
(文献6)一般社団法人日本乳癌学会 「CQ4 Stage Ⅳ乳癌に対する原発巣切除は勧められるか?」乳癌診療ガイドライン2022年版, 2022年5月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/g_index/cq4/
(文献7)一般社団法人日本乳癌学会 「総説1 乳癌放射線療法の基本」乳癌診療ガイドライン2022年版, 2022年5月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/h_index/s1/
(文献8)Kathrin Dvir,et al. (2024年). Immunotherapy in Breast Cancer.Int. J. Mol. Sci2024, 25 (14)https://www.mdpi.com/1422-0067/25/14/7517
(文献9)一般社団法人日本乳癌学会 「総説 Ⅳ.局所進行乳癌(StageⅢB,ⅢC)」乳癌診療ガイドライン2022年版, 2022年5月https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/s/s4/
(文献10)堀尾卓矢,津福達二ほか.「Mohsペーストとメトロニダゾールゲルを用いた乳癌癌性皮膚潰瘍の管理」『日臨外会誌名』77巻(11号), p2646-p2652,2016年https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/77/11/77_2646/_pdf
(文献11)桑山隆志,横田成彬ほか.「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減に対するメトロニダゾールゲル(ロゼックス®ゲル0.75%)の安全性および有効性の検討—使用成績調査—」『Palliative Care Research』18 巻(1号), p11-p18. 2023年https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspm/18/1/18_22-00042/_html/-char/ja