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【医師監修】脳脊髄液減少症の発症までの期間は?疑うサインと治る目安を解説
「数日前に交通事故でけがをしてから、頭痛やめまいが続いている」
「寝ていると楽だけれど、座ったり起きたりすると頭痛が強くなる」
「頭痛やめまいは事故の後遺症なのだろうか」
外傷後にこのような症状が出た場合、多くの方が不安に感じるでしょう。これらの症状は、脳脊髄液減少症によるものかもしれません。
結論から申し上げますと、多くの場合、脳脊髄液減少症を発症するまでの期間は外傷後30分~数週間程度です。事故から数週間たってから症状が出ることもあるため、「時間が経っているから関係ない」とは限りません。
また、症状に気づいてから1カ月以内であれば、安静と水分補給だけで自然に治ることもあるとされています(文献1)。早く気づいて手を打つほど、治るまでの期間は短くなりやすい病気です。
本記事では、脳脊髄液減少症について以下を解説します。
- 発症までの期間と、急性型・遅発型という2つの発症パターン
- 事故直後ではなく後から発症する仕組み
- むちうちと見分けるポイント
- 治るまでの期間と、治療を切り替える目安
- 死亡率や後遺症について分かっていること
不安を感じている方の助けになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
なお、安静と水分補給で改善しない場合は、硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)が保険診療の選択肢になります(文献2)。それでも症状が戻ってしまう方に向けて、当院リペアセルクリニックでは再生医療という選択肢もご用意しています。
また、治療を検討する前に情報を集めたい方は、再生医療に関する情報や症例を公開している当院の公式LINEもご活用ください。
目次
脳脊髄液減少症を発症するまでの期間
脳脊髄液減少症の症状は、外傷後30分から数週間程度で現れることが多いとされています(文献1)。
ただし、全員が同じ経過をたどるわけではありません。発症の仕方は大きく2つに分かれます。
| 項目 | 症状が出るまでの期間 | 気づきやすさ |
|---|---|---|
| 急性型 | 受傷直後から数日以内 | 激しい頭痛やめまいが突然起こるため、けがとの関連に気づきやすい |
| 遅発型 | 数週間から数カ月後 | 首の痛みやだるさから徐々に悪化するため、けがとの関連に気づきにくい |
なお、尾道市は脳脊髄液減少症を疑うポイントの1つとして「外傷から1カ月以内に発症」を挙げています(文献3)。事故やけがから1カ月以内に起き上がると悪化する頭痛が出てきた場合は、本症の可能性を考えて受診する目安になります。
受傷直後から数日で現れる急性型
強い衝撃を受けた直後から、今までに経験したことのない激しい頭痛やめまいが出るタイプです。硬膜に大きな傷がつき、脳脊髄液が一度に多く漏れ出している状態にあたります。
済生会は、交通事故による頭部打撲、むちうち症、スポーツ外傷、尻もちをついたなどの衝撃のあと、3時間以内に立ち上がると悪化する頭痛、めまい、吐き気、倦怠感や脱力を感じた場合は本症を疑うとしています(文献4)。
症状とけがの時期が近いため、本人も周囲も関連に気づきやすいのが特徴です。
数週間から数カ月かけて現れる遅発型
受傷したときは首の痛みや肩こり程度で、しばらくしてから起き上がると悪化する頭痛が強まっていくタイプです。漏れる量が少しずつ増えていくため、症状の出方もゆるやかになります。
このタイプで問題になるのは、けがとの関連に気づきにくいことです。事故から時間が経っているため「別の原因ではないか」と考えてしまい、受診が遅れることがあります。
脳脊髄液減少症は医療関係者の間でも認識が十分ではなく、誤った診断や治療がなされることがあると指摘されています(文献5)。事故やけがのあとに体調の変化が続いている場合は、受診時にその経緯を必ず伝えてください。
発症が遅れて起こる仕組み
傷がいったん塞がっていたものが、あとから開いてしまうためです。外傷直後ではなく少し遅れて発症する主な原因としては、以下の2つが考えられます(文献6)。
| 項目 | 起きていること |
|---|---|
| 血栓の消失 | 外傷後に一時的にできた血栓が脳脊髄液の漏れを塞いでいた場合、血栓が消失すると再び漏れ始める |
| 脳浮腫の軽減 | 外傷により硬膜やくも膜にできた傷が脳浮腫で一時的に塞がれ、浮腫が引くと傷が開いて漏れ始める |
脳脊髄液減少症を発症するきっかけ
脳脊髄液減少症を発症するきっかけは、主に以下の4つです。
| 項目 | 主なきっかけ |
|---|---|
| 外傷性 | 交通事故、スポーツ外傷、転倒、打撲などの強い衝撃 |
| 医原性 | 脊椎や脊髄の手術、腰椎穿刺、硬膜外麻酔などの医療処置 |
| 特発性 | 明らかな外傷がなく発症するもの |
| その他 | 出産時のいきみ、運動後の水分補給不足など |
済生会は、交通事故による頭部打撲、むちうち症、スポーツ外傷、尻もちをついたなどの外的なショックにより髄液が漏れるとしています(文献4)。東京都保健医療局も、外傷等により脳脊髄を覆っている膜が損傷を受けることを契機として挙げています(文献2)。
発症したあとに現れる初期症状については、以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
なお、脳脊髄液漏出症や低髄液圧症候群という病名で説明されることもあります。呼び方の違いは以下の記事で解説しています。
脳脊髄液減少症を疑うときのポイント
最も分かりやすい手がかりは、起き上がると悪化し、横になると楽になる頭痛です。尾道市は、本症を疑うポイントとして次の6つを挙げています(文献3)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発症の時期 | 外傷から1カ月以内に発症している |
| 頭痛の出方 | 起立時に頭痛が起こる、または強くなる |
| 頭痛以外の症状 | 首の痛み、めまい、吐き気、全身のだるさ、不眠などを伴う |
| 水分との関係 | 水分を摂ると症状が軽くなる |
| 天候との関係 | 天候によって症状が変動する |
| 薬の効き方 | 内服薬が効きにくい |
日本内科学会雑誌の総説では、脳脊髄液の減少により頭痛、頸部痛、めまい、耳鳴、視機能障害、倦怠・易疲労感など、さまざまな症状が現れる疾患と定義されています(文献5)。頭痛だけで判断せず、複数の症状が重なっていないかを確認してください。
症状のセルフチェックと、初期に現れやすい症状は以下の記事で詳しく解説しています。
むちうちと脳脊髄液減少症の見分け方
横になると楽になるかどうかが、見分けるうえで分かりやすい違いです。むちうち(頚椎捻挫)では首の動きに伴って痛みが出ますが、体を起こしたり横になったりする姿勢の変化で痛みが大きく変わることは多くありません。
| 項目 | むちうち(頚椎捻挫) | 脳脊髄液減少症 |
|---|---|---|
| 痛みが変わる要因 | 首を動かしたとき | 体を起こしたとき |
| 横になったとき | 大きくは変わらない | 楽になることが多い |
| 伴いやすい症状 | 首から後頭部の痛みや張り | めまい、耳鳴り、視機能障害、強い倦怠感 |
| 経過 | 安静や理学療法で徐々に軽快することが多い | 早期なら安静で軽快することもあるが、長引く場合がある |
なお、むちうちそのものが脳脊髄液減少症のきっかけになることもあります。どちらか一方とは限らず、両方が重なっている場合もあります。
交通事故のあとに頚椎捻挫と診断されたものの、なかなか改善せず、起き上がると頭痛が強くなる状態が続いている場合は、本症の可能性を医師に相談してください。
むちうちの症状や経過については以下の記事で解説しています。
脳脊髄液減少症が治るまでの期間
気づいてから1カ月以内であれば、安静と水分補給だけで自然に治ることもあります。一方で、症状が長く続いている場合は、治療に数カ月から年単位かかることもあります。
| 項目 | 治療の内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 症状に気づいてから1カ月以内 | 安静臥床と水分補給、点滴 | この段階で自然に治ることがある |
| 1カ月以上たっても改善しない | ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入療法) | 1回で治まることもあるが、複数回必要になることが多い |
| 慢性化している | ブラッドパッチを繰り返しながら経過をみる | 数カ月から年単位かかることがある |
大切なのは、症状に気づいてから医療機関にかかるまでの時間です。千葉市医師会も、症状を自覚してから病気が発見されるまでの時間がとても重要だとしています(文献1)。
安静と水分補給で様子をみる期間
症状を自覚してから1カ月以内の早期であれば、ベッドで安静に過ごし、水分補給や点滴を行うことで自然に治ることがあります(文献1)。
横になって過ごすことで、下がった脳への負担を減らしながら、傷が自然に塞がるのを待つという考え方です。日本内科学会雑誌の総説でも、治療は安静臥床と輸液による保存的治療が一般的とされています(文献5)。
済生会も、治療は安静を保つことが基本であり、吐き気や食欲不振で食べられないときは点滴注射で水分補給をするとしています(文献4)。
この期間に無理をして起き上がったり、仕事や家事を続けたりすると、漏れが続いて治りが遅くなることがあります。自己判断で動かず、医師の指示に従ってください。
ブラッドパッチを検討する目安と治療の回数
症状を自覚してから1カ月以上たっても改善しない場合は、脳脊髄液が漏れ続けている可能性が高いとされています(文献1)。この場合に検討されるのがブラッドパッチ(硬膜外自家血注入療法)です。
硬膜の外側に自分の血液を注入し、のりのように固めて漏れている部位を塞ぐ治療です。1回の注入で完治することもありますが、多くは複数回の注入が必要になります。
ブラッドパッチは保険診療で受けられますが、誰でも受けられるわけではありません。東京都保健医療局によると、関係学会の診断基準で「確実」または「確定」とされたものが保険適用の対象です(文献2)。
そのためには、画像検査で漏れを確かめる必要があります。
診断基準と検査の内容、治療法そのものについては以下の記事で詳しく解説しています。
慢性化した場合にかかる期間
症状が出てから診断までに時間がかかった場合は、治療に数カ月から年単位かかることがあります。本症の診断や治療を行っている医療機関にたどり着くまでに、時間がかかることが多いためです。
尾道市は、この病気の診断や治療を行っている医療機関が少なく、受診できる医療機関を探すことが困難だとしています(文献3)。
長引いている方ほど、まずは本症に対応している医療機関にたどり着くことが治療期間を左右します。
ブラッドパッチを繰り返しても症状が戻ってしまう方に向けて、当院リペアセルクリニックでは再生医療という選択肢もご用意しています。
再生医療は、患者様ご自身の細胞や血液を用いる治療法です。ほかの治療法についても知っておきたい方は、再生医療に関する情報や症例を当院の公式LINEでご覧いただけます。
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脳脊髄液減少症の死亡率と後遺症のリスク
この章では、脳脊髄液減少症の死亡率、寝たきりになる確率、後遺症について、分かっていることと分かっていないことを整理します。
脳脊髄液減少症の死亡率
脳脊髄液減少症そのものの死亡率を示したデータは、公表されていません。
近い病態として、頭部外傷のあとに鼻や耳から髄液が漏れるケースを調べた研究があります。台湾で頭部外傷の患者10,638人を対象に行われた調査では、髄液漏れがあった1,773人の1年以内の死亡率は9.0%、髄液漏れがなかった8,865人では2.8%でした(文献7)。
ただし、この研究が扱っているのは頭蓋底の骨折などに伴って鼻や耳から髄液が漏れる病態であり、脊髄からの漏れを主体とする脳脊髄液減少症とは別のものです。この数値をそのまま自分に当てはめる必要はありません。
鼻や耳から髄液が漏れる場合は、頭の中が外とつながるため、髄膜炎などの感染症につながるおそれがあります。脊髄からの漏れが主体の脳脊髄液減少症とは、リスクの性質が異なります。
鼻や耳から水のような透明な液が出る場合は、脳脊髄液減少症とは別に、早急な受診が必要です。
脳脊髄液減少症で寝たきりになる確率
脳脊髄液減少症により寝たきりになる確率を明確に示したデータも、公表されていません。
ただし、症状が重い場合や長期化した場合に、起き上がっていられる時間が短くなり、日常生活が大きく制限されることはあります。尾道市も、症状が長期間続く場合は学業や就労に支障をきたすことがあるとしています(文献3)。
なお、頭部外傷に伴う髄液漏れでは、頭の中に空気が入って圧力が上がる緊張性気脳症を合併することがあります(文献7)。ただしこれも鼻や耳から髄液が漏れる病態でみられるもので、脳脊髄液減少症とは別のものです。
いずれにしても、寝たきりを心配するよりも、起立性頭痛が続いているうちに受診して漏れを止めることが優先されます。
以下の記事では、髄膜炎を含む頭痛と吐き気の原因を紹介していますので、あわせてご覧ください。
治療後も症状が続くときに考えられること
治療を受けたあとも症状が続く場合は、漏れが完全には止まっていない可能性があります。ブラッドパッチは1回で治まることもありますが、多くは複数回の注入が必要になります。
症状が続いている場合は、あらためて検査で漏れの有無を確かめ、追加のブラッドパッチが必要かどうかを主治医と相談します。自己判断で通院をやめたり、症状を我慢したまま生活を続けたりせず、経過を主治医に伝えてください。
受診の際は、次のような点を記録しておくと、医師が経過を判断しやすくなります。
- 頭痛が起こる時間帯と、姿勢による変化(起き上がったとき、横になったとき)
- 頭痛以外の症状(めまい、耳鳴り、倦怠感など)の有無
- 治療前と比べて、起き上がっていられる時間がどう変わったか
また、残っている症状が本当に本症によるものか、別の原因があるのかを確かめることも大切です。片頭痛や起立性調節障害など、似た症状が出る病気と見分ける必要がある場合もあります。
まとめ|脳脊髄液減少症発症までの期間を理解して対処の遅れを防ごう
脳脊髄液減少症は、原因不明のものもありますが、多くは交通事故を含む外傷が原因です。
外傷性の場合、受傷後30分から数週間後の発症が多いとされています。数週間から数カ月たってから症状が出る遅発型もあるため、事故から時間が経っていても関係がないとは限りません。
症状に気づいてから1カ月以内であれば安静と水分補給で自然に治ることもあり、改善しない場合はブラッドパッチが保険診療の選択肢になります(文献1)(文献2)。
外傷後に頭痛やめまい、倦怠感といった体調の異変が現れた場合は、脳脊髄液減少症を疑い脳神経外科や整形外科などを受診しましょう。受診の際は、いつけがをしたか、起き上がると頭痛が強くなるかを必ず伝えてください。
多くの都道府県公式ホームページでは、脳脊髄液減少症に関する情報が記載されているため、検索をおすすめします。
治療を検討する前に情報を集めたい方は、再生医療に関する情報や症例を公開している当院の公式LINEもご活用ください。
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実際の経過は「低髄液圧症候群の症例」でご覧いただけます。
脳脊髄液減少症の発症までの期間に関するよくある質問
脳脊髄液減少症を発症するとどのような症状が現れますか?
脳脊髄液減少症で特徴的な症状が、起立性頭痛です。起立性頭痛とは、起き上がったり座ったりすると発生、もしくは悪化する頭痛のことです。
その他の症状としては、首の痛み、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠感などがあります。
脳脊髄液減少症は特徴的な症状が少なく病気の認知度も低いため、起立性調節障害や片頭痛、うつ病などと診断されるケースも少なくありません。
脳脊髄液減少症は何カ月で治りますか?
症状に気づいた時期によって大きく異なります。
1カ月以内の早い段階であれば、安静と水分補給だけで自然に治ることもあります。改善しない場合はブラッドパッチが検討されます。1回で治まることもありますが、多くは複数回必要になります。診断までに時間がかかった方では、数カ月から年単位かかることもあります。
脳脊髄液減少症は自然に治りますか?
症状を自覚してから1カ月以内の早期段階では、ベッドで安静に過ごし、水分補給や点滴を行うことで自然に治ることがあります(文献1)。
ただし、1カ月以上たっても改善しない場合は、脳脊髄液が漏れ続けている可能性が高いとされています。自然に治るのを待ち続けるのではなく、一度医療機関で漏れの有無を確かめてください。
脳脊髄液減少症を発症してから診断されるまでの期間はどのくらいですか?
数年かかる方も少なくありません。
医療関係者の間でも本症の認識が十分ではなく、診断や治療を行っている医療機関も少ないためです(文献3)(文献5)。
受診の際に、けがをした時期と、起き上がると頭痛が強くなることを具体的に伝えると、本症を疑ってもらいやすくなります。
脳脊髄液減少症で寿命が縮むことはありますか?
脳脊髄液減少症そのものの死亡率を示したデータは公表されていません。
頭部外傷のあとに鼻や耳から髄液が漏れる病態では死亡率が高くなるという報告がありますが、これは脳脊髄液減少症とは別の病態です。(文献7)
過度に心配するよりも、症状が続いているうちに受診して漏れを止めることを優先してください。
交通事故から時間が経ってからの受診でも問題ありませんか?
時間が経っていても受診してください。
事故から数週間たってから症状が現れる遅発型があるため、時間が経っていることは本症を否定する理由になりません。ただし、受診が遅れるほど診断までの期間も治療期間も長くなりやすいため、体調の異変に気づいた時点で受診することが大切です。
受診の際は、いつ事故やけががあったか、起き上がると頭痛が強くなるかを医師に伝え、記録してもらいましょう。
交通事故後の症状の経過については「むち打ちの後遺症と認定のポイント」もあわせてご覧ください。
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参考文献
事故後に不調が続いたらすぐ病院へ「脳脊髄液減少症」|一般社団法人千葉市医師会
脳脊髄液漏出症について|東京都保健医療局 難病ポータルサイト























