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関節リウマチの薬は主に5種類|効果や副作用を詳しく解説

「関節リウマチと診断されて薬を飲み始めた」
「自分が今飲んでいる薬は、どのような効果があるのだろう」
「リウマチの薬は一生飲み続けるものだろうか」
このような疑問や不安を抱えている方も多く、とくに、関節リウマチと診断されて間もない方にとっては切実な問題です。
本記事では、関節リウマチの薬に関して詳しく解説します。
病気の進行が落ち着く「寛解状態」を目指すためにも、ぜひ最後までご覧ください。
目次
関節リウマチの薬は主に5種類
関節リウマチの治療で用いられる薬は、主に以下の5種類です。
- 抗リウマチ薬
- 生物学的製剤
- JAK阻害剤
- 非ステロイド性消炎鎮痛剤
- 副腎皮質ステロイド剤
抗リウマチ薬
抗リウマチ薬には、免疫異常や、関節の炎症およびリウマチの活動性を抑制するはたらきがあります。
メトトレキサート
抗リウマチ薬の第一選択肢がメトトレキサートです。一般的に抗リウマチ薬は、効果が出るまで1~2か月程度かかりますが、メトトレキサートは2~3週間程度で効果が出るといわれています。(文献1)
メトトレキサートは、1週間に1日もしくは2日だけ内服する薬です。副作用軽減のために、内服日の2日後に葉酸を内服します。
メトトレキサートの副作用として挙げられるのは、口内炎や貧血、肝機能異常、間質性肺炎などです。
メトトレキサート以外の抗リウマチ薬
メトトレキサート以外の主な抗リウマチ薬を以下に示します。
薬剤名 | 特徴 | 内服方法 | 副作用 |
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サラゾスルファピリジン |
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ブシラミン |
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タクロリムス |
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タクロリムス内服時にグレープフルーツを食べたり、他の薬剤を内服したりすると、血中濃度が必要以上に上昇する場合があります。
生物学的製剤
生物学的製剤とは、生物から産生されるタンパク質を応用して作られた薬の総称です。
関節リウマチは、免疫に関わる物質であるサイトカインが通常より増えて、関節の炎症や破壊が生じる疾患です。
生物学的製剤は、点滴や皮下注射によって、サイトカインおよびサイトカインを産み出す細胞の働きを抑えます。これにより炎症を和らげ、関節痛や腫れなどの症状を軽減させる仕組みです。
サイトカイン産生細胞には、炎症を引き起こすTNF-αや炎症に関与するIL-6などがあります。
主な生物学的製剤を以下に示します。
薬剤名 | 特徴 | 投与方法 | 投与間隔 |
---|---|---|---|
インフリキシマブ | TNF-αに作用する | 点滴 | 4~8週間に1回 |
エタネルセプト | TNF-αに作用する | 皮下注射 | 1週間に2回 |
アダリムマブ | TNF-αに作用する | 皮下注射 | 2週間に1回 |
ゴリムマブ | TNF-αに作用する | 皮下注射 | 4週間に1回 |
セルトリズマブ | TNF-αに作用する | 皮下注射 | 2週間に1回 |
トシリズマブ | IL-6に作用する | 点滴 | 4週間に1回 |
サリルマブ | IL-6に作用する | 皮下注射 | 2週間に1回 |
アバタセプト | T細胞に作用する | 点滴 | 4週間に1回 |
T細胞とは、白血球の仲間であるリンパ球の1つであり、免疫機能をつかさどる細胞です。
生物学的製剤については以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
JAK阻害薬
JAK阻害薬は、分子標的型のリウマチ治療薬であり、関節に炎症を起こす分子「JAK」の働きを抑える効果があります。2013年3月にトファシチニブが日本で承認され、同年7月に発売されました。(文献2)
生物学的製剤は注射もしくは点滴での投与ですが、JAK阻害薬は内服可能な薬です。
トファシチニブ以外の主なJAK阻害剤としては、以下のようなものが挙げられます。(文献2)
- バリシチニブ
- ベフィシチニブ
- ウパダシチニブ
- フィルゴチニブ
JAK阻害薬の副作用では、帯状疱疹の発症リスクが高いとされています。加えて、悪性腫瘍や狭心症、心筋梗塞などにも注意が必要です。
JAK阻害薬は費用が高額であるため、医療保険で自己負担3割の方の場合、毎月5万円程度の医療費が発生します。
非ステロイド性消炎鎮痛剤
主な非ステロイド性消炎鎮痛剤は、アスピリンやロキソニン、インドメタシンなどです。プロスタグランジンと呼ばれる、炎症を引き起こす物質の産生を抑えて、関節痛や腫れを軽減させる役割があります。
効き目が速い点が特徴ですが、関節変形を抑える効果は期待できないとされています。
主な副作用は胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍や、腎機能低下などです。
最近では、COX-2阻害薬と呼ばれる新しいタイプの薬剤が使用可能になりました。(文献3)
副腎皮質ステロイド剤
関節リウマチでは、症例により少量のステロイド剤を用いるケースがあります。主なステロイド剤は、プレドニンやリンデロン、デカドロンなどです。
炎症を抑える作用や免疫抑制作用が強く、はやく効果が出ます。しかし、骨粗しょう症や消化性潰瘍など、副作用も多いこともあり、リウマチ治療においては補助的な役割です。
抗リウマチ薬や生物学的製剤の使用により、ステロイドを減量もしくは中止する例も増えています。
関節リウマチにおける薬物療法の目的
関節リウマチにおける薬物療法の目的は、「症状を抑えること」から「寛解導入」に移行しています。寛解とは、病気の進行が落ち着いている状態です。
現在、関節リウマチ治療の最終ゴールは、以下3点の達成・維持とされています。
- 臨床的寛解(炎症がほぼ消えた状態)
- 構造的寛解(関節破壊の進行が抑えられている状態)
- 機能的寛解(身体機能の低下がみられない状態)
関節リウマチは進行性の疾患であり、進行を止めることは難しいと考えられていました。その考えに変化が生じたのは、2000年前後です。
1999年に抗リウマチ薬の1つであるメトトレキサートが保険適用され、2003年には生物学的製剤が国内で発売開始されました。これらの変化により、関節リウマチの進行を抑えられるようになったのです。
リウマチの薬を飲まないとどうなるのか
副作用が怖い、症状が改善されたなどの理由により、自己判断でリウマチの薬を飲まなくなる方も少なくありません。しかし、自己判断で薬を中止すると、症状が悪化する可能性が高まります。
とくに、メトトレキサートを中心とする抗リウマチ薬のみの治療を受けている場合は、自己判断で中止すべきではありません。内服をやめた場合、症状の悪化率が倍になったという研究データもあります。
日本リウマチ学会による「関節リウマチ治療ガイドライン2014」を要約すると、減薬の優先度は以下のとおりです。
- ステロイド
- 生物学的製剤
- 抗リウマチ薬
薬を飲むことに不安や疑問がある方は、自己判断で中止せず、必ず主治医に相談しましょう。
関節リウマチの薬について理解した上で治療を受けよう
節リウマチの薬は、免疫に関係して関節の炎症を抑えたり、関節痛や腫れ、変形を軽減したりする効果があります。
関節リウマチは進行性の疾患ですが、新たな薬の開発が進んでいることもあり、寛解を目標にできるようになりました。しかし、寛解を目標にできるのは、指示どおりに薬を内服している場合です。
自己判断で薬を減らしたり止めたりすると、病気に良くない影響を与えます。副作用が不安である、症状が軽減されたなどの理由で、薬の減量や中止を考えている方は必ず主治医に相談しましょう。
当院「リペアセルクリニック」では、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。関節リウマチの薬や治療について疑問や不安のある方は、お気軽にお問い合わせください。
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関節リウマチの薬に関するよくある質問
関節リウマチの薬が効かず症状が改善されない場合もありますか?
薬物治療の効果が得られないケースもあり、その場合は薬を見直します。
抗リウマチ薬の内服を始めて3か月経過しても効果が不十分であれば、量を増やすか、生物学的製剤に切り替えます。
生物学的製剤を投与する場合も、3~6か月程度の経過観察が必要です。経過観察の結果、効果が不十分と判明したときは、他の生物学的製剤やJAK阻害剤に変更します。
内服・投与治療による効果が見られない場合は、手術療法も選択肢に入ります。
リウマチの治療費が高すぎると感じます。医療費の補助はありますか?
生物学的製剤やJAK阻害剤などは薬代が高いため、医療保険で自己負担3割の方の場合、1か月の医療費が3万円以上になることも少なくありません。(文献4)
医療費を軽減する主な制度が、高額療養費制度です。1か月の医療費が所定の自己負担上限額を超えたときに、加入している医療保険から上限を超えた分が支給されます。
高額療養費制度について詳しく知りたい方は、加入している健康保険組合やお住まいの市区町村役場などにお問い合わせください。通院先の医療機関で確認できる場合もあります。
参考文献
(文献1)
順天堂大学医学部附属順天堂医院 膠原病・リウマチ内科「関節リウマチ」
https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/collagen/disease/disease01.html(最終アクセス:2025年5月16日)
(文献2)
東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター「JAK阻害薬(ジャックそがいやく)」
https://twmu-rheum-ior.jp/diagnosis/ra/medication/biologics/jak.html(最終アクセス:2025年5月16日)
(文献4) 公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センター「非ステロイド抗炎症薬(消炎鎮痛薬)」
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/dtherapy/nsaids/(最終アクセス:2025年5月16日)
(文献4)
松野博明.「医療費を考慮した関節リウマチの治療」『臨床リウマチ』34(4), pp.268-274, 2022年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/34/4/34_268/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年5月16日)