膝の関節炎とリウマチの違いとは?症状と治療法などを現役医師が解説
公開日: 2023.09.10更新日: 2024.11.06
関節リウマチは全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れを起こす病気です。
進行すると関節の変形や機能の障害を残してしまいます。
関節リウマチでは膝の痛み、膝の腫れも多い症状です。
膝が痛いとき、変形性膝関節症と考え「年のせいでは?」と悩んでいる方もいるでしょう。
もし関節リウマチだった場合に放置していると、悪化してしまう可能性もあります。
この記事では関節リウマチによる膝関節炎の症状や治療法について解説していきます。
膝の痛みでお困りの方はぜひ参考にしてみてください。
目次
膝の関節炎とリウマチの違い
関節炎とリウマチの違いは、大きく分けると以下の通りです。
関節炎 |
さまざまな原因で関節に起こる炎症の総称 |
リウマチ |
関節炎を起こしている症状の1つ |
たとえば関節リウマチでは、自分の体を細菌やウイルスから守る免疫の異常によって関節の滑膜に炎症が起こります。
関節リウマチが起こると痛みや腫れを感じるでしょう。
関節リウマチは無治療のままで放置してしまうと、関節が変形など機能的な障害をきたすので注意しましょう。
以下の記事では関節炎の1つ「化膿性関節炎」について解説しています。
治療法や再発予防もまとめたので、具体的な症状なども把握しておきたい方は、ぜひご覧ください。
リウマチが発症する主な原因や症状
関節炎とリウマチの違いが理解できても「気づかないうちに痛みを感じるようになった」方もいるでしょう。
ここからは、リウマチになる主な原因と症状を順番に解説していきます。
関節リウマチの主な原因
関節リウマチの多くは40〜60歳代頃の中高年女性に発症します。
正確な原因はまだ明らかになっていませんが、自己免疫疾患とも言えるでしょう。
自分の組織に対して攻撃する抗体が作られてしまい、関節内の滑膜にリンパ系の細胞が集まって炎症性の物質が作られるのが原因とも考えられています。
【リウマチの発症が疑われるサイン】
・起床時に関節部分がこわばっているように感じる
・関節が腫れている
・関節が熱っぽい
・力が入りにくい
・日常生活の作業が上手くいかない
・家族にリウマチの患者がいる など
上記の症状が感じられる方はリウマチになっている可能性があるので、しっかり検査しておきましょう。
発症には遺伝的な要因や喫煙、歯周病などが関連しているとわかっています。
発症すると関節炎によって痛みや腫れを起こし、進行すると関節の変形を生じてしまうため、早期の発見と治療が大切です。
リウマチによる膝関節炎の症状
関節リウマチで多い症状は手や足の指の腫れ、痛み、朝のこわばりなどです。
膝関節で滑膜が増殖して炎症を起こすと膝関節炎をきたしてしまいます。
膝関節炎の主な症状は以下の通りです。
・膝が腫れる
・膝に水が溜まる
・歩くときや階段での痛みを感じる
・膝が曲がらない など
膝の痛みは膝裏に起こるケースが多く、曲げ伸ばしのときに音が生じた経験もあるでしょう。
炎症が強い場合には安静にしていても歩けないくらいの激痛が生じる場合もあるので注意してください。
なお、リウマチはあくまで関節炎の1つなので、以下の表で似ている症状をまとめました。
病名 |
主な症状 |
膠原病(こうげんびょう) |
関節に痛みを感じたり血管症などの症状がある |
線維筋痛症 |
手足の関節だけでなく筋肉に激痛を感じるケースがある 比較的女性が発症しやすい |
関節炎とリウマチの違いについてだけでなく、細かい症状の違いや治療法などが気になる方は、以下の記事で詳しく解説していきます。
膝関節炎を放置するリスク
膝の関節炎を放置しておくと、関節の軟骨がなくなってしまうだけでなく、徐々に関節の変形が進んでいきます。
日常生活を送る上で「多少の痛みだから」と放置しすぎてしまうと、膝の曲げ伸ばしが難しくなるので注意してください。
骨同士のぶつかりだけで痛みを感じる可能性もあるので、症状が悪化してしまいます。
関節の変形を生じさせないためにも、早期の発見と治療が大切です。
リウマチによる膝関節炎の診断方法
リウマチの診断は問診、身体診察と血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に行います。関節が腫れて、痛む病気は複数あり、検査だけで関節リウマチと診断できない場合があるからです。
関節リウマチの診断基準を使用して診断を行うので、専門家である医師の診断が必須となります。
現在では2010年に米国、欧州リウマチ学会が合同で発表した分類基準を使用するケースが大半です。(文献1)
以下の4項目についてそれぞれ点数をつけ、合計して6点以上であれば関節リウマチと診断します。
診断基準
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血液検査では、リウマトイド因子や抗CCP抗体が重要で、多くの関節リウマチで陽性になります。
しかし、両方とも陰性でも関節リウマチと診断されたり、陽性でも関節リウマチではなかったりもします。
炎症反応は活動性を反映する指標ですが、リウマチ以外でも上昇する可能性もあるので診断結果は要チェックです。
画像検査は診断基準には含まれませんが、単純レントゲン写真では「骨びらん」と呼ばれる骨の透亮像がみられる場合があります。
関節エコーやMRI検査も滑膜炎の範囲、程度を評価するのに有用です。
リウマチによる膝関節の治療法
リウマチによる膝関節の治療法は、日常生活で応急処置をする方法はもちろん、専門医から薬を処方してもらう方法などがあります。
ここからは、自宅でできる応急処置から薬物治療などの治療法を解説していきます。
体や関節を保温する
膝の関節炎だけでなく、体の関節が動かしにくいと感じた場合、患部を保温すると効果が期待できます。
冬場はもちろん、夏場の冷房があたるのも避け、長袖や長ズボンを着用しておくのがおすすめです。
患部を保温しておくと関節部分の血液がよく流れ、こわばりなどを症状を軽減する効果が期待できるのです。
関節が腫れている場合は炎症が起きている可能性があるので、保温以外の治療法を選択する必要があります。
以下の記事では、関節リウマチの初期症状や治療を詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。
食事や姿勢などの私生活を見直す
関節リウマチの患者様は、食生活だけでなく姿勢改善などを普段から実施してもらうのがおすすめです。
症状を悪化させないためにも、以下のポイントには要注意です。
・砂糖や加工食品を摂取しすぎない
・激しい運動を控える
・首に負担をかけない
・同じ姿勢を長時間とる
・重いものを持つ
・正座をする
・喫煙をする
・ストレスを溜める など
詳しい改善項目は、以下の記事でまとめているので、ぜひ参考にしてください。
専門医から抗リウマチ薬を処方してもらう
リウマチの治療法は基本的に薬物治療です。
リウマチと診断した早期から、抗リウマチ薬を開始し、痛みの程度に応じて炎症を抑えるステロイドや、鎮痛薬を併用します。
薬物治療を開始しても膝関節炎の症状が続く場合にはサポーターを使用したり、膝関節に注射をしたりする方法があります。
日本リウマチ学会による2020年のガイドラインから代表的なお薬を以下の一覧でまとめました。(文献2)
抗リウマチ薬
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関節リウマチはこれまで治療が難しく、関節の変形が進行してしまう患者様も多かったのですが、現在では薬剤の種類も多くなっています。
効果が高いお薬もあるため、適切に治療すれば症状を抑えられます。
しかし、膝の関節炎が治まらず、関節の変形や破壊が進行した場合、人工関節置換術などの手術治療が行われるので不安に感じている方もいるでしょう。
膝の痛みは現在、⼿術をしなくても治療できる時代になっているので、気になる方は気軽にお問い合わせください。
まとめ・関節炎とリウマチの違いを把握して適切な治療を行おう!
関節リウマチによる膝関節炎は、日常生活に大きな影響を与える深刻な疾患です。
膝の痛みや腫れを放置すると、関節の変形や機能障害が進行し、歩行困難や日常生活の質の低下を招く恐れがあります。
しかし、早期発見と適切な治療を行えば、症状の進行を抑え生活の質を維持できます。
関節リウマチの診断には、問診や身体診察、血液検査、画像検査が用いられるので、専門医による診断が必須です。
リウマトイド因子や抗CCP抗体の検査結果が重要な診断指標となり、診断基準に基づいて総合的に判断されます。
自己判断で治療を中断したり放置したりせず、定期的な診察と検査を受けるよう心がけましょう。
日常生活では関節に負担をかけないように注意し、適度な運動やストレッチを取り入れるのも大切です。
関節リウマチの早期発見と適切な治療を通じて、健康的で快適な生活を維持しましょう。