膝の水は抜く理由と注意したい合併症とは?
目次
膝の水を抜く理由と注意すべき合併症について解説します
多くの方を悩ませる「膝の痛み」。膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものがあります。
この症状のある方は医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が往々にしてあります。この記事では、主に膝に溜った水を抜いたあとの注意点について医師が解説したいと思います。
なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。
膝の水はなぜ溜まるのか?
膝の関節は、関節包というもので覆われ、更にその中には、滑膜と言われる膜があり、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は、健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されています。
これが半月板損傷や、変形性関節症など関節の炎症をはじめとして、骨折や何らかの感染や外傷、靭帯損傷、痛風、偽痛風、関節リウマチなどといった原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。
これにより「膝に水が溜まる」という症状が起こります。
|
なぜ膝に溜った水を抜くのか?その理由
膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。
この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。
|
|
膝の水を抜いた後の注意|合併症
膝の水を抜いた(関節穿刺)後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。そこで、以下に一般的な合併症について解説します。
-
①感染
- ・通常、関節内は無菌状態です。
- ・関節穿刺を行うことで細菌が関節内に入ってしまうことがあります。
- ・細菌が関節内に入り感染を起こす可能性があります。
- ・症状は、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。
- 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。
- 一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。
-
②出血
- ・関節穿刺で関節周囲の血管を傷つけることがあります。
- ・血管が傷つくと出血を起こすことがあります。
- ・多くの場合は細い血管の損傷にとどまり、自然に止まることがほとんどです。
- ・穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、しばらく圧迫すれば止血が可能です。
- 他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方や、もともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血できないことがあります。
- ※圧迫しても止まらない出血は、速やかに処置を行った医療機関にご相談ください。
-
③その他
- ・アレルギー反応は、関節内に薬剤を注射した場合に起こりやすい合併症。
- ・数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じます。
- ・多くの場合は投与後すぐに発症し、医療機関で発見される場合がほとんどです
- ・まれに帰宅後に発症することもあるため注意してください。
血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。
膝の水を抜いた後に注意したいこと
膝の水を抜いたあと、気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目について解説します。
|
|
まとめ・膝の水を抜く理由と注意すべき合併症について
今回の記事では膝に水がたまる病気と、水を抜いたあと注意すべきことについて解説しました。
症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。
No.072
監修:医師 坂本貞範
変形性膝関節症をはじめ膝の障害に対する新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療
▼以下もご参考にしてください
膝の上の筋肉、ふとももが痛む場合の対策と考えられる病気