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中枢神経障害とは|症状や原因・治療法まで現役医師がわかりやすく解説

「中枢神経障害とは何か知りたい」「中枢神経障害の原因や治療法を知りたい」といった疑問を持っている方もいるでしょう。
中枢神経障害は、脳および脊髄の構造または機能に異常が生じる神経疾患です。原因疾患によって適切な治療法が異なるため、中枢神経障害が疑われる場合は、早めに医療機関を受診する必要があります。
今回は、中枢神経障害の初期症状から治療法までわかりやすく解説します。中枢神経障害について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
中枢神経障害とは
中枢神経障害とは、中枢神経系を形成する脳または脊髄の構造や機能に異常が生じて発症する神経疾患です。
中枢神経は、身体の動きや感覚、思考、記憶、感情など、あらゆる機能を制御する司令塔の役割を果たしています。そのため、中枢神経系に異常が生じると、障害を受けた部位やその範囲に応じて、さまざまな症状が現れる可能性があります。
なお、中枢神経障害は原因によって症状や治療法が異なるため、早期の診断と適切な治療が重要です。
中枢神経障害の原因と種類
中枢神経障害の原因は、主に以下の5つに分類できます。
原因疾患の特定は、中枢神経障害の適切な診断と治療につながります。以下で、それぞれ詳しく見ていきましょう。
血管性疾患
血管性疾患は、中枢神経障害の原因の一つです。血流が悪くなったり遮断されたりすると、脳や脊髄の神経細胞が損傷を受けます。代表的な血管性疾患は、以下の通りです。
- 脳梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
身体の麻痺のほか、言語障害・視覚障害・意識障害などが現れる場合があります。
神経変性疾患
神経変性疾患も中枢神経障害の一因になります。神経変性疾患とは、神経細胞が徐々に変性・消失する疾患です。主な神経変性疾患は、以下の通りです。
- パーキンソン病
- アルツハイマー病
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
パーキンソン病を発症すると、ドーパミンを生産する神経細胞が減少し、運動障害を引き起こします。また、アルツハイマー病を発症すると、記憶を司る脳の神経細胞が徐々に破壊されることにより、認知機能が低下します。
炎症性疾患
免疫系の異常や感染症によって引き起こされる炎症性疾患も、中枢神経障害の原因の一つです。炎症性疾患の代表例は、以下の通りです。
- 多発性硬化症
- 脳炎
多発性硬化症を発症すると、免疫系が神経の保護膜を攻撃し、神経伝達に障害を引き起こします。また、ウイルスや細菌感染による脳の炎症も中枢神経障害の原因になります。
外傷性疾患
外傷性疾患も中枢神経障害の原因の一つです。交通事故やスポーツなど、外部からの物理的な衝撃が中枢神経に影響を与える場合があります。
- 脊髄損傷
- 頭部外傷
外傷性疾患による中枢神経障害は回復に時間がかかるほか、重篤な後遺症が残るケースも珍しくありません。
感染性疾患
ウイルスや細菌による感染性疾患によって、中枢神経障害に陥ることもあります。中枢神経障害の原因になる感染疾患は、主に以下の通りです。
- 髄膜炎
- 日本脳炎
中枢神経系がウイルスや細菌に感染すると、炎症を引き起こします。感染性疾患による後遺症が深刻化しないよう、適切な治療が必要です。
中枢神経障害の症状
中枢神経障害の症状はダメージを負った部位や程度によってさまざまです。具体的には、主に以下のような症状が現れます。
障害の種類 |
具体的な症状 |
主な原因疾患 |
---|---|---|
運動障害 |
|
|
感覚障害 |
視覚や聴覚、触覚に異常を感じる |
|
認知機能障害 |
|
アルツハイマー病 |
精神的障害 |
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なお、原因疾患によって、症状の進行は異なります。症状を改善するためには、それぞれ原因疾患に対する治療が必要です。
中枢神経障害の治療法
中枢神経障害の治療法として、主に以下の選択肢があります。
- 薬物療法
- リハビリテーション
- 再生医療
中枢神経障害の原因疾患のなかには、根治が難しい疾患も少なくありません。それぞれの治療法について解説するので、医師と相談しながら、適切な治療法を検討してください。
薬物療法
中枢神経障害の治療では、原因疾患に応じて薬物療法が選択されることが多いです。症状に応じて、痛みを軽減するための鎮痛剤や、精神的な不安を抑える精神安定剤のほか、抗てんかん薬や抗うつ薬などが投与されます。
たとえば、神経変性疾患やパーキンソン病、アルツハイマー病などに対しては、症状の進行を遅らせるために薬物療法が選択されるのが一般的です。なお、中枢神経障害の疾患の多くは治療法が確立されておらず、薬物療法は単なる対症療法に留まるとされています。(文献1)
リハビリテーション
中枢神経障害において、リハビリテーションは疾患により低下した運動機能や、認知機能の改善を目指す治療法です。
具体的には、理学療法士による運動療法、作業療法士による日常生活動作の訓練、言語聴覚士によるコミュニケーション能力の向上を図る訓練などがおこなわれます。
また、認知機能を維持・向上させるための脳トレーニングや、心理的な支援も中枢神経障害におけるリハビリテーションの一環です。
なお、中枢神経疾患のリハビリテーションは、数週間から数カ月にわたって継続されることが多いです。なかでも、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)など、進行性の疾患に対しては、リハビリ期間が長期化する場合があります。
再生医療
再生医療も、中枢神経障害の治療における選択肢の一つです。再生医療とは、自然治癒力を最大限に引き出すための医療技術で、幹細胞や血小板の投与によって症状改善を目指す治療法です。
リペアセルクリニックでは、中枢神経障害の原因となる脳梗塞や脳卒中、脊髄損傷に対する再生医療をおこなっています。
当院の幹細胞治療は、少量の脂肪を採取するだけで、十分な量の細胞を培養できる点が特徴です。そのため、身体への負担が少なくて済みます。
再生医療による治療法や具体的な症例について知りたい方は、以下のページをご覧ください。

手術をしない新しい治療「再生医療」を提供しております。
なお、リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。中枢神経障害の症状でお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。
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中枢神経障害は原因に合わせて適切な治療法を検討しよう
中枢神経障害とは、脳や脊髄などの中枢神経に異常が生じ、手足のしびれや感覚異常、認知機能の低下といったさまざまな症状を引き起こす疾患です。原因は脳卒中や脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病など多岐にわたり、疾患ごとに治療法が異なります。
中枢神経障害は、早期発見と適切な治療により、症状を改善したり進行を遅らせたりすることが可能です。薬物療法やリハビリテーション、再生医療など、医師の診断のもと適切な治療法を検討しましょう。
中枢神経障害に関するよくある質問
中枢神経障害の診断方法は?
中枢神経障害の診断には、主に以下の検査が用いられます。
- MRI(磁気共鳴画像法)
- CT(コンピュータ断層撮影)
- 脳波検査
- 脳脊髄液検査
脳や脊髄の構造や機能を評価するため、一般的に複数の手法を用いて診断されます。
中枢神経障害と末梢神経障害の違いは?
中枢神経障害は、脳や脊髄などの中枢神経系に発生する障害です。
一方で、末梢神経障害は、手足や体幹に伸びる末梢神経に生じる障害のことです。末梢神経障害は、糖尿病や自己免疫疾患などが原因で、手足のしびれや筋力低下といった症状を引き起こします。
中枢神経障害は治る?
中枢神経には再生を阻害する因子が多く存在し、自然に修復されにくいといわれています。(文献2)そのため、中枢神経障害は、原因疾患によって根治が難しい疾患です。
ただし、近年の医療技術の進歩により、リハビリテーションや再生医療を通じて、一定の改善が見込まれる場合もあります。
参考文献
独立行政法人医薬品医療機器総合機構「中枢神経疾患治療薬の承認審査の現状と DDS への期待」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/34/5/34_385/_pdf
(最終アクセス:2025年5月20日)
大阪大学大学院 医学系研究科 分子神経科学「失われた神経回路を取り戻すために」
https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molneu/researchp1.html
(最終アクセス:2025年5月20日)